バカとMMORPGと召喚獣!   作:ダーク・シリウス

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雲の上の

『プレイヤーが初めて常闇の町のボスを突破したため町が本来の姿を取り戻しました。またこれによりアイテム、クエスト、モンスターが出現するフィールドが追加されました』

 

常闇の町に戻るや否や、アナウンスが聞こえて人ならざる者、ぱっと見て分かるような鬼などを始めとして物怪や妖怪と呼ばれるような者達が闊歩する姿が見受けるようになった。

 

「は~、あの鬼を倒したらこうなるわけね」

 

 

『さすが白銀さん! 攻略組以上に攻略してくれるね!』

 

『攻略組というか前線組って名前のプレイヤー集団でよくね? ボスを倒して攻略するのも大変なのはわかるけど、各町の隠しギミックを攻略せず前線で戦ってるだけだし』

 

『適材適所って感じだよなー。白銀さんが隠しエリアや隠しギミックを攻略して、トッププレイヤーの前線組は先に強力なモンスターの攻略をしてくれてる』

 

『・・・・・じゃあ、その中間にいる俺達はなんぞ?』

 

『シッ! それは言ってはイケナイ!』

 

『どっちつかずの中途プレイヤーですね。わかります』

 

『言っちゃダメだってばぁあああああああああっ!!』

 

 

賑やかで何よりだな。フィールドへ出ようとするプレイヤーの波を見つけると、俺もその波に身を任せて向かいついて行くとフィールドへと出られて、妖怪の類として出現するモンスターがプレイヤーと戦っている。倒したら次のモンスターを見つけに移動するプレイヤーがどんどん奥へと進むので俺も便乗する。

 

けれど、結局どこに行こうとも他のプレイヤーが多すぎて、モンスターと戦えず湖がある場所まで移動することになってしまい、それでも数多のプレイヤーも湖まで来ていた。

 

「・・・・・ここなら何かあるかな?」

 

他のプレイヤーは湖より先に行くか、何故か遠巻きで留まっている。何で留まってるんだ?

 

「ストーカーか何かか?」

 

 

『辛辣ぅ!!』

 

『出てみたものの、先にモンスターを取られて戦えず先に行ってもモンスターを取られて戦えずの繰り返しでここまで来てしまったプレイヤーと、フィールドでも何かやらかすんじゃないかもしれない白銀さんを追いかけに来たプレイヤーに、それに便乗するプレイヤーが3・3・3ですね』

 

『残りの1は?』

 

『純粋なストーカーですが何か?』

 

 

「ストーカーじゃん」

 

純粋ってのが性質が悪すぎる。言い換えればただの追いかけだから、通報もすることが出来ないじゃんか。

 

「じゃあ、暇だし湖の調査ぐらいはするよ」

 

スキルにより重力の鎖を引きちぎってふわりと浮かび、湖の真上までふわふわと飛んでいった。

湖の真上についた俺はそのまま空へ向かって上昇していく。俺が水面から五メートル程上昇した所で湖の水が柱のように伸びて目を丸くする俺を包み込む。しかし、それも一瞬のことで俺は光に包まれると、次の瞬間別の場所にいた。

 

「・・・・・俺、どうなった?」

 

 

『やっぱりしたぁー!』

 

『急に水柱が立って白銀さんを呑み込んだと思ったら、直ぐに湖に落ちて白銀さんがいなくなったよ』

 

『そっちはどこにいるの?』

 

 

どこ、だろう? 地面に降り立っている。いや、正確には地面ではない。

 

「ここ、どこ?」

 

俺が今踏みしめているのは土ではなかった。ふんわりと柔らかい雲だったのだ。

 

「すごい星・・・・・」

 

足下を確認した俺は今度は空を見上げる。

 

星々が眩しいくらいに輝いているのは、思わず見惚れてしまうような光景だった。

 

「・・・・・綺麗。星が降る夜ってこういう夜かな?」

 

しばし夜空を眺めていた。

 

「雲の上、星々の輝きが見える夜の天蓋の下にいるって感じだな」

 

 

『ポエムですか?』

 

『それ採用しちゃっていいですか?』

 

『具体的な説明をありがとうございます。俺達もそこに行く挑戦を試みるぜ!』

 

『先に進んでみてください白銀さん』

 

 

視聴者の提案に乗って、俺は雲の壁を乗り越え乗り越え先へと進んでいく。

そうして進んでいくとまっすぐに伸びる雲の道に辿り着いた。

ギリギリ二人が横に並べるくらいの道幅の道に足を踏み出した。その直後、空から雲道に光る物体が降り注ぐ。

それを気付きバックし、避難しつづけた。すると、雨のように降り注いでいたそれは止んだ。

俺降ってきたものに当たりをつけることができていた。

 

「本当に、星降る夜だった」

 

 

『物理的に降ってくるなんて思わないって・・・・・』

 

『どれくらいの威力なのかは分からないけど、白銀さんなら耐えられるから進めそうかな』

 

『頑張ってー』

 

 

送られる声援と共に再び歩き出した。降り注いだ星が素の俺に当たっては跳ねて落ちていく。

道には休むことなく星が降っている。躱して進もうと思えるような光景ではなかった。

そうして進んでいるうちに道の終わりが近づいてきた。

 

「結構大きい星も降ってきてるけど・・・・・到着っ!」

 

長い道を進んだ先には雲の壁、そしてそこにできた横穴があった。

ここまで来て入らないという訳にもいかないのでそこを慎重に進んでいく。

横穴はそこまで長くはなく、すぐに終着点がやってきた。

 

そこには煌めく光が注がれていた。

静かに、糸のように伸びる光。

それが天から雲で出来た器へと続いている。

 

「おお・・・・これ・・・・・」

 

器に近づいて、溜まった光に触れてみる。何かを触った感覚はなかったが、確かに一つのアイテムを手に入れた。

 

「『天の雫』?」

 

 

『天の雫』

 

空っぽな器。器を満たせば道は開かれる。

 

 

「・・・・・器を満たす。星でいいのかな」

 

来た道に戻り、今も降り注いでいる星に天の雫を掲げる。一つの星が空っぽの器に吸い込まれるように落ちては、消失して雲の器が淡く光った。

 

「なるほど、こうして集めればいいわけだ」

 

早速他の星も器に入れ続ける。その数は大きさに関係なく100個ほどだ。星のように輝くようになった器が俺の手元から離れ宙に浮くと『天の雫』があった横穴へ移動した。器は元にあった所へ戻ると魔方陣を展開したのだった。その魔方陣の上に乗ればまた光に包まれ―――さらに違う場所へ辿り着いた。

 

 

少し弾力があるふわっとした地面は一つの汚れもない白。そこは一面雲の国。天上の楽園だった。ただ、真っ白な雲の地面は所々出っ張っていたりへこんでいたりして走るには適さない地面である。俺と言えども全力の半分程の速度で走るので精一杯だ。それより速くしようと思うとバランスを崩したりさらには転んだりしてしまうだろう。

 

「・・・・・」

 

うずっ、と好奇心が擽られた俺は真っ白な雲に倒れ込むと、幸せな感触が顔や体を優しく包み込みながら受け止めてくれた。

 

「すっごくふわふわだ。マシュマロの上に乗っているかのような弾力だここは」

 

 

『なんだその幸せな場所は!』

 

『こちらチャレンジャーA。湖の上にいなくても湖の中心にいれば雲のフィールドにいけることが判明』

 

『星降るエリアは地味に厄介だ! 受けると【AGI】が減少するが直ぐに元の速度に戻るけど!』

 

『チャレンジャーBからの報告! 何とか星集めをしてるけど、他のプレイヤーとの争奪戦が激しいであります!』

 

 

「地上でおしくらまんじゅうしてるなら、空飛ぶアイテムで独占できないのか?」

 

 

『・・・・・そうしよう』

 

『・・・・・そうだな』

 

『・・・・・異議なし』

 

 

気付かなかったのかい。でも、案外早くやってきそうだな。ということで俺も動こう。でもどこに行こうかな。割と広そうだぞここ・・・・・よし、適当! と決めて歩き始めた。トラップもモンスターも待ち受けていない雲だらけのエリアは、とても静かで足からふかふかな感触が伝わってくるだけ。それ以外は何も発見できずにいたが。

 

「ん、とりあえず何か見えてきた」

 

俺の視界に映っているのは空高くまで伸びる雲だった。

 

夏空に浮かぶ入道雲のような存在感があるそれの下の方、つまり俺が今いる地面から続く所にその雲の中へと入っていくことが出来る道があった。

 

「入るか。うん、そうしよう」

 

入道雲の中へと入っていく。狭い入口を抜けると、ある程度の高さのある道が何本も伸びていた。さながら迷路といった構造に出会い頭の事故を警戒して一歩一歩進んでいく。

 

「お? 雲にHPバーが」

 

ようやく初めて見えた戦える相手。モンスターとして存在しているのかな? 刀を取り出してダメージを与えると、雲も攻撃してきた。軽く躱してまた斬って倒した。

 

「よし、次」

 

次の獲物を探しに雲の地面を歩いて彷徨う。視聴者達はまだ星を集められてない様子で話しながら歩いていると雷の音が聞こえ始め、前方の空が暗い雲に覆われているのが見て取れるようになってくる。

警戒して武器を抜き、ゆっくりと辺りを見渡しつつ進む。さらに近づいていくとそのエリアの光景は細部まで難なく確認することができた。その場所では青空は分厚い雲に遮られており、青白い電気の流れが断続的に地面と空を繋いでいた。あちらこちらで落ちる雷。

 

「わお、雷雨ゾーンか。当たったら麻痺状態になりそう」

 

 

もう一度言おう。絶え間なく稲妻が落ちる雲の大地である。それでも俺は意気揚々と雲海の上を歩いていく。ゴロゴロと音の鳴る中、何かしらの耐性がないプレイヤーが無事でいられるはずもなく、俺のいる場所に稲妻が一条落ちて直撃した。

 

「うおっ! ・・・・・んと。よし、なんともない」

 

雷に打たれてなお、HPは一ミリたりとも減少してはいなかった。そして、その体には麻痺が効くことも当然なかったのである。

 

「ふははは! 自然の猛威にも負けないぞ俺は!」

 

歩みを再開していく俺の体には数十回は稲妻が落ちているものの、その全ては例外なく弾けて消えていってしまう。―――だが、しかしだ。

 

「よっと、ほい、ふっ、はっ、とぅっ!」

 

無敵ムーブするのはいいが、それではつまらないので全身を駆使して稲妻に被弾しないステップを刻みながら進む。ふははは! 当たらん、当たらぬよ!

 

「雷を落とす鬼、雷神でもいるならもっと稲妻を落としてこいやっ! へなちゃこめ!」

 

ほら余裕でずんずんと進んで行ったその先には、雷雲ではなく、白く綺麗な雲海が続いているところに辿り着いてしまったぞ!

 

「抜けたのかな? ・・・・・何かあるといいな」

 

ステップを止めて、キョロキョロと周りを見渡しながら進んでいく。

 

しばらく進んだその時。俺は白い雲の上に立つ何かを見つけた。

俺は自身の身長の四倍はあるそれをぐっと目を凝らして見つめてみる。

 

「んー・・・・・椅子?」

 

白い雲の上、同じ白い色をして、しかしより輝いて見える、椅子と呼んだもの。

 

だがそれは、大きな玉座だった。

 

絶対に何かあると判断して玉座に近づくと、それに反応したのか白い光が玉座に集まってきて収縮していく。そして、それは大きい玉座に見合うだけの大きさの人型を形作った。

 

その頭には冠が輝いており、年老いた顔には光が形作った顎髭が揺れている。

身につけている豪華な服はまさに王族を思わせるものだった。

王の周囲には次々に魔法陣が展開されていき、玉座から広がっていく白い光は地面を這って進んでいく。

 

言葉を交わすこともなく。

そのまま俺に向かって、魔法陣から光でできた矢が撃ち出された。

足だけ動かして飛来する光の矢をことごとく紙一重で躱し、前に進む。

そうして玉座から広がる白い輝きに覆われた地面を踏み抜いた時、俺自身に目立った変化や異変がないので更に前へと移動する。光の矢は相変わらず撃ち出され続けて俺は避ける。刀が届く距離にまで縮めれたら座っているだけの相手に滅多切りをする。必死のスリップダメージが光の王のHPを削り始め、畳みかけるように【紫外線】と【溶解】でHPの減少を早めていく。

 

途中ボスの攻撃が激しくなったり、追加効果が増えていたりしたものの、それらを躱し弾き続けているのだからどうということはなかった。

 

ボスのHPが半分まで減少したところでボスの周りに二人の天使が現れた。

それらはふわふわと浮かび、こっちに向かって矢を放ってくる。

 

「油断大敵だろうな。あれを受けるなんて。だから躱す!」

 

射る・躱す・射る・躱す・射る・・・・・。

 

光の王から離れず二本の矢を躱し続けてたらついに、光の王の体を形作っていた光が霧散してキラキラと消えていく。それらは上から俺に降り注ぎ、それぞれにスキル取得の通知が届いた。

 

「よしっ。意外と手応えの無かったボスだったな、えっとスキルはなんだ?」

 

俺はスキルを確認した。

 

 

【天王の玉座】

 

スキル発動後、スキル解除または戦闘不能になるまで玉座に座っているものへのダメージを20%軽減。毎秒HPを2%回復する。

 

半径三十メートル以内にいる自分を含めた存在の【系統:悪】のスキルを使用不可にする。

 

 

 

「悪・・・? 【毒竜】とか【悪食】みたいなのが使えなくなるのか? 【溶岩魔人】も? うわぁー・・・・・【天王の玉座】」

 

それでも得たスキルの把握するべくスキル名を言うと俺の真後ろで光が収束し、あの大きな玉座と同じ意匠の、俺に合ったサイズまで小さくなった玉座が出現した。そこに座ると地面を這うように白い輝きが伸びていく。また、ほんの僅かではあるものの、体の表面を覆うように光の膜ができていた。

 

俺の背中の翼は光の王がそうだったように、するりと背もたれを通り抜けて後方で輝いている。

 

「おおー・・・・・いい・・・・・綺麗だ。でも、あ~・・・主要に使っているスキルが本当に使えなくなるのか」

 

にしても好き好んで封印されるようなスキルばかりを手に入れた訳ではないんだがなぁ・・・・・。

 

そんなスキル溢れる中、ただ純粋に綺麗なエフェクトと見た目を持ったこの玉座は、俺の中で使いたいスキルの上位に入ったのである。

 

 

それが攻撃性能を落とすとしてもだ。

 

 

 

 

【新エリアに集まれ!】新エリアで続々と新発見したものを語ろうスレ21【白銀さんに続け】

 

 

 

555:大言氏

 

常闇の町にモンスターが出るフィールドと雲の上に行けるギミックにフィールド。今日だけで白銀さんはどれだけ発掘した? サスシロ!

 

 

556:チョイス

 

玉座に座った光の王様っぽいボスの攻略方も配信してくれて俺達も戦いやすくなった。

 

 

557:ぽろろん

 

それに便乗しようとするプレイヤーで雲のエリアは満員電車に乗り込みに行く感じに人が多すぎる!

 

 

558:サタジリウス

 

空飛ぶアイテムを使って上に避難するプレイヤーも多くいるけどな。おいっ、それは俺の星だぞ!

 

 

559:デデーン

 

争奪戦も含まれてるから満員電車というよりバーゲンセールに集まるおばちゃん集団化してるし。

 

 

560:満〇

 

こっちはこっちで白鬼を倒そうと躍起になってるプレイヤーで溢れてるんだよなぁ・・・・・。

 

 

561:メイドは奥様

 

皆の状況を掲示板で分かってしまうぐらい凄い盛り上がりのようだね。俺はドールちゃんの強化で機械の町にいるけどさ。

 

 

562:最終兵器鬼嫁

 

相変わらず金を貢いでいるのか。

 

 

562:メイドは奥様

 

貢ぐ=着せ替えも出来るし強化も出来る。そうしていくと徐々に言動と反応、表情が変化していくドールちゃんを見れるのが堪らないんだ! 今じゃ俺の為にホームで「お帰りなさいマスター」と言ってくれるんだぜ? リアルで溜まった疲れが吹っ飛ぶわ!

 

 

563:最終兵器鬼嫁

 

そ、そうか・・・・・ゲームで癒されてるんだな。

 

 

564:デデーン

 

おし、星を100個集め終わった! 白銀さんの居る次のエリアへ行ける!

 

 

565:満〇

 

おー、やっとか。配信動画じゃあいま白銀さんはお前達がいる密集地帯に戻ろうとしているがな。

 

 

566:サタジリウス

 

え、こっちに? 町に戻ろうとしているのか。道を空けたいけど出来ないほど混雑してるからな。

 

 

567:チョイス

 

自分で何とか帰ってもらうしかないよな。すまん白銀さん!

 

 

568:大言氏

 

フレンドリーファイアに当たらないように気を付けて!

 

 

569:ぽろろん

 

当たってもノーダメージだよな絶対。

 

 

570:満〇

 

同じプレイヤーだぞ。ダメージは通るって。・・・・・多分。

 

 

571:チョイス

 

不安になるなよ! 気持ちはわかるけども!

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