「白銀さああああああああああああああああああんっ!」
「うぉおおっ!?」
誰だか知らないプレイヤーが離れたところから、スライディング土下座をしてきて俺の足先まで滑ってきやがった! え、誰だ?
「無礼を承知してお願いします! どうか情報を教えてください!」
「え、何の?」
「鹿相手の攻略法!」
ああ・・・・・俺の戦い方を見たか知ったからか。でもなぁ・・・・・。
「閃光手榴弾があったからこそ戦い抜けれたんだ。逆に言えば閃光手榴弾がないと先には進めることもなく撤退するばかりだったぞ」
「じゃあ、どうしたら鹿相手に立ち回れますか?」
「その前に土下座やめぃ。注目浴びてるんだからよ」
白銀さんだ、とか囁き声が聞こえてくるし何とか立ち上がらせて、腰を落とせる場所を探し路地裏へ入り込んで質問に答える。
「さっきも言ったが、閃光手榴弾があったから有利な戦いに持ち込めた。つまり、デバフアイテムやスキルがあれば何とかできるんじゃないかって思う」
「あの大量相手に?」
「大量には範囲攻撃をするしかないだろうな。それこそステータスを上げるバフ効果があるアイテムを使うとかさ」
「な、なるほど・・・・・」
「後は誰もが分かっている連携かなー。防衛戦で出現するモンスターの情報も出回っているだろうし、自分なりに工夫をして限界まで挑戦する感じだ」
「白銀さん個人的にはどんな職業で固めればいいと?」
難しいことを質問してくるな。
「前提は鹿の足を止めることが出来る手段を持つアイテムとスキルを使えることだ。何なら爆発系のアイテムも使えると面白いかもな。機械の町じゃあトラップのアイテムもあっただろ。地雷を設置したら鹿達が面白い具合に吹っ飛んで行ったからかなり有効だった」
「それがこの里にもあったらと残念で仕方がないですよ・・・・・」
「で、どんな職業がいいと言われても断言できない。俺はまだ重戦士とテイマーしか遊んでないから他の職業のスキルは網羅していないんだ」
「じゃあ、大盾使いとしての意見を聞かせてもらうと?」
「スキル【挑発】が有効的だな。モンスターのヘイトを一気に集め、大盾使いとしての役割の発揮、HPと防御力が高ければモンスターを集めて壁に行かせないようにできる。この取得方法は十体以上のモンスターの注意を一度で奪うこと。アイテム使用可、だ」
里の外に行けるらしいから試しに取得してみれば?と言葉を付け足す。
「ありがとうございました! 頑張ってみます!」
「頑張れよー」
「あ、あと最後に・・・・・白銀さんはどこまでいけました?」
「ん? 何とか65まで行ったぞ」
名も知らぬプレイヤーと話し合いの後に上層へ。
「ただいまー!」
「お帰りなさいませ。・・・・・どうでしたか?」
「ああ、倒さず無事に解放したよ。ウッドドラゴンも里の守りに入ってしばらくしたらアールヴ家のエルフに会うって言ってた」
「そうですか、よかった・・・・・」
安堵で胸を撫で下ろす彼女の背後から長老が来た。
「無事にウッドドラゴンを救えたか。重ね重ね感謝する」
「原因は帝国が悪魔と手を組んでいたことだった。でも、悪魔が帝国を利用している感じだから元凶は悪魔になるか?」
「悪魔か・・・・・ここしばらく侵攻してこなくなっていると思えば、方法を変えたのだな。しかし、ウッドドラゴンが里を守ってくれるのであれば時期にモンスターの襲撃も収まるだろう」
「それでも油断はできない?」
頷く長老。
「利用されているとはいえ、帝国も十分な力で攻めて来ているはずだ。強力なウッドドラゴン以外にも恐らく別の手段も用意していると警戒はするべきだろうな」
まだあるのか。だとしたらウッドドラゴンの代わりのモンスターは何だろうな?
「里の食糧難はどうするべき?」
「グリフォンを飛ばして配下の者達に買い出しを行かせている。往復で三日は掛かるが今は何とかなる」
「それでも、市民達への炊き出しは困難に極めています。報告によると未だ逃げ出してしまった家畜たちが戻ってきていません。里の内部にいるのかもしれませんが、防壁の守りで戦士達は探す余力がありませんよ」
「むっ、そうか・・・・・」
そんなのいたっけ?家畜小屋みたいなのはあったけど、全滅していたのかと思った。
「勇者殿」
リヴェリアが俺のこと教えたのか。まだ勇者と呼ばれるのは慣れないな。
「この里にいる間で構わない。里内に散らばってしまった家畜達の保護を頼めないだろうか」
「それは他の冒険者達も含まれているか?」
「その通りだ。後日、他の冒険者にも協力を申請する。渡す報酬は同じだが、より数多く保護してくれた者に報酬の数を増やそう」
どんな報酬なのか気になるから受けることにしたら、コールが届いた。
『もしもしハーデス?』
「イズ、どうした」
『一応念のために確認だけど寝泊まりできる場所はもう見つけてあるのかしら?』
「ああ、勿論だ。そっちは?」
『前回の経験を活かして鍛冶師のエルフの所でセレーネと働いて、宿泊を許してもらえたわ』
「そうか。こっちはリヴェリアの家で念のためにお前等も宿泊できるよう頼んだけど、自分達で見つけたのならいいな」
『彼女の家?どこにあるの?』
「上層だ。リヴェリアは王族の娘で世界樹ユグドラシルがあるぞ」
「あの大きな木が世界樹ユグドラシル!?」
『しかも古代の樹木』
「・・・・・ちょっとセレーネと話し合ってくるわ」
通信が切れた直後にまたコール。
『ハーデス君。調子はどーお?』
「順調だ。そっちは?」
『ぼちぼちだねぇ。モモちゃん達とイベントしてたけどレベル50以上は難しいです。数が多い多い、あっという間に何匹も抜かされちゃってミッション失敗しちゃいそうなのが毎度だよ』
『レベル50以上ってことは55も?』
『まだ44かな。当然ハーデス君はそれ以上なんでしょ?』
「ああ、65までは行った」
『な、65・・・・・』
「これから65のボスモンスターはどうなるかわからないけど、もし変わっていないようだったら頑張れ」
『待って待って。不吉なこと言わないで?レベル65のモンスターって何?』
「それを教えちゃ面白味はないだろ。話題を変えさせてもらうがイッチョウは宿泊できる場所を見つけたのか」
『ハーデス君を見倣って何とかね。ハーデス君はどこに?』
「リヴェリアの家、場所は上層だ。王族しか入れない世界樹ユグドラシルがある場所で寝る」
『・・・・・ちょっと話し合ってくるね』
また切られた。何で話し合う必要があるんだ?個別に寝泊まりできる場所を確保できたんならそれで問題ないだろうに―――またコール。
『ハーデス。今日はもう防衛戦に出ないのかい』
「ペインか。また行くつもりだがそっちは順調?」
『ああ、君に記録を追い越されてしまっているがまだ届く範囲内だからね』
「(記録?そういえば見ていなかったな)ははは、こっちは奥の手がわんさかあるからな。簡単に負けるつもりはないぞ」
『それでこそ勝ちにいく甲斐があるよ。ところでだが、宿泊する場所は確保してるかい?こっちは目途がつきそうなんだ』
「当然だ。お前等の分も念のために確保してるけどどうする?」
『ならお言葉に甘えさせてもらうよ。場所はどこかな』
「上層だ」
ペイン達は素直に来ると。通信を切って長老へ振り返る。
「長老、俺の友人達がここへ集まってくるんだが」
「娘から話は聞いている。構わないぞ。勇者殿の友人なら何人でも誘いたまえ。代わりにこの筋肉の美談を語り合わせてもらうがね」
「(頑張れお前等)」
その後、イッチョウとイズ達もここへ来たいという通信が届いた。何も知らずのこのことやってくる哀れな連中に合掌・・・・・。
命運を祈った後、防衛戦へ再出撃を果たしに北門へ足を運ぶ。MPを消費して閃光手榴弾の補充は万全だ。サイナを連れながら次の戦い方を一緒に話し合ったら、北門で防衛戦しようとする大勢のプレイヤーが自分の順番を待っていた。あ、上層へ行くときは夜の19時からでお願いとメールを送らなきゃ。
そしてペイン達に記録を追い越させないために戦いに身を投じた。
「【
初めて使うスキルを発動する。全ての装備が溶解してドロドロになって俺の全身を包み込むそれは溶岩となって、俺は溶岩の中に閉じ込められる形でラヴァ・ゴーレムになった。
【
「【溶岩流】」
溶岩の身体から溶岩がフィールドの端とモンスターに向かって流れ出す赫赫たる赤緋色の川。ゆっくりとだがモンスターの進む場を奪っていくのが目的ではない。ラヴァ・ゴーレムと化した俺が移動するための『道』を作ったんだ。AGIが0だろうと移動と滑っての移動は別物だろう?溶岩で作った道で流れるように移動する俺は溶岩の手でモンスター達を蹂躙する。
「【火山弾】」
身体から天に向かって飛び出す熔岩の塊。少し遅れて目の前のモンスターの集団に直撃、燃焼ダメージが入り落ちた熔岩が形を崩して地形ダメージとして残る。真っ直ぐ放つこともできるし何より飛距離が長い。その距離は600Mだが、避けられやすいのが難だな。
それでも、この状態でサイナの援護もあってワイバーンを攻略、64まで壁の耐久値を何とか守り抜けた。さて、何が出る?ウッドドラゴンは支配から解放されたから・・・・・。
「ふははは!先日は侮っていたために遅れを取ってしまったが、今回は一味違うところを見せてくれるわっ!」
―――何でアスタロトがまた出てくる?
「・・・・・暇なの?」
「違うわっ! ええい、貴様と言葉を交わすのもここまでだ。帝国の技術により人工的に産み出されたモンスターによって滅べ!」
それはアスタロトの後ろから現れた。ぶっちゃけて言うとキマイラだ。頭が獅子、胴体が鹿(山羊じゃないのか?)、尻尾が蛇の複合モンスターが俺達の前に佇む。
「行け、キマイラよ! あの愚かな人間を噛み砕け!」
ガォオオオオオオオオオオオオオッ!
アスタロトの命令で牙を剥いて襲いかかってくる。だけど・・・・・。キマイラが熔岩の身体に噛み付いてきたところを狙って抱擁、熔岩の腕の中に抱き締められHPのゲージがみるみるうちに減っては、HPバーが砕けた。キマイラはHPの減り具合によって暴れだしたが、熔岩の身体にダメージを与えられなかった。この状態は水魔法しか通用しないからだ。だって、熔岩とマグマの塊だもん。
「・・・・・は?」
「えーと、ごーめんね♪」
可愛く謝ってみたが極薄な反応された。放心しているからだろうな。
「な、な、なっ・・・・・」
「ん?」
「ち、ちくしょうーっ!! 覚えてろよ貴様ー!?」
あ、半泣きして帰ってしまわれたアスタロト。そのあと70レベルまでも初めて挑み、出てきたのは如何にも堅牢そうな鋼鉄の身体のゴーレムの集団。足が遅そうだなぁ、と思った俺の考えを馬鹿にするかのように、互いの肩に腕を回して二人三脚ならぬ十人十一脚の姿勢に入った。いや、まさか・・・・・
「サイナ、壁に触れろ! 離脱だ!」
指示を出した同時にゴーレムたちが、重厚感を感じさせないトラック並みの速度で駆け出してきたのだった! 溶岩の腕と身体で立ち塞がるも地形ダメージが発生していないおろか、ラヴァ・ゴーレムのHPを全部削る突進力に目を丸くした。
「マスター!」
「【カバームーブ】!」
【
「―――あんなの無理に決まってるだろっ!?」
うがああああ!と無事にミッションをクリアできて喜ぶ前にあのゴーレムの対処方法を考えなきゃならない。叫ぶ俺の周囲にいるプレイヤーが奇異的な視線を送ってくるが気にしている場合じゃない。
「サイナ、あのゴーレム達の行動パターンは何だ」
「【一心同体】。数秒間だけ全てのスキルを無効化にするものです」
「無効化のスキルかよ。【
「いえ、二人以上の者が触れ合っている状態ではないと使用できません」
となると、ガッチガチに固めているゴーレム達を崩す方法は一つしかないんだがな。
「ハーデス」
「ん?」
名を呼ばれ振り返れば、ペイン一行がいた。
「ハーデスでも攻略できないモンスターが現れたのかよ?」
「というか、真正面から挑む全プレイヤーでも無理な話だドラグ。十人十一脚でスキル無効化の状態で突っ込んでくる相手にどう倒せと?」
「うん、絶対に無理だねそれ」
「通常攻撃で倒せねぇの?」
「トラック並みの速度で突っ込んできますが何か」
「・・・・・無理だな」
ペイン以外、そういう相手と戦うのは無理だと俺の気持ちを汲んでくれる。ペインは真っ直ぐ俺を見つめながら薄く笑った。
「だが、勝つ算段はあるのだろう?」
「一つだけなー。それには時間が必要だ。俺達二人だけじゃ厳しすぎる。インターバルが一気に短くなるから一息吐く間もない」
時計を見れば19時になろうとしていた。
「そろそろ俺は行くけどまだやってるか?」
「俺達も行くよ」
合流する形となったペイン一行と上層へ。お互いどうやってウェーブを乗り越えてるかを話し合いをする。
「フレデリカとドラグを軸にしていたのか」
「数は多いが、避けようもしない突っ込んでくる相手に当たらない攻撃はないからな」
「でもやっぱりワイバーンは大変だよ。空飛ばれちゃあ私の魔法でも届かないもん」
「俺らは中・近接のスキルしかないもんな。でもま、降りてくるところを強襲すれば問題なかったがな」
「途中で止めたのは?」
「回復する余裕がなくなったからね。それにこちらが範囲攻撃のスキルがあろうと暴力の数にはやはり厳しく、フレデリカが死に戻りしそうだったり壁の耐久値も削られていく」
なるほどなるほど、戦い方は千差万別なんだな。
「ハーデス、お前はどうなんだ?大盾とテイマーじゃ苦労する感じだがな」
「それをカバーするのが強力無比なスキルと、ペイン達も知っている強力な装飾アイテムだ。もう普通の大盾使いじゃないのは自覚しているけどな」
「確かに。足の速い大盾使いなんて絶対他にもいないよ。装飾アイテムでステータスの補助していてもだよ」
「あと閃光手榴弾で目を潰せば動きが停まることも分かったから、大盾使いでも余裕で対処できるし」
「スキル以外にも活用方法があるのか。それは盲点だった」
今回のイベントについて語り合いながら上層へ辿り着く前にイッチョウやイズ達と中層で落ち合った。
「やあ」
「待ってたわ。ペイン達と一緒だったのね」
「新記録を叩き出した後にな」
「うん、二位のペイン達を大きく突き放してるわね」
「ふっふっふ。これでパーティと個人の討伐数1位の報酬は貰ったも当然だ。で、イッチョウ。その連れは?」
「ああ、うん。一緒に連れて来ちゃった」
カワカミ-100代とまゆっちにクリスの顔触れに、大丈夫かな? と俺に窺う目で見てくる。
「寝るだけなら問題はない。食事に関しては判らないな。ダメだったら諦めてくれ」
「寝る場所を確保できれば問題ないさ」
「もともと確保してあったのにどうして来たんだ?」
「ハーデスと一勝負できないかなーって。勝ったら取得しているスキルを全て提示するルールで」
ほほう? なかなか面白いことを言ってくれるじゃないか。手をワキワキしながら妖しい笑みを浮かべ不敵に言う。
「そっちがそれなら、俺はリアルでちょっとだけ気になっていたその前髪を弄らせてもらおうか」
「や、止めろっ!? これは私のトレードマークみたいなものなんだぞ!?」
「拒否権はないぞ? そっちから勝敗後の勝者の特権を言い出したんだからな。それとも物理では倒せないモンスターの所に連れて行ってやろうか?」
「そ、そんなのいるわけが・・・・・っ!」
にこぉと満面の笑みを浮かる。
「強敵との戦いに燃えるお前が、夜間のゴースト系のモンスターが現れる森のフィールドを頑なに入ろうとしなかった、って直江兼続からの情報が」
「大和ぉおおおおおおおおおー!!!」
はい決まりー。PVPはイベントが終わってからだな。
「逃げるなよ?逃げたら夜中お前の部屋で・・・・・心霊現象が起きると知れ」
「私の部屋に何をする気だ貴様っ!?」
「え?そりゃあ・・・・・っと話し込んでしまうなこれ以上は。それじゃ、改めて上層に行くぞー」
「おい待て! あからさまにはぐらかすな、ログアウトしたら夜が気になって眠れなくなるだろう!?」
「トイレの中で寝れば?そうすれば最悪の事態は免れるぞ」
「どういう最悪の事態の意味だそれ!!」
スルー。俺が先導して上層へ続く山の道を歩き、途中で立ち会うマッチョなエルフの衛兵と話を交えた後に、イッチョウ達を正式に王族の家に招き入れた。
「暗っ!」
「あっ、鑑定したら本当に『世界樹ユグドラシル』って表示するね」
「古代樹って名称もあるんだね・・・・・これの素材、手に入らないかな?」
セレーネさん。何故こちらを見るのかな?イズも彼なら・・・って意味の視線を送るんじゃないよ。
「手に入っても俺は武器にしないぞ。量によるが」
「じゃあ、何をするの?」
「リヴァイアサン戦に備えて―――船にしようかと」
おい、なに全員。こいつ何を考えているんだって目線は止めろ。
「何んで船?武器にすれば強そうなのにさー」
「リヴァイアサンは海上戦になるかもしれないんだぞ?運営が自分で造船する材料を調達しろってクエストを用意してたらどうするよ」
「普通にそこら辺の材木じゃ駄目なのか?」
「それで耐久値が変動設定されていたらどうよ。木造よりも耐久度が高い鉄の船を作るために、莫大な鉄鉱石の数を集めなきゃならないだろうしさ」
「船を借りる設定とかは?」
「あると思うけど、当たり前のように金でレンタルするんじゃないか?最高は1000万Gとか」
「もしそれが本当に設定されたら、どんな船を借りれるのか楽しみだよ。木材を集めて作ってもらう方もね」
と、セレーネが言う。ドレッドも話に加わってきた。
「対一多数の戦いになる船上だと、思うように戦いづらいだろうな。海上戦だったら離れたところから攻撃するならよ」
「あー、遠距離の攻撃が可能なアーチャーとガンナーが有効か。魔法使いは中距離までしか届かないもんな魔法。まさかとは思うけど船に大砲積んでるとか?それとも自力で用意するのかも?」
大砲という言葉に目を輝かせるセレーネ。
「魔法で動く船とかアリか?」
「可能性だけなら大アリかもしれないぞ。個人的には戦艦みたいな船を乗ってみたい」
「ビームが出る方か?」
「そうだな。出る方が盛り上がるだろ」
先のイベントの話で盛り上がり、勝手知ったるかの如く王族の家の玄関の扉を開けて中に入る。皆を夕餉の間に案内して矢先に―――。
「長老、友人達を連れて来た」
「ようこそ勇者殿の友人達よ!! アールヴの里の長老として皆をこの筋肉の身体で歓迎しよう!!」
黒光りの筋骨隆々の身体を更に強調させるブーメランパンツ一丁でするマッスルポーズと共に笑みを浮かべる口唇から窺える白い歯がキラリと輝いた。
何も知らなかったイッチョウ達に空白の時間が訪れた。
「む?どうした?」
「突然の長老の登場に言葉を失っているだけだから。後から来るものかと俺も思ったし」
「おお、いきなり入ってきたところで挨拶されてしまうのは反応も遅れるか」
本当は別の意味で言葉を失っているんだけどな。
「改めて挨拶する前に食事をしよう。勇者殿の友人が20人連れてきても問題が無いよう用意させてもらった」
「里の食糧事情を知ってるのにそこまで用意されるのは逆に委縮ものなんだが?」
「何、明日は勇者殿達にお願いする立場だ。冒険者達の働き次第ではそれも改善するのだ。勇者殿が気にする事ではないよ」
何となくだが明日何をやらされるのか分かってきた。
「さあ、夕餉の時間を楽しもう」
「話はその後でな?」
「ふふ、勿論だとも」
きょとんとする面々に敢えて何も言わない、何も教えない。食事に喉が通り辛い状況にしたくないからな。
長い一列のテーブルの前に座り、俺達の前にエルフの従者たちが出す料理の数々に感嘆の息が漏れる。高級料理と彷彿させる豪華兼豪快さはないが、鑑定すると凄まじいステータスのバフが付いていたのだ。
「消費するMPの20%がカットだって!?」
「こっちは一定時間のMP自動回復なんてもんがあるぞおい」
「食べる度にSTRが加算する?おいおい・・・・・何だよこの料理っ」
「AGIとDEXも上昇する料理、凄いな」
この里でこんな料理が作れるのならば、俄然明日の行動にやる気が出るものだ。
「長老、この料理のレシピを教えてもらえても?」
「うむ、構わないぞ。ただこれは、代々アールヴ家の料理人が受け継がれた歴史あるものだ。勇者殿以外に安易にレシピの公開はしないで欲しい」
「かしこまりました。確と心得ます」
後に料理長のエルフ(マッチョじゃない)から独自に料理のレシピを入手することが出来た!ただ、やっぱりこの料理を作るにはこの里の食材を手に入れなきゃならない。明日は頑張ろうと意を決して夕餉の時間を過ごした―――その後。
「では、勇者殿達に私のこの美しい筋肉に至った経緯の人生の話を伝えよう!! 後で素晴らしい物を授ける、これで勇者殿達も私のような筋肉を手にれられるだろう!!」
『えっ?』
頑張れお前等! 俺も頑張って聞くからさ! ほら、皆で揃えば何とやらだろう?
と、悟った目で皆を見つめる俺をイッチョウが気付き、知ってたの?と風な表情を浮かべていたがスルーする。
美しい肉体美の経緯と各部位の筋肉の強調を見聞する長老の自慢話をなんと3時間も長々と聞かされることになろうとは、俺ですら想像を超えたがな。
アイテム『
効果:使用すると【STR】+68が加算する
凄いアイテムを得てしまった。これの製造方法は?あ、秘伝だから駄目?
「【STR】が68も増えるのは嬉しい誤算だが、もう聞きたくねぇ・・・・・」
「ねぇ、私は魔法使いなのに【STR】必要ないんですけど・・・・・」
「ハーデスと行動すると本当に予想外な事ばかり起こるわね。鍛冶師としてこれはありがたいことだけど」
「当分はポイントを【DEX】に振れるから。うん、確かにありがたいことだね」
嬉しさ半分もう勘弁だと疲弊したイッチョウ達は、話を聞き終え精神的に疲れたので用意された部屋へ移動する。俺はオルト達とここで寝るから皆とお休みの別れをする。
「ハーデス、私は要らないからこれあげるね」
「ペイン達にあげればいいんじゃないのか?」
「そうなんだけどさ。さっき食べた料理のレシピを手に入ったでしょ?MPの消費を20%もカットする料理を私も作りたいから、あげる代わりに私にも教えて欲しいんだよ」
理に適っているな。それなら一人ぐらい、それも同じ勇者の称号を取得しているフレデリカなら教えても問題ないかな。
「わかった。教えるよ」
「ありがとーう!」
「因みに聞くけど、同じ効果を持つ料理が複数食べたら重複になるか?」
「同じ種類のアイテムだったらならないけど、違う種類の効果ならなるよ」
豚汁と魔茶葉にこの料理・・・・・MPの消費が100%カットされるとどうなるのだろうか?