ついにこの時が来た。始まるリヴァイアサンレイド! 同時この日は第二陣の新規のプレイヤー達が参入してくる。
「ほー、これは中々凄いじゃないか」
「フマー」
「ヒムー」
ホームの布団で目覚めた俺は、そのまま始まりの町の中央広場にやってきていた。布団に群がっていたマスコットたちを退けるのにちょっと時間がかかったが。広場に来たことに明確な目的があるわけではない。第二陣を野次馬しにきただけである。
キャラメイクを終えた新規プレイヤーたちが、どんどんとログインしてくる様は中々壮観だ。世界中に第二次出荷分が5000万本だったかな? 全員が今日インしてくるわけじゃないだろうが、それでも数万規模だ。一気にプレイヤー数が増えるだろう。
蒼天の技術革新のおかげで、1000万人が同時にインしてもストレスなくプレイできる。このゲームでも、サーバー分けされるのはイベントの時などだけだ。前からそうするつもりで町やフィールドエリアが広かったんだろうな。
「この広場だけでも1000人以上はいそうだもんな」
初心者たちがその場でステータスチェックをしている姿を見ていると、初期の頃の自分を見ているようでホッコリする。
「それに、テイマーの数も結構多いんじゃないか?」
俺がテイマーなので、従魔連れのテイマーが目に入ってしまうだけかもしれないが、割合的にはそこそこ居る気がする。
「お、あの子は初期モンスがリトルベアか。あっちの子はピヨコ?」
「モグ」
「ヤー」
どれもこれも大事に育てていけば、いつか信頼に応えてくれる日がくるのである。若人よ、ゲームを楽しめってな。なんてことを考えながら一端のプレイヤーぶっていたら、広場で微かなざわめきが起きた。
「なんだ?」
広場のプレイヤーたちが同じ方を向いている。すると、俺の隣にログインしたのだろう一人の少女と、小さい少年が立っていた。少女は身長140センチ程で、超ロングの金髪だ。髪の長さが膝裏ぐらいまである。しかも彼女は、大盾使いようで初期の短刀と大盾を持っていた。
だが、プレイヤーたちが注目しているのは少年の方だ。緑の髪の毛の、クワを背負った少年。そう、ノームだったのだ。
初心者と言っても事前に情報を仕入れているプレイヤーが多いのだろう。そのノームに気付いているプレイヤーたちが注目しているらしい。それにしても初期で大盾使いでノーム。俺と一緒か。
彼女も事前情報で仕入れてのログインだろうな。だが、戦闘ができるモンスターではないノームだったら、キャラ再作成しちゃうかもな。残念だけど、それは個人の自由。だが、ノームの姿を見た少女は、満面の笑みでノームに抱き付いていた。
「やった! ノーム!」
お? 反応からするともしかしてノーム狙い? いや、初期モンスは狙ってどうこうなる問題じゃないし、欲しいモンスの一種類だったってことか?
まあ、喜んでいるならいい。同じノームテイマーとして応援しよう。まあ、陰ながら。
だって、ここで声かけたりしたら完全にナンパだぞ? 同じテイマー職であるということを利用して、小さな美少女に声をかける社会人。はいアウト!
「ムムー」
「ムム?」
オルトォオオオオッ!!! そこでどうして話しかけたぁっ!? 俺も話をしないといけなくなったじゃないか!
「あれ、ノームがもう一人・・・・・?」
「おーオルト、後輩ができてよかったな」
「ふえっ!?」
オルトに話しかけたのになぜか驚かれた。解せん・・・・・。
「悪いな。すぐ傍でログインしたプレイヤーが俺と同じノームを手に入れたところを見てたからオルトが話し掛けたかったようだ」
「は、白銀さん・・・・・ですか?」
「そう呼ばれてるな。でも、プレイヤー名は死神ハーデスだから覚えてくれ」
コクコクと頷く彼女を見下ろす俺にオルトが見上げてくる。つぶらな瞳が何かを訴えている。それだけでも可愛いぞお前。
「オルト?」
「ムム、ムムームムー」
もう一人のオルトの手を掴んで俺のホームに指をさす。
「そのノームをホームに連れていきたい? 畑を見せるためか?」
「ムム!」
その通り! と胸張って頷くオルトさん。もしや自慢したいのかな?
「先輩風を吹かせたいのか」
「ムム!」
「怒るな怒るな。頑張ればここまでできるぞって教えたいんだろ」
「ムムー」
頷くオルト。
「あーそう言うわけだがお前はどうだ?」
「あ、あの・・・・・お邪魔してもいいんですか?」
「これからイベントに行くけどまだ時間はある。オルトが連れて行きたいならそうさせたい。そっちの都合がよければの話だが」
「だ、大丈夫ですっ! よ、よろしくお願いします!」
なら行動開始だ。フレンド登録する。名前はイカル、ノームはエスク。
今言ったがリヴァイアサンレイドに参加する俺達と違い、第2陣ログイン記念で、イカル達用の何かイベントがあるらしい。開催日はリアルで8日後。戦闘職も生産職もモンスも楽しめる大イベントだそうだ。お、コールだ。それも同時とは。
「おはようペインとイズ。イベント日和だな」
『おはようハーデス』
『いまキミのホームにいるんだがどこにいるのかな?』
「わかった、客を連れてすぐ戻る」
通信をきったあと、イカルとお互いのノームの可愛さを誉め合い、話し合ってればわが家へ着いた。畑の前で佇んでいる数名のプレイヤー達のところへ向かう。
「広場は第二陣のプレイヤー達で溢れかえってたよ」
「俺達初期のプレイヤーはあんまりこの町には寄らないだろうか狭くならないだろうさ」
「というか、第二陣のプレイヤーに先越されない? 第三エリアから全然進んでないじゃんハーデス」
「それも全プレイヤーの中で唯一な」
あーあーあー! 何も聞えないなー、俺は何も聞えてないぞー!
「ハーデス、もうそろそろ先に進まない?」
「進まないでいるのが何が悪い! 俺は思うがままにプレイをするんだい! と言うか今、生産で忙しくなっているからしばらく活動しないぞ」
「何してるの?」
「次のオークションに向けてラプラスとうちのオルト達の木彫りの等身大を製作している」
そんなのなかった? バカめ、ホームのアイテムボックスにあるんだから飾っていないに決まっているだろう。
「ラプラス先生の力もあって凄いリアル感がある。木彫りなのに本物そっくりなんだからな。確実に売れるぞあれは」
「そこまで言うほど? ちょっと見てみたいかも」
「リヴァイアサンイベントが終わってからなー。そろそろ始まるぞ」
今回フェルを敢えて連れてこない。相手はリヴァイアサンだから海上での戦いになるだろうから泳ぐことも飛ぶことも出来ない。笛を呼んで召喚できるからいざって時に呼ぶつもりだ。
「で、その子は誰?」
「第2陣のプレイヤー。眺めてたらすぐ傍でログインしてな、しかも俺と同じ初期からユニークのノームだったから、オルトがこのノームに自分の畑を見せたいっておねだりされた」
「凄く想像しやすいやり取りだわ」
「そうだね~。さっそく見せさせているみたいだから本当のようだよ」
実際、ほら、オルトがノームのエスクを畑の方へ連れて行ったからイッチョウ達も納得してくれた。
「わぁ・・・・・っ」
イカルの目も凄く輝いてる。畑を見て、うちの従魔を見て、ホームを見て。
「ハーデス君と同じ大盾使いなんだね? それにテイマーでノームだなんて凄い偶然じゃん」
「狙えるようなもんじゃないだろ。他にも大盾使いでテイマーはいたがノームは彼女イカルだけだった」
「本当に凄い偶然なんだな」
感心するドラグ。同感だ。
「そんじゃイカル。質問いいか?」
「なんでしょう?」
「どうしてその職業の組み合わせをしたんだ?」
彼女はこう答えた。
「私も、死神ハーデスさんの影響受けてますよ」
「え? でも、イカルは第二陣だよな」
「はい。第一陣に落選して、それでも諦めきれずにネットの動画をいっぱい見て・・・・・。それで、オルトちゃんに心を奪われたんです!」
なんと、ゲーム開始前からオルトの動画を見ていたらしく、ノームを狙っていたそうだ。オルトのようなノームを手に入れて、痛いのは怖いから大盾使いを選び、テイマー半ファーマープレイをしたかったのだという。
うむうむ、オルトは可愛いからね! その気持ちは分かるよ!
「だから、私もなんですよっ!」
「そうか。嬉しいよ」
それって、俺の影響っていうよりはオルトの影響じゃないか? そう思わなくもないが、オルトは俺の従魔だからな。
「ハーデスに影響?」
「もう一人のハーデスが誕生しようとしてるのか?」
「ちょっと、あの娘が心配になってきたわ」
・・・・・アルゴ=ウェスタを装備。
「今、人のこと悪影響を及ぼすと思った連中は顔を出せ。こいつでその口を刺すからさ」
さっと俺から顔をそらす数人は、後でマグマ風呂の刑に処す。
「死神ハーデスさんは凄い人ですよ?」
「心に染みる言葉をありがとう。因みにイカルはすぐに強くなりたい方か? それとものんびりと俺みたいにファーマーをしながらゲームを楽しむ方?」
「のんびりとファーマーをしながら楽しむ方です!」
ふむ、だったら今のうちにあの称号が手に入るな。
「よし、なら俺の強さの秘密を伝授してやろう。ある称号を手に入ったら他のプレイヤーより三倍の強さを手に入るぞ」
「本当にですか!? お願いします!」
それを教えようとするとイッチョウが問いかけてくる。
「教えるって、あの称号でしょ? いいの?」
「イカルだけだ教えるの。それに今頃新規のプレイヤー達は仕入れた情報通りに動いてるだろうからイカルもそうするだけだ。強さよりもゲームを楽しむ姿勢は本当みたいだし、俺は困らない」
まず彼女に教えること、それは―――。
「一週間。モンスターと戦わず町からも出ず、NPCのクエストと始まりの町の探索をしてみろ。それである称号が手に入る筈だ。もして手にはいらなかったら、一緒にレベル上げをするよ」
「分かりました!」
「それと、ステータスはどう振ってるんだ?」
これが聞きたかった。俺に影響してるって言うもんだから・・・・・まさかな? イカルは純粋無垢な瞳で俺に答えた。
「死神ハーデスさんと同じ防御力極振りです!!」
「「第二のハーデスが生まれるだとっ!? 止めろぉっ!!」」
アグニ=ウェスタァアアアアアアッ!!
「「ちょ、おま―――ウワアアアアアッ!!」」
「これまた、凄いプレイヤーを発掘したことになるのかな?」
「それは彼女次第だと思うよ」
そうだ、彼女次第だ。アイテムが充実していれば俺みたいになるだろう。愚か者二人をノしたので話に加わる。
「動画を見ていたってことはリアルで掲示板も?」
「はい。色々と参考に遊ぶつもりでした」
「なら、移動の時だけはAGIを増やすアイテムを装備するんだな。俺も普段そうしてる」
「だから歩くのが速かったんですね」
「それと、防御力極振りだからって攻撃手段は絶対に増やすこと。今じゃあ貫通攻撃という、天敵のスキルがある以上は防御力極振りだけで勝てない。せめてユニーク装備を手に入ればいいんだがな」
ユニーク、ですか? と不思議そうに言うイカルはまだ知らないようだった。
「破壊不可、破壊不能、そして破壊成長という装備が絶対に壊れないスキル付きのレアな装備のことだ。俺の装備もまたユニーク装備だ。ダンジョンで単独、それも初戦闘でボスモンスターを倒せばユニーク装備が手に入るのさ」
「じゃあ、私もチャンスがあるんですね?」
首肯する。既に発見されているダンジョンにユニーク装備はないが、未発見のダンジョンなら可能性はあるな。
「そろそろだな。リヴァイアサンとの戦いはどうなることやら」
『―――リヴァイアサンか。資格ある者よ心して掛かれ』
身体を小さくしてる黄龍が浮いた状態で話しかけて来た。
『いつの世代の魔王が生み出したのか忘れてしまったが、もはや理性を失った魔獣は厄介だ。戦闘力においては亀と張り合えるからな』
「理性を失った? 失う前の時期があったんだ?」
『うむ。もう見ることが叶わぬ美しい色を誇っていたおり心優しいものだった。しかし、魔王の手によってもはや見るも無残な姿に変貌し海に住まう生命までも凶暴化してしまった』
落ちても無事では済まないってことか。そうだ、これも聞いておこう。
「ベヒモスとジズが倒れたら魂の状態になるんだがリヴァイアサンもなるんだよな?」
『その通りだ。故にリヴァイアサンの魂もどうか解放してほしい資格ある者よ。その後のことは我々に任せてほしい』
黄龍から意味深に頼まれた後、リヴァイアサンレイドの開始時間となり運営から俺達に一斉にメールを送って来た。それぞれメールの内容を見る。
「今回のイベントは皆も知ってる通りのレジェンドレイドボス戦だな。凶暴化したリヴァイアサンのせいで海は腐海と化してしまい海に住むNPC海人族達にも被害が出ている。移住して無人となった彼等の島を舞台に船を用意して討伐せよ―――船、用意しなくちゃならないのか?」
「先にイベント用の場所へ転移することも出来るらしいね」
「それとイベント限定なのかしら、生産職だけ造船のスキルとレシピが手に入ったわ」
「素材の数とレア度と品質によって船の性能と強度が違ってくるみたいだよ」
見させてもらうと、本当に二人のだけメールにそう記載されていた。だけど今回のレイド戦はどんな感じなんだ?
「そもそも討伐って早い者勝ちなのか? それとも集団で?」
素朴な疑問を口にした俺に何を当たり前な、と風にドラグとドレッドが口を開く。
「レイドだから集団だろハーデス」
「そうだぞ。他のプレイヤーと一緒に戦うんだからレイドなんだ」
「いや、たった一回で終わるのかそうでないかの話だ」
「あっ、ハーデスの言いたいことが分かったかも。だとしたらどうなるのかしら?」
イズが手をポンと叩いて納得の面持ちの後に疑問を抱く。他はあんまりピンとこないようだが。
「うーん、悩むのは後にしない? 船がなくちゃ海に出られないんでしょ?」
俺は飛べるし泳げるがな!
「船造りは必然的にイズとセレーネに任せる形になるけどいいか?」
「うんいいよ! あ、でも・・・私の趣味を詰め込んだら駄目かな?」
「逆に詰めれるのか? 大砲とか?」
「素材があれば出来るよ!」
出来るのか―。イベント期間はゲーム内で3日間。だから急がないとすぐに終わりかねない。
「じゃあ、これは重要としてパーティを組むかそれぞれ独断で動くか決めないか?」
「もうここに集まったから皆でレイドしようよ。というか、リヴァイアサンを討伐するために私達も船が必要だからお願いする立場なんだよねー」
ペインとドレッド、ドラグを見るとこっちのお世話になる気満々のようで視線を送ってくる。でもなぁ・・・・・。
「正直、船なんていらない俺は一人でも飛べれるし、腐海の海でも泳げそうだがな」
「まぁまぁ、そんなこと言わずにハーデス君。一緒に遊ぼう? ね?」
「うんうん、ハーデスには素材を集めるのにお願いしたいかなー」
「できれば、高品質とレア度が高いのが欲しい、かな?」
詰め寄ってくる美少女と美女。最後にセレーネはちらりと畑にある世界樹へ視線を送った。いや、あれは伐採できませんから物欲しそうに見ないでくれ。
「はぁ、わかったわかった。チームを組もう。ただし、勇者の称号とスキル狙いで2パーティ以下でだ。イッチョウはペイン達のところにな。船造り担当のイズとセレーネは俺と一緒で。レイドだからパーティ解除されるかもだけど12人以内で倒せば獲得できると信じよう」
「うん、いいよ。でも残りの枠は?」
「まだ入れない。素材集めをしなくちゃならないからな。実際、どれだけ素材が必要なんだ? 造船のレシピ的には」
「えっと、木造の船の場合は最大1000本は必要ね。鉄製の船に使う鉱石の数も同じだわ」
「・・・・・多くない? 買った方が早いレベルだぞ」
船を用意しろとメールに書かれてる。が、一から自力で造って用意しろとは運営も鬼ではない。メールと一緒に船を購入できるシステムも用意してあったんだ。
筏・・・・・0G、1人用。
小型帆船(木造)・・・・・10.000G、1~10人用。
中型帆船(木造)・・・・・80.000G、1~50人用。
大型帆船(木造)・・・・・200.000G、1~100人用。
小型魔力帆船(鉄甲)・・・・・100.000G、1~10人用。
中型魔力帆船(鉄甲)・・・・・800.000G、1~50人用。
大型魔力帆船(鉄甲)・・・・・2.000.000G、1~100人用。
大型蒸気魔力船(鋼鉄)・・・・・10.000.000G、1~100人用。
「1000万も払うプレイヤー、絶対にいるだろう。一人10万も払えば届く金額だ」
「100人も乗れるなんて、今回のレイドはそれ以上も参加できるってこと?」
「ハーデスが疑問を抱いていたのはこういうことだったんだ?」
もうこうしている間にも船を買ってるパーティかチームいるだろうな。
「イズとセレーネの希望で俺達は造船した船で挑むが本当にいいんだなペイン達。お前達だけでも船を買えるんだから俺達と一緒にプレイする必要はないぞ」
「構わないよ。俺達はハーデスと一緒にレイドしたいからね」
「・・・・・物好きなプレイヤーだな。そこまで言うなら素材を集めて来る。二人とも、俺が知る限りの集められる最高の木材と鉱石はこれだけどいいか? 世界樹の木材は無理だから」
水晶樹の木材と水晶を一目見た二人は黄色い声を上げた。
「凄い、見たことのない綺麗な木材だよ!」
「魔水晶? へぇ、魔法を蓄えてるから抵抗力が備わっているのね。リヴァイアサンの攻撃にも防げれるんじゃないかしら」
どちらにしろ水晶の船を造ることになった。なので一週間町に留まるイカルはクエストをしに、一足早くペイン達はイベント用のフィールドへ移動した後、サイナに相談を持ち掛けた。
「人数が足りない。どうにかならないか?」
「問題ございません。私にお任せください」
断言する彼女と再び宝饗水晶巣へ足を運んだ。綺麗な水晶が至る所にあるが、期限内に1000本を集めるのは骨が折れる。サイナはどうするのか?
「少しの衝撃でも与えたら水晶のモンスターが現れるぞ」
「かしこまりました。これよりドローンを放ちます」
ドローン? サイナが創造したドデカい機械の箱が両開きすると、クワガタムシとカブトムシとそれにハチ型の機械が数多に森の奥へと飛んで行った。
「あれは?」
「採取用のドローンでございます。独自でマスターの手が足りない時を想定して少しずつ用意しました」
「自分の考えで行動するようになったか。真の
「えへん」
・・・・・ただなぁ。
ドドドドド・・・・・ッ!!
「どーやら水晶系のモンスターを連れて来ちゃったから
「くっ・・・・・不覚です」
だが、サイナの取ったこの作戦はとても効率的だった。クワガタムシが伐採、カブトムシが発掘、ハチが運搬役に分かれて集めてくれたおかげでわずか1日で目標数が揃った。それでも三つ巴の戦いを勃発させてしまって大変だったがな。素材はありがたくもらうよ。
「あー、またハーデスがレベル上げたね」
「ということはもう船造りの準備も整ってきたってことか?」
「仕事が早くていいじゃないか」
「だな。こっちもそれなりの情報を集めておこうぜ」
「ハーデス君のように上手くいくといいけどね」
・・・・・。・・・・・。・・・・・。
・・・・・。・・・・・。
・・・・・。
「採って来たぞー。サイナのおかげで水晶樹の木材と水晶の鉱石×1000集まった」
「お疲れ様!」
「任せちゃってごめんね? すぐに取りかかるから」
「ここでか? 造船所でしないのか?」
「うん、だから無人島のところに行こう? イッチョウちゃん達が待ちわびているわきっと」
「ちょい待って。念には念をアイテムを大量に補充したい」
小休止する暇もなくルフレ、ペルカ、フレイヤをパーティに加え、アイテムの補充も済ませたらイベント用のエリアへ転移する俺達。1日遅れで参加した俺達の目の前は先に参加したプレイヤー達の姿が町中を闊歩していた―――。
「ちくしょう! どんだけいるんだこのモンスター共は!?」
「倒しても倒してもキリがない!!」
「あ、あいつ死に戻ってしまったぞ!?」
「誰か、回復をしてぇー!」
ではなく、リアルでも気持ち悪い腐った魚が人の身体を得たような姿でプレイヤーに襲い掛かっていて、無人の島は戦場と化していた。
「え、この状況になってたの!?」
「昨日は何もなかったって・・・・・」
二人も知り得なかった現状らしい。情報が欲しいな。パーティは・・・・・。
「あれ、パーティ組めなくなってる。イベント用フィールドに来た時点でもうレイドパーティ?」
「嘘、あ、本当だわ」
「ど、どうしようっ?」
やることは決まっているがな。アルゴ・ウェスタとアグニ=ラーヴァテインを装備して、戦っているプレイヤーの横やりに入り腐った魚人を焼き切る。
「失礼するぞー」
「なっ!? あ、は、白銀さん!」
「一日遅れで来たから状況が把握できてない。情報が知りたいから教えてくれ【身捧ぐ慈愛】」
半径10メートル内にいるプレイヤーにカバーが働く光を展開、天使の姿になったらイズとセレーネが入って来た。
「この状況は何時からだ?」
「わ、わからない。寝ていた空き家から出た途端にこんな状況になってたんだ」
「リヴァイアサンは?」
「まだ誰も倒せてない。そもそもレイド戦に参加したプレイヤーが所有している船は皆大破しちまって、修理しないと海に出られないんだ」
何でしないんだ? と言う疑問を浮かべながらイズとセレーネに目を配る。
「こいつの装備を簡易的でも修理できないか?」
「ハーデスの工房を出してくれるならできるわ」
「りょーかい」
『神匠の黒衣』を装着して工房を召喚する。名も知らぬプレイヤーを中へ招き、消耗している装備の修理を始める二人。
「はい、終わったわ」
「おお・・・・・簡易どころか完璧に耐久値が回復してる。えと、お代は・・・?」
「情報料から差し控えさせてもらうから実質タダでございます」
「マジで!?」
「マジマジ、ということで幾つか質問するから答えて?」
何度も頷く彼から情報を得ていく。リヴァイアサンはどこに、船を修理する場所はどこに? 死に戻るプレイヤーはどこで復活するか、リヴァイアサンの攻撃手段は? と答えてもらうと工房の建物に他のプレイヤーが入って来た。
「え、こんな道のど真ん中に・・・・・工房?」
「おっと、すまん。仕舞うから出てってくれないか?」
「仕舞う? できれば装備を修理してもらえないかって思ってたのに・・・・・」
ん~・・・・・そう言われるとな。
「イズとセレーネ。どうする? これ後が絶たなくなるぞ」
「お代が割高でいいなら請け負うわ」
「だ、そうだけど」
「背に腹は代えられない。お願いするよ」
いいんだ。本当に鍛冶をする環境がない島なのかここは。そして俺の懸念は現実となり、戦闘中なのに未知のど真ん中に不思議な建造物が、中に入ると鍛冶の工房があり建物の中に入っている間は安全地帯、セーフティーゾーンと化するこの建物の中に入って金を払えば、装備を修理してくれる話がプレイヤーの間で知れ渡り、大量のプレイヤーが押しかけて来た。流石に二人だけで捌きれる人数ではなくなったところ、プレイヤーの人垣を搔い潜って割り込んでくるプレイヤーが現れた。順番を守らない迷惑千万な、と思う者はこの場にいなかった。何故ならレイド戦で必要な職業のプレイヤーであることを周知されてるある意味有名なプレイヤーだったからだ。
「おおーい、白銀さん! 俺も手伝うから工房を借りれるか? 工房がないのに何度も修理の声を掛けられちゃって困ってたんだ」
「グッドタイミング、スケガワ! というかお前も来てたんだな」
「鍛冶職のプレイヤーもイベントに参加するさ!」
そう言えばアンドラスのレイド戦にもいたな。
「じゃあ許可する。頑張ってくれ」
「おお、ありがとう! さぁさぁ、俺も修理してやるから遠慮なく声をかけてくれ! 女性プレイヤーにはサービスしちゃうぞ!」
人の工房で変わらないサービス業をするエロガワ以外、工房が使えると聞き付けてやってくる鍛冶師職のプレイヤーが増えたおかげで、イズとセレーネの負担もかなり減った。だが、問題が一つ。
「全然動けない。リヴァイアサンにも挑めないぞこれ」
「外にいるモンスターはまだ減ってないみたいよ」
「今日も含めて残り二日しかないのに、このままじゃ失敗に終わっちゃうね」
肝心のリヴァイアサンも未だ倒せていない。というか挑んだプレイヤーが所有している船が全部大破して乗れない状態らしい。ランクを下げても結局は船が大破して死に戻るだけだと挑まなくなったプレイヤーが殆どが、大量のモンスターと戦わされている始末だ。
「鍛冶師・・・・・ヘパーイストス達が来てくれると凄く助かるんだけどなぁ」
無駄だと分かってても猫の手も借りたい思いでヘパーイストスにSOSメールを送った。NPC相手にもメールが送れるこのゲームは不思議だと思いながら、修理を求むプレイヤー達を一日中見る羽目になった。