てけてけかなたさん   作:南澤まひろ

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その11「そうくん」

 こそこそと、画面の影から外をのぞいてみる。

「くか~……ぐお~……」

 ふふっ、すっかり眠っちゃって。昨日は徹夜でしたから、よっぽど疲れたんですね。

「それじゃあ、ちょっと失礼しまーす」

 私はひとりごとを言って、そう君のデスクトップに降り立った。

 えっと、メモ帳は……立ち上がってませんね? はい、大丈夫ですね。

 

 そう君のパソコンがついていて居眠りしてるとき。それが私のお掃除の時間です。

 いつもはこなたのPCにいるかルーターの中にいるかの私ですけど、やっぱり愛する人のPCの中も気になってしまうわけで。

……えっ、嫉妬ですか? 違いますよ。多分。きっと。おそらく。

「それじゃあ、今日もがんばってお掃除しますよー」

 エクスプローラーを立ち上げると、一昨日より二ギガ弱も増えています。これはきっと、二、三本は入ってるってことですね。それでは「プログラムの追加と削除」を起動して、と。

 両手でスクロールバーを引っ張ると、どうもそれらしいタイトルがありました。「悶絶ダイナミックおやじ」に「ぷる萌えーる☆アクトレスめいこ」……さ、最初のはちょっと怖いのでそのままアンインストールして、次のはどういうソフトなのか確認してみましょう。

 ……いえ、決してこなたに毒されたわけじゃないですよ? ほんのちょっと、ちょこっとだけ興味があるだけですから。

 スピーカーのボリュームを消して、モニタを省電力モードでこの中だけ見られるようにして、起動っと。

 スタートボタンからプログラムを立ち上げると、出てきたのはいつもこなたがプレイしているような画面。次に現れたのは……むむっ? 小さい女の子が三人ですか?

 いくらそう君が「ロリコンでもある」と言ってても、これはさすがに由々しき問題です。そう思ってしまうほど、この子たちはあまりにも幼すぎます。

 場合によっては、すぐにアンインストールしましょう。絶対やりましましょう。

 そう思いながらゲームを進めていくと……

「きゃあっ?!』

 こ、この子たち、つ、ついて……あ、あれが……モザイクがかかってるとはいえ、こ、コレはダメですっ!

「ぽ、ポイですっ! コレはポイポイですっ!」

とにかく、見なかったことにしましょう! セーブデータとかも無いですし、きっとまだプレイしてないんですよね! 内容も知らないんですよね! だから今のうちにアンインストールしちゃったほうがいいですっ!

 私はあわててプログラムを閉じると、プログラムのフォルダを開いてからその二つのゲームが入ったフォルダを抱えて、ごみ箱へえいっと放り投げました。

えっと、もうこれで大丈夫ですよね……ふー、恐ろしいものを見てしまいました。

 とりあえずお掃除はここまでにして……休憩ついでに、もう一つのお楽しみタイムに行きましょうか。

「新しい作品、どこまで進んだのかしら」

 一息ついて、こっそりとドキュメントフォルダの中身を見回すと、真新しいテキストファイルがちょこんと置いてありました。

そう、これが私の本当の目的なんです。

 ファイルを開くと、そこにあったのは普通のテキストファイル。でも……私とそう君にとって、大切な物語。

「この間は、女の子との出会いまでだったんですよね」

そこには、いつもシリアスなお話を書くそう君には珍しく、コミカルな表現で物語がつづられていました。

「私は、どう書かれるのかな」

 それは、北国で一緒に過ごしてきた女の子との物語。生まれたときからずっと寄り添い、一緒に育っていく――というのが、今のところのお話なのですが、

「十八年経って、しっかりと向き合ってくれたんですね」

 この物語は、私とそう君が一緒に歩んできた想い出そのもの。

 小学校でガキ大将みたいな感じのそう君にからかわれて、いろいろつきまとわれて……でも、いつでも元気なそう君にあこがれていた頃のお話でした。

「……もうっ、好きな子ほどからかいたくなるだなんて」

 一人称でそう書かれてしまうと、物語でも恥ずかしくなってきちゃうじゃないですか。

 男の子の語り口は、そう君の想いがいっぱいあふれていて、そんな風にくすぐったくなっちゃうほど。だけど、とっても力強くてあったかい、まっすぐな言葉。

「ありがとう、そう君」

 私の大切な、そう君との想い出。それをそう君も大事にしてくれて、形にして残してくれて。

「もう、きっと大丈夫ですよね」

 いつも元気でいようとしても、時々切なそうに仏壇を見るそう君。私がこの世界に降りるたびに見るその表情が辛かったですけど……もう、きっと大丈夫。

「あと何度、この続きを見られるかわからないですけど……楽しみにしていますからね」

 私はそっとテキストファイルを閉じると、モニタをそのままにしてPCを後にしました。

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