てけてけかなたさん   作:南澤まひろ

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その7「いもうと」

 ある日曜日のこと。

『お母さん、どこー?』

 私がネトゲを終わらせてフルスクリーンから戻ると、画面にいつもいるはずのお母さんの姿が無かった。

とりあえず、IRCにはいるみたいだから声をかけてみたけど……

『あ、ごめんなさい。お隣の部屋に行っているの』

 そんなにタイムラグも無く、すぐに返事が来る。そっか、ゆーちゃんのお部屋か。

 普段は私以外には姿を見せないようにしてるはずなんだけど、お母さんがそっちに行ってるってことは……ちょっと、様子を見に行ってみようか。

 

「ゆーちゃーん……起きてるー?」

 部屋を覗き込みながら小声で呼んでみても、返事はない。部屋の主であるゆーちゃんは……ああ、やっぱりベッドで寝てる。

 夕陽のぽかぽかとした日差しを浴びながら、ゆーちゃんはすやすやと眠っていた。昨日からちょっと体調が辛かったみたいだけど、少しは良くなったのかな。

『ゆたかちゃん、気持ちよさそうに眠ってるわよ』

『それならよかった。ありがと、お母さん』

 ゆーちゃんのPCのメモ帳が立ち上がっているのに気づいて、静かにキーをたたく。

 画面の中にいるお母さんは、優しいまなざしでゆーちゃんのことを見ていた。

『一昨日熱を出したときはちょっと心配だったけど、今日は大丈夫みたいね』

『ごはんもそれなりに食べてたし、お昼からずっと寝てるなら大丈夫っぽいね』

 こっちに来てからゆーちゃんも元気な時が多くなったけど、少し疲れたりすると体調を崩すこともある。そういう時は食べないよりも食べたほうがいいってことで、栄養にいい料理を私もお父さんもゆい姉さんからレクチャーしてもらっていた。

「うーん……」

 あ、寝返りで毛布がはだけちゃってる。よいしょっと。

 首のあたりまで毛布を戻してあげてから、ぽんぽんとゆーちゃんの肩の辺りを優しくなでてあげる。

『こなたも、すっかりお姉ちゃんね』

『ゆーちゃんはかわいい妹だからねー』

 初めて見たときから、お母さんはよくゆーちゃんのことを気にかけていた。体調の面とか、自分の境遇と似通ってたところがあるって思ってるみたい。

『妹、かぁ』

 それと……私に兄弟を遺せなかったっていうのも気がかりなようで。

 だから、お母さんがゆーちゃんを見る目は、ほとんど私の時と変わらないようにも見える。

『ねえ、こなた』

『えっ?』

『ゆたかちゃんのこと、大事にしてあげなきゃだめだからね。大切な妹なら、なおさらよ』

 少しおどけたように言うお母さんだったけど、その瞳はまっすぐで……真剣そのもの。

 きっと、そこにはいろんな思いがあって、

『わかってるよ。ゆーちゃんは、みんなで守る。私も、お父さんも、ゆい姉さんも、おじさんも、おばさんも、みなみちゃんも、ひよりんも、みんな……みんなでね』

 私も、ちゃんとそれにちゃんと応えて、

『だから、お母さんもゆーちゃんのこと見守ってあげてよね』

 またひとつ、お母さんと約束をかわすことにした。

『当たり前よ、かわいい家族ですもの』

 そう言ってにっこり笑ったお母さんを見て、私も思わず頬がゆるむ。

 

 うん、きっと大丈夫。

 お母さんが、ずっとゆーちゃんを見守ってくれるんだから。

 

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