北と西にあったのだ、南にだってあるだろう。そう思って探索を始めたんだが――。
「あそこ、人がいるな」
「ム」
南の町の端にある墓地に、5人程のプレイヤーがいた。近寄って見ると、墓地の中央にある一際大きな墓石の後ろに、階段が空いているではないか。
「これってもしかして、ダンジョンの入り口か?」
「あれ、もしかして白銀さんじゃ?」
階段の前で観察していると、不意に後ろから声をかけられた。
「えーっと? 浜風さん?」
その職業は陰陽師となっている。彼女が最近凄い発見を連発している噂の浜風であるようだった。元テイマーで、現在は陰陽師という、話題の最先端を行くプレイヤーだ。掲示板でも会話をしたな。
「あれ、髪色変えたか?」
「あ、その通りです。私最近髪の色を変えたんです。前は黒髪だったから。それにお花見の時にごあいさつしただけなので、覚えてなくても仕方ないかもしれません」
なるほど。だったら仕方ないかもしれない。というか、あそこにいたのか。
「掲示板を見たぞ。俺より先に隠しダンジョンを発見するなんて新鮮な気分だった」
「え? 本当ですか? えへへ」
照れたように頭をかく浜風に、この場所のことを聞いてみると、やはりダンジョンの入り口であるらしい。浜風が知人たちとともに発見したそうだ。
「同じプレイスタイルを模索している人たちに声をかけて、人海戦術で探したんです。うう、もうちょっと早くここに来てれば私が第一発見者になれたのに・・・・・」
発見したプレイヤーがすでに早耳猫に情報を売りに行ったらしいので、他のプレイヤーも次第に集まってくるだろう。多分、俺とは入れ違いになったんだろうな。
「白銀さんも、もしかして情報を買ってきたんですか? うふふ、これは飲まず食わずで探し続けた甲斐があったかも・・・・・」
「あー、情報は買ってない。自力で隠しダンジョンを探してたら偶然ここに人がいるのを見て、立ち寄っただけだ」
「あ、そうですか・・・・・」
俺が偶然だと告げると、ちょっと悔しそうだ。情報があまり広がってないのが残念なのだろうか?
「結構厄介なモンスターが出るらしいんで、気を付けてください」
「ありがとう。あれ、浜風はもう帰るのか?」
「実はタラリアのサブマスから呼び出されてまして。仕事の手伝いをしてほしいそうなんです。うふふ」
口振りは面倒だという感じのトーンなんだが、顔は何故かにやけている。
「あのタラリアも、私のことは無視できなくなってきたってことですよね!」
どうやら有名クランから名指しで協力を頼まれたことが嬉しいらしい。だが、その気持ちは分からなくもないぞ。自分もちょっとだけトッププレイヤーの仲間入りをした気になれるのだろう。
「まあ、浜風は最近話題だし、タラリアに限らず、注目してる人は多いんじゃないか?」
「えへへへ~。そうですかね~?」
「ああ、俺と同じぐらい凄い発見もしてるし、これからも色々な発見をしような」
「勿論です! いつか白銀さんを超えて見せますから!」
陰陽師というレア職業なうえに、情報を独占せずに自ら掲示板にアップする浜風はすでに俺なんか超えているだろう。それでも浜風みたいな有名プレイヤーによいしょされるのは悪い気はしないので、礼を言っておく。
「いやー、そう言ってもらえると俺もゲームを楽しめれる。お互いもっと楽しもうな」
「はい!」
彼女と別れても順番が来るまで待つ。色々なプレイヤーが集まってきたら、ダンジョンに入るのにまた並ばなくてはいけなくなるだろう。そのままダンジョンへ突入すると、そこは浜風に言われた通り、非常に不気味な場所であった。地下水道、地下通路、地下洞窟ときて、地下墳墓である。
「結構広いぞ」
「ムム」
他の地下ダンジョンと比べて、フロアが広い。
昔は綺麗に石畳が敷き詰められていたのだろうが、長い年月のせいで石畳が所々剥げ、また墓石や地面を苔や蔦が覆い隠すことで独特の雰囲気がある。
明かりは問題ない。壁には小さな凹みが並んでおり、そこに火の灯った蝋燭がならんでいるからだ。
「これは、どうせアンデッドが出るんだろうな」
「ム?」
何が出ようと倒すまでだが、何が出るんだろうな? モンスターが出るまで歩き続けたら初めて見るモンスター達が俺達の前に現れた。
「カタカタカタ!」
「ゴー」
「スケルトンか。あとは、コールゴーレム?」
スケルトンとコールゴーレムだ。2メートルを超えるゴリラ体型のゴーレムなんだが、その体が黒い石で作られている。そして、その腕は赤く熱されていた。石炭で作られたゴーレムであるらしい。
・・・・・発掘できますねぇ。
「あ、ハーデスが不壊のツルハシとラヴァピッケルを装備した」
「岩石系モンスターだし、片方は骸骨だから砕けるからじゃない?」
「ゴーレムの方は、採掘したら石炭を落としてくれるのかな?」
何だかイズとセレーネは採掘できそうなモンスター相手にはツルハシで戦うようになってきたな。
「フレデリカ、骸骨の方を頼む」
「あっという間に倒してあげるよ」
よろしく。それじゃ、戦闘開始! リヴェリアがゴーレムの手足を蔓で縛ってくれたおかげで動けない岩石はただの採掘対象になり下がった。ピッケルとツルハシを持つ俺達は躊躇なく岩石の身体に打ち込んで削っていく。おら、石炭を落とせ!
「凄い凄い! ポロポロと石炭を落としてくれるよ!!」
「普通に倒すよりこうして採掘しながら攻撃すると、ドロップアイテムとしてたくさん落としてくれるのね!! いいこと知ったわ!!」
「そんな二人に朗報だ。鑑定したら石炭を炉に使用すると、製作物の品質を向上させることができるらしいぞ」
「「コールゴーレム、もっときて!!」」
ガンッ!! ガンッ!! ガンッ!!
うん、もうこの二人だけで倒せる勢いだわ。ゴーレムに関しては二人に任せた方がいいだろこれ。
しかもこのダンジョンボスのコールコールゴーレムの召喚する様に二人が発狂してしまうほど歓喜して、掘りまくった。掘りまくった。掘りまくったのだ。俺達も手伝いはしたが、イズとセレーネだけでコールコールゴーレムを倒したのは圧倒されたな。
ボス部屋の南の地下墳墓の奥にいたのは、ケダマンを可愛くしたような姿のモフフというNPCだった。まあ、小さな毛玉である。そのモフフが食べた好物は果物だった。しかも品質★8以上じゃなければいけないようなのだ。俺が偶然持っていた★8の黄金林檎を食べてくれたのだが、他の果物には見向きもしなかったので確実だと思われる。
それから昼食兼ねて次は13時に再出発の約束を決めて一旦解散、ログアウトした。時間になると再度集結して残る東の町にある隠しダンジョンへ攻略に乗り出した。
南もそうだったが東の隠しダンジョンにも急な坂があって、ひと苦労した先に待ち構えていた東の地下ダンジョンのボスを倒してコガッパの下へと向かっている。その日の内に四つの町の隠しダンジョンをクリアし時間をかけ、ようやく俺達は最後の間へとやってきた。 そして、地面に倒れ伏すコガッパを発見する。
「あれか」
「情報の通りね」
グギュルル~。
「早く助けてあげましょう?」
「やっとこれで終わりか~」
「それにしても青いヌイグルミにしか見えないね」
色は全体的にペンキをぶちまけたように真っ青。全体のフォルムは―――埴輪っぽい? 頭部と体が一体化した、凹凸のない円柱状の胴体。そこに、それこそヌイグルミっぽく見える、指の無い細く丸みを帯びた手足と思われる物体が付いている。
肌の質感は柔らかそうだ。布にも見える質感をしている。あと、真っ青と言ったが、頭の天辺と顔の中央は黄色かった。頭頂部にはヒマワリの花をデフォルメしたような皿をくっつけ、口と思われる部分は鳥の嘴風である。目は小さくも円らだった。黒いビー玉っぽい感じだ。
カッパなのだろうが、大分可愛いな。
「カパパ~・・・・・」
グギュルルル~!
「はいはい。ちょっと待てって」
「カパ」
「ほい、キュウリだぞ」
「カパパパ!」
「うお!」
あぶな! いまキュウリを離していなかったら腕ごと食われていたのではなかろうか? 食われても問題ない【VIT】だけど条件反射で手を引っ込めてしまったよ。
「カ~パ~」
コガッパは美味しそうにキュウリを食べている。だが、不思議な食べ方だな。嘴とか動いていないのに、口に咥えたキュウリが少しずつ飲み込まれて行く。
何だろう。電動鉛筆削りに鉛筆をずっと入れ続ける光景を思い出した。
「カッパパ~」
キュウリを食べて満足したのだろう。コガッパがお腹をポンポンと叩いて満足げな表情をしている。
「カパ」
「くれるのか?」
「カパー」
コガッパが俺達に差し出したのは黒い鉄の塊だった。五百円玉より少し大きいくらいのサイズである。
「潰れたベーゴマか」
やはり懐かしのレトロオモチャシリーズであった。オバケに貰ったひび割れたビー玉。テフテフがくれた破れたメンコ。モフフの欠けたおはじきに、今回の潰れたベーゴマ。
使い道が分からないのも同じだ。
消えるコガッパを見送りつつベーゴマを眺めていたら、アナウンスが聞こえてきた。
《東西南北の地下エリアを全て攻略したプレイヤーが現れました。最初に4エリアを攻略したプレイヤーに、称号『マスコットの支援者』が授与されます》
《転移陣による転移可能場所が増えました》
『東西南北の地下エリアを全て攻略しました。死神ハーデスさんに『破けたお手玉』が授与されます』
「また謎アイテム?」
よく分からない報酬だな。しかもお手玉をゲットしたのはイズ達もだった。4ヶ所を攻略できたのが俺だけじゃなかったからかな。
アナウンスのことを彼女達と語り合う。
「使い方は分からないよねこれ」
「うーん。考えても仕方がない。広場の転移陣に行ってみないか? それで何か分かるかもしれないし」
「そうですね」
「勿論行きましょう」
「うん!」
アイテムを使ってダンジョンを脱出すると、広場に急ぐ。
「うわー、人が・・・・・」
「ムー」
ワールドアナウンスがあってから、少し時間が経っているからだろう。多くのプレイヤーが広場に集まっていた。しかし、転移陣は広場にいれば使用可能だ。
俺たちは広場の隅でウィンドウを確認してみることにした。
「えーっと・・・・・なんだこれ? 朽ちた遠野の屋敷?」
・・・・・・。・・・・・。・・・・・。
・・・・・・。・・・・・。
・・・・・・。
転移先を確認すると、確かに見慣れない場所が増えていた。調べてみると名前は常闇の町。星の煌めく夜空に赤と青の二つの満月。今までで最も大きなこの町は全ての建物が木製であり和の様相を呈していた。町中を水路が走り、灯りは静かに道を照らしている。町の中心に見える一際高い建物には一体何があるのだろうと心は躍る。
「なあ、皆はどうだ? 俺は朽ちた遠野の屋敷っていう場所なんだけど」
「私達も同じね」
「遠野って何だっけ、名前だけは聞くけど」
今までの関連からして恐らくは・・・・・。
「新しい町のエリアは妖怪が跋扈しているところだと思うな。NPCにカッパとオバケが配置されていたから」
「蝶々と毛玉も妖怪の類なの?」
それを言われると何とも言えなくなるんだよな・・・・・。
「どうする? 町なら戦闘はないだろうしチーム解散して探索でもする?」
「んー、せっかくだしこのまま探索しない?」
「そうだね。皆で楽しもう?」
話し合いはすぐに終わり解散せず町中を探索することになった。俺たちはその転移先を選んで、転移することにした。料金はかからない。無料で転移することが出来るようだ。
そして転移した先は―――。
「朽ちた屋敷。確かにそんな感じだな」
そこにあったのは廃墟と化した日本家屋だった。俺たちが転移してきたのは、正門と屋敷の間の庭である。正門は閉じており、そこから高く長い壁が屋敷を囲っている。
この敷地から出れないって事かな?
「ミーニィ、壁を越えられるか?」
「キュイ!」
ミーニィが俺の言葉にうなずくと、勢いよく飛び出した。まるでスーパーマンみたいなポーズで、壁の上を目指す。
「キュイ?」
そして、いきなりボヨーンと跳ね返されてしまった。どうも見えない壁によって先に進めないようになっているらしい。その後はいろいろな場所に突撃して跳ね返され続けたミーニィは、結局空に張り巡らされた見えない壁を越えることはできず、肩を落として戻ってきたのだった。
「お疲れ」
「キュイ・・・・・」
「やっぱ、敷地の外には出られそうもないか」
「キュイ」
ションボリするミーニィを慰めつつ、俺は周囲を観察する。縁日のような物が開かれていた。和風の平民風の格好をしたNPCたちが、楽し気に笑っている。
その中にプレイヤーがまばらにいるだろう。なにやら露店のような物に並んでいる。
「プレイヤーが意外と少ないな」
俺たちがいた東の町の広場だけでも1000人くらいはいたと思うが。
「たぶん、サーバー分けがされているんじゃない? イベントの時もそうだったし」
「なるほどね」
俺たちはそんな話をしながら、とりあえず日本家屋に向かってみる事にした。敷地の広さに対して、屋敷自体は普通の日本家屋である。木造の平屋だ。
江戸時代と言う程古くはなさそうだが、昭和初期とかそんな感じ? 非常にレトロな雰囲気がある。
ただ、窓ガラスなどは割れ、壁などは一部が崩れ落ち、中を覗くと埃や瓦礫で足の踏み場もない様子だ。
完全なる廃墟。妖怪探査などを発動してみるが、スキルには特に何も引っかからないな。
「えーっと、中は・・・・・あれ?」
「どうしたの? 急に立ち止まって」
「立ち止まったというか、これ以上先に進めん」
「え?」
「あ、本当だ」
「見えない壁があるようです」
リヴェリアが言う通り、見えない壁のような物に阻まれて、一定以上屋敷に近づけないようになっていた。敷地の外にも出れず、屋敷にも近付けないと・・・・・。この転移先で最も目立つ場所なんだがな。逆に、中に入るには何かのイベントやアイテムが必要っぽかった。となると、鍵になるのは縁日だろう。そう思ったからこそ、他のプレイヤーたちも露店に並んでいるに違いない。
「マスター、この敷地内を一周してみませんか? 何か発見があるかもしれません」
「えー? 先に祭りデいいんじゃない?」
「私も気になりますね」
意見が割れたな。んじゃ・・・・・。
「敷地内を探すのは当然だとして今は祭りに参加しよう。隠されたギミックがあるかもしれない」
屋敷の周りをグルッと一周した俺達だったが、いくつかの謎を見つけ出していた。
どうやら、露店の店主達がプレイヤーによって見え方が違うようなのだ。屋台は普通の人間なのだが、ゴザのような物を敷いて商売をしているNPCが、どうやら怪しかった。
「やっぱり、ゲットしたレトロオモチャによって変化するみたいね」
俺達には露店の店主がどう見てもコガッパ、オバケ、テフテフ、モフフに見えるのだが、NPCのリヴェリアとサイナには普通の人間NPCにしか見えない場合があるのだ。
店主がダンジョンNPCの露店は、全てがちょっと変わっていた。射的や食べ物系の屋台などではなく、店主とレトロゲームで対戦できるという露店だったのだ。
メンコ、ベーゴマ、おはじき弾き、ビー玉落としの4種類だった。そう、これは4つの地下ダンジョンで入手したアイテムを使った遊びである。お手玉だけは見当たらないが・・・・・。
やっぱこれを遊んでみろってことなんだろうな。ゲーム的に考えるなら、ここでNPCに勝利すると、イベントが起きるのだろうか?
「とりあえず、ここで遊んでみるか皆」
一番近くにあったテフテフの露店の前に立ってみる。すると、ウィンドウに料金100Gと表示される。
「安いのか高いのかわからんけど」
支払いを済ませると、テフテフが何やらカードを手渡してくれた。それは、様々なポーズをしたテフテフの描かれたメンコである。
「えーっと、ルールは・・・・・」
意外と簡単だな。お互いにメンコは5枚。そして、最初に地面には10枚置かれる。
メンコを投げて、地面のメンコを裏返せたら、そのメンコに描かれた得点が加算される。成功しても失敗しても、1投で交代。ただし、失敗した場合は自分の投げたメンコは地面に置かれたままとなり、1点分のメンコ扱いになる。
交互にメンコを投げていって、5投した後の得点で勝敗が決まるらしい。
多分、正式なものじゃなくて、NWO風のルールなのだろう。
「メンコか・・・・。なあ、皆はやったことあるか?」
「ないです」
「私も」
「私も」
まあ、仕方ないよな。今の世代でやったことがある人間の方が珍しいだろう。それこそ、数十年前の祖父母世代の遊びだ。
「まあ、とりあえずやるだけやってみようか。何度もチャレンジしていればその内慣れるだろうし」
と言うことで、テフテフとメンコバトルである。テフテフが適当に並べたと思われるメンコ。その中で、特に大きなメンコには5点。中くらいのサイズに3点。一番小さいメンコには1点と書かれている。この横にメンコを叩きつけて、風圧でひっくり返すってことだよな。
「これ、【STR】に関係する?」
「すると思うわよ」
「なら、いけそうだ。・・・・・はっ!!」
思いっきり他のメンコを吹き飛ばさんと地面にメンコを叩きつけたら、本当に10枚のメンコが吹き飛んだ。なんか音もスパンッ! と鳴ったし【STA120】の力は伊達ではなかった。でも・・・・・。
「捲るどころか、吹き飛ばしちゃダメだよ」
「テ、テフ・・・・・」
力ありすぎて勝てない欠点が浮上した。くそ、メインをテイマーにすればいいだろ。『古代の鍛冶師の指輪』も外しさえすれば他のプレイヤーと同じぐらいになる。
「再挑戦だ!」
「テフ!」
改めて挑戦を意気込む俺と受けて立ってくれるテフテフのメンコ勝負は、中々に拮抗した。勝利を目指した俺は、9回戦目にしてようやく勝ちを拾っていた。1点差でも、勝ちは勝ちだ。賞品が下級ポーションだろうが気にしない。
「勝利!」
「テフテフ~」
「お、なんだ?」
「テフ~」
なぜかテフテフに握手を求められた。あれかな? 昨日の敵は今日の友的な? まあ、いい勝負だったな。
「テフ!」
「ん? これくれるのか?」
「テフー」
すると、テフテフが何か小さいものを手渡してきた。テフテフの形をした人形だ。懐かしの、消しゴム風人形である。ホームオブジェクトのインテリア扱いになっていた。
「なにそれ?」
「変なのもらったね。またこういうのを集めたら何かあったりするんじゃない?」
「それが本当なら、他のゲームにも挑戦して勝たないとね」
なお、三人も挑戦して人形を得た。
5分後。
「よっしゃ!」
「バケ~」
テフテフとのメンコ対決に勝利した俺は、次のゲームに挑戦していた。2つ目のレトロゲームは、オバケとのビー玉落としだ。これは地面にダーツのような的が描かれており、そこに1メートル程の高さからビー玉を落として最終的に得点の高かった方が勝ちという遊びである。自分のビー玉で相手のビー玉を弾いたりもできるので、最後まで気が抜けない遊びだった。
これは全部のモンスができるので、メンコよりもいいんじゃないか? 購入した練習用ビー玉で遊んでいるんだが、メンコの時は見学だったミーニィも参加できている。
「キュイ!」
「クマ?」
「キュイキュイ!」
「クックマ」
クママに細かく指示を出してミリ単位で位置を修正して、ビー玉を落としている。これが結構上手いんだ。そのちっちゃな手でビー玉に回転をかけながら落としているらしい。体が小さいからこそのテクニックだよね。
ただ、この遊びは運にかなり左右されるようで、俺は4戦目であっさりとオバケに勝利できていた。オバケの消しゴム風人形も無事ゲットだ。三人もな。
テフテフ、オバケの露店を攻略した俺たちは、3つ目の露店へと向かう。
「次はおはじき弾きか」
「モッフ~」
モフフと遊ぶのは、おはじき弾き。
あれだ、冬のオリンピックの定番、カーリングに似ている。所定の場所から的めがけて交互におはじきを指で弾き、止まった場所の得点で競い合う。的に届かなければ、そのおはじきは取り除かれてしまう。相手のおはじきをどうやって弾くかがキモであろう。
これがなかなか難しかった。意外と力の込め方が繊細で、下手すると明後日の方に飛んで行ってしまうのだ。しかし、8回目にしてモフフが大失敗をしでかし、そのおかげで何とか勝利することが出来たのだった。
「モフフ!」
「はいはい、握手ね~。お、人形もくれるか。ありがとうな」
「モフ!」
やっぱり正々堂々の勝負で勝利した方が、NPCの反応が良いな。当然ながらイズ達も人形をGETした。
「最後はコガッパのベーゴマ対決か」
「これってどうやるの?」
「このベーゴマの底にこうして縄を巻くんだ。男巻きと女巻きって二つの巻き方あるんだが・・・・・」
数分後。
「よっしゃああ!」
「カパー!」
何度もイズ達と練習、遊んでればコツを掴んだ二人もコガッパと勝負して勝ち、フレデリカも何度か負けた末にやっと勝ったところで俺も挑戦。結果、俺のベーゴマはコガッパのコマを弾き飛ばし、勝利を収めていた。
「ふー、これで全部に勝利だぜ!」
賞品はショボいが、満足だ。人形も4つコンプだし!
「さて、これで全部を回ったんだけど・・・・・」
「何か変化は?」
「うーん」
とくにアナウンスがあったりもしないし、目に見えて変化もない。露店で勝つというのはあまり意味がなかったかな? そう思っていたんだが、何やらうちの子たちが騒がしい。
「モグモ!」
「キュイー!」
「クマ!」
さっきまでは練習用に購入したレトロオモチャで遊んでいたので、それがヒートアップして来たのかと思ったんだが・・・・・。違っていた。全員が同じ方向を指差して、俺に何かを訴えている。
「キュイ!」
「ムーー!」
「ちょ、分かったから引っ張るなって! フェルは腕を噛まない!!」
いったい向こうに何があるんだよ?
とりあえずモンス達が指し示す方に歩き出すと、ようやく俺は異変に気付いた。朽ちた屋敷の前に、赤い和服を着たおかっぱの少女が立っていたのだ。小学校低学年くらい? オルトと同じくらいの背格好である。
少女はにっこりと微笑んでおり、不思議と恐怖は感じない。むしろ優し気な印象があった。
「座敷童?」
そう、その少女はどこからどう見ても、座敷童にしか見えなかった。
「ああ? なるほど、遠野だからね」
セレーネが納得したようにうなずいている。遠野は座敷童伝説が残る場所であるそうだ。なるほど、この場所の名前は朽ちた遠野の屋敷だし、座敷童系のイベントが起きてもおかしくないか。
「あれが座敷童?」
「へぇ、可愛い座敷童だね?」
「あっ!」
近づこうとすると、座敷童が屋敷の敷地の中に入って行ってしまった。そして、少し歩いた場所で振り向き、こちらを手招きしている。
「来いってことか?」
「行っちゃうよ?」
座敷童が再び歩き出した。やばい、このままだと見失うかも。俺たちはその後を追って走り出す。
「通り抜けられた!」
「でもって、4つの人形を揃えると座敷童と会えるってことが判明したな」
「ハーデスの思った通りだね」
「ああ、そんでこれからイベントが待ち受けてるはずだ。時間が掛かろうと達成しよう」
「わかったわ」
座敷童と出会うことが、この屋敷に入るために必要なイベントだったのだろう。まあ、どうして出現したのかは分からんが。俺たちは朽ちて骨組みだけになった扉を開き、玄関に足を踏み入れる。すると、イズ達の姿がいつの間にか消えていた。
「あれ? みんな?」
「ムム!」
「いや、お前らじゃなくて・・・・・」
パーティではなく、プレイヤー単位で分けられてしまったようだ。
「どうしようか・・・・・引き返す?」
この先戦闘がなければ問題はないだろう。それに、もし引き返してイベントが終了してしまったら最悪だ。
「うーん、とりあえず先に進むか」
少し先にある扉の前に、座敷童が立っているしな。