バカとMMORPGと召喚獣!   作:ダーク・シリウス

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出会い

「変わった物?ごめん、それもないわねー。あ、でも不思議なオブジェクトの情報ならあるわ」

 

「買おう。不思議なオブジェクトって?」

 

「各方角の第2エリアにそのオブジェクトがあるの。何か謎の仕掛けがあるかもしれないけれど結局何を試しても分からずじまいで誰も謎を解き明かせないでいるわ」

 

因みにエリアについて少しおさらいしておこう。このゲームは始まりの町を第0エリアとして、そこから離れるごとに数字が加算されていく。

 

始まりの町に面している北の平原、南の森、東の平原、西の森の4フィールドが第1エリア。

 

そして、北の平原の先にある『獣牙の森』、南の森の先にある『鋭角の樹海』、東の平原の先にある『蟲毒の森』、西の森の先にある『鉤爪の樹海』。始まりの町から2エリア分離れたこの4つのフィールドを第2エリア。さらにそれら第2エリアの先にある、北の町、南の町、東の町、西の町のある4つのフィールドを第3エリアと言う。

 

それ以降は、偶数エリアが町なしフィールド、奇数エリアが町有りになっているらしい。これはあくまでも掲示板情報だがな。第3エリアからはそれぞれ2種類のフィールドに行けるらしいが、まだまだ先の話だろう。何せ正式サービスが開始されても攻略組がそれ以上フィールドの先には進めれてないからだ。

 

そして買った情報によると鉤爪の樹海には風が通り抜ける時に音が鳴る、穴の空いた大岩があるし、鋭角の樹海には何をしても火が消えない樹木程の高さの巨大な松明がある。獣牙の森には、高さ3メートル程の板状の岩が6枚、円を描くように設置された小さいストーンヘンジのような場所があるそうだ。蟲毒の森には周辺に色とりどりの花が咲き乱れる、綺麗で深い泉があるそうだ。

 

そして、余談だけどいくつものエリアを突破していくとβだった時は帝国や王国、雪国や砂漠といった場所やNPC達が暮らす国があるのだとか。ヘパーイストス達も王都から来たっぽいからまず間違いなく存在するだろう。

 

さらにもう一つ、今現在のレベルの上限は100となっている。これは後から参加してくるだろう第二陣と同時に上限が解放されるかもしれないな。

 

「なるほどな。じゃあ、その場所らが何か怪しいと」

 

「私の推測では間違いなくね。もし何か分かったなら教えてちょうだい」

 

「わかった。で、いくらだ?」

 

買った情報の値段は意外と安く、問題なく払えた。

 

「ねぇ、そっちも何か情報ない?」

 

「情報?うーん何でもいい?」

 

「ええ、何でもいいわ」

 

聞いておいて何でもとなると・・・・・どれを売ればいいか考えてしまうな。

 

「情報以外でもアイテムを売る事って?」

 

「勿論OKよ」

 

「へぇ、じゃあまず最初にこの存在の情報から」

 

ミスリルの鉱石をインベントリから出してヘルメスに手渡す。

 

「へぇ、ミスリル・・・・・ミスリルぅッ!?」

 

おっかなびっくりで叫ぶ彼女の口を片手で塞ぐ。既に遅しだろうけど頭の上でビクッ!と震えたのが分かりびっくりしたようだからな。

 

「初期のエリアにレア鉱石が一部のNPCの店で扱われてるって情報はあるけど。こ、これどこで手に入れたの!?」

 

「それは言えない。NPCに口止めされてるから」

 

「そ、そうなの・・・残念だけどNPCが絡んでいるなら訊けないわね。これ、後どのぐらい手元にあるの?」

 

「20個ぐらい?」

 

「ぐっ・・・!他に何かある?」

 

「これ」

 

4つの属性結晶を取り出し、「ふぇえええええっ!?」とヘルメスを戦慄させた。

 

「属性結晶!?しかも4つ!?土結晶以外の結晶なんて初めて見た!!」

 

「昨日、この町の地下祭壇にまた精霊と会って、ユニーク称号の報酬として―――」

 

「待って、待って待って・・・・・普通に凄い情報をすらすらと言われるとこっちの身が保てないからっ」

 

自身の胸に手を当てて何度か深呼吸する。落ち着くと「よし!」と平常心になれば身構えた。

 

「へいカモン!どんとこい!」

 

「・・・・・まだ平常心じゃないだろ」

 

でも教える。精霊の祭壇に行けた経緯と関する情報にユニーク称号の効果を。

 

「く、な、なるほど・・・先日のアナウンスは君が原因だったなんてね。毎週、魔法の鍵を所持した人が『木の日』に祭壇でお供えをすれば精霊の祝福を得られるとは」

 

「お供えした物は黄金の林檎で、貰ったのが大樹の苗だった。しかも大樹の精霊に好感度があるらしくて―――」

 

「黄金の林檎って激レアなんだけど!?」

 

「そうなのか?あの林檎が取れた場所は―――」

 

「ストップ、ストーップ!さらっと言わないで!心臓に悪いから!」

 

俺の持ってる情報は相手の心臓を悪くするほどか。なら、落ち着かせる情報でも送るか。

 

「精霊の祭壇の動画を撮ったけど見るか?」

 

「ハードル下げてきたわね。ええ、見るわ」

 

「ついでにこれも売れる?」

 

「売れるわ。なんならこっちがアップしてあげましょうか?」

 

二言で了承する。タラリアの宣伝効果にもなるし、この動画の情報を買い取るプレイヤーもいるし、俺以上にいいこと尽くめだろうな。

 

「で、情報はこれで全部?」

 

「うーん、あと個人的な情報、スキルと称号の情報はあるけど」

 

 

称号:万に通じる者 不殺の冒険者 出遅れた者 大樹の精霊の加護 白銀の先駆者 毒竜の迷宮踏破

 

スキル

 

【絶対防御】【手加減】【体捌き】【瞑想】【挑発】【極悪非道】【シールドアタック】【大物喰らい(ジャイアントキリング)】【毒竜喰らい(ヒドライーター)】【爆弾喰らい(ボムイーター)】【大盾の心得Ⅹ】【悪食】【受け流し】【体術】【爆裂魔法Ⅰ】【エクスプロージョン】

 

 

・・・・・出遅れた者は教えない方がいいな。

 

「称号6つほどあるけど1つだけ売るわ」

 

「えっ!?6つもあるの!?ちょっと待って、この中にあるかしら?」

 

 どうやら、早耳猫が情報を売っている称号のリストの様だった。全部で11。結構少ないな。しかも、白銀の先駆者などの、2日目に与えられたユニーク3称号の名前も合わせての11個だ。俺にとっては幸運なことに、不殺の名前は載っていない。

 

「これしかないのか?」

 

「少ないと思う?」

 

「うん」

 

「それくらい、称号の取得は難しいってことよ。あなたが思っている以上にね」

 

「そうなのか」

 

「で、どう? このリストに、載ってる?」

 

「載ってないな。あ、毒竜の迷宮踏破はある」

 

「本当? すごいわね!」

 

ヘルメスの興奮が頂点に達したようだ。その猫耳がピンと立っている。へえ、こういう演出は細かいな。

 

「最初にあなたに声をかけた自分を褒めてあげたいわ! 分かってないみたいだけど、これは凄いことなのよ?」

 

「俺もこれを知るまでは実感はなかったな」

 

正直、どうでもいいとも思っていたのだがな。

 

「それって、他の人が取得可能かしら? それとも先着でハーデスくんだけしか取れない?」

 

「いや、他の人でも取れると思うぞ」

 

「本当なの?」

 

「ああ」

 

ヘルメスが身を乗り出して顔を近づけてくる。

 

「良いわ。1つ3000G出しましょう」

 

「ええ?」

 

「それくらい価値がある情報よ。いえ、取得条件の情報の精度や、その有用性によっては、10000G出してもいい」

 

「おおお?」

 

ようやく、自分の情報がかなり貴重だと言うのが分かってきた。ちょっとワクワクしてきたぞ。

 

「それで? どんな称号なの? できればステータスを見せてほしいんだけど」

 

「良いぞ。これだ。まず最初に不殺の冒険者」

 

俺は称号の項目を見せながら、知っている情報を語る。スキル取得時のログも見せて、取得条件に関する俺なりの考察も聞かせた。そうして称号の情報を語り終えた時、ヘルメスが思わずといった様子で叫ぶ。

 

「ちょっと待って!」

 

「なんだ?」

 

「このスキル」

 

彼女が指差しているのは、不殺の冒険者によって得られる効果の欄だ。なんか、指先がプルプル震えているぞ。

 

「これ、手加減攻撃じゃなくて、手加減?」

 

「手加減攻撃?」

 

手加減攻撃は聞いたことがある。杖とかメイス系で、どんな場合でも相手を殺さずにHPが1残ると言う、手加減に似たスキルだ。手加減は道具や魔術でも使えるから、こっちの方がより上位なんだろうか。

 

「新スキルだわ」

 

「え?」

 

「だから、新スキルなのよ!」

 

「新スキルって?」

 

「・・・・・βテストでも確認されなかった、未だに誰も獲得していなかった全く新しいスキルのことよ!」

 

それって、俺しか取得者がいない、レアスキルってことか?

 

「嘘だー」

 

「本当よ。なんなら、今朝送られてきた集計データを見てみなさい! 載ってないから」

 

確かに。あのデータはスキルの個別獲得者の数も掲載されていた。つまり、たった一人でも獲得できていれば、スキルの名前だけは載っているはずなのだ。

 

俺は再度、集計データを見てみた。すると、ヘルメスが言った通り、手加減というスキルが掲載されていない。

 

「まじか」

 

「手加減は、今現在あなただけのユニークスキルっていう訳ね」

 

話が大きくなりすぎて実感がない。そんな凄い称号だったのか? そもそもβテストで獲得者がいなかったのだろうか? 俺の疑問にヘルメスが答えてくれた。

 

「それはね、初ログインした頃っていうのは、誰でもイケイケだし、多かれ少なかれ、戦闘をするでしょ? それにモンスターとの戦闘をしなくたって、釣りをしたり、狩りをしたりして、食料を得る場合もあるし。初ログインから4日間命を奪わないっていう条件は、前情報のない状態では難しいのよ。それこそ余程偏ったプレイをしてない限りはね。例えば、君みたいに」

 

「そういうことか」

 

俺だって、初日に1週間もゴミ拾いしなければこの称号は得てなかっただろう。誰だって最初はモンスターと戦ってみるし、いきなり負けるやつは少ないはずだ。よしんばビルドに失敗していたって、その時ならまだキャラを作り直す余地がある。普通は、作り直すだろう。

 

「じゃあ、この情報、買ってもらうと?」

 

「25000Gで買うわ」

 

「10000Gじゃなかった?」

 

「現段階では激レアなスキルの情報も合わせての値段よ。不殺の情報は、相当稼げるだろうしね」

 

「でも、一度ログインして、1回でもモンス倒してたら、獲得できないもんだぞ」

 

「大丈夫、これからまだ数十万人近くがログインしてくるし。リアルで第2陣、3陣が100万人以上インしてくる。それに廃人プレイヤーじゃなければ、プレイ時間は精々リアルで半日だからね。中にはキャラクターを作り直そうか悩んでいるプレイヤーもいるのよ。そう言う人にとっては、有用な情報だわ。なにせ、絶対に取得できる称号の情報だからね」

 

と、いうことで、俺は思いがけずに25000Gも手に入れてしまった。だがまだである。

 

「もう一つだけ情報売るわ。称号の名前は万に通じる者だ」

 

「こ、今度はどんな物かしら・・・・・?」

 

「これは簡単に言えば全ての職業を開放するだけで取得できる称号だ。一番最初に取得した俺は賞金とステータスポイントに各職業の秘伝の書を貰った」

 

「秘伝の書!?」

 

「因みに教えた知り合いも全部の職業を解放したら秘伝の書は貰えなくて、ステータスポイント10は美味しかっただけだった」

 

「それでも初日で全職業を開放して、10レベル分も貰えるのなら凄くやる価値があるわ。10000Gで買い取る!」

 

おー10000Gか。じゃあ、この情報だったらどうなんだろうか。

 

「最後に訊きたい事があるんだけどいいか?」

 

「えっと、何?なんだか唐突に嫌な予感が覚えたんだけど・・・・・」

 

「もしもの話だ。レベル10ごとのステータスポイントって30だろ?仮に『レベルアップ時のステータスポイント取得量が3倍』の効果がある称号があったら、どれぐらい売れるんだ?」

 

「―――――」

 

想像したのだろうか。ヘルメスの顔色がサーと蒼褪めて頭を抱え出した。もしかして想像を絶する値段なのか・・・・・?

 

「む、無理・・・・・無理無理無理・・・・・とても払える金額じゃないっ・・・・・!!プレイヤーのパワーバランスが崩壊してこのゲームがヌルゲーになっちゃう・・・・・!!!」

 

・・・・・ちょっと申し訳ない気分になってきたぞ。教えなくてよかったか。そっと頭の上にいる毛玉をヘルメスの顔面に押し付ける。このモフモフで癒されて欲しい。

 

「あ・・・・・柔らかい・・・・・」

 

「キュイ?」

 

「・・・・・へ?」

 

「因みにそいつ、ピクシードラゴンのミーニィだ。先日の大精霊の報酬に貰った卵から孵化した」

 

翼を羽ばたかせてこっちに戻ってくるミーニィは人の頭の上にまた載って寛ぐ。

 

「ピクシードラゴン・・・・・?βでも話題も発見すらなかったドラゴン・・・・・」

 

新モンスターの情報に頭が追い付けない様子で、うわ言のごとく呟くヘルメスは人の頭の上を見つめてくる。

 

「鍛冶師のNPCヘパーイストスの話じゃあ発見数は片手で数える程度だってさ。つまりピクシードラゴンを探そうとするならかなりの運が必要っぽいぞ」

 

「NPCがそんな話を?やっぱり、NPCとの交流は不可欠ね・・・・・。あ、他に何か知りたい情報とかある?」

 

「他か・・・じゃあダンジョンに関する情報ある?このエリアで」

 

「あるわ。東のエリアに【毒竜の迷宮】、それと南は地底湖なのだけれど怪しいのよね。中は広いし釣りスキルで釣れる魚から鱗のドロップアイテムが手に入るのだけれど」

 

【毒竜の迷宮】を踏破したから別にいいとして地底湖か。大盾使いでプレイする限り、VIT極振りの俺からすれば釣れもしないし泳げもしない。装備が出来上がるまでは無縁な場所だな。

 

「そうか。じゃあ、もういいや」

 

「そう?じゃあ、君の情報とミスリルの情報、買い取ってくれた情報料を差し引いて43000Gね」

 

「毎度あり」

 

「ふふ、どっちが情報屋か分からないわよ」

 

二週間足らずでちょっと懐が温かくなった。

 

「じゃあ、俺はこれで」

 

「あ、ちょっと待って。私とフレンドコード交換しない?」

 

「俺と?」

 

「うん。私とフレンドコード交換すると、良い情報を仕入れたらメールで知らせてあげるわよ。その代わり、また良い情報を入手したら売りに来て」

 

「なおさら、俺なんかでいいか?」

 

「うん。ぜひお願いしたいな」

 

まあ、いいか。断る理由もないし。βテスターの情報通とコード交換しておいて、損はないだろう。

 

「じゃあ、コード送りますね」

 

「ありがと」

 

ヘルメスからもコードが送られてきて、フレンドコードの交換が完了する。

 

「またいい情報待ってるね!」

 

「その時はきっと心臓に悪いやつばかりだろうから肩の力を抜いとけよ」

 

ヘルメスに見送られ、俺はホクホク顔で小広場を後にした。そのままヘパーイストスのところに行く。そろそろ素材が集まったか知りたいからな。

 

「なぁ、毛玉を乗せた連れたあんただよ」

 

「ん?」

 

広場を横切ろうとしていた足を停めて振り返ると、充実した装備をしている6人組の男達がこっちを見ていた。

 

「なんだ?」

 

「さっき情報屋でミスリルと他にも色々と売ってたよな。ミスリルが掘れる場所を知ってるのか?」

 

「知ってるけれど、NPCの好感度に関わるから教えられないぞ。教えたらミスリルが手に入らなくなる可能性があるんだ。鉱山に連れていくこともダメだ」

 

「マジかよ・・・・・つまりお前だけ独占状態ってことか」

 

少し訂正させてもらう。俺は知り合いの採掘に付き合ってるだけで、そいつの方がほとんど独占して俺はおこぼれをもらってるようなものだと言うと、そいつは誰なんだと聞かれ拒否する。

 

「ミスリル製の武器や防具が欲しいなら、扱ってる店に行ってオーダーメイドすればいいだろ?俺達から鉱石だけ譲ってもらう方が一番金がかかると思うぞ」

 

「・・・・・やっぱそうだよな。じゃあ、属性結晶もダメか?」

 

「必要になるかもしれないからダメだ。また手に入れたら現物と一緒に情報屋にも売るつもりだから」

 

結局何も得られず肩を落とす名も知らぬプレイヤー達はどこかに行ってしまう。属性結晶はともかくミスリル鉱石も安易に譲れないんだよな。したら、次から次へと欲するプレイヤー達が後を絶たないだろうからよ。

 

「おい、そこのモンスターを連れてるお前、話があるんだけど」

 

「・・・・・」

 

嫌な予感しかしないのは何故なんだろうな?

 

 

 

 

【新発見】NWO内で新たに発見されたことについて語るスレPART10【続々発見中】

 

・小さな発見でも構わない

・嘘はつかない

・嘘だと決めつけない

・証拠のスクショは出来るだけ付けてね

 

 

81:メタルスライム

 

急報だ。情報屋『タラリア』の前で情報を売っていたミスリル鉱石を持っているプレイヤーと接触した。譲ってくれないか、もしくは鉱山の場所を教えてもらいたかったがどっちもダメだった。後者はNPCの好感度が関わる場所のようで申し訳なさそうに断られた。

 

 

82:ロイーゼ

 

なんだと?そのプレイヤーはどこにいる?

 

 

83:ふみかぜ

 

教えて!鍛治師の腕がなる!

 

 

84:メタルスライム

 

いや、書いといてなんだけど行かない方がいい。ミスリル鉱石以外にも4つの属性結晶を欲しさに群がるプレイヤーが増えて(騒ぎになる=何事だと気になる=話を聞く=レアアイテムを持つプレイヤー=俺も欲しい!)のループでもう人だかりができて話をするどころじゃなくなってる。

 

 

85:佐々木痔郎

 

ちょ、初期エリアでまだ序盤なのに属性結晶って。しかもも4つ持ってるのかよ!それじゃ誰も欲しがるに決まってるだろ。どうしてバレた?

 

 

86:アカツキ

 

もしかして、最初に突撃したと思われる≫81が原因じゃ?

 

 

87:メタルスライム

 

・・・深く反省している・・・・・<m(__)m>

 

 

88:トイレット

 

ねぇねぇ!そのプレイヤー、NPCの鍛冶屋に立て籠っちゃったよ。俺も交渉したいのに!

 

 

89:ヨイヤミ

 

≫88の続き、その鍛冶屋のNPCが上半身裸で逞しい筋骨隆々を見せつけ、身の丈を越える巨大なハンマーを片手で2つ持って現れて「さっきからうるせぇっ!!てめぇらの尻穴に熱した鉄棒をブチ込まれてぇのかっ!!」ってプレイヤーを文字通り薙ぎ払って暴れている。何あのNPC、攻略組のプレイヤー数人を見たことが無いスキル使って一撃で死に戻りにさせてるんだけど!!

 

 

90:ふみかぜ

 

え、なにそれ、怖いですけど。NPCがプレイヤーをキルしてるってどうなってるの?ステータスがあるの?

 

 

91:トイレット

 

その第一死に戻りにしたのが俺で、装備の耐久が三分の二まで減ったよ!!!

 

 

92:ロイーゼ

 

敵はプレイヤーとモンスターだけじゃなくてNPCもとは・・・・・。運営もとんでもない設定をしたな。もしかすると好感度が底辺になったらNPCによって攻撃的になるんじゃないのか?

 

 

93:ヨイヤミ

 

 

可能性ありそうだな。因みに現在、軒並みに倒されたプレイヤー半分を見て、もう半分いたプレイヤー共は蜘蛛の子が散るように逃げていった。追われた?プレイヤーはそれ以降出ていこうとしない。もしくはログアウトしたかだ。一番好感度を下げてしまった恐れがある彼は哀れである。

 

 

94:佐々木痔郎

 

どうして追われた?だ?

 

 

94:ヨイヤミ

 

 

何か異様に歩くのが遅かったからだ。行く道を阻まれ360度囲まれて歩きづらかったのか分からないけど、凄くゆっくり歩いてた。βで見たAGI以外のステータスの数値を極振りしたプレイヤーのようだった。

 

 

95:ロイーゼ

 

 

極振りか。正式に開始してそんなステータスの数値をするプレイヤーはいないだろ。特にβテスターのプレイヤーは。

 

 

96:ふみかぜ

 

でも極めに極めたら強そう。

 

 

97:メタルスライム

 

 

例えそうでも成功するまで根気よく頑張る気にはなれないな。

 

 

 

何て掲示板でそんな話の内容を書かれていることなんて知らない俺は、出入り口を固く閉ざしてカウンターの席に荒々しく座るヘパーイストスは不機嫌そうに視線を向けてくる。

 

「おい、鉱山の場所を教えていないだろうな」

 

「教えていない。断じてだ」

 

「ふん、ならいい。お前には助けられた恩がある。今のでチャラにさせてもらうぞ」

 

異論なんてないと込めて頷いて、裏口には誰もいないと青年弟子の報告にさっさと出ていくつもりで動く。

 

「待て、忘れモンだ」

 

呼び止められてヘパーイストスに首だけ振り向くとカウンターのテーブルに白銀の骸骨の仮面に指輪を置いていた。え、もう?早すぎやしないか?三十分も経っていないのにもう完成したのかと思いながら、受け取りに近づいて調べたところ。

 

 

『死神の仮面』

 

【STR】10【AGI】20【DEX】34。

 

『三輪の指環』

 

【STR】50【AGI】45【DEX】36。

 

 

「すまん」

 

ヘパーイストスが頭を下げてきた。その理由はこの数値を見て分かる。

 

「お前の望む性能まで作ることが適わなかった。ミスリルをふんだんに使って強化しただけじゃここまでが限界だった」

 

「いや、全部60以上なんだから俺的には文句のない装備品だぞ」

 

「阿呆か!依頼主が望んだ、望み通りの物を作れんようじゃあこの先も作れず鍛冶師としての腕前が信用されなくなるんだよ!だから今度は自分で集めてこい!」

 

いや、最初からそのつもりだったんだけど?

 

「それまでと言っちゃあなんだが、お前の要望に応えられなかった詫びとしてこれをしばらく預けておく。ついでにこれも持っていけ。作った仮面と指輪は俺が預かっておく」

 

『古の鍛冶師の指輪』

 

【STR】120【AGI】120【DEX】120

 

 

『鷹の羽衣』

 

 

鷹に変身できるユニーク装備。

 

 

「それはオリハルコンで作られ、代々俺の一族が鍛冶師として一人前になってから受け継がれる初代が作ったと言われている指輪だ。ミスリルならできると驕った上に未熟な腕を痛感させられた今の俺が、それを持つ資格なんてないからな」

 

伝説の最硬精製金属(マスター・インゴット)・・・・・ゲーム内のオリハルコンの価値はいまいちわからないが曖昧な感想でしか抱けれないな。

 

「いいな、無理に返そうとするならその指輪を叩き壊す。俺にその指輪を壊させるような真似をさせたら、何度も俺の愛用の鎚で叩き潰しに行くからな!」

 

・・・・・ならこれは?鷹の羽衣のことを尋ねる。

 

「そいつも初代がとある女神のために生涯懸けて作ったもんだ。それを纏えばどこでも自由に飛べて直ぐにこの町に帰ってくるだろ」

 

「これもヘパーイストスが必要なんじゃ」

 

「確かに遠出の時はそれを使って移動しているが、冒険者共の依頼でミスリルを素材にした武器を作らなきゃならねぇからしばらくは使う機会はない。それにもう一つとっておきの物があるから問題ない。それを使ってお前が納得できる素材を見つけてこい」

 

さっさと集めてこいと言わんばかりなアイテムの貸し出しに、裏口から出て素材の探索の旅に出る前、オルトのために畑を買いに向かおう。南区の農業地区に足を運ぶとこはなく、試しに鷹に変身してみたら人間サイズの鳥と化した。

 

「おお、飛べるのかこれ?」

 

「師匠はよくその姿で移動しているぞ」

 

「マジか。よし、練習がてら飛んで行ってみるよ。ミーニィ」

 

「キュイ」

 

背中にしがみつくミーニィを乗せたまま翼を広げて力強く羽ばたかせてみると、俺は鳥の姿で大空へ飛べた。

 

「おー!」

 

「キュイー!」

 

俺は今、風になってるー!ミーニィも自前の翼で俺と並んで飛行する。

 

 

畑の真ん中に、冒険者ギルド並ではないものの、そこそこ大きな建物が立っていた。紛れもない、農業ギルドだ。その前に降り立って羽衣を脱いで元の姿に戻ってから入る。

 

「すみませーん。畑が欲しいんですけど?」

 

「あら、いらっしゃい。どれにする?」

 

窓口の蜂蜜色の豊かな髪と豊満な体つきのNPCの女性が受け答えてくれる。ふふ、今の俺は金を持っているのだ。更に畑を増やそう!

 

「よし、また10000Gの畑を買っちゃおう。6000Gの畑を2つに3000Gの畑を2つ、2000Gの畑を1つ追加で」

 

俺はさらに2000Gもする高級肥料を購入する。購入可能な数3つまで買うとすると38000Gも掛かる。うん、買えちゃうんだよな。

 

「よし、高級肥料を買おう。しかも全部だ」

 

高級肥料があったら、成長が遅い苗木を速く育てたり、質のいいのが育つに決まっている。独り言のように呟きながら購入するものを選び終えると待ってくれた女性NPCに話しかけた。

 

「はい。それじゃあどこのが欲しい?」

 

「場所は同じで広場に近くて、冒険者ギルド、農業ギルド両方に行きやすいと嬉しいかな」

 

「ならここね」

 

彼女が地図でおすすめの場所を教えてくれる。

 

「じゃあ、ここで。グレードは10000Gを1つ、6000Gを2つ、3000Gを2つ、2000Gを1つお願いします」

 

「ありがとう」

 

 チャリーンという音がまた聞こえた。所持金が残り5000Gだ。

 

「場所は地図にマッピングしておいたわ」

 

これでよし。

 

「オルト、ミーニィ。留守番と畑は任せたぞ。俺は、仕入れに行ってくる」

 

「キュイ」

 

「ムム!」

 

使ってしまった黄金の林檎の確保も悪くないな。そして果樹園を作って林檎を育てアップルパイの生産をしていこう。衣を纏い鷹となって空を飛び西の森へと飛んでいく。空の移動ならば歩行よりもあっという間で、初日以降来なかった深奥の森の上空まで移動すると、遠目でもわかる林檎の園を見つけた。降下して衣を脱いで林檎の木の傍に立って久しぶりに林檎を採取する。初めて採取した時の苦戦は何だったのかと、思うほどスムーズに確保できる自分に軽く感嘆して黄金に輝く林檎も1つだけゲットした。

 

「さて、次は採取だな。上空から見つけた川にも行ってみよう」

 

草の根をかき分けて探す精神で外で採取できるポイントである緑のマーカーを探す。

ふっふっふ、俺を見つけて攻撃してくるモンスターは眼中無しだ。痛くも痒くもないんだからな。

寧ろアルミラージや狼系のモンスターみたいなモフモフとした毛に包まれて役得過ぎる。

 

 

緑マーカーを見つけて鑑定する。えーと・・・・・何でこんなところに生えているんだろうな『荏胡麻』。

高さは60-100cm程度。茎は四角く、直立し、長い毛が生える。葉は対生につき、広卵形で、先がとがり、鋸状にぎざぎざしている。付け根に近い部分は丸い。葉は長さ7-12cm。表面は緑色で、裏面には赤紫色が交る。うん、特徴が一致している。リアルに再現しているな運営。

 

「油にもなるし、薬味にも使える。胡麻団子作れるかな?」

 

採取して次を探すと、もう一つ見つけて近くにもまた見つけれた。合計五本。そうして小一時間以上続け高速で採取してみたら、予想通りの結果になった。スキル【採取速度強化小】を取得したのである。

なるほど、これなら【採掘】と【採掘速度強化小】もあるな?イズも取得していそうなスキルだ。

 

「にしても・・・・・」

 

一ミリも減らないHPバーを一瞥して群がって攻撃を止めないモンスター達に一言告げたい。

飽きないのかね君達。

 

「・・・・・」

 

不意に、このモンスター達を驚かせることができるのかな?と検証してみたくなった。リアルスキル、プレイヤースキルが反映するならできなくもなさそうだけど・・・・・。

 

「すぅ・・・・・」

 

大きく息を吸いって酸素=空気を肺に溜めて一時硬直するように停止した次の瞬間。

 

「ウォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッ!」

 

肺から全てを吐き出すように獣の咆哮よりも凄まじい声量でゲーム内に震動する空気が衝撃波としてモンスターや木々を震えさせた。おー、ここまでプレイヤースキルが反映されるか。そんで今ので集って攻撃していたモンスター達が逃げたり身体を硬直させたりという反応を示してくれた。

 

 

『スキル【咆哮】を取得しました』

 

 

スキル【咆哮】

 

直径十メートル以内にいる対象の動きを10秒硬直状態にする。

 

取得条件:一度で十体以上のモンスターの動きを停止させる、もしくは逃走させる。

 

 

普通に使えるスキルだ。これなら足の速い相手を強引に停止させることができる。そして俺だけ足が遅いなんて許せないもんなー・・・・・ふふふ。

 

「さて、採取の続きをしよう」

 

近くまで進んでいたようで川のせせらぎ音が聞こえる。その音へ進めば大量の水が穏やかに流れる光景が広がり軽く息を吐いた。川の水を跪いて飲んでみるとあまり美味しくなかった。微妙な味だ。この味に眉根を寄せると、川の中に採取アイテムの緑のマーカーが浮かんでいたのを見つけ、掴み取って見て鑑定してみたら。

 

 

浄化石

 

水に浸けていると不純物を取り除き浄化する石。

 

 

ん、また手に入った水を濾過する石的なもの。他にもあるかな?上流の方へ歩きながら川を見て幾つも同じ石を見つけていた時、上流の頂上と思しき場所へ辿り着いた。滝があるのかと思えば円形状で大きな溜め池と囲むように岩場と群生する木々に変わった感じはないか軽く一瞥するも特に視認はできなかった。滝の裏に行こうにもそこへ行く道がない。

 

「こういう時は水の中も調べるべきだよな」

 

ヘパーイストスから預かった指輪もあるし、今のステータス数値ならば泳げることもできる。そんな軽い気持ちで溜め池の中へ潜った。水中は深くはないが広い上に大量の魚が泳いでいた。天敵のいない環境に恵まれた場所だからかのんびりと俺に警戒しない。

 

「【パラライズシャウト】」

 

水中でも麻痺攻撃は通ずるようで魚達が麻痺状態となり動かなくなった隙に狩ってみればドロップアイテムは落とさない。その代わりといって水底まで泳げば採取アイテムがあると表示する緑のマーカーが至る所に浮かんでいて、全て浄化石だった。集めれるだけ集める精神で浄化石を集めたところで俺は滝の方に横穴がある事に気付いた。滝から流れる膨大な水が流れ落ちる気泡で隠れていたのだ。近づいてみない限り絶対に気付かれない隠されていた穴へ、好奇心で中に入る。横長の洞穴はそれほど長くなかったため、5メートル程度で行き止まり直ぐに水面に顔を出せた。ここは・・・・・?暗くて見えないが、陸に上がれる硬い感触を頼りに水面から出てインベントリから出したランタンで明かりを確保する。

 

「奥にも続いているのか」

 

一体どこに繋がっているのか、多分βテスターも知り得ない隠し洞窟。まさかダンジョンなわけないよな?と思ったのが数分前の事だった。

 

「ぐっ!?また押し戻されたっ!」

 

一人分しか進めない狭小の洞穴の中を進んでいたら、照らした先にオオサンショウウオのような地面に這い蹲っているモンスターとエンカウントし、俺を認知した瞬間に口から放出される水鉄砲に盾で防御すると当然のように押し戻される。―――それから俺とモンスターの意地の張り合いの始まりだ。速く駆けて行けばいいと思った作戦も連続で飛ばしてくる水の塊にぶつけられて後方の地下水に着水する。かれこれ10回以上この繰り返しをしている。俺を認知してから一定の距離を超えると水鉄砲を放つようになった。それも毒竜(ヒドラ)の射程距離の圏外からだ。寧ろあっちのモンスターの攻撃の射程長すぎるんだ。水攻撃にノックバック効果があって避けようにも避けられるスペースも、匍匐前進して進もうにも、狭小の洞窟の空間いっぱいな水の塊を放ってくるもんだから絶対にあたって吹っ飛ばされる。

 

『スキル【水耐性小】を取得しました』

 

「そりゃどうも!こんなじれったい思いは久しぶりだ!」

 

ここで【水耐性】のスキルを取得しろってことか運営め!―――とりあえずせっかくだから【水無効】まで進化させてやるよ!!

 

 

数十分後―――。

 

 

宣言通り、【水無効】も取得するほど時間を過ごした俺だが未だあの水の塊を突破できず、何度も繰り返した失敗にて得た、オオサンショウウオモドキの攻撃がされる位置の前で胡坐を掻いてこれまで試したことに悩む。普通に進んでもダメ、地面に這い蹲ってもダメ、高速での移動でもダメ・・・・・。

 

「【悪食】ならいけそうなんだがな」

 

それじゃあ何か簡単すぎて何のためにもならない。何か別の方法で攻略したいところだ。さて、どうすると暗闇の奥にいる忌々しいモンスターを睨みつける。何となく投げる物が周囲にないから林檎で八つ当たり気味で当たるか分からないのに投げてみた。当たったら攻撃してきそうだが。

 

「・・・・・ん?」

 

ズルと這いずる静かな音が聞こえた。ランタンの光でもまだ姿は見えないが確かに聞こえた。

 

「・・・・・」

 

アルミラージの肉も無言で暗闇に向かって投げつけてみたら更にズルズルという音が聞こえた。

 

「・・・・・そういうことか?」

 

改めて考えるとここはいわばあいつの巣のような場所。侵入者の俺に対して迎撃することは当たり前で何時までもいると餌にありつけれない。となれば・・・・・。思考の海に飛び込んで考え込んだ末に行動をした。来た道に戻り洞穴の横に息をひそめつつインベントリからアルミラージの肉を全力でオオサンショウウオモドキに向かって投げ続け、這いずる音を確認してから肉や果物を投げて水辺に引き寄せること繰り返していたら、ようやく奥からオオサンショウウオモドキが俺の横に顔を出すぐらい誘き出させることにできた。すぐ横にいる俺の存在に気付いていようと、目の前の水に向かって顔から突っ込んで全身も沈ませて消えた。きっと外の魚を食べに行ったんだろう。食用アイテムを大量に減らしてしまったが【気配遮断Ⅰ】と【気配察知Ⅰ】のスキルも取得してしまった。何とも言えない先ほどまでのやり取りに俺は息を吐いた。しかしやり遂げたからには奥へ進もう。何かしらあるかもしれない。巣穴の主が戻ってくる前に速足で進むと、オオサンショウウオモドキがいた場所を越えた先に不思議な光景を目にした。

 

天から降り注ぐ太陽光に照らされて祝福の光を受けているように見える一輪の花。その花がある場所は広大な水の中心に聳え立つ樹木の行く途中で、三十メートルほど泳がないといけない距離の先に水から生えている。でもだ。

 

「採取アイテムじゃない?」

 

神秘的な演出をしているのに不思議に思わせられた俺は、泳ぐ以外にも苔で覆われた八つの足場にも目を付けた。花は八つ目の足場に生えているので、八艘飛びをしてみたくなって移動方法を決めた。鎧と盾を装備から外して身軽にしてから助走をつけて、足場へ跳んだ。最初の三つでは距離は短かったが四つ目以降は足場が広く距離が離れて着地が難しくなっている。それでも何とか五つ目の足場に踏み込んで六つ目の足場へと跳び、なんとか着地して直ぐに足場の上で勢いよく走り助走つけた跳躍で七つ目の足場へと踏み込もうとしたが、

 

「距離が、届くかっ?」

 

空中に踊り出た時に一抹の不安を覚えたが、足場のギリギリに足を踏みつけれて安堵する間もなく八つ目の足場へと向かって跳躍した。しかし、そこでアクシデントが発生した。花が咲いている足場が突然沈みだしたのだ。目を丸くする俺に対して、水面が揺らいだかと思えば水中から飛び出してきた巨大な横顔のモンスター。

 

『オオオオオオオオオオオッ!!!』

 

「はぁああああっ!?」

 

大口を開いて愕然してしまう俺を捕食しようとするその姿にアンコウを彷彿させた。ふざけんな、運営!

 

「【パラライズシャウト】!」

 

鎧と盾を外しても念のために装備したままの鞘ごと短刀を前に突き出し、納刀をする仕草と共に麻痺攻撃をした。モロに受けて麻痺状態となっても大口を開きっぱなしで、背中を窺わせながら迫るアンコウモドキを避けながら足場へ足を踏み込み、緑のマーカーが浮かび出した花を瞬時で視認、採取して跳躍する。

 

「とりゃあー!!」

 

最後の場所へと確かに辿り着いた。手の中にある花を見つめ、達成感の実感と共に息を吐いた直後に背後で激しい水音と水飛沫がした。

 

『スキル【八艘飛び】を取得しました』

 

「何となくそんな感じしたよ」

 

スキルの詳細を見るのは後回しだ。あのアンコウモドキを喰ってやろうかと一瞬思ったが改めて花を確認しようとしたところ。

 

「・・・・・あの」

 

「・・・・・?」

 

声がした方へ振り返ると、大樹の陰から人が現れた。ただし外見は美しく絶世の美女と言われても過言ではないが、耳が尖っていて普通の人間ではないことを察する。樹木に寄り掛かる風に佇む彼女からまた話しかけられた。

 

「もしや、あのモンスターを倒したのですか?」

 

「倒してはいないけど、倒したほうがいいか?」

 

「おまかせします。私はあの上から落ちてしまってここで身動きが取れなくなっていましたから」

 

上というので見上げると、蔓やら蔦やら垂れ下がってる大穴から光が差し込んでいた。まだここは西の森ならば、ここは隠しエリアなのか?あの穴から落ちたプレイヤーはHPが少なければ即死だと思う。

 

「俺は冒険者の死神ハーデスだ」

 

「私はリリアン・アールヴ。見ての通りエルフです。」

 

エルフか。異種族のプレイヤーはいないどころか、初期設定時に異種族を選択するシステムは導入されていないから、彼女の関する何かのクエストが発生しそうな感じがする。

 

「どうしてここに?ああ、この森にいるのかという意味で」

 

「ある方にご助力を求めて旅をしていました」

 

「どんな人?」

 

「大樹の精霊です。あの精霊様の恩恵を享け賜わりたく・・・・・故郷であるエルフの里の危機ゆえに」

 

あ、これイベント発生したっぽい。クエストも発生して躊躇わず受理したけどさ。

 

「その精霊なら心当たりがある。案内するけれどどこか怪我とか具合はどうなんだ?」

 

「落下した際に腕と脚が骨折してしまいました。私の荷物もあの穴から落ちてしまった際に所持していた薬全て・・・・・」

 

チラリと湖の方へ視線を送る。なるほど、あそこに落ちてしまっているのか。

 

「癒しの魔法は?」

 

「使えます。ですが、骨折した骨を治すには治癒力が足りません」

 

捻挫なら癒せるのかな。

 

「荷物を拾ったらこの近くに町がある。そこでしばらく静養しないか?と言っても畑の中だけど」

 

「え、いえ、大丈夫です。あの魚のモンスターを倒していないのにそんなことさせるのは・・・・・」

 

「大丈夫だ。今すぐ持ってくる」

 

戦闘準備を整え、いざ出陣!!

 

数分後。

 

「荷物はこれか?」

 

「は、はい。あっという間に・・・・・」

 

俺を餌に襲わせてパラライズシャウトで麻痺状態にし、今湖に浮かんでいるアンコウモドキの口の中に入って探してみると、リリアンの荷物が見つかった。すぐに口から出て彼女に手渡す。中身を取り出して確認をする彼女の顔色は、大事なものは全てあったようで安堵の色が滲んで浮かんだ。さて、次の問題はこの場から脱出する事なんだが・・・骨折しているのであれば、俺の背中に負ぶさって行くにもいかないな。

 

「ん?何だそれ」

 

「エルフにしか作れない秘薬です。万が一の為にと里から持ってきました」

 

取り出した一つ、ガラスの瓶の蓋を取って飲もうとするリリアンを見つめる。それを飲み干す彼女しかわからない怪我は、癒えたのかしばらく待っているとゆっくりと立ち上がった。秘薬を飲んだことで完治した様子で安堵する。

 

「誠にありがとうございます。貴方がこの場に来なければ私はここで野垂れ死に至っていたでしょう。命の恩人です」

 

「リリアンが幸運だったんだ。それとも俺達が出会うことは既に決められた運命(さだめ)かだ」

 

「貴方と出会うのが運命・・・・・ふふ、素敵な言葉です。そのような言葉を向けられたのは生まれて初めてです」

 

綺麗な微笑を浮かべ、好感を持ってくれたようで素直に嬉しい。あ、クエスト完了した?報酬は何もないのは不思議だな。でもこの感じは・・・・・。

 

「さて、精霊に会いたいなら一緒にどうだ?今日は木の日だから会えると思う」

 

「お願いします」

 

そうと決まれば鷹の羽衣を纏い大きな鷹に変身して翼を広げる。

 

「鳥になれる羽衣・・・・・」

 

「一人分なら背中に乗せて飛べれる。ほら、しがみ付いて」

 

「はい、では失礼しますね」

 

後ろから両腕を回してしがみ付く彼女をそのままにして天井から降り注ぐ光へと向かって飛び、洞窟の中から飛び出して見せた。すると背中から感嘆の声が聞こえる。

 

「凄い・・・・・これが世界・・・・・」

 

「地上からじゃあ中々見られない光景だろう」

 

「ええ、本当に・・・・・全てが美しく見えてしまうほど新鮮です」

 

きっと顔を見れば子供のように輝かせているだろうな。そう思わせるほど彼女から高揚感が伝わってくるのだ。しばらく空の遊泳をして様々な景色と場所をかなり遠回りしながら町へとのんびり帰途に就く。

 

そして始まりの町の南方の農業区にある俺の畑の中に戻るとオルトとミーニィが出迎えてくれた。

 

「ただいま」

 

「キュイ!」

 

「ム、ムー?」

 

「ああ、彼女は森の中で知り合ったリリアン・アールヴだ」

 

「ム」

 

わかったと頷くオルトとミーニィを自己紹介する。

 

「この子は土の精霊ノームのオルト、こっちはピクシードラゴンのミーニィ」

 

「ム」

 

「キュイ」

 

頭を下げるオルトとミーニィを彼女は驚嘆の念を抱いた様子で語り始めた。

 

「土の精霊・・・・・。凄い、初めてみました。私も知識だけなら彼の四大精霊の事は知っています」

 

「そうなのか?」

 

「ええ、言い伝えではかつて古の時代で精霊は人間と共に地上に生活をしていました。しかし、時代の流れと刻は残酷で人間同士の争いが始まると精霊の力に目を付け始め、争いの道具にしようと悪い人間達がいました。ですが、それでも彼等の中には善良な人間がいましたので、それぞれ四方の方角でどこか彼等の安全な場所を優秀な魔法使い達が作り特別な方法でしか入れなくしたのです」

 

四方の方角・・・・・オルトに小屋から椅子を持って来てもらい彼女に座ってもらう。

 

「それって西に風が通り抜ける時に音が鳴る、穴の空いた大岩と南には何をしても火が消えない樹木程の高さの巨大な松明。北に高さ3メートル程の板状の岩が6枚、円を描くように設置された小さいストーンヘンジのような場所。東に周辺に色とりどりの花が咲き乱れる、綺麗で深い泉・・・・・が精霊達の住処ってことになるのか?」

 

「そこまでは、すみませんわかりません。ですけど、この言い伝えは約千年前から語り継がれています。私も一度は会って見たいと思っていましたのですごく感動的です」

 

種族が違えど無視できない種族のようだ彼女の種族は。

 

「じゃあ、あの大樹の苗木は見てどう思う?」

 

「え?・・・あ、あの苗木・・・・・私の里で古くから生えている神聖な樹木とよく似た力を感じます。どうしたのですか?」

 

それについて経緯を話すと彼女はびっくりしたように目を丸くする。

 

「この町を守る大きな大樹に宿る精霊・・・・・この町もまた神聖な場所であることは変わりません。精霊が存在する場所は魔を引き寄せない私達の目では見えない不思議な領域を発生するのです」

 

そんな設定?があるのか。色々聞いてみるのも損じゃないのは確かだ。さてオルト君にこの黄金林檎と花の

今回の採取アイテムを全て渡す。そう!勿論黄金の林檎もだ!

 

「あっ!」

 

「え・・・・・?」

 

「その黄金の林檎・・・・・」

 

物欲し気に見つめる黄金の林檎。え、まさか・・・・・?まさかだよね?彼女は深々と俺に頭を垂らした。

 

「・・・・・差し出がましいのは承知の上で申し上げます。どうか私に黄金の林檎をお譲り頂けませんか?」

 

唐突にクエストが発生してしまったっ・・・・・!く、何でこんな時にだよっ!?

ここで拒否したら黄金の林檎をオルトに渡して育ててもらえるがっ。

 

「ダメ、でしょうか?」

 

「・・・・・」

 

クエストの先に何があるのか、気になるじゃんか!ええい、もう自棄だ(涙)!

もう心の中で泣く泣く手渡す。彼女は顔を明るくして手の中にある黄金の林檎を大事そうに持ってお辞儀をした。

 

「ありがとうございます!あ・・・・・これはノームに育ててもらうつもりでしたよね?ではこれも育ててもらいましょうか」

 

「いいのか?」

 

「ええ。黄金の林檎が実った暁には一つ、私に譲ってくれませんか?勿論良ければの話ですけど」

 

「まぁ、当初の目的ができるし構わないぞ。黄金の林檎で作ったお菓子を食べたいから」

 

「お菓子・・・・・とても興味があります」

 

ふふふ、わかってるじゃないか。早速オルトに残りの高級肥料を使ってもらって黄金の林檎を苗木に、花を株分スキルで三粒にして種を畝に植えて水を撒く。あ、ハーブが収穫できる。

 

 

黄金林檎の苗木

 

レア度:7 品質:7

 

効果:黄金の林檎に成長する苗木。初心者では生育不可能。

 

 

ふむ、やはり育てるのは難しいらしい。オルトに育樹のスキルあってよかっ―――。

 

『スキル【使役】を取得しました』

 

ん?使役?テイマーとサモナーのスキルだったよなこれ?

 

 

スキル【使役】

 

このスキルを取得したプレイヤーが使役するモンスターの数をスキルレベルが5上がるごと+1にする

 

取得条件:テイムしたモンスターを一定以上使役すること。

 

 

あーなるほど。専用職じゃないからテイムできる数が少ないかじゃなくてこういうことね。

 

「あの、悩み事でも?」

 

「ああ、いや。疑問が解消したところ」

 

「そうですか」

 

ただこのNWOの職業仕様はかなり変わっている。専用装備は存在すれど、戦士職業を選んでもステータス数値によってスキルだけじゃなく使える武器が幅広く使えるようになる。他の職業である弓兵や騎士に重戦士の装備でもだ。一つの職業に縛られないジョブのシステムもあるように、プレイを楽しんでもらいたい運営の計らいが感じさせるよな。

 

なので片手剣士の職業を選んだプレイヤーは、剣のスキルともう片方装備できる小さな盾で防御することで盾使いのスキルが取得でき、STAの数値次第では大盾使いのスキルも取得、使用できて―――上級職業の騎士にクラスチェンジが可能になる。実は俺もその気になれば大盾や短刀だけじゃなくて大剣や斧も扱えることができる。ただし二度も言うが、一つの職業で幅広く武器を扱えるにはステータス数値が依存する。

 

「それじゃ、精霊のところへ案内するよ」

 

「お願いします」

 

そう言われた直後。俺の目の前に青いパネルがヴンと浮かび上がった。

 

 

貴方の仲間になりたそうにこちらを見ています。仲間にしますか?

 

 

は?何これ?―――某冒険者ゲームのモンスターのアレかよ運営!!モンスターならともかくNPCにこの表示で承諾の有無を決めさせるな!?

 

だが、結局は・・・・・彼女を仲間にすることにして町中を共に歩くが、突然電話のようなコールが鳴り響いた。フレンドコールだな。

 

「ヘルメスか・・・・・はい」

 

「あ、ハーデス君。今日は木の日だよね。もしも精霊の祭壇に行くつもりだったらさ、私達も祭壇に連れて行ってもらえないかしら?」

 

「今、行こうとしている所だがついてくるか?」

 

「え?そうなの?じゃあ、お願いできる?少しでも早く検証したいのよ。あと、他のギルドメンバーを連れて行っても構わない?捧げ物のデータは多い方が良いし」

 

「構わないぞ」

 

「ありがとう。じゃあ、2人追加ってことで」

 

「わかった。ヘルメスの露店に集合か?」

 

「ええ。構わないわ」

 

と言う事で、俺はヘルメスの露店に向かうのだった。

 

 

 

「いらっしゃい。待ってたわ・・・よ」

 

出迎えてくれたヘルメスがリリアンを見た瞬間に言葉を失って物静かになった。ヘルメスのギルドメンバーらしき男女のプレイヤーも同じくぎょっと目を丸くしてるし。

 

「まず紹介からだな。彼女はエルフの里から来たリリアン・アールヴだ。大樹の精霊に会わせるため連れて来たんだ」

 

「よろしくお願いします」

 

「あ、は、はいっ。こ、こちらこそ、よ、よろしくお願いしますっ。ハーデス君、ちょっと来なさい」

 

リリアンから引き離され、俺の肩に腕を回して密着してくるヘルメス。意外と大きいものをお持ちのようだが、彼女の顏は焦りの色を滲ませていた。

 

「ど、どういうことっ!?なんでNPC、それもエルフと一緒にいるわけ!?どういう経緯で出会ったのか教えてちょうだい!」

 

「長くなるから精霊と会わせてからでいいか?多分これ、イベントが始まる切っ掛けっぽいんだよ」

 

「そんな重要な瞬間を立ち会わせる気だったの!?尚更一緒に行かせてくださいお願いします!」

 

いや、別に構わないんだけどさ。静かにしてくれよ?

 

というわけで自己紹介は手短くで、武器屋のルフィンと、農業系の店をやっているメイプルシロップが、ヘルメスと同じギルドメンバーと一緒に行くことになった。

 

「おう、よろしく頼むぜ」

 

「よろしくー」

 

「じゃあ、早速パーティを組もうか」

 

「あ、ちょっと待って。パーティを組まなくても入れるかどうか知りたいから、まずはこのまま行きましょう」

 

「いや、鍵を持っていないプレイヤーは入れない話だって教えただろ?」

 

「そうなんだけど、それでも検証する必要があるのよ」

 

施錠されてるのに入れるわけないのになぁ。まぁ、好きにさせるか。祭壇までは遠くないし。入り口のある橋まではすぐに到着した。

 

「本当に水路に入るんですねー」

 

「足は付くのか?」

 

水路を見るルフィンの顔が引きつっているな。水が苦手なのか?

 

「大丈夫だぞ。一番深い場所でも腰くらいまでしかありませんから」

 

「なら大丈夫か」

 

「泳げないのか?」

 

「ああ、俺は現実でもカナヅチなんだ。こっちで泳げるかどうかも分からん」

 

水泳スキルもなく、リアルで泳げないんじゃ、NWOの中でも泳げない可能性はある。俺は水泳スキル無しでも軽くは泳げたので、リアルスキルの影響はあると思うが。ゲームの中で泳げれるようになったらリアルでも泳げれるかもしれないよな。水路に降りた俺を先頭にして、橋の方へと進む。

 

「こっちだ」

 

「ワクワクするわね」

 

「おお、扉があるな」

 

皆が橋の下に入ったことを確認し、俺は隠し扉に鍵を差し込む。扉は問題なく開いてくれた。だが、ヘルメス達には扉が閉まったままに見えているらしい。なんか俺が何もないところで手を動かしているように見えているようだ。うーん、間抜けな姿だ。

 

「やっぱり無理みたいですねー」

 

「じゃあ、パーティを組んでみましょう」

 

すると、ヘルメス達にも扉が開いて見えたようだ。やはりパーティを組んでいなくちゃいけないんだな。

 

「本当に階段がありますー」

 

「灯はあるのね」

 

「薄暗いから足元に気を付けて」

 

階段を下りて、祭壇へと向かう。途中で二股になっているが、祭壇がある右へと進んだ。ヘルメスは興味深げに左の通路を覗き込んでいるな。

 

「あっちは何があるのかしら?」

 

「ああ、精霊の自室だ」

 

「精霊の部屋・・・・・?」

 

「こっそり覗き見したら精霊が寝食するための環境が完備されていたから間違いない。寄り道せず進むぞ」

 

そして、祭壇のある部屋の前に到着する。

 

「ここが祭壇のある部屋?」

 

「ああ。開けるぞ」

 

その扉はやはり簡単に開いた。部屋の中には以前見たのと変わらぬ、巨大な大樹の根と、その根に囲まれる祭壇があった。

 

「えーっと、精霊様、いるかな?」

 

「はい。お久しぶりですね冒険者よ」

 

「あ、どうも。一週間ぶりです」

 

「おおー、精霊だ」

 

「綺麗ですねー」

 

「私達にも見えるわ」

 

なら問題ないな。じゃあ本題に入ろう。

 

「ここが・・・・・精霊様が降臨する祭壇」

 

「そうだ。じゃあ、ゆっくり話をしてくれ」

 

「ええ。ありがとうございます」

 

リリアンと精霊からヘルメス達と一緒に三歩程下がって見守る姿勢に入る。

 

「精霊様。どうかお願いがございます。精霊様のお力が必要なのです」

 

「エルフの者ですか。数百年振りに会いましたね。私に何を願いますか」

 

「古から私の里を見守り続けていた神聖樹の生命力が弱まり、里に押し寄せる悪しきもの達が森に現れるようになりました。その原因の究明、もしくは精霊様の恩恵で再び神聖樹に力を与えて欲しいのです」

 

彼女の里の危機というのは本当だったのか。ということはこれ・・・・・大イベントに関するクエストだったりする?精霊の返答は如何に・・・・・?

 

「申し訳ないのですが、私ではその願いを叶うことはできません。神聖樹の生命力が弱まっているのは寿命が尽きかけているのか、あるいは悪意を持つ強力な何ものかが神聖樹を穢しているかもしれませんが、直接関与することは私はできません」

 

「・・・・・」

 

「しかし、悲観するのはまだ早いのも事実です。彼の冒険者を見なさい」

 

諭される精霊に従って俺に振り返るリリアン。

 

「彼が―――彼等冒険者があなたの里を救う力となりうる可能性を秘めております。私が保証しましょう」

 

それ、他力本願・・・・・丸投げしてませんかねぇ・・・・・?

 

「心から神聖樹を、里を想うならば彼等冒険者を頼りなさいエルフの者よ。それが現在貴方が出来る最善の方法です」

 

それだけ言ってスーと精霊は俺達を残して姿を消した。これでリリアンの目的は一応達成された感じだが・・・・・納得できたのかな。

 

「リリアン。これからどうする?」

 

「今の精霊の話を里の長老にお伝えします。私達エルフだけでは解決できないものであれば、里の異変を解決に必要ならば人間達の力を借りなければいけないのかもしれません」

 

「もしかして鎖国的な感じだったのかエルフの里は」

 

「いえ、度々私達からも人間の国や町に訪れて交流することもあります。エルフの里にも人間の商人が訪れて物々交換をしていますから鎖国的ではありません。しかし、里に人間を滞在させたことは一度もありませんが・・・・・」

 

事が事だから里に滞在させざるを得ないが、俺達の事を知らないエルフ達からすれば懐疑的な印象を抱かせ兼ねないな。

 

「ハーデスさん。私は今すぐにでも里へ戻ります。今日は本当にありがとうございました」

 

「善は急げって言うけど、事を急いでは損じるぞ。また見えない穴に落ちて身動きが取れなくなってしまいましたじゃあな」

 

ということで、鷹の羽衣をリリアンに渡す。

 

「これを纏えば鷹になって空から一っ飛びができる。貸すよ」

 

「え、ですがこれ・・・・・大切な物では?これほどの魔力が籠った品はかなり貴重な物ですよ」

 

「物ひとつで大勢の命が救えるなら安い物だ。リリアンの里が俺達に協力を仰いだ時、俺も力を貸しに里へ訪れる。俺が来たらその時にでも返してくれればそれでいいさ」

 

朗らかに笑みを浮かべ彼女の胸に押し付ける。鷹の羽衣を胸に抱え唖然と見つめてくるリリアンは徐に手袋を外し、白磁のような華奢な指から研磨された翡翠色の綺麗な宝石の指輪を抜いてを差し出してきた。

 

「ここまで私に尽くしてくださるあなたに感謝をします。ならば私もそれに報いることをしたくこれを授けます。これは私の里では旅のお守りとして森妖精(エルフ)の職人が作り出す宝石の指輪です」

 

「大切な物じゃ?他種族に渡しても大丈夫なのか?」

 

「私が最も信じるに値する者にしか授けません。それは私からの贈り物と同時にもしも森妖精(エルフ)の里、しかるべき場所にいる者達へ見せてください。私―――王族の白妖精(ハイエルフ)であるリヴェリア・アールヴからの授かりものだと言葉を述べて」

 

 

彼女から貰ったお守りの宝石の指輪を鑑定してみれば、意外と高性能だった。

 

 

白妖精(ハイエルフ)の指輪【レア】★10 品質:10 破壊不能

 

【INT+100】【HP+100】【MP+200】

 

 

自然回復:装着者のHPとMPの数値を毎秒最大5回復。

 

 

え、時間制限の自動回復じゃなくて自然回復?

それにレア度も高いし壊れない装飾品ってどれだけエルフの技術が高いんだ。レア度も品質も最上位クラスだこれは。

 

「ハイエルフ?リヴェリア・・・・・?」

 

「すみません。私の素性は同族の者以外に知られてはなりませんでした。エルフの王族が、ハイエルフが人間の国や町に訪れたら余計な諍いを起こし、この身に面倒なことに巻き込まれてしまう恐れがありますから」

 

恩人に隠し事をして申し訳ございません。と頭を深々と垂らそうとする彼女の額にデコピンをする。いたっ、と口から零し額に手を抑えて不思議そうな顔を浮かべる彼女に言う。

 

「隠し事したなんて気にしてないっての。そんなこと里の危機と比べれば小さいわ。申し訳ないと思うならばまた後で自己紹介をすればいいだけじゃないか」

 

「ハーデス・・・・・」

 

「ほれほれ、何時までもここに居ちゃ俺達は里の危機を救えないって。俺達冒険者も発表されなきゃ準備も出来ないし必要になるんだから長老にこの事を伝えてくれよ」

 

急かされるリリアン改めリヴェリアは小さく苦笑を浮かべ「そうですね」と頷いた。それからヘルメス達と精霊の祭壇を後にして水路に出ると・・・・・プレイヤー達が好奇と奇異的な視線を見下ろしていた。もしかして出てくるのを待っていたのかよ?水路から這い上がって地上に戻るとリヴェリアはその場で鷹の衣を纏い、鷹そのものに変身すると力強く翼を羽ばたかせ一気に空の彼方へと飛びだって行った。

 

 

見送った後、祭壇に戻ると再び精霊が姿を見せてヘルメス達から捧げものを受け取りをしていた。

 

「じゃあ、私はこれを供えるわ」

 

ヘルメスが祭壇に供えたのは、何かの鱗だった。鑑定すると、レッサー・レックスの逆鱗となっている。

 

「今入手できる魔物素材の中でも、かなり上位の素材よ。何せエリア3のフィールドボスのレアドロップだからね」

 

「おおー、いいのか?そんなすごいもの」

 

「検証の為よ」

 

「ではあなたに祝福を授けましょう。これをお持ちなさい」

 

「これは・・・・・アイアンインゴット?」

 

 

 

名称:アイアンインゴット 

 

レア度:3 品質:★6

 

効果:鉄で出来たインゴット

 

 

品質が高いな。これは当たりか?イズに訊いたらどんな返事をしてくれるのだろうか。

 

「す、すごいわ!」

 

「ああ、やっぱりか」

 

「ええ、そうよ!アイアンインゴットっていったら、トップ鍛冶プレイヤーの中でも、ほんの一握りのプレイヤーがようやく作れるようになったのよ? それも低品質の物を! それが★6? 誰でも欲しがるわ!」

 

「おう! これは、楽しくなってきたぞ!」

 

寡黙なルフィンが興奮して叫んでいる。どうやらかなり凄い物みたいだな。俺もインゴット見るのも初めてだから興味津々だ。

 

「今はまだブロンズ系、カッパー系が主流でアイアン系はほとんど流通していない。ここでアイアンインゴットが手に入ると分かったら、かなりの奴が来たがるぞ。金を積めば手に入るってもんじゃないしな!」

 

詳しく話を聞いてみると、防具や特殊効果の付いたアイテムを作るには鱗の方が適しているらしい。だが、単純に性能だけを見ればアイアン装備の方がかなり上なんだとか。だがその原材料になる鉄鉱石は、第3エリアのレアモンスターのレアドロップらしく、欲しくても手に入らないのが現状らしい。

 

興奮冷めやらぬ2人を横目に、メイプルシロップが祭壇に近寄る。マイペースな人だ。

 

「じゃあ、次は私ですー。はい、これー」

 

メイプルシロップが祭壇に置いたのは、俺と同じ高級肥料だった。同じものを供えて、何が貰えるかという検証らしいな。そして、メイプルシロップが与えられたアイテムは、大樹の果実ではなかった。その代わりに与えられたアイテムは綺麗なピンクの花びらだ。

 

 

 

名称:水臨樹の花弁 

 

レア度:3 品質:★7

 

効果:合成に使用すると、元の素材の品質を1つ上昇させる。最大で★7まで。変異率上昇。

 

「へえ面白いですね」

 

確かに面白そうだ。合成で品質を上げるのは、品質が上がるにつれて難しくなっていくし。俺も欲しい。でも、なんで違ったんだ?

精霊に聞いても教えてはくれなかったが、ヘルメス達は初回ボーナスのようなものではないかと推測していた。

 

「最後は俺か。これを供えるぞ」

 

ルインが置いたのは普通の銅鉱石だ。多分採掘したのをそのまま持ってきたんだろう。供えるにしても、もう少しましな物があるんじゃなかろうか?

 

「え? そんなの?」

 

アイアンインゴットを狙えばいいのに。

 

「最低でも何が入手できるか、調べんといかんからな」

 

検証の為だったらしい。確かに俺も何が貰えるか気にはなるな。ただ、ルインに与えられたのはアイテムではなかった。なんと、12時間満腹度が減少しないというバフだったのだ。

 

「まあ、クズアイテムではたいした見返りはないってことね」

 

「俺的にはそれもいいと思うんだが」

 

わざわざ8週間に一回しか来れない祭壇に来て、このバフはさすがにないと思うプレイヤーはいるかもしれないけどな。すると精霊に、ヘルメスが質問をする。

 

「あの、ちょっと聞きたいんですけど。鍵を持っているハーデス君に頼めば、誰でもここまで来れるってことかしら?」

 

ヘルメスの疑問に、精霊様が頷いた。

 

「ええ、その通りです」

 

「それって凄いわよ? ここに連れてくることを商売にできるかも?」

 

さすが商売人だな。発想が凄い。ただ、さすがにその商売は俺には無理。性格的に向いていないと思うし、結構な時間を拘束されちゃうだろう。

 

さらに、精霊の発した次の言葉でヘルメスの計画は無理だったと分かる。

 

「ただし、1つの鍵は所持者以外に5名までしか登録できませんが」

 

「え? 登録?」

 

「はい」

 

精霊の言葉を聞いて、俺は鍵を確認してみた。鍵を取り出して、鑑定してみる。すると、所持者:死神ハーデスの表記の後に、登録者の名前が追加されており、そこにはヘルメス、ルフィン、メイプルシロップの名前が記載されている。

 

「これって、登録解除はできないんですか?」

 

「できませんね。ですが、複数の鍵に登録することは可能ですよ。祝福を得る回数が増える訳ではありませんが」

 

ということは、この鍵にはあと2人しか名前を登録できないってことか。

 

「ごめんなさいハーデス君」

 

「まさかこんなことになるとは・・・・・」

 

「すまん」

 

三人は謝ってくれるが、正直俺ってフレンドもほとんどいないし、連れてくるような当てもない。そこまで残念でもないんだけどね。

 

 

 

「何か代価を払うわ」

 

「いや、そこまでしてもらわなくてもいいって」

 

「ダメよ。情報提供してもらって、損失まで与えちゃったら情報屋の沽券に係わるもの」

 

「でも、もう情報料は貰っているし」

 

「それじゃ全然足りないわ!」

 

ということで話し合った結果、大樹の花弁とアイアンインゴットまで貰えることとなってしまった。まあ、俺だって欲しくない訳じゃないし? 貰える物は貰っておくことにした。なんか逆に得したんじゃないか?

 

 

 

 

 

 

【新発見】NWO内で新たに発見されたことについて語るスレPART15【続々発見中】

 

・小さな発見でも構わない

・嘘はつかない

・嘘だと決めつけない

・証拠のスクショは出来るだけ付けてね

 

 

221:ロイーゼ

 

 

俺は凄い者を見てしまった。

 

 

222:メタルスライム

 

 

聞かせてもらおうか

 

 

223:ふみかぜ

 

 

この町で凄い物を見つけることができるのかな。始まりの町でシンボル的なのは巨大樹のみで他は何もなし期待感は薄いな

 

 

224:ロイーゼ

 

 

≫223よ。俺は凄い者と言って凄い物ではないぞ?そしてそう言っていられるのは今の内だ。

これを見よ('ω')ノ(スクショ)

 

 

225:佐々木痔郎

 

 

ん?エルフ?

 

 

226:メタルスライム

 

 

隣にいる男は・・・・・あっ、ミスリル事件の・・・・・チラッ|д゚)

 

 

227:トイレット

 

 

ヒィイイイイッ!!!

 

 

228:ふみかぜ

 

 

止めてあげて!≫227のHPが0だよ!

 

 

229:アカツキ

 

 

エルフを選べるようになったのか?そんな話は聞いたことないんだが

 

 

230:ロイーゼ

 

 

ああ、そうだとも。最初は俺もそう思っていたのさ。だが、このエルフの女性は・・・・・NPCであった

 

 

231:ヨイヤミ

 

 

確かめてきた。鑑定したら間違いなく青いネームのNPCだ。この始まりの町には絶対に存在しないはずのNPCエルフがどうしてここにいるのか詳細は不明だが。

 

 

232:ふみかぜ

 

 

マジ話でNPCのエルフ?

 

 

233:ヨイヤミ

 

真剣=マジだ。しかも現在進行形で二人が南西の方へ向かうので後を付けたら、NPCとプレイヤーが・・・・・水路に降りていった。

 

 

234:ロイーゼ

 

 

な・・・・・ん?どういうことだ?

 

 

235:メタルスライム

 

 

え、何で水路・・・・・あ、大樹の精霊か!今日は木曜日だから会える!

 

 

236:アカツキ

 

 

エルフと精霊・・・・・これ、何かのイベントと繋がってるのか?

 

 

237:トイレット

 

 

どっちも絶世の美女だから是非とも参加したい!あわよくばエルフが住んでいる場所に永住したい!

 

 

238:ヨイヤミ

 

 

まぁ、落ち着け。彼のおかげで俺達にもワンチャンがあることが分かっただけでも行幸だろ?どうやらNPCを仲間にすることができるようだし、俺達プレイヤーもNPCの力を独占できるチャンスでもある

 

 

239:トイレット

 

 

ハッ!確かに!

 

 

240:ふみかぜ

 

 

じゃあ、俺は一足早くギルドのお姉さんを口説いてきます☆

 

 

241:メタルスライム

 

 

止めておけ、噂によると彼氏がいるらしいぞ

 

 

242:ロイーゼ

 

 

そんな情報をどこから手に入るんだよおい。てか、もう見ていないと思うぞ

 

 

243:ヨイヤミ

 

 

では、彼の命運に祈ろう。合掌(⁻人⁻)

 

 

244:メタルスライム

 

 

(⁻人⁻)

 

 

245:アカツキ

 

 

(⁻人⁻)

 

 

246:ロイーゼ

 

 

(⁻人⁻)

 

 

247:アカツキ

 

 

(⁻人⁻)・・・・・トイレットはどうした?

 

 

248:メタルスライム

 

 

同じ道を進んだようだ。

 

 

 

 

 

 

【農業】農夫による農夫のための農業スレ1【ばんざい】

 

:NWO内で農業をする人たちのための情報交換スレ

:大規模農園から家庭菜園まで、どんな質問でも大歓迎

:不確定情報はその旨を明記してください

:リアルの農業情報は有り難いですが、ゲーム内でどこまで通用するかは未知数

 

 

 

53:チチ

 

いつの間にか植えられた林檎の苗木だらけの畑があってびっくりした。どれだけ林檎が好きなの?って思うほどだったよ

 

 

54:つるべ

 

俺もそれ見てほしくなった。林檎の苗木どこにあるか知らない?始まりの町の店には売ってないんだよ

 

 

55:ノーフ

 

フィールドにあると思われる。胡桃も西の森の奥で見つけたから

 

 

56:ネネネ

 

モンスターに襲われながら戦い見つけるのもしんどい私は、畑を一生懸命耕している謎の小さい男の子の頑張る姿に癒されています。その子はここ最近、頭の上に何やら毛玉を載せてるけどそれも愛らしい・・・。

 

 

57:プリム

 

同じく!「ムムームー」って可愛よか!何あの子、欲しいんですけど!

 

 

58:セレネス

 

それ、多分ノームじゃね?

 

 

59:ノーフ

 

ノーム?

 

 

60:セレネス

 

確か、βじゃあ第3エリアで発見されて、スキルの殆んどがファーマーとしての能力は非常に高く、中堅の生産職と比べても遜色ない農夫系モンスターって、トップテイマーのプレイヤーの掲示板で見た。フレもノームで農業してたな。

 

 

61:ネネネ

 

ノームちゃんね。そのノームちゃんはどこで手に入るの?

 

 

62:セレネス

 

流石に知らないよ。情報屋でも売られてないことだし。

 

 

63:プリム

 

私も欲しくなった!絶対ノームちゃんのこと訊きだしてやるんだから!

 

 

64:つるべ

 

マナー守れよー。ついでに情報収集よろしく!

 

 

65:チチ

 

なぁ、俺の幻覚か?町中でNPCの絶世の美女エルフを見かけたんだが

 

 

66:つるべ

 

始まりの町にNPCのエルフなんている筈がないだろ?プレイヤーと間違って・・・・・ファッ!?

 

 

 

 

 

数多の奇異な視線を浴びながら水路から精霊の祭壇へ経由してリリアンを案内する。彼女があの精霊に恩恵を欲しがっている謎はまだ解らないが、これからわかる事だろうと思いつつ彼女が会いたがっている場所へ辿り着いた。

 

 

 

死神・ハーデス

 

LV18

 

HP 40/40〈+100〉

MP 12/12〈+200〉

 

【STR 0〈+129〉】

【VIT 150〈+66〉】 

【AGI 0〈+120〉】

【DEX 0〈+120〉】

【INT 0〈+100〉】

 

 

装備

 

頭 【空欄】

 

体 【黒薔薇ノ鎧】

 

右手 【新月:毒竜(ヒドラ)

 

左手【闇夜ノ写】

 

足 【黒薔薇ノ鎧】

 

靴 【黒薔薇ノ鎧】

 

装飾品 【フォレストクインビーの指輪】【古の鍛冶師の指輪】【白妖精(ハイエルフ)の指輪】

 

 

称号:万に通じる者 不殺の冒険者 出遅れた者 白銀の先駆者 毒竜の迷宮踏破 大樹の精霊の加護

 

スキル

 

【絶対防御】【手加減】【体捌き】【瞑想】【挑発】【極悪非道】【シールドアタック】【大物喰らい(ジャイアントキリング)】【毒竜喰らい(ヒドライーター)】【爆弾喰らい(ボムイーター)】【植物知識】【大盾の心得Ⅹ】【悪食】【受け流し】【爆裂魔法Ⅰ】【エクスプロージョン】【体術】【幸運】【テイム】【採取Ⅰ】【採取速度強化小】【使役Ⅰ】【錬金術Ⅹ】【料理ⅩⅩ】【調理ⅩⅩ】【調合ⅩⅩ】【水無効】【気配遮断Ⅰ】【気配察知Ⅰ】【八艘飛び】

 

「・・・・・」

 

全力の時以外、外しておこう。防御特化の極振りプレイが明らかに遠ざかってるぞこれ。

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