いよいよ二つ目に発生させたレイドボスが始まる日となった。始まりの町で開始するならどこだっていいだろう。ホームの中でその時を待つの考えをするプレイヤーは俺だけじゃなかった。
「この魔茶葉、凄く美味しいしMPを増加だけじゃなくて消費MPも30%カットだなんて。ハイエルフ直伝の消費MP20%カットする料理も食べたら魔法スキル使いたい放題になるよ」
どっちも飲食してるフレデリカ。持続効果は短くても何か食べたくなったとドラグに釣られてペインとドレッド、昨日からいるイッチョウ達と皆で食事会が始まった。
「あーい」
「お、茶か。ありがとうよ」
お手伝いスキル発動中のマモリから魔茶葉の茶を淹れた湯飲みを受け取るドラグ。
「リヴァイアサンレイドも近いってのに、別のレイド戦を発生させるとはなハーデス」
「狙ってやったわけじゃない。そっちこそ何か進展とかあったのか。白虎とか」
「何度も敗北した末に辛勝だったがやっと白虎に認めてもらったぜ」
「むっ」
それは凄いな。
「どんな恩恵を貰えたか教えてもらっても?」
「スキルは【疾風怒濤】。走っている間は【AGI】と【STR】が最大50上昇するよ。止まったら効果が無くなるけど」
フレデリカに教えてもらったスキルは意外と重戦士には難しい? 0に何を足しても0だから・・・・・いや、あのスキルと合わせればそうでも・・・・・?
「どーやら、私達の知らないところで新しいスキルを手に入れた感じかな」
「味方ならいいの。味方なら」
「ペイン、ハーデスと全力のタイマンで勝てるか?」
「彼の強みは超越した防御力と多種多様なスキルだ。それを攻略できればね」
「できなければ勝てないってことか。ああ、俺はもう諦める。フレデリカのサポートあっても勝てそうにないわ」
なんか失礼なこと言われたがそろそろイベントの時間だ。
「イベントが終わったら俺も白虎と勝負しに行こっと」
「こうして神獣に勝ってまたスキルを手に入れて、手に負えなくなっていくんだねハーデス君」
「一度もダメージを受けていないっていうイッチョウもこちら側に片足踏んでるようなもんだが?」
「嘘でしょ!?」
心外だと驚くイッチョウ。闇霊の里で購入したローブと骸骨の仮面を装着したところで運営からのアナウンスであった。
『レイドボスイベント、開始5分前となりました。これから特設フィールドに転送します』
目の前に参加するかどうかの問いが表示される。俺は迷わずYESを選択した。すると、目の前の景色がウミョウミョと歪み始める。そして、暗転した。驚く間もなく、目の前に広がる景色が変化する。森の中に転移させられたらしい。
雑木林にぽっかりと空いた、小さな広場のような場所であろう。ただし、光の壁が周囲を囲っており、そこから出ることができないらしい。パーティを組んだ状態で一緒に転送されたイッチョウが触れて確かめたからだ。
「サイナ、全員いるな?」
「はいおります」
「ムム!」
「キュイ!」
「クママ!」
「―――♪」
「キュー!」
「ヤー!」
「ヒムヒム!」
「フマー!」
「フム!」
「モグモ!」
「グルル」
「メェー!」
「ヤミー」
「ピカッ」
「ピィ」
『―――』
《―――》
「ブルル」
『にゃ?』
ベンニーア、エンゼとルーデル、セキトにウッドとクリス、そしてフレイヤもいる。うん、全員いるし可愛いなー。神獣使いって無限の可能性を秘めていたとは・・・・・。
「おや? もしや・・・・・白銀さんですか?」
「うん? ああ、コクテン?」
振りむいた先にいたのは、イベントなどで世話になった前線プレイヤー、コクテンだった。彼のパーティメンバーたちの姿もある。
「お久しぶりですね」
「ああ。コクテンたちも参加してたんだ」
「レイドボスですからね」
そう言えば、コクテンたちはモンスターとの戦いを楽しむためにゲームをやってるって話だった。彼らにとってレイドボスバトルは、見逃せない大イベントなんだろう。
「見ない間に新しい従魔を集めたようですね。白銀さんの話題で皆盛り上がってますよ」
「そうなのか。まぁ、ゲームを楽しんでいる証だと思ってくれ」
「そうとしか思えませんよ。それより、明らかにパーティ枠がオーバーしているのに連れて来られているので?」
「テイマー、サモナーの最上位職、神獣使いという職業になったからな。神獣使いになると従魔編成枠が無限に解放されて、御覧の通りテイムしたモンスターを全員連れて来られるようになってる」
コクテンと話してると他のプレイヤーたちが恐る恐る話しかけてきた。
「あ、あのー? 白銀さんと、モン狩り部の部長さんですよね?」
「モン狩り部? コクテンのことか?」
「ああ、そうです。私たちのクランが、モンスター狩猟部という名前なんです。私がクラマスやってます」
「へー、クラン作ったのか」
「はい。白銀さんもどうですか? 加入条件は社会人であるということだけですよ?」
さらっと俺が社会人であると確信を持たれているな。まあ、俺もコクテンは社会人だと思っていたけど。今さらリアル情報が社会人だとばれるかどうかなんて、気にはしない。その程度の情報、軽く話してればポロッと口にする人もいるだろうし。俺はバレてはいけない方だが・・・・・。
ただ、俺はお断りすることにした。
「いや、自分のギルドを作ることにしてるから」
「はは、白銀さんのギルドですか。従魔関係で凄く集まりそうですね」
「それが懸念して悩んでいるところなんだよ。ところで何で部長呼ばわりされてる?」
素朴な疑問をぶつけてみたら、コクテンは経緯を教えてくれた。
「クランの名前からか、部長と呼ばれるようになってましてね」
「なるほど」
どうやらプレイヤーが30人程まとめて、フィールドに飛ばされて来たらしい。その中で、一番格上なのがコクテンなのだろう。いつの間にかコクテンを中心に、プレイヤーが集まってきた。この分なら、主導権争いでギスギスすることもなさそうだし、そこは安心できそうだ
『イベントの説明を行います』
「お、始まるか」
ま、いいや。考えても仕方ないし。このままイベントを楽しもう。
『現在、参加者プレイヤーは30名程度のグループに分かれ――』
説明を要約すると、この場に集められた30名はランダムで、パーティごとに適当に分けられただけであるらしい。そして、これから3時間後に、岩山の麓にボスが出現するという。そのボスは出現地点からゆっくりと南下するコースを取るので、倒して阻止しろという内容だった。
ボスが設定されたラインを越えてしまった場合、イベント失敗である。
目印の岩山はすぐに分かった。今いる場所からでも、まるで塔のように細長い岩山が見えるからだ。
普通に向かえば10分ほどで着くだろう。ただ、ここでわざわざ広い森林フィールドが用意された意味が出てくる。
このフィールドにはイベント限定の素材が用意されており、それらを使うとボス戦で有利になるアイテムを作成できるらしい。それ以外だと、岩山から少し南下した場所に廃砦が用意されており、そこを拠点として使えるそうだ。だが、廃砦というところがミソで、修理しないと使えないだろう。つまり木材も必要になるということだ。
そしてイベント開始が合図され、周囲の障壁が消える。さて、素材集めをしたいところだけど、この森にモンスターはいるのか? まぁ、いようがいまいが構わない。
「素材集めを頑張ってみるか」
「もうやること決めたの?」
イズが森に向かう俺についてくる。イッチョウとセレーネ、サイナ達もだ。
「何時ぞやの防衛戦と似たことすると思うぞ。廃砦とイベント限定の素材がキーワードみたいだし、修理しないとボスが設定されたラインを超えたらイベント失敗ならさ」
「早い情報整理だけど、素材がどこにあるのかわかるの?」
「それを探すのが俺達だよ」
森の方へ向かうと丁度モンスターが沸いていたらしく、こっちに迫って来た。投擲武器の砲弾をインベントリから取り出してモンスターの真っ赤な体色のコモドドラゴンに向かって投げた。ヒュボッ! とトカゲの顔面が吹っ飛んでドロップを残してポリゴンと化した。
「え、一撃で・・・・・?」
「さて、ドロップはどうなってるかな?」
イベント中、経験値が入らないことはすでに告知があった。モンスターを倒すうまみはドロップだけになるんだが――。
名称:イベント用鉄鉱石
レア度:1 品質:10
効果:素材。イベント終了時に、消滅する。
「ほら、イベント限定アイテム」
「じゃあ、目の前にある樹木を伐採したり、採掘すれば自ずとイベント用の素材が手に入るのね」
そうだろうな。首肯する俺を後からついてきたコクテンが声をかけてくる。
「白銀さん、何か出ました?」
「ああ、こんなのが」
「なるほど・・・・・。廃砦の修復に使うんでしょうかね?」
「かもな」
「白銀さんはこの後どうします?」
「素材を集めてボス戦に有用なアイテムってやつを作るかな」
「なるほど」
「コクテンたちはどうするんだ?」
「いやー、我々だと採取はあまり役に立ちそうもないので・・・・・。モンスターを狩る感じですね」
そうやってコクテンたちと話していると、何故か他のプレイヤーたちも集まってくる。
「あのー、白銀さんモン狩りさん。俺たちってどうしたらいいでしょう?」
「は?」
いや、もう自由に行動していいと思うんだけど・・・・・。何で聞く? それに、全員が自主的に行動しないって、自己主張の弱いタイプのプレイヤーさんが固まってしまったか? だとすると、トッププレイヤーであるコクテンの指示を聞こうと考えるのもおかしくはなかった。
俺に声をかけてきたのは――今モンスターを倒したからか? それか、コクテンに直接話を聞くのが怖いのかもしれない。強そうな鎧に身を包んだコクテンたちは、いかにも上位プレイヤーな感じで見た目の迫力が凄いのだ。話してみれば、腰の低い良い奴なんだけど。
「俺は採取がてらこの辺を回るつもりだけど」
「え? お、俺たちは?」
「別にこのグループで行動しろって言われているわけじゃないし、自由に行動していいと思うぞ?」
どうも、彼らはこのランダムで集められたグループで行動するつもりだったらしい。どうしようかね。もしイベントでどう動けばいいのか分からないのも理解できる。
「で、でも・・・・・」
やはり不安げにしているプレイヤーたち。そんなに俺の顔色をうかがわなくても・・・・・。あ、そうか! 完全に頭から抜け落ちていたが、このイベントは俺たちが発生させたんだった!
このレイドイベントに参加するプレイヤーはそのことについて知っている人が多いらしいし、このプレイヤーたちもそうなのだろう。
そして、俺がイベント参加プレイヤーたちを仕切っていると勘違いしているに違いない。そう考えれば、わざわざ俺の指示を仰ごうと考えた理由に説明も付く。
「じゃあ、戦闘と生産が出来るプレイヤーはそれぞれ協力しあってさ、イベント用の素材集めて、集めた素材を何かしらの形に作って欲しい。モンスターを倒すのが得意プレイヤーが一か所に集まったら効率が悪いからな。自分が出来ることを積極的に行動してくれ」
「それだけですか?」
「このイベントに参加してるプレイヤー全員もそうしてる筈だ。それに、自分達も活躍したいなら格上の相手の顔色を伺ってばかりだとゲームは楽しくないだろ。もっと、思うがままにゲームを楽しめ。それがNWOじゃないのか?」
俺の言葉を受け止めてくれたプレイヤーは、最終的にはコクテンがまとめてくれた。さすがクラマスをやってるだけある。
「白銀さんって説得力あると言うより、人を導くカリスマ性があるとしか思えませんね」
他のプレイヤー達を連れて砦へ向かうコクテンが最後にそんな言葉を残した際、イッチョウが同意する風に頷かれたが、笑って流して皆と別れて森の中を歩きだしたんだが、すぐに見慣れない草を発見できていた。
名称:鳥除け草
レア度:1 品質:10
効果:鳥が嫌がる効果がある。採取から30分経過で、ゴミになってしまう。イベント終了時に、消滅する。
鳥除け・・・・・か。今回のレイドボスは鳥型のモンスなのだろうか? もしくは、敵が鳥?
「まあいいや。もう少し採取をしてみてみる」
「調合と錬金は私達で試すわ」
「助かる」
その後、俺たちは歩きながら鳥除け草を採取しまくっていた。群生している場所もあったりして、もう10個は手に入った。
「そろそろレシピを確認してみてくれるか」
イズとセレーネが調べてみると、鳥除け草3つで、鳥除け剤・水薬というアイテムを作ることができるそうだ。
名称:鳥除け剤・水薬
レア度:1 品質:10
効果:触れた鳥にダメージを与える。イベント終了時に、消滅する。
液体で、鳥にぶつけるとダメージを与えることができるらしい。
「これを大量に作ればいいのか?」
鳥にぶつけるってのが難しそうだが・・・・・。まあ、他にやることもないし、ガンガン作っていこう。
道中で他のプレイヤーたちとすれ違うが、知り合いはいない。ほとんどのプレイヤーは廃砦に向かっているようだな。
そのせいで、逆に向かう俺が目立ってしょうがなかった。メッチャ見られているのだ。まあ、仕方ないけど。
そのまま歩き続けた俺は、程なくしてイベントフィールドの端にまで到達していた。イベント開始から15分くらいかな?
そこがフィールドの端だと分かったのは、そこに透明な壁が存在していたからだ。森を抜けると、青々とした平原が広がっていたんだが、そちらに足を踏み入れることができなかった。
「見えない壁があるか」
「ピカッー!」
「ピィピィ!」
「そう怒るなって。運営だってわざとやってるわけじゃないんだからさ」
「ピカ!」
「ピィ!」
「はいはい、鼻を打って痛かったな~」
「ピィ~」
先頭を意気揚々と進んでいたエンゼとルーデルが、壁に衝突してプンスカポーズで怒っている。
それにしても、ここで行き止まりか。意外と狭いな。いや、レイドボス戦にだけ使うフィールドと考えたら、むしろ広いか。もしボスが逃走するタイプだったら、結構面倒になるかもしれなかった。
「モグモ!」
「お? どうしたドリモ?」
「モグ!」
平原を見つめていると、ドリモが呼びにくる。何か発見したらしい。俺の手を引っ張っている。
「ハーデス、採掘ポイントあったわー!」
「お? どこだー?」
イズも呼びにくる。何か発見したらしい。手招きするので行ってみる。ドリモと彼女についていくと、森の木々の合間から黒々とした何かが見えた。さらに近寄ると、岩石の塊であると分かる。
岩塊の高さは周囲の木よりも少し低いくらいで、直径は5メートル程だろう。何かイベントが発生するかと思ったら、単なる採掘ポイントであったらしい。
「はっ! えいっ! よいしょっ!」
「モグ! モグ!」
ドリモとセレーネが一心不乱に不壊のツルハシを振っている。インベントリを確認すると、こちらでもイベント限定アイテムが入手できていた。
名称:鳥除け石
レア度:1 品質:10
効果:鳥が嫌がる効果がある。採掘から30分経過で、ゴミになってしまう。イベント終了時に、消滅する。
名称:鳥除け鉱
レア度:1 品質:10
効果:鳥が嫌がる効果がある。採取から30分経過で、ゴミになってしまう。イベント終了時に、消滅する。
鳥除け石は鳥除け剤・粉薬というアイテムになるな。鳥除け剤・水薬の粉バージョンだ。でも、飛んでいる相手に投げつけるなら、液体よりは使いやすいかもしれない。
鳥除け鉱は俺には使えない。どうも、製錬などの鍛冶系技能が必要であるらしかった。イベント用鉄鉱石と同じである。
「これ、インゴットにできるわよね?」
「前回の村のイベントと似通ってるな。三時間以内にできるだけ集めインゴットにした方がよさそうじゃないか?」
「だよね? じゃあもっと探そっか」
「他にも採取できる物があるかもしれないし、できるだけ歩き回ってみよう」
「フム!」
「そうだなー、川か湖でもあれば、ルフレも活躍できるんだけどなー」
「フムム!」
「分かった分かった。探すから! 引っ張るなって!」
自分も活躍したいルフレに先導されること20分。俺たちはフィールドの縁を時計回りに歩いていた。採取、採掘ポイントはそれなりにある。
しかも、ルフレ念願の水辺に辿りつけたぞ。まあ、小さい泉であるが。泉に近づいていった。そして、2人で泉の淵から中をのぞいてみる。結構深いな。底が見通せない。
「泉っていうか、ちょっと広い井戸? それでも潜るしかないかないな」
「フム!」
ルフレがやる気満々だ。ただ、ちょっと狭いから、慎重に行かないといけないだろう。
「サイナ達は、周辺の探索は頼む」
「わかりました」
「ルフレ、行くぞ」
「フム!」
そして、俺はルフレとともに泉に飛び込んだ。一応、壁面にも何かないか調べながら、少しずつ潜っていく。結局、底に辿り着いてしまった。特に何もないか?
「フーム、フム・・・・・フム!」
俺が何も発見できずにいると、ルフレが俺の肩をトントントントンと勢い良く叩き始めた。そして、あそこあそこって感じで、泉の底を指差している。
よくよく観察してみると、なにやら白い石のような物がいくつか埋まっていた。それらを掘り出して、上に戻ってみる。
名称:鳥寄せ石
レア度:1 品質:10
効果:鳥の注目を惹く効果がある。採取から30分経過で、ゴミになってしまう。イベント終了時に、消滅する。
鳥除けではなく、鳥寄せだった。なるほど、こっちは鳥を集める効果があるみたいだった。
「これで作れるのは――鳥寄せ餌? 薬じゃなくて、鳥を誘き出す餌になるみたいだな」
まあ、採取に苦労したし、きっと有用なアイテムなのだろう。
「ハーデス、できたわよ」
なにが? と思うなかれ、イズのところに寄り彼女の手には、加工したのだろう手に入れたイベント用の鳥除け鉱をインゴットだった。
「一つでできたのか」
「鉄鉱石があればアイアンインゴットができそうなのよね」
「3時間しかないのは悔やまれる」
なので先を急ぐため別の場所へ足を運んだ。
そうやって歩いていると、イズが何かを発見したようだ。不意に足を止めた。
「どうした?」
「伐採ポイントよ」
「え? あ、本当だ」
そういえば今日初だった。伐採ポイントはあまり数がないんだろうか?俺たちは交互に斧を打ち込んでいく。入手できたのは、もうおなじみとなってきた、鳥除けという効果と名前が付いた、木材だ。
「ふむ・・・・・。数を集めれば建材にもなりそうだけど、伐採ポイントが少なすぎる?」
「だよな。あれだけ歩き回って、初だぞ」
「だね、木工で加工するのが正解かも。鳥除け効果のある装飾品などにすれば身に着けれるよ」
「おお、それは確かに!」
試すべくゆぐゆぐに事情を説明して、木材を渡した。ゆぐゆぐがその場で木材を削り、丸いブローチのような物を作り上げる。
名称:鳥除けのブローチ
レア度:1 品質:7 耐久:228
効果:【VIT+7】、鳥が嫌がる効果がある。イベント終了後に消滅する。
防御力は低いが、やはり鳥除け効果を発動している。
「いいなこれ」
「うむ。どう考えてもこのイベントでは鳥が重要であるようだし、あって損はないと思う」
「ゆぐゆぐ、ウッド、クリス、ある分は取りあえず加工してくれるか?」
「――!」
『―――!』
≪―――!≫
それにしても、鳥か・・・・・。どんなボスなんだろうか。ゆぐゆぐ達加工終了を待っていると、誰かが近づいてくるのが見えた。俺たち以外にも、砦に向かわずに動いているプレイヤーがいたらしい。
しかも、かなり強いっぽい。そのプレイヤーの目の前に2匹のコモドドラゴンが飛び出したんだが、瞬殺であった。
最初の奇襲をバク転のような動きで躱す同時に、武器装備の剣で一刀両断。さらに、木を使った三角跳び――いや、2回木を蹴ったから、四角跳びを利用した飛び蹴りで、もう1匹を仕留めていた。モンスターを片付けたことで周囲を見渡す余裕ができたのか、そうやって見ている俺達を、向こうもこっちに気付いたらしい。明らかに一直線に向かってくる。そして、互いの距離が近づくと、何故か驚きの表情を浮かべた。
どうしたんだ?
「銀色の狼・・・フェンリル、まさか白銀さんか?」
「ん? ああ、この格好じゃあ気付かないか」
フードと仮面を外す俺の素顔を見て向こうはやっぱりと言った表情を浮かべた。
「あ、あー・・・・・どうもお久し振り」
「久しぶり・・・・・?」
「覚えてもないのは無理もないか。四つの属性結晶とミスリルのことで訊いた以来、顔合わせたことが無いから」
あ、あー! 確かにいたな。すっかり忘れていた!
「ハーデス、知り合い?」
「イズとミスリル鉱石を採掘から戻った時にな。本当にあの時以来だから忘れていたわ」
「逆に白銀さんの話題は事欠かさないから覚えていたんだが、従魔がいなかったら死神の格好をしたプレイヤーだって認識で白銀さんだとは気付かなかった」
特徴的な銀髪が隠れてるから気付かれにくかったってことか。
「ところで質問いいか? どうしてそんなたくさんの従魔を従えられるんだ?」
「テイマー、サモナーの最上位職の神獣使いの効果で、無限に編成できるようになったから」
「最上位職、神獣使い・・・・・大盾使いの方は?」
「まだ初期職ですがなにか」
愕然とするプレイヤー達。驚くことなのかなと首を傾げる。
「ハーデス、少なくとも他のプレイヤー達は次の職業に転職してる状態なのよ」
「俺もしてるんだが?」
「多分、トッププレイヤーと遜色ない強さなのに大盾使い、重戦士の職業がまだ初期職なのを驚いていると思うわ」
イズの話通り、そうなのか? と眼前にいるプレイヤーに尋ねると一人残らずその通りだと言わんばかりに頷き返された。