てけてけかなたさん   作:南澤まひろ

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その5「こんどはせんそうだ」&その6「こわしやかなたさん」

 神様のごほうびとかで、私のパソコンに住むことになったお母さん。

 さっきまでは、初めての親娘の会話をチャットで楽しんでいたんだけど……

「う~」

『む~』

 今は何故か、画面を挟んでにらみ合いをしている。

『入れちゃだめですからね』

『入れちゃだめなんて、そんなウブじゃないんだからさー』

『そ、そういう風にとらないでくださいっ! とにかく、だめなものはだめですからねっ!』

『せっかく娘が大人の階段を昇り始めてるっていうのに』

 私はそう言いながら、手にしているものをお母さんに見せつけた。

『そんな卑猥なものを見せつけないでください!』

『もー、初々しいんだから』

 手にしているのは、こないだ中古で買ったエロゲのパッケージ。表側は全然えっちくないのに、お母さんってばエクスプローラーの後ろから顔を赤くして見ている。

「まあいいや、CDロムだし、中身が消えることはないもんねー」

『きゃぁぁぁぁぁぁ!』

 トレイを開いてCDをのっけて、んでもってクローズと。

 がしょーん……がしょーん、がちゃんっ

「……ん?」

 閉じたトレイが勝手に開いたけど……っておーい!

『はあっ、はあっ』

 なに右クリックメニューの『取り出し』を押してるのさっ!

『ぜーったい、ダメですっ!』

『うー、けちーっ!』

 こうなったら、ちゃんと入るまでやってやる!

 がしょんがしょんがちゃっ、がしょんがしょんがちゃっ、がしょんがしょんがちゃっ、がしょんがしょんがちゃっ、がしょんがしょんがちゃっ、がしょんがしょんがちゃっ、がしょんがしょんっ……

「ぜえっ、ぜえっ」

『はあっ、はあっ』

 うう、もう何十回目だろ……このままじゃドライブも壊れるよ……えーいっ、これが最後の勝負!

 お母さんが肩で息をしているスキに、もう一度トレイをクローズ!

『ううっ、もー……いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!』

 そう叫んで、お母さんは思いっきり『取り出し』に正拳突きをして、

 ぎゅぎゅぎゅぎゅぎゅがしょんっ! ……ごいんっ!!

「ぷぎゃっ!」

 私のおでこに……CDが……CDが……

『あっ、だ……大丈夫?』

 さ、さすがは私のお母さん……見事な……突き……で……

『わーっ! こなたーっ!?』

 がっくり。

 

――――――――――――――――――――――――――

 

『……お母さん、どうしたの? その格好』

『うーん、お掃除をしようかなーって思って』

 いや、そうは言うけどさ。カーキ色の探検ルックでお掃除ってどこの国のお掃除衣装ですか。

『そう君のパソコン、また何かいっぱい入ってたみたいだから』

『それで、もしかして私のパソコンから侵入して消そうってこと?』

『そういうこと。ちなみに、ここに来て最初にしたのもそれだったのよ』

 だから、お父さんはあの時絶叫したのか……ご飯を作り忘れるぐらいショックみたいだったし。

『でもまあ、お父さんはまだお母さんがここにいるってこと知らないんだから、それくらいは許してあげてもいーんじゃ……』

『うーん、確かにそうかもしれないけど……ちょっと、悔しいかなって思って』

 おー、これが妻の夫への愛情と嫉妬ってやつですか。なんてふざけて言ってるけど、そりゃお母さんからしたら寂しいよね、ほかの女の子のこと見てるだなんて。

『それと、こなたをこんなにした、ちょっとしたおしおき』

『……それは勘弁してあげてー。とゆーかそれ私の責任でもあるし』

 お父さんごめんなさい、完全にとばっちりっぽいです。だけど私には止められません。

『んで、どうやってお父さんのパソコンに? 確かにネットワークにはつながってるけど、パスワードかかってるはずだし……』

『ああ、それなら大丈夫』

 そう言いながらお母さんは次々とフォルダを開いていって『マイ ネットワーク』にたどりついて、お父さんのパソコンのアイコンへ。そしたら案の定パスワードが要求されたけど……

『こうこう、こうで……えいっ』

 うわ、すんなりとアクセスできましたよ?!

『そう君ってば、私の誕生日をパスワードにしてるんだもの。すぐわかっちゃった』

 お父さんってば、どんだけお母さん思いなのさ。自分のパスにも使うだなんて……今はその愛情が裏目ですよー。

『それじゃ、行ってきまーす』

『へ?』

 お母さんを手を振ると、エクスプローラーの中へ……って、えっ? なにすんの?

 

 ――ちゃちゃちゃちゃーちゃらっちゃっちゃー♪

 

 って、なんかメディアプレイヤーが勝手に立ち上がったよ?! とゆーか嘉●達夫の声?!

『お、お母さん、そのネタはさすがの私でもわからないって!』

『そう? そう君とよく一緒に見ていたのだけど……』

 お父さん、もしかして『かなたとの想い出だから』とか言って買った川口浩探検隊のDVDデスカ? とゆーかソウデスネ?

『じゃあ、この格好をしたんだから、この曲でも』

 

 ――ちゃーちゃっちゃららっちゃー♪ ちゃーらーちゃーちゃららっちゃー♪

 

『っておかーさん、これ『ア●ランチスの謎』!』

『そう君とよく一緒にプレイしてたゲームなの。よく手助けしてもらって、初めてクリアしたのよ』

 あー、だからその格好だったんデスカ……ということは、もしかしたら、

『それじゃあ……そう君の、ばかーっ!』

 お母さんは「えろげー」と書かれたフォルダに向かって、やっぱり盛大に『爆弾』を投げつけ始めた。

 スピーカーからは盛大な爆音と、画面からは次々と壊れていくフォルダの姿。

 せめてもの救いは、お仕事関係みたいなフォルダは全部避けているぐらいかな。

 ……打ち合わせから帰ってきたらタマシイが飛んでそうだから、今からなーむーと拝んでおこうか。

『そう君のっ! すけべーっ!!』

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