強化合宿二日目。今日の予定は元Aクラスとの合同合宿となっていた。
学習内容は基本的に自由。質問があれば周囲や教師に聞いてもOK。
要するに自習みたいなものだ。その為、机の並びも生徒同士が向かい合うような形になっている。
「ハーデス。何を勉強しているんだ?」
『・・・・・土屋に頼まれて保健体育』
「・・・・・俺より知識豊富」
悔しげな顔を浮かべるムッツリーニらしい自習勉強だことで。
「でも、何で自習なんだろう?授業はやらないのかな?」
「授業?そんなもんやるわけないだろ」
『・・・・・この合宿の趣旨はモチベーションの向上。つまり、元AクラスはFクラスを見て「ああはなるまい」と、FクラスはAクラスを見て「ああなりたい」と考える。そういったメンタル面の強化が目的だから、授業はしなくてもさして問題ではない。今回元Aクラスと合同学習をしているから俺達Fクラスにとって元Aクラスは教師みたいな感じで自習をしている』
こいつの頭の回転に舌を巻かせてくれる。
「ああ、ハーデスの言う通りだぞ明久」
「元AクラスはともかくFクラスに効果があるとは思えないんだけど・・・・・」
明久の言葉には同意と頷く。現に、Fクラスは一部を除いてだらけている。逆に元AクラスがFクラスを見てああはなるまいと必死に勉強をしている。
そんな光景に内心溜息を吐いていると、
「おや、死神君はここにいたんだ。ならボクもここにしようかな?」
そこに訊き慣れなれた声が聞こえてきた。
「『・・・・・工藤愛子』」
「ハロハロ~死神君とムッツリーニ君」
二ッと歯を見せて笑う工藤。ボーイッシュな雰囲気と相まって、その仕草はとても爽やかに見えた。
「そういえば、皆とはあんまり喋っていないから改めて自己紹介させてもらうね。元Aクラスの工藤愛子です。趣味は水泳と音楽鑑賞で、スリーサイズは―――」
『・・・・・78・56・79』
「って、何時の間にボクのスリーサイズを知っているの?」
『・・・・・目測、全員のスリーサイズも把握済み』
「ハーデス君?」
その赤い目で目測とは・・・・・女子のスリーサイズを知ることができる機能でもあるのか?松永さんからの無言の圧迫に顔を逸らしたのは理由を聞くまでもない。
「そっか。じゃあ次は特技ね。特技はパンチラで好きな食べ物はシュークリームだよ」
なんだ!?最後の方に変な台詞が混ざったぞ!
「ん?どうしたの吉井君?」
「いや、別に工藤さんの特技を疑っているわけじゃないんだ。ただ、その・・・・・」
「あ、さては疑ってるね?なんなら、ここで披露してみせよっか?」
工藤が短いスカートの裾を摘んだ時だった。
『・・・・・工藤愛子は変態なのか?」
「へ?」
『・・・・・いや、露出狂の変態ビッチか。実技が得意って自分で言うほどだからな』
ジーと赤い目を工藤に向けるハーデスだった。土屋のカメラを―――待て、撮影する気かお前?
「え、えっと・・・・・ボクは別にそんな風に言った覚えはないんだけど・・・・・」
『・・・・・特技がパンチラで、経験があるような言い方をした時点でそうだと思う。誤解されたくなければ発言には気をつけた方が良い』
「・・・・・ご、ごめんなさい・・・・・」
シュンと工藤が落ち込んだ。
『スパッツ穿いている時点で、パンチラなんてできやしないただからかうだけの清い純情処女のくせに』
「さっきの謝罪をボクに返して!」
土屋が鼻血を吹いている!誰か、誰か応急処置を!
「そんな!? 工藤さん、僕のドキドキと高鳴った純情を返して!」
お前も余計なことを言わんでいい!
「ごめんごめん。じゃあ、代わりに面白いものを見せてあげるよ」
工藤が取り出したのはい小さな機械だった。これって小型録音機か。
「コレ、凄く面白いんだ。例えば―――」
小さな機械をカチカチと弄る工藤。少し間を置いて、内蔵されているスピーカーから声が聞こえてきた。
―――ピッ《工藤さん》《僕》《工藤さんの》《パンチラ》《ドキドキ》《して》《いる》
「わあああああっ! 僕はそんなこと言ってないよ!? 変な物を再生しないでよ!」
「ね? 面白いでしょ?」
悪戯っぽい笑みを浮かべる工藤。その笑みは何故か明久の背後に向いていた。
「・・・・ええ。最っっ高に面白いわ」
「・・・・・本当に、面白い台詞ですね」
俺も明久の背後に見やるや、島田と姫路が氷の微笑を浮かべていた。すると、ハーデスが立ち上がり、島田と姫路に俺達から見えない位置でスケッチブックを見せると「「ひっ・・・!」」と顔を青ざめては俺達と離れた席に座って大人しくした。
「やけに素直というか、凄く怯えてたな。どうしたんだ?」
「えっと、王様にお尻を叩かれて合宿所にいる間は僕達と接触禁止、破ったらまた尻叩きの―――大和、どうしたの? 顔が引きつってるよ?」
旅人さんの尻叩き・・・・・! ヤバい、あの痛みはトラウマレベルでもう二度と尻叩きをされたくない!姉さんですら(小さい頃)泣いてしまう恐ろしいお仕置きを!
「・・・・・! (ガタガタブルブル!)」
土屋が全身を震わせる!そ、そうかお前・・・・・味わったんだなあの痛みを・・・・・。
「ん?これって保健体育の?」
『・・・・・土屋に頼まれていて教えている』
「へぇ、そうなんだ。じゃあ、ボクにも教えてよ」
『・・・・・構わない。後で小型録音機貸してくれ』
「いいよー」
その手の知識が豊富な三トリオが集った。三人の話を聞くと、こっちが変な気分になるような会話が絶え間なく繰り広げた。
「ねぇねぇ、死神君。一つ訊いてもいい?」
『・・・・・なんだ』
「蒼天って何か凄い事とか変わってることとかあるかな?」
殆んど蒼天は他の国と交流をしていないから蒼天の情報はネットでも載っていない。海のど真ん中にあるから船や飛行機ではないと行けないし蒼天の王、旅人さんが外交しに行けるのは特殊な方法でしているだろう。
『・・・・・変わってるところ』
そうスケッチブックに書いてから自分の国の特徴を捻り出そうと思考の海に飛び込む。
『・・・・・蒼天の民法は他の国とは異なっていること』
「民法?例えば?」
『・・・・・蒼天では近親結婚、同性愛結婚、一夫多妻制、一妻多夫制とかできる』
ハーデスがスケッチブックに書いた民法、第831~749条。婚姻に関わる法律を見た瞬間。
『『『『『はぁあああああああああああああああああああっ!?』』』』』
思わず大声で叫んでしまった。
「ちょっと待て!蒼天って同性愛結婚ができるのか!?」
「し、しかも・・・・・近親結婚って・・・・・」
「夢のハーレム、蒼天に行けば一夫多妻制ができるのかよ!?」
なんなんだ、蒼天って!そこまでフリーダムな国だったのか!?AクラスやFクラスの生徒達が怪訝にこっちへ視線を送ってくるが、俺達の話を聞いていたようでざわめきだしている。そんな時、学習室のドアが開き、女子が物凄い勢いでハーデスに飛び掛かった。
「その話は本当ですの!?」
『・・・・・誰だ?』
「私は清水美春です! 島田美波お姉様を心の底から愛している女ですわ! 先ほどの話は本当のことですの!?」
「ちょっ、美春!?いきなり現れてなに言ってんのよ!」
清水って・・・・・確かDクラスの女子だったな。こいつ、同性愛者だったのか・・・・・。
『・・・・・本当だ』
「お姉様!今すぐ私と蒼天へ移住しましょう!そこで幸せな家庭を作るのです!」
「イヤよ!ウチは普通に男の子が好きなんだから!子供だって作れないでしょう!」
『・・・・・女性器に男性器を生やす技術、蒼天にある』
「マ、マジで・・・・・?」
「お姉様!今の骸骨の文字を見られましたわね?私が豚野郎のビックサイズなアレを付けますのでお姉様は私の子を生んでください!」
「イヤァァアアアアアアッ!」
カキカキ・・・・・バッ。
『・・・・・まあ、蒼天にこれたらの話になるけどな』
興奮している清水と心底嫌がる島田を余所にハーデスはそう書いた。
「キミ達、少し静かにしてくないかな?」
そんな中、凛とした声が響き渡った。知的に眼鏡を押し上げるクールな声の主は久保利光のものだった。
「あ、ごめん久保君」
明久は彼にだけではなく、この部屋にいる皆に対して頭を下げる。ハーデスの国の法律に驚かされて大声を上げてしまったからな。申し訳ない。
「吉井君か。とにかく気をつけてくれ。まったく、姫路さんといい島田さんといい、Fクラスには危険人物が多くて困る」
危険人物が多いのは否めない。
「・・・・・ところで、だ。死神君。キミの国では同性愛結婚ができると騒ぎの中で小耳を挟んだんだが・・・・・。つまり、女性と女性が結婚しているように男性は男性と結婚しているということになるのかな?となると、男同士で結婚している者がいると推測するのだが・・・・・どうなんだね?」
久保の質問にハーデスは首肯する。
『・・・・・女性同士より少ないけど、二桁ぐらい男性同士で結婚した人間はいる。幸せそうに楽しそうに暮らしている』
「・・・・・そうか、情報提供ありがとう」
『・・・・・感謝されるようなことは言っていない。人は愛があれば性別なんて関係ない。俺はそう思える』
「・・・・・性別なんか関係ない、か・・・・・」
久保が妙に思い詰めた表情をしてハーデスの台詞を反芻していた。その顔を見ると・・・・・なぜだか鳥肌が立った。おかしいな。なんでだろう。
「骸骨野郎、良いこと言いますのね。少しは見直しましたわよ」
「ハーデス!余計なことを言わないでよ!ウチの人生が滅茶苦茶になるでしょうがー!」
「なんだか、島田は俺と似ているような・・・・・」
ここも騒がしくなったな。と、そう思っていると俺の視界の端に顔だけ半分出してこっちを見つめている木下姉が映り込む。結局、この騒ぎは鉄人が怒鳴りこんでくるまで続いた。
「ところで何か進展はあったか」
「ムッツリーニの情報網では俺達を脅す犯人は尻に火傷がある女だ」
「どうして尻に火傷がある女って知ったのか敢えて聞かないぞ。でも、そいつを確定するには・・・・・」
「ああ、女子の尻を確認する他ない。それができる唯一の方法は」
「覗きをするしかない、んだよね・・・・・」
いや、どうして犯罪の方へ思考が走る明久。
「ワン子達に調べてもらうのが定石だろ」
「悪いが直江。俺達は女子の協力は仰がない」
「はっ?」
「昨日、無実の罪を着させられて女子達から折檻されたんだ。あいつ等がそうなら俺達は本当にしてやろうと決めたんだ」
何が遭ったってんだお前らは?
「おい、変なことを考えるなよ?安全圏なところから解決できる方法があるのにそれをしないのは愚策もいいところだ」
「直江、お前は旅人さんと呼ぶ学園長のこと好きだよな」
唐突に不思議なことを聞く。本当にどうしたんだ。
「そりゃ、短くない付き合いをしてたから尊敬してるし慕ってるさ」
「そうか。俺もババア長と学園長のどっちがいいか選ぶなら今の学園長の方を選ぶな」
「坂本?」
「昨日学園長は自己責任するなら何をしても認めると言ってくれたんだよ。俺の考えを見抜いた上で黙認してくれるなら、堂々と事を起こせるってもんだ」
旅人さん! あんた、それでいいのか学園の風評とか気にしないのかっ!?
「くくく、面白い学園長だ。ババア長より好感度が高いぜ」
「おい、坂本。旅人さんを舐めてるなら・・・・・」
「そんなことできる相手じゃないことぐらい分かってる。俺だってあの男を逆らうことだけはしたくない。それよりは戦力が必要だから集めるぞ直江も手伝え」
覗きを片棒を担ぐ羽目になってしまうとは・・・・・! 俺も他人事ではないから坂本達に押し付ける気はなかったんだが・・・・・こんな手段を取るつもりはなかったのに。
「ただいまー」
「お帰り、どうだった・・・?」
「うーん、外見だけだとわかんないや。あの子が学園長だなんて誰も信じられないし」
「そう思うわよね。でも・・・・・アタシ達が見たのは」
「間違いなくあの学園長だったよね。いっそ代表に訊く?」
「・・・そうね。何か知っていそうだし訊いてみましょう」
そんなこんなで強化合宿の目的とする勉強時間や天国のような高級レストランごとくの料理を食べれた夕食タイムも終わって、いよいよ入浴の時間。着替えを持って風呂場へと向かう。
「いやー、美味かった美味かった!合宿所って割には高級な料理が食えるって贅沢だよな!しかも何度もお替りしていいって!」
「本当だよな。七面鳥が目の前に置かれたときなんて吃驚したほどだぜ!」
「美味しい料理が食べられると分かるとモチベーションも上がるよね」
楽しかった夕食の話をしながら階を降りて入浴所へと目指す。
木下優子side
クラスメートの女子達がお風呂に入っている間にケリをつけるべく代表にお願いした。それは死神に会わせてもらうこと。例え誰かに聞かれようといいように筆記用具とノートを持ち込んでハーデスがいる部屋へと向かう途中で・・・・・。聞こえてくる声に思わず足を停めてしまった。
「ふはは!相まみえたぞ学園長!さあ、我等と風呂に入ろうではないか!」
「僕も入るー!」
「はいはい駄目だぞユキ、男女が混浴しては。それにこの旅館には混浴風呂がないって」
「いやあるぞ?何ならそこで入ってみるか?今絶賛、俺しか入れない貸し切り状態の混浴風呂だ。誰も入ってこないぞ」
「おや、あるのですか。では、一緒に入りましょうか」
「まさか、弁慶の言ったとおりになるなんて・・・・・」
「でしょ?水着を着てれば混浴できるって」
「旅人さん、背中を流しますね」
「私もです」
「あ、あの・・・私もっ」
聞えてくる複数の声。これから会う人がお風呂に入っていくなんて、代表の話を聞いていないの?
「代表、死神くんと会える?」
「・・・・・大丈夫」
愛子の憂いを問題していない代表の気持ちに訝しんでしまう。だって、アタシ達が会う人はあの人でもあるのだ。それなのにどうして死神がいる部屋へと向かうのか。
「・・・ねぇ、代表。死神の正体を知っているのよね」
「・・・・・うん」
「なら、学園長と死神・・・どっちと付き合いたい?」
訊いてみれば代表は珍しく押し黙った。でもアタシの中でこれが決定的になった。学園長達の声が遠ざかっていくのを見計らって歩みを再度進め、誰にも見つからないように一段飛ばして階段を上がって三階に辿り着く。そしてどの部屋にいるのか分からないのに、代表は当然のごとく一つの扉の前に足を停める。ストーカーの才能があるじゃないかと思うぐらいピンポイントに。そしてあろうことかノックもせずに入るのだ。一瞬躊躇する私だったけど男子の部屋に入ろうとするところを見られるのは困るから中に入った途端、横の扉から上半身裸(浴衣は着ている)の学園長が出てきた。
「・・・・・会いに来るのは霧島翔子だけの話だった。どういうことか説明してもらおうか」
「・・・・・すみません」
代表の顔を躊躇なく鷲掴みにして問い詰める学園長。止めるよりも信じられなかった。どうしてここに学園長がいるのか、お風呂に入っていったのも学園長の筈。この人は一体何なの・・・?
「・・・・・」
愛子も驚いているというよりか目の前の学園長を見て唖然としちゃってる。心なしか顔が熱っぽくない?
「どうしたの愛子?顔が赤いわよ」
「ふぇ?え、えっと何でもないよ。うん、大丈夫っ!」
首を横に振って問題ないと素振りをするけれど、チラチラと学園長の上半身を見る愛子。大人の身体がそんなに気になるのかしら・・・・・?あ、代表が解放された。
「取り敢えず座れ」
「「は、はい」」
「・・・・・はい」
テーブルは隅に片づけられて二つの布団が並べられている。その上に腰を落として座ると学園長の口が開いた。
「用件は何だ」
「・・・・・えっとどうしてあんな変装をしているのですか?死神ハーデスなんて偽名で通ってまで」
「・・・・・ふぅ、学園祭の時からそんな疑問を抱いていたか」
っ、やっぱり気付かれていたんだ。でも、どうしてあれから追究してこなかったのかしら・・・。
「理由は色々だ。蒼天が開発した試験召喚システムを神月学園にも導入してから十年以上経った。王として藤堂カヲルを始め学園の中を視察目的で編入したんだ」
「松永さんもそうだってことですか」
「そうだ。燕は主に俺のフォローやサポートをする役割を担っている。その結果、学園祭中に不祥事件が起きた」
私達が不良の人達に誘拐された時の事を言っているんだと直ぐに悟った。
「二度も三度も藤堂カヲルは失敗を繰り返した事で、蒼天に一時的送還してあいつが戻ってくるまでは俺が代理として長の座に就いた。ここまでは知っているな」
「は、はい。ですが、もう視察をする必要はないんじゃないですか?学園長自身が神月学園を管理しているようなものですから」
「確かにその通りだが、教育者から見る視線と学生から見る視線は違う。そして一度決めたことを半ばで放り出すのは無責任な話だから継続している。俺が変装している理由は以上だ。今度は俺から聞くぞ」
何を聞かれるんだろうと緊張しているアタシ達に質問の言葉を投げてきた。
「あの時何で屋上にいた?」
「それは、誘拐されていたところを助けていただいたから、お礼を言いたくて死神と松永さんを探していました」
「そういうことか。別にお礼何て言わなくてもいいのに。で、今まで俺の正体を知ってしまったのに追及してこなかったのは?」
「死神が学園長だなんて信じられず、どうして正体を隠しているのか悩んでました。考えれば考えるほど疑問が増えるばかりで、死神の正体を知っている代表から教えてもらおうと思ったのですけど、やっぱり自分で訊きたくて」
理解を求めて説明したらあっさりと納得してくれた。
「分かってるだろうが、俺の事は誰にも言うなよ」
「弟の秀吉も知らないですよね?」
「俺の事知っているのはお前達三人と三年の小暮葵って女子だけだな。茶道部の雰囲気が心地いいからたまに顔を出してる」
上級生にも知っている人がいるなんて、と思っていたところで扉が開く音がして中に入ってきた女子、松永さんが私達を見て目を丸くした。
「え、どうして木下ちゃんと工藤ちゃんが?」
「俺の正体を知ってしまったからだ」
「ええっ!?完璧に正体を隠していましたよね!?」
「王の俺でも完璧じゃなかったってことだ燕。今し方、釘を刺しておいたから俺の正体はもう広がる心配はないから問題ない」
こっちも驚いていいかしら。
「まさか、松永さんと学園長は同じ部屋で?」
「そうだけど?」
「あのそれって、色々と問題あるんじゃないですか?」
「俺が燕を夜這いかけるとか?ないない、そんなことはしないさ。ま、逆にされる方が多いけどな」
逆って・・・・・!
「松永さん、あなた・・・・・」
「ち、違うよん!蒼天にいた頃は住んでいる場所は別々だったし王様に、蒼天でそんなことできそうなのは同じ王様達ぐらいだよ!」
「ああ、そうそう。俺は燕がそうだって言っていないぞ。早とちりするな。寧ろ燕は家の中じゃあ―――」
「プライベートな話をするのは禁止!」
顔を林檎のように真っ赤に染めて学園長に飛び掛かり口を抑え込む松永さん。
「おいおい燕。人前で襲ってくるなよ。もしかしてそういうプレイがしたいのか?」
「へ、変なこと言わないでください!家の中でもちっともそんなムードの欠片も作ったことが無いでしょう!」
「ふははは!敢えて作らなかっただけだとしたら?もしそんなムードを作ったら燕も流されてしまうんじゃないかぁ?」
「私は場の雰囲気に流れやすい女じぁないよん!王様だって、顔が美人で胸が大きい女性だったらいいんじゃないの? 実際、王様の周囲にはそんな女性や女の子が沢山いるんだし」
「うーん、スタイルがいい女なんて興味ないんだよなぁ。でも、敢えて強いて女の好みを言えば」
腹の上に伸し掛かる松永さんを抱えながら起き上がっては、両手を両手で掴み彼女の額と重なった距離感で学園長は真っ直ぐ視線を松永さんに向けた。
「俺の正体を知っていながらありのままの自分で話が出来て、一緒にいると楽しくて、たまに見せるちょっとした仕草が可愛い、とても魅力的な女がいいぞ燕?」
「っ―――――」
屈託のない笑顔で言う学園長の言葉とともに浮かべた表情はとても綺麗だった。思わずアタシはドキッとしてしまったのであった。松永さんもそうなのか、耳まで真っ赤になっていた。