バカとMMORPGと召喚獣!   作:ダーク・シリウス

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様々な変化

イベント用フィールドから戻った俺は長らく待ち望んだクエストの達成を完了するべくヘパーイストスの鍛冶屋に訪れた。扉の前に閉店の看板を掛けたヴェルフが俺とヘパーイストスの傍に立ち見守る姿勢に入った。

 

「それじゃ、ヘパーイストス。長く借りていた物を返すよ」

 

『古代鍛冶師の指輪』と『鷹の羽衣』を受け渡す。特に指輪は本当に助かったことが多い。これ無しじゃあだめだった戦闘も何度もあった。それが手元から無くなる虚無感は凄く感じて来る。

 

「おう・・・・・久しぶりに見るぜ。こいつはお前の助けになったんだよな?」

 

「俺の半身と言っても過言じゃないぐらいにな」

 

「へっ・・・だったら俺はそれ以上の物を報酬としてお前に作らなきゃあいけないな。おう、最高の素材を用意できてんだろうな?」

 

力強く頷き、オリハルコンを始めベヒモスの素材とジズの素材、手に入れたばかりのリヴァイアサンの素材をすべて出す。

 

「この中から選んでくれるか?」

 

「いいぜ」

 

俺の目の前で幾つか手に取っては素材の未分化を把握できるモノクルで調べ、使う素材を選抜して残りは俺に返した。

 

「これらでお前が望む装飾品を作ってみせる。期待して待っていろ坊主」

 

「期待しないで待っているさ。なんせ俺の手の中にある物は俺が望んでいた以上の物が、ヘパーイストスから手に入る未来を待ち受けているんだから」

 

「・・・・・はっ、そうかよ。なら、早速作業に取り掛かるぜ。ヴェルフ、付き合え!! 古匠の俺がこいつの為に最高の物を作る最初の大仕事だ!! 十分過ぎる腹ごしらえをしたら不眠不休は当然覚悟しろ!! 一週間以内はあの刀と完成させる!!」

 

「うっす師匠!!」

 

後は二人に任せるとして俺はこの場を後にする。おお、久々の【AGI 0】の足の遅さが・・・・・。

 

「・・・・・探した」

 

「いつの間に」

 

何故かユーミルが店の前に佇んでいた。さっきいなかったよな? どうしてここに?

 

「・・・・・三大天の素材、装備に作る」

 

「え、頼んでないけどいいのか?」

 

「・・・・・俺がしたい」

 

あ、そう言うことですか。リヴァイアサンを間近で見て素材が手に入ったら作ってみたい衝動に駆られたかこの神匠のドワーフさんは

 

「じゃあ、残ってる素材で作ってくれるか? この風化した籠手と2つのオリハルコンも使ってさ」

 

「・・・・・大盾ではなく、格闘系の装備を?」

 

「ああそうだ」

 

「・・・・・わかった。最高の物を作ってやる」

 

「ありがとー!」

 

んふふ、武器と盾もいいけど直接殴る戦いもしてみたいんだよなー。カワカミー100に手合わせでも願おうか。いい練習相手になるだろ。素材を受け取ってドワルティアに帰るドワーフを見送りながら今後の楽しみを考え笑みを浮かぶ。

 

第二陣記念イベントまでには完成するだろう。それまで楽しみな俺はホームへと戻る。

 

「あ、おそーい。やっと帰って来たね」

 

「しょうがないだろ。今の俺の【AGI】は0だぞ。足の遅さなめんな」

 

「え。どうして? 指輪で数値上げてるんでしょう?」

 

「それを返しに行ったんだ。元々借り物だからな。その代わり一週間ぐらいしたら作ってもらっている俺専用の指輪を取りに行く」

 

「次のイベントまで8日もあるから、間に合うわね?」

 

「また新しい装備もな。神匠に三大天の素材で装備を作りたいと強請られたし・・・まぁ、この話は別にいいか」

 

桜の花弁が舞う畑で待っていた皆の輪の中に加わり、サイナから飲み物を受け取って音頭を取る。イスとテーブル、ゴザも用意されていてオルト達も持っていたグラスや湯飲み、コップを上に掲げる俺と一緒に持ち上げた。

 

「そんじゃ祝勝会を始めよう。リヴァイアサンレイドイベントのクリアに祝い、乾杯!」

 

「「「「「「「「「「乾杯!」」」」」」」」」」

 

「ムー!!!」

 

「―――!」

 

「キキュー!」

 

「ヒムー!」

 

「ヤー!」

 

「フマー!」

 

「フムー!」

 

『―――!』

 

「モグ!」

 

「メェー!」

 

『にゃ~ん!』

 

「オォ~ンッ!」

 

「クマー!」

 

≪―――!≫

 

「ペンペンペー!」

 

「ヒヒーン!」

 

「キュイ~!」

 

「ピカ!」

 

「ヤミー!」

 

「ピィ!」

 

 

「あい~!」

 

「テフテフ!」

 

「カパパッ!」

 

「バケバケ!」

 

「モフフ!」

 

「ホゲー、ホゲゲ―!」

 

「ポコ、ポン!」

 

「チョウチョウチ~ン!」

 

「ケケケ!」

 

 

「ワオーン!

 

「ニャ~!」

 

 

うん、従魔とマスコットに妖怪だけで十分宴会する人数が揃うなこれ。

 

『賑やかでよいな』

 

『そうだな。かつての資格ある者達でもこうはしなかった』

 

『今回の資格ある者達はとても愉快だな麒麟よ』

 

『見ていて微笑ましい限りです』

 

『にゃ~お』

 

神獣達も交ざり大いに盛り上がる。大いに盛り上がり過ぎて畑の外から物凄い視線が向けられてくるのが気になってしょうがない。

 

「な、なにあれ・・・・・従魔とマスコットと妖怪だけで大宴会じゃないっ」

 

「う、羨ましい~・・・! 中に加わりたい~」

 

「何かのイベント、ってわけじゃないよな?」

 

「リヴァイアサンレイドを攻略した祝勝会だろ? 俺もその場にいたんだけどな~、その場にいたんだけどな~!」

 

「お~い! 俺も参加させてくれないか~!」

 

「一緒に戦ったのに自分達だけ楽しむ気かー?」

 

・・・・・ホームでするべきだったか。桜の下でしたいがために畑ですることを決めてしまったからなぁ。

 

『資格ある者よ。少々野次馬が多いようだがよいのか?』

 

「こうなることは予想ついてたからしょうがないと割り切るしかない」

 

『承知の上、ということか。ならば勝手にさせてもらおう』

 

黄龍さん? 一体何を―――視界が真っ白に染まり出して、目の前が何も見えなくなったのはたったの一瞬だけ。視界が晴れた頃には俺のホームで、畑にいて、ユグドラシルの隣に桜の木と小社までもあった。

 

「え・・・どうなった?」

 

『無遠慮な視線が煩わしかったので我が転移させてもらった。ここなら視線を気にすることもない』

 

「め、滅茶苦茶な・・・・・こんなことも出来たのか」

 

『黄龍ぐらいですよこんな事できるのは』

 

ちょっぴり呆れてる麒麟がそう述べるので納得するしかない。畑にいたプレイヤー達もおっかなびっくりしてるだろうなぁ・・・・・関係ないけど。ま、ありがたいがな。黄龍の粋な計らいに受け入れた俺達も祝勝会を続けた。神獣達も場の雰囲気に酔い楽しむぐらいだ。2羽の鶏もどきの求愛ダンスやコケッコーたちの目を張るダンスの披露に拍手喝采。お前等、モンスターなのにいつの間に仕込まれていたんだ?

 

 

そんな祝勝会or大宴会は程なくして終わり俺は一足早くログアウトした。昼食の準備をしなくちゃならんからな。ハードギアを外してベッドから起きて直ぐに作り始めると程なくしたら、燕と瑠海もログアウトしてLDKに顔を出しに来た。

 

「今日はなんですかー?」

 

「ヘルシー&甘いデザート」

 

「あの戦いのあとで甘いものが食べたかったから嬉しいわ」

 

擬人化した水晶の乙女を操作するのは中々ハードだったからな。マジでリヴァイアサン/レヴィアタン、強すぎた。ベヒモスとジズの方が倒しやすい方だったかも。完成した料理を皆で食べ終えた後、俺はログインしなかった。

 

「ゲームしないんですか?」

 

「レイドボスとかイベントのような戦い以外、長時間プレイ+寝たっきりはあんまりしたくない。身体が訛るから今日は止めておく。プールで泳いでくるわ」

 

「プール? この季節に?」

 

「あ、瑠海さんはまだ知らなかったね。地下にプールがあるんだよ?」

 

「え、嘘でしょ?」

 

本当だとも。だから俺は片づけを燕に任せて、地下に続くエスカレーターに乗って下へ降りて行った。地下に広がるプールは25mと大きな円形状のプールの二種類あり、温度を上げて温水プールにする事も可能だ。

 

「はぁ~気持ちいぃ~」

 

息を止めて5往復泳いだ後に水面から顔を出し、全身の力を抜いて浮いた。全身の筋肉を使う運動は水泳が気持ちいなやっぱり・・・・・。このまま寝ても問題ない・・・・・。

 

「本当にプールあった」

 

「瑠海か」

 

視線をずらすと興味津々に俺を見下ろす彼女の視線と絡み合った。

 

「気になって来たか。本当だったろ」

 

「蒼天の王様はこんな施設も用意できる経済力があるのね」

 

「伊達に長く王を勤めてないぜ」

 

水面に手をやって、地面に触れている感じで手と腕に力を入れて飛び跳ねるように体を起こし水面に立つ俺の様子にあんぐりと瑠海は口を開けた。

 

「なんで水の上に立てちゃうの? スキル?」

 

「ミステリーだろ?」

 

身体は濡れたままだけど。椅子に掛けたタオルを取りに近づき濡れた身体を拭く。その間の俺を瑠海の視線は凝視と言ってもいいぐらい見つめて来る。

 

「どうした?」

 

「こうして傍にいるのに不思議な人だなって思っちゃって」

 

それこそ不思議な感想だなと俺も思う。

 

「他者の俺を見る感覚はわからないな。実際にこうして言葉を交わして触れ合うことも出来ているんだ、それだけじゃ物足りないかね」

 

「あなたは普通の人間、ううん・・・人間じゃないでしょうから余計に不思議なのよ。特に怖い存在でも畏怖する存在でもない。傍にいるのが当たり前みたいに自然体で居られる私も不思議なの」

 

そう思っているのはお前だけの話じゃないな。俺を恐れる人間以外は遠からずそんな感じだ。

 

「なら、これからも俺の傍で自然体でいればいいさ。その方が好ましい。俺を蒼天の王として接してくるよりも、お前が安心できる異性の人間として接してくれよ」

 

「・・・・・それ、燕ちゃんにも言ってる?」

 

「燕は敬意を抱きながらも元からフレンドリー精神で接してくるぞ。たまーにあの子娘は生意気な言動もするし」

 

「そ、それは私にはできないわね・・・・・でも、そっか・・・・・それがいいなら、これからもそうするね?」

 

おう、しろしろ。と首肯する俺と瑠海の間の距離は短くなった気がした。

 

「変なこと聞いてもいい? 燕ちゃんとは恋人の関係じゃないのよね?」

 

「ゲーム内では結婚しましたけどなにか?」

 

「・・・・・現実で身体を重ねてないわよね?」

 

「流石に控えてるわ」

 

向こうはその機会を窺ってる気配を滲ませてるけどな。燕の癖に獲物を狙う鷹の如く。

 

「じゃあ・・・・・燕ちゃんとゲーム内で初めて会った時の言葉、覚えてる?」

 

「誰が言った言葉だ?」

 

「あなた」

 

俺が言った言葉・・・・・あれか。

 

「手を出すならイズのような女性、だっけ」

 

「うん、あれって本心?」

 

「未成年と肉体関係になろうとも責任は絶対に取るつもりだし、本心から言ったぞ」

 

真っ直ぐ告げられた瑠海は、熱で浮かされたように瞳を潤わせて顔を朱で染め始めた。

 

「・・・・・私のような女性ってことは、私に手を出したいって意味で捉えていい?」

 

言葉の確認を、俺の気持ちの深意を知ろうとする女性は後ろに手を組み恥ずかしげで。

 

 

「私、あなたのことが好きになっちゃった」

 

 

俺に好意の告白を告げたのだった。

 

 

・・・・・。・・・・・。・・・・・。

 

・・・・・。・・・・・。

 

・・・・・。

 

 

瑠海からの告白受けて3日目が経過した。彼女に対する返答は保留だ。

 

『返事は言わないでいいわ。あなたを好きな私の気持ちだけ知ってくれればそれでいいし、燕ちゃんには宣戦布告してるから。あなたなら燕ちゃんの好意を気付いているだろうし、これから私もあなたの恋人になれるように努力する。でも、結婚式は蒼天でしましょうね? 一夫多妻の結婚が出来るんでしょ?』

 

もはや結婚前提で変わらない交流をするような気がしてならない瑠海の発言以降、燕にも知れ渡り。

 

『ふーん、そうですかそうですか。蒼天で結婚する事には大賛成ですので私的にオールオーケーですよん。私がゲームをしている間に肉体関係になっていたら・・・・・襲ってたかもですし?』

 

『じゃあ、私も予行練習したら・・・・・』

 

『私もあと何回か予行練習をしたら、そうですね・・・・・』

 

不穏な発言の気配を感じて耳栓して聞こえないようにしたので、俺は何も聞えなかった。聞きもしなかったので何だかさらに仲良くなった二人を見ても気にもならないでいられたのであった。

 

「水晶の素材(木材と鉱石)×2000、集めたぞ」

 

「わぁっ、ありがとうっ」

 

「これでさらに水瓏の強化ができるわね」

 

新大陸の実装はまだ先でも、イベント用のエリアの行き来は第一回と二回目の村とエルフの里のようにできる無人島で船を造れることが出来る。なのでイズとセレーネが再び船を造りに行ったのだが。

 

「「・・・・・」」

 

何故か戻ってきた二人の顔が酷く疲れ切った表情になっていた。

 

「拘り過ぎて造るのが疲れた?」

 

「ち、違うの・・・・・」

 

「無人島に海人族のNPCがたくさんいて、リヴァイアサンを倒した私達を神様のように崇めてくるの。いつの間にかリヴァイアサンを倒した場所に私達専用のホームが建てられていたし、島の至る所に私達の銅像が・・・・・どうやって修復したのか分からない水瓏の擬人化の像まであったわ」

 

い、行きずらい・・・・・。そんな島に行くのが躊躇してしまうレベルで・・・・・。もう伝説や神話が語り継がれる島になってるじゃんか。

 

「イッチョウ達には黙っていよう。船は完成したんだよな?」

 

「ええ、ハーデスの要望通り生活が出来る環境も増設したわ。そしたら船がホームになってびっくりしちゃったけど、どうやら寝室とキッチン、部屋とか設けると船がホームになるようだわ。おかげで一週間以上の旅中でもログアウトできるようになったし、前回の反省も兼ねて座席とシートベルトも作ったわよ。プレイヤーのステータスとスキルが反映されるのも確認できたしね」

 

「ただ、船を買わず一から作るとどうなるか色んなプレイヤーの人達から質問されちゃって、教えちゃったけど良かった?」

 

教えて困るような秘密はないと思うがな。問題ないと言い返すとセレーネは安堵で胸を撫で下ろしながら息を吐いた。居間に入って来るサイナとリヴェリアが淹れてくれた茶とお菓子を受け取り、二人に渡す。茶を飲んで一息を吐く。

 

「というか、船を買えるシステムがまだあるのか?」

 

「海人族がいる島のドックに行けば、購入するか造船するかの選択ができるようになってたの。購入する船の性能は変わってないって教えてもらったわ。ハーデスの読み通り、新大陸は航海しないといけないみたいね」

 

「なら、俺達は南に行くとしよう。ペンギン探しの旅は他のプレイヤーもそう考えているはずだ」

 

「北極と南極、あるのかな? 防寒用のアイテムを作らなきゃ」

 

先を視て動くことは嫌いじゃないぞ?

 

「ところで、私とイズは【海王】ってスキルだけど、ハーデスの【皇蛇(リヴァイアサン)】ってどんなスキル?」

 

「私も気になってた。やっぱりベヒモスみたいに変身できるの?」

 

「あー・・・・・【皇蛇(リヴァイアサン)】は変身できるけど、モンスターにはならないんだ」

 

どういうこと? 不思議そうな二人からそんな気持ちを目で訴えてくる。

 

「論より証拠。百聞は一見に如かず、だな。【皇蛇(リヴァイアサン)】」

 

ホームの中なのにスキルを発動する俺の前身は青と水色、白の光のオーラに包まれ・・・・・頭から珊瑚のような角が生え、腰から異形の長い尾が伸びて胸が豊かに膨らみ、骨格も細くなって体つきも女性となっては顔も女になった。銀髪も青色に変色してしまった。

 

「え? ・・・・・へ!? ハ、ハーデス・・・・・なのよね?」

 

「ああ、俺だよ。【皇蛇(リヴァイアサン)】のスキルはモンスターじゃなくて、女に性転換してしまう意味不明なスキルだこれは」

 

「・・・・・(ポカーン)」

 

姿だけでなく女の声にまで変わってしまった俺。セレーネがそんな俺を見て目と口が開いたまま放心してしまい、微妙な空気が漂う・・・・・。

 

「何か言ってくれない? 気まずいのだけれど」

 

「い、違和感がない・・・・・! 体は大丈夫なの・・・・・?」

 

「胸がずっしりとする以外は何とも」

 

持ち上げる女の象徴に二人の目は釘付け。本物? という疑心の目が伝わってくる。

 

「顔、触っていい?」

 

「胸を触るならそっちの胸も触るからな」

 

「だ、大丈夫。触らないよ?」

 

了承すると、二人はこちらにより顔や髪に角、二の腕や尻尾を触診するように触れて来る。

 

「私達と同じアバターの感じね。角と尻尾が生えてるのはどんな種族なのかしら?」

 

「たぶんだけど、NPCが言っていたリヴァイアサンじゃないかな? 水晶の像の姿とそっくりだよ」

 

「スキルの名前も【皇蛇(リヴァイアサン)】だから? 何だか安直ね」

 

この姿で海人族がいる島に行ったら大騒ぎなるだろうな。なるべくそうしないようにしとこう。そうなるようなことはしないと思うが。

 

「それでその姿にならないと使えないスキルってあるの?」

 

「さぁ? でもこの姿になる以外のスキルは他にもいくつか包容されてるな。その内の一つのスキルの効果が凄い。水や海、俺が潜れるような場所に対して操作することが出来るんだ。具体的に言えば海水を動かしてぽっかりと穴を開けられるよう操作ができる。それとこの状態だと水の魔法の与ダメージが10%、被ダメージ減少が20%になるようだぞ」

 

「なるほど? ハズレってわけでもないのね。でも、水と海の操作スキルの方はあまり使い道がないんじゃない?」

 

ふふん、それこそそうでもないんだよな~。

 

「二人が潜れないマグマも操作できるんだぞ? つまりは、俺がいつもそこで採掘している場所を二人も出来るってことだ」

 

「「・・・・・」」

 

おっと、わかりやすく目の色が変わったぞこのお二人さん。

 

「スキルの話はここまでな。さて、俺はもう一度ドワルティアに行くよ」

 

「何か用事が?」

 

「ドリモール達の住処で採掘をちょっと」

 

言った瞬間。二人がインベントリを整理し始め、不壊のツルハシを取り出す。待て待て気が早いぞお前達・・・・・。

 

 

 

 

イカルside

 

 

憧れの人からのアドバイスで、町からでないでクエストをたくさんして、貯まったお金でランクは低いけど畑を買えた喜びは忘れられない1週間目の今日。あの人が私に手に入れさせたかった称号はこれなんだと、知った。

 

『おめでとうございます。初ログインからモンスターを倒さずレベルも1のまま一週間プレイしたイカル様に称号と報酬をプレゼントいたします』

 

称号:出遅れた者。

 

取得条件 初ログイン後、モンスターを倒さず一週間レベル1の状態で始まりの町を過ごす。

 

効果 レベルアップ時のステータスポイント取得量が3倍。

 

運営からの報酬:賞金10000G(ガンバレー!by運営♪)経験値 スキル熟練度UPスクロール×3

 

 

や、やったー!? やりました死神ハーデスさん! 称号を取りましたー!!

 

「やったよエスク!」

 

「ムー?」

 

首を傾げるエスク可愛い! お金も貰えたからこれでグレードの高い畑か種かどっちか買える。うーん、どっちがいいかなー? そうだ、死神ハーデスさんに教えないと! 畑エリアから出ようとしたら、これから会いに行こうとしたプレイヤーの人が畑から出てきた偶然に凄く嬉しかった。

 

「死神ハーデスさん、お久し振りです!」

 

「おー、イカルとエスク」

 

「ムー」

 

「ムー」

 

オルト君とエスクが挨拶をするところを死神ハーデスさんと一緒に見た。話し合う2人はとても微笑ましくて可愛い。

 

「可愛いですねー」

 

「1日中見ていられそうだ」

 

「わかります」

 

今度二人でそうしたいなぁー。

 

「あ、イベントお疲れ様でした。えと、凄かったとしか言えません。掲示板では死神ハーデスさんがいたサーバーしかクリアしていないようでしたよ?」

 

「それはそれは、優越感が湧くなぁ・・・・・。俺達自身も驚くことがあったから色々大変でもあった。そういえば、取れたか?」

 

「はい!」

 

忘れていなかった憧れの人からの質問にさっき取れたばかりの『出遅れた者』の称号を見せた。

 

「おし、これがなくちゃ誰よりも強くはなれないからな。これでイカルはプレイヤーの三倍も強くなれる秘訣を得た。あとは防御力の真髄ともいえるスキルを取得するだけだ」

 

「それってどんなスキルです?」

 

「これはもう一人にも教えたがウサギと一時間戯れてみろ。でも、一切の攻撃をしちゃいけないし、ダメージを受けてもダメだ」

 

防御力極振りだと攻撃力が低すぎて、倒せないし足が遅いし倒されやすいって、極振りプレイはオススメできないって情報だけど死神ハーデスさんは唯一成功してる極振りプレイヤーの人。頑張ってみよう!

 

「これからアイテムを取りに行くけど一緒にどうだ?」

 

「一緒に行かせてください!」

 

「よし、なら行こう」

 

 

 

 

ということで、イカルとエスクを連れてヘパーイストスの店に訪れた。アイテムできてるかなー? 期待感を胸に膨らませて裏口から入ると・・・・・。

 

「「・・・・・」」

 

全て出し切った。魂までも。全身真っ白な鍛冶師二人が満足げな表情を浮かべながら眠りについて・・・・・。

 

「へ、ヘパーイストスゥー!? ヴェルフゥー!?」

 

不眠不休とまともに食事もしていなかったのかこいつら!? 慌てて作りおきの料理を出して、無理矢理にでも口の中に突っ込んだ。

 

 

30分後。

 

 

「飯を食う暇もなく心血注ぎすぎて、魂も捧げてしまいかけたぜ」

 

「助かった・・・・・」

 

出した料理を全部食べ尽くした二人に心底呆れる。

 

「いくらなんでも頑張りすぎだ。飯も食え飯も。聞くけど完成したのはいつ頃?」

 

「昨日だ」

 

「そのまま、燃え尽きたってことか」

 

訪れたのが遅れていたらこの二人は空腹で死んでいたってことかよ危ないな。

 

「ところでその嬢ちゃんは?」

 

イズとセレーネでもないプレイヤーを連れて来た俺に尋ねる。

 

「これからこの店にお世話になるだろうから二人に顔を見せようかと思って。名前はイカルだ」

 

「そうか。なら、ヴェルフに頼んでもらえよ。こいつはまだ匠の鍛冶師だが、俺の弟子だ。嬢ちゃんのレベルに合う装備を用意してくれるだろうよ。俺は坊主専属の鍛冶師みたいなもんだからな」

 

「よ、よろしくお願いします!」

 

「ああ、こちらこそ」

 

これでイカルも鍛冶師のクエストを受けられるようになったかな? そして、いつ俺の専属鍛冶師になったんだ?

 

「坊主、お前と出会ってから今日まで待ちに待ったあの時の報酬を改めて渡すぜ。受け取れ!」

 

ヘパーイストスが突き出す両手に刀と指輪が収まっていた。それを受け取り鑑定する。

 

 

三天破【レジェンダリー】

 

【破壊不可】

 

空欄空欄空欄

 

HP+300 MP+200【STR+150】【VIT+150】【AGI+150】【DEX+150】【INT+150】

 

 

空と海と大地を支配するモンスターの力が宿りし指輪。この指輪の持ち主は伝説の三体のモンスターを討伐した者の証として、後世でも語り継がれる歴史的価値がある唯一無二の至宝。ただし、強い生命力がある三体のモンスターが1つになったことから、強い自我が芽生えており、至宝の指輪自身が所有者を選ぶ。【空と海と大地の救済者】の称号を持たない者以外が装着しようとすれば、所有者に牙を剥くだろう。

 

「・・・・・ヘパーイストス、先代を越えたんだな」

 

「お前のお陰でな。そして、俺自身もこの刀を甦らせたことで『神匠』の鍛冶師に至れた!」

 

 

『原初の赫灼』

 

【AGI+15】

 

【DEX+15】

 

【灼熱地獄の誘い】

 

【破壊不能】

 

スキルスロット空欄

 

【灼熱地獄の誘い】

 

対象に必死効果を付与するスリップダメージを与える。

 

 

・・・・・すごくすごい、じゃありませんかこのスキル? 即死効果のスキルもありそうだなこの分だと。いつか見つけ出したいもんだ。見た目も格好いいな。溶岩をくり抜いて刀の形状にした感じでさ。刃の部分が赤熱しているし、全てを焼き切る印象を伝えて来るじゃないか。

 

「気に入ったありが―――」

 

感謝の言葉を送ろうと口を開きかけた俺の真横から何かが通り、ヘパーイストスの顔面に突き刺さった。

 

「へっ!?」

 

絶句するイカル。でも俺は一度見たことがあるから内心驚く程度で済ませれる。

 

「・・・・・若造が神匠に至ったか」

 

正面の扉を破壊して入ってくるは、ドワーフの神匠、ユーミルその人だった。

 

「・・・・・完成した」

 

「わざわざ届けに? こっちから顔を出そうと思ってたのに」

 

「・・・・・鍛冶師の勘が告げた。ここに来いと」

 

すげー勘だな。ユーミルが作ったユニーク装備を受け取るや否や、用件を済ませたと言わんばかりに店から出ようとする。

 

「ユーミル? 何か話しかけなくてもいいのか?」

 

「・・・・・成長したひよっこに掛ける言葉はない。餞別、くれてやる」

 

もう自分から飛び出した弟子を一人前として認めたって意味かな。遅れて起き上がるヘパーイストスは顔面に突き刺さったそれ、ユーミルが持っていた鎚を掴んで睨みつける。

 

「何が餞別だあのクソッタレ師匠がっ。店の扉を壊しやがって!」

 

「俺が初めてユーミルと出会った時も工房の扉を壊していなかったか?」

 

「あれは壊した内に入らねぇよ!」

 

「じゃあ、ユーミルからすればヘパーイストスと同じ気持ちなんだろうよ」

 

似た者師弟、と言ったら舌打ちするだけで何も言い返さなかった。言い合いをしたりそっけない態度をとっても、お互いのこと理解し合っているところが師弟の絆を窺わせてくれるな。

 

「報酬は確かに受け取った。ありがとうな」

 

「礼を言うのはこっちの方だ。坊主と交流すると神匠に至れるとは思いもしなかったからな」

 

はは、人生は何が起きるか分かったもんじゃないな。

 

「自慢な師匠の弟子として腕を磨けよヴェルフ」

 

「ああ、勿論だ。俺も神匠になってやる。険しい道のりだろうが絶対にだ」

 

「おう、俺達も協力するよ。それじゃ、失礼するよ。また遊びに来る」

 

「いつでも来い! 坊主にだけ無償で依頼を受けてやるからな!」

 

マジで? ユーミルより破格じゃん。嬉しい! そんな気持ちを抱いて裏口から店を出てイカルの前で『三天破』の指輪をはめた。前の指輪より数値は低いが、逆になかったHPとMPも強化されたから文句はない。

 

「す、凄い会話でしたね。NPCの人達ってあんなに過激なんですか?」

 

「あの二人だけだ。他は普通だぞ。でも、このゲームの世界で最強なのはプレイヤーの俺達じゃなくてNPCじゃないかって思う」

 

「そうなんですか?」

 

「いつかその理由が判る時がイカルにもくるさ。さて、一週間も待たせたイカルにも【絶対防御】のスキルを手に入れさせる。頑張れよ?」

 

「はい!」

 

俺は50%の確率で逃げられてしまうからイカル一人に頑張ってもらうしかないんだよな。

 

「そう言うわけでラプラス。モンスターが集まるアイテムって作れる?」

 

「その程度なら直ぐに作れるさ。その材料も畑にあるからとっても構わないかな?」

 

「いいぞ」

 

後に錬金術師であり魔神のラプラス製アイテムを受け取ったイカルは、一人で森に入り一時間以上もウサギと戯れた結果・・・・・。

 

「取れました、取れましたよ死神ハーデスさーん!! 凄い、私にピッタリな【大物喰い】と【絶対防御】がぁー!!」

 

ホームまで走ってきたイカルが全身で喜びを表現して報告してくる。おおっと? そこまで教えていなかったが大物になるなイカル。

 

「毒耐性は?」

 

「中です。大きなハチで怖かったですけど、何とか倒せましたぁ・・・・・」

 

「これから行かせる毒耐性必須のダンジョンはそれ以上に大変だからな」

 

「ダンジョンですか?」

 

俺は頷く。

 

「初期のその装備じゃあヒドラって言う毒の竜の攻撃で腐って壊されるんだ」

 

「ええっ? それじゃあ、どうやって死神ハーデスさんは倒したんですか?」

 

懐かしき過去の自分を思い出しながら遠い目で語ってやった。

 

「【毒耐性中】よりヒドラの毒は強いからダメージは受ける。だからまずはHPを回復しながら毒耐性を【毒無効】まで進化させる」

 

「はい」

 

「ヒドラは毒の攻撃しかしないモンスター。だから【毒無効】を手に入れたら楽に倒せるようになる。でもそれは装備があったらの話だ」

 

「なかったら、どうなっちゃうんですか?」

 

「お互い倒せなくなる。毒の攻撃しかできないモンスターと防御力特化で【毒無効】を手に入れたプレイヤーの永遠に終わらない戦いになる」

 

あの時は本当に苦労した。その想いを溜息で吐いてイカルに伝える。

 

「でも、プレイヤー側に装備以外の方法でモンスターを倒す手段が残されていた」

 

「どんな方法ですか?」

 

「―――モンスターを食べてHPを減らす行為。HPドレインっていう方法だ」

 

えっ!? と驚くイカルに同情する。

 

「しかもボスモンスターをHPドレインで倒すには五時間も掛かる」

 

「五時間も!?」

 

「しかもモンスターにはそれぞれ味があって、ヒドラはピーマン味だった」

 

「うえぇぇぇぇ・・・・・」

 

あ、苦いのが好きじゃないな? 凄く顔を顰めたイカルの頭に触れる。

 

「でも、HPドレインして得られるものはちゃんとあるぞ。それを得てから様々なスキルも手に入るようになる。それを見せてやろう」

 

フェルに背中を乗せてもらいイカルと西の第2エリアへ移動し、【毒竜】と【エクスプロージョン】を披露した。

 

「・・・・・格好いい・・・・・!」

 

お気に召したようで何よりだ。ふむ、逆な方法で試させてみるか?

 

「イカル。『不殺』の称号あるか?」

 

「ありますよ?」

 

「なら・・・・・ヒドラのHPを1にしてからHPをドレインすれば、五時間なんて時間を掛けずにクリアできるようにやってみるか? それで得られるかは分からないし失敗するかもしれないが」

 

「お願いします」

 

圧が凄い。

 

「じゃあ、爆発テントウムシを食べに行こうか。パチパチするお菓子みたいで美味しいぞ」

 

「食べる事には、変わらないんですね・・・・・」

 

「寧ろモンスターをHPドレインすることで得られるスキルが沢山ある。その魅力に魅かれると思うぞ?」

 

「そうなんですか? ・・・・・見た目が美味しそうなのだったら、挑戦してみます」

 

頑張れ若人。そんな彼女にテントウムシを四苦八苦させながら食べさせ、数時間かけさせて俺と同じスキル【エクスプロージョン】を得させたのだった。その後、大量のHPとMPポーションを持たせ作戦を授けて挑ませた結果―――。

 

「死神ハーデスさーん!! ピーマンの味を一回食べるだけで終わりましたぁー!! あと死神ハーデスさんと同じ装備も手に入りましたぁー!!」

 

第二の死神ハーデスの誕生の目論見通りになったのであった!! これで誰も彼女を止められはしないだろうフハハハハハ!!

 

それから夜までイカルと畑に育てるアイテムを採取したり、【植物知識】を取得させたり様々な体験をさせた。夢中になっていたら時が経つのは早く、辺りが暗くなるほど日が完全に落ちた。太陽の代わりに町はともる街灯で明かりを確保していき、食らい町中でも歩きやすくなった。しかし、それ以上の光量が広場から発せられた。

 

ホームにいた俺は気付かなかったが、広場ではプレイヤーもNPCも関係なく大勢の人間が眩い光を放つ巨大樹の前に集い見上げていた。何かのイベントの前触れか、と佇んで見つめているプレイヤー達の目の前でカッ! と閃光が一点から迸り、次に光とともに姿を現す絶世の美女。ウェーブが掛かった緑色のロングストレートヘア、透明感が高い淡い黄緑色のドレスで身に包み身長は150cmほどの女性が空中に浮きながら最初に微笑んだ。

 

『初めまして。私はこの町を守護する大樹の精霊です』

 

神秘的な登場をした精霊に驚きを隠せれない第二陣のプレイヤー達は唖然として、最初からゲームをしていた上級者達は見覚えある展開に驚いた。

 

『この度は、異界から新たに来訪せし者達が現れて丁度一週間となりました。この町を守護する者として皆さんの行動をずっと見守っておりました。その中で町に貢献した者に贈り物を授けましょう』

 

大樹の精霊が夜天にむかって手を掲げ、手の平に浮かぶ球体が複数散らばるように弾け飛び、その一つが一緒にホームにいたイカルの胸に飛んできた。

 

「わっ? な、なんですかこれ?」

 

「モンスターの卵だ。しばらく温めてると新しいモンスターをテイムできるぞ」

 

あれ、でもどこかで覚えのある・・・?

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