バカとMMORPGと召喚獣!   作:ダーク・シリウス

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強化合宿 1

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「ステータスのポイントを振り分けたことだし、畑の拡張を100万ぐらい使って広げたし、ファーマーをメインにして農耕のレベルを50までカンストしたら派生スキルを1つ取得可能だという育樹と水耕、育樹を得てその他諸々のスキルとステータスを振って準備万端と」

 

育樹と水耕スキルを持つオルト、ゆぐゆぐ、オレア、サイナと一緒に何も植えられてない広大な畑、水耕プールを豊かにしてもらうためにオルトには株分を行使しまくってくれた。水晶樹の実を苗木の株分に成功したので万々歳である。そして他にも吉報があった。

 

「おー、久々の卵じゃないか!」

 

「キキュ!」

 

「ヤー!」

 

納屋の前に、茶色と赤のマーブル模様の卵が置かれていた。出迎えてくれたリックとファウが、俺の両肩に乗ってドヤ顔をしている。鑑定すると、この2体の間に生まれた卵だ。

 

「おおー。やったな!」

 

「キュ!」

 

「ヤー!」

 

にしても、デカくないか? 一抱えはある。小型サイズであるリックとファウの間に誕生した卵なのに、オルトとサクラの卵と同じ大きさだった。というか、本人たちよりも遥かに巨大だ。

まあ、魔力が混ざり合って生み出されるという設定だし、親のサイズは関係ないってことなんだろう。

 

「孵卵器を用意しなきゃな。ヒムカ、とりあえずアイアンインゴットを用意してくれるか?」

 

「ヒム!」

 

属性結晶は火結晶がある。あとは孵卵器を買って来れば属性付加孵卵器を作れるだろう。俺は皆に畑を任せると、足早に獣魔ギルドへと向かった。

 

生産技能孵卵器と戦闘技能孵卵器で迷ったが、ここは戦闘技能孵卵器を購入することにした。生産技能を持った子はたくさんいるしね。

 

畑に戻るとすでにヒムカがアイアンインゴットを作っておいてくれたので、それを使って孵卵器を作る。

 

 

名称:火属性付加戦闘技能孵卵器

 

レア度:4 品質:6

 

効果:孵卵器。誕生するモンスターの初期ステータスがランダムで+5。初期スキルにランダムで戦闘技能が追加。初期スキルに火属性スキル、火耐性が追加。

 

リックとファウの卵を孵卵器にセットして、納屋に安置した。これで数日後にはモンスが孵るというわけだ。

 

「どんな従魔が生まれるんだろうな」

 

「キュ?」

 

「ヤ?」

 

本人たちにも分かっていないようだ。そもそも、外見も能力も全然違う2体だ。妖精っぽいモフモフ? モフモフの妖精? ・・・・・そんなわけないか。

 

「それじゃ畑をよろしく頼むな」

 

「ムム!」

 

「―――♪」

 

「トリ!」

 

「ご期待を応えてみせます」

 

ありとあらゆる素材はホームのアイテムボックスの中に保管してある。各精霊の街にあるホームオブジェクトを大量に購入した。これから忙しくなるぞー。とはいっても俺はこれからログアウトしなくちゃならないがな。

 

「じゃあ、またな」

 

布団に横たわりログアウトの状態に入った。目の前が真っ暗になって、リアルの身体を動かして顔から端末機を外す。

 

「現実の仕事の時間が迫ってきてるな」

 

これから参加する第2陣のプレイヤー達に向けての挨拶のプログラムの準備と世界に向けて生配信である発表・・・・・。

 

ブーッ ブーッ ブーッ

 

携帯が鳴り出す。誰かが連絡してきたんだろう。通話状態にして声の主からの話を耳に傾ける。

 

「ああ、うん、単刀直入で言ってくれ。おおそうか。完成したか! それじゃ、契約通りアメリカから優先に体験版を贈ってやろう。勿論、日本の分もとっとけよ。それとお前達のとこの技術者全員には短いが正式に開始する二日前まで休暇をするようにな。当然全員だ。これから家族と会えなくなるのが当たり前のようになるからな。これは絶対だ」

 

イッチョウもとい燕が部屋に入ってきて、通話中の俺を見ても傍に寄ってきた。

 

「それじゃ、俺はこれから夕食にするから話はこれでな。ああ、お疲れ様」

 

通話を止めて燕に目を向ける。

 

「お仕事ですか?」

 

「NWOの他のゲームの開発が完成した話だ」

 

「え、他にも開発してたゲームがあるんですか?」

 

「こいつはアメリカからの要望でな。莫大な資金を提供するから蒼天の技術で革命的新しいゲームを作ってくれと依頼があったんだよ。ここだけの話だが、今のアメリカ合衆国の大統領もNWOをしてるぞ」

 

「嘘っ!?」

 

本当だ。ま、お互いどんなキャラクターで遊んでいるのかは判らないからゲーム内で会う機会はない。

 

「ゲームの中には色んな人がいるんですね。それで、新しいゲームってどんな?」

 

「アメリカ人が好むシューティングゲームだ。しかも自由度120%のカスタムができるし、巨大ロボットも操作できる」

 

「うわ、凄く売れそう」

 

「まだ体験版だけども、がな。もちろん日本にもそのゲームができるぞ。それともう一つもある、その発表を近日俺がするんだからな」

 

その日はちょうどリヴァイアサンレイドが始まる直前だ。

 

「明日は学校だなぁ。霧島翔子に結婚しようと言われないようにせねば・・・・・」

 

「ゲームの中でも駄目なんですか?」

 

「坂本雄二と彼女の妹を見てもまだ解らないと?」

 

「・・・・・。・・・・・ゲームと現実の区別がつかなくなるほど、なんですねぇ」

 

理解してくれて助かるよ燕。ゲームの話を現実に持ち込まないでほしいんだよこっちは。

 

 

 

アメリカ―――。

 

 

 

「大統領、蒼天から完成した件の物が届きまシタ」

 

「莫大な出費をした甲斐があったというものだ。しかし、私の望み通りのゲームでなければ話は別になるがね」

 

「ゲームの内容によれば、何でも長くプレイすれば宇宙船の艦長にもなれる宇宙の世界を冒険するゲーム。敵勢力のNPCも存在し、コミュニティを結成するもよし、何もしなくてもよし、個人の勢力を拡大するもよし、奪い合いもよし、無限の楽しみ方が出来るそうデス」

 

「宇宙の開拓をテーマにしたゲームか。ヒーローが活躍するゲームではないのだな」

 

「いえ、もう一つのゲームもどうやら開発されていたようデス。大統領の好みであるヒーローマンガをテーマにしたゲームも一ヶ月後に体験版として贈られるそうデス」

 

「くっ、憎いぞ蒼天め・・・・・っ! 嬉しい意味でな!!」

 

「私もです。帰宅後ゲームの中で私がスター・ギャラクシーになれると思うと、高揚感が高まりマス」

 

「私は当然キャプテン・〇〇〇〇〇だ。幼い頃から彼の熱狂的大ファンなのだ。私自身が彼になれると思うと・・・・・うむ、もし私好みのゲームであったら蒼天に更なる寄付をしてやろうじゃないか」

 

「次はどんなゲームを開発に?」

 

「焦るな焦るな。まずはヒーローゲームのことで頭がいっぱいなのだから。よし、帰宅したら久しぶりに漫画を読もう。誰よりもキャプテン・〇〇〇〇〇の言動を出来るトレースをしてゲームをするのだ」

 

 

 

 

翌日。

 

背中に引っ付く燕とバイク登校して、NWOの話題で盛り上がっているクラスメートがいる教室に入った。

 

 

「大和、もうすぐ強化合宿だな」

 

「そうだな。もう一週間後か」

 

「合宿と言えば風呂があるよな?」

 

「当然だろう?お前、風呂のない合宿で数日間外の流れている川で

体を洗えっていうのか?」

 

「それはある意味美味しいシチュエーションだが、

俺様の言いたいことはそうじゃない。俺達思春期の男子にとって

合宿と言えば―――覗きに決まっているだろう?」

 

「えーと、鉄人の電話番号はっと・・・・・」

 

「待て待て!いきなり鉄人にバラそうとするな!

合宿の醍醐味をしたくないのか軍師大和よ!」

 

「俺は平穏な学園生活を過ごしたいんだ。女子の敵になりたくない。お前だけやっていろ」

 

「俺達は友達だろう?」

 

「俺の友人に犯罪者はいない」

 

「協力してくれよ!ヨンパチや他の奴らは嬉々として引き受けてくれたのにぃ!」

 

「俺の知略は覗きの為に使いたくない」

 

「大和ぉーっ!カムバーックッ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「と、朝からガクトにふざけた要求をされた」

 

「ガクトの行動はムッツリーニ並みだね・・・・・」

 

「その寡黙なる性識者(ムッツリーニ)も覗きに協力する態勢のようだ」

 

「・・・・・だと思った」

 

Sクラスの教室にて今朝遭ったことを明久に伝えた。別に俺だって覗きは嫌いじゃないが、旅人さんに覗きに加担していることが知られたら何をされるか・・・・・(ガクガクブルブル)

 

「大和?身体が震えてるけど大丈夫?」

 

「ただの武者震いだ。それよりもまさかだと思うがお前も覗きなんてしないよな?」

 

「し、しないよ!僕だって命が欲しいんだ!」

 

「だよな。お前まで覗きを参加したら・・・・・」

 

「したら・・・・・?」

 

「ハーデスに頼んで・・・・・お前のあられもないチャイナ姿の写真を

ネットワークに流出させてもらうと思っていたところだった」

 

「絶対に参加しないと心から誓うよ大和」

 

釘は刺した。これでガクトの餌食に遭わないだろう。

 

「おーい、明久。ちょっと話があるんだが」

 

「断わる!」

 

「話の頭すら言っていないのに断わられただと!?」

 

声を駆けてきたガクトが愕然とする。早速来たな!だが、もう遅い!

 

「僕の社会的な問題に関わるんだ!今回だけガクトのお願いは聞けない!」

 

「おのれ、大和の入れ知恵だな!?」

 

「これでも純情な明久を汚すわけにはいかんのだよガクト!」

 

「ねえ、これでもってなに?僕は心と体も純情だよ?」

 

俺にそんな事を言う明久に突っ込みを入れる男子が話しかけてきた。

 

「頭は純情じゃないほどバカだけどな」

 

「ムッキィー!そんなこと言う雄二のバカは霧島さんの妹に

人生の墓場まで連れて行かれればいいんだ!」

 

「ふざけんな!俺は絶対に翔花から逃げきってやるからな!」

 

心の底からの決意だと分かったんだが・・・・・お前、後・・・・・。

 

「雄二には・・・・・鋼鉄の首輪を嵌めて牢屋に入れる必要あるみたい」

 

「しょ、翔花!?」

 

「雄二・・・・・逃がさない」

 

禍々しいオーラを全身に纏って鋼鉄の首輪とスタンガンを片手で掲げていた霧島翔花。

 

「「因みに、坂本(雄二)が話しかけた瞬間から後ろにいた」」

 

「お前ら謀った(バチチチチチッ!)うぎゃあああああっ!?」

 

スタンガンの電流でやられた坂本。俺までカウントされている。

まあ、教えなかった時点で謀ったようなものか。

 

「明久、誰かと付き合うならあれほど重い愛を向けてくる女や暴力女、

壊滅的な料理を作る女以外にしろよ」

 

「うん・・・・・そうするよ」

 

島田と姫路には悪いが、お前らじゃ明久を幸せにしてくれるか怪しい。

 

「そういや、ハーデスの奴は見掛けないな・・・・・?」

 

「そう言えばそうだね。霧島さんのところにいるのかな?」

 

「違う・・・・・」

 

霧島の妹が坂本の首に首輪を嵌めながら否定した。いない?

じゃあ、ハーデスは休みなのか?

 

「やぁ、皆おっはよー」

 

松永さんとハーデスが教室に入ってきた。何時もの二人にしては時間ギリギリできたな。

 

「おはよう、今日は珍しいわね?」

 

「王様に呼ばれて話しててね」

 

『・・・・・する奴はいないだろうが、女子風呂を覗くバカな輩の阻止を、と任命された』

 

ハーデスのスケッチブックを見て、自然な流れでガクトに顔を向ける。土屋と何やら熱心に話をしていてこっちに気付いていない。哀れな・・・・・。一人の友を失うことになろうとは・・・・・。しかし、俺も他人を心配している暇はない。何故なら・・・・・。

 

「・・・・・脅迫状を貰っただと?」

 

「うん・・・・・そうなんだよ」

 

休憩の合間に悩みを聞かされた。

こいつと何時も接しているからか悪友の坂本より、俺に頼むことがしばしばある。

 

「何て書いてあるんだ?」

 

「『あなたの秘密を握っています』・・・・・って」

 

「・・・・・明久に秘密ってあったっけ」

 

「あるよ!?誰にも言えない秘密はあるよ僕だって!」

 

正直、物凄く下らない秘密だろうと思う。

でも、困っている友人を放っておくわけにはいかない。なぜなら―――。

 

「明久、実は俺も脅迫状が下駄箱の中に入っていたんだ」

 

「え、そうなの?」

 

「内容はお前と同じだ。し、しかもだ・・・・・」

 

俺は振るえながら脅迫状と同封されている封筒から―――女の下着姿でチャイナドレスを

脱ごうとしている俺の写真を取りだした。

 

「こ、これは・・・・・!」

 

「今現在、俺の秘密にして黒歴史の一ページだ。明久、お前は?」

 

「・・・・・僕も同じだよ」

 

チャイナドレスを脱いでいる瞬間の写真を見せられた。

 

「これって俺と明久、坂本が一緒に脱いでいる写真だよな?」

 

「そう言えばそうだね」

 

「・・・・・もしかすると、坂本にも同じ脅迫状が届いているかもしれないな」

 

「聞いた方がいいよね」

 

明久と頷き合い、いつの間にか相談していたガクトから坂本に代わって、教室の隅でムッツリーニと話し合っている二人の下へと寄った。

 

「坂本、お前んとこにも脅迫状が届いているか?―――チャイナドレスを脱いでいる瞬間の写真付きで」

 

「っ!?」

 

激しくビクッと肩を跳ね上がらした坂本だった。

それからこっちに振り返って口を開いた。

 

「な、何故それをお前が知っているんだ・・・・・?」

 

「俺と明久もそんな手紙を貰ったからだよ」

 

「そうか・・・・・お前らも脅迫状が届いていたのか」

 

「ああ、あまりにも不愉快過ぎる。何の為に俺達を陥れるのか理解しがたい。

極めつけはこれだ」

 

『あなたの傍にいる異性にこれ以上近づかないこと』と脅迫状の手紙の内容だ。

 

「異性ね・・・・・つまり女か?」

 

「嫉妬による手紙だと俺も推測しているが、俺はそれ以上にヤバい」

 

というと・・・・・?首を傾げていると、MP3プレーヤーを取りだした坂本が苦虫を噛み潰したような表情になる。

 

「それ、お前の?」

 

「俺のじゃない。実は今朝、翔花がMP3プレーヤーを隠し持っていたんだ」

 

「MP3プレーヤー?それくらい別にいいんじゃないの?

雄二だって前に学校に持ってきたし」

 

たまに俺も持ってくるな。その日限って西村先生に没収される事が多い。

 

「いや、アイツは翔子と同じで結構な機械オンチだからな。

そんな物を持っていて、しかも学校に持ってくるなんて不自然なんだ」

 

それは意外だ。霧島姉妹は機械オンチか。

 

「そこで怪しく思って没収してみたんだが。

そこには何故か捏造された俺のプロポーズが録音されていたんだ」

 

「・・・・・」

 

坂本のプロポーズって・・・・・・。

 

「お前、誰にプロポーズしたんだ?」

 

「してねぇっ!俺は他の女にプロポーズなんてしてねぇ!」

 

「き、霧島さんの妹は可愛いねっ!そんな台詞を記念にとっておきたいなんて―――」

 

急に明久が何か焦ったように言いだした。どうしたんだ?

 

「いや。婚約の証拠として父親に訊かせるつもりのようだ」

 

「それ、もう絶体絶命じゃん?」

 

「これが俺の手元にある限りは問題ない・・・・・っ!

だが、この中身はおそらくコピーだろうし、

オリジナルを消さないことには・・・・・」

 

そう言って坂本が取り出したものはどう見ても再生専用のプレーヤーだ。

その中身を消したところで問題の解決にはならないだろう。

 

「おいおい、これから学力強化合宿へ行くというのに

何問題を抱えたんだよ俺達は・・・・・」

 

「本当、いい迷惑だよ。誰だろう、こんな時に限って僕達を不幸のどん底に

落とすやつは」

 

「ああ、全くだ。翔花がこんなもんを持っている時点で俺の人生は―――」

 

「雄二・・・・・それ返して」

 

「・・・・・」」

 

「あ、霧島さん」

 

何時の間に坂本の背後にいたんだ?全然気付かなかったぞ。

坂本に視線を配ると・・・・・。

 

「か、返してたまるかぁっ!」

 

叫びながら教室からいなくなった・・・・・。

そんな坂本に金属バットを持って追いかける霧島翔花。

 

「あいつ、手相を調べたら女難の相がありそうだな」

 

「同感だね」

 

「お主ら、なにをやっておるのじゃ?」

 

「あっ、秀吉。実は雄二が―――」

 

坂本が落としていったMP3プレーヤーを手にして再生してみると、木下が反応した。

 

「む。それは明久に頼まれて雄二の真似をした時のものじゃな?」

 

「・・・・・え?」

 

意外なところに意外な人物が意外にも答えてくれた。―――こいつ。

 

「遅くなってすまないな強化合宿のシオリのおかげで手間取ってしまった。

HRを始めるから席についてくれ」

 

そう告げる担任こと鉄人―――じゃなくて西村先生は片手に大きな箱を抱えていた。

もう片手には坂本の頭を鷲掴みにしていて、こっちに放り投げてきた。

うおっ、あぶねぇっ!?

 

「さて、明日から始まる『学力強化合宿』だが、大体のことは今配っている

強化合宿のしおりに書いてあるので確認しておくように。

まぁ旅行に行くわけではないので、勉強道具と着替えさえ用意してあれば

特に問題はないはずだ」

 

すいません。俺達は絶対に余計な物を持ってきます。前の席から、

ワン子から順番に冊子が回されてきたから俺も一冊取って残りを後ろに回した。

 

「集合の時間と場所だけはくれぐれも間違えないように」

 

鉄人からドスの利いた声が響き渡る。確かに集合時間と場所を間違えたらシャレに

ならない。学力強化が目的とはいえ、皆で泊まり込みのイベントに参加できないなんて寂しすぎる。パラパラと冊子を捲って集合時間と場所の書かれている部分を探す。

今回俺達が向かうのは卯月高原という少しシャレた避暑地で、

この街からは車だとだいたい四時間ぐらい、電車とバスの乗り継ぎで行くと五時間

くらいかかるところだ。合宿ということは・・・・・ハーデスの素顔を見れるチャンスか?

 

「特に他のクラスの集合場所と間違えるなよ。クラスごとでそれぞれ違うからな」

 

「どうせ俺らは狭いマイクロバスとかで行くんだろう」

 

坂本がそう漏らす。他のクラス、元Bクラスと元CクラスもDクラス、

Eクラスのバスで向かうだろうな。

 

「いいか、他のクラスと違って我々Fクラスは―――現地集合だからな」

 

『案内すらないのかよっ!?』

 

あまりの扱いに全級友が涙した。

 

「と、本来ならばそうだがお前ら。死神と松永に感謝しろよ」

 

うん・・・・・?感謝だと?何故なんだ?

 

「おい、どういうことだ?」

 

「蒼天が我々Fクラスに特別でリムジンバス並みのバスを用意してくれるそうだ。

蒼天から来た二人に不便な思いをさせないためだとな」

 

鉄人からの説明に俺達は―――。

 

『『『『『ありがとうございまーすっ!』』』』』

 

ハーデスと松永さんに向かって土下座をしたほど感謝したのだった。俺達はついでだろうけど

それでも構わない。現地集合よりは断然良い整備とバスで行けるんだからな!

 

 

~~~キング・クリムゾン~~~

 

 

「だからって端折りすぎだ!」

 

「いきなりどうした大和?」

 

無事に合宿する蒼天の私有地の建物に到着してから決められた室内でトランプで遊び、さっさと勝って終わるまで待っていたキャップに俺の挙動不審に不思議がった。トランプに集中する。

 

「にしても、合宿所って素朴な感じな建物だと思ってたけどよ。合宿所と言うよりか、旅館だよな」

 

「中から見た感じだと、かなりの広さだよね」

 

「無駄に広すぎなんじゃないか?俺達みたいな学生しかこないんだろ?」

 

皆の話を聞き耳を立てて、ガクトの意見に得た情報を口にした。

 

「普段は普通に営業もしてるそうだぞ」

 

「へぇ、そうなのか」

 

「こんだけ広くて豪勢な感じなのに英雄の奴、というかSクラスの連中が参加できないって損してるんじゃね?」

 

いや、そうでもないぞ。

 

「一部のSクラスの連中、来てるぞ」

 

「ふはははっ!邪魔するぞ直江大和とその一行!九鬼英雄、降臨であるっ!」

 

騒々しく戸を開けながら入ってくる英雄とその一行。

 

「は?何でいるんだよ?Sクラスは強化合宿には参加しないんじゃないのか?」

 

「確かにSクラスに在籍する者は貴様等よりも頭脳も成績も能力、地位も名誉、家柄すら勝っている。強化など個々ですればよいことであり、選ばれし我等が子供のように楽しむ遊戯のような催しに参加をすることなどないのだ」

 

事実であるが故にイラッと来るのは仕方がない発言だよな。

 

「で、それなのにどうやって参加できたんだよ。Sクラスは参加できないって聞いたぞ」

 

「大うつけ者め、まだ分からぬか。我等はプライベートで来ておるのだ。蒼天の王、旅人がいるこの旅館で三泊四日の宿泊である!」

 

そ、そういう手で来たのか!道理で制服じゃなくて私服なわけだよ。

 

「えっと英雄君達って、どうやって許可を貰ったの?この旅館は貸し切り状態で誰も泊まることができないようになっていると思うんだけど」

 

モロの言い分によくぞ聞いてくれたとばかり教えてくれ―――かけた。

 

「無論、我が九鬼家の威光で―――」

 

「んなもんで俺が許すか。蒼天が九鬼家に屈服したようなことは一切していない」

 

呆れた口調で英雄達の後ろから顔を出した学園長、旅人さん・・・・・。

 

「こいつらが俺もこの合宿所に行くと知った矢先から直談判+懇願してきたんだよ。前例通りエリート中のエリートのSクラスにとって意味のないから参加したがらない。参加しなければ四日間も休日になるんだからな。そっちの方がエリート共の有意義な時間を送ることができるって理由でよ」

 

「なら、やっぱり拒絶したんですか?」

 

「当然だ。だが、どうしてもって言うんだから俺は条件を言った。ここは成績の向上の強化をするために宿泊する場所。神月学園の生徒として宿泊するならエリートの頭脳をコキ使って成績の向上を成功させてもらうとな」

 

「学園長の言う通り、我等はその提案を呑みこの旅館の滞在を許してもらったのだ」

 

理に適うことだな。Sクラスの生徒なら俺達が分からないことでもスラスラと教えてくれる。ただ、教え方が分かり易いかそうでないかは判断しかねるが。そして俺達が理解できるか否かも。

 

「そんなわけでこいつらは臨時の若い先生と同時にこの旅館に泊まる生徒の立場だ。分からないことがあればお前らの担当となるこいつらの誰かに聞けよ」

 

「ふはははっ!光栄に思え。Sクラスの代表の我が庶民達に直接施しをしてやる事など滅多にないのだからな」

 

性格が分かっているから・・・こんな言い方しかできない英雄だ。ちょっとからかってやるか。

 

「そうだな。じゃあ、Sクラスの代表様にはファミリーの中で一番頭が悪いワン子を教えてくれるよな?」

 

「何?一子殿・・・・・だと?」

 

分かりやすっ! 顔が輝いている! ・・・・・旅人さん?

 

「どうしました、旅じゃなくて学園長」

 

「そのまま言い間違えてたら女装コース行きだったのに、残念だ」

 

あ、あっぶねっー!

 

「で、何だ直江大和。何を聞こうとした?」

 

「えっと、不思議そうに床を見下ろしていたんで」

 

「ああ、この階に近づく怒りの気配を感じたからな」

 

怒りの気配?

 

 

 

 

 

 

明久side

 

「ねえ、ムッツリーニはどこに行ったの? 覗き? 盗撮?」

 

「友人に対してそんな台詞がサラッと出てくるのはどうかと思うのじゃが・・・・・・」

 

ガチャッ

 

「・・・・・ただいま」

 

噂をすればなんとやら。ムッツリーニが部屋に入ってきた。

 

「お帰りムッツリーニ」

 

「・・・・・明久。無事で何より」

 

ムッツリーニがそう言ってくれるのは姫路さん―――いや、何でもない。学園長に知られたらいけないことだ。

 

「・・・・・情報も無駄にならずに済んだ。昨日、犯人が使ったと思われる道具の痕跡を見つけた」

 

「おおっ。流石はムッツリーニだね」

 

「・・・・・手口や使用機器から、明久と雄二、直江の件は同一人物の犯行と

断定できる」

 

「ワシが雄二の声音を真似した人物かの?」

 

「どうして秀吉がそんな事を了承したのか後で聞くとして、ムッツリーニ。犯人は誰だった?」

 

「・・・・・(プルプル)」

 

坂本が尋ねると、土屋は申し訳なさそうに首を振った。

 

「あ、やっぱり犯人はまだ分からないの?」

 

「・・・・・すまない」

 

「いや、そんな。協力してくれるだけでも感謝だよ」

 

そりゃそうだよね。昨日の今日でそう簡単に犯人何て見つかるわけがないよね。

 

「・・・・・『犯人は女生徒でお尻に火傷の痕がある』ということしかわからなかった」

 

「君は一体なにを調べたんだ」 

 

思わずツッコンでしまった。普通の人は名前や顔を知っている相手でも

尻の火傷の有無なんて知らない。こいつの調査方法が気になるところだ。

 

「・・・・・校内に網を張った」

 

そう告げながらムッツリーニが取り出したのは小さな機械。これは―――?

 

「・・・・・小型録音機。昨日学校中に盗聴器を仕掛けた」

 

ムッツリーニは録音機のスイッチを押すと、内蔵されている音源からノイズ混じりの声が

部屋に響いた。音声に少女と犯人思しき声が聞こえてくる。

坂本の声音を真似をした木下のコピーをもう一つ購入を求めているのは

霧島翔花だった。だが、強化合宿で引き渡しは四日後となり、雄二は胸に手を当てて

安堵で胸を撫で下ろす気分でいた。

 

「・・・・・それで、こっちが犯人特定のヒント」

 

ムッツリーニが機械を操作する。その音声から聞こえるのは、こんな売買をしていたことを

一度バレて、自分の尻にお灸を据えられて未だに火傷の痕が残っていると、

乙女に対して酷い仕打ちだと愚痴を零していた。

それ以降は他愛もない商談がいくつか続いた。

 

「・・・・・わかったのはこれだけ」

 

「なるほどね。それでお尻に火傷の痕か」

 

「今の会話を聞いても女子というのは間違いなさそうだろうね」

 

犯人探しが一歩前進して安心した時、ノックする音が聞こえた。秀吉がこの部屋の扉を開けに行くと。

 

『・・・・・遊びに来た』

 

「おっ邪魔しまーす」

 

ハーデス、松永さんペアが遊具を持参してきた。そして固まるように顔を突きだし合っている僕等を見て小首をかしげた。

 

『・・・・・何している?』

 

「ああ、俺達を脅迫している犯人は誰なのか探しているんだ。今そいつの特定の特徴が分かってな。

お尻に火傷がある女子だと言うことが分かった」

 

「脅迫? 恨まれるようなことをしちゃったの?」

 

「違うんだ、無実だよ松永さん! 僕達は何もしてない、被害者なんだよ!」

 

こうなったら二人にも手伝ってもらおう!―――かくかくしかじか。

 

『・・・・・知り合いの女子に探してもらえば済む話』

 

僕の説明を聞いたハーデスの提案に僕達は顔を見合わせた。なるほど、名案だ!

 

「でも、引き受けてくれるかな?」

 

「大丈夫だ。お前とハーデスを自由にして良いといえば喜んで引き受けてくれる」

 

「ちょっと!僕達をダシにしないでよ!」

 

『・・・・・お前の女装写真をWEB』

 

「それだけは止めてくれ!?俺が悪かったから!」

 

知り合いの女子と言えばこっちにはワン子と京、クリスさんに姫路さんがいる。他は―――

 

「あと秀吉に女子風呂に入って確かめるべきだよね」

 

「明久。なぜにワシが女子風呂に入ることになるのじゃ?」

 

「それは無理だ、明久」

 

雄二が強化合宿のしおりを僕に放ってよこした。

 

「どうして無理なのさ?」

 

「3ページ目を開いてみろ」

 

3ページ。確か入浴時間の振り分けだったな。

 

 

~合宿所での入浴について~

 

 

男子ABCクラス・・・・・20:00~21:00 大浴場(男)

 

男子DEFクラス・・・・・21:00~22:00 大浴場(男)

 

 

女子ABCクラス・・・・・20:00~21:00 大浴場(女)

 

女子DEFクラス・・・・・21:00~22:00 大浴場(女)

 

 

Fクラス 死神・ハーデス、木下秀吉・・・・・21:00~22:00 個室風呂

 

 

「なんでハーデスと秀吉が一緒の風呂なのさー!」

 

「いや、これはこれである意味当然かもしれない」

 

僕の叫びに雄二はうんうんと納得した態度でいると、

 

「どうしてワシだけが個室風呂なのじゃ!?」

 

『・・・・・不満だ』

 

案の定。二人は「異議有り!」とばかり言う。

 

「いや、秀吉はともかくハーデス。お前は仮面のまま風呂に入るつもりか?一人だけ骸骨の仮面を被った変人がいるって噂されるぞ、いいのか?」

 

『・・・・・』

 

ハーデスは徐に部屋の隅に座り込み―――いじけた。

 

「まぁ、格好だけじゃなくて実際に死神っぽいことはできるよんハーデス君は」

 

「それはどういうこと?」

 

「周囲の景色と一体化になれるからね、あの黒い外套。隠密行動には最適な装備品だよ」

 

それは凄いことだ!透明って光学迷彩っていうやつだっけ?まるで透明人間みたい―――って。

 

「・・・・・!」

 

ムッツリーニが物凄い速さでハーデスに近づいた。

 

「・・・・・ハーデス」

 

『・・・・・なんだ?』

 

「・・・・・透明になれる物をくれ」

 

でた、でたぞ性識者の言動が!

透明になったら好き放題女のスカートの中を覗くつもりだ!正直―――僕も欲しい!

 

『・・・・・一着、100万』

 

意外と思っていたより安い値段だった。でもやっぱり高い。

 

「・・・・・ローン払いで・・・・・」

 

ムッツリーニは購入した!

 

「そこまで欲しいのかお前は!?」

 

「流石だよムッツリーニ!」

 

「明久よ。そこは感動するところではないぞい」

 

 

ハーデスは自身を羽織っている同じ黒マントを黒マントから取り出して土屋に渡した。

 

『・・・・・毎度あり』

 

「・・・・・感謝」

 

早速マントを羽織り、フードを被るとムッツリーニの姿が俺達の前から姿を暗ました。

 

「おお・・・・・凄い!」

 

「なるほど、これなら女子風呂に入っても気付かれはしないだろう」

 

マントを脱いだ土屋の姿が現れる。これならいける!と、そう思った時だった。

 

―――ドバン!

 

「全員手を後ろに組んで伏せなさい!」

 

「その通りじゃ!」

 

凄い勢いで俺達の部屋の扉が開け放たれ、女子がぞろぞろと中に入って来た。

 

「な、なにごとじゃ!?」

 

「木下はこっちへ!そっちのバカ三人は抵抗をやめなさい!」

 

先頭に立つ島田さんが、咄嗟に窓から脱出しようとした僕と雄二とマントを羽織った

ムッツリーニの機先を制した。フードを被らないと透明化にならないらしいみたいだ。

 

「なぜお主らは咄嗟の行動で窓に迎えるのじゃ・・・・・?」

 

『・・・・・何かしらの自覚、身に覚えがあるんじゃないか?』

 

「うーん、フォローのしようがないね」

 

・・・・・多分、否定できない。

 

「仰々しくぞろぞろと、一体何の真似だ?」

 

窓を閉めながら女子勢に向き合う雄二。

僕とムッツリーニも貴重品の入った鞄を下ろしながらそちらを向いた。

 

「よくもまぁ、そんなシラが切れるものね。あなた達が犯人だってことくらい

直ぐにわかるというのに」

 

島田さんの後ろから出て来て高圧的に言い放ったのはEクラス代表の中林だ。

後ろで並んでいる大勢の女子も腕を組んでうんうんと頷いている。

中には元Cクラス代表もいる。他の女子と違って様子を窺っているようだ。

 

『・・・・・Eクラスの代表。どうした?』

 

「どうした?よくもそんな態度で尋ねてくるわね。覗き魔の一人が」

 

『・・・・・?』

 

ハーデスは訳が分からないと首をスケッチブックを見せながら傾げた。覗き魔?どういうことだと風に。

 

『・・・・・俺が覗き魔?どうしてそうなる?』

 

「これ」

 

小山さんが僕達の前に何かを突きつけてきた。なんだ?

 

「・・・・・CCDカメラと小型集音マイク」

 

その手の物には圧倒的な知識を持つムッツリーニが代わりに答えてくれた。

 

「女子風呂の脱衣所に設置されていたの」

 

「・・・・・・はい?」

 

女子風呂の脱衣所・・・・・にだって?

 

「え!?なんでそんな物が!一体誰がそんな事を―――!」

 

「とぼけないで。あなたたち以外に誰がこんなことをするって言うの?」

 

この台詞を聞いて、秀吉が中林の前に歩み出た。

 

「違う!ワシらはそんな事をしておらん!覗きや盗撮なんてそんな真似は―――」

 

「そうだよ!僕らはそんなことはしない!」

 

「・・・・・!(コクコク)」

 

友の無罪を立証しようと秀吉が声を荒げていた。この信頼に応えないと!秀吉の反論に合わせて前に出た僕とムッツリーニを冷ややかに見る中林さん。

 

「そんな真似は?」

 

「・・・・・否定・・・・・できん・・・・・っ!」

 

「えぇっ!?信頼足りなくない!?」

 

『・・・・・土屋の存在が信頼を減らしているんだと思う』

 

「・・・・・!?」

 

ハーデスの冷静な指摘にムッツリーニは愕然となった。

それに、今さっき透明になれるマントを購入したところだしねぇ・・・・・。

 

 

「どうして俺達が犯人だと決めつけるんだ?俺達は女子の大浴場に行った覚えはないぞ。行く理由すらないんだからな」

 

「一番有力なのは―――この手のことを得意なのはFクラスにいるのと、見るからに怪しくて強い死神。この二人が手を組めば容易く仕掛けることができるかもしれないと島田さんと姫路さんの情報でそう思ったから。これで疑う余地があると言うのかしら?」

 

そう言われハーデスと土屋を交互に見て・・・・・雄二までもが唸るように漏らす。

 

「・・・・・否定・・・・・できない・・・・っ!」

 

「『・・・・・っ!?』」

 

ムッツリー二とハーデスが物凄くショックを受けたのが分かった。

 

「まさか、本当に吉井君達がこんなことをしていたなんて・・・・・」

 

殺気立つ女子の中から一人悲しそうな声を上げたのは姫路さんだった。

そう言われると僕達が本当にしたみたいな言い方をされて戸惑うって!本当に身に覚えがないんだ!

 

「吉井・・・・・。信じていたのに、どうしてこんなことを・・・・・」

 

「島田さん。信じていたなら拷問器具は用意して来ないよね?」

 

絶対に僕の事を信頼してねぇ!言っている事とこれからやろうとしていることが完全に違うから!

 

「もう怒りました!よりによってお夕食を欲張って食べちゃった時に

覗きをしようなんて・・・・・!

い、いつもはもう少しその、スリムなんですからねっ!?」

 

『・・・・・いつもと変わらない体型だと思う。

胸の脂肪が主に体重を増やしているんじゃないか?ホルスタイン姫路』

 

「う、ウチだっていつもはもう少し胸が大きいんだからね!?」

 

『・・・・・なに、目に見えている儚い嘘を吐くんだ?

 ―――永久Aカップ島田のくせに』

 

ハーデス・・・・・君、ある意味勇者だ・・・・・。

ほら、姫路さんと島田さんから怒気のオーラが感じるよ・・・・・?

 

「皆、やっておしまい」

 

素早い動きで周りを取り囲まれ、僕とムッツリーニは石畳の上に座らされた。これは大ピンチだ。こんな時に頼りになるのは―――。

 

「雄二頼むっ!この場を何とか収めて」

 

 

「浮気は許さない・・・・・」

 

「翔花待て!落ち着ぎゃぁぁあああっ!」

 

 

「・・・・・死神、浮気は許さない」

 

「・・・・・お前まで、俺を疑うと言うのか・・・・・っ!?」

 

 

ダメだ!向こうは向こうで既に刑が執行されている!ハーデスも時間の問題だ!

 

「さて。真実を認めるまでたっぷりと可愛がってあげるからね?」

 

島田さんのS気質が全開だ。これはご機嫌を取っておかないと命に関わる! ウソは嫌だけど、ここはお世辞でも言ってごまかさないと!

 

「あのね。僕、今まで島田さんほどの巨乳を見たことがぎゃぁあああっ!」

 

「まず一枚目ね」

 

『・・・・・煽ってどうするバカ』

 

煽ってないよ! 褒めたのに! 頑張って褒めたのに重石が

僕の膝の上にぃいいいっ!

 

「吉井君。まさか、美波ちゃんの胸、見たんですか・・・・・?」

 

「あははっ。やだなぁ。優しい姫路さんはそんな重そうなものを僕の上に載せたりなんてふぬぉぉぉっ!?」

 

「質問にはきちんと答えてくださいね?」

 

最近、彼女の笑顔は綺麗なだけじゃなくなってきた気がする。そう思った時だった。

 

「なら、俺の質問にもきちんと答えてくれるよな?」

 

女子達が一斉に第三者の声の方へ振り向き、緊張で顔を引きつった。何故なら・・・・・腕を組んで無表情な学園長代理がいつの間にか部屋の中にいたからだ。

 

「答えによっては・・・・・女子であろうと体罰を下す。異論は認めない。いいな?」

 

赤い光を帯びた右手の指の関節を鳴らして宣言する学園長に島田さん達は顔を青ざめた。

 

「燕、報告」

 

「女子風呂に小型のカメラとマイクが設置されていることに気付いたそこの女子達が、吉井君達とハーデス君が盗撮犯だと疑い、御覧の通り折檻をしています」

 

「へぇ・・・・・」

 

冷ややかな眼差しが舐め回すように女子達を向けられる。

 

「どうしてそれを教師に報告しなかった?E組代表中林宏美」

 

「えっ? それは、問い詰めて本当にしたのか確かめれば分かると・・・・・」

 

「質問にはきちんと答えろ。どうして担任や他の教師に報告をしなかった?」

 

顔を覗き込む学園長に中林さんはビクッと怯えた風に身体を跳ね上げた。

 

「そ、それは・・・・・」

 

「・・・・・」

 

無言の圧力。目を逸らしてしまえばちゃんと目を向けて話せとばかり両手で中林さんの顔を固定するように掴んだ。

 

「相手の目を見て報告をしろ。質問している相手から目を反らすな」

 

「っ・・・・・」

 

怒っているわけでもなく、ただ答えを言うまで見つめているだけの筈なのに中林さんは学園長に怖がって涙目になった。そんな中林さんに溜息を吐き、標的を変えて他の女子にも事情を聴きだすも納得のいく答えじゃなかったら再度問い詰められて、結局最後は押し黙るか泣きそうになる。最後は島田さん、姫路さん、小山さんとなった。

 

「どうして教師に報告しなかった?島田美波、お前はこいつらと同じクラスの生徒だろ?疑う理由は?」

 

「よ、吉井は変態で土屋は隠し撮りが上手で・・・・・」

 

「ほう、隠し撮り・・・・・隠し撮りができると知っていて黙認していたのは? 土屋康太も一回や二回じゃないみたいだな?」

 

「っ・・・・・!」

 

矛先がムッツリーニに変わった!

 

「土屋康太、隠し撮りしていたのは事実か?素直に答えろ」

 

「・・・・・。・・・・・。・・・・・(コクリ)」

 

顔中に冷や汗を流すムッツリーニは肯定した。

 

「この旅館で盗撮したのはお前か?」

 

「・・・・・(ブンブン!)」

 

「ふむ、なるほどな」

 

ムッツリーニに近づき、重石をどかし始めたと思えば膝を立ててその上にムッツリーニの身体を軽々と乗せると―――一気にズボンとパンツを脱がして尻丸出しにした直後に。

 

「学校で盗聴・盗撮するな」

 

素早く、そして勢いが乗った手がムッツリーニの尻に十発も叩いた。その音は凄く聞いている僕でも痛いことが分かる。尻叩きが終わるとムッツリーニは生まれたての小鹿のように、全身を震わせ見ていてとても痛々しかった。

 

「姫島瑞希。どうして教師に報告しなかった?」

 

「わ、私は吉井君から真実を聞きたくて・・・・・」

 

「島田美波と同じ理由だからか?」

 

「は・・・はい・・・・・」

 

「それで、もしこいつらじゃなかったらどうする?」

 

再度問い詰める学園長に姫路さんはチラチラと僕に視線を向けてくる。

 

「えっと、それは・・・・・」

 

「ああ、因みに関係ないことを聞く。土屋康太の盗撮を知ってたか?」

 

「え、は、はい・・・・・」

 

答えた姫路さんが一瞬でムッツリーニと同じ姿勢にされ尻を丸出しにされていた。本人も何時の間にこんな姿勢にされたか不思議と疑問が混濁して、え?と漏らした瞬間。

 

「黙認かつ売買もしているなら同罪だ。尻叩きの罰を与える」

 

「えっ?(バシーンッ!×10)~~~~~っ!?!?!?」

 

み、見ちゃいけないんだけど姫路さんの生のお尻に王様の平手が炸裂して、姫路さんはその痛みに耐えきれず泣いてしまった。

 

「ちょっと学園長!どうして瑞希に酷いことを―――!」

 

「次、島田美波」

 

「えっ!?(バシーンッ!×10)いたっ!? 痛い! 止めてっ、痛いから止めてください!」

 

「教師に報告せず隠し撮りを黙認したお仕置きだからダメだ」

 

島田さんもムッツリーニからどんな写真を買ったか分からないけど、盗撮した写真を買ったから尻叩きの刑が執行された。そして最後は小山さんとなったけど・・・・・。

 

「盗撮・盗聴のカメラが設置されていたことを報告しなかったのは?」

 

「私が脱衣所に入ったところで他の女子が発見されていました。島田さんと姫島さんの意見が有力であると先生達に報告するまでもないという雰囲気でここに来ました」

 

「他の女子が発見? この中にいるか?」

 

「いません。Dクラスの清水さんが発見しました」

 

「第一発見者がここにいない理由は?」

 

「わかりません。とにかく、真っ先に報告するべき先生にしなかったのは私も注意不足でした。申し訳ございません」

 

深々と謝罪の念を込めて腰を折って頭を下げる小山さん。あ、重石どかしてくれてありがとうございます。

 

「報告は他にあるか?」

 

「うーんと、吉井君に坂本君、直江君が学園祭で女装中や着替えようとしていた瞬間を盗撮された写真で脅迫されているみたいです。バラまかれたくなかったら異性に近づくなと」

 

松永さんの話を聞き僕達に向かって学園長は一言。

 

「・・・・・問題あるか?」

 

「「大アリだ!」」

 

「学園祭中だろうとなかろうとコスプレの一環として認識されるだろ」

 

そうなんだろうけど、そうなんだろうけどそれでもコスプレが趣味なんて思われたくないんだよ王様!

 

「思われたくないのは理解したが、自分達で解決する前に一言ぐらい担任に言っておけ。何のための教師なんだ。特に鉄人呼ばわりされている西村先生は、呆れながらも少なからず協力してくれるはずだぞ」

 

「うっ、すみませんでした・・・・・」

 

「分かればいい。さて、こいつらが女子風呂に仕掛けた犯人である証拠としては不十分だ。ここは俺の顔を立てて解散してもらうが、証拠不十分で相手の主張を聞かずに身体的な体罰をした責任を果たしてもらうか。この重石を持って三十分玄関ホールで正座していろ。小山優香は俺の質問にきちんと答えたから免罪にしてやる。そんで、この場に居る女子は強化合宿中この四人との接触を禁ずる。もし破ったりでもしたら・・・・・尻叩く数はこの倍だからな?」

 

そんな! と異を唱える女子達が信じられないものを見る目で王様を見るが、「謝罪だけで済ますほど俺は甘くはないからな」と厳しいお言葉を頂戴されたのであった。

 

「次は脅迫犯のことだが、心当たりはあるか?」

 

「・・・・・いえ、まだです」

 

「そうか。なら後は教師にやらせよう。余計な諍いが起きてしまった以上は看過できないからな」

 

それはありがたい。学園長達なら直ぐに凶悪犯を見つけてくれるだろう。僕としても早く解決できるなら願ってもないことだと思っていたけど―――。

 

「お言葉ですが、これは俺達の問題だ学園長」

 

「・・・・・ほう? 自分達で解決できるというのか?」

 

「出来る出来ないの問題じゃない。無実な俺達をここまでコケにされちゃあ黙ってはいられないんだ。あいつらがそう来るんだったらこっちもとことんやってやらなきゃ気が済まねぇんだよ」

 

ゆ、雄二! キミは何てことを言うんだ!? 

 

「ふむ・・・・・なら、この機会に男子と女子の試召戦争をするか?」

 

「男子と女子の? 学園長どういうことですか」

 

「どうせお前達に体罰したこいつらに一泡吹かせたいって言うなら、男女別に分かれて召喚獣で勝負しろって提案しているんだ。お前等の行動で学園側に多大な迷惑をかけるつもりなら学園長代理として許せる問題じゃないだろう? ならば、最初からそうする方針にすれば問題はない」

 

「随分と大人な解決策を考えるんだな」

 

「だが、やり易いだろう坂本雄二。お前にとっては」

 

雄二にとってやり易い? 学園長は雄二の考えを見抜いてる上で、学園の問題を解決しようとしているの?学園長の考えていることはよくわからないけれど、雄二は獰猛な獣のように笑みを浮かべた。

 

「随分とクソババアより話が通じる学園長だな」

 

学園長も不敵な笑みを浮かべて雄二に言い返した。

 

「俺の教育方針は“自由”だ。解決できる問題なら生徒自身に最後まで責任を取らせる。お前にその覚悟があるなら大人も協力しようってだけさ。それも社会に出て大人になる子供の教育指導をする教師の長のな」

 

 

 

 

 

 

 

こうして学園長の介入で僕達の盗撮犯の疑惑は晴れた。島田さん達は一階の玄関ホールで『覗き魔と勘違いした大馬鹿女です。三十分間正座のお仕置き中です』と書かれた張り紙を張った重石を持って正座をさせられることとなった。

 

それから各クラスの担当教師が一斉に荷物検査を始めたところ、女子風呂にあった小型カメラとマイクを持っていた清水さんが連行され、学園長直々に事情聴取をしたところ、犯行を認めたらしい。

 

学園長のお仕置きを受けた清水さんも、島田さん達と一緒に一時間も正座をさせられた上に、学生あるまじき行いをした者として観察処分者に認定されたらしい。

 

でも、僕達はそのことを知らされなかったし気付きもしなかったから、雄二の思惑通りの展開になったんだ。

 

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