向日葵の咲く夜に   作:みん提督

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オリジナル作品初投稿です。
拙い文章で、至らない所もあると思いますが、何卒ご容赦くださいまし。
作者の趣味で色んな作品のパロディを入れていくつもりです。


第壱章 帝都燃ユ
プロローグ


西暦1894年瑞清戦争。西暦1904年瑞須戦争。西暦1914年第一次世界大戦。

近代化以降、神皇国は10年おきに戦乱に見舞われていた。

しかし、それはいずれも人間同士の争いで、少なくとも意志疎通が出来る同じ種族間での出来事だった。

 

しかし、西暦1924年 大翔13年 7月。瑞穂神皇国帝都でそれは起こった。

後に"存在"と呼ばれる怪異が突如として帝都に出現した。彼らには既存の兵器は通用せず、討伐に向かった軍隊は全滅し、帝都は瞬く間に敵の手に落ちた。帝都は彼らの魔力により常闇の世界へと変えられ、宮城は消えることのない業火に包まれた。

瑞穂神皇国の政治、経済、軍事その他あらゆる国家事業の中心であった帝都が一夜にして陥落し、皇帝の生死さえも不明となった国内は大混乱に陥る。

決死の防衛により、存在を帝都近辺に抑え込むことに成功するも事態の深刻化は抑えらず、幾度となく繰り広げられた帝都奪還作戦は悉く失敗し、膠着状態が続いていた。もはや、神皇国に為す術無しと人々は絶望した。

 

しかし、神皇国にはまだ切り札が残されていた。

存在に対抗し得る最強の兵士たちがいた。

最後の望みは彼らに託されていた。

 

 

あれから5年か。

月も星も見えない空を見て少女は独白した。明るい方をふと見てみればそこには轟々と音を立てる真っ赤な焔に包まれた城が見えた。神皇国の皇帝が住まう宮城だ。

5年も経ったが、未だに帝都は敵の手中にあり、皇帝も生死不明。

絶望的な状況は何一つ好転しなかったが、唯一つだけ、我が方有利と確信できることがあった。それは、

「今日は私がいる……覚悟しろよ……存在!!」

彼女は自信過剰な性格だった。

 

 

漆黒の闇で無数の影が蠢く。それらは全てが霧でもなく、獣でもなく、かといって人間ですらない中途半端なモノたちだった。

"存在"と呼ばれるそれらに実体はなく、黒い靄のようなモノに光る目があるような不気味なナリをしていた。

常に群れを成して闇の中を疾走する光景は虫の大群のようにも見えた。そんな群れを静かに見つめる男がいた。男は腕時計に目線を落としながら呟いた。

「よぅし、そのままだ……そのまま……」

時計の針がピッタリと12の文字盤を指した瞬間、

「よぉし、行けぇ!吶喊、吶喊!」

男の号令が響いた直後、付近の裏路地や建物内から複数の人影が飛び出した。

「一番槍貰った!」

「させんぞ!」

最初に突入した2人は直ぐ様抜刀し、存在を一刀両断した。真っ二つになった存在は奇声を上げながら光の粒となって霧散した。

同胞がやられて怒ったのか、残っていた多数の存在が文字通り目の色を変えて突っ込んできた。

が、次の瞬間には脳天に派手な銃痕を作り、またしても霧散した。

「相変わらずサンパチちゃんの弾を美味しそうに食べますね、存在は」

三八式歩兵銃のボルトアクションを起こしながら少女は不適に笑った。

「反動も少ないし、精度はいいし、やっぱりサンパチちゃんはイイコですよね」

そう言いながら次の目標に狙いを定める少女。しかし、すぐ後ろに存在が近づいていた。が、少女は全く慌てることはなく、冷静に狙いをつけながら引き金に指をかけた。

「そう思いませんか?」

少女に飛びかかる存在。しかし少女に焦りはなく、逆に笑みを浮かべていた。

風神(ふうじん)くん」

引き金を引くと同時に飛びかかってきた存在は西瓜の如く真っ二つにされ、霧散した。一方、銃撃は見事命中し、今度は3体を同時に仕留めた。

「丁度でしたね。流石は真面目男です」

櫻子(さくらこ)……それ褒めてんのか……」

刀を鞘に収めながら疑問を呈するのは風神太助(ふうじん たすけ)少尉。先程の狙撃手少女月櫻子(つき さくらこ)少尉の友人だった。

「まさか、もちろん褒めてますよ、幼なじみとして!」

満面の笑みで答える月に風神は大きなタメ息をついた。

「それはいいとして、もう一人の幼なじみは何処行った?」

「それなら……」

「おい、アレは?」

「何だ?」

月が答えるより前に先程先陣を切って突撃した堂城(たかぎ)青樹(あおき)の2人が異変に気づいた

「まさか、あいつか?」

「……みたいですね」

風神と月はお互いに顔をしかめた。

「目立ちたがりやめ……」

風神は心底面倒臭そうに吐き捨てた。割を食うのはいつも自分だからだ。

 

 

なんて素晴らしい夜だろう。否、ここではずっと夜か。

自問自答しながら少女は笑った。眼下に見える存在は少女に気づいて一斉に上を向き、間髪を入れずに魔弾を撃ち込んできた。歩兵数十人を軽く薙ぎ倒し、重砲や戦車すら粉砕する魔導弾に臆することなく、少女はその悉くを華麗に回避していった。

障壁を張っているとは言え、もし掠りでもすれば四肢は軽く吹き飛ぶだろう。しかし、少女はそれをむしろ楽しみ、まるで遊戯を嗜むかのような悦ばしい表情を浮かべながら重力に任せて降下していた。ある程度まで落ちると、少女は背中の銃に手を伸ばした。

「さぁて、六根清浄!」

引き金を引いた瞬間、常闇の世界に太陽が現れたかのような目映い閃光が走った。高密度の魔力が込められた銃弾は文字通り閃光となり、目にも留まらぬ速さで地上に降り注いだ。地面に衝突した刹那、真下にいた存在は即座に蒸発し、至近にいた数十体も弾けとんだ光の散弾によってそれを認知する間もなく霧散した。

しかし、少女は止まらない。未だ砲撃の余韻が残る地上に着地するや否や、至近に見える存在の脳天を片っ端から撃ち抜いていった。少女が使う銃は三八式歩兵銃を騎兵用に改造した三八式騎兵銃。基本構造は本家と変わりないが、馬に乗る騎兵隊が扱いやすいように銃身が短縮されているのが特徴だった。小さくて取り回しもいいため、歩兵科でも評価の高い銃だった。少女の場合、こういった接近戦や、乱戦を得意とし、縦横無尽に飛び回る戦いを好む傾向にあったため、なるべく取り回しが効いて、かつ威力のある銃として少女には正にうってつけの銃であった。

だが、銃を使うだけが少女の戦い方ではなかった。

「遅い遅い!」

背後に回り込もうとした存在に軍刀を突き立てる。銃剣よりも斬りやすくて、弱点を確実に破壊できるため、少女は接近戦では軍刀を好んでいた。

撃っては斬り、撃っては斬り、斬って、斬って、斬って、斬りまくった。

自動車が悠に4台は通れそうな大通りを埋め尽くすほどいた存在は少女の一撃により半減し、両手で数えられる程度にまで減っていた。ほぼ1人の戦果としては大金星と言えるだろう。しかし、

「あれが良くないですね」

苦笑いを浮かべながら撤収準備をする月。

「と、言うわけで、ここは制圧完了。前進命令を待ちましょう」

さっきから不動の姿勢を崩さずにこれまた苦い顔をしている風神に月は三八改を抱えながら話しかけた。

「……急いでいるんだ」

「はい?」

突然俯きながら風神が呟く。酷くか細い声で、意識しなければ聞き取れなかった。

「急ぎすぎだよ……雪子(ゆきこ)

風神は幼なじみであり、親友でもある少女……神楽雪子(かぐら ゆきこ)の危うさを誰よりも危惧する男だった。

 

 

「命令違反も程々にしたまえ。貴官には突撃する堂城、青樹の両名を支援しろと命じたはずだ。独断専行し、剰え、両名の突撃の邪魔をしたのだぞ。分かっておるのか?」

「ですが、小隊長殿。自分は確かに堂城、青樹の両少尉を支援するよう命令されました。しかし、自分に敵を殲滅するなとは命令されなかったので」

語気を荒げる上官の堂上(どうがみ)は、先程の神楽の命令違反を咎めていた。しかし、自信過剰な性格の神楽は自分の行動に絶対の自信を持っており、生半可な叱責では彼女の心は動かせなかった。その生意気ともとれる性格は一部の者からは大胆不敵と言われ、評価されていたが、大抵の者はそれを快く思ってはいなかった。

「まぁまぁまぁ、小隊長殿。結果的に敵を殲滅して前進できるわけですし、結果良ければ全て良しと言うじゃないですか?」

こういう険悪な雰囲気になった時に仲裁するのは月の仕事だった。物腰の柔らかい彼女はこういった喧嘩仲裁が得意だった。

「でも……」

「でもじゃないです。ということで小隊長殿、お騒がせしました~」

怒りで顔面が沸騰しそうな堂上を尻目に月は神楽を連れて離脱した。堂上もまだ何か言いたげだったが、どうやら引き下がったようだ。

「あまり上官と当たらないで下さいよ。止める身にもなって下さい」

「止めなくたっていいのに、ていうか堂上のやつ腹立つんだもん。非魔導士のくせに威張り散らしたりして」

「陸軍士官なんて大抵そんなものですよ、割り切りましょうよ?ね?」

「割り切れないね」

こんな調子である。他人からは傲慢ともとれるこの性格は昔はなかったのだが、いつからこうなったのか、月は常に不思議に思っていた。

「風神くん、風神くん、神楽に何とか言ってやって下さいよ~」

月は世話焼きな性格だったが、自分の手に負えないとわかるとこうして他人に泣きつく癖があった。風神からして見れば彼女のかなり煩わしい一面の一つだった。

「ああいうもんだといい加減慣れろ。あとすぐに泣きつく癖もやめろ」

「そんなの無いじゃないですか風神く~ん……」

こうしてねちっこく絡んでくるのは風神が嫌う彼女の性格の一つだった。しかし同時に親しみを覚え、不思議な感情にもなった。

「ま、いいだろう」

誰にでもなく呟く風神に先程から文句をぐちぐちと垂れていた月も顔を上げ、彼に視線を合わせようとした。しかし、彼は別の方を向いて哀愁漂う笑顔を浮かべているだけだった。

「なに見てんですか?」

風神が向いてた方向を向いてみると、神楽が何か歌いながらけん玉遊びをしているのが見えた。

「ま~たうさぎとかめですか。何であの曲ばかりなんでしょうね?」

不思議がる月の顔を見た風神は鼻で笑うと

「さて、何故だろうな」

「悪い顔ですね~……さては何か知ってますな?!」

「さて、どうだろう」

口喧嘩(一方的に月が言い立ててるだけ)をする2人を気にも止めず、神楽は紛いの月に照らされて瓦礫の上で静かに歌っていた。

 

 

もしもし かめよ かめさんよ

せかいのうちに おまえほど

あゆみの のろい ものはない

どうして そんなに のろいのか

 

けん玉の乾いた音とともに戦場に昔懐かしい童謡が響いていた。

それは少女にとって、想い出の歌であり、また悲劇の歌でもあった。

 

1929年 大翔18年 7月。帝都はまだ燃えていた。




こんな感じです。
最後の方が駆け足になって申し訳ないです。
1話はなるべく早く投稿します。
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