バカとMMORPGと召喚獣!   作:ダーク・シリウス

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情報と交渉

改めて生産活動をしよう、そう思っていたのにヘルメスからコールが届いた。

 

「久しぶりヘルメス。どうした?」

 

『どうしたもこうしたもないわよ。またとんでもないことをしたようだから詳しく知りたいのよ。あなたの従魔の情報が欲しいと知らないのに教えられないから大変なのよ』

 

「悪いけど教えられないんだよなー。厳密に言えば、教えても他のプレイヤーは絶対に情報を買っても損するだけの理由があるからで」

 

『あなたしかできないことなの?』

 

「もう俺でもできないからだ。それでも新しい従魔のプロフィールが欲しいのか?」

 

『聞くけど可愛い二人の従魔って樹精?』

 

「そうだけど」

 

『うーん・・・・・ちょっと紹介してくれる? 紹介料だけでも払うからさ』

 

肯定してサイナに向かわせた。来るまで丸太を削ろう。木工プレイヤーにチェーンジ!

 

―――数分後。

 

「マスター、お連れ致しました」

 

「おー、来たか」

 

「・・・・・何してるの?」

 

「木彫りスタンプの製作中」

 

まだ完成には程遠いがな。大分形になって来たところにヘルメスが上がってきた。

 

「いらっしゃい。ペイン達以外ではヘルメスが初めての来客だな」

 

「そうなんだ。それはラッキーかな。早速で悪いんだけど新しい従魔のこと教えてくれない?」

 

「ん、こっちだ」

 

畑の方へ案内する。思い返せばすっかり町にある畑より広くて種類も豊富になってしまったな。そこには農作業しているオルト達が居てその前にある広い庭には寛いでいらっしゃる4体の神獣、自由気ままに空を飛ぶアイネとフレイヤ。追いかけっこしてるクママ達に縁側で日光浴をしてる植物系のゆぐゆぐ達。

 

「・・・・・凄い光景ね」

 

「これからもっと増えるだろうさ」

 

「でも、テイムする上限が超えてるでしょう? どうして?」

 

「ああ、テイマーの最上位職になったからだ。その名前は神獣使い。制限がなくなって無限にテイムできるようになった」

 

「神獣使い、やっぱり神獣をテイムすることで転職できるのね?」

 

「ちょっと違うな。神獣達曰く、テイマーでも神獣をテイムも使役もすることが出来ないんだ。あくまで神獣の恩恵を享けるか、協力と言う形で使役に成り立つらしい。だからそこにいる神獣達はこの場に留まっているだけでいつの間にかいなくなるかもしれない」

 

あの巨大な猫も? ヘルメスのその問いに頷く。

 

「名前はネコバス。戦闘力が0の代わりにプレイヤーを他のエリアに乗せて運んでくれる神獣だ。ステータスも見るか?」

 

「差し支えなければお願い」

 

見せたら見せたでヘルメスの目が見開いたがな。

 

「本当に乗り物に関するスキルばかりね。これ、移動手段として商売したら絶対儲かるわよ」

 

「実際に乗って俺も実感したぞ。中は毛皮で出来てるからモフモフだ」

 

「の、乗せてもらっても?」

 

彼女の要望に応え、ネコバスに中を入れさせてもらった。ヘルメスの手を取って中へ招き座席に座らせる。

 

「わっ、わぁ・・・! 凄いふかふか・・・・・ちょっと失礼」

 

横になって体全体で毛皮を堪能し始める。俺もそうしよう。床へ静かに寝転がって毛皮の柔らかさを堪能する・・・・・。

 

「・・・・・話し合いよりもこっちの方がずっとこうしていたい気分だ」

 

「私もー・・・・・。これは売れる、本当に売れるわ・・・・・100万払っても乗りたがる魅力が詰まってるわ・・・・・でも話を聞かないとダメだわ」

 

起き上がるヘルメスに名残惜しく俺も起き上がる。

 

「次は樹精ちゃん・・・・・の前に空飛ぶ猫ちゃんの話を聞かせてくれない?」

 

「あれは魔王ちゃんが住んでいる冥界の絶滅危惧種の魔獣だ。これステータスな」

 

「ふむふむ・・・・・見たことも聞いたこともないスキルは猫っぽさを表しているわね」

 

「戦わせると強い。相手のステータスの半分を一時的に奪った本人と俺に加算するから相手を翻弄できる」

 

「私達でもテイムできるかしら?」

 

「今のところ無理だな。冥界に行かないと話にならない。俺は冥界へ行き来できるユニークアイテムを貰ったからいけるけど」

 

「随分と気になることを言ってくれるわね。見せてもらっても?」

 

深紅の宝石が付いた指輪を見せ、その効果も観覧させる。

 

「今度私達も冥界に連れて行ってくれない?」

 

「どうだろう、連れて行ってもいいのかな? 出来たら二回目に連れて行ってやるよ。さて、そろそろ出ようか。新しい樹精のところに」

 

ネコバスから出てゆぐゆぐ達のところへ足を運ぶ。

 

「い、衣装が凄いわね? 」

 

「どうにか修正してほしいと切に願うけど、してくれないだろうな。まず誰からだ」

 

「まずはこの水晶の子から」

 

「名前はクリス、種族は水晶で出来た樹木から出て来たから樹精だ。彼女は水晶と宝石を生む隠しダンジョンエリア、宝饗水晶巣という名前の場所で見つけた。これその時のスクショ、巨大な樹木の名前はクリスタリーウッドだ」

 

「うわ、凄い綺麗! 水晶の樹木とその樹木に実る宝石? 初めて見るわ」

 

「畑にも植えてあるから後で見よう。宝石も実っているから収穫時だ」

 

クリスのステータスも見せた後はウッドの紹介だ。

 

「名前はウッド、種族は大樹精。世界樹の苗木を5つオルトに任せたら、どうやら一つになってあの大きさに成長した後にウッドが生まれた」

 

「世界樹の苗木!? しかも5つって・・・・・イベントのパーティ部門で同列1位の報酬で?」

 

「よくわかったな。その通りだ。他の4人はファーマーをする気が無いから俺に押し付けたんで、代わりに畑に植えたらあんな感じになった。因みに貰えたのは勇者の称号を持つプレイヤーのみな」

 

「なるほど・・・・・これは入手が出来ないのも頷くわ。勇者になる方法って?」

 

「ベヒモスとジズ、リヴァイアサンを相手にソロか2パーティ以下で倒すこと」

 

あ、もっと無理と思っただろう。ヘルメスの顏にもそう浮かんでいるのがまるわかりだった。ステータスも見せて、うん? と唸らせた。

 

「豊饒ex? これってどんな効果?」

 

「まだ試してないんだ。推定だと恐らく畑の高級肥料より優れた効果を与えてくれるんじゃないかって思ってる」

 

「一理あるわね。何たって豊饒だもの」

 

従魔に関して教えられることは全部教えたつもりだ。確認取れば彼女も大丈夫だと了承したことで次は作物の方へ案内する。

 

「色んな作物を育ててるのね。あれ、これ何?」

 

「エルフのイベントで手に入った茶葉の苗木から育てた」

 

「お茶が飲めるの!? まだ誰も見つけていないレアものじゃない!」

 

「続いてこれ、水晶樹のエリアだ」

 

「宝石が実る樹木なんて信じられないわね。採取した宝石の使い道は?」

 

「まだなんとも。クリスの宝石彫刻で加工できるらしいけどな」

 

それも試してすらいない。今後の楽しみってことでやってもらうけどね。

 

「水晶樹の素材は?」

 

「丸太の状態ならある」

 

「・・・これ本当に樹木? 水晶のように透き通ってる」

 

「これを木彫りにしたら樹木じゃなくてクリスタルで彫刻したと勘違いされるな」

 

「それでも高額で買われる価値はあるわ。この素材、あなたの独占状態?」

 

肯定する。来られるようになれば独占ではなくなるが、今のところ俺の独占してるエリアだ。

 

「マグマの中を1000メートル潜水できれば仲間入りだ」

 

「無理、絶対に無理。そんな方法があるはずがない」

 

「【マグマ無効】のスキルを知らないのか?」

 

「それはこっちも情報を得てるけど問題はマグマの中を泳ぐことよ。装備の耐久値が減るし、息も続かない」

 

ますます不思議だな。まだ解らないのか?

 

「情報屋としてまだまだ行動力が足りないな。そのスキルと水中呼吸薬があればクリアできるだろ」

 

「あっ!?」

 

「装備の耐久値に関しては装備を外せばいいだけだ。マグマの中にはモンスターはいないんだからな」

 

俺からのヒントを得てそわそわし始めるヘルメス。

 

「そ、その情報を売ってもらっても・・・・・?」

 

「新しい従魔の情報と異なる情報なので売れませーん。最低限、未払いの金も全部回収させてもらうまでは絶対に。身内に試させたり情報公開したら縁を切る。最悪BANの覚悟しろよ」

 

「うみゃあああああああああああっ!!」

 

というか、情報だけで食っているギルド、クランじゃないよな?

 

「タラリアって人数少ないのか?」

 

「・・・規模的に言うと中の下ってところ。クランのリーダーが前線で攻略してるし、情報は買うだけじゃなくて、自分たちでも集めてるし、検証したりする人員も必要だから」

 

「戦闘員もいるんだな。ラヴァ・ゴーレムの溶鉱炉でも売れば高額になるだろうに」

 

「そればかりしてると、情報が集まらないわよ」

 

ままならないなぁー。

 

「あなた、お茶が入りましたよ」

 

「え?」

 

「ありがとうリヴェリア」

 

ヒムカ特製の湯飲みから茶の香りが立つそれを2つ分リヴェリアが用意してくれた。ヘルメスにも渡され茶を飲む。

 

「んー・・・美味しい。これは畑の茶葉からか?」

 

「いいえ、これは送ってくださったエルクさんから受け取った茶葉です」

 

「あの人から? 茶木の畑の方は?」

 

「ウッドドラゴンの力によって元通りに。そのお礼として最高級の物をエルクさんが定期的に送ってくださるそうです。どう扱おうと好きなようにしろ、と」

 

最大級の恩返しってことなのかな。なら一部だけ皆にも分けてやろう。独占は駄目だからな。

 

「・・・・・ねぇ、ちょっと。どういうこと・・・・・?」

 

「どういうこと・・・・・? その意味は?」

 

聞かずにはいられない、と鬼気迫る雰囲気を纏うヘルメスがこの場から去るリヴェリアと俺を交互に見る。

 

「彼女、親しみを込めてあなたって呼んだけど、もしかして結婚してるの?」

 

「あれ? リヴェリアのような存在と結婚できることを知らないの? 情報屋が?」

 

「―――――」

 

ヘルメスが石化した幻覚を見えた。

 

「しかも神獣使いになると従魔とも結婚できるみたいだぞ」

 

次の瞬間、ホームを揺らすほどのうみゃああああああ! と猫の鳴き声が聞こえたのだった。後で聞かされる結婚したらどんな感じになるか、俺はこう答えた。

 

「実際に結婚してみた方が早くないか? お前に結婚願望があるならさ」

 

「ふぇっ!? そ、そんな結婚なんて簡単に・・・・・!!」

 

以外と押しに弱いようだヘルメスは。

 

 

・・・・・。・・・・・。・・・・・。

 

・・・・・。・・・・・。

 

・・・・・。

 

 

羞恥心で顔を赤らめた来訪者がいなくなったことで生産活動を再開する。木彫りに集中できる時間はとても大事でやっとオルトの姿をしたスタンプが完成した。次はゆぐゆぐの等身大に乗り出して半日が経過した。細部まで再現、拘って削り作った等身大は本人と横に並んでも瓜二つだ。我ながら上出来だ。

 

「ふむ、面白いことをしているのだな」

 

「ラプラス」

 

そう言えば久しぶりにラプラスも会ったな。傍にいるゼロと一緒に挨拶すると軽く会釈する彼女は等身大のゆぐゆぐを見る。

 

「完成度は高いが、やはり木を削ったままの色では少々味気がないのは残念でならないな」

 

「しょうがない、それが木彫りというものだ。錬金術でもそれはできないんじゃないか?」

 

「・・・・・ふふっ、よくぞ言ってくれた。我が錬金術に不可能などありはしないのだ!」

 

あ、出来ないだろうという言葉を待っていたんだな? そんで自慢したかったな? この魔神さん。

 

「その昔、手持ち沙汰な私はあらゆる技術と経験を糧にして来た。その一つに木彫りとアートを極めてみせた。だが―――物はいずれ劣化して朽ちる運命。石像もやがては風化して消える。ならば人々の心と記憶の中に一生残り続けるものを作ればよいのではないかと考えついた私は、ある魔法を編み出したのだ」

 

「錬金術関係ないやん」

 

「―――実際、当時のマスターは芸術・美術の才能はまったくの0でして、人々の記憶にはマスターの凄惨な作品の印象しか後世に残りませんでした」

 

「シャラアァアアアップ!!」

 

自分のドールにもダメだしされる作品か。逆に気になって見てみたい。嘲笑する意味で。

 

「樹精を呼びたまえ。私が最高の等身大に完成させてみせよう」

 

「しくじったらお前の作品を探し出して飾ってやるよ」

 

ゆぐゆぐを呼びに行き、連れて来たらラプラスはゆぐゆぐと等身大に魔方陣を展開した。

 

「しばらくそのままジッとしてほしい。キミの身体と服の色をコピーしてこの木彫りの色を塗り替える」

 

「本当だ、木肌の色が変わってく。絵具いらずの便利な魔法だな。なんて魔法だ?」

 

「私の弟子になるならば伝授してやってもいいぞ?」

 

うーん、ちょっと考えよう。ラプラスの協力によって木彫りの等身大は見事にゆぐゆぐがそこにいるかのようになった。肌の色と服の色も、違和感が全くない。生きている風にも見えて本当に凄い。

 

「さすが魔法を極めた伝説の人。こんな事できるのはラプラスだけだろ」

 

「ふはははっ! 何せ私のオリジナルの魔法だからな! 賢者の石を作るよりも朝飯前さ!」

 

「うん、じゃあこれからもよろしくお願いしていいか? これならラプラスの魔法としての芸術が評価されるぞ」

 

「魔法の芸術・・・・・そんな言葉は今まで思いつかなかった。うむ、よかろう君の気が済むまで付き合ってあげるよハーデス」

 

こうして俺とラプラスはコンビで芸術と生産に明け暮れ没頭する時間がとても楽しかった。なんせ―――リヴァイアサンレイドの前日まで没頭してしまったんだからな。あ、木の日はちゃんとゆぐゆぐを精霊のところに連れて行ったからな? そしたら彼女から従魔の心を貰えたぜ。それ以前にも俺が不在の1週間の間にサイナがオルト達の世話をしてくれたおかげでクママ、ヒムカ、アイネ、メリープの従魔の心を貰ってくれた。ルフレがまだなのは残念だけど、やはり水場のオブジェクトが必要なのかな。マーオウに連絡して尋ねて見た。

 

『あーそら確かに生産系プレイヤーなら作れるはずやろうけれどな。まだそれを作るまでのレベルとスキルが足りんと思うで?』

 

「マーオウでも両方足りないのか」

 

『そうやな。それにそういうのはクラン規模で作るようなもんや。うち個人だけ作れる技量ではらへんなぁ』

 

「そうか無理言って悪かったな。そういう規模なら用意した報酬も釣り合わないか」

 

『何を用意したん?』

 

「水晶の樹木。地上では伐採できない新種の樹木と魔力を蓄えてる魔水晶っていう鉱石」

 

現物を見せた途端にマーオウの顏がドアップし、映像越しでは満足できないと会う約束も取り付けられた。ホームの玄関前、他のプレイヤーの視線を一身に浴びながら待っていると、千切れんばかりに肉塊を揺らす生産系プレイヤーが全力疾走してくる姿を視界に入って来た。

 

「マーオウ、そんなに急いで来なくても―――うおっ!?」

 

「あんなモンを見せられてこれが急いでこんはずがないやろ!? さっきのをもう一度見せぇ!」

 

「わかったわかった! するから離れろ! 激しく揺さぶるなぁっ!」

 

外で悲鳴上げる俺の声を聞きつけホームから現れたサイナが、マーオウにガトリングを突き付けた。

 

「マスターに危害を加える者は容赦しません」

 

「ちょぉ―――!?」

 

俺が止める暇もなくマーオウに向かって発砲するサイナ。追いかけ回されるマーオウの足元だけ狙っている辺り本気でキルするつもりはないと思いたい。まぁ、ダメージを与えちゃってるが。

 

「ハ、ハーデス! な、何とかせェッ!?」

 

「うーん・・・・・・焦って損するってこともう少し味わってもらいたいかな」

 

「か、勘弁してぇなぁあああああああっ!?」

 

それにしても、サイナに追いかけられてもここから遠ざからないのは水晶の素材を見たいためか? 

 

―――数分後。

 

「・・・・・(チーン)」

 

「死んだか(ツンツン)」

 

「棺桶に片足を突っ込んでいるだけです」

 

「なら生きてるな」

 

あれから畑が見える和室にマーオウを連れるや否や、畳に突っ伏して動かなくなった彼女をゴロリと仰向けにする。さっさと用を済ませてほしいんだがな。

 

「おーい、起きろ」

 

「う、うう・・・・・もうちょっと休ませてぇ」

 

「起きなさい(ギュム)」

 

サイナがマーオウの巨乳を握り潰さんと鷲掴みした。それは流石にセクシャルハラスメント―――あれ、相手がプレイヤーじゃないから発生しないのか? 

 

「ちょわっ!? なにうちの胸を触ってんのやっ!?」

 

「マスター、起きました」

 

「自分の命令か!」

 

「違うし酷い濡れ衣だ。ほら、起きたなら用件を済ませろよ」

 

水晶樹と魔水晶を彼女の前に用意する。凄く言いたげな眼差しを向けながらも見たことも、聞いたこともない地上の木の素材とは異なる水晶樹に目を落とす。

 

「品質とレア度が8ぃ~? こっちの水晶も7なんてこ、これなら次のステージにいけるで・・・・・!」

 

ようわからないけど欲しいなら交渉次第だ。

 

「ハーデス、これはどのエリアに生えとるもんなんや?」

 

「俺が独占してる状態の隠しエリアにある。というかほぼプレイヤーが来られない場所にあるから連れていくことも難しいんだよ」

 

「自分とついて行けば辿り着けると?」

 

「そうだが、その場所はNPCの好感度と関わってしまってるから連れていけないんだわ。自力で行く分なら構わないと言ってたけど」

 

どこに行けばいい、と言われて火山のマグマの中を泳がないといけないと言ったら頭を垂らした。

 

「無理やん!」

 

「スキルとアイテムを揃えば無理じゃないだろ、頑張れマーオウ」

 

「確かにそうかもしれへんけど、マグマを泳ぐ命知らず―――目の前におったな」

 

「おい、そいつはぁ俺を大馬鹿者だという言葉の裏返しだよなお前?」

 

乾いた笑みを浮かべつつ「そ、そんなこと思っておらん」って言うが視線泳いでいるぞ、ああん? 

 

「よし、そういう奴とはもう取引しない。お引き取り願おうか」

 

「ああん、いけずぅ! うちのお得意様がそんなこと言わんといてぇなー!」

 

「一度しか頼んでないのにお得意様とか随分と虫のいい話だな」

 

「頼むぅっ! この木材をうちに買い取らせて欲しい!! 金はいくらでも積むし何でもするからぁ!!」

 

ほほう・・・・・何でもねぇ・・・・・。

 

「お前、他のプレイヤーと結婚しろと言われても文句言わずにするんだな? 女が簡単にそんなこと言っちゃあ駄目だぞいくらゲームの中でもな」

 

「だってゲームの中なんやから結婚ちゅうても、リアルじゃないんやから気にする必要ないやろ?」

 

「・・・・・言っておくけど、おそらくこのゲームは性交できるぞ」

 

「なん? せいこうってなんや?」

 

○○○のことだと教えられたマーオウは信じられない顔をした次に耳まで紅潮した。

 

「え・・・・・え・・・・・? 嘘やろ? ゲームの中でそんな事できる筈が・・・・・マジで?」

 

「・・・・・うん、マジ。24時間経たないと出られない部屋に送られて、な」

 

「・・・・・」

 

自分の身体を抱きしめながら俺から離れるマーオウ。遺憾極まりない反応だなお前。

 

「自分、最初からうちの身体目当てで・・・・・!」

 

「サイナ」

 

「了解」

 

「だぁーっ!? じょ、冗談や冗談!! 」

 

言っていい冗談と悪い冗談はあることを思い出せよ。

 

「言っておくが他言無用なこれ。じゃないとこのゲームがエロゲーになり兼ねんわ」

 

「そ、そんなこと言うても結婚したら出来てしまうんやろ?」

 

「さぁ、俺は勇者同士と試しに結婚したら出来てしまったから、他のプレイヤー同士で結婚したらどうなるか知らないんだ。掲示板で調べてもそんな話題は挙がってないのは、敢えて伏せているか出来ていないかのどちらかだ」

 

YESとNOのハート型クッションを出す。

 

「これが手に入ったら性交が出来る」

 

「それを知らずに自分等は巻き込まれた形で流される形でシたと・・・・・馬鹿なん?」

 

「フェルー」

 

フェンリルを呼ぶ。少し経ってから大きな銀色の狼が部屋にやってきたのでマーオウに指さす。

 

「こいつの頭を噛み砕け」

 

「グルル」

 

「すみませんでしたぁああああああああああああ!!!」

 

乱射されるときと同じく、狼に噛まれる恐怖が嫌で土下座をするマーオウ。そして―――。

 

「やっほー、ハーデス君・・・・・何この状況・・・・・?」

 

「気にするな」

 

明日に備えてかイッチョウがホームにやってきた。マーオウの土下座する姿に首を傾げるイッチョウはそのまま。

 

「じゃあ、ちゃちゃっと結婚しよっか」

 

「ちょっ、自分、ハーデスの話を聞いとらんのかいな!?」

 

「うん? 何の話?」

 

「追々話す。ほらイッチョウ」

 

お互い結婚の申請をし合い、承諾すると俺達は夫婦の関係になった。そして・・・・・。

 

「なにこれ? YESとNO?」

 

「・・・・・俺、だからなのか? それとも勇者だからなのか?」

 

彼女にも性交の承認するアイテムを受け取ってしまったorz・・・・・。

 

「何か知ってるみたいだけど何のアイテムなのかな?」

 

「・・・・・○○○の承認用のアイテムです」

 

「へっ!? このゲーム、そんなことも出来ちゃうの!? プレイヤー同士で!?」

 

「・・・・・俺が勇者だからなのか、ある称号を持っているからかまだ判明していない。勇者の称号を持っていないプレイヤー同士でもできるのかもわからないけど、イッチョウは知ってるか」

 

「うーん・・・結婚したプレイヤー同士の話は聞いたことないよ。・・・・・まさか、ハーデスはシちゃったの?」

 

「・・・・・お互い碌に説明文を読まず、周りに言われるがまま試したら、な。単純な結婚するのだとばかり思ってたから」

 

イッチョウの俺を見る目が馬鹿な子を見る目になってる。くそ、言い訳出来ない!!

 

「その相手、私が知ってる娘?」

 

「フレデリカとリヴェリア」

 

「はい!? NPCも? え、これを向き合えば何時でもデきちゃうってこと?」

 

「いや、それは分からない。だからそれを仕舞ってくれないか?」

 

俺はもうとっくに仕舞った。流石にイッチョウまで手を出すわけにはいかないんだ。フレデリカはともかくイッチョウはリアルで一緒に住んでるし、久信に何て言われるか分かったもんじゃないっ。

 

「わかってるよ。流石にゲームの中とはいえハーデス君は安易にシちゃいけないもんね」

 

インベントリにそれ仕舞うイッチョウに内心安堵の息を吐く。

 

「でも、翔子ちゃんが知ったらどうするの? 弱みを握られたら―――」

 

「そん時は、リアルで説教する。そればかりは断じて笑って許しちゃならない案件だ」

 

それはいただけない。断じてな。プレイヤーとしてではなく王としてイッチョウを見つめ直す。低い声音で言うもんだからイッチョウは失態を犯した人の表情を浮かべ、戸惑いの色を顔に滲ませた。

 

「俺はそんな奴と交流した覚えはない。もし本当にするなら・・・・・良い度胸じゃないか。小娘が俺にそうさせるのもお前の父親の企みか? 俺の立場を転覆させるようなことがあれば脅して意のままに操れるようにしろ、と言われたのか聞いてやる」

 

「・・・・・できれば穏便にお願いしますよ王様」

 

「どこかの誰かさんがまーた骨折り損に尻を叩かれるような真似をしない限りは、な」

 

うっ、と無意識に自分の尻に手を回すイッチョウ。

 

「さて、待たせたなマーオウ。話を続きをしよう」

 

「わ、わかったで・・・・・でもその前に質問を。・・・・・まさか、大将なんか?」

 

「・・・・・そういうお前は真桜だろ。だが、この事は他言無用だぞ。―――わかっているな」

 

コクコクと必死に頷く。そんで、どうしてマーオウが俺の正体に気付いたのかと言えばだ。

 

「お前、ログアウトしたら尻叩きだからな」

 

「ええっ!? な、なんで!?」

 

イッチョウに振り返りお仕置き確定事項を告げた。何でだと? 自分で言った言葉をもう忘れたのか。

 

「出来れば穏便にお願いしますよ―――次に何て言った?」

 

「え、で、でもそれぐらいで気付かれるわけが・・・・・!」

 

マーオウがいやいやと手を横に振って付け加える。

 

「えっとな自分、開発技術部の松永んとこの娘なのは一目見た瞬間にわかっとったで? それにうちのことも気づいとったはずや。顔の容姿、そのまんまやからな。んで、うちらに共通する人物のことをそう呼ばれるんのは一人しかおらんよ」

 

「・・・・・」

 

面白いぐらい顔を蒼褪めるイッチョウさんの肩に手を置いた。

 

「俺が真剣になったからって、ボロ出されると困るんだよなぁ。特に百代達の前で言われたら、あいつらの中で俺が旅人に繋がるのも容易いんだ。気付いた瞬間、あいつらはこっちの事情を知ろうが知るまいが関係なしに関わってくるのが目に見えるんだぞ?」

 

「・・・・・」

 

「だからお仕置きだ、受け入れろイッチョウ。いいな」

 

「・・・・・はいぃ」

 

「うちも他人事ではないんやけど、今度から気ぃ付けや」

 

そうだな。自覚しているならとやかくは言わない。が、一つ気になるな。

 

「お前だけプレイしているのか? 二人は?」

 

「他の二人は生真面目だったり自分の趣味に突っ走っとるんでしとらんよ。うちはこのゲームの中で自由な物作りがしたいんで遊んどるんや。しっかし、噂の白銀さんがまさかの人とは思わんかったで。運営とつるんでおるん?」

 

「ないない。自力で見つけてるんだ。大体このゲームの中では俺が翻弄されている側だぞ」

 

「ほー、あんさんほどのモンが? 運営も事実を知ったら死ぬんやない? 主にショック死で」

 

あはは、あり得そうで尚更正体を隠さないといけないじゃないか。

 

「まぁ、リアルの話はここまでにしてゲームの中の話をしよう」

 

「せやな。ってことでハーデス。この素材らをうちに回してくれへん? すんごいモンが作れそうな気がするんや」

 

「水場的なの作って欲しいんだがな。できないんだろ?」

 

「うち一人だけじゃ絶対無理や。この素材で交渉すれば作ってもらえるかもしれへんで?」

 

生産クランと交渉か・・・・・。

 

「じゃあマーオウ。生産クランと交渉の窓口になってくれるか」

 

「任せておきぃ。その代わり約束のブツを忘れんでや」

 

「どのぐらい必要なのか判らないが、100本程あればしばらくいいだろ?」

 

「十分すぎるぐらいや」

 

交渉材料に水晶の素材をマーオウに渡して話し合いは終わった。ホームを後にした彼女を見送った俺達は和室でのんびりと寛ぐ。

 

「あの、質問いい? ゲームの中でシちゃったフレデリカとは今後どうするの?」

 

「24時間たっぷりシちゃったからな。すっかり俺に好意を抱いてるし責任を取るつもりだ」

 

「他の人達、特にあの4人は納得するとは思えないケド」

 

「・・・・・そうなんだよなぁ。だけど、本国の結婚制度はアレにしたから差別的な真似はしないと信じる」

 

「人気者は辛いですね」

 

「お前も俺に好意を向けてる一人だろうが」

 

「気付いていて受け取ってくれない酷い人は馬に蹴られてください」

 

手厳しいことを言ってくれる。

 

「結婚は、出来るんだよそれぐらい。だけど跡継ぎが作れない」

 

「どうして?」

 

「俺自身が100年以上この若さで生きているんだ。生まれてくる子供にもその影響が出る。そして俺に子供が出来たと知る各国が子供を浚って国を手中に収めようとする可能性もある。そうなったら戦争だ。何より、自分だけおいて先に死ぬ経験を味わえさせたくない」

 

何より、ドラゴンの遺伝子を受け継いだ子供が全員が全員・・・善意で育つわけがない。王の子供だから当然、蒼天を統治するのは自分だと主張するだろう。その傲慢と欲深さが蒼天を壊す。

 

「俺が普通の人間だったらそんな悩みを抱えないんだがな」

 

「・・・・・ハーデス君が普通の人間だったら、今の本国はないよ」

 

イッチョウが対面するように掻いた胡坐の上に乗って来る。

 

「じゃなきゃハーデス君と会えなかったし、こんな楽しいゲームも生まれなかった。私は普通の人間より今のハーデス君の方が好きだよ。一人の女の子としてね」

 

「・・・・・ありがとうよ」

 

真っ直ぐ少女の目を覗き込むように見つめて話し合っていたら、唇を重ねられた。薄く開けるとイッチョウの舌が割り込んできて俺の舌を絡めて来る。ようやくお互いの舌が離れる頃には唾液の糸を作りながら途中で切れ、顔を赤らめて瞳を濡らす彼女がそこにいた。

 

「・・・・・王様」

 

スッと仕舞ったはずのYESのクッションを向けて来る。その後ろで目元だけ隠しながら尋ねて来る。

 

「私のこと嫌いですか?」

 

「・・・・・イズとスるかもしれないぞ。それでいいのかお前」

 

「構いません。私を愛してくれるなら心の広さで受け入れます」

 

「なんだそれ。第一妻とか正妻とかそんなの決め合ったら承知しないから」

 

さっきの俺の決意を踏み躙りやがって。ここで嫌いと答えてもこいつは変わらない態度を接するだろうが、元来の俺の性格が拒否することが出来ないんだよな。

 

俺もハートのクッションを出してYESに向ければ、2つのクッションが光り輝き―――イッチョウと一緒にホテルの密室へ転移され・・・・・濃厚で濃密な24時間を過ごしたのだった。

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