ヘルメスside
「うみゃーっ!!?」
な、なんなのこの爆弾映像はぁあああんっ!? 未分化の力の現象でペンギンを生み出すなんてとんでもないことしてくれたわねぇえええっ!!!
『それと、未分化の力のなら確実に樹精が手に入ることが判明したかも。素材を選んでる最中にだが、木材を確認したらさ精霊と草花という項目があってさ、この2つを10★にすればゆぐゆぐみたいな樹精が手に入る可能性があるぞ』
な、なんですと・・・・・? 彼の言葉が本当ならみんなは未分化の力の現象を狙って木材を集めまくるわよ。
『ペンペーン!』
『あ、それと見てるだろうヘルメス。未払金を完済するまでうちのペンギンの情報売らないからなー』
「ぐふぅっ!?」
は、早く完済しにゃいと・・・・・っ。どんどん彼が情報を蓄えて私達の知らない秘密の宝箱化しちゃうぅぅぅぅ。
イッチョウ達がモフり終えるまで待っていると、「素晴らしい光景を見せてくれた」とか言うラプラスがいつの間にかいてその後日後。ラプラスが小遣い稼ぎに未分化の力の現象に備えて素材の項目が判別できるモノクルを作り出した。その素材は水晶で作れるから費用はほぼ無料、これをプレイヤー達に売って欲しいと頼まれたので自動販売機にセットしたら。用途が判ったプレイヤー達から大量発注を求むほど大人気商品となった。
配信を止めてからすぐ、ヘパーイストスのところに寄ってみようとしたら、ホームの前でメタスラ一行がいた。呼んだ覚えはないんだが、はて・・・・・?
「来るの待ってた?」
「あんな配信されたら誰でも一目みたいだろう」
「じゃあ、思う存分触ってみろ」
「ペン?」
ペルカとルフレだけ連れていこうとする俺の許可を得て、メタスラ一行は触り始める。
「ペンギンの身体はこういう感じなのか・・・・・」
「ふわぁ、初めてペンギンを触れた~」
「このお腹辺りが何とも・・・・・ずっと触れる顔を埋めたくなる・・・・・」
「背中の炎は熱くないな。ダメージも入らないのもまた不思議だ」
しばらく触り心地を堪能する彼等の姿が視界の端に入れながらメタスラから訊かれた。
「これからどこかに行くのか?」
「イズとセレーネとヘパーイストス、古匠のNPCのところにな。一緒に来るか?」
「邪魔でなければ」
「よしウェルカムだ。行くぞ」
再びメタスラ一行達と行動することとなり、ペタペタと歩くペンギンの姿が多くのプレイヤーに見られながら武具店の裏口から入る。
「おい、正面からじゃなくて裏口から? 怒られないのか? プレイヤーをデストロイするNPCがいるんだぞ」
「マブダチだから問題ないぞ。まぁ、仕事中は静かにしててくれ」
カウンターにいるヴェルフに軽く手を振って挨拶を交わし、鉄を打っておらず燃え盛ってない炉の前で陣取り座り込み、腕を組んで考え込んでいるヘパーイストスの姿に珍しく感じた。
「ヘパーイストス、今暇ー?」
「おお、お前か。嬢ちゃん達も久しぶりだな」
「はい、お久し振りです」
「こんにちは」
イズ達のこともしっかり覚えてくれている。これなら自分達だけで鍛冶師のクエストが発生できるかな?
「で、なんか悩んでるみたいだけどどうした?」
「ちぃっと次はどんな武器を作ろうか悩んでたところだ。『古匠』に至れてもやることは変わらないからな。こう、他にはないオンリーワンな物を作りたくてよ。でも、それがどういうのかは定まれてないんだわ」
おっ? クエストの予感がするな・・・・・。
「アルゴ・ウェスタとアグニ=ラーヴァテインみたいな武器を作ってみたらどうだよ。古代の鍛冶師の技術の結晶が目の前にあるというのに、それを触れず新時代の鍛冶師・・・ヘパーイストスが作らないでどうするんだよ」
「む・・・」
「過去を振り返って未来を切り拓く何かを見聞し手に入れる。ヘパーイストスの先祖もそうして鍛冶をして来たんじゃないのか? ヘパーイストス自身もそうしていたはずだぞ」
彼に素材の更なる詳細が把握できるモノクルを手渡す。
「なんだこの片メガネは」
「素材の表面だけじゃなくて内面も分かるアイテムだ。ベヒモスの素材をそれで通して見てみろよ」
「それで一体なん―――・・・・・なんだこれは? 格、潜在、獣、魔だと?」
「素材の未分化が把握できるモノクルだよ。色んな項目が見えるだろ? 今度はそれで素材を見ながら武器作ってみたらどうだよ。案外、思わぬ物が作れたりするかもよ?」
モノクルで通して素材の未分化を見てから唖然とするヘパーイストス。
「・・・・・素材にはこんな可能性が秘められていたのか。ただの素材として見て様々な物に造り替えて来たが、本当の意味で素材を活かせることが・・・・・」
「できないのか? 古匠の鍛冶師の癖に。それならユーミルに鞍替えしちゃおうかなぁー、あっちの方が古匠の上位、神匠だしもっと凄いの作ってもらえるしな」
にへら、と小ばかにするとヘパーイストスが獰猛な獣のように俺を睨んで、ニヤリと口の端を吊り上げた。
「・・・・・言ってくれるじゃねぇか坊主。ガキの挑発にノるつもりはねぇが、鍛冶師がナメられるだけは許しちゃならないことを骨の髄まで教えてやるっ。俺の腕に懸けてな!」
―――ここに来て新しいクエスト、EXクエストが発生した。内容は・・・・・ヘパーイストスを神匠に至らすことだ。
「あのクソッタレ師匠と同じ神匠になりゃあ結果で黙らせる。まずは坊主、古匠の鍛冶師しか扱えない素材を集めてもらうぜ」
「はいよ」
千年鉱石のインゴット×1、『大地の生命の源』
「用意周到すぎるぞお前」
「当たり前じゃん。古匠程度で終わるヘパーイストスじゃないのはヴェルフの次に俺がよーく知っているんだ。いつかこの時が来るのをわかってるのに用意しないはずがない」
「・・・・・じゃあ、古代の武器も用意・・・いや、持ってたな」
「持ってますねー。風化した刀のこれとか籠手とか他にも幾つか」
取り敢えず、刀を繋ぎにしてもらうことにした。アルゴ・ウェスタとアグニ=ラーヴァテインのような感じになるのが一週間後、楽しみだわ。
「あ、そうだヘパーイストス。これ手に入ったぞ。これもつなぎに使ってくれるか」
「あん? なんだこの鉱石ヒヒイロカネ? ・・・ヒヒイロカネ・・・・・だと!?」
「「えっ!?」」
そこでイズとセレーネも反応してしまわれるか。
「こ、これが伝説の鉱石、ヒヒイロカネ・・・死ぬ前に見て触れることが出来るなんて・・・・・!」
「緋色の炎が燃えているかのように鉱石が紅い・・・・・」
「綺麗・・・・・」
「おおお・・・・・」
ヴェルフ君も交じってヒヒイロカネを見つめる。
「鉱石喰いってモンスター知ってる?」
「そいつはぁ、知ってる。地龍と鉱石を好むモンスターだ。・・・・・まさか、出たのか?」
「地龍の骨を喰らいにドワルティアに出現したんだ。その時は出なかったけど、宝饗水晶巣っていう地龍と鉱石喰いが好む場所に出現してな。漁夫の利で手に入れたんだ」
「宝饗水晶巣?」
鸚鵡返しをしたヘパーイストス。どこかで聞いたことがあるような、と腕を組んで脳内で思い出そうとする彼は工房を後にしていなくなった。でもすぐに戻ってきた。古い羊皮紙を持ってきて。
「死んだ爺さんから受け継いだモンの中にそんな名前を聞かされたことがあった。そこには同じ世界にあるとは思えない水晶と宝石だらけの場所で、採掘しようにも水晶系のモンスターが津波の如く襲い掛かってくるもんで逃げるしかなかったってな」
「マジでか。ヘパーイストスの爺さん、どうやってそこまで行ったんだ? 俺はマグマに潜って行ってるっていうのに」
「そいつの答えはこれに書かれてある」
羊皮紙をテーブルの上に広げる。俺達はテーブルを囲んで見ると、ドワルティアと火山の全体図が描かれていて町に入らずぐるっと半周した先にバツ印が書かれてあった。
「言っておくがこいつは爺さんが受け継いだ情報だ。爺さんが直接行ったわけじゃないからな」
「あ、そうなのか? ヘパーイストスは行かなかったのか?」
「当然行った。が、穴も空洞も何もなかったから探さなかった」
何もなかった? おそらくラプラス達はこの穴から入ったと思うけど・・・・・魔法で隠蔽しているのかな。
「ところでどうして名前を知ってるんだ? 俺しか知らない情報だぞ」
「あー、確か爺さんを助けた恩人が住んでるらしい。多分、その恩人から聞いたんじゃないのか?」
・・・・・ラプラスだな。後で聞き出そう。
「ヘパーイストスも行ってみたいと思うか?」
「先祖が通った道を辿れる範囲内ならな。ウチは代々子孫を残さず弟子に全てを受け継がせる鍛冶師だからよ。ヴェルフも俺のように全てを受け継がせるつもりだ」
「師匠・・・・・」
冒険者は自力以外なら許すと言ったけどNPC相手なら問題ないかな。出来れば子の二人にもあの光景を見せたいと思っていたところ、手紙を銜えた鷹が解放された窓から入って来た。ヴェルフが手紙を受け取りヘパーイストスに手渡す。
「・・・・・おい坊主。ドワーフ王がお前を呼んでるぞ。依頼した武器が完成したってよ」
「おっ、そうなのか!」
「それと俺も来るようにってお達しだ。こいつはあのクソッタレ師匠だな。今度こそモグラを叩きに行く、馬鹿弟子も来いって王の手紙と混ぜて送ってきやがった。坊主のことも誘ってんぞどうする」
モグラを叩く? モグラ・・・・・いや、まさかな?
「誘われてるなら協力するよ。戦力が欲しいって言うなら俺が色んな冒険者に声をかけるが」
「ああ、そいつは助かる。なんせモグラ野郎は長年ドワーフを悩ませる因縁の敵だ。坊主は知らないだろうから教えるが、俺がまだクソッタレ師匠の許で修行していた頃でもモグラの問題は続いてたんだ」
「問題?」
「ドワーフの鉱山に住み着いちまってな。討伐隊を組んで鉱山を取り戻そうとするドワーフと徹底抗戦をするモグラ共の戦いも数百年ぐらい続いているって話だから、最初は俺も信じられなかったが・・・・・モグラ共、マジ強すぎる。竜に化けるんだからな」
・・・・・あ、それ、知ってます。モグラに竜ね。
「ちょっと待ってくれ」
―――数分後。
「モグラってこいつのこと?」
「モグ?」
ドリモを連れて尋ねたら当然のように頷かれた。
「ああ、そいつだそいつ」
ドリモールかよ! ドワーフ達がてこずるのも納得だわ!
「よし、だったら俺は協力する。イズ達はどうする?」
「乗り掛かった舟だからね。ドワルティアの鉱山って興味があるし行ってみたいわ」
「私も協力するね。どんな鉱石があるのか気になるよ」
「俺達も是非協力させてもらう。クエストではなくこんなイベントみたいなのが起きるのかと思えば、参加しないわけにはいかないからな」
ここにいないペイン達も誘ってみるか。
「あ、ヘパーイストス。イズとセレーネに砥石を見せてくれないか?」
「あれをか? 別に構わないぜ。元々はお前から譲ってくれたんだからな」
金の光沢を放つ延べ棒状の厚い塊を仕舞っていたところから持ってきてくれた。名前はまだないけどそれを二人に見せる。
「これが砥石・・・・・?」
「初めて見るね。あの、実際に使っているところを見せてもらっても?」
「見たいのか? 少しだけだぞ」
ようやく見せることが叶った。謎の物質で出来た砥石を使うヘパーイストス。一度砥石に武器でなく包丁で研ぐと砥石から金色の星屑のような粉が舞って、俺達を魅了する。何となくその粉を掌に集めたら・・・・・アイテム化になった。
『宇宙の星片の粉』
暗黒物質でできた星が稀に破片となって宇宙から落ちて来る物。宇宙の星、それはこの世界の誕生と共に生まれた物であり、暗黒物質を操る闇神が世界の誕生に祝福に生み出した物でもある。世界の闇を照らし輝く物を手に入れた者の願いを叶える物質故に、使用者が望み続ける限り不変と化する星の粉に不思議な力が宿っており、様々な素材の用途に一度だけ使用できる。
「はっ!? なんだこの設定!」
「ど、どうしたの?」
「なんだ坊主いきなり声を上げやがって」
「・・・・・それ、砥石じゃなくて闇神が暗黒物質で作った宇宙の星って鑑定に出た」
「宇宙の星だと!?」
アイテム化した『宇宙の星片の粉』をインベントリから出してみんなにも鑑定させたら、同じ情報を見たようで仰天した。
「不変って、一生変わらずってことだよね?」
「そうだ。ヘパーイストスがこれを砥石だとずっと思っている限りは、一生使える万能の砥石になるんだ」
「なん・・・だと・・・・・。そんなこと気付かずに坊主から貰って、俺はずっと使い続けていたのか」
粉の方は『宇宙の星片の粉』って名前が表示されたから鑑定も出たんだろう。地神の次は闇神のアイテムが手に入ってしまったな。他の神に関わるアイテムもあるのかもしれない。
「ヘパーイストス。物は相談だが、その宇宙の星屑出る粉は自分用にも集めていいから俺の分も集めてくれないか?」
「ああ、わかった。俺にも粉を使わせてくれるってんなら坊主の分も集めておくぜ。ありがとうよ」
思いもしなかった真実を知ってしまった俺達。他にも同じアイテムがあるのか首を長くして探してみよう。
「宇宙のアイテムってことは世界で一つしかないんじゃあ・・・・・?」
「リアルにも小さい隕石なら何回も落ちてるから一つだけじゃないと思うぞ。地面に埋もれてるか誰かの手の中にあるのかもしれない。名前が『???』って表示されてるから鑑定すれば判る」
「じゃあ、俺達も見つけたら何かに使えるか?」
「願いを叶える物質だから、何かに使えるのは間違いないじゃない?」
宇宙という属性の武器が作れたりしてな。あ、そう思うと俺も欲しくなってきた。絶対見つけよう。うん。
「ともかく、ヘパーイストス。もうちょっと粉を集めさせて?二つ分ほど」
そうお願いした俺はそれを手にしたらイズとセレーネに譲った。生産職の二人に使ってどんな効果が出るのか知りたいからだ。俺から事情の説明を受け止めた二人は了承してくれて、分かり次第教えてくれると約束してくれたところで、準備を済ませてから利用料を払って転移魔法でドワルティアに向かった。集合場所はヘパーイストスに報せたのか、俺達を先導するよう先頭に立って先に歩く。
「おう、来てやったぜ」
「・・・・・連れて来てくれたな」
「協力させてもらうよ。人数も多い方がいいと思って他の冒険者も連れて来た」
「・・・・・助かる」
鉄火の花場から東寄りに離れた先には横穴があるそこには、武装したドワーフの集団が間隔的に並んで集まっていた。ユーミルもモグラ叩きに参加するようで大きなハンマーを二つも背中に差していた。既に鉱山に兵を送り込んで戦闘が行われている様だ。対して俺が連れて来たメンバーはペインパーティ、メタルスライムパーティ、俺とイッチョウ、イズとセレーネにサイナ、リヴェリア、ドリモ、フェルだ。ルフレは留守番をしてもらってる。
「鉱山の地図は?」
「・・・・・これだ」
木製のテーブルの上に広げてもらった。広い、とてつもなく広い。東京ドームが10個分あるんじゃないのか?
「モグラが占拠してる範囲は?」
「・・・・・3分の2ほど」
めっちゃ広くございませんかね? そしてどれだけいるのモグラ。
「モグラの代表的なボスの存在は?」
「・・・・・一度も確認できていない」
となると、かなり奥にいるなこれは。明らかにこれは未知の冒険に挑む戦いになるな。
「今まではどんな風に戦って?」
「・・・・・ドワーフよりモグラの方が数も多く、叩く度に強くなっている。装備の質はこちらが勝っているが、この強さは圧倒的に向こうが上手」
「いつもどの辺りまで進んでいた?」
「・・・・・ここだ」
曰くそこは古戦場とも呼ばわれるようになった場所。ドワーフは取り戻した鉱山と未だ占領中のモグラの境界線から半径400メートルも離れた位置でドワーフ兵士を配備しているらしい。しかし、それは向こうも同じようにしていて、戦いは別の場所―――古戦場で行われ進退、攻防戦が続き古戦場で勝利した側が、敗者側の占拠してる鉱山の一部の領域を手に入れる決まりがいつかできたのだとか。
「ドワーフとモグラの戦いにそんな歴史があったのか・・・・・」
「・・・・・だが、今回はひと味違う。ドワーフの心の友、協力してくれる」
「あ、はい。頑張らせていただきます」
期待されちゃあ応えないと好感度下がりそうだ。
「・・・・・これを渡す」
ユーミルがそう言うのを待っていたかのように、兵士達が大事そうに四人がかりでそれを乗せた台を運んで来てくれた。一言で言うならばトライデントと大盾を一体にしたような水晶の塊と盾に剣が生えた水晶の塊だ。金晶戟蠍の剣のようなトライデントに黒晶守護者の素材を甲殻のように乗せた大盾、緋水晶蛇の素材は大剣となったようだが黒晶守護者の大盾に生えた感じになってる。
「・・・・・付属品、という要望は応えられなかった。代わりにそれらのモンスターの特徴を最大限に活かした大盾にしてみた」
「ほうほう・・・・・モグラ相手に試させてもらうよ」
スキルもなかなか面白い。何より【破壊成長】【破壊不可】【破壊不能】ではなく、この装備には瞬時に耐久値が戻る【増殖再生】なのだ。だから何だと言われたらお終いだが・・・・・まぁいい。結果で見せるだけだ。
「弟王! 準備が整いましたか? 王が早く来いと催促されておられます。モグラ共、他のモンスターまで使役して我等を蹂躙せんと嗾けています! ありゃあ岩蛇とバジリスクでした!」
「・・・・・わかった。今度こそ叩く」
「はっ!」
バジリスク。猛毒と石化の状態異常攻撃のモンスターで有名なのがモグラに使役されてるって・・・・・。
俺の疑問なんて些細だとばかりみんなは進軍を開始する軍隊とユーミルについていく。