シアトルアイショット   作:CanI_01

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2075年7月8日 UCASシアトル スノホミッシュ サークルファーム

相変わらずサークルファームに滞在中の4人。

情報操作を担うダニーが1番忙しいかと言うとそうでもない。

偽装した制服や装備の調達に走り回るマラキとトロ吉。

そのための交渉で連絡をしまくるエルとみなが忙しそうにしている。

そんな中1通のメールがダニーに届く。

差出人はドラゴンのウルビアだ。

彼女からダニー直接連絡が来るのは珍しい。

内容も不可解なものだ。

 

「今龍脈絡みのランに絡んでいると聞いているが、相違ないか?」

 

質問の意図が見えずエルに相談するダニー。

 

「何とも言えないけど、後で嘘だとばれた方が面倒だから正直返事しても良いわよ。」

 

そんなものかとダニーはウルビアに肯定の返事を返す。

 

「ならば助力を送るゆえ、どこにおるのだ?」

 

龍脈と言うぐらいだからドラゴンも関係があるのだろう、そんな軽い気持ちで謝意と所在を告げるダニー。

そして家主のケイトにウルビアから使者が来るかもしれない旨を告げる。

ケイトも軽く了承する。

その後作業をしているとダニー宛の来客があり、応接へと通しているとケイトが告げる。わずかにその表情が引き攣っている。

彼女の微笑の仮面が崩れるのは大変珍しい。

 

それを受けダニーとエルが応対に向かう。

 

薔薇香る応接間には1人のエルフ男性が窓から庭を眺めている。

その男は赤のレザージャケットに、黒のデニム、そして黒のブーツを身につけている。ダニーの目から見ると良く使い込まれた天然素材の衣服だ。

これだけ見ると富裕な紳士と言えるのだが減点ポイントもある。

腰には古風なレイピアを差し、髪の毛は鮮烈な朱に染め上げた上無作為に編んだとしか思えないようにいくつもの三編みが様々な方向に飛び出している。

 

変な男がいる。

それがダニーの第一印象だ。

この出で立ちからケイトの顔が引き攣るのも仕方がないとダニーは理解を深める。

一方エルは違う理由で顔を引き攣らせている。

男の身に付ける衣服全てに魔法が掛けられているのだ。アストラルで見るまでもなく感じられる圧倒的な存在感。それは魔法使いの本能と言っても良いのかもしれない。

エルは相手がドラゴンである可能性すら視野にいれて対応しようと心の中で決意する。

ダニーは違和感を押し殺し挨拶をする。

 

「お待たせいたしました。」

 

部屋に入り声を掛けると男性が優雅な仕草で振り向く。

その顔は道化師のように白塗りに目の周りに赤でダイヤが描かれた状態であった。

 

ダニーの中で、彼はウルビアが使いに使ったハロウィーナースのメンバーと言うことで評価が確定した。

反面エルは道化師のメイクをしたエルフについての都市伝説を耳にしたことがあり背筋に冷たいものが流れる。

 

その都市伝説はこんな荒唐無稽なものだ。

 

古代より生き続けるエルフ。

グレートドラゴン、ダンケルザーンの友人にして、遺産によりエクスカリバーと獅子心王の鎧を贈られた騎士。

異世界からの侵略者より地球を護り続ける守護者。

DMIR総裁エーラーンと同格の魔法の達人。

ドラコ財団の実働部隊アセットインクのCEOライアン・マーキュリーの師匠。

 

「いや、良い薔薇を堪能させてもらっていた。故郷を思い出しますよ。失礼。私はハーレクイン。光を帯びし者であり、嘆きの尖塔の最後の騎士、そしてろくでなし共を葬り去る者。」

 

こいつ頭おかしいんじゃないの?という思考を完全に覆い隠し朗らかな笑みを浮かべるダニー。

反面都市伝説の目前への顕現に冷や汗が止まらないエル。

 

「改めて、あたしはダニー・ウエスト。彼女はエル。ウルビアからは、あたし達の手助けをしてもらえると聞いていますが、ハロウィーナース全体としてご助力いただけると言うことですか?」

 

眉を顰めるエル。

そして爆笑するハーレクイン。

 

「いやはや、あんなカボチャ頭共と同類と見做されるとは! 確かにフェイスペイントは似ているな。」

 

「申し訳ありません。ハロウィーナースとは無関係でしたか。」

 

「ああ。俺個人として助力をさせてもらう。ウルビアも仲介を頼んだだけで無関係だ。」

 

良くわからない顔のダニー。

ダニーが問いかける前にエルが口を開く。

 

「高名な騎士にして、優秀な魔法使いであるハーレクイン様ですね?」

 

苦笑するハーレクイン。

 

「高名だとか優秀ってのは解釈にもよるが、かなり自信はあるね。」

 

「ご助力感謝いたします。」

 

本当にこいつがと言う内心を押し隠すダニー。

 

「ただ、今回手を貸すのは限定的な形だ。」

 

疑問顔の2人の女性。

 

「と、言いますと?」

 

「今回ブラックロッジにドラゴンが1人協力している。そのドラゴンは俺が抑える。」

 

ドラゴン、恐らく地球上最強の生物だ。

このエルフはそれを単身で抑えると言っている。

正気を疑うのが正常な反応だ。

 

「ドラゴンを何とかできると?」

 

肩をすくめるハーレクイン。

 

「ま、抑えるぐらいはな。倒せるとは保証できないがね。」

 

十分に誇大妄想を疑うレベルの発言だ。

 

ハーレクインの都市伝説が半分でも真実でもあれば信頼しても良いのだろう。

仮にこの道化師がただの騙りでもリスクは変わらない。

そんな思考がエルの頭の中で踊る。

ダニーは思考停止をしてただ微笑んでいる。

 

「十分です。ミスターハーレクイン。ご助力感謝いたします。」

 

ハーレクインは好戦的な笑みを浮かべ連絡先を2人に送る。

 

「準備ができたら連絡をくれ。俺の方は俺の方で準備を進めておく。」

 

「承りました。よろしくお願いいたします。」

 

そう言うとハーレクインは2人にキチリとティルタンジェル風の礼を取り立ち去っていった。

残された2人の女性。

やっと我に帰ったダニーはエルに問う。

 

「ランナーしてると、ああいった人もよくいるの?」

 

エルは肩をすくめる。

 

「まあ、珍しくはないわね。ただ彼は有名人なのよ、影の世界で。」

 

ダニーはその言葉に小首を傾げる。

 

「まあ、よくわかんないけど、影の世界では日常なら良いわ。」

 

エルは再び肩をすくめるとダニーと連れ立ってやりかけの仕事をしに部屋を出ていった。

何であれ、やらねばならぬことは変わらないのだ。

 




ハーレクイン/HARLEQUIN
『Street_Legends_Supplemental』より。
自己紹介の口上は『Shadowrun Return』を参照させてもらいました。
ちなみにダニーのハーレクインへの反応は上記ゲームの動画配信をされていたしろこり様の反応を参考にさせていただきました。

しろこり様の『Shadowrun Return』動画
https://www.youtube.com/playlist?list=PLHYPNQG_eSYezVQVir3Iu5qKYU2qyzmXV

ダンケルザーン魔法研究所(DMIR)/Dunkelzahn institute of magical research
『Street_Grimoire』より。
ダンケルザーンの遺産により設立された魔法研究所。

エーラーン/Ehran
『Street_Grimoire』より。
元のティルタンジェルのプリンスの1人。

ハーレクインとエーラーンについては以下の翻訳短編に出てきます。
https://syosetu.org/novel/241428/

ダンケルザーン/Dunkelzahn
『Portrait of the Great Dragon ~ダンケルザーンの生涯~』より。
https://syosetu.org/novel/278749/

ライアン・マーキュリー
『Portrait of the Great Dragon ~ダンケルザーンの生涯~』より。
https://syosetu.org/novel/278749/4.html

光を帯びし者/LIGHTBEARER
アースドーンというゲームでホラー討伐を目的とした秘密結社。

嘆きの尖塔の最後の騎士/the Last Knight of the Crying Spire
小説『Beyond of the Pale』より。
ハーレクインの二つ名。
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