その後、話し合いの末にメタルスライム一行のパーティも加わった俺達はさらに先に進んだ。すると、今までとは違った光景が目の前に現れる。
「あれって、どう見てもゴリラか?」
「結構デカくね?」
「ボスってことか?」
俺達の視線の先には、森の中をのしのしと徘徊する、茶色の毛のゴリラがいた。しかも前かがみの状態でも、2メートル近い高さがあるだろう。メタルスライムがボスという推測を口にしたが、どうだろうか? ボスなら徘徊するのかという疑問が残る。
「まあ、結局、戦うか逃げるかの二択になるわけだが、どうする? 俺はどっちでもいいぞ?」
「うーん、私としてはハーデス君次第かな」
「私も」
「うん」
「マスターの指示に従います」
「どちらでもいいですわよ」
うちのチーム女性陣は判断を丸投げしてくる。
「メタルスライム・・・・・略してメタスラって呼んでいいか。短く呼びやすいから」
「あ・・・うん・・・いいぞって、おいお前等、笑うなよっ」
「だ、だって・・・ははっ」
「掲示板でも一時略されて、今度は目の前で略されて呼ばれる日が来るとは思わなくて」
「よし、白銀さん命名で今日からお前はメタスラと呼ぶわ」
「よろしく、メタスラ!」
面白がられ、からかわれる対象になったプレイヤーは、仲間に対して本気で怒ってはいないが怒りながら追いかけ回しだした。話は逸れたものの結局、俺の強さを見てみたいというメタスラの要望により倒すことになったゴリラに近づいて行った。
「ウホホホホ!」
「ウホッホホ!」
1匹いたゴリラが2匹に増え、こちらに向かって駆け寄ってきていた。まぁ・・・・・。
「全然攻撃が通じないからなぁ・・・・・」
「ウ、ウッホゥ・・・・・」
「ウホゥ・・・・・ウホゥ・・・・・」
2分間も好きに攻撃させて逆に拳を痛めるゴリラ2匹。
「【パラライズシャウト】」
「「ウホッ!?」」
「【悪食】【生命簒奪】」
麻痺して動けないところでモンスターに触れて一撃確殺。ポリゴンと化して得られる容量オーバーのHPとMPは蓄積され結晶として体内に蓄えられた。
「うーん、なんか弱いから俺の強さを知る相手として不足だな。せめてベヒモスじゃないと伝わらないだろ俺のレベルじゃあ」
「・・・・・因みに、白銀さんの今のレベルは?」
「90だ。うん?」
「「「「・・・・・」」」」
メタスラ一行だけじゃなく、イッチョウ達まで愕然の面持ちになった。
「ハーデス君、それ私達も聞いてない」
「そりゃあ別に言わなくてもいいことだから教えてないし。ほら、先を行くぞ」
雑談を終えた俺たちは、周囲の探索を再開することにした。
すぐにゴリラに出くわすが、こいつが本当に見掛け倒しである。リックが1対1で楽勝だったのだ。
「この辺、木が他と違うぞ」
「うむ」
ゴリラがいるエリアは、どうやら生えている木の種類が違うらしい。今までが針葉樹林だったのに対して、このエリアだけは広葉樹が並んでいる。ただ、それに何の意味があるのか分からなかった。何せ、伐採ポイントもない。それどころか採取ポイントもないし、ゴリラのドロップはコモドドラゴンと同じだ。
「どうする? 時間的にはそろそろ廃砦に向かったほうがいいと思うが。だが、ここに何かがあることは確かだろう」
「今、廃砦と真逆にいるから、そろそろ行動しておいた方がいいかもだが」
何でそこで俺を見る? いや、一応、俺がこいっつらも誘った訳だから、リーダー役は俺か?
「そうだな・・・・・。でも、このエリアは回っておきたい」
「じゃ、そうしますかー」
「うん。異論はないわ」
「じゃ、パパッと見て回るか」
そうして再び先に進んだ俺たちは、一際大きな巨木を発見していた。
背の高さが他の木と変わらないせいで遠くからは見付けられなかったが、近づいてみるとその幹の太さに圧倒される。それこそ、他の木の5倍はあるだろう。しかも、根の中に大きな石を抱き込んでいるようで、自然の神秘のような物も感じさせた。まあ、ゲームだから本物の自然じゃないんだけどね。
迫力もかなりある。古木や老木という形容詞が相応しい、強烈な風格と存在感を漂わせていた。
さらに、その古木の前には、直径10メートルほどの泉が存在している。日の光を反射してキラキラと輝く清浄な泉と、雄大な古木が並ぶ光景は、いつまでも見入っていたくなるほどに美しかった。
これ程の場所が、イベントに無関係とは考えられない。そう考えて俺たちは周囲を回ってみることにした。
俺は最初に、泉の周りを調べることにする。だが、周囲を歩いても、特に何も見つからない。中を覗き込んでみるが、採取できそうな物もなかった。
ルフレはすでに泉に飛び込んで、探索中だ。
「ルフレ、どうだ?」
「フム~?」
上がってきたルフレに聞いてみるが、どうやら何もないらしい。首をフルフルと横に振る。魚の姿も見えないし、本当にただの景色に過ぎないのか?
メタスラ達は、木の根に巻き込まれた大岩を調べている。根っこをかき分け、採掘ポイントなどがないかを探しているようだ。しかし、目立った成果はないらしい。だが―――。
「採掘ポイントがあったわ!」
イッチョウも同様で、木に登ったりしているんだが、何も発見できていないみたいだ。枝の上に腰かけて足をブラブラさせながら、「なにもないー」と嘆いている。しかし、イズだけがそうじゃなかった。
皆がその声に反応して向かうと彼女は、木の根に巻き込まれた大岩の前に立っていた。そこを一目見た俺も採掘ポイントが表示されていた。
「おっ、本当だ。よく見つけたなイズ。オルト、採掘だ」
「ム?」
ん? なんだその不思議そうな顔、見えるだろ? あそこだ。
「ムー?」
「・・・・・採掘ができるように見えない?」
「ム」
頷かれた。え、見えてない?
「どこに採掘ポイントがあるというんだ?」
「何も見えないけど?」
「え? いやいや、ここにハッキリと伐採ポイントがあるだろ?」
「どこだ?」
「どこ?」
オルトだけの話ではないようだ。セレーネも含めて他の皆はこの採掘ポイントが見えていないらしい。イズと顔を見合わせた俺は取りあえず嘘ではないと証明するために、イズとここで採掘をしてみることにした。
「よいしょー」
「はっ!」
不壊のツルハシを取り出し、ポイントにカーンと打ち込む。
ほら、きちんと採掘できたじゃないか。
「えーっと、入手できたのは――」
名称:鳥殺しの殺生鉱
レア度:1 品質:10
効果:加工することで鳥を引き寄せない。イベント終了時に、消滅する。
俺がそのアイテムを確認した直後だった。広場が白い光に包まれた。よく見ると、周辺を光の壁が覆っている。
「見覚えがあるな」
「ボスフィールドだ!」
俺の呟きに、メタスラが律儀に応えてくれた。やっぱそうだよな。タイミング的に、俺達の採掘がトリガーになったことは間違いない。
「ゴガアアアアアアア!」
そして、広場の中央に出現したのは、黒い毛皮が禍々しい巨大ゴリラだった。この森を徘徊してたゴリラとはサイズが違う。高さは5メートル以上あるだろう。しかも、顔は鬼の血でも混ざっているのかと思うほど、凶悪である。
下あごから上に突き出た牙。血走った目。よく見たら角まである。名前は、オーガコングとなっていた。本当に鬼が混じってた。
「白銀さん、今度は俺達が戦っても?」
「お願いする」
メタスラ一行が先頭に立ち、こちらを睨むオーガコングと対峙する。
「ウゴゴゴゴゴゴ――」
両手で胸を叩くドラミングも、普通のゴリラとは迫力が段違いだった。強そうだ。さて、どんな攻撃を仕掛けてくるのか。メタスラ一行は、最初は様子を見る姿勢で行く様子のようだ。
「――ゴゴゴゴゴゴ」
「ドラミング長いな」
周囲には、未だにドラミングによる重低音が響き続けている。
「――ゴゴゴゴゴゴゴ」
「というか、ドラミングが終わらないな!」
オーガコングは、ずっと自分の胸を叩き続けている。すると、オーガコングの黒い体毛が段々と赤く変色し始めたではないか。ドラミングと無関係とは思えない。放っておいていいのか?
「ど、どうする?」
「ドラミングによって、何らかの強化が入るのか?」
「とりあえず、一発いっとく?」
結局、メタスラ達は作戦を変更して動き出す。相手の攻撃を待つのではなく、こちらから先制攻撃を仕掛けることにしたのだ。
「王将頼む」
「りょーかいりょーかい」
メタスラパーティの切り込み隊長っぽいプレイヤーが双剣を持って攻撃を仕掛ける。速度はドレッドよりやや遅いぐらいだが、それでも速く素早くオーガーコングの足を一筋のダメージエフェクトを発生させた。
「ゴゴゴ――ウゴ!」
オオ、ドラミングが止まった。ただ、赤くなった体毛は元に戻らない。
直後、オーガコングが一気に跳び上がった。
「くるぞ!」
「ウゴオオ!」
オーガコングが跳躍の勢いのままに、王将に向かって右の拳を振りおろす。小指側を下に向けた、いわゆる鉄槌打ちって奴だ。
ドゴオオオオオ!
「【カバームーブ】! 【カバー】!」
王将を守る大盾使いのプレイヤー。瞬時に王将の前に移動して大盾で防いだ凄まじい衝撃音が響き渡る。受け止めるには受け止めたのだが、大盾使いが王将を巻き込んで吹っ飛ばされてしまった。しかもかなりダメージを受けている。軽減しきれなかったダメージが、彼に通ってしまったのだろう。
装備は最高レベルの筈だ。何せ、彼等は俺なんかよりもっと先で攻略して活躍してるんだからな。しかも、盾スキルのレベルも相当高かいと思う。そんなプレイヤーが受け止めきれない?
となると、今の攻撃は相当な威力があったと見るべきだろう。
「おいこいつ、結構な威力の攻撃だ! エリア6のボス以上の威力があるぞ!」
「まじ?」
「マジだ!」
「それでこの人数でそれはきつくない?」
「白銀さん達も協力してもらう?」
「いや、まだ始まったばかりだ。もう少し戦って様子見るぞ」
そうだな。まだ序盤なのは同意見だメタスラ。それにそれから見て判ったが、どうやらオーガコングはそこまでの化け物ではないようだった。連続して繰り出してきたオーガコングの攻撃を、大盾使いがあっさりと弾き返したのだ。オーガコングはシールドによるカウンターを食らい、仰向けにひっくり返っている。
その理由は一目瞭然であった。
「毛の色で、攻撃力が変化するのか!」
「黒い時は大したことないな」
「なら今がチャンス!」
1撃目の攻撃を放った後、赤みがかっていたオーガコングの体毛が黒に戻っていたのだ。そして、攻撃力が一気に下がったらしい。
「ウゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!」
「また始めやがった!」
「うるさっ!」
オーガコングが再度ドラミングをし始める。同時に、毛皮の色がまた赤く変化し始めていた。
どうやら、ドラミング→攻撃力アップ→攻撃で元に戻る→ドラミング、を繰り返すのがこいつのパターンであるらしい。
「コウチン!」
「わかってるって!」
「桜麗もやれ! 一発当てるだけでも妨害できるかもしれない!」
「わかった!」
メタスラの推測通りだった。どんなに弱くても一発攻撃が入れば、ドラミングを中断させられるのだ。それを数度繰り返せば、強化が不十分なままで攻撃を仕掛けてくる。
それを大盾使いのアーノルドが弾き、皆で攻撃を叩き込むと言うことを繰り返せば、ほぼ完封であった。ほぼというのは、オーガコングが数度に1度、巨木の上に逃げて、そこでドラミングを行うからだ。
その際は弓使いの桜麗が遠距離攻撃を仕掛けなくてはならない。だが、鬱蒼と茂る枝葉に邪魔をされて、中々攻撃を届かせることができなかった。結局、前衛のアーノルドが何度かダメージを受けることになってしまったのである。
「これで終わりだ!」
「ゴガアアア・・・・・!」
メタスラのオーバーヘッドキックでHPゲージを吹き飛ばされたオーガコングが、目の前でポリゴンに変わっていく。
「意外と弱かったなー」
「いや、最後の狂化はかなりやばかったぞ。メタスラのおかげですぐ倒せたがな」
王将は結構危ない橋を渡っていたらしい。自分の盾の耐久値をチェックして唸っている。
オーガコングは残りHPが1割を切ると狂暴になって暴れ回るタイプのボスだった。毛が真っ赤に染まり、角が倍くらいの長さになって、動きも相当速くなっていたように思う。
ただ、王将はダメージを食らっても自己回復系のスキルですぐに回復していたし、直撃はなかったので、彼にとっては大したことはないと思ってたんだが・・・・・。
「攻撃力はドラミング最大時と同じ、速さも2段階は上がっていた。サッキュンの仕掛けがもう少し遅かったら、俺ももっとダメージを受けていただろう」
ボスだけは弱いわけではないが10分ほどで倒せたので、HPは低かったらしい。だが、攻撃力は前線のボス級という、アンバランスな設定だったようだ。
それからオーガコングのドロップを見せてもらった。石だった。黒くテカテカした、一抱えもある石塊だ。
名称:鳥食い鬼猩々の胆石
レア度:1 品質:10
効果:置くことで、鳥を遠ざけることができる。ただし、種類によっては積極的に攻撃を仕掛けてくる場合も? イベント終了時に、消滅する。
また鳥だ。しかし、ボスのドロップなわけだし、そこらで採集できるアイテムよりも効果は期待できるだろう。
さらに、ボス出現前にゲットしたアイテムもチェックしておく。
名称:鳥殺しの殺生石
レア度:1 品質:10
効果:加工することで鳥を遠ざけることが出来る。イベント終了時に、消滅する。
こっちはこっちで、面白い。鳥除け系のアイテムに似ているが、煙だったら大量の鳥相手にでも効果を発揮するだろう。これらは俺等が使い道ないのでイズとセレーネに後で渡した。
「お疲れさん。とりあえず、少し休憩するか?」
「なんならその間に私達が盾の耐久値を万全な状態にしてあげるわよ」
「え、あのトップクラスの超一流の生産職の二人の手ほどきが受けれる!? お、お願いします!!」
「しかも無償で? 凄いラッキーだな俺達。これもサスシロ現象? いや、この場合はサスメタスラ現象?」
「変な言い方するな」
「じゃあ、わた―――ボクはノームちゃん達とスクショ撮っておこっと、白銀さんいいかな?」
桜麗というプレイヤーの願いに了承して、工房が使えないセレーネのために『神匠の黒衣』を装着して【工房召喚】する。
「え、なにこの古ぼけた小屋」
「鍛冶師職の『古匠』のNPCから譲り受けた工房だ。いつでもどこでもこうして召喚できるから鍛冶職のプレイヤーにとっては大金詰んででも欲しがる装備だろうなこれ。安全地帯になるっぽいし、中には簡易的なキッチンと寝室もあるからホーム扱いにもできる」
「なんだその装備のスキルは。このゲームにはそう言うのが存在するのか」
「一国の王様と交流して好感度MAXになるよう頑張れば、似たような装備やスキルが貰えるようになるんじゃないか?」
無理だっ!! とオルト達とスクショしてる桜麗を除いてメタスラ達に異口同音で言い返された。
「『古匠』のNPC鍛冶師が始まりの町にいるから仕事を貰えばいいじゃんか」
「・・・・・できるのか? 忙しい筈だろ」
「前線にいるなら素材欲しさに頼まれると思うが? 俺が口添えしてみてダメだったらダメってことで」
「わかった。じゃあそれで頼む」
任されたところで装備の整備を終えた二人が工房から出てきた。見事に耐久値が戻った装備を抱えてイズとセレーネに感謝の言葉を述べるメタスラ達。
「じゃあ、廃砦に向かうか」
「ああ」
「さんせー」
ボスが出現する予定の岩山の横を抜けて、一気に南下するルートだ。
素材の採取もそこそこに、皆で一気に駆ければ廃砦まではすぐだった。20分もかからずに、廃砦が見えてくる。
「へー、結構大きいな」
「ムー!」
「――!」
オルトたちも、廃砦の想像以上の大きさに驚いているらしい。手を目の上にかざして、大きな建造物を見つめている。もう少し小さい物を想像していたんだが、小さめの小学校くらいの大きさがあるだろう。高い外壁を備えた3階建ての、本格的な砦であった。そこに何百というプレイヤーが取り付き、補修や改造を行っている。しかし、それを見たメタスラが俺の感想とは真逆の言葉をつぶやく。
「小さいな」
「理由は?」
「このイベントに大規模な数のプレイヤーが参加してるんだ。あのサイズでは、到底全員が篭ることなどできる筈がない」
「あー、そう言われてみれば」
無理してギューギューに詰めれば3000人くらいは入れるかもしれないが、それ以上は無理だろう。そもそも、満員電車状態ではまともな戦闘になどならない。イッチョウが指摘する。
「サーバー分けしてるんじゃない? イベントの時は特殊サーバー使うことも多いしさ」
「多分それだろうな」
メタスラとイッチョウの言葉に、以前のイベントのことを思い出した。メタスラ一行も思い出した様子だ。
「ああ、そういえば、前のイベントもサーバー分けされてたっけ」
「となると、アレがあるかもな」
「アレ?」
「サーバー順位だよ。前もあっただろう」
確かに、サーバー内だけではなく、サーバー対抗の順位も発表されていたな。
「となると、俺達は運がいいぞ」
「あっ、そうだね!」
メタスラ一行、イズとセレーネ。イッチョウもなぜそこで俺を見る? サーバー対抗の順位・・・・・俺がいたサーバーは確か一位だったな。そんで俺も・・・・・あ。
「・・・・・一緒にいたサーバーのプレイヤーの皆の団結力があったからだと言わせてもらうぞ」
「今回はそれ以上の団結力が発揮すると断言する。賭けてもいい」
先行くメタスラ一行の後に付いて廃砦に入ると、見知った顔が出迎えてくれた。
「やーっときたか!」
「スケガワ。あなたもここのサーバーだったの?」
エロ鍛冶師のスケガワだ。最初は違和感があった異名も、今では普通に感じるから不思議だ。妙に疲れた顔で、階段の上から俺たちを見下ろしている。
「そうなんだよー。しかも鍛冶師のとりまとめみたいなことを任されちゃってさー。だからイズとセレーネがくるの、ずーっと待ってたのさ!」
スケガワが鍛冶師のリーダー。大丈夫なのか? いや、鍛冶系のプレイヤーは女性が少ないと聞くし、平気なのか。ここにいる二人以外にもいるらしいが会ったことないからしらないけど。それに、やる時はやる男だからな。きっと何とかなるだろう。多分。
「にしても、スケガワは、イズとセレーネが同じサーバーだって知ってたのか?」
「イズとセレーネ、、白銀さんが一緒に行動してて、目立たない訳がないじゃん。目撃情報はたくさんあったから、そのうち来るだろうと思ってたんだよ」
なるほど。まあ、うちのモンスたちは最近有名だし、イズとセレーネも有名プレイヤーだ。俺たちが一緒に行動してれば、そりゃあ目立つか。
「イズとセレーネ! 早速手伝ってくれ! あ、イズと白銀さんのユニークサラマンダーもいるな! 白銀さんサラマンダーを貸してくれ!」
「いきなりだな?」
「鍛冶師がぜーんぜん足りてないんだよ! 大工系のプレイヤーがいるから補修作業は何とかなると思うんだけど、肝心の建材が不足してるんだ!」
イベント用のインゴットのことだろう。生産職たちがイベント用鳥除けインゴットから釘などを作り、砦の補修に利用しているらしい。だが、鍛冶師が少ないせいで、釘や鉄板の生産に遅れが出ているという。それは確かにまずい。
「ほら! 早く!」
「わかった! 分かったから急かさないで! ああっ、カルラの手を掴まないで!」
「ひ、人が多い・・・・・」
イズとセレーネとはここでお別れか。だが、スケガワのターゲットは二人だけではなかった。俺が了承するとヒムカとイズも連れて行くので従魔のカルラの手を掴んでスケガワに引っ張られていく。
「今思えば、最初のイベントのサーバー、メタスラ一行も同じだったんだな」
「今更だな。まぁ、それを主張する理由もないから言わなかっただけだが」
「ということは・・・・・いるだろうなぁ」
周囲を見渡せば、やはり見知った顔があった。
「メタルスライム達もやっと到着したところ悪いけど、キミ達はこっちだね」
「コクテンさん」
「先に確認しておくけど、メタルスライム達は砦の防衛に協力してくれるってことでいいんだよね? 白銀さんはあとで砦に来るって言ってたから、問題ないと思うんですけど」
「それは当然だ」
「ああ。ここまで来て、協力しないなんてありえないだろ? そもそも、レイドボスイベントだぞ」
俺たちが答えると、コクテンがホッとしたような顔で苦笑いを浮かべた。
「意外とスタンドプレーに走るプレイヤーも多くて。最初にここに辿り着いたプレイヤーなんか、自分たちが占拠したんだから他のプレイヤーは入るなとか言い出したんですよ?」
馬鹿じゃないかそいつら。レイドボス相手なんだから、協力しなきゃ勝てるわけないだろうが。・・・・・俺がそう言っても説得力ないだろうけどさ。
「まあ、他のプレイヤーたちから罵声を浴びまくって、泣き顔でどこかに行ってしまいましたが」
「自業自得だ」
「ともかく、そんな困った人たちも少なからずいるのです。白銀さんとメタルスライム達は過去のイベントでも積極的に協力プレイをしてくれてましたから、少し遅れているだけだろうとは思ってましたけどね」
「色々あってな」
「へえ? まあ、その話は後で詳しく聞きましょうか。とりあえず、メタルスライム達は私と一緒に来てもらおうかな? 戦闘職で集まって連携を確認しているので」
「わかった」
「白銀さんはどうします?」
「前回と同様なことになりそうだから一緒に行く。ペイン達もいるんだろ?」
コクテンは「この砦に二番目に辿り着いてからずっといますよ」と答えてくれた。あいつら、行き急ぎすぎやしないか。