『くー……すー……』
「あーあー、お母さんってばぐっすり寝ちゃって」
朝起きてPCを立ち上げると、お母さんが画面のすみっこでふとんにくるまって眠っていた。丸っこいフォントで寝息の文字が浮かんでは消えて……あーもうっ、かわいいなっ!
多分、昨日の夜もお父さんのPCの『お掃除』で疲れちゃったんだろうね。お父さんってば懲りないで何度も入れるんだもん、エロゲだけを一生懸命。
……ん? 今はお母さんが寝ていて、セキュリティも甘い……となったら、やることは一つ。
「ふっふっふっ……ちゃーんす」
某ドイツのクォーター娘ばりにそう呟くと、私は机の下にしまっておいた『と●いあんぐるハート リリ●ルおもちゃ箱』のパッケージを手にして、きらーんと目を輝かせた。
《くるくる……きゅっ、と。はい、出来上がり》
《ありがとうございます》
画面の中では、巫女のおねーさんがショタな男の子にリボンを結んであげていた。
あー、こう、おねーさんがショタっ子を可愛がってあげるってのもいいもんやねー。なんとなくひよりんの気持ちがわかってきたよ。というか提督、アニメと全然違うじゃん。あっちはA'sまで大人びてたけどこっちは純正ショタだ。
お母さんが寝てる隙にプレイしているのは、テレビでもやってた魔法少女モノアニメの『原作』。コレ、案外原作がエロゲだってことを知らない人が多いんだよねー。
『くー……う、うーんっ』
って、やばっ、お母さん起きちゃったよ。
『ふぁ~、何か音楽が聞こえてるけど……って、こなた、またえっちなゲームをインストールしたの?!』
起きて早々、お母さんはぷんすかぷんとばかりにこっちを見て怒り始めた。ええい、こうなったらままよ!
『ち、ちがうって。これはフツーのゲーム! ほら、今テレビでもやってるアニメの原作だよ!』
『えっ……? あら、ほんと。よく似てるわね』
ふぃー、テレ玉で二クール目に突入してて助かったよ。
『ねえ、私もいっしょに見てていい?』
「うっ」
お母さんはわくわくしながら言うけど、この先そーゆーシーンがあるにはあるんだよね。でも、お昼を食べ終わって時間も有り余ってるし、今日はヒマって言ったから逃げ場は無いわけで。
『い、いいよー』
えーいっ、もうどうにでもなれっ! もうEドライブをやられるのも覚悟だ!
『ありがとう、こなたっ』
ううっ、お母さんの無垢な笑顔がココロに痛い……
そんなこんなで、お母さんと『同伴エロゲ』をすることになった私。そーゆーシーンは恥ずかしがって隠れてたけど、それ以外はずっと画面のすみっこで画面を見上げていた。
『お母さん、ちょっと聞くけど……もしかして、ハマッた?』
『ちっ、違うわよ! こなたが熱中してるから、つい!』
私の言葉に、顔を真っ赤にして否定するお母さん。でも……「おかあさん、かぁ」とか「クロノくんいいわねー」ってIRCのログを見てると、全然説得力無いデスヨ。うん。
このままお母さんの姿を見ているのもいいと思ったけど、時間はそろそろ夕方の四時半。
『うーん、ちょうどきりもいいトコかな。夕ご飯のお買い物に行ってくるから、そのままにしといてねー』
『えっ? あ、う、うん』
私は机の上にある財布を手にすると、お母さんに手を振って部屋を出た……っと、自転車のカギ忘れてた。
あわてて部屋に戻って、パソコンラックにあったカギをひったくったその時。
《リリカル、マジカル……》
《大切な想い出を……返してっ!》
なんで勝手にボイスが、とゆーか物語が進んで……って、ちょっ、何クリックしてるのさ!
画面を見ると、お母さんはウインドウに手を伸ばして勝手に話を進めていた。
『あのー、おかーさーん』
『ひゃあっ?!』
肩のあたりをダブルクリックすると、お母さんはびっくりした顔でこっちを振り返った。
『ふっふっふっふっ……よーこそ、こっちの世界へ』
『ちっ、違うの! 違うのよっ! ちょっといい話だなって思って、違うのーっ!』
そう全否定して、ウインドウを閉じるお母さん。でも、ちゃんとセーブしてから閉じていたあたり……ねえ?
さて、今度はどんなゲームを用意しましょーかねー。
【ひとこと解説】
テレビでもやってた魔法少女モノアニメの『原作』…
伏せ字を取っ払うと「とらいあんぐるハート リリカルおもちゃ箱」に収録されている「魔法少女リリカルなのは」のこと。何気に18歳未満は買っちゃダメな作品。