彼女は真面目な人間である。
彼女は優しさを持った人間である。
彼女は舞台に魅入られた少女である。
彼女は・・・
彼女は・・
彼女は・

「・・・寒いなぁ」

胸の中にポッカリと、空虚感をもっていた。 




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物語を書くっとほんとに難しい。
精神的にやばいときの方が書きやすいって自分は一体どうなんだろうかと思う今日このごろ。
やちよさんの話も少しづつ書いています。




 愛してほしかった・・・訳ではない。

 私はただ、温もりが欲しかっただけだ。

 

 人肌の交わりによって得ることができる温もり 違う。

 知識を得ることによって得ることができる温もり 違う。

 愛を囁かれることによって得ることができる温もり 違う。

 地位を持つことによって得ることができる温もり 違う。

 人に上に立って得ることができる温もり 違う。

 

 どれも違う。

 

 誰かを抱きしめることによって得ることができる温もり 違う。

 誰かを壊すことによって得ることができる温もり 違う。

 誰かを愛することによって得ることができる温もり 違う。

 物を買うことによって得ることができる温もり 違う。

 

 ぜんぜん違う。

 

 私がほしかった温もりではない。

 私が手に入れることができなかった、温もりではない。

 

 寒さが止まらない。

 生まれたからずっと、ずっと。

 消えてくれない。

 

 これはなんだ?

 何かがわからない。

 わからないから消すことができない。

 

私は、

 

 ただ・・・

   ただ・・・

ただ・・・

 

 

 

「聖翔音楽学園、シークフェルト音楽学院、フロンティア芸術学校、凛明館女学院、合同演劇『源氏物語』光源氏役は・・・星見 純那!!」

「ッ!! ハイ!!」

 一瞬の静寂、その後に凛とした声が稽古場に通る。

 星見 純那。

 聖翔音楽学園の生徒にしてこの物語の主人公。

 

 つまりは『私』だ。

 

 

 10月4日

 夏が終わり、季節が冬へ移る間の季節。

 

 昼下がり、午後の授業が急遽取りやめとなり、私達舞台俳優科は職員室に集められていた。

 「日本文化復興プロジェクト?」

 疑問を呈したのは西条 クロディーヌ。

 フランス人と日本人のハーフのおかげなのか非常に顔が整っている。

 余裕、とはまた違う。

 言葉で言い表すなら、そう・・・挑戦的。

 

 どんな相手でも『噛み付いていく』、『追い越していく』。

 

 上には上がいるということを理解してもなお諦めない、自分を磨き続ける貪欲さ。

 狼のような野性味と気高さを持つ彼女はやはりクラス、だけでなく学園でも一目置かれている。

 

 自分以外の誰かが持つ良いところ(超えたいところ)を見つけ、追い越す。

 

 そうすることで得ることができる温もりに彼女は満たされているんだろう。

 

 ズルイ

 

 

 「その一環としての合同演劇の依頼、ですか」

 西条さんの言葉を継いだのは天童 真矢。

 99期生の首席で、高名な舞台俳優とプリマドンナを両親に持つ演劇界のサラブレッド。その持って生まれた美貌と才能に溺れることなく努力怠らない、というよりは努力することが当然だと思っているんだろう。

 上を目指すことが当然、前に進むことが当然、勝つことが当然。

 その生き方はまさに『王者』。

 その目は誰かを下に見ることが当然だと思っているが、傲慢さは感じない。

なぜなら『あのオーディション』で彼女は初めて『敗北』を知ったからだ。

 

 『王』は周りに誰かがいない限り『王』ではない。

 

 『追いつこうとしてくれるひとがいる』、『自分は孤独ではない』ということを初めて知った彼女は初めて得ることができたその温もりにきっと感動を覚えたんだろう。

 

 クヤシイ

 

 「はい。以前皆さんが参加した鬼龍院さんの演劇、それを見た施設の方の知り合いにこのプロジェクトの運営に関わる方がいらっしゃったらしいです。」

 「そして、今回この舞台に立ってみないか? とウチに話が来たわけだ」

 綿里 鶴子先生。

 新人教師でわからない事だらけだけれど、私達のことを優しく見守ってくれる『優しい人』。

 烏丸 麗先生。

 教師としてベテランで、私達にも厳しく接する。けれど一番私達と近く、正面から接してくれる『強い人』。

 

 温かい。

 けれど、違う。

 

 落胆。

 また、寒さが広がってくる。

 

 だめだ。

 また悪い癖が出ている。

 何でもかんでも分析をして、その人の感情や行動理由を考えてしまう。

 子供のころからの私の癖だ。

 それだけで済めばよいのに、「母親のような温もりを与えてくれるかどうか?」を探してしまう。

 ・・・?

 (今、私何を考えた?)

 

 




遅筆で申し訳ありません。


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