バカとMMORPGと召喚獣!   作:ダーク・シリウス

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第3エリアの隠しダンジョン巡り 北編

「燕、そっちは何しているところだ?」

 

「最前線でモモちゃん達とレベル上げしていますよー。どこかの誰かさんみたいに掲示板で騒がれてませんけどね。一体全体どうしたら玄武と戦うことになったんですか」

 

「助けを求められたんだからしょうがないだろ。実際戦ったらフィールドが奈落の底に落ちてヒヤッとしたし、ベヒモスと戦った方が楽だったぐらいだ」

 

「王様にそこまで言わせる神獣の強さですか。私も神獣と戦ったら勝てますかね」

 

「俺と玄武の相性が良かったから勝てたようなもんだ。他はどうなのか燕でも勝てるか正直わからん。勝ちたかったらスキルを身に着けるんだな」

 

「はーい。あ、そうだ。王様、結婚システム解放されてから誰かと結婚しました?」

 

「リヴェリアとプレイヤー同士したらどうなるか試しにフレデリカと」

 

「本当にしてたんですか!? 恋愛経験が無縁なあなたが!?」

 

「その言葉そっくりそのまま返すぞ燕。ゲーム内での結婚だ。同意の上ならば誰だってできるだろう。結婚する際に得る恩恵も悪くない」

 

「じゃあ、私とも結婚してくれますよねー?」

 

「今は無理だ。専念したいことが出来たからな。そんじゃ、昼食まで楽しもうか」

 

「やりたいことが終わったら絶対に結婚ですからね王様」

 

 

ログイン後。品種改良の食材で作った消費した料理を作り置きしていたころに来訪者が現れた。

 

「ん、時間通りに来たな。おはよう」

 

「おはよーう」

 

「おはよう、今日もよろしくね?」

 

「おはようハーデス」

 

畑で待っていれば美女と美少女達が来て、いつでも行ける準備もして来たみたいだ。畑の中に入ってきた彼女達はすぐに気づく。

 

「ハーデス、そのモンスターは?」

 

「ああ、最初のイベントでテイムした植物型のモンスターだ。苗になったんで畑に植えていたんだがログインしたらいた」

 

「トリー!」

 

愛らしい声で、俺の足元に纏わりついて来た。その姿はなんと表現すればよいか・・・・・。ゆぐゆぐは少女が木の葉を使った衣装を身に着けている姿なのだが、この子は体自体が植物性のパーツで構成されていた。木の枝と葉っぱで体が造られたピノキオとでも言おうか。

 

 

名前:オレア 種族:オリーブトレント レベル1

 

契約者:死神ハーデス

 

HP8/8 MP:30/30

 

【STR 8】

 

【VIT 8】

 

【AGI 2】

 

【DEX 8】

 

【INT 6】

 

 

スキル:【株分】【光合成】【樹精分身】【戦闘不可】【素材生産】【農地管理】

 

装備:なし

 

 

メインフレームは茶色い木の球体関節人形で、頭部と胸部、腰、腕や膝下は木の葉を束ねたキャベツっぽいパーツになっている。そして、鼻がピノキオみたいに長かった。サイズは非常に小さく、80センチくらいしかないだろう。

 

「揃ったところで2パーティで行くとなると、リヴェリアとサイナは絶対だ。フェルとミーニィ、フレイヤも一緒に来るかー?」

 

『当然いくにゃ』

 

「だったらオルトとドリモ、それにゆぐゆぐとクママだな」

 

「ムー!」

 

「モグ」

 

「―――♪」

 

「クックマー」

 

「他のみんなは悪いけど畑で留守番だ。よろしくな」

 

ヒムカ達と別れ、徒歩で北の町へ目指した―――。

 

『これッ、私を置いていくではない!』

 

正式に仲間になってもいないのに鳳凰までついて来ようとするので、巨大な火の鳥となって俺達に背中を乗せて飛んでもらうことにした。目的の北の町の端っこに辿り着き、皆で穴の中にある隠し通路へ侵入する。

 

 

 

北の町の外れで発見した地下道に、意気揚々と突入した俺とイズ達の合同パーティ。だが、すぐにその歩みを止めてしまっていた。

 

「真っ暗なんだけど」

 

「うーん、光源ゼロのダンジョンは初だなー」

 

そう、この地下道にはランプ類はおろか、光る類のなどもなかったのだ。目を細めようが、数秒間目を瞑って開けてみようが、目の前に広がる漆黒の闇に変化はない。

 

「サイナ、照明灯の機械を作れるか?」

 

「肯定。可能です」

 

彼女に闇を照らす機械を創造してもらい、足元も照らす光源を確保できた。転ぶこともなく順調に進む道中このダンジョンに出現する敵は2種類。霧で出来た骸骨のような姿をしているポルターガイストと、動物型のケダマンというモンスターだった。

 

ケダマンはその名の通り、丸い毛玉のような体に、不細工な犬っぽい顔が付いている姿をしている。この顔がまた不細工なうえに不気味なのだ。口の端から涎を垂らす、白目を剥いたパグっぽい顔面である。

ケダマンはテイム可能なのだが、アレはいらないな。一応モフモフ枠だが、可愛がれる自信はない。狂った精霊の件もあるから、テイムして見たら可愛くなる可能性もあるけど・・・・・。

 

「ゲゲゲゲェェ!」

 

「ケダマン3体か。オルト、ドリモが受け止めろ!」

 

「ムム!」

 

「モグ!」

 

「ヴァアアア!」

 

「後ろからポルターガイストだ」

 

「私が仕留めるよ【多重炎弾】!」

 

『食い甲斐のありそうなやつにゃ~!』

 

【霊魂搾取】で攻撃するフレイヤ。主な能力値を半分減少させたことでクママの爪で一体、ミーニィの魔法で一体、ゆぐゆぐが蔓で動きを封じている間にドリモがツルハシで一撃を入れて撃破してみせた。

 

「強いわね。オルトちゃん達の今レベルは?」

 

「玄武との戦いで全員25レベル以上だぞ。神獣を倒すと莫大な経験値を得るみたいだな。ほぼ全員、進化が可能な状態だ」

 

「そうなの? どうして進化させないの?」

 

「従魔の心を貰っていない奴がいるからな。それを貰うまでは進化させないのと、今すぐする必要性が感じないだけ」

 

それから進めば進むほど、敵の数も増えてきた。フレデリカやサイナは戦況を見ながら遊撃に回り、他の皆が何とか敵を倒していく。ポルターガイストが特にウザいな。魔法じゃないと倒せないうえに、念動のような物で、非常に視認がしにくい遠距離攻撃もしてくるのだ。HPが低く、魔法が当たれば絶対に倒せるのが救いだった。まぁ、こちらには魔獣と幻獣がいるから余裕過ぎて俺の出る幕はない。

 

そうやってモンスターを退けながら、地の底へ向かって下っていく。ただ、1時間ほど進んだ時点で、少々厄介な場所に行きあたっていた。

 

「坂か、それも急だな」

 

「登れる自信ないわね」

 

「私も・・・・・」

 

イズとセレーネが、手をおでこにかざすポーズで坂の先を見通そうとしている。ライトの光の届く範囲よりもさらに延びているせいで、俺にも先が見えなかった。

 

「オルト、ドリモ。頂上は見えるか?」

 

「ム!」

 

「モグ!」

 

どうやら夜目のあるオルト達にはきっちり終着点が見えているらしい。ということは、何百メートルもあるような激坂ではないのだろう。

 

「これはクライミングとまではいかなくても、相当苦労しそうだな。落下しないように気をつけないと」

 

途中で足を踏み外したらHPが低いプレイヤーは確実にスタート地点からやり直しだ。それどころか、落下した高さによっては即死もあり得る。

 

「最初はイズ達から上に行ってもらうべきか」

 

「理由は?」

 

「リヴェリアとゆぐゆぐ―――いや、リヴェリアの魔法で蔓の足場出来ないか?」

 

「できますよ。このようにですね?」

 

樹木魔法を行使し、坂の先へ階段状に伸ばしてくれた。そうそうこんな感じだ。

 

「ありがとうな。これで上がりやすくなった」

 

「これぐらいならお安い御用です」

 

急な坂から急な階段になった。でも昇り易さは断然、階段の方が昇り易い。

 

難所であるはずだった急坂を登り切った後は、そこまで危険な場所は存在していなかった。まあ、敵の数が増えはしたけどね。

 

 

ただ、最後の最後、予期しなかったギミックが仕掛けられていた。

 

 

「は?」

 

「え?」

 

「ひゃっ」

 

「う、嘘ぉ~!?」

 

なんと、下り坂になっている道の途中で、いきなり床が消失し、プレイヤーが落下する仕掛けになっていたのだ。罠扱いではないらしく、俺の罠察知には全く反応がなかった。落下した先は円形の広場になっている。その中央には、白い煙のような物が立ち昇っていた。ガスか何かか?

 

「ヴァヴァアアアアア!」

 

「うわっ、でかいポルターガイスト。・・・・・この手の物に弱いプレイヤーは酷だろうな」

 

白い煙で形作られた巨大な髑髏が、ユラユラと揺れながら叫び声を上げている。

ただでさえ不気味なポルターガイストが、巨大化するとよりキモイな。

鑑定すると、その巨大な煙の髑髏は、ポルターガイスツとなっている。どうやらこれがこのダンジョンのボス戦であるらしい。だがその前に名前! ネーミングセンスが悪すぎるだろう運営!

 

「ヴァヴァッヴァー!」

 

「なんか吐き出したわ!」

 

ボスが口から何かを発射して攻撃してきた。バランスボールサイズの白い物体だ。最初は冷気か何かと思ったんだが、オルトが防ごうとしてもすり抜けてしまった。だが、オルトのHPは確実に減っている。

 

「ヴァヴァアアー!」

 

「もしかすると、ポルターガイストを吐いて攻撃したの?」

 

それはなんと通常のポルターガイストだった。そのまま戦闘に参加し、こちらに攻撃を仕掛けてくる。ボス1体だけなのかと思ったら、ジワジワ増えるパターンか。

 

「フェル、一撃で決めろ」

 

静かに前に出る銀狼が牙を剥き、素早く動き出して増殖したポルターガイストをその牙と爪で消滅していく。

 

「魔法でしか倒せない筈なのにどうして物理で倒せるの?」

 

「フェンリルはアダマンタイトを噛み砕くことが出来る幻獣だ。見ての通り普通の牙と爪じゃないだろうし、よく見てみろ」

 

銀色の身体に風が纏っている。フレデリカにそのことを指摘してやった。

 

「風の魔法で攻撃しているだろ」

 

「なるほど、だから通じるんだね」

 

 

余裕でフェルがボスであるポルターガイスツを倒すと、壁の一部が開いて登り坂が出現した。多分モンスターは出ないだろうが、一応慎重に進んでみる。

坂を登りきった先は、再び通路になっていた。振り返ると、通路の床に大きな穴が開いているのが見える。

 

「えーっと、あれってボス部屋に落とされた穴だよね?」

 

「そうみたいだね」

 

「事前に分かっていたら落ちずに済んだんだがな」

 

「そうだね」

 

だとすると、あの穴の先に出たってことか。もう終わったことを考えてもしょうがない。先に進むか。

と、足を運んだその先にあったのは3つ又の分かれ道だ。

 

「どうする?」

 

「うーん、見ても分からないし・・・・・。とりあえず左に行ってみる?」

 

セレーネが左に指しながら提案すると、フレイヤが待ったをかけて来た。

 

『ご主人は問題にゃいけど、他は行かない方が賢明にゃ。凄く臭い毒が充満してるにゃん』

 

「そうなのか?」

 

フェルにも目を向けるとフレイヤの言葉に同意するかのように頷いた。

 

「真ん中は?」

 

『毒の匂いがするにゃ。右の方は安全にゃ』

 

そうか。なら右に行くべきだろうな。

 

「サイナ、右の道に何かないか探ってくれ。俺は中央だ」

 

「何で今の話を聞いて行くの!?」

 

「もしかしたら何かあるかもしれないからな。気になったら調べないと気が済まないんでな」

 

「うわー、【毒無効化】のスキルを持ってそうなプレイヤーでもしなさそうなのに、ハーデスはするんだね」

 

凄く呆れられている気がするがやるったらやるんだ。とにかくサイナには右へ、俺は中央の道に進んでみたら、こっちは一切何もなく手ぶらで戻る羽目になった。サイナの方は少し遅れて戻ってきて―――。採取してきたアイテムを確認していたサイナが、白いキノコを手に持っている。なんと、俺も初めて見る赤テング茸の白変種だ。

 

「へぇ。これが採取できたのか」

 

「・・・・・ハーデスの行動力と直感、私も見習うべきなのかな」

 

何か悩む彼女に声をかけ今度こそ右の通路の先へと進むのであった。そこで俺達を待ち受けていたのは―――。

 

ギュルルルー!

 

「テフ~」

 

腹をすかせたNPCが倒れている。

 

「蝶?」

 

倒れていたのは、ヌイグルミちっくにデフォルメされたモンシロチョウであった。名前はテフテフ。姿通りの名前だな。

 

「テ~フ~・・・・・」

 

グギュルルル!

 

俺たちがテフテフを見ていると、ウルウルとした目と腹の音が激しく主張してくる。

 

「テフ~・・・・・」

 

え、ご飯をあげろってこと?

 

「ちょっと待ってろ」

 

作戦タイム!

 

「何か料理あるか? アレが食べれそうな」

 

「蝶々だよね。花とか蜜とかじゃない?」

 

「でも、普通の蝶じゃないみたいだよ?」

 

「う~ん・・・・・取り敢えずみんなで全部出し合ってみる?」

 

イズの提案通りにすることとなった。いま所持している料理を、三人とテフテフのNPCの周りを食べ物で囲んだ。

 

「どうしたんだフレデリカ、変な顔して」

 

「いえ、さすがと思っただけ。どんだけ料理してたらこんなにたくさんの食材がゲットできるのかしら。異常だわ」

 

「い、異常って・・・・・」

 

「あ、ごめんごめん。褒めてるんだよ?」

 

そんなことを話している内に、テフテフはある食材に飛びついていた。

 

「テフテフ~!」

 

「それにしても、まさかこんなものを食べるとは思わなかったな」

 

「うん。私も」

 

テフテフが興味を示したのは3つ。

 

俺達がそれぞれ持っていた苦渋草とランタンカボチャ、キュアニンジンだ。一応用意してみたチューリップの花やロイヤルゼリーなど目もくれず、その1つだけを貪り食っている。

 

口に巻いた管みたいな口がないので固形物もいけるのかな~と思っていたが、まさか普通に野菜に飛びつくとは思わなかった。羽根で器用にホールドしているな。

 

「テフ~♪」

 

品種改良で作り出した作物であるということだった。多分、その条件で間違いないだろう。

 

「イズとセレーネ、畑持ってたりしてるのか?」

 

「生産に必要な素材とアイテムを作る為には必要なものがあるから」

 

「ハーデスほどじゃないけどそれなりに育ててるんだよ?」

 

しかも料理のスキルレベルも高いとか、意外だったな。今度料理会でもして食べ合いっこしたい。

 

「テフフ!」

 

そして、満足したテフテフは俺とイズとセレーネにアイテムを渡して、虚空に消える。

報酬アイテムはちゃんとプレイヤーの人数分もらえるようだ。

 

「えーっと、破れたメンコ?」

 

懐かしのレトロオモチャである。でもどうしてこれなんだ?

 

「使い道がさっぱりわからないねー」

 

「まあまあ、その内分かるって。それよりも、この後どうする? どうせだったら他の3つ行っちゃう?」

 

「付き合ってくれるのか?」

 

「もちろんよ! むしろ、こちらからお願いします!」

 

イズに続き、フレデリカとセレーネも付き合ってくれるらしい。これは嬉しいぞ。昼間までもう少し余裕があるし、皆と一緒だったら残りも攻略できるかもしれないな。

 

「じゃあ、行っちゃうか?」

 

「うん! 行っちゃおう!」

 

なら行こう。だがその前に情報を集めに行こうか。という事でぇ・・・・・。

 

「よぉ、ヘルメスさんよォ。新情報とかありませんかねぇ~? こっちはそっちより濃密な時間を過ごしたから片手だけじゃ足りない情報を山ほどあるんだがぁ~?」

 

「ッ・・・!? ・・・ッ!!?」

 

「ほ~れ~、この冥府に棲息している魔獣は絶滅危惧種で種族名ヘルキャットと言うんだ。可愛いだろう?」

 

『おいらを愛するんだにゃん人間! おいらは地獄最強の魔獣フレイヤだにゃん!』

 

喋るモンスターは初めてだろう。おん? おっとこいつも忘れてた。

 

「こっちは神獣の鳳凰だ。まだ正式にテイムをしていないフリーの状態だが、この鳳凰も中々に凄い情報が詰まっているんだが・・・・・」

 

『資格ある者よ。顔がゲスいぞ』

 

始まりの町の大通りで情報の売買をしている『タラリア』に訪れた。二体を抱えながら全身を震わせるヘルメスへ見せつける。

 

「~~~~~うみゃあああああああああああああああああああああああ!!!!! 借金地獄から脱することが出来なぁああああああああああああああああああい!?!?」

 

「とっとと前回の未払い金も払ってもらわないと困るんだぞ。一体いつまで待たせる気だコラ」

 

「い、今手元にあるのは総額の半分はあるわっ・・・・・でも、もうちょっとだけ待ってくれないかしら。こっちも色々と資金が必要で・・・ッ!!」

 

「じゃあ、最近なんか新しい食材とか出たか? 」

 

すると、ヘルメスが何やら取り出して見せてくれる。それは赤い、縦笛サイズの棒だった。いや、縦笛ほど真っすぐではなく少し反っているし、表面は少し凸凹している。

 

「これは・・・・・赤キュウリ? もうキュウリが発見されてたのか」

 

ダメ元で情報を聞いたのに、まさかこの場で出てくるとは思わなかった。

 

「あ、やっぱまだ知らなかった? 始まりの町で見つかったばかりなんだ。まだほとんど知られてないの。今のところ入手できたプレイヤーは10人いないんじゃないかしら?」

 

「え? それは凄いな」

 

「新しくNPC露店が増えて、そこで売られてたの。入るには一定以上の農業スキルが必要だけど。君なら入れると思うよ」

 

「種は?」

 

「作物状態で売られてるだけだね」

 

そうなのか、と思いつつ未払い金の一部としてそれが欲しいと口にする。ヘルメスはそう言われると逆らえないのか、トレードで譲ってくれた。

 

「と、ところで・・・・・他のプレイヤーでも関われるような情報があるの?」

 

「あるな。今のところ北の町に隠し通路を発見したんだ。その中に何があるのかも把握済み」

 

「そ、それを教えてもらうのは・・・・・」

 

「関われないのも含めて全部言ったら、もう1000万以上の未払い金が増えることになるが?」

 

「ぶ、分割払いで・・・・・」

 

「却下、悪いけどこれから西の町に行くから忙しくてまた今度な」

 

きゅうりの確保と言う成果だけ残し待たせてるみんなのところへ戻り、また鳳凰の背中に乗せてもらい西へ目指す。

「よし、初の西の町だ! とりあえず第3エリアを歩き回ってみるか」

 

「ムッムー!」

 

スムーズに俺達は第3エリアである西の町へとやってきていた。未討伐のフィールドボス? あいつらなら俺がワンパンで沈めてやったよ。

 

俺と腕を組んで歩いているのはゆぐゆぐである。楽し気に歩いているな。手を繋ぐくらいならともかく、腕を組むとなると・・・・・。ここ最近構ってやれなかったから今日は好きにさせてやろうと思う。

 

「西の町は緑がイメージカラーかー。綺麗だな」

 

「――♪」

 

屋根や壁が緑系統に塗られている町、アールヴの里がある深い森の中にいるような、心安らぐ色であった。

 

プレイヤーにNPCが騒ぎながら道を行き来している。俺たちも屋台で食べ物を買ったりしながら、町を歩いてみた。地図も埋まるし楽しいし、一石二鳥だね。

 

「おい、あれ――」

 

「まじか――」

 

「お、俺も――」

 

ただ、めっちゃ見られているな。まあ、分からなくもない。その視線はほぼ全てがフレイヤに向いていた。俺だって、自分以外にヘルキャットを連れているプレイヤーがいたら羨ましくなるだろうし、ガン見してしまうだろう。

 

フレイヤが動く度に、「おお~」というどよめきが上がる。

 

『にゃはは。人間どもの熱い視線が伝わってくるにゃ~』

 

「優越感を感じるだろ」

 

『もう最高にゃ!』

 

海中の魚のように軽やかな動きをするフレイヤが飛んだだけで、凄い歓声が上がったぞ。やはり猫の破壊力は凄まじいということか。ただ、ちょっと注目し過ぎたかもしれない。周囲のプレイヤーの目が怖い。そして人の輪が狭まってきた気がする。より近くでフレイヤを見たいんだろう。

 

このまま身動きが取れなくなりそうだな。ということで、俺は皆を連れて足早に包囲網を脱出したのだった。さすがに追ってはこないかな? ふー、ちょっと調子に乗り過ぎたか。反省しよう。

 

「適当に逃げて来たから、町の中心からは大分外れちゃったな」

 

「本当にだよ。どうしてここまで来るのかなーって思うぐらいに。完全に当てずっぽう出来たでしょ」

 

「まさしくその通りだ」

 

周囲を見回すと住宅街まできてしまったらしい。ただ、商店街に戻るのはもう少し時間が経ってからの方がいいだろう。この辺を散策してみるか。

 

「オルトどこ行きたい?」

 

「ムー?」

 

横にいるオルトに話しかけるために、視線を落とした時だった。俺は、オルト越しに見た民家の壁に、違和感があった。

 

「・・・・・ああ、隙間がちょっと歪というか、下の方が少し隙間が大きいのか」

 

「え? どれのこと?」

 

「あ、セレーネ。多分これだわ」

 

「よく見つけたねハーデス」

 

民家の壁と民家の壁の境目にある隙間なんだが、下に行くにつれて微妙に間が広がっているのだ。それが違和感の原因だろう。隙間を軽く覗き込んでみると、オルトも真似して隙間の向こうを見始める。

 

「なんか、光ってるな・・・・・。向こう側から光が漏れてるだけか?」

 

「ム?」

 

「いや、違うか?」

 

隙間の向こうから微妙に光が漏れているのが見えた。しかもよく見てみると、それが太陽の光じゃなくて人工の光であることが分かる。隙間の向こうに空間があるようだ。入り口部分は狭いものの、先に行くと横幅が広くなっているらしい。

 

「光ってる物の正体が分からないな・・・・・」

 

「ムム~」

 

隙間に体を入れようとしてみるんだが、さすがにこの隙間には入らない。さらに身をよじってみたが、無理だった。俺が無理ならこの中で身体が大きいフェルは絶対に無理だ。

 

「いや、下は少し広がってるし、四つん這いになればいけるか?」

 

周囲を見回しても他のプレイヤーはいないし、間抜けな姿を目撃されることもないだろう。ちょっくらチャレンジしてみるか。それでダメだったら、ミーニィとフレイヤに偵察してきてもらおう。

 

「フェル、お前は少しここで待機しててくれ。すぐに笛で呼ぶ。他の誰かが来たら何もせず通してやってくれ。無作法に触れられるのが嫌なら抵抗してもいい」

 

俺が何しようとしているのか、自分の身体では入れない場所だと察してる様子で頷いた。

 

「よっ、ほっ・・・・そいやっ!」

 

よし、肩が通った! このまま行くぞ。

 

「ぐ、せまいなー」

 

「キュイ?」

 

俺の前を飛んで先導してくれているミーニィが心配そうな顔をして振り返る。

 

「だいじょうぶだ」

 

そうやってハイハイで進むこと10メートル程。ようやく広い空間に出た。俺は立ち上がってグッと伸びをする。いやー、ゲームの中でもついついやっちゃうよね。

 

「えーっと、ここはなんだ?」

 

光の正体は、壁に埋め込まれた小さいランプのようなものだった。

 

「キュイ!」

 

「あ、マンホール?」

 

ミーニィが指差しているのは、地面に設置された丸い蓋のようなものだ。マンホールっぽいが、取っ手のようなもの以外にその表面に模様などは一切ない。

 

「開くか・・・・・?」

 

「ム?」

 

「モグ?」

 

「おお、お前たちも来たか」

 

うちの子たちは全員俺より小さいから。俺が通り抜けられれば、問題ないのだ。

 

「今、お前達の中で一番腕力が高いのはオルトか? ちょっとこのマンホールを開けてみてくれ」

 

「ムム!」

 

オルトが腕まくりをしながら、マンホールの前でしゃがみ込む。頼もしいな! そして、オルトの頑張りによって、マンホールの蓋がジリジリと上がっていく。

 

「キュイ!」

 

オルトの上を飛び回りながら、ミーニィが応援している。その声援に引っ張られるかのように、マンホールの蓋が持ち上がっていった。

 

「ムムー!」

 

「よーし、良くやったぞオルト」

 

「ム!」

 

ドヤ顔のオルトの頭を撫でつつ、マンホールの中を覗き込む。その下には、降りるための梯子と、漆黒の闇が広がっていた。

 

「やっと出られたぁー・・・・・」

 

「狭すぎて体のあちこちがぶつかって大変だったわ」

 

「ふぅ・・・あ、ハーデス。何か見つけたんだ?」

 

「お待たせしました」

 

彼女達も来られたか。手を貸して立ち上がらせ一緒にマンホールの中を覗き込む。

 

「さーて、二つ目の隠し通路だ。行くぞ」

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