バカとMMORPGと召喚獣!   作:ダーク・シリウス

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激しい防衛線1

トンテンカン、と鎚で何かを叩く音が聞こえる距離まで歩いた俺達は大工達の仕事場に足を踏み入れた。主に働いているのは―――マッチョエルフ達だった。

 

「急げ急げ! 王女が連れて来た冒険者達が帝国の侵攻を足止めしている間に修復を完了するんだ!」

 

「おら、そっちに飛ばすぞ! 時間がねぇ!」

 

「おうさっさと投げろ! 喋る時間もねぇ!」

 

宙に掛ける骨組みの木材たち。風を切って飛んでくる材木を片手で受け止めてすぐに加工を始める職人たちの光景に圧倒される中。

 

「ダメだ、どうしても材木が足りない! 雑木ですらあまり残ってない!」

 

「棟梁! あちこちからもっと材木が必要だという声が上がってます!」

 

「解っている!だが、足りないものは足りないんだよ! おい、手の空いている奴は里の外に出て伐採しに行け!」

 

そんな声が聞こえて来た。都合がよすぎるタイミングだ。

 

「冒険者の死神ハーデスです! 材木を届けに来ましたー!」

 

大声を張り上げて言うと職人達が一斉にこっちを振り向いた。誰だアイツは、何でここにいる的な視線を一身に浴びている俺の元に一人のマッチョエルフが来た。

 

「今、材木を届けに来たといったな?言っとくが100本でも足りない状況だ。それ以下のもんを届けられようと今感謝する暇がないぞ」

 

「リヴェリア王女から里の危機の事は教えられている。この状況を見越して集められるだけ集めて来た」

 

インベントリから雑木、クヌギ、ミズナラ、それ以外の材木も含めて×99を取り出す。

 

「数種類の材木を99本。500本以上はあるぞ」

 

「・・・・・」

 

「取り敢えずこれで足しにしてくれ」

 

「お、お前・・・・・どれだけ集めたんだ・・・・・」

 

「俺はリヴェリア王女の友人だから里を守りたいのさ」

 

王族の証と称された指輪を見せればマッチョエルフは目を皿のように見開いた。踵を返して去ろうとする。

 

「お、おい冒険者! 名前は何て言う!?」

 

「死神ハーデス」

 

東区を後に今度は一般エルフが生活している北区へ向かった。北区は商店街と住宅街が入り交じっているのが殆どらしいけれど、破壊の爪痕がはっきりと残されている。割れた窓ガラス、焼失した建物や崩れた建物。それらの撤去活動が主にエルフ達の手で行われ大通りを歩くプレイヤーは素通り。

 

「クマクマ!」

 

「ヒムヒム!」

 

クママ達が突然、撤去作業をしている一人のエルフへ走り出して一人では持てない破片の石壁を一緒に持とうとしだした。

 

「何? モンスター!?」

 

「すみません。冒険者の者だ。うちの従魔達が手伝いたいと行動をしたんだ」

 

「手伝いって・・・・・もしやノーム、サラマンダー、ウンディーネにシルフ? 精霊がこんなところに」

 

「ムム!」

 

「フマー!」

 

「フム!」

 

当惑しているエルフを他所に撤去作業をする。

 

「この瓦礫はどこに運べば?」

 

「あっ、ああ・・・こっちだ」

 

リックのような小さい従魔は小さい石ころを運び、一緒に瓦礫を置く場所へ頑張って持っていく。

 

「・・・・・人間なのに精霊に慕われているようだな」

 

「俺じゃなくても精霊と心を通わせれば慕われるさ」

 

「・・・・・俺達の里を襲う人間と違うようだな」

 

「王女の救援の求めに集まった冒険者だよ」

 

話をしながら作業を続け、小一時間ほどしたらエルフが生業にしている商店の周りは片づけれた。ただし、壁に大きな破損が残っているから商売を続けるかはまだ検討中らしい。

 

「・・・・・手伝ってくれた礼だ。ちょっと待ってろ」

 

店の中に入り奥へ消えていったエルフ。程なくして直ぐに戻ってきた。複数の紙袋を持ってきてそれを差し出してきた。

 

「・・・・・持っていけ」

 

「タダで貰うのは・・・・・」

 

「・・・・・エルフは一度恩を受けたら必ず返さないとならない。損得関係なくエルフの助けとなった者に感謝の言葉すら言えないエルフは、末代まで恥を背負うことになる。それが嫌なだけだ」

 

無理矢理俺に押し付けた後、エルフは店の奥へ戻ってしまった。それから外に出てくる気配がないために、再び歩き始めた。受け取った袋を一つだけ残してインベントリに仕舞う。くれた中身を確認すると乾燥状態の何かが大量に入っていた。開けた瞬間に香りがして・・・・・これ茶葉・・・・・?

 

 

 

『魔茶葉』 品質:8 レア度★6

 

 

煎じて飲むと3分間MP消費が30%減少する

 

 

豚汁の飲料番か。いい物を貰っちゃったな。これは育てられるのか?出来るなら毎日煎じて飲めるな。

ほくそ笑んでインベントリに仕舞いこむと開けた場所に横切った。ここも戦場の爪痕が当然のようにあるのに大勢のエルフ達が列を作って並んでいた。なんだろうな?と興味で足を運ぶと聞こえるのは。

 

「腹減ったな・・・・・」

 

「ママーまだー?」

 

「もう少しだけ我慢してね」

 

「いつまで待たせる気なんだよ・・・・・」

 

「・・・・・」

 

ここは、炊き出しをしている所か?彼等彼女等が立ち並ぶ先へ移動してみると巨大な鍋からスープらしきものをせっせと器に入れて並んでいるエルフの住民に受け渡すエルフ達がいた。

 

「おい、今日はこれだけなのかよ?明らかに昨日より少ないじゃないか」

 

「しょうがないでしょ。帝国人の奴等に食糧庫を燃やされ、中層の畑も滅茶苦茶にされたんだから作れる量も限りあるのよ。文句があるなら後ろの人に譲りなさい」

 

「ちっ! この程度で腹が膨れるものか!」

 

その場で飲み干して乱暴に器を投げ捨てたエルフを相手にする暇もないと、給仕係のエルフ達は仕事を続ける。―――が。

 

「・・・・・申し訳ございません。今日の炊き出しはこれで終了です」

 

まだ受け付けていないエルフ達にとって残酷な報せを聞かされた。当然、それに対する不満を露にする者は少なからずいる。給仕係に詰め寄り、大きな鍋の中を覗き込んで残りはないかと群がるエルフ達。今日はもう食べられないと知る子供達は空腹のあまりに泣きだす。

 

「フム・・・・・」

 

目の前の嫌な光景にオルト達は沈黙する。ゲームの中でもこんな光景を見せられるのは心が痛い物だよ全く・・・・・。

 

「ムムム!」

 

「分かってるよオルト。もしもの為に今日までせっせと用意してきたんだからな」

 

「フム!」

 

「キキュ!」

 

「クママー!」

 

「はいはい、わかってるわかってる」

 

皆に背を押され、腕を引っ張られて炊き出しの場へ更に近づく。そんな不思議な集団と化した俺達をエルフ達は気付かない筈もなく怪訝な目で見てくるのだった。

 

「あなたは一体・・・・・」

 

「リヴェリア王女の救援に応じて馳せ参じた冒険者だ。俺も多くの料理を作ってきたんで協力させてもらう。出来れば皆で料理を分け合って食べ合ってくれ」

 

テーブルに数多の種類と数多の料理をインベントリから出して起き出す。テーブルの前には俺から受け取りエルフ達に配る役としてオルト達が立つ。

 

「あなた達も協力してくれ。一人じゃ流石にさばききれない」

 

「わ、わかりました!皆さん、手伝いますよ!」

 

食事を求めるエルフ達には申し訳ないがランダムで配らせてもらう。文句があるなら食べるなという話だ。再び配膳が始まって料理を配っていく途中で空腹で泣いていた子供のエルフの手にも渡り、料理を受け取った母親が頭を下げて感謝の念を伝えてくる。

 

「具だくさんのこのスープ、美味いな・・・・・」

 

「この丸くて熱いパンのようなものも美味いぞっ」

 

「美味しいー!」

 

「この白い粒の塊は・・・・・穀物か?塩加減が絶妙だ」

 

食べるそばから口々に感想を述べるエルフ達の声。舌に合う味で安心する最中、次々減っていく料理にこの先の未来を見据える。

 

「あー! 白銀さんがいたー!」

 

と、騒がしく人の称号の名前で渾名にする声が聞こえ出した。誰だと見れば、見知った顔のプレイヤーだった。

 

「ふーか?」

 

「はい、ふーかです。炊き出しをしてるんですか?」

 

「見ての通りな」

 

「では、私も手伝いますね。生産職のプレイヤーのやるべきことが広まって他の皆もエルフの人達に手助けをするようになったんで。こんなこともあろうかと、料理をできるだけ作ってきてよかったー!」

 

ふーかも離れたところで作ってきた料理を炊き出し用としてエルフ達に配り出した。しかも。

 

「ここで炊き出しをしてると聞いて!」

 

「あ、白銀さんがいるじゃん!」

 

「俺達も炊き出しに参加するぞ!」

 

「おおー!」

 

料理スキルを取得してるプレイヤー達が広場に集まりだし、一緒に配膳していた女性エルフ達と変わって、彼女達にも食事を分け与える。

 

「あなた達も食べてゆっくり休んでくれ。何も食べていないだろうに」

 

「心遣い痛み入りますっ・・・・・っ!」

 

受け取った料理を涙流しながら食べる彼女の他にも渡して空腹を満たす。

 

「ふーか、俺達は別のところに行くことにしたからここは頼んでも?」

 

「大丈夫でーす!」

 

さて、俺達も防衛戦に参加するか。西のところに行ってみるか。

 

「というわけで来ました、西の門」

 

門の前はプレイヤーの群れで芋の子を洗うような混雑だ。これ、どんな状況?目の前のプレイヤーに話しかける。

 

「これ、どんな状況?」

 

「門を出ないと防衛イベントができないんだよ。門が狭ければプレイヤーが多いと初詣で神社に行く感じに・・・・・」

 

そのプレイヤーが誰と話しているんだ?と風にこっちへ振り返ってきた。

 

「うおっ、白銀さんかっ! え、何でここに?」

 

「防衛戦をしに」

 

「いや、そうじゃなくて。どうしてまだしていなかったのかと」

 

「里の復興作業をしていて遅れたから。これ、誰がトップなのかランキング見れたりする?」

 

「あ、ああ・・・イベントの公式サイトを表示してリアルタイムでランキングが更新しているぞ」

 

ほうほう。これだな。んで、今のトップは・・・・・案の定ペイン達か。

 

「ペイン達はまだ門から出てきていない?」

 

「かれこれ一時間も経過しようとしているな。しかも今回のイベントって他のパーティの戦闘を生中継で放送されているんだってさ」

 

「マジか。待っている間に情報を得られるのか」

 

「ありがたい設定だよな。どんなモンスターが出てくるのか分かれば対処しやすくなる。まぁ、プレイヤー側の方がその対処しやすい職業である前提だけどな」

 

「そういう自分は?パーティで向かおうとしているわけじゃなさそうだが」

 

「今誰とも組んでいないんでね。いわゆるソロプレイヤーってやつだ。最初は一人でどこまで行けるか挑戦した後、野良パーティに入れてもらうつもりだ」

 

そういう楽しみ方もあるという話を知り、門を通るまでそのプレイヤー―――ナオツグと談笑を交わした。

 

プレイヤー達の戦闘の様子を見ながら。

 

「わーい、鹿が大量だー」

 

「速い速いっ。え、なにコレ。うわ、壁の耐久値がゴリゴリ減って・・・・・」

 

しかも高レベルだから、とあるプレイヤー達の攻撃で以てしても一撃で倒せなくなってる。一体を倒している間に他の鹿のモンスター達が角で壁の耐久値を削っている。

 

「なぁ、ソロで大量の鹿相手にできる?」

 

「無理だろこれ。流石の前線組も撤退を選択するほどだぞ」

 

撤退したプレイヤー達の姿は、もう見られない。

 

「俺達も頑張るかオルト」

 

「ムム!」

 

「流石に死ぬんじゃね?」

 

「死ぬ前提ですが何か」

 

「あ、はい」

 

ようやく俺達も門を潜れる距離にまで進めれた。ソロで挑むナオツグに健闘を祈り、俺達も門を潜った。

そして、見られる側も見る側になる予想外な事実を知った。門の外に出た俺達の左右に他のプレイヤー達もいたのだ。ナオツグは見当たらないな。

 

あちらから見える景色は一致しているか、こっちに手を振ってくるプレイヤー達。手を振り返すオルト達にプレイヤー達は歓喜した。

 

視界の中には既にREADY・・・・・GO! と表示が出た後だが、敵はまだ出てこない。

隣のエリアにいるプレイヤーが、ルフレちゃーん! と叫びながらこちらを見ている。

試しにそちらに移動して見ると、ある程度近付いたところで透明な壁が赤く発光した。

壁には進行不可、と表示されている。

なるほど、こういう仕様ね・・・・・インスタンス形式だけど、他のプレイヤーの戦っている様子が見えると。中々に臨場感があって、良い感じじゃないか。そしてこうしている間に門の前にいる大勢のプレイヤー達がこの様子を見ていると。

 

前方は森だらけ。後ろは里とは思えない石造りの高い壁。森の奥から現れるんだろうなぁーと予想したところでモンスターの群れが飛び出してきた。その数は10。懐かしい初期モンスターのアルミラージだ。ただし、黒い靄を纏っている。

 

「【挑発】!」

 

前に出ながらスキルを発動する。アルミラージ達は一斉に俺の方へ押し寄せてモフモフされに来てくれた。その間、オルト達がアルミラージを攻撃して余裕で撃退のすぐ後に『蟲毒の森』、『鋭角の樹海』、『鉤爪の樹海』の初期モンスターの群れも撃破した。それらも全部身体から黒い靄を発している。

 

まずは前哨戦というか、低レベルのプレイヤーでも余裕な範囲内。

そんな敵モンスターだったが、途中から徐々に種類のものが増えてくる。

そんな中でも特に鬼門となったのが、鹿のモンスター『シャープディア』による突進だ。レベルと共に20前後の鹿の群れが、横幅一杯に広がって一斉に黒い靄を纏い壁に向かって突進していく。

 

高さがデカければ力も強いのは必然的だ。レベル以前にステータスがフェルを除いてオルト達より高いとなるとオルト達が苦戦するのは目に見えていた。壁には行かせまいとするオルト達の懸命な働きを嘲笑うかのように鹿達が跳ね飛ばした。

 

「【挑発】! 【パラライズシャウト】!」

 

鹿達の意識を強制的に変えさせ、フェルが鹿のHPバーを砕く。

 

「大丈夫かオルト達」

 

「ム、ムッ!」

 

「―――!」

 

「ん、これからも何度も跳ねられると思うが頑張って堪えてくれ」

 

その後、間の二つの集団は移動速度の遅いモンスターだったため撃退できたが・・・・・。

数えて三つ目の集団が再び『シャープディア』、しかも数が30に増えていたことでオルト達に限界が訪れた。オルト、ルフレ、ゆぐゆぐが【挑発】から免れたシャープディアに狙われてあえなく退場されてしまった。フェルの身体にリック、俺の頭にファウが乗っているから攻撃されずに済んだが、俺と同じ壁役が一気に減ったのはきつい。零れたシャープディアはすぐにフェルが仕留めたが相手は止まってくれない。このインターバルの間に・・・・・。

 

「【武装展開】!」

 

久方ぶりに発動するスキル。身体に兵器を装備してしばらく待つと、森の奥から大量のベアーの集団が現れた。

 

「フェル、下がれ! 【攻撃開始】!」

 

砲身から放たれる光が、ベアーの身体を後続中の別のベアーにまで貫く。ダメージエフェクトの粒子が大量に残して消失した。

 

 

・・・・・。・・・・・。・・・・・。

 

・・・・・。・・・・・。

 

・・・・・。

 

 

「白銀さん、すげー強いのな」

 

「ロボット関連であの兵器のスキルを手に入ったのか?」

 

 

「あれを装備してからモンスターを殲滅しまくってて、もはやユルゲーになってるわ」

 

「運良く当たらなかったモンスターは銀色の狼が狩るから隙がねぇ」

 

 

「そう言えばフレンドから聞いたんだけどよ。あれ、フェンリルだってよ」

 

「マジで?あれ、サモナーのモンスターじゃなかった?テイマー?」

 

「知らないよ。でもフェンリルの登場にサモナー界では盛り上がってるけどな」

 

 

「そろそろ前線組の最高記録なたどり着くんじゃね?」

 

「まだ先だろうが、恨めしいあの鹿どもを蹂躙する所を見せてくれ・・・・・っ!」

 

 

・・・・・。・・・・。・・・・・。

 

・・・・・。・・・・。

 

・・・・・。

 

 

どれぐらい時間が経った?・・・・・もうちょいで一時間か。インターバルの間に現在のランキングを確認してみるか・・・・・おっ、俺の名前が載ってる。そんでペイン達の撃破数が更に加算されているから再戦しているようだな。トップに踊り立つには一戦を長く、一戦で多くの撃破数を獲得しなくちゃならないかもな。

 

「フェル、疲れたか?」

 

寄って訊くと、ぺしっ、と俺の顔にモフモフの尻尾を叩きつけて来た。いらん心配はするな、と伝えたいのかな?そのまま毛並みと柔らかさを堪能しているとリックがフェルから離れ俺の肩に乗ってきた。

 

「ギュウゥ・・・・・」

 

「随分とやつれた顔をしているなお前」

 

光胡桃を与えてリックの気力の回復を試みる。大好物の餌に目を輝かせて食いつき、一心不乱に食べるリックを触りつつ眼前を警戒する。レーザーですっかり地面が穴ぼこだらけになっていて、移動の阻害になりかけているなぁ・・・・・と思った俺はふとある事を思い至った。地形を弄れるのでは?と。そしてもう一つ。罠的なアイテムも有効打になるのでは?とも。

 

「お前等、俺が合図を出したら目を閉じてくれ」

 

「グルル」

 

「キュウ?」

 

「ヤー?」

 

「一瞬で眩しく光る物を使いたい。フェル達までその光で目が見えなくなるのは困るからさ。わかったか?」

 

頷くフェル達。MPを消費して閃光手榴弾を複数ほど作ったら、インターバルが終わった瞬間に森の奥から現れるシャープディア50の集団・・・・多すぎだろ!?

 

「先手必勝の閃光手榴弾だ!」

 

左右と中央、更に後方、他は適当に投げつけ疾呼する。

 

「目を閉じろ!」

 

フェル達は硬く目を閉ざした。俺も腕で目を隠すよう翳した直後。目の前が真っ白に染まった。

強い光で目の前が見えないもの、程なくして閃光が収まって眼前の光景が見えるようになった時―――。

 

地面に横たわっていたり、周りが見えないのか動きがふらついてるシャープディアの群れが一匹も残らず突進攻撃を止めていたのであった。

 

「目を開けろお前等! 今が狩り時じゃあー!」

 

これ、凄く使えます! 楽に倒せれる! ひゃっはー!

 

 

・・・・・。・・・・・。・・・・・。

 

・・・・・。・・・・・。

 

・・・・・。

 

 

「あああああ!! その手があったかーっ!?」

 

「効率的で合理的な手段の方法を発見したぞあの人。―――さすシロ!!」

 

「閃光手榴弾なんて持ってねぇよ!?」

 

「うわー!! それは思いつかなかったよ!!」

 

「足の速いモンスターの目を奪うとあんな感じになるのか・・・・・」

 

「(錬金で作れるけど素材がなぃいいいいい!! せっかく儲かるチャンスなのにぃっ!!)」

 

 

・・・・・。・・・・・。・・・・・。

 

・・・・・。・・・・・。

 

・・・・・。

 

 

天啓を得た俺に死角など無だ!閃光手榴弾や手榴弾、機械式の罠を創造して原始的な攻撃を繰り返していたら敵のレベルはとうとう50台、ペイン達の最高記録を塗り替えようとしていたのだった。さて次は確か・・・・・。記憶に残る情報を思い浮かべようとした時だった。森の木々の揺れる様子がはっきりと分かる。臨戦態勢で構えていると林の中から勢いよく飛び出した。俺達の頭上を飛び越え、防壁との間に土煙を撒き散らしながら着地する。

 

「竜・・・・・いや、ワイバーン!」

 

こいつも黒い靄を纏った体躯に大きなコウモリのような翼、爬虫類のような鱗とヘビの尻尾、分かり易く言うなら竜と近似の姿。

 

俺がこいつをワイバーンだと判断できたのは、プレイヤー達の戦いに映っていた竜種と比して細身の体と・・・・・上部に表示されたその名前。

 

威嚇しつつ激しく動いているが、確かにそれは『ワイバーン Lv50』と読めた。

 

「防壁に攻撃しない、直接プレイヤーを狙う中ボス類だなお前は」

 

 

一歩踏み出した直後、ワイバーンが動く。

大きく羽ばたいて風圧で俺達に目くらましをした後、鳥のような足で俺を掴み上げた。

 

「お?」

 

「キュ?」

 

「ヤー?」

 

そしてそのまま羽を動かして大きな体を浮かせていく。リック達諸共、俺はその足に掴まれたまま、空へと昇った。

 

「―――そいつは悪手な行為だぞ?」

 

逆にワイバーンの足を離さないよう掴み、大きく息を吸う。

 

「【咆哮】!」

 

至近距離からの行動阻害のスキルを食らい、ワイバーンはビクッと動きを停めてそのまま重力に逆らえず地上へ落下する。

 

「フェル!」

 

すぐに飛び掛かってくるフェルがワイバーンの首に噛みつく。リックとファウも自分なりの攻撃をし、俺も【悪食】と【生命簒奪】でHPとMPの底上げをしてモンスターの群れ、次のウェーブの敵が来る前に倒せた。念のために閃光手榴弾を創造しないと。

 

その余念が功を制した。

 

次のウェーブに出てきたのは大量のシャープディアに入り交じってるベアー。多めに作った閃光手榴弾を一度目と同じ感じに投げて―――迸る閃光の直前に目を閉じ、めまいの状態異常を回避する。シャープディアとベアーがめまいを起こしている間にレーザーを撃ち、フェルの爪と牙の餌食にして数を減らしていく。

 

そこから先も中ボスであるレベル55のワイバーンも全て登場直後に撃破。こちとら『空の帝鳥ジズ』を倒したんだぞ?ワイバーン相手に負ける要素は皆無だ!

 

「壁の耐久値もまだ80%以上はある。下手なミスをしなければまだ上を目指せるな」

 

現在モンスターの頭上に表示されているネームとHPバー、レベル59の最後の一匹のウルフを撃破してから気が付くとレベル60の中ボス戦へと至る。

 

またワイバーンが出るのか、それとも別の敵なのか・・・・・。

 

体勢を整えながら森を注視していると、やがてそれは咆哮と共に現れた。

 

 

『グァァァァァッ!!』

 

 

ワイバーンとは明らかに違う、どうして空を飛べるのかという強靭な体躯。数倍はありそうな羽に、威厳を示すような立派な角、トサカ・・・・・。

 

「ドラゴンまで出るのかよ!?」

 

「キキュー!?」

 

「ヤーッ!?」

 

敵は『ウッドドラゴン』で、レベルは60。身体が樹木の根で折り重ねて形作ったような姿。両翼は皮膜代わりに枝葉。丸太のような蔓の尾。それに他のモンスター達より黒い靄の濃度が高くて全身が真っ黒だ。小手調べにレーザーを撃ってみたら、ウッドドラゴンに直撃する直前に結界の如く魔方陣が浮かんでレーザーを完全に防いだ。

 

「んー・・・・・【攻撃開始】!」

 

爆音と共に全ての武装が火を吹く。集中砲火を食らうウッドドラゴンはジッとその場から動かず、結界を張って俺の攻撃を防ぐのみ。・・・・・意味はなさないか。

 

「グルル!」

 

砲撃を止めてウッドドラゴンを見据える俺の腕を噛みつきだしてきた。え、何だフェル。地味にフレンドリーファイアが発生してHP減ってるんだけど。

 

「おい?」

 

あろうことか俺を壁の方へ連れて行こうと力強く引っ張っていこうとする。

 

「戦いを止めろってことかよ?」

 

「・・・・・」

 

見上げてくる鋭い眼差し。肯定の意を示すかのように、噛む腕から放してくれた。

 

「うーん・・・・・何か訳があるんだな?」

 

「・・・・・グル」

 

「なら、お前の言う通りにしよう。あと何回かこの戦いはするけどあのウッドドラゴンが出てくるまでならいいだろ?」

 

「グルル」

 

首肯するフェル。フェルがウッドドラゴンとの戦いを回避するほどの事態・・・・・幻獣種ではないだろうに何を感じた?っと、こうしている間に次のウェーブのモンスターの群れが、シャープディアの集団が押し寄せてきているし!

 

「フェル、訂正。あの鹿共なら倒していいだろ?」

 

それなら構わないと首を縦に振るフェルを横目に閃光手榴弾を投げてシャープディアの目を奪う。作業は効率的にしないとな。一網打尽にし終えて―――。

 

「ちょっ、待っ!?」

 

終えない!めまいしたシャープディア以外のシャープディアの集団が更に出現してあっという間に迫ってきた!

 

「フェル! ウッドドラゴンを巻き込むけど怒るなよ! 【挑発】! 【攻撃開始】! 【毒竜】! 【エクスプロージョン】!」

 

フルバースト!津波の如く森から現れるシャープディアを倒していくが、数が減らないどころか増えていく!

 

「【覇獣】! 【グランドランス】!」

 

ベヒモスの姿と化して地面から岩石の槍を複数出現させてシャープディア達を穿つも、その岩石の槍すら足場にして突進を止めない行動に目を張る。

 

「【グランドランス】! ―――【アルマゲドン】!」

 

壁の前に岩石の槍を出して盾代わりに張る。その後は空から降ってくる空気と摩擦して燃えてる隕石からフェル達を守るために身体の下に隠して身を丸くする。

 

次の瞬間。この場に大爆発が発生する。吹き飛ぶシャープディア。全方位に結界を張るウッドドラゴンの姿を視界に入れ、爆発が収まって後ろの槍の壁も壁の耐久値を多少減っていたが守って崩れた。

 

「あの結界は厄介すぎるだろ。どう攻略しろってんだ」

 

流石にノーダメージはないだろ・・・・・俺もそうだろ?いやいや、貫通攻撃があるから無敵じゃないんで。

 

「えええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ・・・・・・・・」

 

今度こそ一網打尽にしたのに、スタンピードが収まらない。ウェーブが途切れない。シャープディアに交じってこれまで撃破した全モンスターが大量に押し寄せて来た。口からビームを撃って眼前のスタンピードのモンスターを倒すも、まるで某蟲王のごとく倒しきれない。あっ、ワイバーンまで出てきやがった!!

 

「・・・・・上等だ! 限界までやってやらぁっ! 【悪食】! 【大嵐】!」

 

MPの補強をしつつ大嵐を召喚。シャープディア達がダメージを受けている証の、ダメージエフェクトをまき散らしながら空へ巻き上げていく。

 

「【大竜巻】!」

 

ワイバーン諸共に一部の大量のモンスターを閉じ込めてダメージを与える。空から降って地面に激突する大量のモンスター達がそれだけで消失していく。それでもなお倒し切れていなかったモンスターもいたが、フェルがすかさず狩ってくれるもスタンピードが収まらない!

 

「もうこの辺にしておこう。戻るぞ!」

 

【覇獣】を解除して壁まで戻って触れるとアールヴの里に帰還した。

 

 

『・・・・・』

 

 

そして直ぐに数多のプレイヤーの眼差しを浴びることに。先に退場したオルト達、待っていたサイナ達と合流する。

 

「サイナ、メンバーを入れ替える。この一戦でよーくわかったわ」

 

「どの従魔と入れ替えます?」

 

「一先ず全員だ。長い戦いをしたから小休止させておきたい」

 

「かしこまりました」

 

「それともしサイナも一緒に戦って欲しい場合はオルト達はどうすればいいと思う?」

 

「どこかに預けられる場所があると預けれます」

 

・・・・・あそこしかないんだよな。取り敢えず、オルト達とミーニィ達と入れ替えて再戦だ。

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