バカとMMORPGと召喚獣!   作:ダーク・シリウス

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新しい同棲者

 

 

各某県某所で起きた大震災に遭った避難者を蒼天に避難させて数日後の夜。多忙に追われていた全ての作業を終えた頃には強化合宿の期間は終わっていた。川神市の親不幸通りにある家に帰宅した時。

 

「あー・・・・・燕、伝える状況じゃなかったから伝えそびれたけど紹介する人物がいる」

 

「え、誰です?」

 

家の中に入りながら歯切れ悪そうに言う王は、燕と一緒にLDKへ足を運び・・・椅子に座って紅茶を飲んでいた水色の髪の女性がこの家の主の帰宅に気付き、隣にいる黒髪の少女の存在に苦笑を浮かべる。

 

「初めまして、ね。イッチョウちゃん」

 

「えええっ!? イ、イズさん? どうしてここに!?」

 

「震災地に住んでいたんだ。津波に呑み込まれかけていた家から助けて以降はこの家に居てもらった。理由はわかるよな」

 

「・・・・・王様のことですよね」

 

その通りだと肯定する王は、こればかりは参ったと頭を掻く。

 

「彼女のことは一応信じるが、もしもと言うことがある。家も仕事も失ってしまった彼女は蒼天に移住してもらおうと提案したんだがな」

 

「・・・・・ここにいるってことはそれを拒絶したってこと? そうならどうして?」

 

燕の問いにイズは申し訳なさそうに言葉を返す。

 

「ハーデス、ううん。気心が知れてる彼と復興が終わるまで一緒に住みたいってお願いしたの」

 

「それこそどうしてって気になるんだけど、両親は?」

 

「・・・行方不明になってるの。津波も私がゲームから強制ログアウトされるまでは気付かなかったわ。友人とも連絡が付かないし。生死問わず確認できたらすぐに彼に報告される手筈になっているから、それまでいさせてほしいとお願いしたの」

 

「ゲーム内でとはいえ、一緒に遊んだ仲だから放っておけない理由もある。被災者達を蒼天に避難させたからって完全に終わったわけじゃないから蒼天も行方不明者の捜索だけは続けている。その中に彼女と繋がっている者がいれば助けなきゃならないという事だ燕」

 

筋は通っているかもしれないが、それなら別にこの家に住まなくてもホテルで泊るか部屋を借りて待っていてもいいんじゃないか、という思いがないと言えば嘘になる燕には選択肢がない。全ての決定権は燕が慕っている王が握っているのだからだ。

 

「わかったよん。でも、見つかった後はどうするの?」

 

「川神市のどこかに住んでもらう予定だ。ここは治安が悪すぎるからなぁ」

 

「そんな場所に家を構えるなんて案内されたときは吃驚したわ。ヤクザの人がたくさん来て頭を下げられた時は特に」

 

「お前の外出の際は他の悪い連中から守ってもらうよう頼んだから当然だろ」

 

「ヤクザと繋がりがあるの?」

 

「ちょっと、一騒動を起こしたのは事実だな」

 

その話はまだ私も知らないなぁと思う燕だった。

 

「と言うわけでだ燕。短くて半年、長くて一年以上は一緒に同棲することになったイズこと―――」

 

「杜崎瑠海よ」

 

「松永燕です。よろしくねー」

 

二人が現実でも知り合い握手を交わした。

 

「燕ちゃんって呼んでいいかしら。ちょっと一言だけ言わせて?」

 

「もちろん。私も瑠海さんって呼びますね。それで何かな?」

 

「―――私どうやら現実でも負けたくないことが出来ちゃったみたいだから、燕ちゃん相手でも遠慮しないわよ」

 

「ほほう・・・・・どんな勝負でも受けますよ私は?」

 

微笑みながら繋ぐ握手に力が籠り、二人の間に火花が見える幻覚に王は心底不思議そうに小首をかしげる。

なに張り合ってるんだこの二人は? と・・・・・。

 

 

 

夕食を終え、小休止してからゲームをする前に燕と瑠海とテレビのニュースを見ていた。三日前からテレビや新聞は日本で発生した地震で持ち切りだ。

 

『各某県の大震災から四日目の今日。某県の住民達が蒼天に避難していますが避難者の状況が今だ分かっておりません。私達政府は避難民達の詳細を蒼天に問い合わせていますが返答がなく「対策本部を設置している暇があるなら復興に全力を注げ」と質問に応じてくれませんでした。ええ、勿論やりますとも。しかし、できれば会見を開いて避難民達のことについて語り合いたかったものです』

 

『しかし総理、倒壊して住む家を無くした避難民達の対応はあの時すぐにできていたのではないのでしょう? ライフラインが寸断した町を復興させるよりも先に、避難民達の生活を守るため蒼天の王が行動をしたものだと思います』

 

『ええ、彼等の行動力に私も舌を巻くほど驚かされましたよ。こちらが自衛隊や緊急救助隊員を派遣するよりも自衛隊500万を総動員して迅速な活動をした。海のど真ん中にある国から来た彼等に頭が上がりませんよ』

 

『総理、現状の津波の被害に遭った各某県の復興については蒼天も介入するのですか?』

 

『いえ、ありませんよ。寧ろ先程申しましたように復興に全力を注げと蒼天から促されたのは、日本だけで復興することなのです』

 

『今回の自然災害時の対応については? 国民からは「自分達の国なのに外国の人達に助けられている間、政府の対応が遅すぎる」「外国の人達が全員土下座して何も非がないにも拘らず謝罪したのに政府は謝らないのか?」との声が挙がっています』

 

『それについては私共も深く痛感しています。この国に住む国民としてこの国の上のトップに立つ者として対応が遅れたのは真に申し訳がないと心の底から思っています』

 

『今回の救助活動は蒼天の自衛隊だけで行われ、日本の自衛隊は一人も救っていませんが感謝したのですか?』

 

『今は対応に追われ多忙な状況でございます。正式な会見で蒼天に―――』

 

『蒼天の王も多忙な日々を送っていると思います。そんな中で各某県の住民達の為に王自ら駆け付けたというのに、総理はどうしてそんな悠長にしていられるのですか? 彼等の迅速は今じゃ世界一と謳われています』

 

『その通りですよ。政府も自衛隊も蒼天に見倣って迅速的な対応をするべきではないのですか? 昔、発生した大規模の大地震時は日本の自衛隊ではなく蒼天の王と自衛隊がいの一番に駆け付けてた記録が残されています。政府と自衛隊は何一つ進歩していないのではないのですか』

 

『総理、このまま日本は蒼天におんぶにだっこをしてもらうばかりですか?』

 

それ以降、総理に向かって質問攻めを繰り返され見るに堪えないと電源を切った。

 

「総理、大変な目に遭ってるわね」

 

「それが上に立つ者の運命みたいなもんだ。いつか俺もあんな風にされる側だぞ」

 

「批判よりも賛美の嵐の方がすっごく多いですけどね? 避難者の皆はどうですか?」

 

「変わった環境にやはり戸惑いを感じているな。学生達は一週間以内にでも蒼天の学校に通わせるが、蒼天に馴染んでもらうには時間が必要になる」

 

「整った環境の中での生活も直ぐには安心できないですか」

 

「それでも日本の簡易避難生活よりはいい方だろう。寝てばかりで何もせず先が不安な生活を送るばかりよりは、仕事がある安定した生活の中は人らしく生きられる」

 

「結構な人数を急に抱えても問題ないの?」

 

「建物だけは何時でも収容できるように増築を繰り返していたから問題ないが、仕事の方は慎重に選り抜きしている。仕事ができない体の避難者もいないわけじゃないしな」

 

机の上にあるその避難者の名簿の書類の四つの束に手を置いた。

 

「そうですか。で、王様自身は仕事終わったの?」

 

「もう終えたぞ。海に面した町に住んでいた住民だから割と簡単だった。彼等の仕事のスキルをそのままフルに活用してもらう。後はそれを整えるのが桃香達の仕事なわけ」

 

書類が光に包まれて机の上から消失した。王しか知らない御業で四人の王へそれぞれ転送したのだ。

 

「震災の地に残した人達の方はもう手を出さないんですか?」

 

「地震の影響でライフラインが寸断されているからな。こういう状況になることを想定して作った船を数隻配置してある。復興が終わるまで浴場と食事は問題ない筈だ。それに蒼天だけでなく九鬼家も動くみたいだから負担は半々だ」

 

だから問題は少なくともないのだと頷く王。久々にそれぞれの自室へ入り、ベッドの上で寝転がってハードのヘッドギアを被り電源を入れるとNWOの世界へと突入する。ゲームの世界に入った瞬間、布団から起きて豊作になっている畑にいるリヴェリアやオルト達と挨拶を交わす。

 

「ただいまー」

 

「ムムムー!」

 

一週間日ぶりの再会を喜ぶオルトを皮切りにゆぐゆぐ達もこっちに寄ってきて一気に抱き着いてきた―――って。

 

「待て待て順番だお前等! 流石に重い重い! クママ、走って飛びつく―――!」

 

ドシーンとタックルしてくるクママによって俺は皆に押し潰される形で倒され、やっと起き上がれた頃には数分ぐらい経過していた。ようやく皆とハグをした頃にはフレンドのメールが届いた。

 

「ペイン達か」

 

久しぶりにインしたことを気付いたようだな。フレンドを見ていたのか? メールをそれぞれに送り返してやっと改めて畑を見たら・・・・・。

 

「おお、壮観な光景になっているじゃないか」

 

一週間日もあれば芽を出す種とすくすく成長した苗木が畑を埋め尽くそうとしていた。水晶のエリアで採取したアイテムも日の光を浴びて輝いてるな。

 

「俺がいない間に頑張ってくれたな。ありがとう」

 

「ムムー!」

 

当然だ! とばかりに誇らしげに自分の胸を叩くオルトと微笑むゆぐゆぐに

手? と上げるオレア。サイナには頭を撫でながら感謝の言葉を送ると、三人も撫でろとばかり頭を突き出してくるので感謝を込めて撫でまくった。

 

「サイナ、異変とかはなかった?」

 

「はい、問題ありませんでした。フレイヤが空腹の際は私が使役し食欲を満たす程度です」

 

「俺が居なくても独自に動けるのか。分かってたけど万能だなサイナ」

 

知性(インテリジェンス)の塊ですから」

 

それを言わなきゃインテリジェンスなんだがな。自己主張したい性格なのかなこのご奉仕メイドロボは。

 

「久々に戻って来たけど、次のイベントまでは生産でもするか。ゆぐゆぐ、ヒムカは地下の工房でそれぞれ生産の作業をしててくれ。ルフレも料理を作って欲しいかな」

 

「―――♪」

 

「ヒム!」

 

「フム!」

 

材料? そんなの集めてるに決まっているだろ? 俺がログアウトしてる間にサイナには生産系スキルを持つヒムカ達のために素材を集めてもらっているんだからな。

 

「サイナも作ってみたらどうだ? 一つぐらい知性(インテリジェンス)溢れる作品あってもいいと思うが」

 

「かしこまりました。マスターに相応しい知性(インテリジェンス)の物を作り上げて見せましょう」

 

「最高の知性(インテリジェンス)を頼む」

 

どんなものが作られるのか楽しみだな。・・・・・そうだ。

 

「マモリー」

 

「あーい!」

 

呼べばトコトコと近寄ってくるマモリにほっこりしながら問いかけた。

 

「お前の手伝いとやらは皆の行動を撮影と保存ができるのか?」

 

「あい!」

 

手を挙げた。できるのか? じゃあ、お願いしようかな。

 

「保存したら俺に言ってくれ。俺も見てみたいからさ」

 

「あーい!」

 

うん、可愛いな。

 

「ハーデス!」

 

俺も生産でもしようと立ち上がった時に久方ぶりなペイン一行が入ってきた。久しぶりーと手を挙げるとフレデリカから強く抱きしめられた。

 

「一週間ログインしてなかったから心配したよー!」

 

「ああ、悪いな。野暮用があったから遊ぶ暇なかった」

 

「もしかしてお前震災に巻き込まれていたのかよ? テレビじゃすげー話題になってるぜ」

 

「詳しくは言えないが震災に関わっていたのは確かだな。その前は学園の行事で強化合宿に行ってた」

 

「なるほどね。それじゃあゲームできるわけないな」

 

「とにかく君がまたこのゲームに来てくれただけで安心したよ。フレデリカが毎日ログアウトする前は必ずここに通いつめていたからね」

 

あらやだ、うちの奥さん可愛い!

 

「心配かけたな。現実じゃあお前の連絡先がわからないから伝えることが出来ないし」

 

「・・・・・じゃあ、連絡先交換しよ」

 

こうしてフレデリカの携帯のメールアドレスと交換することになったわけであった。

 

「夫婦の感動の再会に水差すようで悪いが、ひとつ教えてくれね?」

 

ドレットが畑の―――水晶樹の方へ見つめた。

 

「あのデカい五本の木は世界樹だとしても、水晶の樹は初めて見るな。どこで手に入れた?」

 

「1000M以上マグマを潜水しないといけない場所ですが何か」

 

「俺達には絶対無理だな」

 

【マグマ無効化】はともかく【海王】を取るためには一苦労するだろうな。

 

「連れていけなくはないけど・・・ああ、ラプラスって会った?」

 

「何度もフレデリカの付き添いで来てるから会っているよ。聞けば魔法使いの最上位、神の名が付く職業の一つらしいね。色々と教えてくれたよ。剣神という職業もある話を聞けてさらに上を目指せる意欲が高まった」

 

「それは重畳。で、ラプラスと俺の間で自力以外他のプレイヤーを案内してはいけない約束を交わしてしまったんだ。だから連れていけない」

 

「じゃあどんなモンスターがいたんだ?」

 

それぐらいならばと水晶系のモンスターのことを教えた。未知のモンスターには大変興味あるようだが、マグマの中を泳がないといけない難解をどうにかしないとな。

 

「どうやってハーデスはマグマの中を泳ぎ続けられるようなったの?」

 

「【海王】ってスキルだ。潜水している間は溺死しなくなる水場限定のスキルだ」

 

「マグマは水じゃねぇぞ」

 

「水もマグマも液体状だろ。身体を突っ込めて泳げるならそこは水場も当然だ」

 

「なんて暴論を言いやがるんだこいつ。で、一応聞くけどそのスキルはどうやって手に入れた?」

 

「周回&タイムアタック。一定時間内にボスモンスターを所定の数だけ倒すことと、一定の時間内にダンジョンをクリアすること。具体的に言えば1分30秒以内にボスモンスターを10体倒せってこと」

 

出来るものならやってみろと込めて情報提供した。ペイン達は少し静かになったのが不思議だけどな。

 

「そこまで教えてくれていいのか?」

 

「俺のせいでフレデリカもお前達も迷惑をかけたお詫びだ。ああ、地底湖に潜るとボス部屋に続く迷路なルートがあるから、そこは自力で辿り着いてくれ」

 

「地底湖にボスモンスターが? 湿地帯のエリアに入るためのボス以外にもいたのか」

 

「俺とイッチョウしか知らない情報だからなー。湿地帯エリアの方だけ情報を流したからいい隠れ蓑になった」

 

「ハーデス、意外と狡猾だね。ボスの強さって?」

 

「今のペイン達ならワンパンとまでは行かなくないけど、【潜水】と【水泳】スキルをカンストしてからじゃ駄目かな? 一週間ぐらいかけて」

 

そうまでして未知のエリアに行きたいかはペイン達次第だ。

 

「後は、ラプラスに連れて行ってもらうかだけど。あのエリアの他のプレイヤーの侵入を不可に決めた張本人が許すかどうかだ」

 

「許しを得たらいいんだね」

 

首肯する。ペイン達はラプラスを会いに地下工房へと向かって行くがフレデリカは俺の隣に居座る。

 

「・・・・・本当に心配したんだから」

 

「悪かったって」

 

俺に金髪の頭を撫でられる彼女はギュッと俺に抱き着き、そのままペイン達が断られて戻ってくるまで離れなかった。なので詫びとして俺は―――。

 

「PK勝負?」

 

「ああ、お前達が数週間後には辿り着くだろうエリアの代表的なモンスターを召喚して戦わせるためな。手に入れたばかりのスキルだから召喚時間も強さも低いけど、事前の情報を得る意味も兼ねてPKだ」

 

「お前に直接攻撃するんじゃなくて、時間制限で召喚するモンスターと戦えってことか」

 

「だから第2エリアに来たわけか」

 

ドラグの言う通り。あれから第2エリアに移動し、ペイン達と対峙していた。俺の提案に賛成する事を言ってくれたので三体同時に召喚する。

 

「【金晶戟蠍(ゴール・D・スコーピオン)Ⅰ】【黒晶守護者(ダーク・ゴーレム)Ⅰ】【緋水晶蛇(ヨルムンガンド)Ⅰ】」

 

煌めく金色の巨躯に剣のようなトライデントの尾を持つ巨大な蠍、全身が漆黒の水晶の巨大なゴーレム、緋色の巨大蛇をしたら、四人は呆然と見上げた。

 

「そんじゃあ、時間もないし実感してもらおうか」

 

蠍はペイン、蛇はドレッド、ゴーレムはドラグに嗾けた。フレデリカは観戦だ。だって魔法抵抗力ある水晶のモンスターだから相性悪すぎるもん。

 

「クッソ硬ぇっ!!」

 

「これでレベルが低いって冗談だろ!」

 

「【断罪の聖剣】!」

 

トッププレイヤーとして初見のモンスター相手に後れを取らないが、如何せんどうやら物理攻撃にも耐性が高いみたいだな。ペインのスキルでも3割しかHP減ってないし。

 

「・・・・・正直、あんなのと戦わなくてよかったかも」

 

「俺も正直、よく勝てたなーって思うよ」

 

あ、1分経った。召喚したモンスターが消失してペイン達はこっちに戻って来る。

 

「今の手持ちのスキルじゃああの水晶のモンスターを倒せねぇわな」

 

「俺の武器も全然ダメージを与えられなかったのが痛すぎる。あんなモンスターってアリ?」

 

「もう少し戦いたかったな。そうすれば倒せる好機が見えた気がする」

 

おっと、もうペインは勝つ気満々なようだ。末恐ろしいプレイヤーがいたもんだよ。

 

「ドレッドの場合はオリハルコンあるんだから鍛冶師に作ってもらえば?」

 

「お前の知り合いの鍛冶師にでもか?」

 

目の付け所がよろしいな。最大のチャンスだぞ?

 

「神の名がついている称号の一つ、鍛冶職の最上位、神匠に依頼する額が1億のところ、二回まで無料で最高の武器を作ってくれるNPCを抱えていますがどうする?」

 

「マジでっ!?」

 

「そのNPC、オリハルコンでも武器を創れたり?」

 

「古匠でもいけるかもしれないけど、性能を求めるなら神匠の方がいいんじゃないか?」

 

考え込むドレッドはその後、ユーミルにオリハルコンの武器を作ってもらうことに決めたのでドワルティアへ向かった。

顔パスで王城の中を素通りーーー。

 

「おい、ここってプレイヤーが入れる場所じゃなかったはずだぞ」

 

「俺、王様とマブダチ」

 

「一体どうしたマブダチになれるんだよお前は」

 

「鍛冶師のクエストとそのNPCと交流していたらこうなった。ゲームの中でも交流は大事だよ? スキルと称号かたくさん手に入るしな」

 

「そんなんで玄武と戦うまで第3エリアすら碌に進まずに強くなっていたのかよ・・・・・信じられねぇ」

 

因みにだが。

 

「カミングアウトさせてもらえると、称号だけで30はある」

 

「「多すぎだっ!!」」

 

「ハーデスを除けば、たくさん称号を手に入れてるプレイヤーでも15に届く辺りなんだが。凄いなハーデス」

 

まだそれしか? 遅れてるなぁ・・・・・俺が速すぎるだけなんだろうか。それとも他がレベル上げとか攻略とかに夢中だからか?

 

エレンがいるであろう王座の間に入ろうとすると。

 

「王は王弟と工房におられます」

 

「工房?」

 

「あなた様が来られたら案内するようご命令を承っております。こちらです」

 

衛兵二人が案内する背中についてく。神匠の工房とはどんな感じなのかイズとセレーネが見たかったと残念がるだろうな。静寂に包まれながら城の奥へと、地下へと続く螺旋階段を降りていくと淡い火の光が扉がない出入り口から漏れていた。

 

「こちらです」

 

出入り口の左右に分かれて止まる衛兵に催促される形で中に入る工房の中は・・・・・。

 

まるで巨人が鍛冶をするために造型された巨大な炉と、その中で荒々しく燃え盛り続ける業火の炎。床に無数の、それも古い切り傷が刻み込まれており、壁に飾れてる風に掛けられてる数多の鍛冶道具に囲まれてる二人のドワーフがトンテンカンと鎚を振るっていた。

 

「おう、やって来たかドワーフの心の友よ! だが少し待て、今いいところなのでな!」

 

「・・・・・謹聴」

 

黙って見聞していろ、と言ってることをペイン達に教えてから・・・・・俺達は1時間以上も待たされた。何を打っていたのかさておき、本題に入らせてもらおうか。

 

「待たせたな!」

 

「本当にな。何を作っていたのかあとで聞くけど、ユーミル。友達の武器を打ってくれないか? 依頼料は俺持ちで頼める?」

 

「・・・・・後で、今は話だ」

 

エレンが話を切り出した。

 

「ドワーフの心の友が採掘した水晶の使い道がわかったぞ。あれは熱しても形を変えられず、そのままで加工するしかない。装飾品の素材もいいところだ。ただ、ハンマーと盾にならば用意できるぞ」

 

「それなら試しに・・・・・作ってあったり?」

 

「当然だ。見ろ」

 

 

『クリスタルハンマー』

 

【STA+50】

 

【攻撃拡大】

 

 

『水晶盾』

 

【水晶壁】

 

【VTI+30】

 

スキルを発動したプレイヤーのHPと同じHP量の壁を半径5メートル以内に出現させる。

 

 

なんか面白そうな効果がある。えっ? くれるのか? じゃ遠慮なく。

 

「装飾品としてなら?」

 

「魔力を蓄えてる水晶であるから、魔力を少しだけ高める物が作られる。首輪でも指輪でもな」

 

「・・・・・売れ行き良好」

 

それは何より。

 

「じゃあユーミル。例の装備は?」

 

「・・・・・神匠冥利尽きる依頼、感謝する。古代の装備、再び命を吹き込めた」

 

それを受け取った瞬間に、命の息吹とも思える熱波が襲い掛かってきた。マグマを切り取った装備という感想は同じく抱かせてくれて、鎧と足具がマグマの輝きを煌々と放っており、装着してる俺に熱さを訴え掛けているように感じてならない。

 

 

『天地開闢・人災』

 

【紫外線】

 

【破壊不可】

 

【VIT+55】

 

視界に入る対象全てに不可視の炎上ダメージを与える。

 

 

『天地開闢・地災』

 

【融解】

 

【破壊不可】

 

【VIT+40】

 

半径10メートルのマグマフィールドにいる対象と装備の耐久値を減少する。

 

 

鎧と足しかなかった装備がこうも生まれ変わるのかっ。

 

「・・・・・これは余り物で作ったサービス」

 

「はい?」

 

 

『天地開闢・天災』

 

【終焉】

 

【VIT+30】

 

十秒間、対象のバフとスキルを全て封印することが出来る。三十分後再使用可能。

 

 

後からを渡された頭用のフルフェイスマスク。地龍の顔を彷彿させるそれは、依頼した装備に合うよう追加として創ってくれたのかもしれない。スキルも時間は短いながらもかなり有効的だ。

 

「因みにどうして地龍の顏みたいに?」

 

「・・・・・この地で巡り合ったモンスターを一つにしてみたかった」

 

「なるほど、格好いい装備をありがとう」

 

地龍とはいえ、龍の顏は格好いい。満足にインベントリ、アイテムボックスに仕舞った。フレデリカ達にお披露目するのはまだ早いからだ。

 

「それで、本題に戻させてもらうけど友人にオリハルコン製の武器を作ってもらえないか?」

 

「・・・・・オリハルコンだけでいいのか」

 

「どういうことだ?」

 

ドレッドの疑問にエレンが答える。

 

「オリハルコンだけでも強い武器は完成する。それは確かだが、しかし素材も用意できればさらに強力な武器に作れると兄者が言っているのだ」

 

「なるほど、そういうことか。でも、そんな素材は手持ちにないからな・・・・・リヴァイアサンから素材が出るならそれまで保留って出来るかハーデス?」

 

「ユーミル、それでもいいか?」

 

「・・・・・構わない」

 

今すぐに作ってもらわず後の結果を確認してからにするドレッドの用件は終わった。

 

「そうそう、もののついでに相談だけどさ。これで面白いもの作れる?」

 

金晶戟蠍(ゴール・D・スコーピオン)黒晶守護者(ダーク・ゴーレム)緋水晶蛇(ヨルムンガンド)の素材をユーミルの前に出すとすぐ鍛冶師の手が伸びた。

 

「・・・・・水晶、のモンスターの物か。どんなものにする要望は?」

 

「うーん・・・・・二対の大盾を俺の意思で動かせる付属品みたいな?」

 

伸縮自在な蠍の尾を見てすげーと思ったのが第一印象だったからな。そんな装備にしたいのかと言われてもまだ思い浮かべられていないんだよな。神匠ユーミルの腕に任せるってことで。

 

「・・・・・やってみよう」

 

「もっとこれだ! って言えたらいいんだけど悩ませる依頼でごめんな」

 

「・・・・・新しい武器を生み出すのも鍛冶師として当たり前のことだ。人の意思で動く装備、それだけの要望があるならば後は創るのみ」

 

やだ、なんか格好いい! 流石職人! 俺も見習いたい!

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