ある日曜日のこと。
『お母さん、どこー?』
私がネトゲを終わらせてフルスクリーンから戻ると、画面にいつもいるはずのお母さんの姿が無かった。
とりあえず、IRCにはいるみたいだから声をかけてみたけど……
『あ、ごめんなさい。お隣の部屋に行っているの』
そんなにタイムラグも無く、すぐに返事が来る。そっか、ゆーちゃんのお部屋か。
普段は私以外には姿を見せないようにしてるはずなんだけど、お母さんがそっちに行ってるってことは……ちょっと、様子を見に行ってみようか。
「ゆーちゃーん……起きてるー?」
部屋を覗き込みながら小声で呼んでみても、返事はない。部屋の主であるゆーちゃんは……ああ、やっぱりベッドで寝てる。
夕陽のぽかぽかとした日差しを浴びながら、ゆーちゃんはすやすやと眠っていた。昨日からちょっと体調が辛かったみたいだけど、少しは良くなったのかな。
『ゆたかちゃん、気持ちよさそうに眠ってるわよ』
『それならよかった。ありがと、お母さん』
ゆーちゃんのPCのメモ帳が立ち上がっているのに気づいて、静かにキーをたたく。
画面の中にいるお母さんは、優しいまなざしでゆーちゃんのことを見ていた。
『一昨日熱を出したときはちょっと心配だったけど、今日は大丈夫みたいね』
『ごはんもそれなりに食べてたし、お昼からずっと寝てるなら大丈夫っぽいね』
こっちに来てからゆーちゃんも元気な時が多くなったけど、少し疲れたりすると体調を崩すこともある。そういう時は食べないよりも食べたほうがいいってことで、栄養にいい料理を私もお父さんもゆい姉さんからレクチャーしてもらっていた。
「うーん……」
あ、寝返りで毛布がはだけちゃってる。よいしょっと。
首のあたりまで毛布を戻してあげてから、ぽんぽんとゆーちゃんの肩の辺りを優しくなでてあげる。
『こなたも、すっかりお姉ちゃんね』
『ゆーちゃんはかわいい妹だからねー』
初めて見たときから、お母さんはよくゆーちゃんのことを気にかけていた。体調の面とか、自分の境遇と似通ってたところがあるって思ってるみたい。
『妹、かぁ』
それと……私に兄弟を遺せなかったっていうのも気がかりなようで。
だから、お母さんがゆーちゃんを見る目は、ほとんど私の時と変わらないようにも見える。
『ねえ、こなた』
『えっ?』
『ゆたかちゃんのこと、大事にしてあげなきゃだめだからね。大切な妹なら、なおさらよ』
少しおどけたように言うお母さんだったけど、その瞳はまっすぐで……真剣そのもの。
きっと、そこにはいろんな思いがあって、
『わかってるよ。ゆーちゃんは、みんなで守る。私も、お父さんも、ゆい姉さんも、おじさんも、おばさんも、みなみちゃんも、ひよりんも、みんな……みんなでね』
私も、ちゃんとそれにちゃんと応えて、
『だから、お母さんもゆーちゃんのこと見守ってあげてよね』
またひとつ、お母さんと約束をかわすことにした。
『当たり前よ、かわいい家族ですもの』
そう言ってにっこり笑ったお母さんを見て、私も思わず頬がゆるむ。
うん、きっと大丈夫。
お母さんが、ずっとゆーちゃんを見守ってくれるんだから。