先に軽くマンホールに落ちるように降りると、そこはレンガ造りの小さな部屋だった。天井は2メートルちょいくらいの高さかな。
「みんな大丈夫か~?」
「キュイー」
「ムムー!」
飛べるミーニィとフレイヤはそもそも梯子なんか使わない。オルトも普通に梯子を下りて来たな。ゆぐゆぐも人型なので大丈夫だ。
問題はクママとドリモだ。一応二足歩行だが、手は鋭い爪が生えているし、足も短い。梯子を上手く下りれるかな?
「下で支えようか~?」
「モグ」
マンホールの入り口を見上げながらドリモに声をかけたが、どうやら助けは必要ないらしい。首を横に振っている。
「モグ」
「大丈夫か?」
多少もたつきながら、梯子に足をかけるドリモ。とても大丈夫には見えん。下から見ると、オーバーオールの尻尾穴から飛び出した尻尾がヒョコヒョコと左右に揺れていた。短い脚をチョコマカと動かしながら、梯子をちょっとずつ降りようとしている。
「モグ」
俺は梯子の下で何時でも抱き留めるよう身構えて待った。だって、足を踏み外して落下したように見えたのだ。しかし、それは見間違いであった。
シューッ!
ドリモは自ら足を梯子から外し、両手で梯子を握ったまま下に滑り降りて来たのである。梯子の両端を握った手の力で、軽く勢いを殺しているようだ。そのまま華麗な着地をきめた。クママもドリモの降り方を真似て降りて来る。
「ハーデス、上を見ないでよー!」
さすがに見えないだろ。と言いたいが空気を読んで梯子から少し離れて待つと、フレデリカ達も降りて来た。
「ここは下水道か」
しばらく進むと、通路の横に水の流れている場所に出た。下水と言ったが、いわゆる汚物を流す場所ではなく、雨水などを集めて排出するための場所だと思われた。匂いもしないし、水が意外に透き通っているのだ。もしかしたら中水道なのかもしれない。
「下水道マップ・・・・・」
RPGなんかだとよくあるダンジョンだ。だいたい迷路化しているうえ、梯子を登ったり下りたりするギミックが用意されていて非常に面倒なことが多いんだっけ? そんなこと考えている俺のよそにオルトとドリモが部屋から続く通路を覗き込んでいた。2人とも夜目持ちである。先が見えているんだろう。
「どうだ? 敵はいそうか?」
「ム!」
「モグ」
『毒の臭いもしないにゃ』
首をフルフルと横に振るオルト達。どうやら敵は見えないらしい。それでも油断はできない。初めての場所だし、慎重に慎重を期さねば。先に進むと、案の定行き止まりである。隙間の狭い鉄格子が通路と水路にはめ込まれ、進むことが出来なくなっていた。隙間が狭すぎて、ミーニィでさえ通り抜けられない。畑にいるファウすらも入れないだろう
「格子の棒、壊れないもんか」
動かんね。俺の腕力でもどうにもならなかった。スキルなどで破壊もできない。
「壊れないね。だとしたら水中に潜るしかないんじゃない?」
「水中か」
チラリと宙にいるフレイヤへ視線を向けたら・・・・・。
『おいら、用事を思い出したから地上に戻ってるにゃあー!!!』
『私もだ。フェンリルの傍でお前達を待っているぞ』
話を聞いた瞬間からか。物凄い勢いで勝手に離れていきやがったぞあの自称地獄最強の魔獣と鶏もどきが。
「ゲームの中でも水に濡れるのが嫌なのか魔獣のくせに。風呂に入る猫もいるというのに情けない。鶏も戻ったら羽を毟り取って食ってやる」
「あそこまで拒絶するならどうしようもないわ。私達だけでも行きましょう?」
「それにしても攻撃魔法が撃てるってことは、完全にダンジョン扱いってことだよねここ」
後でどうお仕置きを・・・・・フェルもなんか濡れるのが嫌そうな感じがするな。水の中に潜ってイズの言葉通り水中まで張られてない水路を泳いで潜り抜けてみせた。
鉄格子の抜け道を無事潜り抜け、俺達は先に進んだ。ヒカリゴケが所々に生えているため、視界良好とはいえないが真っ暗でもない。それに先導役のオルトたちが夜目を持っているので意外と進む速度は遅くなかった。道中でふと気になったので水を汲んでみたが、最低品質の単なる水だな。これが凄い高品質だったら生産職が狂喜したんだけど、そんな美味しい話はないらしい。
それでも水中に採取できる物が何かないかと確認しながら進んでいると、俺の肩に乗っていたリックが鋭い鳴き声を発した。直後、水路から何かがザバーと水を割りながら上がってくるのが見える。
「うん? なんだあれ。ゴミ?」
「ヴァァ~」
俺たちの進路を塞ぐように立ちはだかったのは、一見すると泥とゴミをこねて固めたような、できればお近づきになりたくない外見をしたモンスターであった。
「ヘドロン・・・・・。なるほど、ヘドロのモンスターってことか」
「水路の水が綺麗なのにあんなモンスターがいるのね」
テイムは可能な様だが、こいつはテイムしたくない。普通に倒そう。
「相手は一体だが、足場が狭い。皆、気を付けろよ!」
「ムム!」
「モグ!」
下水道の通路は横幅が2メートルほどしかない。今までのダンジョンとはまた違った厄介さがあった。
「ヴァアアア!」
「ムッムー!」
救いなのは、ヘドロンの強さが大したことなかったことだろう。泥の球を飛ばす攻撃をしてきたが、オルトのクワで完全に防げている。そこにドリモのツルハシと、ミーニィの魔法、サクラの鞭が襲いかかった。
そして、それで終わりだ。戦闘開始1分もかからなかった。ステージが面倒な分、モンスターの難度はそこまでではないのかもしれない。
「って思ってた自分がいたな」
時には水路に潜り、時には狭い隙間を匍匐前進で通り抜け。ダンジョンをゆっくりと進んでいると、新たなモンスターが出現していた。その名も、アメメンボ。
水路の上をスイスイと進む、アメンボを大型犬サイズにしたような姿の昆虫系のモンスターだ。そして、前後からは2体ずつ、計4体のヘドロンが迫る。
「全方向から包囲されちゃった!」
「問題ない。【挑発】」
水路に飛び込み、モンスター達の意識を一身に集める。そうすれば『アルゴ・ウェスタ』を装備して【溶断】のスキルで熱烈一閃。その後、数度に及ぶヘドロン、アメメンボ連合軍との激闘を潜り抜け、俺たちはさらに奥へと進んでいった。
そして、マンホールに突入してからおよそ1時間。俺たちはまた本日最大の難所にぶち当たっていた。
「これはなかなか・・・・・」
水路が上り坂となっていたのだ。足場も途切れてしまい、水に逆らってこの坂を上る以外に進む方法が無さそうだった。
「しかも坂の途中に鉄格子があるんだけど。あれって下を通り抜けられるのか?」
「取り敢えず、ハーデス行ってみてくれない?」
イズの言葉を受けた後、俺は水の流れなど物ともせずに坂をグングン上っていく。結構な水量があるんだが、この程度であれば妨げにはならないな。
「行けれるぞー!」
「下を抜けることはできるのね」
とは言え、水泳・潜水のスキルを所持する俺だからあっさり通り抜けられたのだろう。フレデリカたちが水の流れる急坂を登りながら、一度水に潜らねばならないというのは、相当難度が高かいかもしれない。
「ミーニィ、巨大化して皆を運べないか?」
「キュイ!」
だが、そんなことせずとも唯一浮遊かつ大人数を一度に乗せることが出来るピクシードラゴンさんがいるのだ。俺の予想通り、水中に潜って進むこともせずに済んだイズ達もこっちに来られた。
にしても結構進んできたよな。
奇襲を警戒しながら慎重に進む。さっきは水路の中に落ちてた水鉱石を拾っている最中に奇襲を受けたからな。採取も気を抜けんのだ。俺だけならともかくな。
因みに、この下水道では水路の中で水鉱石と銅鉱石を、通路では茸類を拾う事が出来ている。どれもすでに所持している物ばかりなので、採取物はあまり良いとはいえないだろう。
「オルト、ゆぐゆぐ、盾にするようで済まんが、イズ達を守ってくれ」
「ム!」
「――!」
だが俺達の警戒をよそに、その後は戦闘はなく、行き止まりと思われる大部屋にたどり着いたのだった。見たところその部屋からさらに奥へと通じるような通路は伸びておらず、ここが終着点であるようだ。
部屋の形状は入り口から緩やかに下り坂になっており、全体ではすり鉢状になっている。
「何もないな?」
「ムー」
祭壇があるわけでも、ボスがいる訳でもなく。ただ無人の部屋があるだけだ。仕方ないので、隠し通路でも探そうかと、足を踏み出したその瞬間であった。
ガシャン!
「クマ!」
「閉じ込められたか。なら次に起こるのは大体アレだろうな」
入り口に鉄格子が降りて、俺たちは部屋に閉じ込められていた。
「みんな、警戒」
「ムム!」
警戒して陣形を作って待ち構えていると、ガコンと音を立てて天井が開くのが見えた。そして、そこから大量の水が部屋に降り注ぎ始める。
「え、 ここで水攻めか?」
だが、溺れさせるつもりではないだろう。入り口は塞がれているとはいえ鉄格子だし、すり鉢状になっている部屋の中央部分に水は溜まるだろうが、それ以上は格子から流れ出ていってしまうはずだ。
そして俺の予想通り、水は鉄格子の高さスレスレ程度で止まっていた。大部屋全域が水浸しになり、体育館くらいの面積の池が出現している。
だが、それで終わりではない。天井に開いた穴からは、今度は水ではないものが降ってきたのだ。
「アメメンボの大軍かよ」
10匹以上はいる。しかもその中に一際大きく、赤い個体がいた。名前はアメメメンボ。名前が手抜きじゃね? だが、気は抜けない。明らかにボスだ。
「これって、マズいかもしんない?」
フレデリカがポツリと呟いた。現状、俺たちがいる鉄格子前で、水の深さは足首程度だ。だが、部屋の中央付近に行けば俺でやっと首が出る程度だろう。うちの子たちでは水没してしまうはずだ。
となると足場にできる場所は、この円形のすり鉢状になっている部屋の、壁際付近だけとなる。しかも水で動きが阻害されるし・・・・・。
「いや、問題ないだろこれ。ミーニィ、ちょっと皆を乗せてくれ天井付近まで浮いててくれ」
巨大化したままのミーニィは指示通りに動いてくれる。
「何するつもりなの?」
「マグマで倒す」
「この密室の中で!? あ、溶岩が冷えると固まって足場になる?」
「ついでに言うとマグマ耐性があるイズとセレーネにはそこまでダメージは無いと思うしな。【挑発】!」
【飛翔】で部屋の中央へ飛び、アグニ=ラーヴァテインに装備を変えて【マグマオーシャン】を発動する。アメメンボ達の独壇場の水場が赫赫なマグマにゆっくりと塗り替えられてゆき、徐々に追い詰められていく。そして壁の端にまでマグマが届いた頃には、アメメンボ達は足が燃えてそれに呼応するようHPも減っていった。ボスの赤いアメメメンボも例外ではない。たとえ冷えて固まる溶岩でも水面がなければ移動できまい。
「ふはははっ!!! 密室での戦闘は俺の方が独壇場だぞ運営この野郎!!!」
高笑いしている間にもマグマを出し続けていたことでアメメメンボ達を一気に殲滅することが出来た。
「・・・・・ハーデスが魔王って呼ばれても不思議と違和感を感じないわ」
「同感だよ」
「あ、あはは・・・・・」
なんか言われたが敢えて気にしない。さて? ボスを倒したのに、鉄格子は解除されなかったな? お、そのかわりに部屋の反対側の壁がスライドし、新たな通路が出現している。先に進めってことなんだろう。
もし倒したアメメメンボが中ボスだったら今度は毒殺してやろう。だが、俺の考えた作戦は無駄なものであったらしい。通路にモンスターは出現せず、その先には小部屋があるだけだったのだ。
足を踏み入れても、ボス戦が開始されるようなこともない。ただ、その部屋の中央に何かが横たわっていた。
何かと言ったのは暗くて見えないからではない。部屋の四隅には強い光を放つ四角形の行灯のような物が吊るされており、光源は十分だった。
何かと曖昧に表現した理由は、一見しただけではそれの正体が理解できなかったからだ。
「白い・・・・・布?」
床に白い布が適当に置いてあるようにしか見えない。だが、これが単なる布でないことは、マーカーの色が教えてくれていた。どうやらNPCであるようだ。
鑑定すると『オバケ』というなんの捻りもない名前が表示された。なるほど、お化けか。この白い布のような物がそのまま体って事らしい。幽霊ではなく、お化け。たらこ唇のQちゃんや、何故か配管工が姫を救う国民的アクションゲームに登場する白いやつと同類だ。
よく見れば布の中央に顔らしきものがあった。まあ、布にマジックで落書きしたと言われたらそうとしか思えない感じだが。糸目と思われる2本の横線と、底辺を下にした三角形の口っぽい物が一応確認できる。
フォルム的には、ボーリングの球に白い布をかぶせて、指のない三角の手を左右に付ければ完成である。足はない。ただ、布の中は覗くことが出来ず、真っ暗な闇が広がっていた。
NPCということは北の町にいたテフテフと同類なのか・・・・・?。
「バケー・・・・・」
近づくと、床に仰向けに寝そべっていたオバケが目を開いた。糸目なのかと思っていたら、単に目を瞑っていただけらしい。糸目が黒い丸になった。どちらにせよ落書き風なことに変わりはないが。
にしても、妙に弱々しい声じゃないか? いや、これってまさか?
「バ、バケー・・・・・」
再びか細い声をあげるオバケ。
グギュルルルル~!
「な、何の音?」
まるで巨大なカエルの鳴き声のような。もしくは南国の鳥の威嚇の声だろうか。こちらを威圧しているかのような重低音が、どこからともなく聞こえてきた。プレイヤーの俺達が皆して音の発生源を探った。不思議とオルト達が警戒しないのは気になるが。
グギュルルル~!
謎の重低音は、前方から聞こえてくる。オバケの向こう側か? 壁の向こうに、何かいるのか?
グギュルル~!
いや、違うな。もっと近くだ。そう、オバケの辺りから聞こえてきた。というか、オバケから聞こえている?
「バ、バケー・・・・・」
「・・・・・もしかして」
俺はオバケに近づき、片膝をついてその様子を観察した。よく見たら頬がこけているようにも見える。
グギュルルル~!
うん。敵とかいませんでした。オルト達が戦闘準備をしない訳も分かった。
謎の音の正体は、オバケの腹の音だったのだ。弱って見えたのは、単に空腹だったかららしい。寝ていたのではなく、腹を減らして行き倒れていたようだ。
「バ、バケケ~・・・・・」
「いや、お化けが空腹ってどうよ。まだテフテフは生物だから分かるのに、お化けは心霊の類なのに」
「ハーデス、多分抱いてもしょうがない疑問じゃないかしら」
ゲームだから、と謎の説得力を感じさせるイズに思考を放棄した。そう、考えても仕方が無いと。
「バケ・・・・・」
助けてやりたい気持ちはあるが、どうすりゃいいんだ? そもそもオバケって食事をするのだろうか? 霊体なのに?
「精気でも吸わせりゃいいのか?」
「バケ・・・・・」
違うらしい。微かに首を振ったのが分かった。顔が胴体みたいなものだから、全身を左右に揺する感じだが。
「じゃあ、普通に食事をするのか?」
「バケ・・・・・」
今度は明らかにうなずいた。まじか、食事をするのか。いや、幽霊ではなくオバケ。ここは別物として考えなくてはいけないだろう。
「オバケの好物って何だ?」
Qちゃんは白米好きだったっけ? いやチョコレートだったか? どちらにせよ所持していないが。
「聞いても分からないだろうけど、皆は分からないよな?」
「「「うん」」」
「申し訳ありません。私も初めて見る生物? なので」
「解答。 この非現実的生物の主な餌は不明でございます」
だよねー。考えても分からないので、テフテフと同様に手持ちの食べ物を片っ端から並べることにした。
肉料理や魚料理、飲み物や甘味。それだけではなく、素材を好むことも考えて生肉に鮮魚、野菜にハーブ等、食用にできそうなものを片っ端だ。自分で思っていた以上にインベントリに色々入っていたな。オバケの周囲を囲むように、何十種類もの食べ物が置かれている。なにか儀式でも始まりそうだ。
「どうだ? 食べたいものがあるか?」
「バ、バケケ・・・・・」
首を横に振るオバケ。なに? これでもダメなの? 他に何かなかったっけ?こうなったら、そのままでは食べられない物も全部出してしまおう。食用草や雑草扱いのハーブたち。さらに薬草や水なども全部だ。
すると、オバケがそのちっちゃい手をそっと伸ばす。なにか気を引くものがあったらしい。そして手に取ったのは、真っ白な毒茸であった。
「あ、それはっ!」
赤テング茸・白変種だ。他のアイテムに混じって、間違えて置いてしまったらしい。だが、俺が取り上げる間もなく、オバケはその真っ白な傘に青い斑点の付いた毒々しいキノコを口に入れてしまったのだった。
「ちょ、それ食べないでくれ! 畑で育てるつもりで―――」
「バケ?」
オバケは毒など意に介することなく、赤テング茸・白変種をモグモグと咀嚼している。
「・・・・・」
「ハーデスがショックを受けちゃったみたい」
「ま、また採りに行こう? 私も付き合うから。ね?」
「毒キノコ食べても大丈夫なの?」
「バケ!」
・・・・・問題なかったらしい。茸を食べたオバケは途端に元気を取り戻し、体を起こした。そしてオバケは素早い動きで立ち上がる――のではなく宙にフワーッと浮かび上がる。
上下左右にフワフワ動きながら手をバタバタさせているな。どうも喜んでいるようだ。
「バケバケ!」
オバケはダンスする様にクルクルと回転しながら、フワフワと俺の周りを飛んでいる。楽しそうだ。その雰囲気に当てられたのか、オルト達まで踊り始めたな。
「ラランラ~♪」
「ムムー!」
「キュイー!」
「クマー!」
「バケケ~!」
さて、これからどうなるか。友好的に接触できたし、戦闘にはならないと思うが・・・・・。次にどうすればいいのか分からず踊るうちの子たちとオバケを見ていたら、ある程度で満足したらしい。オバケが俺達の前でその動きを止めた。まあ、上下にフワフワと揺れているけど。
オバケは何やら手を布の下に突っ込んでゴソゴソし始めた。そして、取り出した何かを俺達に差し出してくる。
「バケ!」
「うーん・・・・・またなんだこれ?」
ヒビの入った小汚いビー玉だ。その名前もひび割れたビー玉。譲渡売却不可となっているので、イベント関係のアイテムであるようだ。
「えーっと、これをくれるのか?」
「バケ!」
俺の問いにオバケは大きく頷く。これが助けた報酬ってことらしい。
「これの使い道は――」
「バケー!」
これをどうすればいいのか聞こうと思ったんだが、オバケはこちらに軽く手を振ると、ポンと言う音を残して姿を消してしまう。え? これでイベント終了ってこと?
「えーっと、これどういうことだ?」
「本当にね。残りの町ににもあんなNPCがいるとして、料理を食べさせるとレトロなアイテムを貰う感じになって来たわね」
「みんなで遊ぶイベントを始めるためのアイテムかな?」
「うーん、考えても仕方ないから皆で調べてみない? 掲示板でさ」
手元に残った謎のアイテムを見つめるが、使い道は分からない。フレデリカの言う通りにしようと俺達ちょっと調べてみることにする。
軽く掲示板などを検索してみるが、普通のビー玉の情報しか出てこない。レッサー・ゴーストのドロップであるビー玉なら、掲示板にも載ってる。ただ、イベントアイテムであるひび割れたビー玉の情報は見つけられなかった。
他にもオバケなどについても検索するが、こちらも特に有用な情報はない。しかし、1つだけ興味を惹かれる情報があった。
「東の町でも隠し通路が発見されてたのか。発見者は浜風・・・・。へぇ、このプレイヤー、スネコスリって妖怪も発見してるのか」
今俺たちがいる西の町ではなく、東の町でも地下通路が発見されたらしい。ただそこにいたのはオバケではなく、コガッパという妖怪がいたらしい。ここと同じ様に行き倒れていたと書き込まれている。
しかしコガッパに食べさせられるようなアイテムは所持しておらず、イベントが進められなかったと書いてあった。
「隠し通路に入る方法も書いてあるな」
一度確認しに行ってみるのもいいかもしれない。それに、北と西と東に隠し通路があったということは、やはり南にも何かあるんじゃないか?
「これは、探してみる価値があるかもしれない」
もともと他の第3エリアの町を歩く予定だったわけだし、一石二鳥と思っておこう。
「よーし! みんな、一旦上に戻るぞー」
「ムム!」
因みに、降りる時は滑り降りたドリモだったけど、登る時はメチャクチャ大変でした。皆で引っ張りつつ下から持ち上げて、ようやく梯子を登れていた。
また四つ這いになって狭い道を抜け出たところでばったりと上級者と見受ける見知らぬプレイヤーと鉢合わせした。
「ええっ、もしかして白銀さん!? どこから出て来たんだ!?」
「隠しダンジョンから戻ったところだ」
オルト達もイズ達もぞろぞろと抜け出てくる姿に、その信ぴょう性が高いと踏んだプレイヤーは恐る恐ると訊いてくる。
「あの、俺は満〇って言いますけど俺も隠しダンジョンに行っても?」
「ああ、あの時の掲示板の? どうせ何時か知られるんだ。構わないぞ。ああ、赤テング茸・白変種は絶対に所持した方がいいぞ。それを手に入れてから攻略して見ろ」
「ボスモンスターか何かの攻略に使うんで?」
「それは自分で確かめてくれ。それじゃ俺は東の街に行くから」
おい、鶏もどき。勝手にどこかに行きやがって。その羽を毟り取られてお前の体の中から暴れてやろうかああん? 悪かった、許してくれ? だったらさっさと俺達を乗せて東に向かえ。と顔蒼褪める巨大化した鳳凰の背中に乗っては東の町へ超特急に向かう。
「おい自称地獄最強魔獣。水ごときでご主人様を置いて逃げるとはいい度胸じゃん。お前の毛を刈って靴下にしてやろうか。それとも一本だけ尻尾を抜いてもいいんだぞ? それで猫じゃらしにしてやる」
『ぎにゃああああ!? それだけは止めてほしいにゃ!!! 本当にごめんなさいにゃ、許してほし、にゃあああっ!! 尻尾を掴んで振り回さないで、千切れるっ、目が回るぅううううううっ!!?』
『お、おい!? さっきからブチブチと音がするぞ!! まさか本当に私の毛を毟り取っていまいだろうな!? 鳳凰の私に対してそれは罰当たりであるぞっ、おい聞いているのか!?』
―――その間、ちょーっとお仕置きをしたがな。