転生したら自己中キャベツ刑事の親族だった! 作:レタス野郎
多分、次回は今回よりは短くなりますので。
ペルソナ覚醒です!
鴨志田のクソ野郎にボコられた俺は、半日もかけて目を覚ました。様子を見に来ていた看護婦さんに何時なのかを聴くと、ちょうど昼の12時くらいであった。その後、私服の竜司が来たので、鴨志田にボコられた後のことを聞くと、申し訳なそうに話してくれた。
簡潔に言えば、あの後俺を蹴り続ける鴨志田を止めるため、竜司は殴りかかったらしい。何やってんだよ。って俺が言えた義理ではないけど。そして、それを待っていたと言わんばかりに鴨志田が騒ぎ立て、周りの教師を呼び、竜司と俺が暴力を振るった。そう言って、暴力事件を起こした生徒として、親と学校に広められた所為で、陸上部は廃部となった。早くね?殴ったの昨日なのに。
ついでに、俺の怪我は全治2週間だそうだ。身体のあちこちが青く腫れてもいるとは言え、後もつかず、それほど時間がかからないみたいで良かった、と思うべきだろう。
「本当にすまねぇ!俺の代わりに英治が鴨志田をぶん殴ってまで、俺を止めてくれたのに……」
「気にするな」
「ダチが殴られてるのを俺はやっぱり黙って見てるなんて出来ねぇ。どうしても、止められなかった」
「お前はそう言う奴だもんな。損得なしに行動する良いやつだよ」
俺が勝手に馬鹿やって、勝手に殴られただけなのに。
なのにコイツは、そんな馬鹿な俺を見捨てないで、手を出す程に怒ってくれたことに、嬉しい気持ちさえあった。はぁーあドンドン毒されていくなぁー俺も。
「俺の為に怒ってくれてありがとな、竜司」
「おうよ!いいってことだぜ!こっちも本当にありがとな、英治」
俺からの礼に対して、一瞬ポカンとしていたがやがていつものようにニカッと眩しいくらいの笑みを浮かべる竜司を見て、やっぱりコイツはこういうバカみたいに笑っている顔がよく似合うと俺は密かに思うのであった。
「多分、鴨志田はこの事を学校中に広めるぜ。暴力事件を起こした2人、ってな」
「だろうな、あのクソアゴエロゴリラならやりかねるな」
「あー俺らは明日から不良扱い。お前なんて、あんなに殴られたってのに、ふざけんじゃねぇっての!」
「お前の方は何とも無いのか?」
「あぁ、俺は別に何ともない。でも、鴨志田は元オリンピック金メダリストで、そんでもって自分のバレー部を全国にまで行かせてる。教師の連中は、あいつが何言っても首を縦に振るし、お前の怪我のことも、事故だとかなんだとかで丸め込まれちまうのが、関の山だ」
「だろうな、アイツにとって学校は自分の城みたいなモノに見えているんだろうな」
「くそっ!」
悔しそうに、竜司は拳を強く握りしめて行く。
ある程度覚えているゲーム記憶の中では、鴨志田も学内で相当な悪事を働いていたが、周りから咎められるようなことは一切無かった。
覚悟してはいたためなのか、これといった悔しさや怒りは無かった。その後、俺と竜司は互いの親に事件のことをキチンと話すことを約束した。当然だ、先に殴った俺はともかく、竜司はこんな俺を助ける為に拳を振るったんだ。親に何か言われる筋合いはない。
その後、一通り談笑した後、竜司は帰っていった。その後、母親が来たが何故かあまり心配した様子はなかった。訳を聞いても、『アンタが訳もなく人を殴るような馬鹿じゃないことくらい誰より分かってる。どうせ、相手が悪いだろうし』とのことだった。信じてくれるのはありがたいが、もう少し心配ぐらいして欲しいものだ。複雑すぎる。まぁ、竜司の脚が潰れなかった上に陸上部の部員達との溝はそこまで深くは無さそうで安心した。
その後、8日間の入院生活後退院した。後の傷は湿布や傷薬を塗れば治るそうだ。入院生活では、竜司の見舞いが毎日有ったり、母の新作の小説の感想を求められたりも定期的にあったため退屈もしなかった。そして、学校へ戻るとどうやら鴨志田を殴ったこと以外にも、透さんの事件のこともバッチリ広まっているようだ。このどちらも竜司から聞いていたので別に大した興味もない。まぁ、俺が殺人犯の親族であるってことを知っても竜司の態度が変わらなかったのは少々驚いたりはした。理由を聞いても、『ソイツはソイツで、お前はお前だ』とのことだった。おかげで、病室にいるにもかかわらず大笑いし、看護婦さんにどやされてしまったのは余談だ。ホント、コイツは俺を笑わせることに関しては天才的だわ。
そんなことを振り返りながら自販機で飲み物を購入していると、
「おやおや誰かと思えば、俺を殴った殺人犯の親族くんじゃないか」
「おやおや誰かと思えば、鴨志田センセじゃないですか。手は大丈夫ですか、何発もナニカにつぶけたんじゃないですか?」
呆れとあの人譲りの嘲笑を送ってやると、さっきまでのニヤニヤ顔は一変して屈辱感で顔を顰めていく。おぅおぅいいですなぁ〜そのカオ。よく似合ってますよ。
「貴様…調子に乗るなよ。俺の気分次第でお前達はいつでも消せるんだからな。それに、そんな心配をするよりも自分の心配をしたらどうだ?アイツ以上に、お前の居場所はないんだからな」
実際に今回の事件から察するに、鴨志田にはそれくらいの権力があるのかもしれない。というか、よく透さんのことを調べたな。その手腕に拍手を送りたいくらいだ。しかし、流石に退学は困るので、暫くの間はできるだけ大人しくしておいた方がいいのかもしれない。
そんなことを考えている間に、フン、と臭い鼻息を出した後、気分を悪くした鴨志田が去っていった。マジで臭い。生徒を病室送りにするんじゃなくて、自分が病室に行け。
「おっ、英治メシ食わないか?って、鴨志田の野郎じゃねぇか」
鴨志田を睨みつける竜司と共に屋上で昼食を取りながら、先ほどのことを話すと、
「鴨志田の野郎はプライドを傷つけられるとすぐキレるから、けっ!オツムの小さい野郎だぜ」
「竜司、そういう時はオツムじゃない。それを言うなら、『器の小さい野郎』だ」
色々残念な悪口を呆れ顔でツッコミを入れてしまう。
「こ、こまけぇーことはいいだよ。それより、色々とお前は俺以上に目をつけられているから大人しくしておけよ。って、俺が言えたギリじゃねぇーけどな」
そんな竜司と昼食を食べてた後、鴨志田に会うことなく帰宅した。
その後の数ヶ月も特に何事もなく、たぶん普通の高校生活の1年間が終わった。時間が経つ事に噂されることも減ったが、今も普通ひ避けられてはいるが、普通に学校生活を送れている。また、透さんの事件のことで、嫌がらせの五つや六つはされると思っていたが一度もされなかったことには、不気味に感じたりもした。これに関しては、竜司が周りの目など気にせず話しかけてくれたおかげだと思うことにした。
やがて月日は流れ4月になり、学校が始まり、2度目になる入学式を迎えた。
とは言っても、大した変化も無く、2年生の春を迎えるのだろうと、思っていた。
だが、運のクソ悪いことに、2年になってから竜司とは別のクラスになってしまった。確率的には普通のことだが、俺が孤立しやすいように、鴨志田が裏で手を回しでもしたのだろう。いや、あのクソ野郎なら絶対そうしただろう。そんな待遇の俺と違い、竜司は元陸上部とは同じクラスであったため、ある程度は孤立せずに済んでいる。本当によかったと思っている。まぁ、陸上部は俺を助ける為に鴨志田へ殴りかかった竜司を見ているので、わだかまりはない。そのため、ちゃっかりジムでも一緒にトレーニングをしている。
完全なるボッチである俺を竜司は気を使って、休み時間には出来るだけ俺のクラスに来て話をしている。ありがたいが、申し訳ない。
鴨志田と噂がある高巻杏と同じクラスになってしまったが、厄介者扱いの俺には特に関わって来ることも無く、これといった問題も起きていないが、あいも変わらず運がクソな所為で席は割と近くになってしまった。
そして、このクラスは、主人公のジョーカーとも同じクラスだと言うことにちょっと絶望した。
ホント学校も俺の運がクソだな!!
そんな感じのいつもと変わらない日々を送っていく中で、彼に転機が訪れた。
「おい、あれ高巻じゃねーか!それに車に乗ってるのは…鴨志田ッ!」
「あいも変わらず、煩悩のクソ塊だな」
「んなこと言ってないで行くぞ!高巻なんかされてるかもしんねぇ!」
陸上部としてトレーニングを欠かしていない竜司の後をなんとか俺もついて行く。本来なら、元陸上部の竜司にちょっと遅れはしたが、ついて行くのはキツすぎるのだが、あの事件から俺もジムでトレーニングを始めたおかげでかなり筋肉がついた。そのおかげで、息も切らずにすんだ。
「待て!」
そんな竜司の叫びが聞こえないのか、或いは聞こえないフリをしているのか。そのまま鴨志田の車に高巻が乗り込み、車が道路を走っていった。たぶんコレは後者の方だと思う。ミラー越しに、鴨志田の顔には笑みが浮かんでいたように見えたからだ。
「クソ…あの変態教師が」
諦めた竜司が立ち止まり、呟く。
「変態教師?」
「(とうとう会ってしまったか…なるようになれだ)」
そこでようやく、近くにいたペルソナ5の主人公であるジョーカーがそれを聞いて思わず呟いた。そんな呟きを聞きながら俺は、無駄に考えるのをやめていく。
「ん?」
その呟きを聞いて、竜司が主人公の方を向く。
「なんだよ。鴨志田にチクる気か?」
「カモシダ?」
少し苛立っている竜司がやや喧嘩腰で主人公に話しかけてしまう。鴨志田のことを知らない主人公は、思わずその名前を聞き返す。とりあえずパレスのことは置いておくとして。話が終わらなさそうなので、話に入る。
「竜司、そいつは転校生だ。鴨志田のことも、俺やお前のことも知らないよ。一昨日にホームルームでも言われてたと思う…たぶん」
そういう俺も、主人公と同じクラスになったショックで転校してくる日を聞きそびれるという失態をしでかし、今の今まで今日が始まりの日だと覚えていなかった。ぶっちゃけ、もうだいぶ原作知識が薄れてはいるが、部屋に厳重に保管してしてある『転生ノート』にある程度の今後のことは書いてあるためだいたいわかる。とは言っても、何日にどのような事件があるのかはわからなかった。あくまで、その事件の次の事件のターゲットやその関係者くらいの名前などが書いてあるだけだ。
「多分ってなんだよ。そんなこと言われてたっけ?全然覚えてねーよ。」
俺の言動に呆れている竜司が言う。
まぁそんな事だろうとは思ったよ。今でも、課題見せてぇー!って言いに来るからな、お前。
「まぁいいか。大した雨でもねーし、遅刻すんぞ。お前もさっさと行こうぜ」
そう言って学校へと歩き出す竜司に、
「ちょ、まっ……ッ!?」
そう言いかけた時に鋭い頭痛がした。
「うっ!」
「くっ!?」
竜司が何故か呻いた。
頭痛に顔を歪めつつも、俺はチラリと周りを見ると、竜司や主人公も、同じような頭痛を感じている。
まさか、俺もなのか!?
あまりの非現実に戸惑っていると、
ーーそれが運命ってヤツじゃないの?
また、あの人の声が聞こえた。
ーーさぁ、君はこれからどうするんだい?
ーーまた、抗うかい?
ーーそれとも逃げるかい?
ーーまぁ、
どう言うことだ!?
ーーそれは君自身が考えることだ
ーー今の僕には関係ないから精々クソガキなりに足掻きなよ
おい!待て!!説明しろ!
その後、何度も問いかけるが答えは返ってこず、竜司と主人公の声でようやく現実に引き戻された英治は仕方なく2人の後を追うことにする。
そして、俺は細道を歩きながら考える。
このまま進めば、いや既にここは認知世界かも知れないが、間違いなくこのまま行けば鴨志田のパレスに付いてしまう。だが、それがなければ、主人公はモルガナと出逢わない上に、彼のペルソナが目覚めない。それは困る。
なら、無力な俺がやるべきことは限られる。
1つ、主人公にペルソナを目覚めさせる。
2つ、彼とモルガナを出逢わせる。
3つ、全員が重症をせず帰還する。
の3つになる。意外と多い上に無茶苦茶だな、おい!
そんなことを考えていると、
「なッ!?」
パレスを見た竜司が、驚いて声を上げる。
そして来た道を振り返り、
「道…間違えてねーよな。」
「やっぱ、合ってるよな。」
来た道を確認するように呟いた。
如何やら、始まってしまったようだな。さて、どうやって全員無事に帰還するかだな。と言うか帰り方は知らん!
鴨志田のパレスへと入っていく。
見知った高校ではなく煌びやかな装飾が施され、シャンデリアが吊るされた、いかにも、という感じの内装になっていた。正面に、趣味の悪すぎる鴨志田の絵が見える。1日でいつも通っている高校が城に変わっていたのだから、竜司はあまりの状況に困惑の反応である。
「ここが学校?」
そんな中で主人公が竜司と俺に尋ねた。
「そのはずだぜ。門に『秀尽』って書いてあったしよ」
「1年以上も同じ道を通って登校しているんだ。今更間違えるとは考えにくい。だが、学校にあんな趣味の悪い絵はない」
竜司に続いて、俺も言う。我ながら白々しいと思ってしまった。だが、ここで真実を伝えるのは得策ではない。そもそも信じてもらえるかどうかが怪しいし、なぜそんなことを知っているのかを説明出来ない。自分たちの世界がゲームの世界だから、なんて高校生にもなって言ってしまえば、幾ら友達の竜司でも頭の病気を疑われる。その後も竜司はここが秀尽であることを確認するように、俺たちと問答する。そんなことをしていると、部屋から鎧を着て、剣と盾を持った、騎士のような出で立ちの謎の存在……おそらくはシャドウが出てきた。
「ビビらせんなよ…」
どうやら何かの催しだと考えた竜司は、ため息をつきながら言った。
「誰だお前、生徒なのか?」
そう言いながら、竜司は動く鎧へと近づく。
「つーか、カッコすげーな、この鎧、ホンモンか?」
竜司の問いかけに、鎧のシャドウが答えることは無い。
「黙ってねぇで何とか言えよ」
竜司が再度言いかけた時、もう1人の同じ格好をした鎧が現れ、こちらに近づいてくる。
「お、おい、何だよ。」
とても催し物とは思えない雰囲気に思わず竜司もたじろぐ。
そんな雰囲気の中で俺以上に喋っていない主人公が、
「ドッキリだ。」
状況を理解出来ていないのか、または、ふざけているのかは分からないが、かなり天然が入った台詞を、主人公が言った。いや、マジでナニ言ってんの?
「そんな空気か、これ?」
「そんなわけないだろ。そもそも『ドッキリ大成功!』なんてプラカードを持った仕掛け人が出てくるような空気ではないぞ」
思わず竜司と共に俺もツッコミを入れてしまった。
「だよな、とにかくコイツらやべぇ。逃げるぞ!」
「分かった」
「その方がいい」
そう言って主人公と竜司が入口の方へ駆け出すのだが、鎧型シャドウがぞろぞろと俺たちを取り囲み、逃げさせまいとする。
「くそ、何なんだよこいつら!」
竜司が叫ぶ中で、どう言う訳か危機的な状況とは裏腹に、俺は安堵していた。原作知識の記憶が正しければ、この後は主人公と竜司が捕らえられ、牢屋に連れていかれる。そして、彼はペルソナ能力に目覚める。
そんな俺の後頭部に、勢いよくシャドウの盾がぶつけられた。
「がぁッ!?」
鈍い痛みに声が漏れ、そのまま床に倒れる。
「英治!?」
「大丈夫か!?」
竜司と主人公の叫ぶ声が聞こえる。ホントいい奴らだな。
自分がいきなり殴られるとは思っていなかったが、竜司が殴られなくてよかった、とさえ思っている。まぁ、たった1人の友達だからな。
そんなことを考えている最中も、竜司と主人公は鎧たちに取り押さえられ、運ばれていく。ひとまず2人がそこまで怪我をしていなくて安心した俺は、そのまま意識を手放してしまった。
「おい!起きろ、このゴミが!」
罵る声と、顔に感じる痛みで目が覚めた。
段々と目が開けると目の前にいたのは、寝起きにはキツすぎる鴨志田だった。それもハートが1面に描かれた趣味の悪いマントに、頭には安っぽい王冠付きと来た。キモいな、ゲームで知っているとしても、リアルは。あぁ、吐きそう。
コレは間違いなく、鴨志田のシャドウだ。
チラリと周りを見ると、どうやら牢屋のようだが、竜司も主人公も見当たらない。代わりに鴨志田シャドウと、俺を立たせている鎧型のシャドウが2体。詰んだな、コレ。
「どうした?あのクズどものことでも気にしているのか?」
「安心しろ。あいつらは今頃、隣の牢屋で処刑を言い渡されている所だ」
やべ、頼むからペルソナ出しておいてくれよ、主人公。
「不法侵入者は即刻処刑。それが、この俺様の城でのルールだ。」
相変わらずの物言いに思わずフッ、と失笑の笑いがこぼれてしまう。
それを面白くないと思ったのか、鴨志田が顔を顰めて叫ぶ。
「貴様…俺様はな。貴様のそういう所が癇に障るんだよ!」
ったく、また殴んのかよ。クソゴリラが。
「俺様に逆らうゴミ虫など、絶望し、恐怖し、下を向いて生きていればいいのだ!」
「なのに貴様と来たら、いつもいつも、俺様の邪魔をする!」
「あの坂本を助けやがって!アイツの居場所を壊してやろうとしたのに、貴様のせいでアイツは今も陸上部の奴らとのうのうと生きてやがる!」
はぁ、教師とは思えないセリフだな。
あの時と違って、ここは鴨志田のパレスだ。
周りの目など気にする必要も無いようで、顔も身体もお構い無しに殴打する。
凄まじい激痛に加えて、口の中に滲む血、青くなっていく肌が見えるが、諦めなのか、何処か英治は余裕のある態度のままである。
終始そんな態度を取ったままだからなのか、鴨志田の怒りは更にエスカレートして行く。鴨志田は鎧型シャドウから取った剣を構える。
「しばらくいたぶってやろうと思ったが、もういい。この場で貴様の死刑を執行する!せいぜい、死んで俺様に逆らったことを償うんだな!!」
「けっ、償いのつの字も知らない生殖ゴリラがよく言えるよ」
「貴様ぁ!!」
鴨志田が剣を振り上げた所で、牢屋の外から竜司と主人公が見える。
「おい、英治!!」
「見つけた!」
竜司と主人公が叫ぶ。そんな彼らをよく見ると主人公の方は割とカッコいい怪盗服を着ているため無事にペルソナに目覚めたようだ。これでもう安心だ。
「なに!?貴様ら、どうやってここに無能共め……。ふん、まぁいい。貴様らはこの後、俺が直々に処刑してやる。今は指をくわえて見ていろ!」
鴨志田が、勝ち誇るように叫ぶ。
「ふざけんなよ!頼む、お前!あいつを何とかしてくれ!友達なんだ!」
「あぁ」
主人公に竜司が叫ぶが、ご丁寧に牢屋には鍵がかかっているため開かない。2人には悪いが、マジで助からなさそうだ。
全く、俺の人生も散々だった。
透さんを止めようとして足掻くも失敗。
その所為で、両親はたいへんな目に遭ってしまった。
結局、このまま負け犬のまま終わるんだな。まぁ、不思議とそれほど悪い人生でもなかったけど、透さんとの手紙のやり取り、竜司と友達になれたり、父と母には親孝行できないのは申し訳ないな。
そんな様々なことを考えられながら、諦めようとしていると、
『それで終わりかい?』
またあの人の声がより鮮明に聞こえてくる。
『僕の時と違って、友達のため、世界のため御大層な理由を並べて、何もしようとせず、死ぬとか、今の君って生きてるって言えるの?』
うるさい、自己中ヤロウ。
『本当に君はこれで満足かい?』
『新しい世界で、何もできず、何を知ることもなく、ただ死んでいく』
うるさいな!なら、どうしろって言うんだよ!!
俺に何が出来る。
アンタの時もやれることならもうやった!
やり切ったんだよ!!
『違うさ。君は諦めたんだよ。本当の意味で、この世界の住人として生きることも、現実に足掻くことも、伸ばせば手に出来る力さえも』
何が言いたいんだよ!!
無力な俺に何をしろってんだよ!!
そこまで言うと今度は、
『お前が本当に求めているのは、なんのしがらみもない自由』
今度は
『お前が成したいこと、お前が思い描く未来を創り出すことができる自由』
『お前が勝手に望む身勝手な
あぁ、そうだよ……そうですよ!
俺が勝手に望むハッピーエンドを目指していましたよ!!
醜いほどに自分勝手に身勝手な未来を勝ち取りたいんだよ、
「
叫ぶオレに対して、
『そうソレこそ
嬉しげなオレとあの人の二つの声と共にと、頭に激痛が走る。
「がぁぁ……ッ!?」
「はぁ…はぁ……ッ!」
思わず膝を付き、頭を抑える。
「がぁぁぁぁぁぁ!!」
頭の痛みが更に強くなり、思わず叫ぶ。
『カノ者のカケラを継承せよ!』
痛みが収まり、代わりにオレの顔に黒い仮面が張り付く。
仮面を剥がすと、当然血飛沫が舞い、辺りに撒き散らされるが、それらが床に模様を描くよりも前に、爆炎のように噴き出す青と赤炎が英治の全身を覆い尽くしていく。
仄暗い闇が差す牢屋を煌々と照らす炎。
やがてそれが晴れると、制服とは似ても付かない装束を身に纏った英治が姿を現した。
彼の背後に浮かび上がる
『クククク、まさか奴のカケラを継承するとは驚愕だぞ、契約者よ。我は、嘗て常闇から出でし、禍ツ神。だが、今宵からは我は偽りの現し世を荒せし禍ツ神……』
彼の中にあった“虚無のカケラ”が、彼の中に眠る反逆の意志が混じり合ったことで、嘗ての姿とは逸脱する姿へと進化した紅蓮の道化師は、
新たな主と共に、漆黒の賊へと変貌する。