「えーっと、玄関で靴は脱いだ方がいいのか?」
「ムム?」
「クマ?」
あー、お前らそんな土足で・・・・・。いや、そもそも、モンス達は靴なんか脱げんし、仕方ないか。よく見たら座敷童も下駄を履いたままだ。
「えーっと、こんにちは?」
「あい」
俺が座敷童に声をかけると、少女が可愛らしい返事をしつつ、ペコリをお辞儀をしてくれる。そしてそれに合わせるように、アナウンスが響き渡った。
『座敷童がオモチャを欲しがっているようです』
座敷童が「ちょうだい」とでも言うように、両手を俺に向かって差し出している。
は? オモチャ? 急に言われても・・・・・。いや、待てよ。オモチャ持ってるじゃないか。
「あれって、座敷童にあげるためのアイテムだったってことか? でも、壊れてるんだけど大丈夫かな?」
そう思いつつ、俺はインベントリを開いたんだが・・・・・。
「アイテムが変化してるな」
ひび割れたビー玉は綺麗なビー玉に。潰れたベーゴマは硬いベーゴマに。破れたメンコが格好いいメンコに。欠けたおはじきは可愛いおはじきというアイテムに変化していた。さらに破けたお手玉も、美しいお手玉という名前に変わっている。
「知らん間にイベントが進行していたって事ね。まあ、とりあえずオモチャを座敷童に上げちゃおうかな」
やはりここは特別感のあるお手玉だろう。どう考えても、女の子にはお手玉だしな。俺はお手玉を取り出して、両手を差し出している座敷童に渡してやった。
すると座敷童がお手玉を懐に仕舞うと、ニコリと微笑む。だが、その両手は差し出されたままだった。おや、まだ欲しがっとるのかな?
「もっと欲しいのか?」
「あい」
コクコクと頷く座敷童。
「・・・・・じゃあ、これも」
なんてやり取りを繰り返すこと4回。結局全てのおもちゃをあげてしまったのであった。
「あい!」
「えーっと、くれるのか?」
「あい!」
そして、座敷童が俺に差し出したのは、古びた鍵である。鑑定してみると「マヨヒガの鍵」となっていた。
マヨヒガというのは、欲がないと宝がもらえて、欲が深いと罰が当たる、雀のお宿とか花さか爺さん的な内容の伝承であるらしい。
「この鍵・・・・。どう考えても、この扉の鍵だよな。えっと・・・・・。ここを開けろってことか?」
「あい!」
俺は観音開きの木製扉の鍵穴に、手に入れたばかりのマヨヒガの鍵を差し込んでみた。すると、案の定扉のロックが解除される。
その先には、長い廊下が伸びている。その左右には襖が並び、不気味さと神秘さを感じさせた。
「なんか、雰囲気あるな」
和風ファンタジーRPGにこんなダンジョンがあった気がするな。
「あーい!」
「あっ」
俺が通路を観察していたら、座敷童がタタタッと通路に駆け出していった。そのまま、途中にあった曲道を曲がって行ってしまった。
いや、頭だけ出してこっちを見ているな。そして、アナウンスが響き渡った。
『座敷童が遊びたがっているようです』
「あい!」
なるほど、オモチャだけじゃダメってことか。
「よし、みんな行くぞ。遊び飽きてもらうまで付き合ってやろう」
「クックマー!」
「―――!」
マヨヒガは、欲のない人間に富をもたらし、欲深い人間には罰を与えると言っていた。つまり、何か悪いことが起こる可能性も十分あるのだ。何をもって欲深いと言われるか分からないが、俺は自分を無欲だとは到底思えんしね。
俺たちが通路に踏み込むと同時に、再び駆けて行ってしまった座敷童を追って通路を曲がる。その先は、何とも言えない場所であった。基本は日本家屋。しかし、その入り組み方は半端ない。エッシャーのだまし絵? アスレチック? そんな感じだ。しかもメチャクチャ広いし。上り下りの階段に、梯子が無数に存在し、吹き抜けになった場所に通路がかかっているのも見える。
「おーい、座敷童ー?」
「・・・・・」
ダメだ反応がない。まずはここから探し出さないといけないらしかった。
「よし、みんな! 頼んだぞ!」
『面白そうにゃ。おいらが一番に見つけてやるにゃ』
さて、俺も探そう。複雑に入り組んだ立体迷路のような場所を探索していく。しかし見つからない。そうやって座敷童を探している内に理解した。
「つまり、もう遊びは始まっているって事ね」
隠れんぼなのか、鬼ごっこなのか。まあ、隠れんぼだろうな。
そうやって15分程座敷童を探している内に、ふと気づいた。
「そういえば、こっちに曲がってきたけど、通路はまっすぐ続いてたよな?」
これが隠れんぼなら座敷童は動かないが、鬼ごっこなら逃げている最中だろう。可能性は低いと思うが、あっちの通路も一応確認しておこうかな。
「ドリモ、クママ! 俺と一緒に来い!」
とりあえず、探索にはあまり役に立っていそうのないドリモとクママを引き連れて、俺は来た道を引き返した。
相変わらず襖が左右に並んだ、ちょっと不思議な雰囲気の通路が続いているな。
「襖は――開かないか。そっちはどうだ?」
「モグ」
「壁代わりってことか? まあ、一応全部確かめながら進もう」
「モグ!」
一見壁っぽく見えつつ、実は1ヶ所だけ開くとかあり得そうだ。なんて思ってたんだけどね。全く無駄でした。押しても引いても、全ての襖はビクともしなかったのだ。
そのまま突き当りの扉の前にたどり着いてしまう。
「さて、この向こうは何だろうな。ドリモ、クママ、前衛頼むぞ」
「クマ!」
「モグモ!」
そして、ゆっくりと慎重に扉を開けたのだが、その先には何もいなかった。
「えーっと、普通の小部屋っぽいな」
畳が敷かれた、4畳半の小さい部屋だったのだ。窓などは一切なく、部屋の四隅に置かれた行灯が淡い光を放ち、ゆらゆらと部屋を照らしていた。
その部屋の中央に、机が一つ置いてある。
「なんだ? アイテム?」
机に近づいてみると、ウィンドウが表示される。
「この部屋にあるアイテムを1つ手にお取り下さい?」
へえ。なるほど。マヨヒガは富を授けてくれるんだったな。
とりあえず机の上のアイテムを鑑定してみる。まず一番右の緑の布だ。名前は『河童の力帯』となっていた。
「結構高性能だな」
アクセサリー扱いで、【STA+10】と水魔法の威力上昇効果があるらしい。防御力はないが、攻撃力は飛躍的に上昇するだろう。
「で、こっちが『幽鬼の包帯』?」
これもアクセサリーみたいだ。【INT+10】に、隠密効果が上昇か。その隣にあるのが『サトリの毛飾り』。見た目は茶色のファーキーホルダーにしか見えないが、【INT+10】、詠唱速度上昇効果があった。
最後が『玉繭の糸玉』か。絹糸を丸めて作った玉に紐を付けた、キーホルダー風のアクセサリーだな。HP+10に加えて、HPの回復速度が上昇する効果があった。
「これは迷うな」
河童の力帯は微妙だが、他のアイテムは全部欲しい。俺が思案している間、クママ達は思い思いに部屋を見て回っている。壁には絵が描かれた掛け軸なんかもかかっているし、面白いのだろう。
「そう言えば、さっきのメッセージ・・・・・。やっぱこの部屋にあるアイテムを1つ差し上げますってなってるな」
つまり、壁にかかってる絵などもありなのか? まあ、今のところ金には困ってないから最有力はこっちのアクセサリー類だけど、絵はどんな感じなんだ? それとも、持ち出せるのはアクセサリーだけ?
そう思いながら絵を鑑定してみたら、やはりこれも持ち出せるアイテムであるようだった。日本画的な、おどろおどろしい河童の絵や、幽霊の絵などがある。
「単なる絵、じゃないのか?」
河童の絵の名前は『河童の封じられし絵』となっている。しかもアイテムの説明には気になる一文が書かれていた。
「この絵をある場所に持って行くと・・・・・?」
その先は不明だが、単なる絵ではないってことだろう。名前から考えても、特定の場所に持って行けば河童が現れるに違いない。陰陽師じゃなきゃ意味がなさそうだよな。
掛け軸には河童、幽鬼、サトリ、玉繭の4種類があった。
「なかなかどうして、リアル的に不気味な絵だなー・・・・・。凝った絵だよこの幽鬼の絵。リアルだったら絶対にたたりとか心配になるレベルだろ」
そうやってアイテムを物色していると、ふと気になった。
「・・・・・でも、これって本当に頂いても構わないのか?」
マヨヒガの単語が出てくるほどだ。欲深い者には罰を与えるっていう・・・・。なんか、落とし穴がありそうじゃないか? そう考えたら、ちょっと疑心暗鬼になってきた。
「・・・・・とりあえず座敷童を探そう」
どうせどれを貰うかまだ決まってないんだ、座敷童と遊びながら考えればいい。
「この部屋にはいそうもないし、戻るぞ」
「クマ!」
「モグ!」
クママたちを連れて迷路に戻る。
「やっぱここの迷路のどこかにいるんだろうな」
しかし、今だに座敷童は発見できていない。
「キキュー?」
「ヤー?」
リックとファウは狭い場所を重点的に探しているらしい。あんな場所に隠れるかっていうような場所に頭を突っ込んで、ほこりまみれになりながら座敷童を探している。
「ムム?」
オルトは隠し通路などがないか、コンコンと色々な場所を叩いているが、成果がないらしい。耳を付けて音の反響を聞いては、首を傾げている。
「クックマ~?」
「モグモ~?」
クママとドリモは普通だ。歩きながら、物陰などを覗き込んでいる。ただ、その探し方で見つかるかねー?
「俺はどうしようかな」
探索はうちの子たちに任せて、俺はその場で推理してみた。これだけ見つからないということは、単に見つかり辛い場所というだけではないだろう。きっと意表を突くような、思いつかないような場所に違いない。
「うーん、つまり普通は探さない場所。こういう時はあれだ、灯台下暗し的な?」
しかし、俺の足下には隠れられる場所はない。いや、待てよ。
「足元じゃなくて、横はどうだ?」
俺は、開けっ放しになっている扉に手をかけた。座敷童が開けたであろうこの扉。考えてみたら調べていなかったのだ。
「ここだー!」
「あい?」
ええ? まじでいた。扉の影にある小さいスペースで正座していた座敷童とバッチリ目が合った。うん、可愛い。
「見ーつけた」
「あいー!」
見付けられた座敷童は、なぜか嬉しそうにピョコンと立ち上がる。いやー、本当にここにいるとは思わなかった。
「キュイー!」
ミーニィは俺の肩の上に乗り、両側で拍手している。褒めてくれているのかね? クママたちは悔しげだな。俺に先を越されたからだろう。
すると、アナウンスが聞こえてきた。
『アイテムの持ち出し許可を得ました。このマヨヒガからアイテムを1つだけ持ち出すことができます』
あれ? もしかしてまだアイテムを持ち出しちゃいけなかったのか? 危ねー。罠じゃねーか。もし座敷童を発見せずにここから出ていたらどうなってたんだろうな? いやー、さすがマヨヒガ。
まあ、これでイベントも終了――。
「あい!」
「うん? なんだ?」
『座敷童がまだ遊びたそうにしています。どうしますか?』
「え?」
なんと、イベントは終了していなかったらしい。俺の前にウィンドウが出現する。そこには、『アイテムを受け取って屋敷を退出する』、『アイテムを受け取らずに屋敷を退出する』、『座敷童と遊ぶ』という3択が書かれていた。
どうやら帰ることもできるらしいが……。
「あいー・・・・・」
懇願するようにこちらを見ている座敷童。あの目を見て、断ることなどできようか? 見た目は人間の少女みたいだし、これを断るにはなかなかの精神力が必要だろう。
「まあ、もう少し時間あるしな」
『では、隠れんぼを再開します』
俺は座敷童と遊ぶを選択するのだった。
イズside
『座敷童がまだ遊びたそうにしています。どうしますか?』
「あら、まだなんだ」
やっと見つけれて、これで終わりかと思ったらイベントはまだ終了していなかったらしい。私の前にウィンドウが出現する。そこには、『アイテムを受け取って屋敷を退出する』、『アイテムを受け取らずに屋敷を退出する』、『座敷童と遊ぶ』という3択が書かれていた。
アイテムを受け取って退出して帰ることもできるみたいだけれど・・・・・。
「あいー・・・・・」
懇願するように私を見ている座敷童。あの目を見て、断るなんて・・・・・できないわよね? 見た目は人間の女の子みたいだし、これを断るにはなかなかの精神力が必要だわ。
「じゃあ、もう一回よ?」
「あい!」
うーん、可愛いわ。イベント限定でしか触れ合えないのはとても残念ね。
セレーネside
『座敷童がまだ遊びたそうにしています。どうしますか?』
「え? もう一回?」
隠れんぼは、イベントは終了していなかったらしい。私の前にウィンドウが出てきた。そこには、『アイテムを受け取って屋敷を退出する』、『アイテムを受け取らずに屋敷を退出する』、『座敷童と遊ぶ』という3択が書かれていた。
このまま帰ることできるみたい、でも・・・・・。
「あいー・・・・・」
懇願するようにこっちを見ている座敷童。あの目を見て、断るなんて凄く罪悪感が・・・・・。 見た目は人間の女の子だし、これを断るにはなかなかの精神力が必要だよ。
「わかった、また遊ぼっか?」
「あい!」
凄く喜んでいる座敷童。また隠れんぼして遊ぶのかな?
フレデリカside
『座敷童がまだ遊びたそうにしています。どうしますか?』
「え? まだなの?」
やっと見つけたと思ったのにイベントは終了じゃなかった。私の前にウィンドウが出現する。そこには、『アイテムを受け取って屋敷を退出する』、『アイテムを受け取らずに屋敷を退出する』、『座敷童と遊ぶ』という3択が書かれていた。
このまま帰ることもできるみたいだから。さっさと帰ろうと退出の青いパネルへ指を動かしたら。
「あいー・・・・・」
懇願するようにこっちを見ている座敷童。あの目を見て、断るなんて・・・・・見た目は人間の女の子みたいだから、同性でもこれを断るにはなかなかの精神力が必要だよ。
「うー、しょうがないなぁ。あと一回だけだよ?」
「あい!」
ハーデスが時間が掛かってもいい的なことを言ってたからいいよね? もしかしてこうなることを予想してたのかな。
・・・・・・。・・・・・。・・・・・。
・・・・・・。・・・・・。
・・・・・・。
座敷童と遊ぶを選択すると、俺達のパーティが瞬間移動で立体迷宮の入り口前へと戻される。
さっき座敷童が隠れていた扉が閉まっており、そこに「10、9、8――」というデジタルのカウントダウンが表示されていた。
その数字が0になった瞬間、扉の向こうから座敷童の「あーいーい!」という声が響く。
もういーよー的な事なんだろうな。扉が開くと、そこに座敷童の姿はない。再び隠れんぼが始まったのだ。
ただ、先程の隠れんぼが生きたのだろうな。10分ほどで、箪笥の影に隠れていた座敷童をフレイヤが見つけだしていた。
『今度はおいらが見つけたにゃー!!』
「あーいー」
見つけたフレイヤも、見付けられた座敷童も楽しそうにはしゃいでいる。うんうん、楽しそうでよかった。さて、これで――。
『座敷童がまだ遊びたがっている様です。どうしますか?』
「おお? まじか」
なんと再びそんな文字が表示されたのだ。先程と全く同じ潤んだ眼で、座敷童が俺を見上げる。
くそっ! 運営め! 俺をこの場所で永久に拘束するつもりか! これ以上、お前らの思惑には踊らされないからな!
『では、隠れんぼを再開します』
「あい!」
そうして、再び扉の前に戻され、カウントダウンが始まった。うん、断れるわけないよね。
―――1時間後。
4度目の隠れんぼを終えた時だった。
『座敷童が満足したようです』
「あーいー」
「おお、そうか。よかったよかった」
「あい!」
そんなアナウンスが聞こえ、直後に座敷童の姿が消えていく。ここは他のNPCと同じだな。最後まで笑顔で、楽し気に手を振っていた。これでイベントも終了だろう。
『アイテムを1つ取り、屋敷から退出してください』
「さて、ようやくアイテムをゲットできるな」
まあ、隠れんぼに夢中になり過ぎて、どれを選ぶか全然考えてなかったけどね! どのアクセサリーをゲットするか頭を悩ませつつ、アイテムの置かれていた小部屋に戻る。
すると、俺はある変化を発見していた。
「絵が増えてるな」
壁にかかった妖怪の日本画の中に、座敷童の絵が増えていたのだ。アクセサリーに変化はないようだった。
「他の4つはアクセサリーにも名前があるけど、座敷童はこれだけか?」
河童や幽鬼の絵はちょっと不気味だし、凄く欲しいって感じでもない。むしろ怖い。ただ、座敷童の絵は非常に愛らしい雰囲気があり、目を引かれた。
それに、さっきまでなかったわけだし、多分イベントをこなしたことによって出現したレアアイテムなのではなかろうか? 隠れんぼに付き合った報酬なんだろう。
「んー・・・・・うん。よし、決めた。これにしようか」
これがなければステータス上昇アクセサリーを、器用さと生産力が上昇するアクセサリーなら迷わずゲットしたんだがな。俺は座敷童の封じられた絵を取り外して、インベントリに仕舞いこんだ。
「えーっと、これで終了か?」
特にイベントが起きたり、終了を告げるアナウンスもない。
「・・・・・あれ?」
普通にアクセサリーを手に取れるんだけど。これって、もしかしてアクセサリーもゲットできるんじゃないか?
「いや、でもな・・・・・。アイテムを1つって言ってたもんな。ああ、マヨヒガの罠がまだ存在してるのか」
すると、メールが届いた。フレデリカ達からだ。内容は二つ以上取ってもいいのか相談か。
「欲張りは身を滅ぼすから絶対に一つまでにしよう。マヨヒガはそういう奴だから」
とメールを返した。俺もここは欲をかかずに帰ることにしよう。そうだ、欲深は罰せられるのだ。そのまま来た道を引き返す。すると、外に出た瞬間に再びウィンドウが起動した。そこには、「マヨヒガから持ち出したアイテム1つを差し上げます」とだけ書かれている。やはり欲をかかずに正解だったか。
「お帰りなさいませ」
どうやら俺が最後だったらしい。イズたちと情報を交換したんだが、アクセサリー4種は全員が見つけたそうだ。壁にかかっていた絵に関しても、それぞれ同じで。どうやら座敷童にあげたオモチャによって変化したらしい。
また、座敷童にあげるオモチャなんだが、これはレトロゲーム露店で人形をゲットした妖怪に対応して、修復されるようだ。コガッパのベーゴマ露店に自力勝利して人形を手に入れた冬将軍だけ、ベーゴマが修復されて座敷童にあげることができたそうだ。
「すまん。だとするとずいぶん待たせたな」
「ううん、そうでもないよ? 私達もどうやら4回も遊んだみたいだから」
「帰ろうとするとあの表情をされちゃうとね・・・・・」
「それで、ハーデスは何を手に入れたの?」
「興味あるかな」
「ああ、俺はこれだよ」
彼女たちは普通にアクセサリーをゲットして戻ってきていた。人が持っているのを見ると、急に羨ましくなるんだが・・・・・。いやいや、座敷童の絵は彼女達も貰えたのに選ばなかったんだ、俺はこれをゲットして良かったんだ。そう思っておかなきゃやってられん!
「うわぁ、絵なんだ」
「さ、さすがハーデス。チャレンジャーだね」
「なるほど、ここで迷わず絵にいけるから、白銀さんって呼ばれる所以なんだ」
妙に感心されてしまった。いや、結構迷ったよ? それにレアアイテムなんだし、皆だってこれを選ぶと思うけどな。
「まあ、使い道が分かるまではしばらくは持っておこう・・・・・」
ピッポーン。
「お? 何の通知だ?」
ウィンドウを確認してみると、運営からの通知メールが届いたところであった。1通のタイトルが目に入った。
「ホームエリアの開設と、マスコットシステムの導入について?」
「ハーデスのところも?」
「私達も同じ内容みたいだね」
「題名からして個人のホームが手に入れられる報せじゃない?」
―――それは重畳なことだな。リヴェリアを居座らせるホームが買えるようになったとは。
そして内容は全プレイヤーへの普通の告知メールだった。
「えーっと、なになに?」
ゲーム内で本日の夜に予定されている大規模アップデートの告知や、それに関する様々なお知らせのメールだった。
公式サイトで確認できる内容だが、その辺に全く興味のない人への周知徹底用なのだろう。一応確認してみると、いくつか面白いお知らせが混じっていた。
「新規プレイヤー用のボーナスアイテム詰め合わせか」
「思ったよりも早いわね」
リヴァイアサンレイドの翌日。つまり日曜だな。初ログインしたプレイヤーに与えられる、使い捨てアイテムセットがある。最初に了承したゲーム規約にも、第2陣などには第1陣との差を埋めるためのボーナスが与えられると明記されていたので文句はない。最近のインターネットゲームでは当たり前のことだしな。
そのボーナスセットを、新規じゃないプレイヤーにも課金アイテム扱いで販売するということだった。これも事前に告知があったので知っているが、メールでは正確な内容が記載されている。そこに面白そうなアイテムが入っていたのだ。
「経験値アップチケットや、レアアイテムドロップ確定チケットは予想通りだったけど・・・・・。そのエリアのユニークモンスターが出現するお香って、便利だな」
これは始まりの町周辺でしか使えなかったが、こっちはどこでも使えるらしい。その代わり、入手からゲーム内で10日間という使用期限があるようだった。
「あと、これもちょっと欲しいぞ」
それはスキルチケットというアイテムだった。スキルスクロールは、その中に封じられたスキルをゲットできるというアイテムだったが、これはリストの中にあるスキルを1つ自分で選択してゲットできるというアイテムだ。
値段によって選べるスキルは違うみたいなんだが、ポイントを温存できるのはありがたい。
「1000円、3000円、5000円、12000円のパックがあるのか。しかも全部は買えず、どれか1つだけと」
当然12000円のやつだな。今から事前申し込みができるみたいだし、買っておこう。
「それと、ホームエリアとマスコットシステムの実装?」
ホームエリアは、その名の通りプレイヤーホームのみが集まったエリアであるそうだ。住宅街ってことなのだろう。
始まりの町の転移陣、第2~第5エリアの転移陣からは無料で転移できるが、他の場所から転移するのはお金が必要と。イベント村と似た扱いだな。これに合わせて、イベント村も第5エリアまでは無料で行き来ができるようになるそうだ。
「ホーム、欲しいけど今の畑が便利なんだよな。でも、色々とインテリアを弄って遊びたいのは確かだ」
どうしよう。一番安いホームを買って遊ぼうか? 壁紙の変更とかもできるみたいだし、フィギュアなんかも飾ってみたい。
あと、マスコットシステムってのは何だ?
「・・・・・うちの鳳凰みたいなものか?」
正式なホームに可愛いマスコットキャラを常駐させ、愛でることができるシステムである。フィールドを連れ歩くことはできず、自ホームか所属クランのホーム。あとはホームエリアのみ連れ出すことができる。
ホームを購入すると、無料で何種類からか選べるらしい。ただ、マスコットには特殊能力などはなく、ただただ可愛がるだけの存在であるという。
しかし特殊な能力を持ったマスコットは存在しており、そのマスコットによって恩恵があるそうだ。
「ホームにつきマスコットは1体。ただし最大6体までは増やせるか」
ゲーム内通貨で2体。リアルでの課金で3体増やせると書いてある。最初の1体に+2+3で最大6体ってことだった。初期マスコットは犬、猫、兎、鼠、豚、熊、蛙、梟、カブトムシ、鯉の10種類だ。そのままの姿ではなく、バスケットボールサイズのデフォルメ姿である。それがフワフワ浮いている画像が添付されていた。
ゲーム内で様々な行動を取ったり、入手した称号やアイテムによって入手可能マスコットは増えるそうだ。
「絶対ホームをゲットしよう。そしてマスコットもゲットだ」
うちには可愛いモンスたちがたくさんいるけど、それとはまた違った可愛さがあるからな。
「ホームの申し込みは? ホームエリアに行くとできるのか」
ホームエリアの先行お披露目と、販売を行っているらしい。今までと違って、かなり安いアパートメントタイプの販売や、庭付きの戸建てなど、種類が豊富にあるという。また、ホームエリアも利便性が高く、人気が出そうだった。