バカとMMORPGと召喚獣!   作:ダーク・シリウス

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第二陣記念イベント開始

夏―――神月学園は長期の夏季休暇に突入した。長い休暇を学生として青春を謳歌しようと、この機に更なる勉学を励もうとする学生の中に、NWOを毎日できると帰宅した学生はすぐにハードギアを手に取ってゲームの世界へと飛び出した。

 

同日。

 

イベント当日。何だか一緒にこの瞬間を迎えようとするイッチョウ達やペイン達と一緒にいることになってきたこの日。

 

「準備も万端。あとはイベント開始を待つだけだな」

 

「ムム!」

 

「――!」

 

縁側でのんびりと待っていると、イベント開始が告知される。

 

『ただいまより、第二陣歓迎イベントの説明をいたします』

 

「よし、きた」

 

「どんなイベントになるだろうねー」

 

「お、メールが来たな」

 

確認すると、前半はいつも通りの注意事項だった。画像の取り扱いとか、ハラスメントについての注意などである。そしてこれは重要だろう。内容は・・・・・。

 

「第一陣プレイヤーの皆様は一時間以内に最低一人でも、必ず第二陣のプレイヤーとパーティーを組み、転移先のフィールドに散らばる銀のメダルを集める、か。なお、歓迎記念として第一のプレイヤーのスキルは第二陣のプレイヤーに反映し、第二陣の全プレイヤーにはメダル1枚プレゼント致します。これを十枚集めることで金のメダルに、金のメダルはスキルや装備品にアイテム、ホームオブジェクトに交換出来ます?」

 

そうアナウンスが流れステータス画面が勝手に開き表示されたのは、金と銀のメダルである。

 

そのうち金のメダルに俺は見覚えがあった。

 

金のメダルは俺が初回イベントの記念品で手に入れたあのメダルだった。このためのものだったとはな。

 

『初回イベントに参加して得た方の中には、銀メダル10枚分ある金のメダルを既に一枚所持しています。倒して奪い取るもよし、我関せずと探索に励むもよしです。金のメダルの所持者の位置は常時マップに表示されています。最後まで頑張って下さい』

 

幾つかの豪華な指輪や腕輪などの装飾品、大剣や弓などの武器などの画像が次々に表示されていく、全てこれから行くフィールドの何処かに眠っているのだ。

 

勿論大盾もあった。

 

というか、俺の事か? 俺以外にも金メダルを持ってるプレイヤーがいるのか? 俺だけ表示されるのは嫌だぞ?

 

『死亡しても落とすのはメダルだけです。装備品は落とさないので安心して下さい。メダルを落とすのはプレイヤーに倒された時のみです。安心して探索に励んで下さい。死亡後はそれぞれの転移時初期地点にリスポーンします』

 

取り敢えずは一安心である。

 

装備品を奪われないのならばある程度は気楽に出来ることだろう。

 

探索も全力を出せる。

 

『今回の期間はゲーム内期間で一週間、ゲーム外での時間経過は時間を加速させているためたった二時間です。フィールド内にはモンスターの来ないポイントが幾つもありますのでそれを活用して下さい』

 

つまり、ゲーム内で寝泊まりして一週間過ごしても現実では二時間しか経っていないと言う訳だ。

 

「なんていうか不思議な感じだね」

 

「一度ログアウトするとイベント再参加が出来なくなるって、だから最後まで参加するにはログアウトは出来ないね。後は・・・・・パーティーメンバーは同じ場所に転移するってさ」

 

俺達はステータス画面に流れてくるのを目で見て、相談した結果ログアウトはしない方向に決めた。

 

「という事は、これからここにいる皆とは敵同士に成り得るかもしれないってことか」

 

「私は参加しないわ」

 

「うん、戦闘は得意じゃないからね」

 

イズとセレーネはイベント参加を拒否か。それも自由だろう。ペイン達は? と愚問な質問を飛ばした。

 

「装備の方はともかく、メダルを集めりゃあスキルが手に入るってんなら参加しない手はないな」

 

「この機にお前を倒せそうなスキルを見つけておきたいし」

 

「魔法使いが欲しそうなスキルもあるかもだから参加するよ」

 

「もしどこかで会ったら勝負しようハーデス」

 

「うーん、もう一人のお前等と化する初心者と勝負は骨が折れそうだ」

 

いや、お前の方が骨が折れる!! とドラグとドレッドに突っ込まれてしまうお約束を頂戴してしまった。すると、メールが届いた。

 

「そんならさっさとパートナーを見つけてこいよ」

 

「ハーデスは?」

 

「向こうからお誘いを受けた。了承のお返しをしたからここに来るだろう」

 

それは誰なのか、イッチョウ達は「あの子か」と言った表情をしているので察したようだ。

 

 

十数分後。

 

 

「一緒にイベントを参加してくれてありがとうございます!」

 

「よろしくなイカル。メダルをたくさん集めて、この機に新しいスキルを手に入れよう」

 

「はい!」

 

パートナー探しに出かけたイッチョウ達と入れ替わるよう、俺のプレイとオルトに憧れて第二陣のプレイヤーとしてNWOにログインした金髪の少女イカルと相棒のエスク。そして俺が連れて行こうとする従魔は・・・・・。

 

「ペルカ。一緒に行こうか」

 

「ペペン!」

 

戦えはしないが、これから送られる先に水場がないとは思えないので、水中行動が出来る従魔を連れてくことに決めると、敬礼で返してきた。

 

「可愛い」

 

イカルと気持ちが一つになった。イベント開始までまだ時間があるから、イカルにはオルト達と遊んでもらい俺は木彫りを専念することにした。次はエンゼとルーデルだな。

 

 

一時間後。

 

 

俺達の体は光となり、ホームから消えていった。

 

「着いたみたいですね」

 

足に伝わる砂の感触し・・・・・そして。

 

「・・・・・海だな」

 

「海です・・・・・」

 

俺達にパラダイスをさせようとしているのか定かじゃないが、見慣れた景色をしばらくボーと眺めてた。その先に見たものは真っ白い砂浜と、雄大な海だった。透き通った海の底には色とりどりの魚達が楽しそうに泳ぎ、美しい珊瑚が花が咲いているかのように海の中を彩っていた。遠くには一つの小島が見える。

 

「少しこの辺りを調べてみよう」

 

「わかりました」

 

イカルは森側、俺は一体しか連れてこなかったペルカと海側へ手分けして探すことにした。

 

「一時間後、集合はここで。エスク、イカルを頼むな」

 

「はい!」

 

「ムー」

 

「行くぞメダル探しに」

 

「ペペンッ!」

 

海の中へ早く入りたいと背中を押すペルカに催促されながら、海中探索を始めて直ぐに色鮮やかな海底のカーテンの光景を目にする。本物と遜色のないゲームの世界だとは思えない作りにしばし観光気分で遊泳をしていたら、群れで泳ぐ魚の体に銀メダルがくっついていたのを見逃さなかった。ペルカに指示すると、大空を飛ぶ鳥のように海中を俊敏に泳ぎ、波に揺さぶられることなく嘴で鋭く突く。

 

俺も俺でそんなペルカ以外に宝石のような魚達に見とれていた。

 

それ程に綺麗な光景だったのだ。

 

しかし、ずっと見とれている訳にもいかない。珊瑚の隙間や海底の砂の中を調べていく。スキルが無ければかなりの時間がかかる作業だが、俺のスキル構成ならば素早く、手際よくやる事が出来る。

 

息継ぎする限界ギリギリまで潜る必要も無いため、珊瑚の隙間が深くまで続いている場所がいくつかあり、先程のメダルもそこにあったの発見することが出来たのだ。

 

ペルカとそこを重点的に探索する。メダルや装備があるとすればそういう場所だからだ。浅瀬はこれから探索するから、深い部分を見つけて探る。

 

その結果、もう一枚メダルを見つける事が出来た。

 

「ふぅ・・・・・後は・・・あの島かな? 行くぞペルカ」

 

「ペン!」

 

砂浜から見えてた島に向かって泳いでいく。砂浜から大体百メートルの距離に位置するその島は小さく、中央に地下へと続く階段がある以外はヤシの木が一本生えているだけだ。

 

「取り敢えず・・・行ってみよう」

 

「ペン」

 

俺は慎重に階段を下りていく。百段ほど下った先にあったのは普通の木製の扉だった。

 

封印されているようでも無ければ、鍵もかかっていない。慎重にそれを開ける。

 

そして、中の光景に驚いた。中は綺麗な半円のドームだった。

 

そしてその中央には。

 

古い祠が魔法陣と共に静かに佇んでいた。

 

 

一時間後。 

 

 

砂浜に戻ったら二人がいて、結果は無しと残念そうに二人は肩を落としてた。こっちは二枚手に入ったメダルをイカルに譲渡する。

 

「い、いいんですか?」

 

「十枚集めないとスキルが手に入らないからな。俺はもう持ってるし、イカルの分を集めなきゃな」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

「ムー」

 

エスクもお辞儀する。眠たげな目をしてるが、確り者だな。二枚のメダルを見て喜ぶイカルを見つつ、小島の件を話しかけた。

 

「イカル。小島に・・・・・」

 

「【ウィンドカッター】!」

 

「ペギァー!?」

 

突然の奇襲がペルカに直撃して、進化前の低いHP故に一撃で倒されてしまったことに気づいた時は、ポリゴンと化したペルカが消えかけ時だった。

 

「あっ、ペルカちゃんが!」

 

うちのペルカを倒した者へ顔を向け、臨戦態勢の構えをした時。

 

「バ、バカヤロウ!? なんでいきなり攻撃したんだお前ぇ!! 相手は白銀さんだぞ、しかもペンギンを倒しちまいやがってぇー!?」

 

「え、だってプレイヤーを攻撃するなと言われてないし」

 

「相手を選べ!? 白銀さんがどんなプレイヤーなのか知らないのか!」

 

「はい。知っていても攻撃しますよ」

 

「ノォオオオオ!!」

 

うーん、ちぐはぐな二人組のコントを見てもしょうがない。

 

「まぁ、そこの新人君の言う通りだ。相手が誰であれ、戦う姿勢はとても大事だ。メダルの争奪戦と探索が趣向の今回のイベントに、そいつは間違ってはないぞ?」

 

「ほら、あの人もああ言ってるじゃないですか」

 

「・・・・・でも、俺のことを知らないのは無知じゃないかな? 自慢じゃないが従魔関連でそれなりに名を挙げてるぞ」

 

顔を青ざめる知らない上級プレイヤーには悪いが、落とし前を付けさせてもらいたい。

 

「【召喚】」

 

初めてバシリスクを喚び出す。長く巨大な蛇が身体で俺達を守るようにどくろを巻き、前方の二人に威嚇の声を発する。

 

「は、白銀さん・・・・・こいつのメダルをあげるんで許してもらえないですか?」

 

「俺は怒ってないぞ。単に攻撃されたから攻撃する。その程度の感じで俺も攻撃するだけだ。安心しろ、これは勝負だ」

 

「安心できねぇー!?」

 

「攻撃しますよ! いいですよねっ!?」

 

「や、やったらぁー!」

 

もう自棄になったプレイヤーの言動で、本格的に戦い出す。ま、バシリスクが一人を丸のみにして倒し。

 

「【ダブルスラッシュ】!!」

 

「わわっ」

 

瞬時で二連撃を与えるスキルに防御力だけで受け止めるイカルに絶句する初心者の剣士。

 

「ダメージ、0? 嘘だろ、どんだけ防御力上げてるんだお前!」

 

「ぼ、防御力特化だから高いよ!」

 

「なら攻撃力は0ってことだ!」

 

確かにそうだけどそれを補うのがスキルってことで。

 

「イカル、俺のスキルがお前に反映しているからそれを使って見ろ」

 

「あ、わかりました。えーと・・・・・【機械神】?」

 

おっとぉ、いきなりそれか。

 

「【全武装展開】」

 

静かに呟いたイカル、その身に纏う再生する黒い装備。

 

それらから、夜空を切り取ったような黒い武装が次々と展開される。

 

大盾を持つ腕の部分からガシャガシャと音を立てて銃が現れ、背中からも木の枝が伸びるようにしてイカルの体と比較すると大きすぎる砲身が空に向けられる。

 

短刀を持つ方の腕は同様の黒い刃が伸ばされ、それらを支える足腰は機械を纏い強靭になった。

 

胸から腹部にかけては大小様々な歯車が回転しており、顔の右半分から首にかけては歯車や配線が複雑に覆っていた。

 

「はっ!? な、なんだよそれ!!」

 

「わ、わわっ!?な、なにこれっ!?」

 

驚いて全身を覆う武装を眺めていたイカルだったが、やらなければいけないことを思い出す。

 

静かに呟き武装全てを向けた。

 

「【攻撃開始】」

 

爆音と共に全ての武装が火を吹く。あれらの武装は装備に見えるが装備ではない。同じスキルを持っている俺だから分かる。代償により威力が決まっているスキルである。

つまりそこにイカルの【STR】値は一切関与しないのだ。ただ、一発一発の威力はそこまで高くなく連擊に偏った武装だった。そう、今回のところはな。

 

「・・・・・」

 

見たことのない、ド派手過ぎるスキルは初心者プレイヤーを凌駕する。というか、まだ8日間しかプレイしていない相手に【機械神】は強すぎたのか、恐るべし・・・・・。あっさり勝負は終わり、メダル一枚手に入ったのだ。

 

「あっという間に、勝っちゃいました・・・・・」

 

「同じ時期のプレイヤー同士だったらこんなものだろうさ。それに【毒竜】を使おうとしても【毒無効】のスキル持ちの相手だったらこんな簡単には終わらないぞ」

 

「そうですよね。やっぱり死神ハーデスさんを知ってる人は対策を考えてますよね」

 

そ、だからこいつみたいに相手が知らないスキルを手に入れる必要があるのさ。

 

「バシリスク、短い間けどありがとうな。また頼むぞ」

 

「シャアアア」

 

岩蛇と子供がいる住み処へと戻りに行ったバシリスクを見送ったあと、改めて小島のことを教える。

 

「どうする? どこかの場所に転移するか、ボスと戦うことになるかだけど、イカルはどうしたいか教えてくれ」

 

「えっと・・・・・まだ、探索してないところがありますから、全部は無理ですけど、1日はこの辺りを探しませんか? ・・・・・という感じでもいいですか?」

 

「おう、勿論だ。あーペルカが初日でやられるとは。今頃しょんぼりしてるだろうな。帰ったら慰めなきゃ」

 

「私もしますね」

 

「ムー」

 

 

今度は三人で探索することにして俺達がさらに歩くこと二時間。

長い間横にあり続けた森は姿を消して、苔むし、古びた石レンガで出来た廃墟が右手に姿を現した。見るからに何かがありそうな地形だ。

廃墟から伸びた石レンガの道は二人の前を横切って海の方に突き出た崖の先端にまで続いている。そしてそこには幾つかの石が突き立ち、中央にある台座を囲んでいた。

 

「何かありますよね?」

 

「既に探索されてなければな」

 

三人で廃墟の方に足を踏み入れる。ボロボロになった建造物の中を片っ端から探索していくが何も見つからない。それでも隠し部屋などがあるかもしれないと探索を続けていた俺達に遂に変化が訪れた。

 

「あ、本があります」

 

無造作に崩れた石レンガに放置されてる古びた本を発見した。イカルが手に取って大きな石レンガに腰掛けて本を覗きこむ。

 

ボロボロになっていてどのページもまともに読み取ることは出来なかったが、パラパラと捲っていると途中に一ページだけ、読み取れる部分を見つけた。

 

「【古ノ心臓】、湧水ニ導カレ、淡イ光ノ中、ソノ姿ヲ現サン。勇敢ナル者ヨ、魔ヲ払イテ、青ク静カナ海へ・・・・・どういうことでしょうか?」

 

「【古ノ心臓】に湧水が関わってて・・・・・それがあればダンジョンに行けるのか? 戦闘もありそうな感じ」

 

「・・・・・湧水っていうくらいだし・・・・・噴水とか?」

 

俺達三人が探索した結果廃墟群には四つの噴水があった。廃墟の中央に大きな噴水があり、そこから離れた所に小さな噴水がある。噴水の頂点は菱形の赤い水晶で出来ていて綺麗だった。といっても水の気配はなく枯れてしまっている。

 

「取り敢えず真ん中の大噴水で試してみようか」

 

「はい」

 

少し歩いて大噴水にたどり着いた。

 

「水をこの中に入れるんでしょうかね?」

 

「やってみようか。【古代魚】」

 

一つの受け皿を満たしていく。それと共に噴水が淡く青色に輝き始めた。

 

「おおっ!」

 

「どうだ?」

 

しかし、その光は次第に薄れていく。受け皿に溜まっていた水も噴水に吸い込まれるようにして消えていった。耳を澄ましてみるものの、何かが作動したような音はしなかった。

 

「んー・・・・・何も起こらない?」

 

「・・・そうみたいですね。でも、この噴水は何かあると思いますよ」

 

「うん、俺もそう思う。他の噴水でも試してみよう」

 

意見が一致したので他の噴水でも同じようにしてみたところ、どの噴水も淡く輝いたが、それ以上の変化は起こらなかった。

 

「一つだけ駄目なら四つ一緒に、ってことですかね」

 

「同時か・・・・・。・・・・・イカル、絶対に水じゃないと駄目ってことあると思うか?」

 

「え? えっと・・・すみません。わかりません」

 

「だよな。それじゃあ、物は試しにということでやってみようか」

 

 

 

「【毒竜】!」

 

そう、一人だけ駄目なら二人で・・・と、イカルにも水と言う液体がある。

ただしそれは、頭が3つある毒竜が放つ毒液だ。

それぞれが別の小さな噴水に向かっていき受け皿ごとどっぷりと飲み込んだ。

水でないと駄目なのかは俺達には分からなかった上に、同時かどうかにも確信は無かった。しかし、それでも試さなければならなかったのである。俺も【古代魚】で残りの受け皿に水で満たした時だった。

 

「うわっ!?」

 

「眩しいっ」

 

三つの噴水から眩い光が大噴水に向かって伸びてくる。

大噴水の光はどんどんと強くなり、赤い結晶の部分が宙に舞い上がる。

その結晶は月明かりを集めて光を増すと赤い光を振りまいて砕けた。

同時に俺達が光の粒になって消えていく。

 

「し、死神ハーデスさ~ん・・・・・」

 

弱弱しく不安そうな呼び声が聞こえる。視界に入る目を瞑ったまま、両手を突き出してフラフラと宙を彷徨わせるイカルの姿。その小さな手を握り、目を開けていいぞと言えば恐る恐ると両の眼を開けて俺を見てホッとし、次に周囲を見回す。

俺達がいる場所、というより中は半円状のドームで明るい。直径五十メートルはありそう。天井までも高いし明るい光の原因は海だった。

 

そこだけは時が進んでいないかのように明るい真昼の海。

魚が楽しげに泳ぎポコポコという泡の音が聞こえる。

暗い深海を跳ね除けるように広がる海は不安になったイカルの気分を変えてくれた。

そして、その海の中を貫くように珊瑚で出来た階段が伸びている。

 

その先には珊瑚に彩られた大きな扉がある。何度も見てきたボス部屋の扉で間違いなかった。

 

「【魔ヲ払イテ】か・・・・・戦闘準備は出来てる?」

 

「はい! いつでも!」

 

イカルは大盾を構えて準備万端だとアピールする。俺は勢いよく扉を開いた。

二人で部屋に飛び込む。俺とイカルは大盾を構える。エスクもクワを構える。

 

「・・・・・上から来るぞ!」

 

「はい!」

 

バシャンと大きな音を立てて天井から何本かの触手が伸びてくる。

 

俺達にはそれはイカの触手に見えた。いや、実際そうだった。水の天井を泳ぐ巨大イカが触手だけを伸ばして攻撃してきていたのだ。

 

「大きい!?」

 

「確かに。ははっ、食べ応えありそうだな!」

 

驚く二人を他所に巨大イカは攻撃してくる。

 

イカルの身長ほどもある触手が彼女に向かって振り抜かれた。

 

「【毒―――」

 

「待てイカル!」

 

「ふえっ!?」

 

エスクと一緒にイカルを腕で抱えて遅れて襲ってきた触手から守った。

 

「【毒竜】はエスクの邪魔になる。床に散らばった毒液がしばらく残って、触れると仲間にもダメージを与えてしまうフレンドリーファイアになる。俺みたいに【毒無効】のスキルを持っているプレイヤーなら問題ないが、エスクは持ってないから毒のダメージを受けて死に戻りしてしまうぞ。毒以外の、HPが消費しないスキルを使え」

 

「わ、わかりました。ありがとうございます! 【機械神】!」

 

「イカ本体を狙え。それと【身捧ぐ慈愛】だけは使わないでくれ。イカルが死に戻りしてしまうのHPを消費するスキルだから」

 

迫る触手に悪食でイカの触手を飲み込んだが、遠くに見えるイカのHPバーは減っていない。体力が多いのではない。全く効いていないのである。

 

「やっぱり本体に攻撃しないと駄目か!」

 

「じゃあ、当てますっ!」

 

「俺も直接本体狙いで行くか!」

 

俺達の頭上で泳ぐイカの姿をチラッと確認して、二人でそれぞれ行動する。イカの方はそんなことは気にも留めずに安全圏から二人に襲いかかろうとしていたのだった。

 

「【覇獣】」

 

巨大な獣に変身し、あっちが出来るならこっちも出来るだろうと海の中へズブリ、と潜り込んだ。

 

 

イカルside

 

 

「す、すごい・・・・・」

 

死神ハーデスさんのスキルで攻撃してる私よりもイカに直接攻撃してるあの人に集中してて、大きなライオンとイカの戦いをみてる気分になる。身体にイカの足が巻き付かれても、HPをどんどん減らしていく死神ハーデスさんの足手纏いにならないよう攻撃を続けていく。

 

「わっ、魚が・・・・・」

 

「ムー」

 

イカのHPが半分以下になった頃、空中に魔方陣? みたいなところからたくさんの魚が出てきた。海の中じゃないのに空中で泳いでるところを見て、思わず攻撃を止めて眺めた。

 

バシャッ!

 

「キャッ!」

 

「ムー!?」

 

魚から水みたいなのを掛けられた! でも、何ともない? ダメージも無いみたいだけどなんだろ?

 

「ム、ム~」

 

「あ、エスク?」

 

なんだか、何時もより遅く動いてるエスクちゃんが一番魚に水を掛けられちゃってる。砲撃で倒しても魔方陣から魚が増え続け、また水を掛けられた。

 

「リアルじゃなくてよかったかも」

 

服が濡れたら身体に張り付いて気持ち悪いし! それに私の身体が・・・・・。

 

「ううう、もう、いい加減にしてー!」

 

死神ハーデスさんのスキルで、水を掛ける魚に攻撃! エスクにも水を掛けないでぇー!

 

 

 

HPが一割になった途端。イカが赤いエフェクトを纏い始め、俺から離れて、イカル達のところへ突進を仕掛けた。まだ初心者の、彼女が躱せるはずもなく、イカの突撃をもろに食らってHPが一割以下になってしまった。俺の【不屈の守護者】のスキルが発動したか。安心するまもなく、また反対側から突進するイカはエスクを狙い定めて大きな身体でぶつかろうとした。

 

「だ、だめー!」

 

身を呈してエスクを庇い、イカの攻撃を受けるイカル。・・・・・死に戻りしない? あ、もしかして? 空気あるフィールドに戻り【カバームーブ】で二人のところへ瞬間移動して寄ると同時にイカも突撃してきた。

 

「【生命の樹】【身捧ぐ慈愛】!」

 

地面から出てきた巨大な大樹の光でイカルのHPを回復、天使の姿になった俺を中心に光が広がって、俺の防御力がイカルにもカバーするようにした。

 

「イカル、【悪食】だ!」

 

「はい!」

 

向こうから突っ込んでくるイカに対し、二人で手を突きだして飛び出す。二人分の【悪食】は・・・・・胴体を大穴空けるほどの威力で、イカは俺達の背後でポリゴンと化しながら爆発したのだった。

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