イベント三日目~。
他のプレイヤーの活動もあって目に見えるほど復興の進み具合が判るようになった。少なかった店の品揃えが増えてきて、破壊された建物が復旧終えていたり食糧難も改善されつつあるのか、炊き出しをしているところに集まるエルフの数が少なくなっている気がする。マッチョな大工職人のエルフ達のところに顔を出すと、俺以外にも木材を調達してくれるプレイヤーがいるようで、必要な木材を提供するプレイヤーの姿が見受けられる。
イズとセレーネは鍛冶師として復興クエストに参加するため別行動。
よってフリーな俺はサイナにフェルとミーニィ、メリープを預け単独で防衛線に挑んでみた。アルゴ・ウェスタとアグニ=ラーヴァテインをそれぞれ装備して。
「【マグマオーシャン】!」
初めて使用してみるアグニ=ラーヴァテインのスキル。マグマの大盾から大量のマグマが溢れ出て眼前のモンスターごと地面を真っ赤な海に塗り替えてみせた。どうやらこれは地形ダメージのスキルなのかもな。それにフィールドいっぱいに満たされたマグマは防衛するべき防壁と隣接してもダメージが入らないでいる事が判ってからも、使ってから消える気配がないしマグマに飛び込み続け、減少していくHPが無くなるとポリゴンと化して消えていくモンスターを見守ることしばらくして、ワイバーンが出るレベル50台になった。
「【咆哮】!」
俺を掴み上げようとした瞬間を狙い動きを硬直させた。10秒間停止状態のワイバーンはマグマの海に落ちた瞬間に【
「いやいや・・・・・ムリゲー」
「憎いはずの鹿に同情してしまう・・・・・」
「俺、このイベントが終わったらマグマ耐性を身に着けるんだ」
「それ死亡フラグ。でもそうだな。俺もそうしよう。あ、白銀さんが戻ってきたぞ」
んー・・・・・やっぱりあのゴーレムがネックだわ。マグマの海を掻き分けて進んでくるあたり、現実と同じで岩石系にはマグマが通用しない。
「・・・・・岩石?」
まさか、な・・・・・? いやでも、一度ぐらいは試してみないと。
「あのー、お疲れ様です白銀さん」
至高の海に飛び込んでいた俺に話しかけてくるプレイヤー。首だけ振り向けばスライディング土下座をしてきたプレイヤーがそこにいた。
「ああ、誰かと思えば・・・・・えっと」
「ヒットです。職業はガンナー。以後お見知りおきを」
自己紹介したプレイヤーは軽装な防具の装備で身に包み、左右の腰に穿いた二丁の拳銃で戦うスタイルのようだな。
「おう、そっちもこれから挑むのか?」
「いえ、今回のイベントはガンナーに厳しいですよ。弾を装填する間に攻め込まれて対応が出来ないのが難点で、あまり他のプレイヤーから歓迎されません」
んー・・・・・それはどうしようもないな。ガンナーの短所、リスクがここで表に出てしまったなら自分で解決するしかない。
「そういうわけで撃破数が稼げなくてランキング外なんですよ」
「具体的にガンナーのスキルは?」
「大雑把に分けると威力の向上、命中率、射程距離、装填の速さが主ですね。ガンナーの攻撃力ってSTRじゃなくて銃のステータスで左右されるんですよ」
そうだろうな。現実でも銃と弾が威力を語るのだからゲームでも同じだろうさ。
「なので、今使ってる銃が火力が高いものの弾が消費アイテムなんで・・・・・」
「弾切れに陥っていると」
「現在その通りです」
世知辛ぁいッ!!! というか、身の上話を聞かされてるな。
「俺に何かしてほしいことでも?」
「・・・・・銃弾、持ってたりしませんか?」
生憎ガンナーで遊んだことはないから持っちゃいないんだよ。
「サイナ、銃弾をスキルで創造できるか?」
「不可能です。しかし、マスターが必要とするMPを消費して射撃可能な銃であれば可能です」
「マジックガンナーか?」
「魔法の銃、魔銃でございます。未だ機械の町には実装されてなく特殊な技術で開発しなければならない特殊武器です」
取り敢えず二丁創造してくれと頼んだ。サイナの両手が光輝き、やがて消えると彼女が光るラインが走る銃を持っていた。
「これが魔銃。攻撃の種類は魔法で威力はⅠNTに反映されます。MPで補填されますので実弾と違い、直ぐに射撃ができます」
ほうほう・・・・・面白い武器だな。
「よし、ヒットだったな。これから俺と一緒に参加して試しにこれを使って評価を示してくれ」
「えっ、えええっ!? い、いいんですか!?」
「まぁ、条件付きだがな? サイナの話だと、銃を開発するに当たって、その手の知識と技術が必要だ。鍛冶とガンナーをメインかジョブにして機械の町に彷徨いてみてくれ。恐らく銃を開発・整備する作業部屋ならぬ工場があるかもしれない。それを探してきてくれ」
謂わばガンスミスってやつだ。未だに見つかっていない職業をヒットに探させてもらおう俺の深意に何度も首を縦に振って首肯する。
「決まりだな。それじゃ、いっちょう挑みにいこうか」
「よろしくお願いします!!」
今度はサイナ達も含めて挑戦だ。小手調べとまずはヒットだけやらせ一人では対応できない時はミーニィも協力させ、それからフェルに指示を出して中盤以降はMPポーションがないヒットを下がらせ俺達全員で防壁を守って65レベルまで進んだところでラヴァピッケルさんの出番だぜい!! 十人十一脚で突っ込んでくるゴーレム達の対処法として、事前に設置したサイナお手製の機械の落とし穴に落とし這い上がろうとするゴーレムにラヴァピッケルを振るうと、ゴーレムの硬い身体の一部が溶けたのだった。この結果に次の行動を俺は取った。
「メリープと入れ換えてオルト召喚!」
「ムム-!」
「オルト、ゴーレムの腕をどんどん発掘するんだ!」
ガンガンッ!!! とピッケルを振る俺の姿にオルトもクワでゴーレムに振るって削っていく。普通に攻撃するよか、こっちの方がHPが早く減らせるじゃん!! ふはははー!! 楽勝だぁー!!
「サイナ、ヒットにも機械のピッケルを渡して手伝ってくれ!」
「了解です」
困惑極めてるヒットも従うしかなく、両手にピッケルを持って何度も振るうのだった。ま、66までしか攻略せず即撤退したがな。
それからヒットと別れ掲示板でた後にサイナに訊ねた。
「実際、ガンスミスって職業専用の場所は存在するのか?」
「あります。初めてマスターと出会った場所の中にもございます」
「あー、あそこってお前達を設計と開発するための物でもあったのか」
灯台下暗しもいいところな事実を知ったところで、ガンスミスの職業になれる方法は恐らく銃の理解力が必要なんじゃないかと思い至った。ぶっちゃけ言えば豊富な種類の銃を集めて見えない数値、熟練度を高めないとならないという方法だ。それについてサイナに訊いてみると返答を拒否されてしまった。ナビゲーターじゃないから何でも教えるわけないか。ヒットやガンスミスの職業を見つけようとするプレイヤーたち次第だな。
「あ、ハーデス君めっけ!」
嬉しそうに弾ませる俺を呼ぶ声の方へ振り返れば、イッチョウ達がこっちに近づいてきた。これから挑むのかな。
「今一人?」
「一応サイナ達もいるんだがな。そっちは今からか?」
「うんそんなところ。ハーデス君の記録を追い越すつもりで頑張っていくよん」
「そう簡単じゃないが頑張れよ。じゃあな」
ガンバレー、と手を振って見送ったら俺も再度防衛線を挑みに行こうかと思ったが、あのエルフはまた茶畑にいるのかな? と思い直して里の外へと移動した。
「―――――」
フェルの背に乗って茶畑に辿り着いた先は豊かな緑の光景とは打って変わって、全てを赤く塗り替え燃やし尽くす業火が緑の息吹を滅ぼさんと火の海と化していた。ここまで来ないと離れた場所で起きたことが気付かないなんてと悔やむ寄りに先に、俺達の存在に気付かず今も茶畑を魔法で燃やす元凶である武装した集団に向かって飛び掛かった。
「敵襲ぅっ! 敵襲ー!!」
「フェ、フェンリルが襲ってくるぞぉっー!!」
「何でこんなところにドラゴンまでいるんだぁああああああっ!?」
「話と違うじゃないか!! 畑を燃やすだけの簡単な任務じゃないのかよ!!」
NPCの帝国軍人達からすればドラゴンとフェンリルが一匹でもいたら阿鼻叫喚になるほど恐怖に陥るようだな。
「ミーニィ、水魔法で炎を消せ!! サイナ、フェル。目の前の人間達を一人残らず駆逐しろ!! 【飛翔】!!」
空高く飛びながらアルゴ・ウェスタとアグニ=ラーヴァテインを連結、空中で高圧的に回転する刃付きの大盾が赤熱して―――。
「【手加減】!」
鋭く地上に落ちながら大振りで逃げ惑うNPCの帝国軍人達を数人纏めて一刀両断した。かに見えると思うがHP1に残したから峰打ちだ。
「ひっ!? なんだあの武器は!!?」
「退けぇっ!! あんな奴に殺されたら骨も残らないぞ!! 任務は達成した、退けぇっ!!」
ん? 今叫んだあれが隊長か?
馬に乗って逃げている他の兵よりも装備の具合がいいNPCを見つけ、とりあえずサイナで確保に走らせる。
そして・・・・・ほぼNPCの帝国軍人達を駆逐し終え、8割以上焼失してしまった茶畑だけが残った。一度だけ見たあの壮観な茶畑がもう見られなくなるなんてとても残念に見ていると、森の奥から汗だくで荒い息を吐くエルフのエルクが飛び出して来た。
茶畑の見るも無残な光景に絶句、絶望に襲われて双眸が大きく見開きその場で座り込んだ。
「・・・・・殆んど燃やし尽くされた。襲撃して来た帝国軍人達はほぼ殲滅したけど割に合わない結果に申し訳ない」
「・・・・・」
俺の声が届いていないのか沈黙を貫くエルフはしばらく燃えた広大な茶畑を見つめた。このまま動かないのかと見守っていたら静かに立ち上がって、一部無事に燃えないでいた茶畑の方へ歩み寄って行く。慰めの言葉なんてかけずにいる自信に歯痒く、立ち尽くす俺のところにエルクが戻ってきた。
「・・・・・どうしてここを守った。余所者のお前には関係のない場所の筈だ」
「疑問を抱くなら気にしないでいい。俺はただ、長いエルフの寿命の中で大切に手入れされたあの茶畑がもう一度見たくなっただけだからな」
「・・・・・やはり人間の考えていることは理解に苦しむ。同じ鎧を着たあの時の人間とお前は同じだ」
先代の大盾使いの人間のことか?
「その人間もここに?」
「・・・・・お前に関係ない。これを受け取ってさっさと去れ」
『魔茶葉の茶木の苗』×5。
茶葉を貰ったのに今度は苗? これはエルクが使うべきなんじゃと思うもエルクは燃えた茶木の処理の作業を始めだした。手伝った方がいいんだろうが、捕えた階級の高そうなNPCの帝国軍人の件も疎かにできない。森の奥へと去る後、拘束したNPCの帝国軍人に問うた。
「どうして茶畑を燃やしたのか一応聞こうか。フェンリルの牙の味を知りたくないなら素直に言え」
「わ、私を殺せば帝国は黙っておらんぞ!? 私は帝国を守護する七聖の矛と盾と杖の一つの―――」
言わせておけば話が長くなりそうでアルゴ・ウェスタを軍人の鼻先に突き付け遮った。
「自己自慢はいいから話せ」
「こ、断る!!」
しょうがないバーベキューをするか。アルゴ・ウェスタを軍人の肩に刺す。
「ぎゃあああああああああああああっ!?」
「言う気になった?」
「い、言わな―――ぐおおおおおおおおおっ!?」
太腿に突き刺す。
「どうしてエルフの里を襲ったのかも教えてほしいかなー」
「だ、誰が野蛮でならず者共の連中なんかにぎぃいいいいいいいいいいいい!?」
「失敬な、俺達は一応礼儀正しい冒険者のつもりだぞ」
「私に拷問をしている時点で礼儀正しいと言えるものか!?」
もう片方の太腿にも突き刺した。それもそうだな。これは一本取られた。
「ま、今だけは野蛮になろう。お前が全ての情報を開示してくれるまではな? ほーら、今度はお前の大切な股間にも突き刺すぞー? これを落としちゃうぞー?」
「ひぃっ!? あ、跡取りが出来なくなるそれだけは止めてくれぇ~~~!! 話すっ、全てを話すからそれだけはぁっ!!?」
・・・・・意外と効果覿面だな。ま、話す気になってくれた方がこっちとしては大いに楽だ。そんなこんなで俺に屈服した軍人は今回の襲撃の一部始終を教えてくれた。ぶっちゃけ言うと、あの悪魔に煽られた形で世界樹を素材として奪い尽くしたら汚染しようという計画だった。世界樹を汚染したらどうなるのかは悪魔のみが知るところらしい。約束通りに全て話してくれたのでHPポーションを使って軍人を回復させ、サイナに馬を連れてきてもらったところで一つ質問を投げた。
「帝国はどこに―――」
「き、貴様の顏は覚えたからな!? 帝国に貴様のことを伝え危険人物としていつか必ず討伐してくれる覚悟しておけ!!」
捨て台詞を言うや否や馬を走らせて逃走する軍人の後ろ姿を見て言った。
「サイナ、撃て」
「了解しました」
レーザーライフルを創造したサイナの狙撃によって逃げる軍人の後頭部が撃ち貫かれてポリゴンと化した。
「余計なこと言わなければ無事に跡継ぎを作れたものを。馬鹿な奴だったな」
「最初からそのつもりだったのでは?」
「温情で解放したのに俺は一度も相手を殺生の有無を言ってないぞ」
ここでアナウンスが流れだした。
『全プレイヤーの中で初めてNPCを倒しかつ100人撃退した死神ハーデス様に、「血塗れた残虐の勇者」の称号が授与されます』
ちょい待て。なんだ血塗れた残虐の勇者って。そもそも勇者がNPCを倒しちゃいけないのか。
称号:血塗れた残虐の勇者
取得条件:勇者の称号を得た状態でプレイヤー・NPCを100人以上撃破・もしくはHPを1割にする。
効果:友好的なNPC・モンスター以外50%の恐怖感を与える。魔王・悪魔達と友好的になる。100%になると称号『恐怖の大魔王』を授与されます。
恐怖の大魔王ってなんだよ・・・・・うん? これだけ次の詳細が読め・・・・・。
称号:『恐怖の大魔王』
取得条件:勇者の称号を得た状態でプレイヤー・NPCを1000人撃破。
効果:プレイヤーが悪魔族となりNPC達の好感度が-100になり全プレイヤーから討伐の対象になり、『恐怖の大魔王』の称号を持つプレイヤーのみ特殊職業に転職します。ガンバッテー(by運営一同)
「―――いや、なんだよこの称号はぁああああああああああああああああああああっ!!?」
【ランキング】防衛イベントついて語るスレ5【一戦】
311:ヒット
今回のイベントに不向きなガンナーの話を聞いてください
312:炒飯御飯天津飯
確かに不向きだよな。消費アイテムの銃弾がなければ無鉄砲になり下がるもんなw
313:コッコロ
つまらない。山田君、座布団を一枚下げなさい
314:セクシー
それで? なにを語りたいのかしら?
315:ヒット
一戦だけ有名なテイマーさんと防衛線に挑みましたが、大盾使いとテイマーというオラオラー! って戦闘向きじゃない職業なのに66レベル台まで攻略したあの人、失礼だけどマジでドン引きした
316:拉麺好き
例の人、ラヴァ・ゴーレムに変身したらヌルゲー的な展開を見せられたから当然だろうな
317:爆殺ダイナマイト
てか66レベルまでいったのかよ!? どんなモンスターが出て来たか教えてくれるか?
318:ヒット
最後に出て来たのは完全武装したNPCの大群だった。流石のあの人もガッチガチの守りに徹した前衛の後ろに隠れた魔法使い達の攻撃に減らされる防壁を無視できないみたいで速攻退却した
319:ロマンマロン
NPCまで出てくるのか!? ていうかそれ、誰でも攻略できないだろ運営ー!!
320:デスマッチョ
寧ろそこまで行ったプレイヤーが凄すぎる。同じ大盾使いとしてあの人の強さは異常だと思うけど、あの強さにあやかりたい・・・・・
321:青年ガンガン
それまで≫318は背後に棒立ちしてただ眺めているという風景が浮かんでしまうんだが? ガンナーって弾がなければ他の職業よりも弱いんじゃないか?
322:ヒット
ガンナーは弱くない!! 例のあの人はガンナーに新たな可能性を見出してくれたんだ!!
323:マード
まーた新発見をしていたのかあの人。で、今度は何?
323:ヒット
銃弾いらずのMPを消費して撃つことが出来る魔銃という武器を提供してくれました。しかも銃の開発と整備をする『ガンスミス』という未知の職業を見つけてくれと頼まれたんだ。
324:ガンスミス
呼んだー?
325:セクシー
あなたじゃないわ。というかそんな名前のプレイヤーがいたのね。もしかして?
326:ガンスミス
自分、リアルじゃあ銃マニアなもんで機械の町を発見してくれたあの人には心から感謝。それにしてもやはりあの人も気づいていたのかー。ガンスミスになれる方法とかも
327:爆殺ダイナマイト
まさか、ガンスミスになれたのかお前?
328:ガンスミス
まだ道半ば、ってところだね。ガンナーと鍛冶師の職業で機械の町を彷徨ってはいるんだけど、中々見つからなくてね。それにしてもMPを消費して撃つ銃か。マジックガンナーも夢じゃないね!!
329:ヒット
あのー、イベントが終わったら一緒に探しませんかね?
330:ガンスミス
おおーいいよー。人数が多いほど速く見つけられそうだ。
331:青年ガンガン
機械の町だったらコンキスタドールなら知っているかも?
332:マード
あ、意外とそうかも? でも使役しないと教えてくれなさそうな・・・・・
333:ヒット
いまから白銀さんのドールちゃんに聞いてくるぅ~!!
334:ガンスミス
ガンナーのプレイヤー達のためにも情報提供よろしくねぇ~
335:デスマッチョ
俺も強さの秘訣を聞きに行こうかな
336:ロマンマロン
粘着しない言動を徹底するんだぞ