ウルトラウーマンラピス   作:ラピス・ラズリ

7 / 10
今回はりゅーど様とクロスオーバーしました。
ウルトラマンアバドンも是非読んでみてください。きっとりゅーど様も喜ぶと思います。
クロスオーバー先→ https://syosetu.org/novel/197813/



邪悪なる闇の出現

黒い火球と赤い火球がぶつかり合いながら地球へと向かっていた。

黒い火球は、鳥肌が立つような闇の力で溢れていた。

赤い火球は、血のような歴戦をやり続けたどこかの戦士の力で溢れていた。

その2人は戦っているように見えた。そしてそのまま…紗和がいる地球へと向かい続けたのだった。

 

大量の本が布団の上に置かれたベットの上で眠る。至福の時なのか、それとも疲れたからそのまま寝たのか、紗和はもう覚えていない。

「ふぁあ……」

欠伸をして目元を擦る。そして自分の部屋に戻ろうと立ち上がろうとした時だった。

「んっ」

身体が重い。何かが紗和の中を蓄積しているような感じだった。

「………また、あの夢か」

《あの夢》を見るたびに、紗和の心は抉られ、光がなんなのか分からなくなってしまう。それでもなお、起きないといけないことを分かっているため、ベットから降りて水を飲みに行った。

(ボクもまだまだだな)

そう思いながら水を飲んだ後、もう一度部屋に戻りベットの上に置かれたままの本を棚に戻してから朝食を食べに行くことにした。

 

今日も平和な日が続きますようにと願う紗和。本を読む時の時間が何より至福の時だった。だが、紗和の瞳は何故か…疑心暗鬼に包まれた闇の目に染まっていた。

そのせいでいつも通り過ごしているはずなのにどこか違和感を感じてしまう。

「…………ボクが間違っているのか、それとも…」

小声で独り言を呟いたが、その声は虚しくも部屋に響き、そして消えたのだった。

 

本を読み終えたあと、新しい本が欲しいのと、食材を購入するために外へ出る支度をした。生活にも慣れてきたなと思いながら玄関を開ける。雲1つもない快晴だった。太陽を見つめようとしても、眩しさのあまりに視界を手で塞いで目を閉じる。

森林に隠されていた家から街まで離れているがずっと歩くとあっという間に街へ到着した。

いつもの本屋へ向かう途中、人気ない路地裏で何かを感じたのか顔を向けた。そこには、全身黒い服を着た男の人が倒れていた。

「大丈夫ですか!?」

急いで駆け寄り脈を測る。とりあえず今は家に連れて帰ることにして背中に乗せて歩き出そうとした時だった。

後ろから誰かの声が聞こえる。振り返ると、誰もいない。気のせいかと思い、再び歩き出そうとした瞬間、いつの間にか首を絞められたまま壁に激突していた。

「これが……ウルトラマンの中に眠る闇…ほぉ、悪くない」

男の顔を見た時、紗和は驚愕する。何故なら、光がない闇なような顔と気配。間違いない、闇の巨人だと気づいた。

「君は……誰?!」

苦しさに耐えながらも必死に問う。すると男はニヤリとした表情を浮かべながら答えてくれた。

「私は…そうだな、名前など無い。ただの人間ではないことだけは言っておこう。まぁ、私が何者かはどうでもいいことだ。それよりも、ここで殺しておくべきか、それとも……」

何を言っているのか分からない。しかし、このままでは死ぬことは分かった。どうにかして逃げないと。そう思ったその時、背後から殺気が伝わってくる。

殺される!そう直感的に感じた直後、目の前にいた男が横に吹き飛んだ。

何が起きたのか分からず困惑したが、すぐに理解できた。

「あれは……」

「無事か?」

そう、そこに立っていたの右目を前髪で隠した目つきの悪い高身長の青年だった。

「え……あ…はい」

紗和は戸惑いながら返事をする。

「あの人もウルトラマンなのかな。でも、あの時はそんな力なかったような……」

紗和は、自分が知る限りのことを思い出していた。

自分の両手にある毒を操ること。これは、この闇のように黒い手袋を嵌めて抑えているが、実際は危険な力である。

だが、自分は選ばれたわけじゃない。たまたま運良く取得してしまっただけ。だから、自分は何もできない。

「ボクには、何もできない。だってボクは……ボク自身にすらも認められていないんだから」

自分に問いかけるように呟く。その言葉は、誰にも届くことなく消えた。

 

いつの間にかまたベットの上で仰向けになって眠っていた。どれくらい寝ていたのだろう…と、紗和は考えながら身体を起こした。窓の外を見るとまだ太陽は真上にいた。昼頃だと思われる。

「うわっもうこんな時間……今何時かな」

スマホを手に取って画面を見る。

「14:06って……アレから2時間以上も寝ちゃったのか」

紗和は大きな欠伸をしながら背伸びをして立ち上がる。

「ん〜!よく眠れた〜」

軽くストレッチしてから部屋を出る。

昼ごはんは何を作ろうかと考えながら廊下に出て階段を下る。

キッチンに着くと、冷蔵庫の中を見て食材を確認する。

「………あるにはあるけど…さっきのせいで買いに行けなかったからなぁ…」

外へ出ようにもまた遭遇したら今度こそ殺されると思い、諦めて食べないことにした。実は冷蔵庫はいつも確認しているが、それは飲み物を確認する時だけで実際には食べてない。ここのところ欠食気味なのだ。

何も食べずにソファーに勢いよく腰をかけ、ゆっくりとため息を吐いた。

「………本当、なんだったんだろ…アレ」

1人で呟いていると、身体がゾワッと何かを感じたように鳥肌が立った。

慌てて窓の外を見ると誰もいなかった。気のせいかと思い、窓を閉めたその時だった。

「……ピャッ!?」

いつの間にか目の前に先ほど出会った青年が窓の外で立っていた。驚きのあまりに勢いよく距離を置くように後ろに下がった。

「お邪魔します(男塾名物)」

悲しいかな、青年にとって窓ガラスは紙にも劣る強度であった。

「ダイナミックに侵入するのやめてもらえませんか?!」

鋭いツッコミを喰わらせながら少しずつ後ろに下がって距離を置き続けた。

「んなもん知るか、俺の目的はひとつだ」

「な……なんでしょうか?」

この青年、紗和のことを相当睨んでいた。だが紗和自身は睨まれている理由がよく分かっていない。

「お前を殺す」

……ある意味時が止まった。

驚いた表情をしたまま後ろへ距離を置き続ける。だが目の前の青年、いや…殺人鬼のような人物は少しずつ近づいてくる。

「…………………君、誰?」

その一言で周りの空気が変わる。

「……なんだと?」

「だから……君は…誰?あの時名前聞いてない…誰?後窓ガラス代弁償してね?」

目の前の殺人鬼は紗和のことを知っているのだろうか。だが紗和は赤い目に黒がかかった光のない闇の瞳になって首を傾げながら見つめ続けた。

「……つまんね」

そう言って青年は九四式拳銃を取り出す。銃口を向け、引き金の近くに指を置き。

「……あの、名前…聞いているのになんで銃を取り出すの?ボク…君のこと知らない。ボクの名前は宝星紗和」

この状況で自分の名前を教える紗和も紗和で凄いが、今はそれところではない。

「俺は諸星慎太郎 素晴らしい提案をしよう」

そう言って慎太郎は復讐に狂った目を向けた。

「お前、ここで死なないか?」

「死ねるなら、死にたい」

即答で答えた紗和。慎太郎にとっては違和感を感じるようだが…

「……あ゛?」

慎太郎は一瞥した。

「でも…慎太郎さんとは初対面ですよ?ボクのこと、知ってるの?」

この言葉を聞いた瞬間、慎太郎の何かが切れたらしい…

「忘れてんのか?さては忘れちまったな?お前の頭はパスワード打たねぇと続きも読み込めねぇのか?調子乗んな淫売がよ」

「いや……あの…慎太郎さん、君はさっきから何を言っているのですか?」

これ以上話すと無限ループが続きそうだ。いや、続いた。

「ボクは…誰かに恨まれるようなことしましたっけ?」

「は?」

「何度も言いますが、ボクら初対面ですよ?ボクらどこかでお会いしました?それとも…あの時助けてくれたのは罠で後ろから後を追って金の要求ですか?……()()じゃないですか」

その言葉を聞いた瞬間、慎太郎の何かを切ってしまったな音が聞こえた。

瞬間、紗和の肩から勢いよく血液が吹き出た。

「……へ?」

肩を抑えながらその場に膝をつきながら状況に混乱してきた紗和。それでも、光のない目のままだった。

「……あの…何か癪に触るような発言をしてしまったのなら…すみません。気をつけます…それと……何度も言いますが、ボクら初対面ですよ?」

その言葉を聞いた瞬間、慎太郎の中で何か別の思考回路が見つかった。

「……平行世界?」

「…あ…もしかして……ウルトラマンなのですか?」

平行世界という言葉で即座に察した紗和は肩を抑えたままゆっくりと立ち上がり、慎太郎に近づいて目の前に現れた。

慎太郎が高身長だったので高いものを見つめるように顔を上げながら見つめた。

「……ウルトラマン…ですか?」

「……おう」

慎太郎は、銃を一回転させて仕舞った。

「やはり…さっきから感じるこのエネルギーはもしかしてとは思いましたが…」

肩を抑えながら普通に話す紗和には驚かず、慎太郎は別のことに驚いた。

紗和の異常な両腕の細さ。折れそうな両足の細さ。そして普通の小顔よりさらに小さい顔。

違和感を感じるのか、それとも驚愕したのか、慎太郎は勢いよく紗和の両腕を掴んだ。

「お…………折れ…折れます…折れてしまいますよ…離してください…ど、どうしましたか?」

「……!!」

瞬間、慎太郎の脳裏に浮かんだのは『栄養失調』の四文字。

調理師免許の他にも栄養学にも精通している彼は、鬼気迫る表情で叫ぶ。

「何日食事をしていない!?」

「え……まぁ…今日合わせて…………10日程食べてませんね。唯一食べている…正確には飲んでいるですけど、お茶のみです」

これだけで生存しているのは最早ウルトラ族だからなのか何なのか…不明である。

瞬間、慎太郎の平手が飛んだ。

パァン、と小気味いい音を鳴らし。

「栄養価がなってない」

ズカズカと上がり込み、冷蔵庫を開ける。

いきなりの平手打ちで驚愕してしまい、部屋に入れることを許してしまった紗和だった。

そして冷蔵庫の中は予想を超えて綺麗に整頓されてあり、食材が豊富だった。多すぎと言っても過言ではない。

「(さてまずは)」

おもむろに取り出したは、愛用の包丁キットだ。

まずは大きな鍋を用意し、次に野菜を菜切り包丁で切っていく。

ザクザクといい音を鳴らし、白菜やネギが等間隔に切れていく。

その一方で慎太郎はつくねのタネを作り、出汁を取っていく。

カウンターから見物している紗和は何が作られているのか気になりながら見つめ続けていた。

「(どうやってその包丁を持ち歩いているのだろうか…)」

充分に出汁が取れたところで、つくねを投入。つくねからの出汁を出しつつ火を通す。その間に、次はピーマンのヘタやワタを取り除き始めた。それが終われば、ハンバーグのタネを作る。

流石は調理師免許を持つだけはある、淀みない調理である。

「……地球では料理人でもしてるのですか?」

いつの間にかカウンターからいなくなっていて慎太郎がダイナミックに侵入した時に散らばったガラスの破片を除去していた。大きいのは手で取り、細かいのは箒で取っていた。

「こちとらふぐ刺しが喰いたいばっかに調理師免許取った変態だよ」

「なんですかその理由…」

手袋しているからと言って手でガラスの破片を拾う紗和も紗和ではあるが…

「知るか、公式設定だ」

「そのような設定なんですね…」

メタ話はしばらく続いた…

 

「ホイ、できたぞ」

「……これは?」

できる前に椅子に座って待機させられた紗和の目の前には慎太郎が作ってくれた料理がテーブルの上に置かれていた。

「これは雪見つみれ汁。メインディッシュにはピーマンの肉埋めを。小鉢には各種野菜の浅漬け。で、柔らかめの白米だ。食え」

「こんなに沢山の料理を1人で……い、いただきます」

両手を合わせながら言った後、ゆっくりと口の中に入れて味わった。

「あ……美味しいです」

「だろ?」

「は、はい…美味しいです……そして…このようなまともな食事が久々です」

一応伝えると紗和は料理は出来る。ただ単に本能的に食べないのである。それだけだ。

慎太郎はふうと息を吐き、自分の肩を触ってみろと言った。

首を傾げながらソッと自分の肩に触れた紗和はすぐに驚きの顔になった。

「傷、ねぇだろ?」

「は…はい。ありません…」

「俺はこの地球のウルトラマンじゃない。俺が作った飯を食えば大抵の怪我は治せる」

「そ、そんな凄いお方でしたか…」

「はい……?」

紗和は不思議そうな顔をしながら、腕を差し出した。

すると、慎太郎は紗和の腕に触れてきた。

「っ!?︎」

「……やっぱり。水銀毒…バードンを持っているな」

驚きのあまり、勢いよく手を振り払う紗和。だが慎太郎の表情は無表情のままだった。

「……何故、分かったのですか?」

「見れば分かる。あと、それは『持ってる』んじゃなくて体内に取り込んでいるんだ。体の中で生成されて、身体の機能を蝕む猛毒だ」

「……そうですか」

「まぁ…別にいいけどよ。お前がそのままで良いならな」

「……」

しばらく沈黙が続いたが、それを破ったのは意外にも紗和だった。

「あなたは……一体何者ですか?」

「ん?ああ……」

一瞬だけ考えたような素振りを見せたがすぐに答えてくれた。

「俺は………後で教えてやるよ」

「………」

「………」

沈黙は更に続いたのだった。

 

あの紗和が珍しく完食した食事後、慎太郎に真剣な眼差しで見つめ始めた。

「………」

「あ?」

「いえ…ようやく食事を終えたので、ボクが話したかったことを話そうかなと…先程の人物は……何者なのてすか?」

路地裏で突然首を絞められ、さらには命を狙った男性のことについて聞き始めた。

「あれは『愛憎戦士』のケィアン。平行世界で製造された、12体の戦士シリーズ……その一体だ」

「戦士……闇の戦士ですか?」

「ああ」

そういうと慎太郎は、ストロングゼロの缶を開けた。

「何故にストロングゼロ……ここにお酒はどこにもないのに…」

いつから持ってたんだという顔をしながらそう言った。

「さっきコンビニで買った。……さて。戦士シリーズというものは、ウルトラマンに対抗するように──もしくはウルトラマンの代わりとして──設計された戦士のことだ」

「ウルティノイドのような感じでしょうか?」

立ち上がって冷蔵庫から唯一よく飲む三ツ矢サイダーを飲みながら話を続けた。

「そんな感じさね」

「なるほど……ですが、何故この地球にそのような人物が突然現れたのか、ボクはそこが未だに解明されません…」

それからケィアンに関する話を聞き続けた紗和。だが紗和はある疑問に思った。

「……慎太郎さんは別の世界線(タイムライン)から来たのに…何故、ケィアンに詳しいのですか?」

「……まあ、うん。気にすんなよ」

「……左様、ですか」

首を傾げながら慎太郎のことを見続ける。

「……あの、ケィアンは…何故ボクを狙ったのでしょう?そこが思いつかなくて…」

紗和は分かっていないが、慎太郎ならすぐに答えは出てきた。

「あいつは多分女を嫌ってる」

「女嫌い…なのですか。そういえば今朝、無差別殺人事件のことがニュースになっていましたね。しかも被害者は全員女性…なら、あり得ますね。ですが……何故、突然こっちの地球に現れたのでしょう?」

真面目に話している紗和はいつも通りだが、慎太郎にとってはどことなく苛立ちが増す。

「……チッ」

舌打ちをした。

「え…ボク、何かしましたか?」

特に敬語なのが苛立つようだ。

「いや、違う。ただ、面倒なことに巻き込まれたなって思ってな」

「面倒事ですか?」

「まぁな。だから俺はこれからお前を狙う奴を探しに行く」

「……はい!?︎」

そして、慎太郎は紗和を見ずにこう言い放った。

「お前は今日一日外出するな。分かったな?」

それだけ言って、玄関から出て行った。

「ちょっ!慎太郎さん!?︎」

呼び止めようとしたが、すでに外に出ていたらしくドアの向こうには誰もいなかった。

「……一体どういうことなんだろう」

一人残された部屋の中で呟く紗和だった。

 

それから数時間後。慎太郎が帰ってきた。

「おかえりなさい……って、どうしたんですか!?︎その怪我!」

そこには全身血まみれになった慎太郎がいたのだ。

「これくらい大丈夫だ」

そう言うと、自分の寝室に入っていった。

「手当しましょうか?あ、それとも病院に行きますか?」

「いい、それより早く飯を作ってくれ」

「分かりましたけど……ちゃんと教えてくださいよ?」

「ああ」

そうして二人は夕食の準備を始めたのだった。

ちなみに、ケィアンがなぜ紗和を狙ったのか。それは『愛憎戦士』という存在そのものが女を嫌うように設定されているからだ。

つまり、ケィアンにとって『愛憎戦士』とは敵であり、同時に邪魔者なのだ。

そのため、ケィアンは紗和を殺そうとしていたのだ。

(しかし、ケィアンは俺が倒したはず……まさか、蘇ったのか?)

「あの……本当に大丈夫ですか?なんか顔色が悪い気がしますが……」

心配そうな顔で見る紗和。

「問題ない。ほら、さっさと作れ」

「えぇ…あ、はい」

紗和は少し納得がいっていない様子だったが、それ以上は何も言わなかった。

それからしばらくすると、夕食が出来上がった。

「おお、美味そうだな。お前作れるんだったらちゃんと飯食えよバカ」

「は、はぁ……」

「じゃ、いただきまーす」

そう言って、食べ始める二人。

だが、慎太郎は箸を持ったまま動かなかった。

「……?慎太郎さん?」

「……」

「もしかして、どこか痛むところがあるんですか?」

「……」

何も喋らない慎太郎に痺れを切らせた紗和がこう言った。

「……はぁ、仕方ありませんね。はい、アーン」

そう言って一口サイズにしたハンバーグを差し出した。

「……は?」

「お腹空いてるんでしょう?さ、遠慮せずに」

「どつくぞテメェ」

「ちょっとした優しさじゃないですか…それに、慎太郎さんは食べないと傷や体力など回復できないじゃないですか」

「……」

確かに正論だった。慎太郎は食べ物を食べないと傷や体力が治らない特異体質だったからだ。

「では、はい。アーン」

再び差し出された。

「自分で食べるから貸せ」

「ダメです。はい、アーン」

またもや紗和は引かない。仕方なく慎太郎はそれを食べた。

「……うぐぅ」

「美味しいですか?」

「……不味くはない」

「素直に言ってくれればいいのに」

「うるさい」

そんなやり取りをしながら食事を済ませていく。

「ごちそーさん」

「はい、お粗末様です」

食事が終わると、慎太郎が立ち上がった。

「どこ行くんですか?」

「風呂に入る。お前は先に寝てろ」

「一緒に入りますか?」

「一人で入るわボケ」

「ですよねぇ……じゃあお言葉に甘えて」

そう言って、紗和は自分の部屋に入って行った。

(ふぅ……)

ドサッと勢いよくベットの上に座った瞬間だった。

(っ!!︎!?︎)

突然背後に気配を感じた。慌てて振り返った。だがそこには誰も何もいなかった。

(今のは……!?︎気のせい?)

その時だった。部屋のドアの向こう側から声が聞こえた。

「慎太郎さん……いますよね?」

紗和の声だった。

「あぁいるぞ」

「ならいいんですけど……どうして私の部屋に入らないんですか?」

「別にいいだろ。部屋たくさんあるんだろ?」

「私は構わないのです。それにあるみたいですけど…」

「なんだっていいだろ」

「はい。あ、ボク今日はここで寝ようと思うんですけどいいですか?」

「あぁ好きにしな」

「ありがとうございます」

それから数分後、紗和は眠りについたようだ。

だが、その眠りはすぐに掻き消された。鳴き声と地響きで紗和は目を覚ました。

(ッ!!?この気配……まさかッ)

慌てて起きて窓の外を見る。だがそこには何もいなかった。

その瞬間、地面が大きく揺れた。

「ゴシュィイイイイッ!!」

怪獣の咆哮であった。

「え……あれ…ゴルザァ!?なんでここにいるの!!?」

勢いよくガラスが割れた窓を開け、ゴルザを見上げた。というか窓ガラスの修理はいつになったらするのやら…

ぎょろり、とその大きな目が動く。その視線は紗和に──────ではなく、その近くにいる圧倒的強者に向けられていた。

「あちゃあ、前時代の遺物が目覚めおった」

慎太郎はそう言うと、割れた窓から外に出る。

「テメエ如き、パンチだけで充分じゃい!!」

刹那、慎太郎は朱殷色の光に包まれた。

「…(なんか物凄い殺意を感じる…)」

隣から感じた不穏な空気に耐えながらも、スマホを取り出し、青い光に包まれる。

瞬間、朱殷の光はゴルザの左目を刺し貫いた。

「雑魚乙」

貫手である。

「……うわ…」

開幕早々に殺戮が始まってラピスは既に引いていた。

その朱殷の光は、炎を纏って人の形へと変貌していく。そしてそこに銀色の光、まるでそれは鎧のようであった。

「冥土の土産に教えてやろう。俺の名はアバドン。ウルトラマンアバドン。地獄を描き出す者だ」

そう言って、朱殷の光は────ウルトラマンアバドンは、その姿を現した。

鈍く光る朱殷の体、ぎらりと閃く銀色の表皮。実に作り物らしい右眼、深々と刻まれたマゼンタの傷痕。

筋張った拳、隆起した筋肉、鋸が如くギザギザな背鰭、そしてぎょろぎょろと忙しなく動く目。

ウルトラマンアバドンが、朱殷色の殺戮者がそこにいた。

「……ボ、ボクは…ラピスと…言います。ウルトラウーマン…ラピス」

少しだけ身体を震わせながら軽く自己紹介をした。胸元のカラータイマーで本当の出身は即座にバレてはいるが…

「U40か」

「……はい?」

しかもこの2人、会話しながらゴルザを無慈悲に殴っていた。ラピスに至っては顔面を拳で1つで殴った。

アバドンはその左拳をゴルザの土手っ腹にぶちかます。さらに左目目掛けてチョップ、間髪入れず右目に目掛けて指を突き立て、血液を撒き散らしながら目玉を抉りとる。

「ゴルザはどこを食ってもまずいハズレ食材。残念ながら廃棄処分だ」

「え?怪獣食べるんですか?」

驚きながらも勢いよく顎蹴りをし、そのまま踵落としをした。ゴルザは成す術もなく脳震盪を起こした。これは可哀想なのか2人が無慈悲に攻撃を続けているからなのか…

アバドンは静かに頷くと、ゴルザの頭を掴み大きな岩に叩き付ける。何度も何度も、執拗に。その頭蓋を確実に破壊し、死に至らしめる為に。

……幾度叩いただろう、いよいよ額はザクロのようにパックリと割れ、砕けた頭蓋骨の破片からは脳漿が覗いている。しかしアバドンはさらに続けた。

「このクズどもめ」

そう言って、後頭部と背中を当てるようにゴルザの首を曲げていく。

嫌な音が鳴り響く。

いつの間にかラピスは耳を塞いでいた。だがそのまま銀色の手袋を外し、ゴルザに水銀を浴びせた。

だがこれは…大きな誤算だった。

「おいおい何やってんだこのクソガイジ!!!!!!」

「あ…し、しまっ、た…」

死ぬ寸前だったゴルザはラピスが放った水銀を吸収し、生命力が復活。さらには水銀のパワーを会得してしまった。

「テメエのせいで強化されたじゃあねえか!!殺すぞ!!」

「確かに毒殺する気持ちで出しましたけどまさか死ぬ寸前で強化するなんて都合の良いことあります!!!??」

口喧嘩しながらも2人の攻撃は止まらなかった。時々、ゴルザは水銀を吐いて飛ばすが2人は軽々と避ける。

「ちっ、こいつァマグマエネルギーで強化されたって前例もある!だから撲殺するしか無かったのに、ああ畜生!あいつもう治りやがった!!てめえごと死ねよ!!」

「理不尽だぁ!!」

理不尽と言ったが原因はコイツ(ラピス)である。だがラピスは素手で水銀に触り逆に吸収するように跳ね返していた。

同時に、アバドンは姿を変えた。

「ツキクサフローズ」

水色の体はまるで美しい氷のようだった。

ゴルザはいきなり地面を掘り始めた。その地面に水銀を吐き出した。

「汚ッ」

「逃がすか」

瞬間、辺りを冷気が包み込む。そして、ゴルザの足元に-39℃の液体を生成、ボトンと落としてやった。

「ゴッカンボトン────。水温は驚くなかれ-39℃、体内に取り込んだ水銀は固形になる。さあ苦しみながら死ね!」

「……粉砕の許可は可能ですか?」

「テメエにやらせる訳には行かねえ、そもそもオレの世界線で主人公パクリやがって。コイツは俺の獲物だ」

アバドンはそう言ってラピスを氷漬けにすると、氷の塊を降らせ、ゴルザに深い衝撃を与えた。

「コゴエク・ダケロ!!」

びし、びし。

ゴルザの肉体はひび割れていき、そして肉片へと変わった。

「!!?……バ、バードン!」

困惑しながらも突然バードンの名を叫び、何故か右目がオレンジ色に変わった。だが目の前にバードンはいない。そして攻撃したのはゴルザではない。そもそも手は出そうにも出せないので諦めてた。

「次はお前だ」

アバドンは、氷を強く締め上げる。

「ッ…!?」

まだ微かに動ける腕から炎が出てきた。それを氷に直撃させて溶け、その瞬時に距離を取った。

「………あの〜…ボクが一体何をしたのですか?」

ラピスにとってはよく分かっていないことだった。それもそのはず、ここは()()()()()()()という平行線だったから。

「お前は存在してはいけないんだ。この世に生まれたことが消えない罪なんだよ、死ねぇっ!!」

アバドンは、今度は体を猩々緋色に変える。

「ショウジョウヒマグマ!!ラピスゥ!!『溶岩で死ね』ェッ!!」

ラピスの体を溶岩が襲う。

ラピスはバク転をしながら溶岩を避けた。

「ちょ、ちょっ!?ちょっとぉ!!?」

避けながらも何度か止めようとした。その時、背後から異様な雰囲気を感じた。2人のことを狙う何かがそこにいた。

「邪ァッッ」

─────瞬間、辺りを閉ざすは暗黒。

「………まさか、アイツが…ケィアンですか?」

「うっわ……出やがったよ」

ずず、と闇を纏う悪夢。

「────ケィアン」

ゴクリッと唾を飲むラピスと嫌々そうに見つめるアバドンをニヤニヤ顔をしながら見るケィアン。

「あの………な、何が…目的なの、ですか?本当ならしんた………じゃなかったらアバドンと戦っていたんですよね?そしてこの地球に来た…何が、目的なんですか?」

「─────抹殺」

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