バカとMMORPGと召喚獣!   作:ダーク・シリウス

41 / 326
エルフイベント開始

いよいよ、第二回イベントの始まりだっ!

 

「さて、エルフの里に行くから連れていくメンバーを決めます」

 

「ムム!」

 

横並びに整列するオルト達、フェルはその後ろに座っている。

 

「オルト、ルフレ、ゆぐゆぐ、リック、フェル、んーファウだ。クママ達は―――サイナと一緒に行動してくれ」

 

「クママ!」

 

「ヒムー!」

 

ここ最近判明したことだが、全スキルを無条件で自動的に取得するサイナは【使役】スキルも取得している。別行動するサイナもオルト達を使役することが可能だと知った時は耳を疑ったよ。

 

「なら訊くが、サイナが独断でテイムすることは?」

 

「不可能です。征服人形(コンキスタ・ドール)であれば私の命令に従い使役することが可能です」

 

「サイナも出来るのか。あ、【機械神】と【機械創造神】も取得しているから?」

 

「その通りでございます。我が創造主の恩恵を享け賜わった私自身も機械神(四代目)の存在です」

 

ただし身を破壊して兵器を創る【機械神(一代目)】の能力と征服人形(コンキスタ・ドール)の相性は悪い。諸刃の剣でありサイナに装備させることができるのはアクセサリーだけだ。

 

―――と、当時の事を思い出しているとリヴェリアが話しかけて来た。

 

「これからエルフの里へ跳ぶ長距離転移が始まります。今日までここに置いてありがとうございました」

 

「なに、畑の作業を手伝ってくれたからな。ようやく黄金林檎も渡せたし安心できた」

 

「この苗木でまた一から増やしていきます。エルフは長命種ですから」

 

「人間は100年で死ぬからあっという間だ」

 

「・・・・・そうですね」

 

少し寂し気な表情を浮かべる彼女はすぐ微笑に切り替えた。

 

「それでも、貴方という人間という存在を一生忘れません。この町に住んでから、里では得られなかった刺激を堪能しました」

 

「エルフの里はどんなところだ?」

 

「―――騒々、いえ、自然と一体化・・・・・静かなところです。静寂の中で過ごしているといっても過言ではないでしょう。これから多くの冒険者がそんな場所に訪れてくれますから、きっと同胞たちはしばらく困惑や戸惑いをするかもしれません」

 

今なんか、騒々しいといいかけたな?森の中で暮らしていると思うエルフから余所者扱いされることは間違いないだろうが・・・・・気になるぞ?

 

「最初に訊くけど、数百人以上の冒険者が寝泊まりできる宿は?」

 

「申し訳ございませんがありません。里は主に自給自足です。人間の国へ赴き物資を売買、調達はすれど里に他種族の者を滞在させたことはここしばらくはありませんでしたので」

 

最初のイベントと同じ感じか?でも悪しき者達に里が襲撃を受けたって話だ。

 

「そして、今里ではこれから来てくださる冒険者達にもてなす余裕もございません」

 

「物資が不足していると?」

 

「それ以上に、里に対して絶えない襲撃を食い止めて欲しいのが里の総意です」

 

防衛線・・・・・?誰よりも早く今回のイベントの情報を得られたのはいいけど、イベントの特徴を知られるのは時間の問題だな。―――ん、運営からメールだ。

 

 

『イベントにご参加いただき、ありがとうございます。今回のイベントに関する詳しい内容をご説明いたします』

 

 

運営メールを要約すると、こんな感じである。まず、俺たちは前回同様各々のサーバーに割り当てられることなくイベントを始める。そして前回より短い5日間エルフの里に暮らしベントが終了して戻ってくるのはその日の21時。今回はパーティーと個人ランキングの競い合いの要素がある。しかも―――ランキング報酬にはないがイベント参加全員に『エルフの救援者』の称号が与えられる。未だ称号0なプレイヤーにとっては初称号となって嬉しいことだろうな。

 

そんで肝心のランキング報酬、パーティ討伐数と個人撃破数のランキングがある。個人の方を見れば・・・・・。

 

「一位は・・・・・ユニーク装備なのか」

 

「はい、里の秘宝を明け渡すことになりました。里の存亡を懸けた戦いです。秘宝を守るより誇りあるエルフという種の全滅だけは避けたい長老の願いです」

 

「それだけ本気と言うことか。それなら俺も頑張らないとな」

 

 

『第二回イベント、開始5分前となりました。これから特設フィールドに転送します』

 

 

アナウンスの直後、目の前に参加するかどうかの問いが表示される。俺は迷わずYESを選択した。

 

すると、目の前の景色が歪み始める。

 

 

そして、暗転した。

 

 

見る間もなく、目の前に広がる景色が変化する。森の中に転移させられたらしい。

 

 

「ようこそ。ここが私の故郷、森の深奥に存在するジュラの大森林―――『アールヴ』です」

 

リヴェリアの語る声を耳にしながら俺は、俺達は途轍もなく巨大過ぎる巨大樹を視界に入れていた。言葉も発さない俺が注視している視線の意図を汲んだ彼女が微笑んだ。

 

「この世界で唯一無二とも云われているあの木は・・・・・世界樹ユグドラシルです」

 

天を衝く勢いで成長していて、太陽の日差しを受けている葉は傘のように広がっている。だから広い日影も出来るのは当然で俺達は暗い場所の中にいるのだが・・・・・。他のプレイヤー達の姿が見えない。

 

「俺以外の冒険者は?」

 

「アールヴは三つの層があります。この辺りの森は地平ではなく山のような大きい階段みたくなっております。ユグドラシルがある上層のこの場は、王族のエルフだけしか入れない場所です」

 

王族のエルフがいる上層・・・・・リヴェリアの親族が暮らす場所に故意で連れてこられたのか。特別な場所ってことなのはわかった。が、どうして俺達だけここに連れて来た?

 

「神聖樹はどこだ?」

 

「中層です。そこへ案内する前にまず、長老にお会いさせてください」

 

「長老って、リヴェリアの親族だよな?」

 

「ええ、父です」

 

どんなエルフなのかと思っていたが、早速会えることになるなんてな。先行く彼女が向かう先はユグドラシル―――ではなく、その後ろにあった木造の別荘を彷彿させる大きな建物だった。扉を開け放ち真っ直ぐ目的の扉がない部屋の中に入って行った。

 

「―――お連れしました」

 

「よくぞ来られた。異邦の冒険者よ!」

 

続いてい入る俺達は上半身褐色の裸でボディビル選手にマッスルポーズで出迎えられた。

 

「・・・・・?」

 

目を擦って目の前のボディビル選手を改めて視界に入れる。目を閉じてもう一度認知しようと筋骨隆々のボディビル選手を見つめる。

 

「・・・・・」

 

「ふふ、そんな熱い眼差しを向けられると照れるではないか。しかし、私のこの筋肉美に惚れ惚れしてしまうのは些か悪くない気分だ。むんっ!」

 

・・・・・誰だ。この筋肉マッチョ。人間か?

 

「リヴェリア、彼は・・・・・」

 

「・・・・・身内の恥です」

 

「身内の恥とは酷い言い草ではないかリリーアたん!この肉体を得てからというもの、私は更に莫大な魔力とどんな攻撃にも耐えられる防御力とこの拳で大岩をも砕く強い力を手に入れたというのに!」

 

リリーアたん?思わずリヴェリアの方へ振り向く。そこには耳まで真っ赤にして握り拳を作り、全身を震わせている美女がいた。

 

「あ、あれだけ口酸っぱく釘を刺したのに何で言うのですかあなたはっ!!!彼の前でその呼び名を言わないでくださいよっ!!?」

 

・・・・・なんだろう、とっても懐かしい気分を味わわされているんだが。羞恥と怒りで目尻に涙を浮かべ、誰にも知られたくなかった事実を明かされてしまった人の反応を晒すリヴェリア・・・・・。

 

「えーっと・・・・・どうして肉体を鍛えることに?」

 

「千年前のことだ。私も他のエルフ種と同じ華奢な体つきで、当時は里一番の魔法と弓使いを兼ね揃えた魔弓使いだった」

 

お、知らない単語が出て来た。魔剣の弓版か。

 

「しかし、魔王の軍勢との戦いで武器は破壊され魔力も尽きてしまい、もはや戦う力などなく魔族の軍勢に蹂躙される死を覚悟した」

 

「・・・・・」

 

「周囲から迫る凶刃!私は逃げることも躱す体力さえも残していなかった。このまま奴らに八つ裂きされる運命に愛する家族達を走馬灯のように思い出しながら死を受け入れた。だが、そんな私の命をどこからともなく現れた鍛え抜かれたぶ厚い筋肉に守られたのだ!私ごと貫く凶刃がそれを拒む鋼鉄の如く受け止めるだけじゃなく、逆に拳ひとつで砕いてみせた!」

 

その時の光景を思い出しているようで、赤らめた顔で恍惚の表情を浮かべ熱い息を零した。

 

「窮地から逃してくれたその筋肉に最初は驚かされたが、私を抱える彼の筋肉に次第に興味を持ち悟ってしまった。―――強い肉体こそが強者の証であると」

 

「・・・・・」

 

「それからの私はしばらく里から離れ恩人の弟子になった。彼の人生の全てを受け継ぐために、彼の死後でも彼の後継者としても己の肉体を鍛え上げ続けた。それがこの筋肉である!」

 

見せつけるように筋肉を盛り上げる。すげぇ・・・今、音がしたぞムキムキって。

 

「この里に戻ってすぐに私は華奢なエルフ達を鍛え上げるために長老の座を得た。それからこの里では女以外の華奢なエルフは存在しなくなった。体を鍛えれば魔力量も増えることが分かったのが一番の要因だからな」

 

「・・・・・私も一時勧められたことありましたが、とてもあんな身体にはなりたくありませんでした」

 

ポツリと吐露する彼女の声が聞こえる。

 

「此度の人間の襲撃にもそうだ。ユグドラシルだけは守り抜いてみせたのだ」

 

「人間?魔王軍じゃあ?」

 

「今の魔王は先代と違って人間界に侵攻してこなくなっているのだ。絶対ではないが侵攻しない理由は恐らく軍事力を高めているのだと私はそう推測している。その代わりに世界樹ユグドラシルの噂を聞きつけ、人間の国王・・・・・帝国軍が攻め切ってくるのだ」

 

相手はモンスターじゃなくてNPCってことかよおいおい・・・・・。

 

「だがまぁ、相手が誰であろうと私達は連戦連勝を築き上げた。魔法と弓がなければ何もできない雑魚種族とか言われてきた今の私達は昔とは違う。―――そう、この恩人から受け継いだ筋肉があるからだ!」

 

ムッキーンッ!と擬音が聞こえそうなポーズを取る長老。

 

「最後に私達の挫けそうな心に喝を入れてくれるのは鍛え上げられた筋肉!これは決して私達を裏切らない最愛にして最高の相棒ともいえるのだ!」

 

「おおー」

 

思わず納得して思わず拍手をしてしまった俺に、倣うようにオルト達も拍手をした。喝采となって長老は嬉しそうに別のポーズを取った。

 

「ふふ、この筋肉の良さがわかるようだね。見たところ君も中々の筋力を秘めているようだ。その防御力は即ち=力!力こそが防御力!」

 

「あ、はい。ありがとうございます」

 

信じられるか?聡明で知的でプライドも高い筈のエルフが脳筋にジョブチェンジしているんだぜ?それで幾度もの侵攻を防いでいるんだから凄いと感嘆してしまうよ。

 

「・・・・・長老、本題に入ってください」

 

呆れ口調で催促するリヴェリア。確かにそろそろ本題に入ってもらいたいところだったからありがたい申し出だった。

 

「む、確かに今は里の一大事だったな。では改めて真剣に本題の話をしよう」

 

「最初からそうしていただいてほしかったです」

 

長老に対してちょっと厳しくない?

 

「まずは礼を言わせて欲しい。私の娘の願いを聞き届けた以前に使者として送った娘の危機を救ってくれたことに父親として深く感謝する」

 

深々と頭を垂らした後、ソファに座るよう促され俺達は腰を落とした。オルト達はそれぞれ床に座ったり、ファウのような小さい従魔は俺の身体の上に落ち着く。

 

「娘から話を聞いていたが、本当に四大属性の精霊を使役しているとは。久方ぶりに見たな」

 

「と言うことは、千年前に?」

 

「うむ。悪意ある人間達から精霊達を守る戦いに参加した。彼等の隠れ里も私を含め古代の者達が精霊達と創り上げた。あれからもう千年も経っていたか・・・それに・・・・・」

 

今度はフェルに目を向ける。

 

「幻獣種フェンリル。彼の誇り高き銀狼を使役してみせるとは、かつて存在した幻獣使いが懐かしいな」

 

「会ったことが?」

 

「彼も君と同じフェンリルを従えていた他にも、幻獣を使役していた。後に神獣の一体を使役することが成功した彼は後に神獣使いと歴史に名を遺したな」

 

神獣か・・・・・どこで会えるのやら。まだまだ先のことだろうな。

 

「他の幻獣に会いたいなら、フェンリルに訊くといい。同じ幻獣同士の居場所ならもしかするとわかるかもしれないぞ。何ならこの里で飼い慣らしている幻獣の一種、グリフォンでも見て見るか?」

 

「グリフォンか・・・・・凄く興味あるけれど、今は里の救援を済ませたいかな」

 

「そうだった。では早速君だけにお願いしたい事がある。娘から話を聞いたと思うが神聖樹が何らかの原因で衰弱してしまっている。それがユグドラシルにも影響は出ないか不安なのだが」

 

「神聖樹に洞とかある?」

 

「いや、ないがどうして?」

 

とある村にも神聖樹があり、エルフの里の神聖樹と同じ衰弱していた理由を教えると長老は目を丸くした。

 

「悪魔の仕業だと。では、この里の神聖樹も悪魔が原因であると」

 

「黒い棘みたいなものが刺さっていたらそうだけど、なかったらその場合は俺でも解決は困難だ」

 

「そうか・・・・・衰弱しているとはいえ、まだ完全に枯れる様子ではない。もし解決方法が分かったらお願い出来るだろうか」

 

 

『クエスト 神聖樹の解決』

 

 

というクエストが発生してYESを押す以外の選択は俺になかった。

 

「感謝する。ありがとう」

 

「では長老。私はこれからハーデス様を下層にお連れし、黄金林檎の苗木を植えに行ってまいります」

 

「ノームの手で育てた物だ。きっと上質が高く実ってくれるだろう。ハーデス殿、また私に何か用があろうがなかろうが、此処へ来るときは娘から授かった指輪を門の者に見せろ。それを持つ者もアールヴ家の一員の証でもあるのだ」

 

「一員・・・・・?」

 

「そうだ。・・・・・ふむ、三大天災のベヒモスとジズを倒した勇者。勇者の血をアールヴ家に取り込むのも悪くはないか・・・・?」

 

ぼそり、と何を呟いたのかは敢えて聞えなかったことにしよう。リヴェリアの方は顔を紅潮させて実の親に対して炎の魔法を放とうと―――彼女の背後に回って羽交い締めする!

 

「落ち着けリヴェリア!それは何かマズイ気がする!」

 

「大丈夫です!この炎はちょっと肌を焦がす程度の威力しかありません!」

 

「ちょっと待って、肌を焦がすって?まさか長老の褐色肌の色って・・・・・」

 

「娘の照れ隠しによる炎の魔法を何度も受けた原因だ。今じゃあこの通りすっかりダークエルフみたくなってしまった。昔は肌色だったんだが、この褐色肌もまた筋肉の美しさを際立たせるので気に入っているよ」

 

・・・・・リヴェリア、元の肌色に戻せば多少のショックを受けると思うぞ。

 

 

・・・・・。・・・・・。・・・・・。

 

・・・・・。・・・・・。

 

・・・・・。

 

 

「ここがアールヴの中層。神聖樹以外に黄金林檎や作物、家畜を育てていた農業の場でした」

 

長い下り坂を降りて山で言う中部に辿り着いた。リヴェリアの説明通り、様々な果樹園や広大な畑、家畜を飼育する建物があったようだ。今では無残にも破壊の爪痕とまだ撤去もされてない残骸は数多い。以前のように戻すには復興作業をしなくてはならない。

 

「酷いなここまで帝国の人間が?」

 

「違います。話が逸れてしまいましたが帝国からの侵攻の話を続けさせてもらいますと、連戦連勝の私達を攻め落とせない帝国は攻め手を変えたのです。どんな技術なのかはわかりませんが、人間の代わりに数えきれないモンスターを使役して攻め入ってきたのです。中には龍種も」

 

「ドラゴンもだと?」

 

「はい。私達は勿論ドラゴンが相手だろうと戦いました。戦士達もドラゴン相手に善戦して何体も倒しましたが、やはり数の暴力には敵いませんでした。絶えず森に侵入してくるモンスターと交じって帝国軍も襲ってきて、何とか上層までの進行は食い止めましたがここは戦場に・・・・・」

 

進む途中で足を止め、作物がない畑の前に止まり袖から黄金林檎を取り出した。

 

「これをお願いします」

 

「オルト」

 

「ムム!!」

 

任せろ、と胸を叩いて黄金林檎を株分して苗木に変えた。手慣れた手つきで畑に植え終わる。

 

「これでいいか?」

 

「ありがとうございます。また零から育てていきます」

 

それはそうだろうけど・・・・・うーん、なんか違うな。中層の荒れ果てた光景を見回しながら問う。

 

「中層は俺以外にもプレイヤーが入れるのか?」

 

「一応来れますが、この何もない畑に来られても何もすることはありませんよ?」

 

「おいおい、リヴェリア。冒険者は何も戦いだけが生業ではないんだぜ?ちょっと待っててくれ」

 

生配信の準備をして・・・・・よし、撮影開始だ。

 

「久しぶりの【白銀の死神の宴】だぞ。皆ーいるか?」

 

 

『白銀さんの配信が始まっていると聞いて!ん?映っている場所はどこ?』

 

 

「中層だ。他のプレイヤーはここのフィールドの地形は把握しているか?」

 

 

『まだ転送されたばかりで試行錯誤してまーす。前回みたく寝泊まりできないかエルフのNPCと交渉しているプレイヤーが多い。というか中層ってどこにある?』

 

 

「山の中部だ。登山の体験が出来るらしい」

 

 

『山ぁっ!?じゃあ、俺達がいるところって山の麓ってことか!』

 

『中部ってことは頂上があるんだよな?頂上にはなにがありますかー?』

 

 

「エルフの王族が住んでいる家と巨大な樹木、世界樹ユグドラシルがあったぞ」

 

 

『世界樹ユグドラシルっ!?』

 

『あっ、上を見たら本当にデカすぎる巨大な木がある!あれがユグドラシルかぁ・・・・・』

 

『ユグドラシルの素材手に入りましたか!?』

 

 

「いや全然。ところで・・・・・エルフの男性は見た?」

 

 

『ああ・・・・・見た。何なのあれ?俺達のエルフ象が木っ端みじんに砕け散った』

 

『女性エルフはマッチョじゃなかったから心の安寧が保たれた』

 

『女性プレイヤーからはあちこち悲鳴が聞こえているけどな』

 

『それでも華奢じゃないエルフを見た時は酷い残念感が・・・・・』

 

 

「大丈夫だ。エルフの長老が筋肉が全てだ!華奢なお前達も筋肉の美しさと素晴らしさを教え鍛えてやる!って布教した原因だから」

 

 

『えええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ・・・・・・・・』

 

『脳筋エルフの仕業かよ!』

 

『元の華奢なエルフを返せ!』

 

『さらっと白銀さんがエルフの長老と会っていた件については?』

 

『さすシロ!』

 

『さすシロしかないだろ。それ以外何があるんだ?』

 

 

「うん、それについては後日ゆっくり話し合おうか。思うが儘にプレイしているだけなのに変な印象を抱かれちゃ堪ったもんじゃない」

 

 

『思うが儘なプレイこそが白銀さんの変な印象を抱かせるのでは?誰もマグマなんか泳げないし泳がないんだけれど』

 

『実は俺も好奇心に負けて、片足だけで突っ込んでみたら一気にHPと装備が三分の一まで減ってヤバかった』

 

『俺もその一人。マグマを泳ぐ白銀さんの真似したくてポーションで回復しながら泳いだら・・・・・【マグマ耐性】なるスキルを取得出来ちゃった』

 

 

「おっ、チャレンジャーが現れたんだな。それ、無効化まで頑張ればラヴァ・ゴーレム戦はもっとやり易くなると思うぞ」

 

 

『あ、そうなの?じゃあ頑張ってみる』

 

『・・・・・片足だけ突っ込んだ俺も試そうかなぁ。ところで今回の配信の目的は?』

 

 

「そうそう、実はファーマーのプレイヤーの力が必要なんだよ。中層は何も育っていない農業区と化していてさ、俺もさっき黄金林檎を植えたばかりだけど他のファーマーの協力を求めようと思っての配信だ。ファーマーじゃないプレイヤーでも協力してくれるとありがたいな」

 

 

『白銀さん。俺ノーフ。その話を聞いて生産職でも役目があると聞いて他の連中に声を掛ける』

 

 

「よろしく頼む。因みに俺の従魔全員ここにいるからな」

 

 

『え?全員?コマンダーテイマーでも最大6匹しか連れて来られないんじゃあ?』

 

 

「答えは征服人形(コンキスタ・ドール)

 

 

『・・・・・ああっ! そういうことか! え、ドールでもテイマーみたいにモンスターを使役できるのか?』

 

『それマ?』

 

 

「それが出来るみたいでさぁ、初めて聞いた俺もびっくり。ほら、うちのオルト達だ」

 

 

『あっ、本当に6匹以上いる!噂のモグラもいるし!』

 

『待て待て、これはある意味凄い情報だぞ?連れて行けない従魔をドールちゃんが変わりに使役してもらうなら・・・・・』

 

『自分だけのチームが出来上がるってことか・・・・・っ!』

 

 

「付け加えさせてもらうぞ。使役はできるけど、独自でテイムすることはできないからな」

 

 

『そうなんだ?でも、それも出来るとなると変だよな』

 

『テイムできたらドールちゃんが使役しなくちゃいけないからな』

 

『こちらテイマースレの掲示板の住人です。白銀さんの情報により、知り合いのノームファンのテイマーが「イベントが終わったらドールちゃんを使役する、絶対する!ノームちゃんの理想郷を叶える!」と言って叫んでます』

 

『うちの知り合いも「ウンディーネちゃんを更に5匹も増やせれるだとっ」と愕然してます』

 

『サラマンダーファンも同じく』

 

『俺はルフレファンの者。白銀さん、可愛いモンスファンの夢をさらに広げてくれてありがとう』

 

 

「あははは・・・・・どう致しまして?とにかく、手持ちにあるアイテムでここで植えてもいいファーマーや戦闘とファーマーをどっちもしているプレイヤー、家畜用の建物を建てられる木工や大工のプレイヤー、その他のプレイヤーも暇があったらここで一緒に畑を豊かにしようよ。しばらく俺達はここにいるから待ってまーす」

 

 

『はーい!!』

 

『今参ります!』

 

『待っててゆぐゆぐちゃーん!』

 

 

配信終了!!

 

 

「と言うことだから、しばらくしたらここで農作業してくれる協力者が集まる」

 

「・・・・・下層から中層までの道は楽ではありませんのに」

 

「役割がある事を知ったらやりたいのさ俺達冒険者は。そんじゃ、オルトとサイナ。たくさん植えてもらうぞ」

 

「ムム!」

 

「かしこまりました」

 

「クママ達は壊れている物の残骸の片づけだ。ファウは皆を応援する音楽を鳴らしてくれ。皆頼んだ!」

 

「キュイ!」

 

「クママ!」

 

「―――♪」

 

「キュー!」

 

「ヤー!」

 

「ヒムヒム!」

 

「フマー!」

 

「フム!」

 

「モグモ!」

 

「グルル」

 

「メェー!」

 

俺の号令に皆は気合の入った声を発して撤去作業に動き出した。

 

「リヴェリア。撤去作業の指揮は任せても?俺も作業するから」

 

「わかりました。では、数か所に分けて一つに集めてもらいます」

 

こうして俺達は中層で復興作業を始めることにした。

 

 

―――それから30分後。

 

 

「うぉおおおおっーーーー!!! 辿り着いたぁあああああああああ!!!」

 

と叫ぶ名も顔も知らないプレイヤーの後、続々と中層に到着するプレイヤー達。一旦オルト達を呼び寄せるとしよう。

 

「ここが中層か。ここも酷いもんだな」

 

「今回のイベントは防衛だけじゃなくて復興イベントも兼ね備えているのかもな」

 

「クママちゃん!会いに来たわよー!」

 

「アイネちゃーん!」

 

「ゆぐゆぐちゃんはどこですかー!」

 

中には欲望に忠実なプレイヤーもいるようだな。―――それはそれで好都合。

 

「中層まで来てくれてありがとうございます!オルト達も皆と中層の復興をしてくれることを感謝しているぞ!」

 

「ムムムー!」

 

「フマー!」

 

「ランラ~♪」

 

プレイヤー達は黄色い歓喜の声を上げる。

 

「中層もかなり広いかと思うけれど、皆と協力して時間が許される限り復興をしよう!オルト達と一緒に!」

 

『おおー!!』

 

やる気を漲らせるのはいいとして、下層の状況を知りたい。なのでフレンド登録したノーフを見つけたら速攻で捕まえた。

 

「よ、ノーフ。イベントに参加していたんだな」

 

「そりゃあ参加するさ」

 

「それもそうか。他にフレンドはいたか?」

 

「昨日の花見に参加した前線組のプレイヤーは軒並み見かけなかったな。逆に生産職だったら、何人か・・・イズさんとセレーネさんも一緒だったな」

 

「他のファーマーは?」

 

「下層じゃ特に何もやることが無い一部以外の生産職は全員ここに集まっているといっても過言じゃない」

 

だろうな。見知ったプレイヤーがちらほらとオルト達に接触しているし。

 

「下層、麓の方はどうなってる?」

 

「マップを見れば分かると思うけど。居住区域が東西南北にある。状況はここと同じ。多分プレイヤー専用のだと思う。数も限りがあったから早い者勝ちかも」

 

「防衛の方は?」

 

「どこも結構混雑しているらしい。正月に神社をお参りしに来た人達みたいにな感じなんだけど、どうやら防衛する防壁は耐久値があるみたいなんだ」

 

そりゃあ、耐久値がないと防衛をしている気分じゃないだろう。不思議そうに小首を傾げる俺をノーフは、まだ知らない(当然だが)と思って知っている限りの情報を教えてくれた。

 

「ギルド的な物は」

 

「東西南北に散り散りで転移させられた連中と情報を共有したところ、エルフの里にはなかったってさ。あるのは辛うじて機能している売店ぐらいだけど、売店の品も全然で冷やかす程度にもならない寂しい感じだ。そんなんだから防衛イベントを積極的にしている前線組みたいなプレイヤーと違って、生産職のプレイヤーは何もやることがあんまりなくて暇を持て余していたところ白銀さんの生配信だ」

 

だからこんなに来たのか。下層にも畑があるのに拘らず・・・・・違うな、早い者勝ち戦で畑を手に入れられなかったファーマーがここに集まっているということか。

 

「居住区もボロボロか?」

 

「ああ、だから寝泊まりできそうになかったり、逆にそれでもいいから寝泊まりさせてくれないかと俺も頼んでみたら・・・・・蛇蝎(だかつ)の如く嫌われて突っぱね返された」

 

あー・・・・・帝国=人間だから人間を敵視しちゃっているのかもしれないな。

 

「マッチョのエルフにか」

 

「いや、全員が全員マッチョじゃないらしいぞ?」

 

うん?それは初耳だな。勢いで全員を超強化しそうな感じだったのにあの長老は。

 

「今のアールヴの一般エルフ達の俺達に対する好感度は低いって認識でいい?」

 

「白銀さんなら好感度を上げる方法は?」

 

「数日間もこの里にいることになるんだから・・・・・ひたすら交流したりプレゼントしたりする以外はないだろうな全力で。まずは衣食住の食を改善する必要があるかもしれないし」

 

「防衛イベントだけかと思ってたけど、もしかして復興イベントでもあったりする?」

 

それは判断しかねると肩を竦める。

 

「このイベントも貢献度があるぐらいだろうし、前回のイベントの経験を活かすべきだと思うけどな」

 

「確かに、一理あるな」

 

もうそうしているプレイヤーはいるだろうし。今回は出遅れてから防衛してみるか?というかもう既に出遅れているから関係ないか。

 

 

中層に集まったファーマーやそれ以外のプレイヤー達の奮闘と尽力で広い農業区(勝手に命名)は綺麗に整えられ、何も植えられていなかった畑も今では俺も含め全ファーマーの手持ちのアイテムで大体は埋まった。

 

「・・・・・皆様、心から感謝いたします。こんなに早くも同胞達の食糧難を解決してくださり誠に感謝します」

 

規定数で畑に投資するとリヴェリアからの感謝の言葉が俺達全員の耳に届いてきて、次に貢献度のポイントがもらえた報せがパネルとして表示された。それも100だ。それを知ったこの場に居る全員が、感嘆と歓喜の声を上げた。

 

「もしよければこれからも里の復興に手を貸していただけませんでしょうか?」

 

俺達の答えはYES以外存在しなかった。これから1週間は中層の農業区に通わないといけないな。

 

「リヴェリア、大勢で大勢の分の料理を作りたい時はどうすれば?下層の家を失ったエルフ達の為に炊き出しをしたい」

 

「それでしたら長老から市民へ調理の場を設けるようお願いしましょう。ハーデス様、よろしくお願いいたします」

 

「後それと、エルフ達の家を建て直す木材って必要か?」

 

「はい。ですが何分、今の私達にその余力がございません。里に出て木材の調達をしてくれるなら、西の棟梁たち渡してください。きっと助かると思います」

 

「衣服とかは?」

 

「素材は無事ですが、職人の者達が負傷してしまい量産は困難な状態です。もしも敵うならば彼等の代わりに手伝ってもらえないですか?」

 

衣食住についての話はこれで訊き終えた。任せろと言う俺にリヴェリアは安心した表情で笑顔も浮かべて、俺達に一礼すると上層へ戻って行った。

 

「・・・・・白銀さんの『さすシロ』の原因がちょっとわかった気がした」

 

「その略は止めてくれないか?ま、ともかくこれで生産職も暇じゃなくなる理由も出来たから万々歳だろ。積極的に、たとえ断られても拒まれても交流を繰り返せばNPCの態度も柔らかくなって受け入れてくれる。もう皆も解っていることだろうがな。と言うことで、俺は東区に行ってくる。じゃーなー」

 

オルト達を引きつれ下層へ向かう。おいおい、何だよこの下り坂は!? 登る時が凄く苦労するだろう!

 

「あれが、有名なプレイヤーになれる秘訣なのか・・・・・?」

 

「普通、あそこまで訊き込まないもんだよな」

 

「俺は知らない相手に話しかける勇気もない」

 

「さすシロ!これで浮きそうになった生産職も活動できる!」

 

「確かにそれは言えてる」

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。