バカとMMORPGと召喚獣!   作:ダーク・シリウス

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第二陣記念イベント一日目

イカを倒してすぐ目の前には深い青色の魔法陣が現れた。

 

「乗る?」

 

「報酬は?」

 

「んー・・・・・あそこに乗ればあるかもしれないが、海の中探してみるか?」

 

「うーん・・・いいえ、行ってみましょう。なかったらなかったで諦めます」

 

イカルの考えの同意した俺は、俺達はまさか魔方陣に乗って転移先が水中だということを予想すらしていなかった。

 

「い、息が!ど、どうしましょう!?」

 

「ん、ん? 息が出来なければ喋れもしないぞ」

 

「え!? あ、あれ? 本当だ・・・・・」

 

言葉も問題なく発することが出来る。水の感触はあるものの窒息するようなことは無いようだ。

 

「不思議な場所・・・・・」

 

「ここが【青ク静カナ海】?」

 

「ムー・・・・・」

 

イカルの言うように俺達のいる場所は静かだった。二人で黙ると泡の音だけが断続的に聞こえる青い海。

海の底にいるようで、それでいて水面に近いようで。今にも眠ってしまいそうになるような、落ち着く青に支配されたその空間には、珊瑚に包まれるようにして青い宝箱が置いてあった。

 

「開けるぞ」

 

中にはメダルが二枚と巻物が二つ。イカルはメダルをしまい込む。俺は巻物を手に取って情報を見る。

 

「それはなんです?」

 

「スキルを取得できる巻物だ。NPCの店にも販売されているぞ? で、これには【古代ノ海】水系のスキルを持っていることで取得出来て・・・・・さっきの青い光を纏った魚を呼び出せるってさ」

 

俺の言うさっきの魚とはイカとの戦いでイカルが嫌という程見てきたあの魚達だ。

 

俺が読み上げたところ、イカル達が浴びされ続けたあの液体にはやはり【AGI 10%減】の能力が備わっていた。イカルにとってはあまり使い所のないスキルではあったが、俺ならばより戦略の幅を広げられるだろう。

 

「・・・・・・【毒竜】じゃ駄目です?」

 

「流石に水系ではないと思う」

 

「ですよね」

 

一応試してみたもののイカルは習得することが出来なかった。イカルはメダルを二枚受け取らせる代わりに俺の知り合いに渡してほしいと巻物を渡して来た。取り敢えず今は保留にしてインベントリに巻物をしまい込む。

 

宝箱を閉めるとすぐに地上へ戻らずはこの光景を見たく寝転がった。俺達を包み込む静かな海は、今までで最も心地よい寝床になった。

 

「記念にスクショでも撮ろっと」

 

「あ、いいですね。海の中にこうしていられるのは今しかできないですから」

 

「エスクには待ってもらうことになるが、【海王】っていうスキルは潜水時に溺死しなくなる効果だから、こうしてのんびりすることができるぞ?」

 

「本当ですか? スキルって色々あるんですねー」

 

そうだな。

 

 

 

 

 

あれから小休止と、海の中で過ごしてた俺達は、魔法陣に乗って転移した先はあの崖の上だった。

振り返ると廃墟が見える。

 

「よし、じゃあ砂浜で潮干狩りもといメダル狩りを一時間だけしてみよう。もしかしたら埋まってる可能性がある」

 

「わかりました!」

 

「ムー」

 

俺の提案に賛同してくれる二人と再び砂浜へ戻る。途中他のプレイヤーと遭遇することはなくとんぼ返りした砂浜に―――。

 

「それからイカル、メダル探しつつ俺のスキルを感覚で覚えて欲しいからここで使ってみてくれ」

 

「はい、じゃあ【大嵐】!」

 

砂を大量に巻き上げる大嵐。太陽の光で反射した何かを見つけて【飛翔】で空中に飛び上がり掴み取った。

メダルゲット。ここだけで六枚手に入って残り三枚で集まるな十枚。イカルが俺のスキルを把握すること十数分。

 

 

両腕で卵を抱えるイカルと森の方面に足を運びつつ、草の根を掻き分けてメダルを探しているものの発見には至らなかった。

 

「見つからないですねー」

 

「どっちもな」

 

プレイヤーも見つからない。俺達を転送したこのフィールドは思った以上に広いのか? あるいはすぐ傍にいて、俺だと知って逃げられてしまっているか・・・・・ふむ。

 

「イカル、ちょっと俺は姿を変える」

 

「え? はい」

 

「【皇蛇】」

 

そのスキルを発動すれば俺はサンゴの角を生やし、腰に異形の尾を生やした麗しい女性に性転換した。装備も外して初心者用の短刀と大盾に持ち帰る。

 

「し、死神ハーデスさんが女の人になった!」

 

「使わせなかったけど【皇蛇】ってそういうスキルなんだ。イカルが使うとどうなるか分からないけれど」

 

「声も女の人だ・・・・・」

 

ふふん、見た目だけなら俺が死神ハーデス/白銀さんともわかるまい。知っているイズとセレーネが参加していない以上、正体がバレることもない。イッチョウ達ならイカル達の存在で察するだろうが、会うまでは誰もが俺であることをすぐに見破れまい。

 

「しばらく口調を変えてこの姿でいるからよろしくね?」

 

「は、はい・・・えと、綺麗です。私も使ってもいいですか?」

 

気になるから許す。イカルも【皇蛇】を使うと俺と似た姿に変身した。

 

「おおー、そうなるのか。私に性転換せず俺と見た目が似るんだ。凄く可愛い」

 

「か、可愛い・・・・・! あの、死神ハーデスさんもとても綺麗です!」

 

「ありがとう。それと、私のことはお姉ちゃんって呼んでくれる? 私のこと白銀さんってバレないようにしたいの」

 

「わかりました。お姉ちゃん!」

 

うん、可愛い。ハグしちゃおう。ギューッ。

 

「はわわ・・・・・///(死神ハーデスさんのや、柔らかいよぉっ・・・!)」

 

 

 

 

とあるプレイヤーの記述。

 

 

金メダルの所持のプレイヤーと距離が近かったため、初心者のプレイヤーとNWOをやり始めてから組んでいた四人の仲間と森の中を彷徨っていたら、凄く綺麗な美女と美少女のプレイヤーがいてユニークのノームがいた。

 

「ユニークのノーム? 白銀さんか?」

 

「白銀さんは男だろ。きっと第二陣として後からテイマーを選んで得たノームの筈だ。」

 

「いやでも、白銀さんが装備してるのと同じだぞ? 白銀さん以外あの装備を手に入れたプレイヤーは見たことねぇって。もしかしてスキルか何かで性転換したか、キャラクターの姿を変更できる課金アイテムでイメチェンしたのかも」

 

「だとしても、凄く綺麗で可愛いな」

 

「あの姿はまだ未発見な海人族か? 白銀さん転生したのか? あとで情報を流すつもりだ披露してるのかな。サスシロだぜ」

 

「情報を公開したがらないプレイヤーはいるからなぁ。くそ、片方が男でも女同士の睦まじい所は本当に絵になる。ちょっと羨ましい・・・・・」

 

「金メダル持ってるのはあのプレイヤー達のどっちかだ? って白銀さんだよな十中八九よ」

 

「戦うんですか? しないんですか?」

 

プレイヤー達は襲うか襲わないか、判断をしかねた。金メダルの所持者はおそらく白銀さんこと死神ハーデスだ。簡単に倒せる相手ではないとも話し合った末・・・戦闘を回避する方針に決めた。

 

しかし、そう問屋は卸させてくれなかった。

 

「こんにちは」

 

っ!?

 

いつの間にか綺麗な初心者の女性がこっちに気付いたのか話しかけて来た。その後ろから白銀さんが来ている。ヤバイッ、やられる!

 

「は、白銀さん。悪いけど俺達を見逃してくれないか? イベントは始まったばかりだから初日から負けたくないんだ」

 

「え、えっと・・・私、白銀さんではありませんっ」

 

「え、冗談だろ。その装備とユニーク個体のノームが特徴的なプレイヤーは白銀さん以外いないって」

 

「白銀さんのオルトちゃんと私のエスクは似てるけど違いますよ! ほら、私のエスクの目元を見てください!」

 

「ムー?」

 

言われてもユニークじゃないノームでも皆は同じ顔に見える俺は、ジリジリと仲間と距離を置く。白銀さんと戦いを避けたい一心だ。そこで白銀さんに女性が助け船をだしてきた。

 

「あの、イカルちゃんは本当に白銀さんではありませんよ? 海の方でこの子と同じ装備をしていた銀髪の男の人なら見かけましたが。初心者の人を抱え、海の上を笑いながら走って」

 

「・・・・・本当に出来そうだから判断が迷うっ」

 

「じゃあ、本当に白銀さんじゃないならその装備は?」

 

仲間の言葉に俺も何度も頷く。白銀さん? は素直に答えてくれた。

 

「死神ハーデスさんから教えてもらいました。単独で毒竜を初めてダンジョンに挑戦して初めてボスを倒したら、同じユニーク装備が2つまでもらえるって」

 

「「「「「なっ!?」」」」」

 

そんな情報、白銀さんは隠し持っていたのか!? だとしたらこの子が同じ装備をしていることも納得できる話だ!

 

「イカルちゃん。、それって教えても大丈夫なの?」

 

「え、あう、ダメでしたか? し、お姉ちゃん・・・・・」

 

「約束をしていなかったのなら仕方のないことだと思うけれど、教えても大丈夫なことと、教えてはいけない話を自分でわからないと、迷惑をかけちゃうかもしれないわよ?」

 

「ううう・・・・・ごめんなさい」

 

・・・・・恐らく問題ない。仲間にこのプレイヤー達はどちらも白銀さんではない、仲間と視線でそう交わし合い頷いた。

 

「あーイカルちゃん、だっけ? 間違えて悪かったな。だけど、相手が違うならこれも本当に悪いけどメダルほしいから倒させてもらうよ」

 

「白銀さんから貰った金のメダルもですか? 初心者の私達のために十六枚も譲ってくれたのに」

 

「あの人はそんなこともしていたのかよ。優しすぎるだろ!」

 

それが本当だということを証明するようにインベントリから金メダル一枚、銀メダル六枚を取り出して見せつけて来る。くそ、心が痛いっ・・・・・! 光結晶と闇結晶を数百万分の数を買って他のプレイヤーに無償で配布してくれた白銀さんの優しさ受けた一人として、俺達と同じように恩を受けた彼女達から奪おうとする俺達が、他のプレイヤーに知られたら炎上・・・叩かれないか?

 

「そんなに集めていて初心者の二人に渡すなんて、変なプレイヤーもいたんですね。でも、奪われちゃ間抜けもいいところだ。これはゲームだから恨まないでね【ダークネスボール】!」

 

俺の不安な気持ちを知らずな初心者のプレイヤーがスキルを使った。俺達が戦う姿勢に入ったから戦いを始めるんだと認識したからだ。女性が【ダークネスボール】を大盾で受けた瞬間。更に近くに寄って来たイカルちゃんが・・・・・。

 

「【エクスプロージョン】ッ!!」

 

「なっ!?」

 

白銀さんしか確認できてない爆発のスキルが零距離で放たれて、迎撃体勢してなかった俺や仲間のHPがぶっ飛んだ。強すぎだろ【エクスプロージョン】って!? いつか俺も白銀さんから教えてもらいたい!

 

 

 

 

「見逃すつもりが見事に星空となってしまったわね」

 

「本当に気づかなかったですね?」

 

「これはこれで都合がいいわ。死神ハーデスだって疑ったプレイヤーを見たでしょう? 私だったら逃げようとするからメダルを手に入れるためにもしばらく姿はこのままでね?」

 

「はい、お姉ちゃん!」

 

 

 

 

その日、俺達の快進撃? は続いた。リックを召喚してアイテムを探してもらい森の中で一枚手に入れることが出来た。時間をかけて森の中を抜けた先は広大な砂漠で、オアシスがないか調べたら砂中に引きずり込む巨大なアリジゴクのモンスターに遭遇。

 

「あ、甘いクリームの味がするわ」

 

「クリーム・・・・・」

 

【パラライズシャウト】で麻痺状態にしたままHPドレインをする。アリジゴクの味が気になったか、カプリとイカルもHPドレインをして、味が美味しかったのか無言でモンスターを食べる行為に入った。

 

『スキル【渦流】を取得しました』

 

「わっ、新しいスキルが手に入りました!」

 

「へぇ、離れた対象を引き寄せるスキルみたいね? これなら逃げようとするプレイヤーとモンスターを逃がさないようにできるわ」

 

「遅くて追いかけられない私達にとっていいスキルですね!」

 

続いて景色と同化するモンスターと遭遇して見えない相手との戦いには四苦八苦したもの。

 

『スキル【色彩化粧】を取得しました』

 

「何とも言えない味、不味くなかったけれど」

 

「味がない料理を食べた気分でした。【色彩化粧】って・・・スキルで攻撃する瞬間まで周囲の風景に溶け込むスキルみたいですよ?」

 

「いわゆる透明人間っぽくなるわけね。【色彩化粧】」

 

「わっ、お姉ちゃんの姿が見えなくなった! あっ、でも・・・そこにお姉ちゃんがいると意識してみると、透明なのに身体の輪郭が判っちゃいます」

 

「じゃあ遠くからだと見えなくなるのかもね。だとしてもいいスキルを手に入れたわ。これでイカルもちゃんも不意打ちできるし」

 

なるほど! と納得したイカルは自分なりに戦い方を頭の中で考え、組み上げる様子に微笑む。

 

「身体を透明化したままエスクを持ち上げたら空飛んでいるように見えない?」

 

「あ、思います!」

 

ということで俺が実行してみると、イカルから見ると本当にエスクが一人で空を飛んでいるように見えて、スクショしても俺の姿が写っていないという方法次第では、面白いことが出来る改めて好いスキルを手に入ったと思った。

 

そして・・・・・。

 

「あ、戦闘音が聞こえる」

 

「行ってみましょう」

 

何度も砂丘を越えて進んでいると、聞こえてくるプレイヤーの気合の声と怒声にぶつかり合う金属音。餌で引き寄せられる魚みたいに【色彩化粧】で透明化になってから向かうと、プレイヤー同士が戦っている光景を目撃した。

 

「激しく戦っていますね」

 

「そうね。でもそれだけじゃないみたいよ? 他のところを見てみて」

 

辺りは砂丘が多い。なので、俺達のように姿を極力隠すようにしているプレイヤーは少なくない。うつ伏せになって漁夫の利を得ようと、静かに戦いの様子を見ているだけなプレイヤーのパーティは少なくとも3つ確認できる。

 

「他にもたくさん人がいるんですね」

 

「何千万のプレイヤーがいるから同じ場所にいるのは不思議じゃないからね。イカルちゃん、メダルを集めるチャンスだから観戦しているプレイヤーを倒しましょう」

 

「わかりました」

 

砂丘から降りて他の砂丘の影にいるプレイヤーのところへ向かい、漁夫の利を狙っているのかまだうつ伏せで見ていたパーティの背後に【飛翔】でイカルを抱えて空から奇襲する。

 

「「【悪食】」」

 

「「え―――?」」

 

三人のうち二人を撃破し、透明化が解けた俺達を呆けて見ている残りのプレイヤーに【パラライズシャウト】で麻痺状態にする。

 

「えいえい!」

 

「ぐはっ!?」

 

短刀で何度も突き刺しダメージを与える懸命なイカルの攻撃は、やっと最後の一人を倒しメダルを一枚手に入った。

 

「倒しました!」

 

「どんどん行くわよ」

 

この勢いは止めてはならない、と思ったところで戦闘音が聞こえなくなった。砂丘から顔を出すと戦っていたパーティが一つ減っていて、勝利とメダルの獲得に喜ぶパーティだけしかいなかった。そして、そんな勝利を浸っている間に別のパーティが砂丘から姿を現し、疲弊しているだろう勝ち残ったパーティに襲い掛かった。

 

「木乃伊取りが木乃伊になる場所ね」

 

「どうします?」

 

「勿論、メダルを貰いに行きましょう? イカルちゃん、【緋水晶蛇(ヨルムンガンド)】Ⅲをお願い」

 

「はいっ、【緋水晶蛇(ヨルムンガンド)】Ⅲ!」

 

緋色の巨大な水晶の蛇が二匹も砂漠に召喚されて、戦闘を始めようとしていた4パーティに向かって襲い掛かり蹂躙をする。彼等も一時共闘することにして迎撃をするが。

 

「どこから湧いて出て来たこのモンスター!?」

 

「ダメだ、ダメージが入らない!」

 

「う、うわぁああああっ!!」

 

上級者もいるのにこうも倒してしまうとは・・・・・やっぱり打撃系以外は効かないのね。

誰もいなくなり静寂に戻った砂漠。六枚のメダルが砂に埋もれてる光景を見つつ他人事のように考えた。

 

「やりました、これで二四枚ですね!」

 

「イカルちゃんの分も集まったことだし、今度はもっと集めに行きましょう? のんびりと探検しながらね」

 

「そうですねお姉ちゃん」

 

不意に青いパネルが表示された。

 

『六時間が経過しました。現在のメダル取得者のランキングを発表します。上位10位までのプレイヤーの位置が一時間マップに居場所を表示されますのでご覧ください』

 

六時間ごとに居場所を把握されるのか嫌だなぁ・・・・・。イカルとランキングを確認すると、ダントツ一位はやっぱり俺達二四枚でその次にペイン一行の九枚、更にその次はミィとかいうプレイヤーが七枚、それから下は六枚で一枚ずつ少なくとも所持している感じだ。

 

「・・・・・よかった、ペイン達とはかなり離れた位置にいるようだわ」

 

「やっぱり、強いんですよね?」

 

「最悪、イカルちゃんとエスクが死に戻りして私だけ生き残ることになるほどにね」

 

だから安心した。問題なのは居場所が把握されたことだけ。

 

「これからたくさんのプレイヤーが襲ってくるから覚悟してね」

 

「お姉ちゃんと一緒ならどんなことでも頑張りますよ」

 

やっぱり可愛い。ギュー。

 

「お、お姉ちゃ~ん・・・っ(柔らかいのが当たってるよぉ・・・・・)」

 

 

 

フレデリカside

 

 

「やっぱり、ハーデスがメダルをたくさん持ってるし。金のメダルも持っていたみたいだね」

 

「金メダルを持っていたことは予想外だったが、必ず頭ひとつ飛び出してくるのはわかってたことだなペイン」

 

「彼は何時だって俺達の予想を越える。今回もそうさ」

 

「距離はかなりあるようだし、メダル獲りに行くのは難しいか」

 

ハーデスとメダルの奪い合いを臨むつもりだったペイン達は、私も含めてメダルを奪わんとする複数のパーティーからの襲撃を受けてる最中。話し合いながら圧倒的な強さで倒していく。ぶっちゃけ、ハーデスと過ごした私達は全プレイヤーの中では頂点に立っていると言っても過言ではない。

 

「これで十枚だね。皆の分を集めるのにまだまだ足りないや」

 

「これから向こうからわんさかとくるんだから待ってればいいじゃね

 

「居場所を知られるリスクはあるがな」

 

「構わないさ。それぐらいのリスクがなくては面白味がない。―――へイン、しばらくはこの状態が続くからよろしく頼む」

 

「ペインさんとなら、どんな困難でも喜んで」

 

ペインに憧れてキャラクターを選ぶ時にペインに似せたプレイヤーのへインが、真っ直ぐ言い返した。そんな彼とペインの話し合いをしている横で私達は見ていた。

 

「ハーデスに続いてペインに憧れて見様見真似するプレイヤーがいたとはな」

 

「ま、二人目のペインにはならねぇだろうがよ。ハーデスの二人目は、いそうだが」

 

「末恐ろしい事実だぜ」

 

今頃、とんでもない成長をしてるのかも。私達も少なからずハーデスの影響を受けた事実あるし、このイベントが終わったらあの子どうなってるのやら。

 

「ハーデス? 白銀さんのことですか?」

 

「そうだ。有名だから名前ぐらい知ってるだろ」

 

「知ってます。けど俺はそこまで興味がないんで」

 

「憧れる程度でいいさ。お前がペインに憧れるようによ」

 

「いえ、白銀さんに憧れの感情がないんで」

 

きっぱりと言い切ったよこの初心者の子。ドレッドとドラグもこれに苦笑するし。

 

「ペイン、一番弟子を可愛がってやれよ」

 

「俺は弟子を取る気はないよ」

 

「ハーデスも言いそうな台詞だな」

 

「その当人はどうしてるんだかな」

 

・・・・・なんでこっちを見るのかな?

 

「なにさ」

 

「近況情報の確認をしてくれねぇかな?」

 

「自分ですればいいじゃん」

 

「夫の浮気が気にならないか?」

 

無言でドラグに杖を突き付けて【金炎の衣】の炎のエンチャントが付加された魔法攻撃をした。・・・・・でも、気になっていないのは噓になる。後でこっそり連絡してみよ。

 

 

―――その日の夜。

 

 

『神匠の黒衣』を装着して【工房召喚】で喚んだ工房の中で一夜を過ごすことにした。モンスターが入ってこない代わりにプレイヤーが入ってくるので、周囲に毒々しい罠と召喚したサイナの機械式落とし穴を張っておいてもらったそんな時。イカルが慌てだす。

 

「お、お姉ちゃん! 卵に罅が!」

 

「おー生まれるのか」

 

「ムー」

 

「キキュ?」

 

テーブルの上に置いてもらい、イカルの新しい従魔が得る瞬間を見守らせてもらった。俺の場合はピクシードラゴンのミーニィだったから、イカルはどんな従魔なんだろうか楽しみだ。罅が全体へ蜘蛛の巣のように行き届き、光が強く弾けるとともに卵も弾け飛んで―――。

 

「キィ!」

 

大きな耳としっぽ、大粒のエメラルドのように美しくつぶらな瞳が特徴的。

大きさはリックとほぼ同じで、イカルの両手に抱えられるほどに小さい。

また虎のように黄金色に焦げ茶色の縞の入った体毛が生えている。

 

「わぁー・・・・・!!」

 

「おー・・・・・」

 

これはこれはまた可愛い。なんだか大きな肉食獣を可愛く小型にした感じだ。

 

「死神ハーデスさん! 死神ハーデスさん! 可愛い、この子とっても可愛い!!」

 

「落ち着いて、落ち着いて? 興奮しちゃう程可愛いと思う気持ちはわかるけど」

 

呼び方が戻っちゃってる、戻っちゃっているから。すっごく顔を輝かせて自分の二体目の従魔を見つめるイカルがステータスを見るようになるまで5分も掛かった。

 

 

テトラ

 

LV1 種族キツネリス

 

HP 35/35

MP 50/50

 

【STR 12】

【VIT 11】

【AGI 18】

【DEX 13】

【INT 15】

 

スキル:【警戒(大)】【採集】【風魔法】【土魔法】【跳躍】【登攀】【危機感知】【巨大化】【索敵】【影分身】【分身】【毒耐性】【必殺噛みつき】

 

 

種族がキツネリス? キツネとリスを融合すればこんなモンスターになるってことか? キツネを見つけたらもう一匹リスをテイムして融合してみよっと。

 

「へぇ、【巨大化】のスキルがあるなんてラッキーだな」

 

「身体が大きくなるんですよね?」

 

「どの程度になるかはわからないが、うちの小さなドラゴンは数人ぐらい背中に乗せて飛べるぐらい身体は大きくなる。そっちはどのぐらい大きくなるかな」

 

「試してみますね。【巨大―――「待ったぁ!!」ひゃっ!?」

 

危ない! 俺の予想が正しかったらこの工房が内側から破壊されるかもしれない!

 

「外でやってくれ。中でやられると、この工房を超える大きさだったら絶対に窮屈になる。最悪壊れる可能性があるしさ」

 

「あっ、すみません・・・・・そこまで考えてませんでした」

 

しゅんと落ち込むイカルを慰めた後、外に出ようとした時だった。

 

「ウウウ~!!」

 

毛が逆立ち外に向かって牙を剥いて唸り声をあげるテトラ。

 

「テトラ、どうしたの?」

 

「マスター、センサーに無数の反応を感知しました」

 

「サイナもがそう言っているなら間違いないな。イカル、キキは敵の存在を【警戒心(大)】と【危機感知】のスキルで気付いた様子だ」

 

「そうなんですか。テトラ、ありがとうね」

 

ただ、毒沼に囲まれているこの工房にどう入ろうか考えているのかな?

 

「迎撃しますかマスター」

 

「近づいてくるならな。できないなら去るだろう。朝までいるなら話は別だが」

 

「かしこまりました、迎撃態勢を維持します」

 

ありがとう、とサイナに感謝してイカルとその晩ベッドで抱きしめ合いながら添い寝したのだった。

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