神様のごほうびとかで、私のパソコンに住むことになったお母さん。
さっきまでは、初めての親娘の会話をチャットで楽しんでいたんだけど……
「う~」
『む~』
今は何故か、画面を挟んでにらみ合いをしている。
『入れちゃだめですからね』
『入れちゃだめなんて、そんなウブじゃないんだからさー』
『そ、そういう風にとらないでくださいっ! とにかく、だめなものはだめですからねっ!』
『せっかく娘が大人の階段を昇り始めてるっていうのに』
私はそう言いながら、手にしているものをお母さんに見せつけた。
『そんな卑猥なものを見せつけないでください!』
『もー、初々しいんだから』
手にしているのは、こないだ中古で買ったエロゲのパッケージ。表側は全然えっちくないのに、お母さんってばエクスプローラーの後ろから顔を赤くして見ている。
「まあいいや、CDロムだし、中身が消えることはないもんねー」
『きゃぁぁぁぁぁぁ!』
トレイを開いてCDをのっけて、んでもってクローズと。
がしょーん……がしょーん、がちゃんっ
「……ん?」
閉じたトレイが勝手に開いたけど……っておーい!
『はあっ、はあっ』
なに右クリックメニューの『取り出し』を押してるのさっ!
『ぜーったい、ダメですっ!』
『うー、けちーっ!』
こうなったら、ちゃんと入るまでやってやる!
がしょんがしょんがちゃっ、がしょんがしょんがちゃっ、がしょんがしょんがちゃっ、がしょんがしょんがちゃっ、がしょんがしょんがちゃっ、がしょんがしょんがちゃっ、がしょんがしょんっ……
「ぜえっ、ぜえっ」
『はあっ、はあっ』
うう、もう何十回目だろ……このままじゃドライブも壊れるよ……えーいっ、これが最後の勝負!
お母さんが肩で息をしているスキに、もう一度トレイをクローズ!
『ううっ、もー……いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!』
そう叫んで、お母さんは思いっきり『取り出し』に正拳突きをして、
ぎゅぎゅぎゅぎゅぎゅがしょんっ! ……ごいんっ!!
「ぷぎゃっ!」
私のおでこに……CDが……CDが……
『あっ、だ……大丈夫?』
さ、さすがは私のお母さん……見事な……突き……で……
『わーっ! こなたーっ!?』
がっくり。
――――――――――――――――――――――――――
『……お母さん、どうしたの? その格好』
『うーん、お掃除をしようかなーって思って』
いや、そうは言うけどさ。カーキ色の探検ルックでお掃除ってどこの国のお掃除衣装ですか。
『そう君のパソコン、また何かいっぱい入ってたみたいだから』
『それで、もしかして私のパソコンから侵入して消そうってこと?』
『そういうこと。ちなみに、ここに来て最初にしたのもそれだったのよ』
だから、お父さんはあの時絶叫したのか……ご飯を作り忘れるぐらいショックみたいだったし。
『でもまあ、お父さんはまだお母さんがここにいるってこと知らないんだから、それくらいは許してあげてもいーんじゃ……』
『うーん、確かにそうかもしれないけど……ちょっと、悔しいかなって思って』
おー、これが妻の夫への愛情と嫉妬ってやつですか。なんてふざけて言ってるけど、そりゃお母さんからしたら寂しいよね、ほかの女の子のこと見てるだなんて。
『それと、こなたをこんなにした、ちょっとしたおしおき』
『……それは勘弁してあげてー。とゆーかそれ私の責任でもあるし』
お父さんごめんなさい、完全にとばっちりっぽいです。だけど私には止められません。
『んで、どうやってお父さんのパソコンに? 確かにネットワークにはつながってるけど、パスワードかかってるはずだし……』
『ああ、それなら大丈夫』
そう言いながらお母さんは次々とフォルダを開いていって『マイ ネットワーク』にたどりついて、お父さんのパソコンのアイコンへ。そしたら案の定パスワードが要求されたけど……
『こうこう、こうで……えいっ』
うわ、すんなりとアクセスできましたよ?!
『そう君ってば、私の誕生日をパスワードにしてるんだもの。すぐわかっちゃった』
お父さんってば、どんだけお母さん思いなのさ。自分のパスにも使うだなんて……今はその愛情が裏目ですよー。
『それじゃ、行ってきまーす』
『へ?』
お母さんを手を振ると、エクスプローラーの中へ……って、えっ? なにすんの?
――ちゃちゃちゃちゃーちゃらっちゃっちゃー♪
って、なんかメディアプレイヤーが勝手に立ち上がったよ?! とゆーか嘉●達夫の声?!
『お、お母さん、そのネタはさすがの私でもわからないって!』
『そう? そう君とよく一緒に見ていたのだけど……』
お父さん、もしかして『かなたとの想い出だから』とか言って買った川口浩探検隊のDVDデスカ? とゆーかソウデスネ?
『じゃあ、この格好をしたんだから、この曲でも』
――ちゃーちゃっちゃららっちゃー♪ ちゃーらーちゃーちゃららっちゃー♪
『っておかーさん、これ『ア●ランチスの謎』!』
『そう君とよく一緒にプレイしてたゲームなの。よく手助けしてもらって、初めてクリアしたのよ』
あー、だからその格好だったんデスカ……ということは、もしかしたら、
『それじゃあ……そう君の、ばかーっ!』
お母さんは「えろげー」と書かれたフォルダに向かって、やっぱり盛大に『爆弾』を投げつけ始めた。
スピーカーからは盛大な爆音と、画面からは次々と壊れていくフォルダの姿。
せめてもの救いは、お仕事関係みたいなフォルダは全部避けているぐらいかな。
……打ち合わせから帰ってきたらタマシイが飛んでそうだから、今からなーむーと拝んでおこうか。
『そう君のっ! すけべーっ!!』