玄武との戦いの幕が下り一息つく。神獣の名に相応しい攻撃をされた時は肝が冷えた。色んなスキルを積極的に見つけるのも正解の一つだろう。
「ハーデス。そっちは何か手に入ったー? 称号とか」
「【神獣に認められし者】だ。フレデリカも手に入ってるなら効果も一緒だろ。それと勇者のオーラもな」
「それって何だろうねー。空欄が4つもあるんだよ。これどういうこと?」
「聞けばいいんじゃね?」
未だ動かずにいる玄武に振り向く。白猫の攻撃が効いているのか?
「勇者のオーラってなんだ?」
『ううう・・・・・ワシら四獣の全力を受けて立ち、見事に負かした者にしか与えられん物。過去の資格ある者達でさえ誰一人手にする事はなかった。4つを揃えることが叶った時、ワシらの全ての力が振るえよう。今はその片鱗しか宿っておらぬとも資格ある者達の力になろう』
フレデリカの疑問が解消され、俺自身も納得した。
「あの規模の攻撃を出来る神獣が複数って」
「・・・・・すんごく倒すの大変だよね」
そしてどっと疲れを込めた深い溜息を吐いた。全力の神獣と戦うためにはその気にもさせないとダメだし、必ず欲しいわけでもないんだよな。
「行き当たりばったり的な感じで、貰える時は貰える方針で」
「意義なーし」
『話は済んだか。なら、ワシは帰る』
脚に力を込めて立ち上がる玄武。北上しようと一歩前に足を進めた直後に首だけこっちに向けて来た。
『そうじゃった。お前達との戦いは楽しめたわぃ。全力の戦いとは壮快だったがお前たちには迷惑をかけたの』
『スキル【雌雄の玄武甲】を取得しました』
『スキル【反骨精神】』
【雌雄の玄武甲】
パーティーまたはチームで受けたダメージの25%軽減する。
同じパーティーに【雌雄の玄武甲】を持つプレイヤーが存在すると50%になる。
【反骨精神】
【VIT】の数値を30秒間【STR】に変換することができる
『餞別というわけではないがワシの謝罪の印として受け取ってくれ』
「わかった。もう一つ質問していいか? 勝敗関係なくお前達とは何度も挑めるのか?」
『敗北した資格ある者ならばともかく、ワシらに認めさせた資格ある者がまた戦って何の意味がある?』
出来なくはないけど、再戦してくれるのは神獣次第ってことか?
『おかしなことを訊く者だな。だが、また再戦をすると言うならば一向に構わん。ワシ好みの資格ある者との闘争は楽しく感じたからの』
話は終わりだと、今度こそ鈍重な足音を、地鳴りを立たせながら俺達に背を向けて歩いて行った。俺達も北の町へと戻りに足を運んだ。
「そう言えばイズとセレーネは報酬とか貰えたか?」
「一応【足掻く者】って称号だけ。効果は自分のレベルの二倍のモンスターの時だけ各ステータスの数値が2倍になるの。それと今回はレベリング扱いみたいで経験値が貰えたの。レベルもかなり上がったわ」
「私も同じ称号手に入った。神獣って倒すと凄い経験値が貰えるみたいなだね」
「そうか。フレデリカ、【雌雄の玄武甲】は?」
「うん、あるよ。凄いねこれ。VIT関係なくハーデスと一緒なら50%も軽減してくれるなんて」
ペインの勇者スキルを半分も軽減できる。それでも素で生き残れる自信がないな。おっ。俺がフレデリカを背負って縦横無尽に駆け回り、移動砲としてフレデリカが魔法を撃つ発想が浮かんだんだが、試させてくれないかな?
「それはそうと、生まれたわね。その子なんて名前?」
「おお、そうだ。調べ忘れてた」
名前 ??? 種族 魔獣(ヘルキャット) 基礎レベル 35
【STR 11】
【VIT 7】
【AGI 35】
【DEX 23】
【INT 20】
HP 170/170
MP 156/156
スキル 【流体化】【霊魂搾取】【ひっかき】【ネコパンチ】【魅了】【夜目】【気配察知】【逃げ足】【恐怖】【気まぐれ】【捕食】【召喚】
装備 なし
中々猫らしいスキルばかりだな。最初の二つのスキルはどういうのだかわからないが・・・・・。
【流体化】
50%の確率で攻撃を回避する。
【霊魂搾取】
対象の最も高い数値の半分を一時的に奪い主に転移する
【ひっかき】
ランダムで対象にデバフを付与する
【ネコパンチ】
10%~100%のランダムで対象にダメージ量が変化する
【魅了】
対象の動きを5秒間停止させる
モンスターが逃げなくする
【恐怖】
対象の動きを5秒間停止させる
【気まぐれ】
主とヘルキャットのスキル再使用待機時間が変化する
【捕食】
倒した対象の数値の一部を奪うことが可能になる
【召喚】
ヘルキャットを自由に喚ぶことができる
気になったスキルだけを見れば凄く有能な件でした。動きを封じるスキルが二つもあるのはとても嬉しい。
『ご主人、ご主人。おいらの名前を付けてほしいにゃ』
「名前? つけていいのか」
『そうにゃ。そしてつける時は優雅で! 美しく! 強く! 皆に愛され畏怖されるような名前にしてほしいにゃ!』
「じゃあ、美の女神と同じ名前の『フレイヤ』にしてやる」
本猫がそう希望するんだから文句ないだろう。
『全プレイヤーの中で初めて冥府(地獄)の魔獣の孵化に成功し最初の冥府の魔獣の主となりました。称号【地獄と縁る者】を獲得しました』
【地獄と縁る者】
冥府のNPCとの会話時に友好度にボーナス。
『フレイヤ、気に入ったにゃ!! 流石はおいらを生んだご主人!!』
つけた名前は大層気に入った様子で、ゴロゴロと鳴きながら顔を摺り寄せて来る。ふふ、愛いやつめ。
「可愛い・・・・・触れるかな?」
「フレイヤ、早速お前に魅了されたらしいぞ。触れさせてくれるならもっと愛される存在になれるかもよ」
『ニャハハハ!! おいら、もっと愛される最強の魔獣になるにゃ!!』
うん、こいつの扱い方も大体わかってきたな。セレーネに抱かせると表情を緩ませてフレイヤを撫で始め、イズとフレデリカも可愛いと黄色い声を上げてすっかり夢中になった。
「うん? あれは・・・・・」
大勢のプレイヤーらしき集団が駆けてくる。さっきまでいた玄武に挑戦するきかな? って俺の考えは履き違えたようだった。
「お、おい! 玄武はどうした?」
「北の方に帰ったぞ」
「お前が勝ったのか?」
「勝ったぞ」
そう教えると、集団の中から「やっぱりかー」「挑戦できるかと思ったのに」「先を越されたぁ!」と残念そう声が上がる反面。
「俺達みたいに攻略組でもないのになんで戦うんだよ!」「玄武を倒した報酬は? 高く買い取りたいしたい」「女を侍らせやがって、生意気な奴だな」「負けろやクソが」という反感の声も聞こえてくる。
「「「・・・・・」」」
当然ながら後者の声はしっかりと三人の耳に届いていた。不満げに顔をしかめている。
「あのー、白銀さんですよね? 噂はかねがね聞いております」
1人のプレイヤーが話しかけてきた。
「自分、グラニュートゥと言います」
「よろしく。それで?」
「ちょっと自分と決闘をしてくれませんかね?」
やる気満々に双剣を鞘から抜き取って構えてきた。何でだと首をかしげる俺に理由を教えてくれた。
「テイマーで遊びやすくするために重戦士をサブにして遊んでるプレイヤーかと思ったんですよ。でも、こちらの予想を遥かに上回る結果を残し続けるあなたに興味を持ったんです。攻略組筆頭のペインも認めるプレイヤー、自分は白銀さんの強さを肌で知りたい」
「生粋の戦い好きだな?」
「誰よりも進んだ先にある光景をみたい、誰よりも強くなりたい。それが攻略組の性って奴なんですよ白銀さん。それなのに自分達と真逆なプレイをして瞬く間に有名になった白銀さんだ。そして玄武を撃退したその実力を―――」
グラニュートゥから決闘申請が送られました。YES NO
迷わずYESを押そうとした瞬間。俺達の真横の空間が突如に歪みだし、二人組の人物が現れた。
「おっ? こいつは久しぶりだな。魔王ちゃん」
「うむ、久しぶりであるな戦友よ」
片方が最初のイベント以来に再会した少女、魔王ちゃんだ。もう一人は執事服を包む肉体がとても鍛えられてるのがわかる赤髪のポニーテールの老人。
「勇者の戦いを見ていたぞ。あの神獣の一角を泣かすほど恐怖を抱かせるとは。流石は我の戦友と称する―――」
「魔王、覚悟!」
彼女が話している間にプレイヤーが襲い掛かった。スキル込みで襲う攻撃に魔王ちゃんは気付いているのに対応の一つも取らないその理由がすぐにわかった。
「【魔王の権威】」
「へっ?」
そのプレイヤーの首がポーンと宙に撥ね、残された胴体はあっけなくポリゴンとして爆散した。頭部も直ぐに弾けた。
「魔王の我と対等に渡り合えるのは我の天敵である勇者のみ。それ以外は我の供物か塵芥に過ぎん。なのに我と勇者の対話を邪魔するとは万死に値する―――爆ぜて失せるがいい」
グラニュートゥも含め、この場に来たプレイヤー全員が魔王ちゃんの一言で本当に爆発してHP全損、死に戻った。俺、【爆発無効化】持っててよかったかも。
「勇者殿の仲間はサービスとして生かした。優しいだろう?」
「気遣ってくれて助かったよ」
「ふっはっはっはっ! そうであろうそうであろう!! なんせ我は世界一やさしい魔王であるからな!」
「その通りでございます魔王様。そしてご紹介が遅れました。私は前魔王様の執事で真名はハーヴァでございます。以後お見知りおきを」
恭しくお辞儀する相手に釣られて俺もお辞儀してしまった。
「今日は急にどうした? お茶会の誘い?」
「それに近いな。友好の証として贈った魔獣の卵を見事に孵化させた勇者に一度我の城に来てもらおうと参ったのだ」
「そうか。でも、うーん・・・・・一度だけってのは少し残念だな。何度か遊びに行っちゃダメ? というか玄武との戦いで少し疲れてるし」
「むっ、今回は特例で招くのだ。本来敵同士の勇者を敵陣に誘う行為に危険とは思わぬのか?」
「世界一やさしい魔王ちゃんが勇者の寝首を掻く筈が無いと思うんだが?」
ハーヴァにも向かって話しかける。
「冥府にも町とかあるんだよな?」
「勿論でございます。代々の魔王様が統括してる都市以外にも72の幹部の者達の都市を始め、村や町もあります」
「うん、俺的にはそこにも行ってみたいから何度も遊びに行きたいんだ。という事でダメ?」
お願いする俺の言葉に魔王ちゃんは簡単には決められないと考え込んだ。
「ハーヴァ、勇者の気持ちに応える試練を与えてからでもよいか?」
「未だに魔王様を倒すだけの力はございませんでしょうが、警戒に値する者なのは間違いございません。全力で私が戦っても勝率は若干私めが勝つでしょうが、腕一本だけ済めば幸いであります」
「ほう、お前にそこまで言わすほど我の戦友は強くなっておるか。・・・・・ならばお前の立場を懸けた試練を与えよう。それをクリアできたならば我々が住む冥界に行き来できる宝物を授ける」
内容は? と訊いてみると手を差し出された。
「お前達がエルフの里を守りアスタロトの妨害をした。世界樹の素材とオリハルコンを手中に収めるための我が策をな。勇者のお前ならそれら全て手中に収めているはずだ。それを全て私に寄こせ」
「魔王様はかつての勇者との死闘で負った怪我により、床に伏してしまわれておられる父君である前魔王の回復の為に賢者の石が必要としてます。他の素材は既に確保していますが残りはあなたが持っているということです。父君の回復を願い代理として魔王になった敵の願いを、人類の代表の勇者が全ての期待と希望を捨てて裏切る行為ができますか?」
「はいよ」
世界樹の雫と世界樹の葉、世界樹の枝にオリハルコンを魔王ちゃんにあっさり渡す。
「え・・・・・?」
「それで父親が治るなら渡してやる。それでいいだろう?」
「―――バカなっ。勇者が魔王に加担する行為は全人類の敵に回すことになるのだぞっ。勇者を軽んじているのかお前はッ!?」
唖然とする魔王ちゃんの代わりに執事が声を荒げる。人類の敵になる? どうでもいいわ。
「ここで俺が拒絶してまたリヴェリアの故郷を襲う気なら、渡した方が世のためだろ。それとこれは俺の為にやったことであって、魔王ちゃんの父親を助けるためじゃないからな」
「勇者のためとは何だ」
「父親を想う少女の優しい心を助けたいだけだ」
「―――――」
絶句する魔王ちゃんに今度は俺が手を差し伸べる番。リヴェリアの故郷を守る次に大切な事だ。
「ということで、宝物とやらをくれないか?」
「・・・・・勇者とは、今まで父上が相手にして来た勇者は、罪なき民まで手に掛けた冷酷無比で残虐な者ばかりだと聞いておるのに」
それで俺が逆なことして血塗れた残虐の勇者っと認識されてたのかっ!! おのれ勇者めっ!!!
「でも、あなたは他の勇者とは違うのね」
「うん?」
なんか喋り方が変わったな? そう反応する俺に、はっと我に返った魔王ちゃんは咳を零した。
「ふ、ふんっ! 宝物惜しさに立場を危うくしてもそれはお前の自業自得であるからな!! お前が逃げる場所は冥界にしかないと思え!!」
歪んだままの空間を潜っていなくなってしまった魔王ちゃん。まだ残ってるハーヴァは指に嵌めていた真紅の宝石を外し、直接手渡して来た。
「魔王様が統治する都市に直接行き来できる指輪です。門の者達にこれを見せれば問題なく入ることが出来ましょう」
「どうやってこれを手に入れたんだーって言われて入らせてくれなかったら?」
「ご心配ありません。全ての者達に魔王様の人間のご友人が来ると言い聞かせます。そしてもしも人間界に追われる身となれば冥界に過ごすことを提案します」
「そんなことが無いように頑張るよ」
ユニーク装備『冥府の扉』という指輪を渡してくれたハーヴァも空間の穴に潜り、歪みが元に戻ったところで息を吐いた。
「やっと終わったかぁ~」
「あなた・・・・・よかったのですか? 世界樹の素材とオリハルコンを渡して」
「ああ、リヴェリアの里のためだ。物を渡すだけで平和になるなら喜んで差し出すよ。魔王軍もこれで完全にアールヴの里から手を引くはずだ」
「・・・・・心から感謝します」
気にするなと、リヴェリアに笑いながら『冥府の扉』をアイテムボックスに仕舞うとフレデリカからオリハルコンのトレードされる。
「フレデリカ?」
「オリハルコンなんて私的に使い道がわからないお蔵入りの物だからさ。ハーデスにあげるよ」
「冥府に行けば賢者の石の作製してくれるかと思うぞ」
「いーの。そんなのよりハーデスと一緒にいれば強くなれるのが判り切ってるから。ゲームは楽しんだ者勝ちなんでしょ?」
・・・・・そう言われちゃしょうがない。失ったオリハルコンを補充するかのように手に入った。冥界はまた今度行くとして、俺は北の町に戻った。せっかくここまで来たんだから畑を購入して茶木を植えよう。フレデリカ達もそれに付き合ってもらったら町の探索を開始した。
「この町に何かあるって言うの?」
「町なんだ。始まりの町みたいに精霊がいる隠し通路があってもいいだろ。フレデリカ達は何も知らないのか?」
「知らなーい。レベル上げしてたからね。暇潰しに探してたプレイヤーもいるだろうけど、結局何も見つからないでいたようだしね」
あの時と同じように地図作成の依頼を引き受けてきた。この町の地図を埋めつつ、時おり妖怪察知、妖怪探査を使って妖怪捜索も進めれば、何も見つからなくても損にはならんからな。
そのまま半日。
「もう地図が埋まっちゃった」
結局何も見つからなかった。妖怪の反応もない・・・・・。まあ、毎回何かが見つかるわけじゃないか。
ただ、収穫はゼロではない。地図の依頼だけではなく、途中で寝っ転がったら気持ちよさそうな原っぱを発見したのだ。町の端にあるのだが、学校の校庭くらいの広さはあるだろう。
公園と呼べるほど整備されているわけじゃないが、短い芝生のような草の生えた空き地に、まばらに木が生えていた。雑草ではあるが、チューリップやコスモスの花も咲いているし、ピクニックをするにはちょうど良いロケーションだ。
「ミーニィ、フレイヤ。空から何かないか探してくれ」
「キュイ!」
『わかったにゃー』
空飛ぶモンスターが増えたことで捜索範囲が増えた。さてと・・・・・。
「ぶっちゃけ言わせてくれ。花見レイドボスの次はリヴェリアの故郷の防衛線の直後に鉱石喰いの出現に四神玄武との戦いの連続。過密なスケジュールじゃございませんかねぇ・・・・・。これだけで片手では数えれないスキルと称号を手に入ったぞ?」
「実際どれだけ?」
「10以上は確定」
「多いね!?」
「えええ・・・・・?」
どういう星の元に産まれたのだろうかと思うぐらい俺自身も気づけばこんなに取得、獲得してしまっていた。頑張りすぎ? いやいや、思うが儘にプレイをしていただけだよ。
「ハーデス、ユーミルさんから貰った装備は? まだ試してないのよね?」
「する暇もないからな。所有している工房をあらゆる場所で使えるだとか」
「古匠だった頃のユーミルさんの工房・・・見てみたい、かな」
そう言えば俺達って工房を見たことないんだよな。えっと、『神匠の黒衣』を装着して【工房召喚】! と言うと俺達の目の前に眩く光りながらドワルティアにあるユーミルの工房が召喚された。中に入るとすぐに工房の中を覗いた。
「「わぁっ・・・!」」
感嘆の息を吐く二人。俺は全く価値観が理解できず小首をかしげる。
「普段ベテランの二人が借りてる工房とどう違うか教えてくれ」
「違いは大してないわ。強いて言えば工房のランクかしら。見ただけでかなり上級な物ばかりだわ」
「装備を作る時に使う鎚も等級と+強化が高いほど、完成した装備の度合いが違ってくるの」
「そうなのか。じゃあ、ヘパーイストスにあげたあの砥石はなんだろうな」
素朴な疑問に零した俺の言葉は工房を見ていた二人の首がぐるりと後ろを向いて・・・いや、怖いよ。
「砥石ってなに? そんなアイテムもあるの?」
「え、逆にないのか砥石」
「ハーデス、武器に切れ味のシステムは無いよ?」
「研磨も?」
二人揃って頷かれる。ならばと風化したヒヒイロカネで作られた古代の刀を見せてみた。
「この状態だけどヘパーイストスに砥石で研磨してもらったんだ。これでまだ実践に使えないレベルだ」
「うわ、改めてみると凄く綺麗な刀・・・・・」
「これで戦いに使えない? どういうこと?」
「元々は風化した状態から発見したんだ。同じ場所に見つけた砥石で磨いてもらっても、まだ武器は復活していないと。地龍討伐クエストの時と同じくユーミルに頼まないと使えない」
話を戻す。
「これは砥石で磨かいてもらったから、てっきりあるのかと思ったんだがな」
「そうなの。じゃあ、いつかその砥石を見せてもらえないかしら」
「頼んでみよう」
「お願いね。あと、もうちょっと古匠の工房を見ていい?」
いいぞ、と言うと古匠用の工房を楽しく見回る二人に質問をしながら中の構造を把握する。台所と食卓、寝室まであるぞ。工房兼ホームだなこれ。しかもかなり中は広くて炉が五つもある。昔、多くの弟子を取っていたのかな
「モンスターがいるフィールドに工房を召喚したらどうなる?」
「近づいて来られないと思うわ。モンスターを寄せ付けない制限時間あるアイテムも販売されてるし」
何それ初めて聞いた。
「でもそれと違ってこの工房は制限時間がないようだし、もしかするとこの中に死に戻ってすぐに戦いに戻れるかもよ?」
「便利過ぎないか?」
「私もそう思うかな。いいなーハーデス」
「何なら一緒に冒険する時、鍛冶をしたい時は召喚してやろうか。イズもあらゆる場所で工房が使用できるけど自分専用だよな」
「そうね。誰にでも利用できる工房じゃないからハーデスの工房の方が使い勝手がいいわ。この中なら私もモンスターが出るフィールドでも安心して工房を使えるわ」
おや? それだと俺達って・・・・・。
「出張、どこでも生産・鍛冶屋の誕生かこれは?」
「ふふっ」
「変な名前だけれど事実よね」
便利なセーフティポイント? の活用を考え付いた矢先に開けっ放しの扉からフェルが入って来た。徐に口から覗くその牙を俺の腕に噛みついて―――。
「だからフェルさん。お前の嚙みつきはフレンドリーファイアになるから止めてくれっ!」
「テイムしたモンスターに攻撃判定を受けちゃう?」
「でも、どうしたんだろ?」
外へ連れ出され、ミーニィとフレイヤがいるところに引っ張られる。何か見つけたのか?
「見つけたか?」
「キュイ!」
『ここに穴があるにゃ。入ってみるにゃ』
穴? ・・・・・本当にある。イズ達も近付いて来て一緒に穴を見下ろす。
「攻略組もこの穴の存在は?」
「多分知らないよ。私達もここに来た事自体ないんだから。もしかするとただの穴だけかもよ?」
「それでも調べるのは大切だ。よっと」
穴に飛び込み着地する。縦長で地上から深さ三メートルか。さてさて、ただの穴かなー? 壁をくまなく探す俺の視界に土色ではない名刺サイズの黒い石が入って来た。不思議に思いつつ触れてみると重低音とともに軽い振動が生じた。
ゴゴゴゴ・・・・・ッ。
「おおー、やった! 隠し通路だ!」
「嘘でしょ」
「こんなところに隠し扉?」
「レベル上げばかりしている私達じゃあ絶対に見つからないよコレ。というか、こんな発見ばかりをしてるから自然に強くなったんだねハーデスって」
穴から這い上がり、『神匠の黒衣』を装備から外すと工房も消失した。
「始まりの町に戻ろう」
「えっ? せっかく見つけたのに?」
フレデリカ、何か忘れていないか?
「いや、忘れてると思うけどもう21時過ぎてるからな? イベントが終わった直後に寄り道したらドワルティアの事件と玄武の戦いに発展してしまってログアウトするタイミングがなかったんだぞ」
「「あ」」
「あはは・・・・・今確認したら23時過ぎてたね」
俺と過ごすと濃密な時間になるようだ。苦笑いするセレーネの言葉にお開きの雰囲気となった。
「この穴の存在を誰かが先に知られて攻略されても問題ない。寧ろ他の東と西、南の町にもこんな隠し通路がある証明がされたんだからそっちも探しに行くよ」
「確かに、それもそっか」
「ハーデス、また明日も来るなら何時ぐらい?」
朝食を食べ終えてからだ、と8時ぐらいにまたログインすると言うとフレデリカが一緒に付き合うと言ってくれた。
「じゃあ、また私もその時間帯に来るわね?」
「うん、明日も出来るから一緒に行こう?」
二人も引き続き一緒に遊んでくれるようだ。約束を交わし、鳳凰の背中に乗って始まりの町まで飛んでもらい久しぶりの畑に戻ると。鳳凰が桜の木の前にある霊桜の小社を見て感嘆した。
『おお、素晴らしい社ではないか。それに見事な桜の下にあることも加味して気に入ったぞ』
小社の上に乗る鶏。うーん、悔しいけど何だか様になっている気がする。
『にゃ~、おいらもここが気に入ったニャ』
空を飛べるフレイヤも桜の木の周りを飛んだり、小屋の上に乗ったりと自由気ままに動く猫だった。
「それじゃサイナとリヴェリア、後は頼んだ」
「お任せくださいマスター」
「何時までも待っています」
【白銀さんとモンス】またやらかしたよあの人を語るスレ19【新発見】
598:満〇
生配信を何度見たが、玄武のとんでもない攻撃でも臆さず立ち向かう姿はまさに勇者だったな
599:デデーン
玄武の方はともかく俺的には猫の方が凄く気になる。サモナー専用のブリーズ・キティとは違うモンスターなのは一目瞭然だ
600:チョイス
紋様状の黒い翼が格好いいで。角は何だか悪魔っぽい?
ぽろろん
フェンリルは載ってるけどあの白銀の猫は図鑑に載ってないなぁ~。未知のモンスター扱い?
601:サジタリウス
久しぶりの魔王ちゃんが現れて魔王ちゃん専用のスレが盛り上がってるって
602:最終兵器鬼嫁
後から来たプレイヤーが成す術もなく爆散した瞬間は、死に戻りしたプレイヤー達も何がなんだかわからなかっただろうな。流石魔王ちゃん!!
603:大言氏
魔王を討伐しろって言われたら、無理だな二重の意味で
604:チョイス
魔王と言えど少女を攻撃しろと言うのは酷だからねぇ。涙目で助けてと懇願するフリされて不意打ちの攻撃を受けてもオールオッケー
605:デデーン
魔王を倒すのは何時だって勇者なんだが
606:チョイス
白銀さーん、ちょっと自分とお話をしましょうかー
607:死神ハーデス
おう、いいぞ
608:最終兵器鬼嫁
今のところその勇者は5人しかいないけど、もう勇者になれるチャンスはないのかなー
609:サジタリウス
!!?!!?
610:満〇
白銀さんが顔出しにきた!?
611:チョイス
本当に話をしに来てくれたとは驚きなんだが!!?
612:死神ハーデス
朝食食べ終わったからログインする前に情報収集を兼ねて見てたら、呼ばれたんで来たんだが。用がないなら冥府へ戻るわ
613:大言氏
まってまって、せっかくの機会だから色々と教えてほしいことがある。あの白銀の猫ちゃんは一体?
614:死神ハーデス
魔王ちゃんが住んでる冥界に棲息している魔獣の一種。絶滅危惧種で種族の名前はヘルキャット。
615:デデーン
冥府!? どこに行けばそんな場所に辿り着けれるんだ!?
616:死神ハーデス
魔王ちゃんから友好の証として貰った黒い卵から孵化した。冥府はまだ行ったことが無い。行く術は手に入ったけど
617:満〇
絶滅危惧種の魔獣でヘルキャット? 魔王ちゃんから卵を貰ったのか
618:サジタリウス
さらっと冥府に行ける術を手に入ったと文字を打ってるけど、それは白銀さんだけ行き来できるってことか?
619:最終兵器鬼嫁
いいなー、いいなー!
620:死神ハーデス
まだ使ってないからわからない。冥府に行くよりもまた新エリアに行けるかもしれない隠し通路を発見したからこれから探索するんで
621:デデーン
また見つけてんのか!! ・・・・・因みにそこってどこか教えてもらっても?
622:死神ハーデス
気になるなら東西南北の町中をくまなく探してみれば? と言うか暇ならそうしてもらえるとこっちとして楽だわ。因みに俺は北の町の端っこに行こうとしている。
623:チョイス
それマジ話?
624:死神ハーデス
個人的な予想と想像だから断言しないぞ。北に来るならヘルキャットと触れ合うかもな。それじゃログインしてくるんでお暇する
625:満〇
情報感謝。白銀さんを信じるなら俺は北に行ってみようかな~
626:デデーン
俺も北に下がれば行けるんですぐに向かおう。
627:最終兵器鬼嫁
ちくしょう、ヘルキャットちゃんと触れ合ってみたいのに南にいる自分が恨めしい! こうなったら隠し通路を見つけ出してタラリアに情報を売ってやる!!
268:サジタリウス
俺は西だ。隠し通路はどこにあるんだろうか。思えば町中をしっかり見て回らなかったな
269:チョイス
俺は東か。何か見つけたら情報共有しようぜ
270:大言氏
いいともー!