VRMMORPG NWOが運営されて3日目。週末明け(月曜日)の学校へ行く前にオリジナルは魔法で分身体である俺を作り、自分の代わりにゲームをして貰う裏技を駆使した。こうでもしないとゴミ拾いクエストが終わらないんだとさ・・・・・。
というわけで、オリジナルの代わりに俺がログインをして最初に畑に顔を出した。
「おはよう、オルト」
「ムーム」
「おっ、凄いなこれ」
畑に着いた俺は、目の前の光景に感動してしまった。昨日までは何もなかった畑に、植物が生えそろっている。
「薬草に、毒草、麻痺草と陽命草・・・・・。全部、品質が上がってる。流石だオルト」
昨日オリジナルがオルトに渡した時は、確かに品質★1だったはずだ。しかし、今畑に生えている物は、品質が2段も上の★3の物に変わっている。
「これが、農業系スキルの効果か? あと、肥料と腐葉土も撒いたしな」
名称:薬草
レア度:1 品質:★3
効果: HPを7回復させる
名称:毒草
レア度:1 品質:★3
効果:使用者に低確率で毒効果
名称:麻痺草
レア度:1 品質:★3
効果:使用者に低確率で麻痺効果。
名称:陽命草
レア度:1 品質:★3
効果:ポーションの素材。満腹度3%回復。
さらに、食用草と、傷薬草も育っていた。こっちも品質が★3に上がっている。
「これ、収穫していいのか?」
「ム」
オルトが、足元に生えていた薬草をブチッと抜いて渡してくれる。ああ、ただ抜くだけでいいのか。俺もさっそく、毒草を引き抜いてみた。うん、★1の物より大きさも大きいし、色も濃くていかにも毒って感じが増している。
この朝の収穫は、薬草×2、毒草×2、麻痺草×2、陽命草×2、傷薬草×5、食用草×5となった。素晴らしい。
「あと水はどうなってる?」
「ムー」
「ふうん。使い終わると、水軽石は割れちゃうのか。でも、見た目は普通の水と変わらないな」
水桶には確実に緑マーカーが出ている。俺は木桶ごとインベントリに収納してみた。すると、桶だけがその場に残り、インベントリの中に浄化水というアイテムが10個増えている。成功のようだ。
名称:浄化水
レア度:2 品質:★1
効果:素材
「これでポーションの材料が揃ったんじゃないか? しかも、普通に採取するよりも高品質で」
俺以外の人はこの辺で採取できる、★1の薬草と陽命草に、井戸なんかで汲める普通の水で作るんだろうしな。オート作成の指示に従い、★3の薬草と陽命草、浄化水を取り出し、ゴリゴリ調合していく。材料が違うだけで、手順は傷薬と一緒だった。
そして、鉢が光って、ポーションが完成する。初の調合は★1の下級ポーションか。まずまずだな。
名称:下級ポーション
レア度:1 品質:★3
効果:HPを30回復させる。クーリングタイム10分。
これは良い物だ。ポーションが入っている瓶がどこから来たのかは気になるが。序盤では有用なポーションだろう。さすが、良い品質の素材を使っただけある。
初期装備に入っていた★1下級ポーションよりも、10点も多くHPを回復してくれる。まあ、今の俺の場合、防御極振りだから今のところダメージが食らわないからあまり関係ないんだけどな。
『調合スキルがLv2に上がりました』
よしよし、順調にレベルアップしてるぜ。さすが★3!にしても、100%成功する代わりに品質が下がるというオート調合でこの品質か。
他のレシピもチェックしてみようかな。
傷薬、携帯食は、草と水だけで作ることができる。簡単なレシピだった。これもオルトに株分してもらう分を残して、調合しちゃおう。食用草1つで、携帯食が5つ作れる。1つで満腹度が20%回復するので、1日分は賄える計算だ。クソ不味いから、違うのが食べたいけどね。とりあえず10個作っておこう。
傷薬草2つに井戸の水で、傷薬も2つ作っておく。傷薬に浄化水は勿体ないからな。だって品質が最低でもほぼ全快だから・・・・・。
毒薬、麻痺薬は、それぞれのレシピに毒草、麻痺草が3つずつ必要だった。今は手持ちがない。狩猟薬も、毒草と麻痺草に赤テング茸というキノコが必要で材料不足だ。残る蜜団子も食用草はあってもハチミツがない。
「まだまだ材料が足りないか。探すしかないな」
それに問題もある。スキルレベルを上げても、基礎レベルが上がらないと、ステータスが上昇しない。それではいつまでも強くはなれないのだ。生産で得られる経験値はあまり多くないらしいし、できれば生産以外でも経験値を稼ぎたいところだ。
「・・・・・ゴミ拾いクエスト、さっさと終わらせなきゃ。まあ、今はとりあえず種まきだな」
俺は薬草をオルトに渡して株分けしてもらった。株分けをすると品質が下がってしまうのは分かっているが、★3を渡したらどうなるのか? もし品質が1段しか下がらず、2の種になったら? 作物の品質は1日で2つ上がる訳だから、繰り返せば8日後には★10の薬草が作れてしまうのでは?
「ビンゴ! まじでか!」
オルトの創り出した種は、★2だった。これは畑で採れた作物を植えるしかないじゃないか。
俺は残っている収穫物から、薬草×1、毒草×2、麻痺草×2、陽命草×1、傷薬草×3、食用草×1を株分けしてもらい、畑に種を撒いた。明日が楽しみだな。暫くは調合に回さないで、素材の品質を上げることに専念しよう。
畑で作業をすることもなくなったオルトと始まりの町を徘徊する。その際、南方の外れの方、農業地区にも向かった。ここは、俺以外にも純粋なファーマー系のプレイヤーが畑を買って、実際に栽培を行うが、今のところファーマー系のプレイヤーはいるにはいるも、数も作物も片手で数えるぐらいで少ない。畑の真ん中には、そこそこ大きな建物が立っていた。畑を管理している建物の中にいるNPCと話し、畑を購入する必要がある。オリジナルがお世話になっておりますお姉さん。
「ん?ここにもゴミあったか」
畑ある場所にないと思われたゴミを発見。拾ってさらに探索してみると、何故か販売機が畑の前に設置されていた。ファンタジーRPGなのに近代の機器がどうしてあるんだ運営よ・・・・・。しかし物は試しにと購入してみるか。無難なのは野菜ジュースだろうな。というかそれしかないので全部買い占めて飲んでみたら、満腹度がちょっと増えて味は野菜の甘味や苦みなどが混じって普通に美味しい野菜ジュースらしい飲み物だった。延々とロボットのように作業をするゴミ拾い中の気分を変えるのに丁度いいな。他の販売機はどうだ?行ってみよっと。
「あれ?完売してる!誰だろう、嬉しいな」
農業地区からハーデス(分身体)がいなくなった後。畑の主が戻ってきたら売れるとは思わず、半ば放置していた自分の商品の完売に心がほんわかと温かくなった。
草根を分けてでも探す根気でゲーム内で数時間が過ぎた。宿屋で部屋を借りて一瞬で眠り、一瞬で目を覚ますリフレッシュって何?って眠った感覚がない起床からゴミ拾いを開始した。昨日買った野菜ジュースで満腹度を増やしつつゴミを集めていた時、少し減った満腹度を増やそうと野菜ジュースを飲もうとした時だった。
「おにーちゃんおにーちゃん」
足元から幼い声が聞こえる。誰だ?と視線を落とすと小さな男の子と女の子が純粋無垢な眼差しで見上げてくる。はてNPCの子供だけど、NPCが自分から話しかけてくるのか?
「どうした?」
「それジュース?」
「野菜ジュースだ。野菜は好きか?」
「うん、大好き!ボク、トマトが大好き!」
「僕も!」
ボクっ子幼女・・・・・。いや、どうでもいいなうん。
「じゃあ、トマトジュースをあげようか」
「くれるの?ありがとう!」
「ありがとうございます!」
丁度残り二つだけだったからタイミングよかったな子供達。渡すと美味しそうに飲んでプハッと飲み干した。
「美味しい!」
「それはよかった。じゃあな」
「あ、待っておにーちゃん。おじいちゃんの手伝いをしてるの?」
「おじいちゃんの手伝い?」
「この町を毎日綺麗にしてるおじいちゃんだよ。そのかご、おじいちゃんのだから」
あの老人の孫か?関係は分からないけど取り敢えず嘘じゃないから頷く。子供達は俺の手を引っ張ってどこかへと連れて行こうとする。
「だったら、僕達も手伝うよ!」
「ボク達も精霊様に会いたい!」
精霊の話を聞かされていたのか、目を輝かせて言ってくる。大丈夫か?と考えながらも幼い子供達の純粋な想いに負けて一緒にゴミ拾いをすることにした。気分転換になるジュースを飲みながらするはずの作業が、子供達の賑やかな言動に振り回される保護者な気分も足して、心なしか俺も笑いそうになりつつゴミを集める。
そしてどうしてか俺よりも子供達の方がゴミを見つけやすくなるという不思議現象が起きる。小さい視点だからか?謎だ。オルトも負けじと一生懸命探す姿に・・・・・ホッコリ。
その他にも子供達が緩衝材にも担っているのか、大人のNPC達と挨拶をしながら「おじいちゃんのゴミ拾いを手伝ってるおにーちゃんのお手伝いをしてる!」と言うので彼等彼女等は微笑まし気に俺に話しかけてくるのだ。
「そう言えばもう時期、精霊様が降臨なされる、とかだったわよね?」
「本当にいるのかしら?見たことが無いわ」
「町を綺麗にしてくれることは感謝してるが、この町を守護してくれる精霊なんてちょっと信じられないなぁ」
「爺さん婆さんの作り話だと俺は思ってるぜ」
精霊の話を聞いているとあの老人の言う通り、精霊の存在はあまり信用していないかされていない。話を聞かされているけれど空想上の作り話だと思わられているぐらいだ。それに対して子供達は猛抗議する。
「いるよ!絶対に!」
「いるー!」
大人のNPC達から「あまり子供達の言葉に真に受けるな」的な風に言葉を残されながらゴミ拾いを続ける。
「おにーちゃん、おにーちゃんも精霊様、いないと思ってる?」
「・・・・・」
不安そうに尋ねてくる子供達の純粋さを守りたい気持ちで答えた。
「いるもいないも、姿が見えなくても精霊様がいるこの町を見守ってくれているはずだ。だから、精霊様が怖いモンスターから守ってくれてありがとうって感謝しながら生きるのが大切だ」
「ありがとうってかんしゃを込めて?」
「ああ、感謝を込めてだ」
「わかった、僕、大人になっても毎日ありがとうって精霊様にかんしゃする!」
男の子がそう決意を秘めた言葉を言えば女の子も力強く同感だと頷く。
「よし、じゃあゴミを100個までもう少しだ。頑張ろう」
「ムー!」
「「おー!」」
意気揚々と子供達はさらに熱心にゴミを見つけ出してくれて、負けじと俺も見つけては子供達に食事を奢って探すことでオリジナルが帰ってくるまで続けた。
平日では分身体にゲームをして貰ってから、リアルで早くも7日目が経過した。その途中、不思議なことに称号とスキルを手に入れてしまった。最初にそれは4日前のことだ。
「・・・・・なんだこれ?」
なんか謎の草が生えていた。どうやら1マスだけ空いていたスペースにオルトが植えたらしい。
「・・・・・雑草?」
それはどう鑑定して見ても雑草としか表示されなかった。いやいや、何だこれ。花が付いているわけでもなく、バジルに似た緑の草が生えている。
「うーん。いったい何なんだろうな? 農耕スキルのレベル上げのために適当にそこら辺の草を植えてるだけなのか?」
品質が10という最高品質なのだが、雑草だしな。効果も何もないから、品質なんか何の意味もないし。扱いとしては石ころとかそういうのと同じカテゴリーなんだろう。
それにしても、見れば見る程バジルだな。というか、これってバジルじゃないか? そう思ったらバジルにしか見えなくなってきたぞ。
「ふむ」
俺は雑草を摘んで、口に含んでみた。毒があっても、これだけで死んだりはしないだろう。ゆっくりと咀嚼してみる。すると、俺は驚きのあまり一瞬固まってしまった。
「バジルじゃんこれ」
この雑草、味が完璧にバジルだったのだ。バジルは昔プランター栽培をしていたことがあるので間違いない。フレッシュバジルその物だ。俺は信じられないと手の中にある雑草を見つめる。
「バジル?どうして?雑草なのに?」
俺はそのまま畑の外に生える雑草を引き抜いてみた。見た目はオオイヌノフグリ的な感じだ。それをそのまま齧ってみるが・・・・・。
「まっずっ」
雑草だった。青臭いし苦いし舌がピリピリするし、とても食えた物じゃない。データとしては全く同じアイテムなのに。何でだ?
『アイテム、雑草を栽培、収穫しました。条件を達成し、スキルが【植物知識】を取得しました』
首を捻っていたら、何やらアナウンスが響いた。どうやら、オルトが雑草を育てたおかげで何かの条件を達成できたらしい。スキル一覧に目を通す。すると、解放されて24時間以内の証である★マークの付いたスキルが1つあった。
「植物知識?」
説明を見ても、この世界の植物についての知識としか書いていない。ただ、ここまでの流れで雑草を見分けるためのスキルなんだろうという事は想像できる。
「取得するためには必要ポイントが2か」
説明を見ても、全ての植物の詳細が表示されるとしか書いていない。ただ、ここまでの流れで雑草を見分けるためのスキルなんだろうという事は想像できる。よし、残してあるポイントを使うか。ポチポチとスキル【植物知識】を取得した瞬間に直ぐに結果が出た。おお、雑草が雑草じゃなくなったぞ。
名称:バジル
レア度:1 品質:★10
効果:なし。食用可能。
名前が分かるようになった。効果もなしだけだったのが、食用可能の文字が追加されている。本当にバジルだったな。興奮しつつ他の雑草も鑑定してみると、それぞれの雑草にきちんと名前があった。品質についてはほとんどが品質:6以上だな。バジルも生えていた。オルトがバジルの種をどこで手に入れたのか疑問だったが、始まりの町だったらそこらへんに生えているらしい。
さらに鑑定をしまくっていると、面白い雑草を見つけた。
名称:チューリップ
レア度:1 品質:7
効果:なし。観賞用。
観賞用の文字だ。まあ、見た目きれいだし。もしかして売ったりできるんだろうか? プレイヤーには見向きもされないかもしれないが、NPCに売れるのか? チューリップも育ててみるか? 俺は取りあえずアルトにチューリップを渡してみた。すると、アルトは花を俺に返し、球根を株分した。すると球根が2つに増える。株分け可能なようだった。
にしても効果がなければチューリップでも雑草扱いなのか。だが、味や香りがあるなら、料理などに利用できるかもしれない。チューリップなら花瓶に差して観賞するとか? これは調べる価値があるだろう。
「余裕があったら雑草も育ててみるか。とりあえず品質上げの試行錯誤とバジルとチューリップだ。農業ギルドのクエストの納品とギルドレベルもして・・・・・やることが多すぎるなぁ・・・・・・」
ピッポーン
久々に聴く2回目のアナウンスだった。ん?なんだ?
『おめでとうございます』
おお? なんか祝福された。また良い知らせか?
『初ログイン時から、一切の殺生を行わなかった死神ハーデスさんに、称号『不殺の冒険者』が授与されます』
「まじで? 称号だって?また新称号ゲットだな。しかし、不殺と書いてコロサズね」
頬に十字傷のある侍みたいな称号だな。しかし、どういう条件で称号を獲得できたんだ? アナウンスの言葉から考えると、ログインしてから何も殺してないっていうことが条件みたいだが・・・・・。どうしてこのタイミングなんだ?
初ログインから数えて、ログインしてるゲーム内時間の総計が96時間内で、モンスターや動物を殺さないことが、『不殺の冒険者』の獲得条件なのだろうかね。好きで殺しをしなかった訳じゃないんだけどな。思わぬ幸運だった。よし、詳しい情報を見てみよう。
称号:不殺の冒険者
効果:賞金3000G獲得。ステータスポイント4点獲得。スキル 手加減を獲得。
手加減:次に繰り出す攻撃、スキル、魔法、アイテムで、敵のHPを0にしない。
割といいスキルだなこれ。ジョブはテイマーだしテイムしやすくなるだろこの『不殺』のスキルは。あ、所持金10000G・・・・・。あのグレードが買えるじゃん!
「オルト、10000Gの畑が買えるぞ。―――金が無一文になるけどな!!」
「ムー!」
買ってください、お願いしますというオルトの懇願に足りなかった分はお手伝いクエストをして補い、辛うじて目標金額に達成したら念願の10000Gの畑を購入したのであった。
それから2日前―――。彷徨いながら町中歩いてどこを探しても、あと5つが見つからない時だった。面白い店を見つけたのだ。
「あの、ここって昨日もありました?」
「そりゃあ勿論だ! 創業から20年。一日も休んだことはねーよ!」
それは中央広場から東区へと延びる大通りから、一歩入った路地にあった。この通りは何度か通っているし、絶対にこんな店なかったはずなんだが。
それは色とりどりの花を売る花屋だった。一本から買う事が可能で、ブーケや花束なども売っている。俺は興味津々で店の中を覗いてみた。
「おおー凄いな」
花屋には切り花だけではなく、鉢植えやドライフラワー、さらにはポプリや押し花などの加工品まで置いてあった。とにかく花全般を売っているらしい。店先の花をいくつか鑑定してみる。
名称:コスモス
レア度:1 品質:★7
効果:なし。観賞用。
これ以外にもサルビアやカーネーションが売られているが、名前の表記以外はすべて同じだった。だが、分かったぞ。多分、この店を発見できたのは植物知識のおかげだ。このスキルが無ければ雑草を売っているだけの店だからな、入る事さえ出来ないんだろう。まさかこんな店があるなんて。次はポプリを鑑定してみる。
名称:ポプリ(ラーベンダ)
レア度:1 品質:★5
効果:なし。小物。
小物ってカテゴリーがあるのか。軽く嗅いでみると、ラベンダーの匂いがする。目に見えた効果はなくても、これは面白そうだ。
それに、ハーブ系の匂いを利用できるなら、調合や錬金に雑草を利用することもできるかもしれない。これはぜひ他の小物も見てみなくては。
「何か生産のヒントになるものがあるかもしれないし」
俺は発見した花屋を見て回っていた。
店には10種類近い花と、それを使った小物などが置いてある。
「これは押し花か? しかも栞に加工してある」
名称:押し花の栞・コスモス
レア度:1 品質:★4
効果:なし。小物。
ポプリと違って香りもないし、本当に観賞用だな。一応栞になってるけど、本なんかないから使い道ないし。
「いや、本当にないか?」
他のゲームだと、図書館に行って本を読まないとレシピやスキルが手に入らないという設定がある場合もあるが、このゲームに図書館はない――と思ってたんだが。この栞を見たらもしかしてと思ってしまうな。
始まりの町に無いだけで、先に進むとあるんだろうか? でも言語系のスキルはないんだよな。俺が取得条件を満たしてないだけなんだろうか。
「とりあえずポプリと栞は1つずつ買っておこうかな」
合わせて300Gだし、安い物だ。一応、使い道が無いか店の人に聞いておこう。
「すみません。これって、効果なしとはどうしてですかね?」
俺の言葉を聞いて、店の人は俺を見て納得した風な顔で頷いた。
「ああ、お前さん異界の冒険者か? そういえば異界の冒険者は全員が鑑定スキルを持ってるんだったな」
「そうなんですよ」
「効果と言われてもな。見て心が和むとか、人に贈ると喜ばれるとか、そんな感じだな」
本当に普通の花や小物扱いらしい。
「じゃあ、逆に花を買ったりもしてくれるんですか?」
「ああ? お前さん、花を育ててるのか?」
「今はチューリップを少しだけですけど」
「この町じゃチューリップは人気がねーんだよな。一応、1本10Gで買い取ってるが」
安い。メチャクチャ安いぞ。これだったら料理に使える可能性があるバジルルを栽培する方がいい。
「なあ、花を育ててるんなら、これを栽培できないか?」
「ん?これは・・・・・」
「ワイルドストロベリーの種だ」
「え? イチゴ?」
「イチゴの野生種だな。味は全然良くないが、香りがいいからお茶に入れたりするんだ。うちはハーブは取り扱ってないが、これだけは俺が好きで仕入れてたんだ。だが採取してた婆さんが病気で引退しちまってな。栽培してくれたら20Gで買うぜ」
「ご自分では栽培しないんですか? 難しいとか?」
「いや、農耕持ちなら簡単だぞ。ただ、野菜よりも優先する奴がいないってだけで。おれが育てないのは単純にスキルが無いからだ。で、どうだい?」
納品クエスト
内容:ワイルドストロベリーを栽培し、その実を10個納品する
報酬:200G、ミントの種
期限:なし
安い。言葉通り1つ20Gでの納品だ。だが、俺は受けることにした。そもそもギルドを通さないクエストなんて初めて見たし。住人からのお願いなら受けておいた方が良さそうな気もする。
それに報酬のミントの種も気になった。多分効果はないのだろうが、新たなハーブだしね。バジルとミントがあったら、色々幅も広がりそうだ。
「受けます」
「そうか! よろしく頼むぜ!」
こうして俺は、ワイルドストロベリーの種を5つ手に入れてオルトにクエスト用の種を渡してゴミ拾い活動を再開。最終日に100個のゴミ集めがクエスト達成条件を達成する。時間は結構ギリギリだ。あと10分もせずに、日は完全に落ちるだろう。
「ひゃっこめのゴミ見つけたね!」
「これで町がまた綺麗になったね!」
「二人のがんばりがあって助かったよ。ありがとう」
「「えへへー」」
頭を撫でられて嬉しそうに笑う子供達。そう言えば名前を聞いていないな。そう思い改めて名前を聞こうとしたら、1週間ぶりに会う老人が大通りの向こうから歩いてきた。
「おお、若いの。儂の孫達と集めてくれたようじゃな。迷惑を掛けんかったかの」
「親族だったのか。迷惑どころか一人で集めるつもりが、何だか手伝わせて申し訳ない思いだよ」
「いやいや、儂の代わりに相手をしてもらっただけでもありがたい。この子達に簡単でもまだ幼い子供じゃ、怪我をさせたくなかったからのぉ」
話し合いながら背負子を下ろして老人に100個のゴミを確認してもらう。
「ふむ、これぐらい集めれば町も綺麗になったじゃろう。精霊様もきっと喜んでくださる筈じゃ」
「精霊様会える?」
「おじいちゃん、精霊様会える?」
「うむ、きっと会えるとも。儂も会って見たくて仕方がないのじゃ。何せ100年に一度―――」
辺りが暗くなった。日が完全に落ちたからだ。太陽の代わりに町はともる街灯で明かりを確保していき、食らい町中でも歩きやすくなった。しかし、それ以上の光量が広場から発せられた。何事だと思っていると、老人が俺に伝えてきた。
「すまぬ若いの。一足早く儂は広場に行くぞ!」
「え?」
あの足が悪かったんじゃないの?と俺が呆けるぐらい老人が陸上選手顔負けの速さで走っていった。老人、あんた何者?子供達も精霊様に会えると俺の手を引っ張って広場へと向かおうとする。
広場ではプレイヤーもNPCも関係なく大勢の人間が眩い光を放つ巨大樹の前に集い見上げていた。何かのイベントの前触れかと佇んで見つめているとカッ!と閃光が一点から迸り、次に光とともに姿を現す絶世の美女。ウェーブが掛かった緑色のロングストレートヘア、透明感が高い淡い黄緑色のドレスで身に包み身長は150cmほどの女性が空中に浮きながら最初に微笑んだ。
『初めまして。私はこの町を守護する大樹の精霊です』
NPC達がざわめきだす。神秘的な登場をした精霊に驚きを隠せれない俺達プレイヤーも唖然としていた。
『この度は、異界から来訪せし者達が現れて丁度一週間となりました。この町を守護する者として皆さんの行動をずっと見守っておりました。その中で町に貢献した者に贈り物を授けようと100年の一度の眠りから目を覚ましたのです』
町に貢献した者ね。ま、ゴミ拾い程度で貢献度は高くはないだろ―――と思っていたら、大樹の精霊が夜天にむかって手を掲げたかと思えば、手の平に浮かぶ球体が複数散らばるように弾け飛び、その一つが俺の胸に飛んできた。
「・・・・・卵?」
「ムー?」
何故精霊から卵を貰うことになったんだ?他にも貰った人は何だったんだ?と素朴な疑問を抱いていると頭の中で音声が流れた。
『おめでとうございます。大樹の精霊から報酬としてモンスターの卵をプレゼントされました。卵をテイムしますか?』
色々尽きない疑問の中でテイムをすることにした。
『卵を【テイム】しました』
「え、これで?あ、精霊が消えていく」
何か話をしていたかもしれないが聞き逃した俺はもう一度訊き返すことも知る術もない。一体何だったんだろうと首をかしげる。周囲の奇異な視線を一身に浴びて。
「おにーちゃんおにーちゃん!」
「精霊様、本当にいた!いたよ!」
そんな視線に気にならないほど興奮を覚えている子供達がピョンピョン飛び跳ねて喜んでいた。
「これで大人達も信じるようになるな。良かったな」
「うん、おにーちゃんも信じてくれてありがとう!」
「お礼にこれ、あげる!」
笑顔を浮かべる女の子から手渡された用途不明の黒い鍵。
「この間、おじいちゃんの手伝いを内緒でしていた時に見つけたんだ」
「どこに開けるのか分からないけど、きっとおにーちゃんが喜ぶかも!」
最後に「精霊様に会わせてくれてありがとう!」と言葉を残して人混みに紛れて去ってしまった。急に一人ぼっちになって何とも言えないこの虚空は、やはり寂しいものだなぁ・・・・・。
【運営】
「開始してから一ヵ月も経たずにあのイベと発生させるとはな」
「始まりの町に住む総計NPC十人以上のお助けクエストをしないと発生しないからな」
「さらに発動キーはゴミ拾いだ。普通のプレイヤーだったら誰もやろうとはしないだろ。リアルで一週間も町から出られず縛られる上、実入りが全くない善意でやらなきゃこんなに早く精霊イベントは発生しなかった」
「精霊から享けた卵の中身は?」
「ランダムだ。どんなスキルを持ってるのかもランダムで決まって、管理している俺達にもわからん」
「完全に博打だな」
精霊から卵を貰い子供達と別れ、今は夜ということもあって一応人目を気にしつつ、コソコソと水路に降りる。そして、できるだけ水音をたてないように、橋の下に入り込んだ。卵を抱えたままで。
「夜だと全然見えないな。えーと、確かこの辺のはずだよな」
俺の中でこの鍵が使えそうな場所は一つだけ。なので物は試しにと思い実行する。ただ、鍵穴は全然見えないな。手探りで鍵穴を探して、鍵を突っ込んでみる。
ガチャカチャ。
「んーやっぱりダメか?」
カチャ――ガチャン。
「開いたか」
呆気にとられる俺の前で、扉がギィーッという音とともに、ゆっくりと開いた。
「あーランタンが欲しい」
夜に来たことをちょっと後悔した。超絶不気味だったのだ。幽霊でもでそうな雰囲気である。奈落の底のように扉の奥は暗すぎるんだ。
「ま、行ってみるか」
町の地下にモンスターがいる筈もないだろうと高を括り中に侵入する。扉の向こうは下りの階段になっていた。俺はゆっくりと足を踏み入れる。壁には等間隔でランプのようなものが壁に備え付けられており、何とか見渡すことができる。
どれほど下っただろうか。長く感じるし短く感じる階段のその先は小部屋になっていた。
「まだ先があるか」
先に進んでみると、通路が二股に分かれていた。どっちに行くか。とりあえず右に行ってみよう。暫く続く長い通路を進むと、先には扉があった。とりあえず開けてみると、ほとんど抵抗もなくスッと開いてしまった。
「何があるか、何が出るのか・・・・・」
入る前にそっと覗いて中をチェックする。そこは妙な部屋だった。まず目に入るのは、巨大な根っこだ。1本1本がドラム缶くらいの太さがある木の根が絡み合い、部屋の半分ほどを覆っている。そして、その根に囲まれるようにして、祭壇のようなものが鎮座していた。
「ボスはいないみたいだな」
警戒して、足を踏み入れる。入ってみると分かるが、そこは清々しい空気が満ちていて、とてもモンスターが出てくるような雰囲気ではなかった。
「この祭壇は何だろうな?」
イベント臭がプンプンだ。
「このデカイ根は、上の水臨大樹の根だと思うんだよな」
「その通りです」
「誰だ?」
「ここです、冒険者よ」
俺の呼びかけに応えたのは、祭壇からフワッと浮かび上がった、光に包まれた美女だった。というか精霊様だった。
「精霊様か?」
「はい、わたしは大樹の精霊です。先ほどぶりですね」
しかも覚えられていた。俺は軽い興奮を覚え、思わずスクショを撮った。そうだ、動画も撮っておこう。こっちが動画を撮っていることはNPCには伝わらないっていう話だったが、本当らしい。精霊様には特に変化はなかった。
「勝手に入り込んでよかったか?」
「良いのです。昔は、誰でもこの祭壇にやってきて、供え物を置いていったものです」
「へえ、そうなんだ」
「その代りに私は祝福を与え、互いに必要としあう良い関係が続いていました」
懐かしそうに語る精霊。しかし、直ぐに悲しげな顔になってしまった。
「しかし、その昔私を害そうとした愚か者がいたため、私はこの町の人々に頼み、扉を付けてもらったのです。入る者を制限するために」
「え、じゃあ、俺が入ったのは?」
「自らの力で鍵を手に入れ、辿り着いた者であれば問題ありません。鍵は邪悪な者には触れることもできないようになっていますから」
「え、これってそんな凄い鍵だったんだ」
「魔導の力によって生み出された物だそうです。あの扉も、同様に魔法の力が込められています」
そういう設定か。知らなかったとは子供達、グッジョブ。
「御供え物をしたら、祝福を授けてもらえるのか?」
「はい、供え物によって、与える祝福は違いますが」
どうしよう、精霊の祝福気になる。ただ、ろくなものを持ってないんだよな。
「あ、そうだ御供え物って、毎日できる?」
「私は毎週『木の日』にだけ、降臨することができます」
なるほど、木の精霊だけに、木の日にだけ現れるのか。リアルの今日は木曜日。つまり木の日となっている。いや、俺ってばラッキーだったな。
「そして、一度祝福を与えられたら、8週後までは祝福を得ることはできません」
「そうですか」
それじゃあ、実験で変な物を供えてみるとかも無理じゃないか。一度戻って、何か御供え物になりそうなものを手に入れてくる時間はない。
「何かなかったっけ、えーと・・・」
何をもって良い供え物とするのか。そもそも木の精霊が貰って喜ぶものって何だろう。
しばらく考えて、思い出した。そうだ、アレあるじゃないか。これなら、木の精霊も満足してくれるんじゃないだろうか?でもなぁ・・・・・。・・・・・うーん・・・・・気になるしやむを得ない。
「これとか、お供えできる?」
卵を抱えていた片方の手で黄金の林檎を選んでお供えする。
「これは良い物です。あなたのお心遣いに感謝を。代わりに、祝福を授けましょう。これをお持ちなさい」
俺の思っていた祝福と違った。スキルとか、ステータスアップとか、あわよくば称号とか期待してたのに。アイテムだった。その名前は―――。
名称:巨大樹の苗
名前はこれだけ、詳細はこれだけ・・・・・もっと詳しく!
「ありがとうございます」
「あなたに幸運がありますように」
《水臨大樹の精霊の祭壇が特殊解放されました。最初に到達したプレイヤーに、称号『大樹の精霊の加護』が授与されます》
『また死神ハーデスさんにはボーナスとして、火結晶、水結晶、土結晶、風結晶を贈呈します』
いや、称号も貰えたわ。しかもユニーク称号。さらにレアっぽいアイテムも! ありがとうございます精霊様!
称号:大樹の精霊の加護
効果:賞金5000G獲得。ボーナスポイント4点獲得。樹木系、精霊系モンスターとの戦闘の際に与ダメージ上昇、被ダメージ減少。さらに大樹の精霊の好感度が一定値満たしましたのでスキル【幸運】を取得する。
本当に幸運があったよ精霊さーん!
でもってえっと【幸運】はなんだ?『全ての確率が上方修正される』・・・?
つまり成功しやすさと失敗しにくいのが増えたり減ったりするってことか?
これ、生産職のプレイヤー向けなんじゃないか?あ、満足そうな顔で消えていった。もう少し聞きたいことあったんだけど。まぁ、いなくなってしまったならしょうがない。地上へ戻ろう。あ、その前にここに来る前にもう一つの道にも行ってみよ。
「・・・・・なんだアレ」
精霊の祭壇に続く同じ扉をもう一つ見つけて軽く開いて隙間から覗いて述べた感想だった。
何でだって?そりゃあ・・・・・。
「ふふ、100年振りの久しぶりのお供え物は黄金の林檎なんて嬉しいです♪私、これが大好物なんですよねぇ。んー、美味しい!早く次の8週にならないですかねー」
後ろ姿ではあるが間違いなく精霊が卓袱台の前に腰を落としてシャクシャクとお供えした林檎を食べていた。よく見れば卓袱台は炬燵であり、周囲を見回すと人間が住んでいるような生活空間を作っている家具や本も壁際に置かれていて、ここで暮らしているのだと窺わせる精霊の姿を見た俺は、そっと静かに扉を閉めた時だった。
『おめでとうございます。初ログインからモンスターを倒さずレベルも1のまま一週間プレイした死神ハーデス様に称号と報酬をプレゼントいたします』
・・・・・・微妙に嬉しくないんだが。まぁ、貰えるものは貰おうか。今度はどんな称号と効果なんだろうな?
称号:出遅れた者。
取得条件 一週間レベル1の状態で始まりの町を過ごす。
効果 レベルアップ時のステータスポイント取得量が3倍。
運営からの報酬:賞金10000G(ガンバレー!by運営♪)経験値 スキル熟練度UPスクロール×3
ブチ切れていいかな。握り拳を作って運営に対する怒りを覚え。
《運営からのお知らせです》
そう思っていたらアナウンスが流れだした。
《正式サービス開始から、ゲーム内で1週間が経過いたしました。沢山のプレイヤーの皆様に、ログインしていただき、ありがとうございました》
運営からのお知らせだった。同時にメールも届いている。内容はモニタと同じ映像データだ。
《特に積極的に行動をしてくれたプレイヤーを対象に、特別報酬が授与されます》
へー。そんなこと告知されてなかったと思うけど。シークレットイベントってことか。面白いな。まあ、俺には関係ないか。どうせβテスターがもらうことになるだろうし。
《まずは、総移動距離の最も多かったプレイヤーに「冒険者」の称号が送られます》
外へ出て水路の梯子に登って町に戻ると、周囲のプレイヤー達のおおーというため息が広場全体から漏れた。称号とは、特定のクエストや、行動を行ったものに与えられるもので、取得には結構苦労するらしい。大抵の称号にはスキルやステータス上昇などの特典があり、序盤で称号をもらえるとなると結構な大盤振る舞いだ。・・・・・既に俺は持ってるけどな。
しかもこれはシークレットイベントでもらえる、かなりレアな称号。下手したら今後同じ称号はもらうことができないユニーク称号になる可能性も高い。そのため、誰もが興奮の面持ちでモニタを見つめている。
《対象者の総移動距離、51.6Km。獲得者の特徴を取って、『紫髪の冒険者』の称号が授与されます》
50kmか。多いのかどうか、いまいち分からんな。周辺のプレイヤーのささやきを盗み聞いたところ、騎乗系スキルを持ったプレイヤーに違いないという事だった。なるほどね。
《次に、総獲得アイテム数の多かったプレイヤーに「探索者」の称号が送られます》
移動距離に、獲得アイテム数か。どっちも俺には関係ない。
《対象者の取得アイテム数は91。獲得者の特徴を取って、『紅玉の探索者』の称号が授与されます》
髪が赤いのかな? まあ、序盤でこれだけ活躍してればその内有名になるだろうし、その時判明するか。
《最後に称号の獲得が多かったプレイヤーに「先駆者」の称号が送られます》
称号の獲得?
《対象者の獲得数は4。獲得者の特徴を取って、『白銀の先駆者』の称号が授与されます》
ピッポーン
『称号「白銀の先駆者」を獲得しました』
シロガネノセンクシャ? はい俺でした。称号を確認してみる。新たに称号という欄がステータスに追加されていた。
称号:白銀の先駆者
効果:賞金4000G獲得。ステータスポイント2点獲得。スキル 逃げ足を取得しました。
逃げ足・・・・・?
【逃げ足】 モンスターまたはプレイヤーから逃走時が成功しやすくなる。
溜息が出た。・・・・・・これAGIがないとダメな奴じゃん。
「・・・・・あ、賞金貰えたし苗も貰ったし。これ高級肥料を買ってオルトに植えてもらおう」
勿論うちのオルトは俺の腕の中に納まっているその2つを見て大喜びしたのは言うまでもなかった。
―――翌日。学校から戻り燕と夕餉を過ごしながら談笑、入浴後はNWOを起動してゲームの世界に飛び込むと直ぐにレベル上げに精を出した。森に入り【挑発】で誘き寄せた周囲のモンスター達を見まわして悪い笑みを浮かべた。
「じゃあ、早速俺の為に糧となってもらおうか?」
ビクッ!とモンスター達が怯えた気がしたのはきっと気のせいだと思う。攻撃力が低い短刀や盾を使って苦労しながらもモンスター達を蹂躙した。全てのモンスターを倒し終えるといつの間にか、数多のモンスターのドロップアイテムや装飾品の銀色の指輪、様々な物がドロップしていたことに気づくと同時にレベルアップの報せとまたスキルが増えたのだった。
『レベルが11に上がりました』
フォレストクインビーの指輪【レア】
【VIT +6】
自動回復:10分で最大HPの一割回復。
「おおおお!これは凄い。HP回復!またレアなものを手に入れてしまったってことは運が良かったのかな?」
MPが初期値な上、魔法を一つも取得していない俺にとってHP回復は貴重である。さらについでに付いている【VIT +6】が地味に大きいのだ。【絶対防御】持ちの俺にとってそれはVIT+12ということだからである。
それを最初から着けていたグローブを外して付ける。グローブは装備品では無い唯のオシャレアイテムなので指輪の上から着け直す。あとレベルアップもしたからステータスポイントも一気に増えてるこれを全部VITに使ってっと。ん、これでVITは134になったな。
続いて新スキルの情報を確認する。
【極悪非道】
相手の攻撃をわざと受ける度に【VIT +1】
ただし効果はスキル発動から一日の間。
上限は【VIT +25】
取得条件
倒すことの出来る相手の攻撃をわざと受け続ける時間が一定値を超えること。
かつ、それまでに一度もデスペナルティを受けていないこと。
【シールドアタック】
盾で攻撃する。威力はSTR依存。ノックバック効果小。
取得条件
盾での攻撃でモンスターに十五回止めを刺すこと。
【
HP、MP以外のステータスのうち四つ以上が戦闘相手よりも低い値の時にHP、MP以外のステータスが二倍になる。
取得条件
HP、MP以外のステータスのうち、四つ以上が戦闘相手であるモンスターの半分以下のプレイヤーが、単独で対象のモンスターを討伐すること。
「うん、大体発動する。俺のステータスは0が四つだから・・・・・うん?じゃあ戦闘するときは殆どずっと二倍が掛かるってことだよな?てことは絶対防御の効果も合わせてVITは・・・・・四倍?」
す、凄いんじゃこれ・・・・・それにステータスポイントは偶数になると5ポイント、毎10レベルごとに10ポイントだから30ポイント手に入れられることは燕から把握しているが・・・・・。『レベルアップ時のステータスポイント取得量が3倍』の俺だと、偶数時の5ポイントが15ポイント得られ、十の倍数の時はステータスポイントがいつもの二倍貰える時は30ポイント。レベルが五回、毎10レベルも上がる時に得るステータスポイントは総計―――90も得られるプレイヤーは絶対に俺しかいないだろこれ!!!
死神・ハーデス
LV11
HP 40/40
MP 12/12
【STR 0〈+9〉】
【VIT 130〈+34〉】
【AGI 0】
【DEX 0】
【INT 0】
装備
頭 【空欄】
体 【空欄】
右手 【初心者の短刀】
左手 【初心者の大盾】
足 【空欄】
靴 【空欄】
装飾品 【フォレストクインビーの指輪】
【空欄】
【空欄】
称号:万に通じる者 不殺の冒険者 出遅れた者 大樹の精霊の加護 白銀の先駆者
スキル
【絶対防御】【テイム】【幸運】【手加減】【逃げ足】【
だけど、全てのポイントを考えなしに注ぎ込むのは愚の直行だろう。ポイントの使い道は他にもあるんだしな。それは主に生産系のスキルは戦闘系のスキルよりもレベルの上限が高いからだ。行動で熟練度を高める戦闘系スキルと違って、生産系のスキルは行動以外にもステータスポイントでレベルを上げることができるみたいだそうだ。その他にもポイントでしかスキルを取得できないものもある話だし。
ということでステータスポイントの90の内の30は防御に振って残りは生産系だな。錬金術とかもあるんだし、そっちの方面でも楽しみたいからな。取り敢えず使わずに残した60を・・・・・おっと、称号の報酬でもらったポイントの10も使えるな。ふははは!!!
【運営side】
「なぁ、このプレイヤーおかしすぎだろ?1週間でスキルを8つも取得する上に称号4つも手に入れたぞ。現在進行形、生産系スキルを取得しているし」
「『出遅れた者』の称号を手に入れた時点で目に見えたよ」
「メインが重戦士の大盾使い、ジョブがテイマーのプレイヤーか。タンク役としては申し分ないけどβテストじゃ攻撃が低い理由であまり人気がないはず。テイマーもサモナーに比べて人気が無い」
「人気のない職業を知らずに選んでしまったんですね。でもま、他の職業も選べて遊べれるからお試しプレイでしょうかね」
「ところでさ、このプレイヤーの顏。誰かに似てないか?」
「誰にだよ?」
「いや、気のせいだと思うけど中央区の王様にさ」
「いやいや、そんなわけないだろ?このゲームに参加していようと不思議じゃない方だが、ここまでぶっ飛んだプレイをする人じゃない。世の中顔が似ているだけの人間はいるんだ」
「それに仮にそうだとしても、このゲームの称号とスキルや魔法の取得方法を知っているはずがない。寧ろ教えようとすると『そんなつまらないことを聞きたくねぇ』と呆れて言い返すぞ」
「うーん、それもそうか。でも、目が離せないプレイヤーなのは確定だ」
「だな。こういうプレイヤーがいるから俺達運営も盛り上がる」
「今後も見守ってやろうぜ」
「くしゅんっ!・・・・・ゲームの中でもくしゃみ出るのか。リアルを追求しすぎじゃないか?」
最初にいた町―――始まりの町へ戻った頃にはすっかり暗く夜の時間帯となっていた。ゲームの世界は朝いたプレイヤー達の数もそれなりに増えてログインしてるようだ。ゲーム世界の一時間は現実世界の時間と同じだ。夕食を食べているか明日仕事の人は就眠している頃だろう。ただしそれは規則正しい生活をしている大人の話だ。廃人ゲーマーはその限りではない。
「今度はクエストをしてみるかな。攻撃力が低すぎて中々倒せれないけど(涙)」
戦闘時だけSTRとAGIが付加した装飾品を装着できれば楽になるんだがな・・・・・。ま、今日はここでにしよう。あいつらには先にログアウトしてるとメッセージを送ってっと。
翌日―――。
ハードの電源を入れて電脳世界へダイブし二日連続でVRMMORPGを始めると、直ぐに行動を取った。昨日の考え通りにクエストを受けて報酬を貰おう。
「うーん・・・・・」
掲示板を見た限り色んなクエストがある。他のプレイヤーがクエストしていても同じクエストを受けれるみたいだか制限付きだ。毎日ランダムでレベルごとに違うクエストがあれば、パーティーを募集してるのがあり生産職を目指そうとしているプレイヤーが求める素材集めなど、様々なクエストがあるな。
「NPCのクエストを探してみよ」
掲示板にはない特殊なクエストとして運営が用意したもの。他のプレイヤーも周知だろうハードに付属されていた説明書もとい簡単な攻略情報を読めばNPCに最新式のAIを搭載されていて、なんと状況に合わせてNPCが自動でクエストを依頼してくるのだそうな。プレイヤーの行動によってゲーム内の経済の流通ルートが変わったり、国家間のバランスが変化するとかどうとか。
「あそこの武器屋。何なんだ?何時になったら開くんだよ」
「この町の武器屋は複数あるけど閉まってるのはあそこぐらいしかないんだろ?まあ別に気にしなくていいだろ」
他のプレイヤーの会話を耳にし、自然と足が動いて向かった先が―――堅く戸締りしている、燃え盛る炎を切り取った背景に交差した剣と槍に盾のシンボルの看板が掛かっている店。マップで確認してもここが武器屋であることが表示されている。だというのに開店していないのはおかしい。心の中で首を傾げ、店の裏手に続く狭い路地裏へ身体を潜らせて進み出た。だけど誰もいない。辺りを見回し武器屋の裏口を視界に入れてノックしてみると。
「・・・・・」
しばらくして赤髪で青瞳の青年が怪訝な目つきをした。
「誰だお前」
「突然の訪問で申し訳ない。武器屋が開いていない話を聞いてな。何か訳があるのかと思って尋ねに来たんだ。この店の店主か?」
「お前には関係のない話だ。さっさと帰れ」
「もし違うならこの店の店主が不在なのと関係があるんじゃないのか?もしよければお前の店主を探しに行くが」
ぶっきらぼうに言い返されても気にせずそう話を持ち掛けると、NPCは俺の装備をチラリと一瞥した。
「・・・・・その装備を見たところ、お前は大盾使いの冒険者か」
「ああそうだ。そろそろ新しい装備に変えたいと思っていたところだ」
「・・・・・お前の実力は、外のモンスターをどれだけ倒せれる」
「んと、これで証明にならないか?」
フォレストクインビーの指輪をグローブを外して見せると、青年は軽く目を張った。
「・・・・・中に入れ」
店の中へ招き入れられる。窓を閉ざして真っ暗で足元がよく見えない。青年は窓を開けて日の光を見せの中に差し込ませて明るくしていった。今いる場所は鍛冶をするための工房だったことがようやく気付く。青年は燃え盛っていない炉を見つめ、口を開いた。
「見ての通り店は閉店しているんだ。俺はまだ見習いだから師匠の下で修業している」
「休業中って感じじゃなさそうだな」
「鍛冶をするためには鉱物が必要不可欠なんだ。だから師匠は不足した素材を採取するためにいつも遠出しに行く。何時もなら二日三日で何時も帰ってくるんだが、師匠はまだ帰ってこないんだ。もう一週間も経つ」
「遠出する場所にモンスターが?」
「ああ、強いモンスターがいる。だから安全と思われている鍛冶は思っている以上に命懸けなんだ」
拳を硬く握り締め、無力な己を悔しがる表情で歯を噛みしめる。
「見習いの俺が店を開いて未熟な武器を打つわけにはいかねぇ。そんなことしたら師匠の拳骨が吹っ飛んでくるんだから」
「・・・・・痛そうだな」
「ああ、メチャクチャいてぇぜ。でもよ、師匠を憧れて鍛冶師になろうと決意した
確固たる堅く強い意志の炎を瞳の奥でチラつかせる青年。その気持ちはとても好意的になり、いつの間にか俺は笑っていた。
「その気持ちをずっと捨てなければ、きっと師匠も認める凄い鍛冶師になれると信じてるぜ。だからこれからも頑張れ」
「・・・・・何だか小恥ずかしい話をしちまったな。初めて会ったやつにそんなこと言われたのは初めてだからよ」
「初心だな」
「うっせ。―――師匠の事、頼めれるか。フォレストクインビーを倒したなら多分、あのモンスターをも倒せるかもしれない」
あのモンスターと言われてもピンとこない俺に青年は真摯に教えてくれた。
「毒のモンスターで溢れている迷宮の奥に潜む
ヴォンと青いパネルが空中に浮かぶ。NPCからのクエスト要請が発生した証だ。迷いなくYESとNOからYESを選んで押して受託する。
「師匠はしぶとさが自慢だと言ってたが毒を受けているとしたら、流石の師匠も命が危ういかもしれない。これも持っていってくれ。毒耐性のポーションと回復のポーションだ」
黄色の液体と緑の液体が詰まったガラス製のフラスコを受け取った。
「師匠は東の山にある迷宮にいるはずだ。どうか師匠を頼む」
「任せてくれ」
自前のポーションを用意しなくちゃならないだろうな、実行はその後だ。
初めてのクエストを受けた。失敗はしたくないからありったけのポーションを買う。HPはたったの40のままだから最下級のポーションでも十分に間に合ってしまう。ふっ・・・・・悲しい話だな。でもまあ巨大蜂の指輪に加えて【瞑想】もあるのだ。回復に余念がない。が、ダメージを受けるような状況になった時点で圧倒的不利なのは間違いない。毒耐性を得ていても無効化できてるわけじゃないからな。準備を整えてダンジョンへと向かう。目指す場所は青年がもたらした情報、プレイヤーの間では未だ未発見の【毒竜の迷宮】だ。
「【毒耐性中】を進化させるのにとっておきのダンジョンだな。【毒無効化】があるなら是非ともしておきたい」
いざダンジョンへと鼻歌をしながら町から飛び出した。
穏やかな気候の中で森とは逆方向へとてくてく歩く。ここがゲームの外で、大盾と短刀を持っていなければ、遠足に向かっているようにしか見えない気楽な行進だろうな。それでも道中で何度かモンスターに襲われたが、ノーダメージのため倒すこともなくスルーしていく。この辺りのモンスターは森のモンスターよりも頭が良いようで、攻撃が通らないとなるとさっと行動を切り替えて去っていった。うん、普通これが本来取るべき行動の筈だ。とモンスターを見送りそうして歩いていくと、次第に周りの木々が枯れて、地面はひび割れ荒れて風景が寂れていくことに気が付いた。さらには、ぽこぽこと音を立てる沼が地面にいくつも発見できた。そうして歩くことさらに十分。
「あれがそうか?」
地面が一部隆起してぽっかりと口を開けているのが見えた。その中へと入っていくと、中は思っていたよりも天井が高く、大盾もちゃんと構えることできるぐらいだった。奥へと進んでいくと毒々しい色のスライムや蜥蜴が壁や地面を這って突撃してきた。
「スライム、可愛くねっ」
半透明の体の中を漂うように動き回ってる核を壊せれば倒せるギミックなんだろうけど、うーん・・・・・。
うん、無視しよう。戦う時間が惜しい。毒に関しては【毒耐性中】だから毒攻撃もすべてノーダメージ。師匠を助ける邪魔にすらならない。そう決め込んだ俺はそうして奥へ奥へと進んでいく。毒をテーマにしたこのダンジョンには、あちらこちらに毒々しいモンスターがいたり、ギミックがあったりした。
それからもダンジョンを進んでいくと少し開けた場所に出た。今まで進んできたところが通路だったとすれば、この開けた場所は部屋といった感じだ。そしてその部屋の中心では草花が生き生きとした緑をアピールしていた。薄い紫色の小さな花弁がひらひらと揺れているのが俺の目に映る。
「毒の花なんだろうけど、採取できるなら」
花の近くまで行くと、しゃがみこんで花の根から抜こうとした。すると紫色の花びらがつぼみのように丸まって、紫色の霧を噴き出した。更に連鎖するように、周りの花も毒々しい霧を噴き出し始める。
「やっぱり罠かよ。でも―――!」
ブチリと手の中でそんな感触をした瞬間。青いパネルが『ヴェノムフラワー』と空中に表示した。
「GETだぜ!」
林檎の時もそうだったから手に入れれると思ったが当たりだったな。今度もう一度来て採取しよう。インベントリに仕舞い立ち上がって部屋を後にする。部屋から繋がる通路を随分歩いたら次に開けた場所を見つけて目にしたのは、いかにも毒がありそうな紫色の沼である。ぽこぽこと音を立ててガスが沼の奥から上がっていた。
「これも採取できそうだけど後回しだ」
そう言って無視して通り過ぎようとしたとき、視界の端で独沼から何かが飛び出してきた。持ち前の反射力で130〈+34〉×四倍のVITの裏拳で叩き落とした。不意に気付く。
「あ、反射能力はリアルに反映されるのか。これは僥倖だな」
叩き落とした何か―――視線を下に落とす。すると跳ねた魚の姿を捉えた。トビウオ?てか、この独沼は魚が泳げるぐらい底が深いのか?危ねぇ・・・・・。毒沼に気を付けて先へと進もう。
モンスターやトラップを掻い潜り、スライムを無視しながらもついに辿り着いた最深部。ここまで来て師匠らしき人物は見なかったが、やっぱりこの先か―――?と見つめる目の前には俺の背丈の三倍はある大きな扉。俺は装備を解除してから両開きのその扉を力を込めて開ける。ギギギと油の切れたような嫌な音を発しながら扉が開き切り、部屋の全貌が明らかになる。あちらこちらに独沼があり、薄く紫がかった気体で満たされている。警戒して入ったと同時。後ろの扉が勢いよく閉まった。
「っ!」
部屋の奥で壁に背中を預けるようにプレイヤー以外訪れるはずがないNPCがいた。青年の師匠らしき者は巌のような巨躯で二メートルは優に超えた筋骨隆々の赤髪の男だ。頭を垂らしてぐったりと動かない。危険な状況かもしれない。今すぐ駆け出してポーションを飲ませたやりたいところだが、
「そう問屋は卸してくれないか」
独沼から竜が姿を現した。。しかし、それはただの竜ではなかった。ところどころ溶けて骨が見えている腐り落ちたような体。長く伸びる三本の首。六つの赤い眼球。竜が咆哮し、紫色の霧が散る。毒沼に浸る腐竜は道中のモンスターなどとは比べ物にならない存在感を放っていた。
「う・・・・・誰か、いるのか・・・・・?」
項垂れたまま、掠れた声が師匠から聞こえてきた。
「生きているか、鍛冶屋の師匠!」
「・・・・・誰だか知らないが、逃げろ・・・・・こいつの毒は・・・命が幾つあっても足りねぇ」
「師匠を助ける約束した以上は助けてやるからもうちっとしぶとく生きていろよ!」
というか、今の装備で勝てるとは思えないんだよな。このクエスト、もしかすると結構かなり厳しいんじゃ?だとすれば、数時間も掛かると思って考えると優先するべきは・・・・・。
「ええい、無様でも何でも勝手に笑っていろ運営!」
足の遅さは重々承知の上。ならば走る以外にも行動できる方法をするまでだ。それは―――アクロバティック!反射能力がゲームの中で反映されるなら、ステータス依存が反映されない動きをすれば走るよりは速いはずだ!
そう考えている俺をお構いなしに毒竜がその口を大きく開き、毒液の奔流を放射してきた!
後ろへ跳んで上半身を下に仰け反って地面に両手をついて、両腕に力を溜めバネのように地面から腕の力で跳びさらに後ろへと体勢を戻して三頭のうちの一つのブレスを交わす。―――よし!もっと早く動けば断然早い!
「おおおおおおっ!」
毒がびちゃびちゃとブレスを交わし続ける俺がいた場所に吐かれ地面は紫色に塗り潰していく。それでもギリギリ、いや、走るより速くても飛び散る液体が身体や髪、顔に掛かって毒状態になってしまうか!だが、なりふり構っていられない!
「到着!」
師匠の下までアクロバティックし続けた。瞬時に大盾を装備し直して俺と一緒に師匠の身体を隠すように立て、もう片方の手はインベントリから毒耐性のポーションと回復のポーションを取り出す。
「これを飲め!」
「・・・・・うっ」
「ああもう、飲めれないのか!」
大盾にすごい勢いでぶつかる毒液の音を背に、二つのポーションを一本ずつ無理やり飲ませる。
飲ませ終わると師匠の全身が淡く光り、回復したようで項垂れていた師匠の頭が動いた。
「た、助かった・・・・・流石の俺も毒には勝てなかったぜ」
「一週間も毒に侵されながら生きていたその生命力に驚嘆ものだ、って盾が腐食してるぅっ!?」
「っ、くるぞ!」
毒竜の毒液で腐食して使え物にならなくなった大盾がポリゴンと化して消失した頃合いを見計らって、また毒のブレスを放ってきた。師匠と二手に分かれて回避する。
「装備を破壊されるとなると残された方法は・・・・・あるのか?」
「お前、毒耐性は!」
「【毒耐性中】!」
「それじゃあ全然足りねぇ!毒竜の毒は致死性だ!まずは耐性を付けろ!」
NPCなのにアドバイスをしてくる?不思議を通り越してその通りに従う。元よりそのつもりでもあったから師匠を先に回復させたんだ。
「【挑発】!そして【瞑想】!」
師匠に攻撃を向かわせてはならない。【挑発】で毒竜の意識をこっちに奪って俺は目を閉じ、集中力を高める。
【挑発】を受けた毒竜は師匠に向けていた一本の鎌首をこっちに戻して【瞑想】中の俺にブレスを降り注ぐ。【瞑想】は集中力を高め続けなければその効果をなさないのだ。三時間の眠りが瞑想になるのか今でも疑問だがな。指輪と【瞑想】そしてなけなしのお金で買い込んだポーション。全て使って、俺が狙っているさらに上の【毒耐性】。それが唯一の勝機!
「(現実だったらこんな方法をしていたら身体が腐り落ちていただろうな・・・・・)」
心中、無謀すぎる対処方法に苦笑する。そうやって耐え続け、HPが残り二割を切った辺りでポーションを飲む。これを繰り返していく。回復量は追いついていない。ポーションが無くなるか、耐性を手にするか。どちらが早いかだった。
暫く耐えると俺の頭の中に声が響く。
『スキル【毒耐性中】が【毒耐性大】に進化しました』
念願の結果に、しかし俺は喜べなかった。まだ皮膚を焼く痛みは残っている。まだ耐性が足りないんだ。これ以上進化するかも分からない耐性スキルだが、俺はそれに賭けるしかなかった。
最後のポーションも空き瓶になった頃。
「―――よしっ!」
喜ぶ俺の頭の中に響き渡ったのは【毒無効】というスキルの取得通知。今なら降り注ぐブレスすら心地よく感じられた。しかし、問題の一つが解決したところでまた浮上する問題。短刀も腐食するならば装備しても意味がない。文字通り
「おっと、満腹度が減ってた」
インベントリから林檎を取って満腹度を増やす。・・・・・。・・・・・。・・・・・うーん。
「爪を失った竜が残された武器は牙・・・・・か」
ブレスを受ける中で咀嚼しつつあることに思い付いた。しかし、ゲームでこれはアリ?なのかと運営に疑問を抱く。しかしまあ、やるしかないだろうな。これで結果が出たなら御の字、結果が良ければ全て良しだ。林檎を食べ終えた俺はついにとある行動に出た。
「ゲームの世界の竜の肉、毒竜の肉の味はどんなんだろうな?」
舌なめずりをしてギラギラと捕食者の目つきで毒竜を見上げた。すると何故かビクリと震えて一歩後退る毒竜を気にせずそして、俺は両手を合わせて。
「この世のすべての食材に感謝して いただきます」
その足に齧り付いた。
「・・・・・しばらくこの味の食材は食べたくないな」
顔を歪める感想を吐露する。しばらく観察していて分かったことは、齧り取った部分は再生されることがないということだ。しかし、削るだけでは剥がれ落ちた肉がどういう原理か逆再生のように元の場所へと戻ってしまう。ダメージも通っていない。
「倒すまで食べないとダメかぁ・・・・・この味が苦手、嫌いなプレイヤーにとって生き地獄そのものだろ」
毒竜の肉は僅かに苦みがあってそれはピーマンを思い起こさせる。それでも、どうしてゲームの世界で悲しくて食べなければこの部屋から出られないことになってしまったのかと思いながら食べる。だが俺にとっての味方はモンスターの肉を食っても満腹度には何ら影響がないことだ。捕食という手段は攻撃に分類されているかもしれない。味は感じても腹は満たされないのだ。
「もぐもぐ・・・・・あっ、ブレスかけてくれてありがとう。むぐむぐ・・・・・辛みがあってピーマンっぽさが消えて助かる。―――これなら一気に喰える」
そうやって胴体部分も食べ進めていく。そうして五時間程食べ続けた結果。胴体部分が骨だけになった。次は尻尾、と俺が尻尾の方に滑り降りようとした時、毒竜の骨がボロボロと崩れ落ちて、竜自体も動かなくなる。そして毒竜は光となってそのまま消えていった。その直後に運営からのアナウンスが流れた。
『死神ハーデス様が【毒竜の迷宮】を単独で踏破しました。おめでとうございます!これにより一部のシステムが解放されました』
「え、倒しちゃったの?この方法で?」
システムの穴を突けるだけ突いて、ついに毒竜を打倒してしまった件について俺は何とも言えない気持ちになった。俺が知っているゲームじゃない気がしてならないからだ!
それと共に毒竜のいた辺りに、光り輝く魔方陣と大きな宝箱が現れた。
『スキル【
『レベルが18に上がりました』
「―――いよっしゃあああああああああああああッッッ!!!!!」
嬉しい報告に雄叫びを上げ、レベルが上がったことでステータスポイント60の内20をいつものようにVITに振った。これでVITの基礎値は150になった。自分で選択して何だけど、あるなら防御力貫通以外で俺にダメージを与えるプレイヤーはいるのか?て思ってしまうぐらい。
「よし、また守りが堅くなったな」
続けてスキルを確認する。まさか【
【
毒、麻痺を無効化する。
取得条件
毒竜をHPドレインで倒すこと。
「食べることはHPドレイン扱いされるのか?・・・・・ふむ、HP吸収のスキルがあれば取得できるか?」
ただ、こんなことをするプレイヤーが後にも先にも俺以外いないだろうな。確かに食事によってHPは微量ながら回復する。しかし、正規の取り方ではないだろうことは明白だ。むしろ正規の取り方の方がよっぽど難易度が低いだろう。はは・・・・・だれが好き好んで俺みたいに毒竜の腐肉を食べるんだろう。
【
毒竜の力を意のままに扱うことができる。MPを消費して毒魔法を使用できる。
取得条件
毒無効化を取得した上で毒竜をHPドレインによって倒すこと。
これを見て俺は戦慄した。それもそのはず―――!
「おっしゃぁああああっ!初めての俺のまともな攻撃手段だ!しかも毒なんて相性ぴったり!」
当ててしまえば後は耐えているだけでいい、俺のVITを最大限に活かせる戦法ができるというもの!しかしだ。
「MPが問題だな。MP一度も上げてないし直ぐに使い切ってしまってただの不動の歩く要塞に戻る。うーん」
うんうん唸っていた時に、師匠の存在を思い出して試行を中断する。
「・・・・・あー、もういいか?」
「あ、すみませんでした」
「いや、俺を助けてくれた上に一人であの
気さくさに感謝される。
「毒竜の素材を取りに迷宮に向かったって聞いたんだけど、確保できた?」
「おうとも。大量に確保できたぜ」
消失したはずの極太の骨がいつの間にか薪のように束で縛られていていた。どうやって手に入れたんだあの一瞬で。師匠は満足げに腕を組んで目的の素材を見つめる。
「俺一人じゃあ倒せなかったしあのままだったら未熟な弟子と店を置いてくたばってた。お前のおかげで命も仕事も救われた感謝しきれねぇ恩も受けた」
野太い腕が伸び、太い手が俺に突き出してきた。
「本当に感謝する。ありがとう」
「助けれてよかった。師匠の弟子にも胸を張って報告できる」
「勝手に俺を殺してただろう?。ったく、今回ばかり俺の拳骨から免れて運のいい奴め。下準備を万全にしても結果はこの様だったんだからな」
ははは、と笑うしかない。だけど、この豪胆っぷりは嫌いじゃない。
「俺は一足先に帰る。お前も戻ってきたなら俺の店に来い。命の恩人の為にお前が欲する物を作ってやっからよ」
「ありがとうございます!」
骨の束を背負い、この部屋を後にする師匠を見送る。師匠がいなくなると目の前に青いパネルが浮かび上がった。
「お、クエスト『鍛冶師の救助』の達成報告。もう一つは『毒竜の迷宮の攻略者』の称号?えっと、報酬は・・・・・」
報酬を確認した後はお待ちかねの宝箱~!
その宝箱はかなり大きい。横は三メートル、縦は一メートル、高さは二メートルほどの長方形だ。
初めての宝箱に俺はゴクリと唾を飲み込む。緊張と興奮で鼓動が高鳴る。ゆっくりと蓋を持ち上げて中身を確認する。
「おおおおおおおおおおおおおおっ!」
興奮のあまり大声で叫ぶ。中に入っていたのは黒を基調として所々に鮮やかな赤の装飾が施された大盾。
重厚な輝きを放ち、赤いバラのレリーフが目立ち過ぎずそれでいてしっかりとした存在感を持つ様に
彫られたいかにも先程の大盾に合いそうなフード付きマントの鎧。
そして、美しく輝くガーネットが埋められている鞘を持つ落ち着きのある漆黒の短刀。
それらを手に取り一つずつ説明を見ていく。
【ユニークシリーズ】
単独でかつボスを初回戦闘で撃破しダンジョンを攻略した者に贈られる攻略者だけの為の唯一無二の装備。
一ダンジョンに二つきり。取得した者はこの装備を譲渡出来ない。
『闇夜ノ写』
【VIT +20】
【破壊成長】スキルスロット空欄
『黒薔薇ノ鎧』
【VIT +25】
【破壊成長】スキルスロット空欄
『新月』
【VIT +15】
【破壊成長】スキルスロット空欄
まさに俺専用装備。短刀までもがVIT強化という、他の人が使ってもその強力さを十分に発揮出来ない装備である。
「どうせするんだ。どこに行っても変わらないしここで確認しよっと」
【破壊成長】
この装備は壊れれば壊れるだけより強力になって元の形状に戻る。
修復は瞬時に行われるため破損時の数値上の影響は無い。
【スキルスロット】
自分の持っているスキルを捨てて武器に付与することが出来る。こうして付与したスキルは二度と取り戻すことが出来ない。付与したスキルは一日に五回だけMP消費0で発動出来る。
それ以降は通常通りMPを必要とする。スロットは15レベル毎に一つ解放される。
「敢えて言おう・・・・格好良くて!強いと!」
スロットが追加されることを確認出来た俺は迷うことなく短刀『新月』に【
これで懸念だったMP問題も解消である。
「そして、お待ちかねの~装備!そして―――我、堂々たる凱旋を果たす!」
全ての装備を身に着込むと魔方陣の光に包まれてダンジョンからいつもの町へと転送された。
死神・ハーデス
LV18
HP 40/40
MP 12/12
【STR 0〈+9〉】
【VIT 150〈+66〉】
【AGI 0】
【DEX 0】
【INT 0】
装備
頭 【空欄】
体 【黒薔薇ノ鎧】
右手 【新月:
左手【闇夜ノ写】
足 【黒薔薇ノ鎧】
靴 【黒薔薇ノ鎧】
装飾品 【フォレストクインビーの指輪】
【空欄】
【空欄】
称号:万に通じる者 不殺の冒険者 出遅れた者 大樹の精霊の加護 白銀の先駆者
毒竜の迷宮踏破
スキル 【絶対防御】【逃げ足】【手加減】【テイム】【使役Ⅰ】【幸運】【
『運営side』
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「あのプレイヤー・・・・・ヒドラを喰って勝ったな」
「誰があんな真似してスキルを取得するかなんて、ただのネタの勢いで設定をしたのにそれを実行する奴を目にするなんて」
「待てよ。HPドレインでスキルを取得できるって知ったあのプレイヤー、他のモンスターをもするんじゃ」
「ははは、まさかー?そんなわけ―――」
「「「あり得そうだー・・・・・」」」
「え、ちょ、待てっ。だとしたらあの凶悪なスキルを手に入れられるんじゃ!?」
「あのバカげたネタをか?それこそ思いつかないだろ。てか、レベル上げを他所にHPドレインを集中するとは思えにくい」
「今回も偶然が偶然を呼んだ展開になったに過ぎない。またヒドラ戦のようなことにはならないと俺は思いたい」
「それより見ろよVITの数値。あともう少しで1000達するぞ。他のプレイヤーだってまだ三桁すら届いてないのに・・・・・」
「これは防御貫通のスキルじゃないと勝つのが難しくなってきたなぁ」
「完全に防御特化でプレイする気だ死神ハーデス」
「こんなプレイをするプレイヤーは後にも先にもこいつだけだと思いたいが」
「第一回イベントまでどう成長していくのか見ていて楽しい反面、怖いな」
「そんなことより残りのユニーク装備は1つだぞ。どんな他のプレイヤーが手に入るのか気になるな」
「そうだな」
ユニークシリーズ装備の装備とスキルを獲得して歓喜の気持ちが静まらないまま武器屋に訪れた。ここに来るまで案の定、同期のプレイヤー達の視線を一身に奪っては集め目立つと言っても過言ではない、圧倒的存在感を放つこの装備に注目する人が沢山現れる。
数時間ぶりに戻った武器屋は、閉じ待っていた扉が開いて利用できるようになっていた。裏口からではなく今度は正面の出入り口から入ってみると、何人かのプレイヤーがいて武器の購入を求めていた。列に並んで待ってしばらく、俺の番になると青年は目を張った。
「ようやく来たかっ。師匠が待ってるから裏口から勝手に入ってくれ」
「ん?わかった」
言われた通りに店から出て裏口から入ると、あの師匠が燃え盛っている炉の前に陣取り何かを作成していた。工房に現れた俺の存在に気付き方に振り向く。
「よう、来たな。改めて名前を言おう。俺はこの町、始まりの町の鍛冶師ヘパーイストスだ」
「(ヘパーイストス?まさか、ヘファイストス?)俺はハーデスだ。無事に戻れた姿を見て安心したよ」
「俺はこう見えても若い頃はそれなりに名の知れた冒険者だったんだぜ。そんじゃそこらのモンスターには遅れは取らないが、一人だと限界がある。あの毒竜のような相手だとな」
「これから気を付けろよ?」
「ガハハッ肝に銘じておくぜ。さて、本題だがお前には俺の作品をタダで譲りたいと思う。どんな装備かどれほどの性能を求めているか言ってくれや。あんな新米冒険者の装備であの毒竜を倒したんだ。更なる冒険をするってんなら相応の装備を揃えておかなきゃいけねぇだろう」
大盤振る舞い、太っ腹なヘパーイストスが大きな鎚を持って力こぶを見せながら。求めている装備化・・・・・決まってる。
「できたらSTRとAGIにDEX100の装飾品とこの装備と同じ色の髑髏の仮面が欲しい。作れるか?」
「おお、伝説の装備を手に入れたんだな!こいつは鍛冶師として血が騒ぐぜ、命の恩人の求めている物を作れないようじゃあ鍛冶師の名が廃る!だが、わかっていると思うがそれだけの性能を求められるとあれば相応の素材も必要だ。製作費はタダにするが素材集めは自力でやってくれないか?」
この瞬間にクエストが発生して俺は直ぐに了承した。
「わかった。まず何を集めればいい?」
「おう、各ステータスをそこまで求めるとなるとだな・・・・・」
こうして素材集めのクエストが始まった。その集める素材の中には倒した毒竜の名前があったが他はまだ知らない素材の名が多い。
「これ全部、この町の外にあるのか?」
「おうとも。場所が分からないなら俺に訊くといい」
これ―――鍛冶師の救助の報酬が遠のいたのだが?師匠を守りながら毒竜を倒すのはかなり大変だったのに。まぁ相応の報酬だと思うとしよう。これ以上場に留まるのはよくないと思い外へ出るとメールが届いた。ヒデルからか。
「今から会えないか、か。OK、中央大樹に行くっと」
大方ラック達もいるだろうな。あ、昼飯食ってない・・・・・あの腐肉を喰ったせいで食う気がないけど。
ヒデルがメッセージを送って数分ぐらいたった頃に待ち合わせした場所でヒデルが俺を見つけて手を振る仕草をした。
「えっと、君がハーデス?素顔を見るのは初めてだね」
「普段仮面を被ってるからな。ユージオとトビにも同じこと言われたぞ」
「ねぇ、どうして仮面を被ってるの?」
「教える気はない」
軽くあしらった次にユージオが話しかけてきた。
「ハーデス、その装備はどこで手に入ったんだ?レアな装備のようだが」
「ダンジョンのボスを初回戦闘で倒した報酬だ。一ダンジョンに二つしかないユニークシリーズの装備だから手に入れるなら今の内だぞ。ボスの詳細は教えない。お前達で頑張って倒せ」
「わかった。そんな設定があるんだな。よし、他にもダンジョンがある筈だからそのユニークシリーズの装備を手に入れてやるぜ」
「・・・・・俺も欲しい」
「ワシもじゃな」
「僕もだよ!」
と限定品の入手に燃えるこいつらに「武器屋が開店してるぞ」と教えてた。
「ああ、あそこの?なるほどクエスト絡みだったとは。こうなったら他のNPCに話しかけまくってクエストをしようぜ」
「・・・・・今すぐ行こう」
「うん、更なる冒険が僕らを待っている!」
「ハーデス、お主はどうする?」
「一旦ログアウトする。それから素材集めをしなくちゃならなくなったから町の外に行ってくる」
現実世界に戻り昼食を済ませて一時休憩してからゲームにログイン。素材集めの為に西に東、今度は北に訪れてみた。ショップで購入した寝袋を使って泊まり込みの検証も行う予定だ。それはHPドレインでまたスキルを取得できるか、だ。毒竜をHPドレインで倒し取得できたなら他のモンスターもできるはずじゃないか?そして、盾の専用のスキルの取得方法を試してみたく、この北の森の奥で試す。
「この辺りでいいか。よし・・・・・【挑発】!」
俺の身体から光が円形に放射されてモンスターが寄ってくる。その内の初見のモンスターゴブリンだけを相手取る。ゴブリンの数は五体。その他のモンスターは攻撃されようがノーダメージだから放置しておく。
ゴブリンはその粗悪な剣で斬りかかってくる。ガッチリと受け止め、弾く。
「大盾で長く防ぎ続けたら手に入るか?」
三分のタイムラグ後の度に【挑発】をしてゴブリンの数を増やす。今度は増員して十体に叩いてもらう。さらに三分後、ゴブリンを十五に増やして相手取って三分後も【挑発】を―――。
翌日―――。
『スキル【大盾の心得Ⅹ】を取得しました。これにより【攻撃逸らし】は【受け流し】に進化します』
「【大盾の心得Ⅹ】・・・・・ようやくカンストして【受け流し】とやらを取得できた・・・・・特訓した最中に取得した【攻撃逸らし】があったからか」
確認してみよう。
【受け流し】
あらゆる攻撃を完全に受け流し自身の受けるダメージを無効化、近くに居る他の敵に逸らした攻撃を当ててダメージを与えること出来る。
取得条件
攻撃逸らしを取得した上で大盾の心得ⅩにするかつVIT800必要。
うん・・・・・納得できる条件だった。
「それじゃ、付き合ってくれたゴブリンさん達。申し訳ないけど【パラライズシャウト】」
シャウトと言うには静かな、しかし確かなキンッという音が響く。新月に付与したスキルは元々毒竜のものだから、技名は竜のものがほとんどだ。音をトリガーとする少し特殊なスキルのため、俺は鞘に短刀を収めるときの高いキンッという音をトリガーにしている。理由?深い理由なんてないよ。ぶっちゃけ、演出or格好良さを求めただけなんだよ。ゴブリンがバタバタと倒れていく様を見つめその内の一体に近づきそして・・・・・。
「いただきます」
ガブッシュ!とゴブリンの身体に牙を突き立て喰らい始めてみた。この行為をして手に入れられるスキルがあるなら、一先ず色んなモンスターをHPドレインしてみよう。
『運営』side
「や、やり始めたぁっー!?」
「マジでHPドレイン行為をしてるのかぁっ!?しかもゴブリンに!」
「あー・・・・・しばらく肉を食えなくなるかも」
「いいんじゃないか?最近太り気味になってきたって嘆いただろ」
「もう十五体目だぞ。ゴブリン、そんなに味が美味くしたっけ?」
「えっと、梅干し風味にした気が・・・・・」
「聞いただけで口の中が酸っぱくなるから!道理であのプレイヤーしかめっ面だよ!」
「あ、今度は爆発テントウに手を伸ばした」
「「「(ガタッ)!?」」」
今度はリアルなテントウムシを片っ端から食べ始めた。
「あっ・・・・・あのバチバチ弾けるお菓子みたいな感じ!腐肉より美味い!」
手当たり次第よくわからないテントウムシを五十匹食べた時に頭の中で音声が流れた。
『スキル【悪食】を取得しました』
『スキル【
「よしキターッ!」
新しく手に入れたスキルを確認する。さてさて、どんなスキル何だろうなー。
【悪食】
あらゆる者を飲み込み糧に変える力。
魔法さえ喰い荒らし自分のMPに変換することが出来る。容量オーバーの魔力は魔力結晶として体内に蓄えられる。
取得条件
致死性の劇物を一定量経口摂取すること。
【
爆発系ダメージを50%カットする。
取得条件
爆弾テントウをHPドレインで倒すこと。
「・・・・・ふふっ」
頑張った甲斐があった。そして
「テントウムシ百匹食べるまで頑張りますか!」
『運営』side
「ノォオオオオオオオッ!?」
「こいつ、察しやがった!」
「駄目だ、止まりません!」
「諦めるな!何とか防ぐんだ!」
「無理です、【パラライズシャウト】で爆発テントウを仕留め美味しそうに食べておるであります!」
「私達はトンデモないバケモノを生み出してしまったか・・・・・」
「これはゲーム内が荒れるぞっ・・・・・!」
『スキル【
食べ続けている最中に頭の中に響き渡ったスキルの取得通知。
「予想通り、だけど俺はもっと先に・・・・・テントウムシを駆逐する!」
無駄で終わるかもしれない。だけどここまで来たからには俺はやり遂げてみせる!そんな意気込みで時間かけて喰い尽くす。さぁ、どうだ、まだか、まだなのか?ならばもっと食い散らかしてみせるぞ運営!
『スキル【爆裂魔法】を取得しました。これにより【
「―――――っしゃああああああああああああああああああッ!」
取得通知が届いた瞬間、天に向かって勝利の雄叫びを上げる。―――総計二百三十匹も捕食し終えたぞコンチクショウ!
『運営』side
「「「「「コ、コイツ、やり遂げやがったッッッ」」」」」
「なんて執念だよ死神ハーデス。思わず称賛の拍手をしそうになった」
「うむ、プレイヤーながら天晴だ。第一回のイベントがどうなるか見ものだぞこれは」