バカとMMORPGと召喚獣!   作:ダーク・シリウス

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常闇の町 最強の鬼退治

 

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一休みを済ませて戻ってきた。スキル【日刀】を『始原の赫灼』に付与しようと思ったが、保留にして動画配信を再開するため戻った常闇の町では、ログアウトする前まではいなかったプレイヤーが何故か多く闊歩していた。

 

「視聴者の皆さんただいま。そしてこの状況は?」

 

 

『そりゃあ、まだ未確認のクエストがあると分かれば探しに来るのがプレイヤーだよ』

 

『死神さんの活躍を生で見たいプレイヤーもいれば、便乗orあやかりたいプレイヤーもいる』

 

『そこで白銀さんが活躍すれば他にも何かがあると踏んでやってくるさ』

 

『ちな、俺達もそうでーす!』

 

 

俺は客寄せする珍獣か何かですか?

 

「さて、鬼の場所はどこだ?」

 

 

『北の一番奥にある鳥居に行けばいるよ』

 

 

「あっちか。それじゃ、行ってくる」

 

北へまっすぐ進む俺の背後はゾロゾロとついてくるプレイヤーがついてくる。教えてくれた鳥居を見つけると建物があり足を踏み入れた。後ろの野次馬はこれ以上は行かないと階段前で立ち止まって手を振ったり声援を送ってくれる。

 

「このまま上まで行けばいいのか」

 

紫の炎に照らされた廊下と階段を上へ上を進んでいく。これといって入れる部屋はなく、警戒しつつも最上階を目指す。

 

「よっと・・・・・人は、いないな」

 

階段を上った先にはぴったりと閉じられた襖があった。何かがあるとすればその先だろう。俺は一つ深呼吸をすると襖を開いた。中は畳が敷かれているくらいで何の変哲もない部屋だった。

その一番奥に真っ白い袴と着物を着た白髪で額に二本の角を生やした妖が一人座っていた。

 

特徴としては鬼に最も近いが、ほんの少し前に瞬殺した四メートル近い筋骨隆々の鬼とはまた違った見た目である。恐らく彼がこの建物の主だろうと思い、次の動きに注意を払う。

 

「おぉ・・・・・?まさか人間が来るとはな」

 

鬼はそう言うと立ち上がりこっちへ歩いてくる。

 

二メートル程だろう身長が威圧感を強めている。

 

「ついて来い」

 

鬼は俺に背を向けてもといた場所へと戻っていき、地面に魔法陣を描くと消えていった。

 

「行くか」

 

気を引き締めて魔法陣に乗った俺が辿り着いたのは荒野だった。鬼も少し離れた場所に立っている。

周りを確認しても木の一本、大岩一つ見当たらない。

 

「・・・・・人間、俺から言うことは一つだけだ」

 

「・・・・・」

 

「俺を倒してみろ」

 

俺は疑問も抱くことも驚くこともなく構えた。

 

「さあ、やろうか人間」

 

その声が俺の耳に届いた直後、鬼の右手から白い光が弾ける。

 

鬼の手に握られていたのは刀だった。

 

「勝負だ!」

 

戦闘モードに入って鬼の方へと距離を詰めていく。鬼は俺との距離が離れているにも関わらずその刀を大上段から振り下ろす。その刀身がぐんと伸び、悠々と自分の位置まで届いたことを確認して横へ躱す。

 

「さて、初見だから攻撃パターンを把握させてもらおうか」

 

故に判明した鬼の薙刀による攻撃は―――。

 

真円に近い弧を描いて打ち下ろす。

 

日輪の様に円を描く太刀筋を縦に叩きつける。

 

太刀筋が∞の様な軌道を描き、左右対称の鋭い斬撃を広範囲に飛ばす。

 

激しい動きをして繰り出す高速の二回連続の回転斬り。跳躍中でもできる。

 

上空へ向かって飛び上がり、攻撃の威力を一点集中させて放つ突き。

 

龍が舞うような動きで高速接近し斬りつける。

 

豪雨のような鋭い突きを20回放つ技

 

鋭く力強い踏み込みと素早い薙刀の振り抜き。

 

相手の真上を飛んで背後に回り、空中から放つ。

 

薙刀の高速回転による円舞の上下二連撃。

 

 

大盾使いの場合。

 

真円に近い弧を描いて打ち下ろす。→薙刀の軌道を見切って躱すか、軽く後方へ跳躍する。

 

日輪の様に円を描く太刀筋を縦に叩きつける。→左右に避けて躱すか、後方へ下がる。

 

太刀筋が∞の様な軌道を描き、左右対称の鋭い斬撃を広範囲に飛ばす。→盾で受け流す、できないなら攻撃を誘導させて対処しやすくする。

 

激しい動きをして繰り出す高速の二回連続の回転斬り。跳躍中でもできる。→薙刀が振るう瞬間を見極めて懐に飛び込んでシールドアタック。ノックバックで攻撃を中断させる。

 

上空へ向かって飛び上がり、攻撃の威力を一点集中させて放つ突き。→よく見て躱す。

 

龍が舞うような動きで高速接近し斬りつける。→回避不可、できるなら躱せ。

 

豪雨のような鋭い突きを20回放つ。→俺なら躱せるが、そうでないなら相手の目を潰せ。※閃光手榴弾

 

鋭く力強い踏み込みと素早い薙刀の振り抜き。→条件反射がものを言う。

 

相手の真上を飛んで背後に回り、空中から放つ。→素早く前にスライディング、もしくは大きく左右へ躱す。

 

薙刀の高速回転による円舞の上下二連撃。→ダンスゲームの要領で薙刀の軌道を読み気合で躱すしかない。

 

「大体こんな戦闘スタイルで来ることが分かったけど、お前等いけるか―?」

 

 

『ノーダメージで躱し続ける白銀さんも凄いけど、他の職業で戦うと戦闘スタイルがまた変わるからなぁ・・・』

 

『大盾使いとしては凄くありがたい情報です。実行できるかは別問題ですけどね』

 

『でもそっか! また盲点だ、閃光手榴弾とか罠アイテムを駆使して戦うことも出来たな!』

 

『プレイヤーとかモンスターの動きを封じるスキルも存在しているから、俺達もイケるかもしれないな』

 

『だけど肝心の回復がする暇ないんだよなぁ。回復系のスキル持ってないプレイヤーからすれば厳しい条件なのは変わりないだろ』

 

 

回復が出来れば戦闘維持が保たれる・・・・・ふむ。

 

「じゃあ、こういうやり方ならどうだ?」

 

回復ポーションを大量に床へばら撒くばら撒く。そして拾ってもいいが―――試してみよう。こう踏んで、HPを回復してな? あ、できたわ。

 

 

『うっそぉおおおおおおおおおっ!?』

 

『ちょ、飲まずに踏んで? 砕いて回復する方法なんてあったのかよ!?』

 

 

「意外とできたな。始めて俺も知った」

 

 

『ぶっつけ本番かーい!! でも、凄い新発見でもあるぞこれぇッ!!』

 

『でも・・・飲まずにポーションの瓶を割って回復もできるんだ。そういうことも可能だったんじゃ?』

 

『あっ、確かに!』

 

 

視聴者達の間で大変な盛り上がりをしている他所に鬼の猛攻は止まらない。薙刀の刃を両手による真剣白羽取りで止めて膠着状態に持ち込む。

 

「そろっと俺も攻勢に出るぞ」

 

 

『俺達の仇を取ってくれぇー!』

 

『頑張れ白銀さん!』

 

『いっけー!』

 

 

「【咆哮】!」

 

十秒間の強制停止を受けた鬼は毒攻撃を受ける。

 

「【ヴェノムカプセル】!」

 

毒状態になるか分からないが、試してみようじゃないか。直径二メートル程の紫色の球体。俺は鬼を閉じ込めたその中にズブズブと沈んでいく。【ヴェノムカプセル】の消費MPは一回あたり20だ。10回以上は余裕で出来る。

 

「【ヴェノムカプセル】」

 

その声に応じて、俺達を包むカプセルはその直径をさらに四メートルまで大きくする。当然毒壁の厚さも増す。

 

「【ヴェノムカプセル】」

 

無慈悲な障壁強化。俺はその直径を六メートルに変えて厚さを増す。んー、ボス相手に即死はないか。

 

「おっと、やらせないぞ【咆哮】! 【ヴェノムカプセル】!」

 

即座に鬼の行動を縛り上げる。この行動の繰り返しによって俺は攻撃を受けることなく鬼のHPを削ることが出来るようになった。それ以降―――削る。ただひたすらに鬼のHPを削り取っていく。結果、完全に制圧した状態で鬼のHPを半分まで減らすことに成功した。

 

 

何度目かの強制停止と毒の牢獄の強化後、俺は鬼の変化を見て取った。

 

「人間・・・・・中々やるな!」

 

そう言い放った鬼を中心に白く輝く光が渦を巻いている。内側から強引に【ヴェノムカプセル】を突破してくれた風が吹き荒れ、その暴風の音を聞かせる。明らかな変化に大盾を構え、俺に様子を窺わせる鬼は地面から浮いているのが目視できた。

 

「さぁ・・・・・行くぞ!」

 

響く声と同時、鬼は宙を駆けた。そのまま白い光の尾を引いて俺との距離を詰めてくる。

さらに赤く光る薙刀を見たことで危険を察知した。

 

「(速いな!) 【金晶戟蠍(ゴール・D・スコーピオン)Ⅲ】! 【黒晶守護者(ダーク・ゴーレム)Ⅲ】! 【緋水晶蛇(ヨルムンガンド)Ⅲ】! 」

 

MPを回復した直後、最近公された新ダンジョンにいるボスモンスターの三体を召喚して壁代わりにする。

 

「【金炎の衣】」

 

全身が金色の炎のようなオーラに包まれたところで三体が紅く光る鬼の薙刀に両断されてしまう。え、マジで?

 

「【大嵐】!」

 

火砕旋風を放つ。炎上ダメージが食らってたらいいが、炎の壁を突き破って肉薄してくる鬼にヒヤリして【機械神】と【飛翔】で空へ飛んだ。鬼も光を纏って追いかけてくるように宙を駆けてくる。俺達は二つの光となり時折交差し、弾けて、赤い光を散らしていく。

 

「【咆哮】! 【全武装展開】【攻撃開始】!」

 

空中で動きを止めた鬼へ爆音と共に全ての武装が火を吹く。鬼が地面に叩きつけられようと攻撃の手は緩めず―――。

 

「【アルマゲドン】」

 

遥か空の上から巨大な隕石を落として鬼にぶつけるまではな。だけど、HPを残り三割としたところで鬼から衝撃波が発生し、隕石がポリゴンと化して無効化にされてしまった。空中に留まり俺から距離がある鬼の周りに白い光が集まっていく。

 

「まだだ、人間・・・・・!」

 

鬼の姿は大きくなり、真っ白い髪を揺らす大鬼となった。地上に降り立つ俺はジョブをテイマーから変えてる。ある武器を使うためだ。

 

「【クイックチェンジ】!」

 

青い光が俺を包み、一瞬で黒い装備が赫灼ものに変わる。再び【金炎の衣】を纏う。

 

「【紫外線】【溶解】」

 

鬼の身体が炎に包まれるだけでなく俺と鬼が立つ足場がマグマに塗り変わった。

 

「【超加速】」

 

その中でさらに走る速度が加速し、殴りかかって来る燃える鬼の拳に刀で斬りつけ、必死のスリップダメージを与えた。斬りつけた個所が赤く燃えだしてHPの減少が少し早くなった。拳のみで戦うようになった鬼の一撃は油断できないのでヒット&ウェイ戦法で戦う―――つもりはない。ガチンコ勝負だ! 【刀術】を使うまでもなく、何時間も繰り返し舞った神楽を素で舞う。炎のエンチャントが刀に付いている状態の今なら疑似的な【刀術】が出来る。祭具から刀に持ち替えるとこうなる。

 

 

【日刀】

 

満腹度を対価としてスキルを使用する。消費した満腹度が0になると回復しない限りスキルの使用不可。

 

 

日刀・一ノ型

 

真円に近い弧を描いて打ち下ろす太刀筋が特徴の技。消費満腹度10%

 

日刀・弐ノ型

 

日輪の様に円を描く太刀筋を縦に叩きつける技。消費満腹度10%

 

日刀・参ノ型

 

太刀筋が∞の様な軌道を描き、左右対称の鋭い斬撃を広範囲に放つ技。消費満腹度10%

 

日刀・肆ノ型

 

激しい動きをして繰り出す高速の回転斬り。消費満腹度10%

 

日刀・伍ノ型

 

上空へ向かって飛び上がり、攻撃の威力を一点集中させて放つ突き技。消費満腹度10%

 

日刀・陸ノ型

 

龍が舞うような動きで接近し、火炎を纏った刀で斬る。敵の回復量と速度を減少させる効果が付与されている。消費満腹度10%

 

日刀・漆ノ型

 

空中で反転した体制で剣を振るう。消費満腹度10%

 

日刀・捌ノ型

 

斬りつける瞬間、刀の刃先が陽炎のように揺らぎ敵の目を狂わせる。消費満腹度10%

 

日刀・玖ノ型

 

鋭く力強い踏み込みと素早い剣の振り抜き。消費満腹度10%

 

日刀・拾ノ型

 

相手の真上を飛んで背後に回り、空中から放つ技。消費満腹度10%

 

日刀・拾壱ノ型

 

残像を残し高速の捻りと回転による躱し特化の技。消費満腹度10%

 

日刀・壱拾弐ノ型

 

上下二連撃。消費満腹度10%

 

 

―――常に腹ペコキャラクターにさせたいのかと運営に疑うスキルなんですよねぇ。だからこの飾りが必要不可欠なんだ。

 

 

『日輪の指輪』

 

常時満腹度が100%。被ダメージ二倍。

 

 

常にスキルを使い続けれる分いいが、被ダメージがかなり痛い思いをする。今がその時だ。

 

「だけど、俺のフィールドの中にいる限りお前の負けは確定だ」

 

その言葉が現実になるまで10分もかからなかった。鬼と相打ち覚悟の攻撃を繰り出す。そこに回避はほとんど存在せずお互いが攻撃を攻撃で返し続けていく。赤いエフェクトが大量に舞い、貫通攻撃が付与された拳の一撃は俺の【VIT】を、越えあっという間に【不屈の守護者】を発動する直前まで減らされる。

 

「待っていた瞬間だ。【反骨精神】!」

 

全ての【VIT】の数値が【STR】に変換し、疑似日刀・壱拾弐ノ型と同じ上下二連撃を繰り出した。この瞬間火力だけ鬼より俺の【STR】の方が圧倒的に勝る。鬼の拳に一度受け止める風に打ち下ろした刀で返して下段から打ち上げ鬼の身体に斬りつけた。

 

「ぐはっ・・・!」

 

HPバーが消えた鬼は、鈍い音を立てながら仰向けになって倒れた。こんな強敵、ベヒモス達以来だぜ。俺もその場で胡坐掻いて座って息を吐くと、鬼は体を起こして口を開いた。

 

「ははは・・・・・! やるなぁ、人間!」

 

座り込んだまま鬼が笑う。鬼は体についた土埃をぽんぽんと払うとゆっくりと立ち上がった。俺も立ち上がる。

 

「ついてこい」

 

そう言って歩き出した鬼の後ろを俺がついていく。鬼が出現させた魔法陣に乗り、もといた四層の一室へと戻ってきた。

 

「さて、人間。俺に力を見せた褒美だ」

 

鬼の両手が輝き、朱に染められた盃が二つ出現した。鬼はそのうち一つを俺に手渡すと、また新たに出現させた大きな瓢箪から俺と自分の盃に液体を注いでいく。

 

「妖の酒は人には飲めん。酒は無理だが・・・・・まあ、兄弟の盃として形だけはな」

 

「そういうことか」

 

鬼と俺がそれを飲み干した。それから少し鬼が俺に氷と書かれた木札を渡しながら、話を切り上げてまとめに入った。

 

「気になるならそれを持ってこの中の奥にある扉の向こうに行ってみろ。だが、また喧嘩しようぜ。俺が死ぬその時まで・・・・・いつだって戦ってやる」

 

「わかった。もう一度しよう」

 

鬼へと手を振ってその部屋から出て襖を閉める―――鬼退治、終了!

 

「終わったぁー!」

 

 

『白銀さんお疲れぇー!!』

 

『どっちもギリギリの戦いだったな』

 

『こっちは凄い盛り上がりだよー』

 

 

「おーそうか。倒せる自信があるプレイヤーがいるなら挑戦してみな―」

 

 

『やってみようかなと思うんだけどさ、木札を貰ったようだけど、何の用途に使うんだ?』

 

『奥の扉に行ってみろって言ってたから、鍵じゃないか?』

 

『扉の向こうに何が・・・・・氷鬼とかいたり?』

 

 

どうなんだろうな。気になるんで確かめに行くことにした俺は、建物の奥へと足を運びここに来るまでなかったはずの大きく氷と書かれた木製の扉の前に停まり、木札を差し込む部分の穴に押し込んで見た。ガチャリと施錠された鍵が開錠した音の後に開けたら・・・・・。

 

「・・・・・」

 

扉の向こうは別の廊下に繋がっていただけだった。視聴者達から見た目は何も変わっていないと思うだろうが、俺が吐く白い息に気付けば違和感を抱くはずだ。完全に潜ると閉まり出し、扉の表面に炎を書かれた文字があった。紫の炎ではなく青白い炎に照らされた廊下を進んで行く。

 

これといって入れる部屋はなく、警戒しつつも建物から出てみた俺の視界には雪の世界が広がっていたのだった。雪によって積もった町の建物の数々。冷たい地面を闊歩するNPC達の姿が。どうなってるんだろうなここは。新しいエリア?

 

 

『白銀さん、取り敢えず動かない?』

 

『マジ話で氷鬼か? ちょっと会ってみてくれない?』

 

『散策してみよう!』

 

 

視聴者達に催促される。俺は―――建物の主を会いに踵を返して歩いた。

 

 

白い鬼がいる部屋と同じぴったりと閉じられた襖を開いた。中は畳が敷かれているくらいで何の変哲もないのも一緒な部屋だった。その一番奥に真っ白い袴と着物を着た白髪で額に二本の角を生やした妖が一人座っていたのもだ。

 

「おぉ・・・・・? まさかあの鬼を相手に勝ってここに人間が来るとは」

 

鬼はそう言うと立ち上がり俺の方へ歩いてくる。

 

「一応、持ってるか。ならついて来い」

 

鬼は俺に背を向けてもといた場所へと戻っていき、地面に魔法陣を描くと消えていった。

 

二回戦目に臨み気を引き締めて魔法陣に乗って辿り着いたのは雪が積もってる荒野だった。

 

鬼も少し離れた場所に立っている。

 

周りを確認しても木の一本、大岩一つ見当たらない。

 

「あっさり引き継がせてやろうかと思っていたが・・・・・人間、気が変わった」

 

「・・・・・」

 

「俺を倒せ、出来れば次の主の座はお前にくれてやる」

 

戦闘になる前提で考えていた俺は驚くこともなく刀を抜いて構えた。

 

「さあ、やろうか人間」

 

その声が俺の耳に届いた直後、鬼は握り拳を作って赤いエフェクトを纏う素手で戦う構えを取ったのだった―――。

 

 

・・・・・。・・・・・。・・・・・。

 

・・・・・。・・・・・。

 

・・・・・。

 

 

「さて、人間。約束通り俺の後を継げ。そのつもりで来たんだろう?」

 

最初の鬼とは違う繰り広げた二回目の激闘戦を終えたあの後。もとの部屋に戻ってもう一人の鬼と同様に、鬼の両手が輝き、朱に染められた盃が二つ出現した。

 

鬼からそのうち一つを受け取ると、また新たに出現させた大きな瓢箪から俺と自分の盃に液体を注いでいく。

 

「まさか人間が継ぐとは思ってなくてな。妖の酒は人には飲めん。酒は無理だが・・・・・まあ、形だけはな」

 

「おう」

 

鬼と俺がそれを飲み干したその時、俺にスキル獲得の通知が届いた。

 

『スキル【百鬼夜行I】を取得しました』

 

それから少し鬼の話を聞き、相槌を打っていた俺だったが鬼が話を切り上げてまとめに入った。

 

「行かなければならない所がいくらでもあるんだろう? また来いよ、歓迎するぜ? 俺が死ぬその時まで・・・・・あの野郎と同じくいつだって戦ってやる」

 

炎と書かれた木札を貰い部屋を出て襖を閉めた。さてさてスキルはー?

 

 

【百鬼夜行I】

 

一分間赤鬼、青鬼を呼び出す。

 

鬼のステータスはスキルレベルに依存。

 

その間使用者が持つスキル全ては【封印】状態になる。装備のスキルは【封印】されない。

 

 

両方の鬼の今のステータスを確認したところであることに気づいた。

 

「あー1って付いてる、上げ方は・・・・・」

 

このスキルの上げ方に心当たりが一つあった。

どっちの鬼も俺に対して【死ぬ時までいつだって戦ってやる】とそう言った。

・・・・・ならばスキルレベルの上げ方は一つ。

もう一度、もう二度。何度も二人の鬼を倒すこと以外にはありえない。

・・・・・水晶の方のレベルをカンストしよう。俺が楽するために

 

「さて、改めて散策しようかな雪の世界の町を」

 

NPCと触れ合ってみれば白い着物を着た美女、雪女や小さな女の子の雪ん子を始め昔の防寒着を身に着けてる人間もいた。店の中に入ればホームオブジェクト用のインテリアもあった。おお、和傘そこにいたのか。買おう買おう。お次は着物屋・・・んー白いのが多いな。でも、控えめや派手さ、絢爛な意匠の種類が豊富だ。うちの女子達用に買っておこうかな。少なくない数を購入した時、店主の女NPCが寄って来た。

 

「お客さん。良かったらこれも貰っといてくれるかい」

 

渡そうとするそれは白い着物を着た女の子の掛け軸だった。貰えるなら貰う主義でありがたく貰うとNPCはもとの位置へ戻って行った。続いては―――。

 

雪国に住む人間が欠かせない衣服と履物を転々と違う店ごとに購入した。氷結攻撃に対する装飾品もあったから今後の為に揃えておかないと・・・・・。

 

くいくい・・・・・。

 

「うん?」

 

手を掴まれて引っ張られる感覚。後ろを見ると視線は下に落ちた。

 

「ユ、ユキィ・・・・・」

 

ズタボロ・・・・・布と紐で結んだだけの貫頭衣の姿で物欲しそうに見上げてくる白髪で赤い目の幼女。というか、ユキって言ったから妖怪のNPC? 疑問を浮かべながら購入した着物と履物を出す。譲ってくれると思ったようでその場で着物を着込み、頭に温かくて雪だるまの顏の帽子をかぶり、靴を履く。NPCは満面の笑顔を浮かべて脚に抱き着いた後、俺に手を振りながら走って去った。

 

『雪ん子と友誼が結ばれました。一部のスキルが解放されます』

 

「なんだと?」

 

やっぱり妖怪の類だったかさっきの幼女。茶釜達と仲良くなったアナウンスが聞こえたし。

 

 

『どうした白銀さん』

 

『もしかして今の可愛い女の子と仲良くなっちゃった系?』

 

 

「・・・・・多分、さっきの雪ん子のNPCがホームに加わった。雪ん子の掛け軸をもらったからかも」

 

俺の予想は当たるかどうかわからないけれど、それでも視聴者達の異常過ぎる熱気が伝わってくる。

 

 

『待ってて雪ん子ちゃん! 鬼なんてすぐに退治して温かい着物と履物を用意するから!』

 

『鬼がなんぼのもんじゃーい!』

 

『くそっ、家来のキジとサルとイヌはどこにいる!? 我は桃太郎ぞ!』

 

『誰か手のひらサイズまで身体を小さくできるアイテムを持ってませんか!』

 

『鬼を滅する宿命を背負っている俺は刀使いだ! 全ての鬼を駆逐してやる!』

 

『なぁ・・・雪から生まれた妖怪が寒がるか普通?』

 

『バカッ! 寒がるに決まってるだろ! そうじゃないにしてもあんな格好で孤独に町中を彷徨う想像をしてみろっ!! 良心が痛まないのかっ!?』

 

『・・・・・雪ん子ちゃん、お迎えに行くからもうちょっとの辛抱だよー!』

 

 

・・・・・ノーコメントにしよう。そう簡単にあの強敵の鬼を倒せるプレイヤーがここに来れるとは思えないが、頑張ってくれ。

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