沖に進むにつれ海の荒れ具合がどんどん強く、暗雲は黒雲に移り変わって黒い雷を放電していた。大波を幾度も超え、大渦は流れに逆らわず勢いで突破し、超巨大なハリケーンが迫ってきて全速力で回避―――。
「滅茶苦茶シビアなッ!!!」
「他の連中はこんな海の中を進んでいたってのかよ!!」
「その割にモンスターは一切襲ってこないのが不思議だね」
「船を買わず造ったからじゃない?」
「それが理由なら多分、船に使った素材が良かったと思うよ?」
「そうだといいんだけど、リアルだったら命懸けの航海ねこれっ」
まったくだっ! 皆、艦橋に避難して激しい波と揺れに備えている。おっと、デカい波だ!
「【超加速】!」
「はっ!?」
プレイヤーのスキルが反映する船。中々良いじゃないか。水晶の船が更に速度を上げて100Mもある高波をギリギリ何とか乗り越えてくれた。ふぅ~危ないな今のは・・・・・。
「お、おいハーデス・・・・・【超加速】のスキルを取得しているのか?」
信じられないと目を丸くしているドレッド。もしかして、このスキルを取得していると思わなかったのかな?
「一定時間【AGI+50】増える便利なスキルですねー」
「・・・ヤバい、防御力だけじゃなくてさらに速くなってるだと? もしあのスキルも手に入られたら俺の存在意義が・・・・・」
「んー? もしかして【超加速】の上位互換みたいなスキルが御有りなのかなドレッドさん? もしよければ教えて欲しいな」
お願いしてみるとドレッドから拒否の言葉を飛ばして来た。でもそれはサ・・・・・。
「・・・・・黙秘権を行使させてもらう」
沈黙は是だというのに、そうかそうか・・・・・あるのか。
「このイベントが終わったら探してみよっと。予想だと【音速】か【神速】がありそうなんだがなー」
「・・・・・」
俺に背中を向けるドレッド。まぁ、お前がそれでも面白そうに笑みを浮かべるドラグと、どうなっちゃうのかな~? という楽しそうに顔を緩ましているフレデリカがいるので、そう言うスキルは存在しているのだと教えてくれるから無意味なんだよな。・・・・・お? あそこだけ黒雲がないな。
「セレーネ。砲撃ってどこでやるんだ?」
「船の中でやるよ」
「じゃあ、砲撃の準備をしててくれ。たぶん、もうリヴァイアサンがいるところに着いたと思う」
「あそこだね?」
ペインも広く晴れている海域を認知していた。他の皆も前方を見て自然と気持ちを引き締めた表情をする。そこで疑問をぶつけた。
「今回のイベントもサーバー分けされてると思うか?」
「そうじゃないかな? ドックが五つしかないのもおかしいし、サーバー分けされていても前回より人数を増やされている感じだよ」
「最大100人も乗れる船を購入できるからね」
それでも俺達8人だけで挑もうとしている無謀者だがな! そんな俺達はとうとう辿り着いたのだった。天から光が差し込んで降り注ぐ海域に、その中心にいる巨大な存在とご対面を果たした。でもすぐ光の海域の中に入らず回りながら全体を把握しようと船を動かす。
「お、大きい・・・・・」
「ベヒモスとジズよりは確かにな。そんで体色はやはり黒と」
「今度は海上戦だから、俺達プレイヤーが直接攻撃できないのが厄介だぜ」
「だから他の連中は船で戦い、大破させちまったんだな」
イズとセレーネが砲撃の準備すべく艦橋から降りた。MPポーションで回復し万全を整える。
「HPバーが見えないな。戦闘をしないと見えないか」
「こっちを凄く見てるっぽいけどね。うん?」
イッチョウが目を細めて何かを凝視する。
「・・・・・リヴァイアサンの喉仏、なんか刺さってるような?」
「なんですと?」
不意に、リヴァイアサンがぐるりとこっちに振り返った。イッチョウの視線に気づいたのか反射的に舵輪を強く握り、ペイン達が臨戦態勢の構えに入った。くるか・・・・・? 警戒する俺達に窺わせる頭の一部が盛り上がり、人間の上半身の形に作った。
『我は魔王様の盾と矛の存在であり水を司る悪魔族最高主力の一柱、四魔の一角。名はレヴィアタン。今世の勇者よ。戦う前に問おう。汝らは何のために戦う?』
悪魔から理由を聞かれることになるとは。ペイン達を見れば答えを決めかねていた。
「理由は、ないかな」
『何故ない』
「勇者なんて回りが勝手に呼称しているだけの肩書だ。俺達にはそんな肩書が関係なくても、周りは俺達の戦いぶりから勇ましい者として認知してしまってるから勇者と呼ぶ」
『・・・・・』
「だけど、戦う明確な理由がなくても俺達は自然と自分の為に誰かの為に戦っている。理由がなくちゃ人間は生きてちゃいけない道理あると思うか?」
レヴィアタンは俺の答えに対して沈黙を貫いた後。言葉を飛ばして来た。
『過去の勇者たちと違う。あの方が仰っていた通りの人間だな。血塗れた残虐の勇者よ』
「それを言うな!? というか、お前達悪魔達の間で俺はそんな呼ばれ方されているのか!?」
『ふっ、その通りだ。そしていずれその名を持ち時期魔王に成り得る素質がある勇者を見たのは汝で二度目でもある。その力、我に見せるがいい』
「待て、二度目だと? どういうことだ?」
俺の疑問は攻撃で返された。リヴァイアサン/レヴィアタンの口から鉄砲水なんて比じゃない、海の規模の大砲が襲ってきた。
「躱せハーデス!」
「いや、もう間に合わない! でも安心しろ。スキルが船に反映されている。イズとセレーネ、衝撃に備えろ!」
次の瞬間。水瓏が海に呑み込まれ何度も凄まじい衝撃を受けながら横に回転した。普通の船なら最悪、真っ二つにへし折れていただろうが俺が舵輪を握っている間は【絶対防御】と【破壊成長】【水無効化】で絶対に壊れない。なので俺と一体化してる船が壊れはしなかった。
「ほらな」
「・・・・・お前がいて心底よかったと思った日が今日ほどないな」
「喋っている場合じゃなさそうだぜ。リヴァイアサンがもう迫ってきている」
ならさっさと浮上するか! 船を動かして逃げるように海面に出た俺達を追いかけるリヴァイアサン。
「海場は奴の独壇場だ。誘き寄せるぞ」
「どこに―――まさか、ハーデス」
はっと俺の思惑に気付いた様子のペインに不敵の笑みを浮かべる。たぶんこれが正攻法何だと思う。
「二人とも、蛇行しながら動く。大変だろうけど砲撃は任せる」
『わかった!』
ということでリヴァイアサンから逃げるように蛇行を始める。
『我から逃げる気か? だが、お前達の敗北を見届けるまでは逃がさぬぞ』
そぅら来た来た! 俺達勇者を倒す目的を優先に動いているようだなリヴァイアサン/レヴィアタン!
ドッパァアアアアアアンッ!!!
「海水を大砲のように撃ちやがってきやがって。マジでハーデスがいてくれて助かったぜ」
「だが、お互い倒すのに決定だが足りていない。どうするハーデス」
「どうするもなにも、残り少ない時間で決着をつけないと駄目だろ。幸い、ドックがあった場所は俺達が足止めされていた場所と島の反対側だ。そこで戦って勝つぞ」
「さんせーい! 船の上より陸の方が動きやすいしね!」
「ハーデス君、大砲が来るよ! 大きく右っ!」
任せろっ! おらぁっ!
こうして島までリヴァイアサン/レヴィアタンとの追いかけっこが続き、何度も攻撃を食らうも【古代魚】を進化させた【水無効化】でやつの攻撃はほとんど効かないが、衝撃だけはどうしようもなかった。そして、俺がこの舵輪から離されたら一貫の終わりだがな。
「あっ、前から船が大量に・・・・・」
「遅れて来やがった連中か。どうする」
「擦り付ける理由がない。躱す―――」
舵輪を回し続け大きく船を迂回しようとした時、前部甲板に何かが直撃した。
「んなっ」
「目の前からの砲撃? 流れ弾に当たっちゃったみたいだよん」
「リヴァイアサンを連れて来てるこっちのことお構いなしか」
「ハーデスじゃなかったら今の一撃は大破に近いダメージだったよ!」
「わざとじゃないだろうが、やってくれるな味方じゃなかったらこっちが沈めていた」
そんな気持ちを肩代わりにぶつけてくれたのがリヴァイアサン/レヴィアタンだった。他のプレイヤー達が乗る船に海大砲を横凪ぎに払って一撃で軒並みに沈ませたのだ。せっかく修理できたのにまた修理しなくちゃいけないとは・・・・・。
「・・・・・俺、今日ほど防御力特化でよかったと思わなかったな」
「「「「うんうん」」」」
そしてこの船を造った二人に心から感謝だ。蛇行した瞬間に水晶の砲弾を撃ってリヴァイアサンの身体に当てては貫いている。そこからゆっくりと水晶が浸食しているのが蛇行した瞬間に見えた。だったら・・・・・。
「【飛翔】」
海面から離れた船は、空飛ぶ船と化した。魔力は俺自身のではなく船の魔力で空を飛ばしている。三分ぐらいは飛べそうだな。
「イズ、セレーネ。あいつの口を狙えるか?」
『やってみる』
『数秒だけ船を止めてくれるなら!』
リヴァイアサン/レヴィアタンの顏の高さまで高く飛び上がり・・・・・あることを考えた。
「どうせだったら食べられに行くか。体の中なら攻撃し放題だし」
「「「「え?」」」」
「なるほど、合理的だね」
ペインも納得したから問題ないな! はい、ということで全力突進!
『自棄を起こして突っ込んできたか?』
海大砲を放つ奴の攻撃を真正面から受け止めながら突き進み―――海大砲を突破したところで、リヴァイアサン/レヴィアタンの開いた状態の口が視界一杯に飛び込んできた。
「嘘だろ!?」
「マジかよ!」
真剣と書いてマジだ! おらぁあああああああああああ!!!
『むごぉぅっ!?』
水瓏が口の中に飛び込んだ勢いでリヴァイアサン/レヴィアタンは思わず呑み込んでしまったようだ。文字通り口の中にな。
「おわぁああああああっ!?」
「きゃああああああああああっ!!」
「あっはっはっはっはっはーっ!」
ジェットコースターに乗っている気分になるほど、すごい速さで食道の中を走る水瓏。凄い狭く、艦全体が押し潰されてもおかしくはないが生憎この展開は経験してるから問題ない。っと、胃袋に到着だな。
胃液に着水する水瓏。とても広くてこの艦が何十隻分も呑み込めるだろう胃袋の中は俺にとって宝探しの場所だ。
「こ、ここがリヴァイアサンの中?」
「胃袋の中な。海水だと思ってるだろうけど胃液だからな?【毒無効化】を持ってないと即死するかもよ」
「っておい、どうやって脱出するんだよ?」
「この中から攻撃するだけだが? サイナ召喚」
俺と同等のスキルを有してるサイナを喚び、代わりに舵輪を握ってもらった俺は艦橋から飛び出して胃液のプールに飛び込んだ。
「ちょ、ハーデス!?」
「ベヒモスより広いなぁ! ははははっ!!」
「・・・・・嘘でしょ。装備がダメージを受けてるのがわかるのに平然と泳いでる」
「防御力特化と【毒無効化】のプレイヤーがなせる業、ということか。参考になるね」
「するなペイン! お前までハーデスのようになってくれるなよ!?」
「大体こんなところで油売っていいのかよ?」
なにか言っているが、気にしないで俺はアイテムを手にいれまくる。予想通り、こいつの腹ン中にも眠っていたわ。宇宙の星もだ。
「おーい、風化したユニークの装備があるぞー! サイナ、こっちに寄せてくれ!」
「・・・・・ユニーク装備、杖だったら欲しいかも」
「斧、ねぇかな」
「短剣のユニーク装備は欲しいところだぜ」
艦が寄ってくるのを見ながらさらに奥へと泳いだら。胃液のプールの上に浮かぶ澄んだ水色の光の塊があった。
「ハーデス、これもアイテム?」
「わからない。アイテムではない感じもするが」
甲板に戻る俺と呼んだイズとセレーネ、ペイン達と囲み触れてみると、ドクンッと鼓動のように脈を打った。
『・・・・・私だった私を、どうか倒して・・・・・』
「え、誰・・・・・?」
『・・・・・最後に残した、この力、で、・・・・・どうか、勇敢なる者、お願いし、ます・・・・・』
光が淡い泡と化して俺達の胸の中に入ってくる。
『スキル【リヴァイアサン】を取得しました』
この展開、機械神を思い出すな。
「何だこのスキル?」
「【リヴァイアサン】のことか?」
不意に疑問の声を上げるドラグを尋ねると違うと否定された。
「いや、俺は【土石流】ってスキルだ」
「私は【海大砲】だよ。あんな水魔法を使えるなんて・・・・・」
フレデリカも得たスキルを口にするとそれを皮切りに他の皆も告ぐ。
「俺のスキルは【水分身】。レベルを上げたら実体あるもう一人の俺を増やせる良いスキルだ。ペインは?」
「【海神の祝福】だ。これならリヴァイアサンと直接戦えるよ。水場限定だけどね」
「私も【水分身】だよ」
なお、鍛冶師のイズやセレーネは俺が持ってる【海王】だった。
「これ、ランダムで水に関するスキルが手に入るやつだったみたいだな。基準は保有してるスキルかステータスが反映してるのかわからないけど」
「さっきの声は、リヴァイアサンなの?」
「麒麟が言っていた、理性を失う前のリヴァイアサンだったんだろうな。とにかく、ここから脱出するぞ」
異議なし!
サイナと操舵手を変わってもらい【機械神】を使った。
『ぐああああああっ!?』
ベヒモスと同様に身体の中から攻撃されているリヴァイアサンは悶え苦しむ。寄生虫のように身体の中に侵入されるだけでなく、ウィルスのごとく身体にダメージを与えられてはいかにリヴァイアサンとでもどうしようもなかった。
『お、おのれ勇者よ! わ、我の身体の中で好き勝手に攻撃するなど、それでも勇者がする戦い方か!?』
返事はない。聞こえていたら「知るかボケ。口を開けていた方が悪いんだよバーカ」と中指立てて言い返していたかもしれない。
『がああああっ!? ぐううっ! こ、こうなったらかくなる上は・・・・・っ!』
リヴァイアサンは海に顔を突っ込んでハーデス達を追い出す実行を始めた。
「大変! 海水が流れ込んでくるよっ!?」
「リヴァイアサン、相当堪えたようだな。胃袋を海水で満たして溺死させようとしてる。イズとセレーネも艦橋に戻るぞ」
急いで扉を閉めて海水が入ってこられない環境にする。それから流れ込んでくる海水の方へ進みながら、戦艦のように生えた無数の砲身からレーザーを撃ち続ける。ミサイルと魚雷もありますよー? 水晶の砲撃も忘れてませ~ん。もう胃袋は成長してる水晶だらけになってきている。
「もう、この艦は何でもありね。ハーデスのように」
「味方ならいいの。味方なら。うふ、うふふ」
このまま攻撃しながら外、海中に出られると思っていた俺達だが海水が流れ込むのが止まってしまったことに不思議に思った。
「倒した?」
「いや、俺が一人でベヒモスに勝ったときは数時間も掛かったぞ。こんな早く倒せるはずが・・・・・」
口にした予想を否定した時だった。艦橋の中でも聞こえる重低音。ゴゴゴゴ・・・・・ッ! と轟く音響に嫌な予感を覚えさせるドレッド。
「もしかして俺達ごと海大砲を放つつもりか?」
「・・・・・待って、それってつまり・・・・・」
嫌な汗が頬に伝わり、予想していたことが現実になった。食道にいるだろう俺達を乗せる艦は・・・・・流れに逆らえず上へと押し出され。
『出てこいっ、勇者共ぉっ!!』
リヴァイアサンの放つ海大砲と一緒に俺達は外に出された。だが、最悪なことにぶつかる先は海ではなく島だった。
「サイナ、イッチョウたち女だけ守れっ! 【飛翔】【身捧ぐ慈愛】!」
海大砲から脱出を試みるが、圧力をかける水圧によって閉じ込められたまま、地面と直撃してしまった衝撃で皆は前の方へ吹っ飛んで水晶のガラスや壁にぶつかった。
「どわぁああっ!?」
「きゃあっ!!」
身体から伸びる四つのアームで四人の身体を掴み、衝撃に襲われない場所で宙に浮いてイッチョウ達を守ってみせたその知性は称賛に値する。ペイン達はそうでもないが、ダメージは一切ないので目を瞑って欲しい。
「し、死ぬかと思った。さすがに・・・・・」
「本当にこの艦で助かったぜ・・・・・」
「ど、どういたしまして・・・・・」
「う、うん・・・・・」
傾いたままの艦はどうやら地面に突き刺さったようだ。前に進まないなら後退するまでだと思うが、そう問屋は卸してくれなかった。
『忌々しい人間の道具め。我の一撃をもってしても破壊できぬとはっ・・・!』
すぐ近くまでリヴァイアサン/レヴィアタンが来ているようだった。このままじゃあ甚振られるだけだが、海から上がったのならば好都合だ。
「フレデリカ、舵輪に触れて【海大砲】ができるか調べてくれ」
「え? うん、わかった」
サイナのアームから解かれて傾いたままの舵輪の前に降りる彼女が触れると、使用可能だと教えてくれた。
「よし、じゃあ撃て」
「撃つの!?」
「逆噴射できるならそれで脱出できるはずだ」
「あ~なるほど! でも壊れない?」
その懸念は確かにあるが、このまま突き刺さっている場合でもない。
「壊れたらまた素材を集めまくる。サイナが9割で俺が1割でな」
「それ、殆ど他力本願じゃあ」
「素材集めの数に負けてるんだよ。実際に見れば俺の言うことが正しいと思うだろうよ。ということでやれフレデリカ」
「どうなっても知らないよ。【海大砲】!」
次の瞬間。艦は後ろに向かって飛び上がった。地面が【海大砲】を受け止められるだけの硬い地盤でよかった。瞬時で俺に舵輪を変わってもらった直後、ズドン!! という激しい衝撃が艦の上から襲ってきて俺達は床に叩きつけられた。艦の場合は地面だろうな。
『逃がすか。このまま地面の奥深く埋まるまで叩き潰してくれる』
「―――サイナ、お前が舵輪を握っていた時に使えたスキルは唯一無二のスキルも使えたか?」
「肯定。可能でした」
よーし、それじゃあ反撃といこうか! サイナに変わった途端に機械化した舵輪の中心に開く穴へ鍵を差し込んだ。
リヴァイアサンが陸に上がった。どうして海ではなく陸に来たのかプレイヤー達は理由など知る由もない。しかし、プレイヤー達が最も力を発揮できる場にレイドボスが来てくれた以上、こちらも存分に戦えると自分達をそっちのけで何かに意識を向けているリヴァイアサンへ集結する。
「うぉおおおっ!」
先に辿り着いたプレイヤー達が巨大過ぎるレイドボスの身体に一撃を入れる。
『無駄なことを。羽虫ごときがいくら集まろうと我に敵うはずがないだろう』
ちょっとでも長い身体を動かせば、数多のプレイヤーのHPバーを吹っ飛ばした。ダメージは通っているも、HPバーが三本もある怪物にプレイヤー達の武器やスキルでは雀の涙程度でしかないだろう。ハーデス達が身体の中から攻撃したためHPバーの三つの内の一つだけ半分まで下がったが、それでも脅威の生命力と言うHPは健在であった。
「攻撃を続けろ!」
「俺達も活躍するんだ!」
「おりゃあああ!」
初めてレジェンドモンスターと戦えるプレイヤーからすればどんなに驚異的なモンスターでも、戦って勝ちたい思いが一つ。勝って素材を手に入れたい、称号を手に入れたい、有名になりたい、様々な思いを抱いて続々と現れ続けるプレイヤー達が反撃に遭いながらも、絶え間なく攻撃をしたことでHPバーの一つが消し飛んだ。
『勇者以外にも骨のある人間がいるようだな。だが、それもここまでだ』
大きく息を吐くリヴァイアサン。警戒する全プレイヤーに向かって吐いたのは、鼻から出る霧だった。リヴァイアサンの身体から下は濃霧で覆われてしまい、プレイヤー達は互いの姿を見失っていた。更に付け加えると・・・・・。濃霧から見える異形の影を見つけたプレイヤーが攻撃を仕掛けた。
「モンスターか! 【ソードスラッシュ】!」
「うわっ!?」
「え、プレイヤー!?」
「この野郎! モンスターの癖に不意打ちとは! 【パワーアックス】!」
「ま、待て俺はプレイヤー―――うわぁあああっ!?」
「は? なんだと? 今のプレイヤーか? 一体どうなってんだ?」
モンスターかと思い攻撃をしたらプレイヤーであり、相手がプレイヤーだと知らず攻撃したら今度は自分がモンスターに見えて攻撃される。怒声と悲鳴と困惑があちらこちらから湧き、気付いた頃には少なくない数の多くのプレイヤーが同士討ちをしてしまった後である。
『我が秘術、「蜃気楼・幻魔」は味方を惑わす。愚かな人間共を減らすには丁度いい』
何の感情もなく同士討ちを勝手にするプレイヤー達を見下ろしていた視線は、勇者に戻す。
『ただし、我からも見えなくなってしまう難点があるがな・・・・・む?』
違和感を覚えた。放った霧が異質な霧に混じったような気がしたリヴァイアサンは霧に凝視した。
カッッッ!
刹那の閃光。それは霧と共に現れた。リヴァイアサン並みの巨体ではないもの、輝きを放つ光に包まれながら、水晶で出来た水瓏並みの人型が機械の装甲を纏って姿を見せた。姿形は長い髪を腰まで流し、水晶の巨大な剣と大盾を持ち、腰辺りに長い尾を伸ばした乙女の存在にリヴァイアサンは驚きながらも感嘆の念を抱いた。
『過去に見えた今までの勇者達とは一線を越え、逸脱している。そのような芸当をした勇者は見たことが無い。面白い、面白いぞ勇者達よ・・・っ』
高揚感を覚えるリヴァイアサン。
「いやいや、なんだよこれ!? 流石の俺もこれは想像してなかったんだが!」
「あはは、これ、テレビで放送してる戦隊シリーズに登場する人達と巨大ロボットみたいだねー」
「俺達が同じ場所で剣と盾を持って立っているってことは、操作しろってことか?」
「このゲーム、趣向が判らなくなってきたな」
「運営ー!!」
「フレデリカ、運営に文句を言っても仕方がない時もあるさ」
「船が、大きな人型になるって・・・・・」
「ア、アハハ・・・・・」
当惑、動揺、唖然のハーデス達。
『黄龍、あの姿は・・・・・』
『懐かしい。リヴァイアサンとそっくりだ。・・・・・託したのだな。この世界の未来を』
『勝つがよい資格ある者達よ!』
『掴み取れ勝利を!』
勝負の行方を見守る神獣達。
「おい、師匠。ありゃ・・・・・」
「・・・・・この地に新たな伝説が生まれようとしている」
「その通りだな兄者」
「すげぇ・・・・・」
「勝て、勇者達よ!」
「あなた・・・皆さま・・・・・」
未来を見据えた確固たる確信を抱き、応援する者達。
いよいよ最終決戦が始まるのだった。