青春ガールズロックと黄昏ティーチャー。   作:黒マメファナ

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文化祭編本格開始します(前半二話はほぼ茶番)


③再現スターリースカイ

 ヒナが天文部として文化祭でやりたいものが決まったと連絡してきたため、オレは空き教室を確保して放課後に聴取を行っていた。んでオレだけじゃ評価が甘くなるってんでヒナは助っ人兼コメンテーターに蘭を招いていた。そこでヒナが発した案っつうのがまたとんでもねぇものだった。

 

「あ、あの時の星を……ですか?」

「そうなんだー、あのいっーぱいの星空、るんってしたから、みんなにもそれを知って欲しいんだ♪」

 

 それこそが、ヒナが満を持して考えていた計画だった。春に天体観測をした時の星を教室に再現する、という無理難題でもある提案。余談だがヒナが蘭を呼んだのはオレとヒナに耐性がある、つかヒナがガマン出来なくなってキスとかしても大丈夫なヤツで、かつ天体観測のことを知ってるヤツ。んなもん全校生徒探しても蘭しかいねぇよ。

 

「ねぇ一成、コレ、相当難しいと思うんだけど」

「そうだな、オレも写真に収めたワケじゃねぇからな、それに、当時を完コピできたとしてもホームセンターであるもんで工作できるもんだとは思えねぇな」

「だよね、どうすんの?」

「つっても、方向はこれしか決まってねぇしな」

「……バカ」

「ってぇな」

 

 ローキックかまされても、オレはヒナを甘やかすって決めてんだから、と思ったが無茶を通そうとして怒ってんじゃなくて妬いてたのか。もしかしなくても、オレは蘭相手より甘いから拗ねてやがった、と……じゃなくて話が逸れたな。蘭は、まぁ後で構ってやるとして、この状況を打破するのはやはり羽丘きっての天才的問題児、略して天才児のヒナの知恵が必要ってことだな。

 

「ヒナにはコレが可能になる天才的アイデアがあんだろ?」

「もっちろん!」

「……え、ほ、ホントですか?」

「ホントホント! んーっと、あったあった! これ使えばいいよね?」

「お前コレ、マジで言ってんのか?」

 

 ヒナがスマホをタップして見せてきたのは、建物なんかをスクリーンに見立てて立体的な映像を流すっつう、プロジェクションマッピングだった。

 ──ふぅ、ヒナは想像以上のおバカさんだったか。確かにこれがあればお前の言う星空を映し出すことも可能だろうな。だがな、ヒナ、これを、お前は教室で出来ると思ってんのか? なーんで思いついちゃった時点でおかしいとか思わねぇんだよ、なんだそのあたしってすごいでしょ? 完璧でしょ? 天っ才でしょ? と言わんばかりの顔は。悪魔かよ。

 

「日菜さん、フツーに考えてプロジェクションマッピングをするには学校の予算と一成の薄い給料じゃ無理だと思います」

「その通りだけどな、蘭。そもそもオレは私財を投じる気はサラサラねぇからな?」

「えぇーそんなにかかるの?」

 

 えぇーむしろなんで天文部の予算だけで足りると思ったの? お前が見せたその駅のヤツ、そういうプロジェクションマッピングの企業が企画とか制作とかしてるから。学校予算じゃお前の脳内に広がってるものの100分の1くらいしか再現できねぇから。

 

「むー、つまんない!」

「そんなこと言っても、機材もタダじゃないですから」

「つか市販のプロジェクターでどうにかなるもんなのか?」

 

 泥船氷川丸は早速暗雲座礁に乗り上げ、またイチから考え直しか。そう、蘭もオレも思っていた。

 しかし、オレは忘れていた。天文部員はもう一人いることを。その一人が不可能を可能にする黄金の風であることを。無理かと諦め始めたその時、オレたちの笑顔が無くなったその時、黄金ムテキのヒーローは、輝く流星の如くやってきた。

 

「とてもステキなことを考えてるのね! あたしも協力するわ!」

「こころちゃん!」

「つ、弦巻……」

「こころ……なんで?」

「あたしも、天文部だからよ!」

 

 たったひとりの天文部同士、ヒナと弦巻は交流していた。特にカタチしかない天文部である弦巻は、こうして時折、気の向くままに羽丘にやってきていた。んで、この準備も例に漏れず、面白そうだからそのうち行きたいわと言ってたらしい。

 そして今日がその日だったと。最悪のタイミングでベストマッチな二人が揃っちまったよ。

 

「駅のやつはあたしも見たわ! 映像なのに立体的でとーってもキレイだったの!」

「だよねだよね! それで、これがあれば星を再現できるんじゃないかなって!」

「……というか、今更ですけど、プラネタリウムじゃダメだったんですか?」

 

 蘭、いい事言ったな。確かにプラネタリウムだとチャチではあるが手作りもできる。キットも雑貨屋なんかに売ってる。けど、ヒナの野望はそんな小さなものじゃ収まらんらしいな。

 

「だめだよ、あれって天井が丸くないと出来ないんだよ」

「あ、確かに……」

「でも、映像なら、最初っから教室のカタチに合わせられるじゃん!」

 

 ヒナにしては珍しい、なんとなくとか、感覚とかだけじゃねぇ、理屈で蘭を丸め込んでいた。つか論破されてんじゃねぇよ。お金とか、映像の中身とかオレたちだけでなんとかなるわきゃねぇだろ。

 無理、無駄、無謀、それは常識人が常識人たるために必要なもの。無理だと思うこと、無駄だと思うこと、無謀だと思うこと。人生は自分のスペックを越えたことの連続だからな。

 だから、スペックが無限のヤツのことなんてオレは対象外ってことでもあるけど。そこの金髪とかな。

 

「教室があの時の星空になるのね! すごい、すごいわヒナ!」

「うんうん♪ あ、どーせなら流れ星も流しちゃおうよ! あの時もいーっぱい見つけたんだからさ!」

「ええ、素敵だわ! ここに来るみーんな、笑顔になれるわ!」

 

 ツッコミよろしく蘭。オレはもうお手上げだ。笑顔至上主義で、無理も、無駄も、無謀も、なにも持ってない太陽サマの頭にはもう、この教室にあの星空が映し出されてる。現実的に不可能、なんてコイツには通用しない。なにせ、ここまでついてきた来たらしいいつもの黒服さん方が、何やらスマホで短い通話を終えると、オレに確認をとってきやがったからだ。

 

「機材の確保はできました。映像のほうも我々でなんとかします」

「……でしょうね」

「教室も、ここの空き教室ではなく、空いていた音楽室を借りれるように手配致しました」

「……おう、やっぱりこうなるのか」

 

 音楽室は吹部が練習できるように角地で広く作られてるってのが鉄板だ。例に漏れずウチの部室棟の最上階角地は、音楽室だ。ピアノ等をどかせば、確かにここの手狭な教室よりも満天の星空が一望できるだろう。

 ──蘭やヒナと見た、あの空が。それは、もしかしなくても楽しみだ。そんなオレのリアクションに蘭は肘でつついてくる。

 

「アンタが楽しそうにしてどうすんの」

「アレは確かにキレイだったし、ついな」

「ったく……気持ちはわからなくないけど」

 

 あの後、蘭はツインボーカルの相手に戸山を呼んでスペシャルライブをしたらしい。黄昏の空がテーマのAfterglowと星を追いかける戸山のツインボーカルは、それは盛り上がったらしい。

 そのくれぇ、あの空は見たヤツの世界を変えた。戸山も、弦巻も、羽沢も、ヒナも、蘭も、そしてオレも。だからヒナは、今度はもっと大勢にあの星を見せたいんだろうな。

 

「んじゃあ、オレたちがすることは音楽室を空にすることと、星が映えるように光を塞ぐことだな」

「そうだね」

「運び出しは我々も手伝います」

「ありがとうございます、オレとヒナと蘭だけじゃさすがにキツいしな」

 

 テンション上がってるし、言わないでおくが、まぁこれは部活動の範疇を逸脱すぎたものではある。きっとこれが完成し、公開された後、オレは上司にお説教をされるだろう。当然だ、部費でできる範囲のことをして楽しむのが文化祭なんだからな。

 けど、ヒナが楽しそうで、手伝いにきてくれた蘭も弦巻も楽しそうだから、怒られるくれぇなんてことねぇよ。責任者として、教師として、笑顔にしてやりたい、なんてな。それはちょっとばかし、弦巻に汚染されちまった考え方かもな。

 

「ヤッホー、ヒナー、進んでるー?」

「あ、リサちー!」

「リサ!」

「お、今井か。いいとこ来たな」

「え?」

 

 こうして甘味片手に様子を見に来た今井を巻き込み、パンを差し入れてくれたモカをも巻き込み、じゃなくてコイツはオレ目当てだからどっちかっつうと巻き込まれにきたんだが、どこに機材を設置するかとか、音楽はどうする、とかの話を進めていった。

 

「あたしが弾く~! ジャジャジャジャーンって感じで!」

「いやいや、ヒナ~、それだとフンイキに合わなくない?」

「アタシも静かな感じがいいと思います」

「それじゃあ蘭が弾く~?」

「え、アタシ? モカのほうがいいんじゃない?」

 

 女三人寄れば姦しいってのはまぁ、よく言ったもんだな。いつもヒナや蘭と一緒にいるさすがのオレも、この空間にはついていけねぇと壁に背中を預けて遠巻きに見守っていると、いつの間にか、隣に弦巻が同じように壁に背中をくっつけて意味ありげに微笑んでいた。

 お前、そんな顔もできんのな。いつもの純粋なガキみてぇな楽しそうな笑顔じゃねぇ、見守るような、ちょっとだけ、インテリジェンスを感じる笑顔だ。

 

「先生は、本物の魔法使いだわ」

「そんなことねぇ、シンデレラを城に届けてやることもできやしねぇよ」

「けれど、先生は素敵なドレスと靴をヒナに与えてくれたわ。ずっと独りで寂しそうだったのに」

「それこそ、オレの魔法(チカラ)じゃねぇよ」

 

 それは姉である紗夜であり、千聖たちパスパレの仲間たちのおかげだ。同じギターを始めたことで、紗夜と日菜の溝は埋まりつつある、って千聖が言ってたんだよ。才能、という差は歴然だったが、姉妹はここで違う道を進んだからってな。芸術には間違いはあっても正解なんて存在しねぇ。紗夜のようなバカみてぇに生真面目で、堅物な超絶技巧も芸術だし、日菜のような雑味と自由も芸術だからな。あとは二人が過去の影を振り払えば、もう紗夜がアイツを敵視することもなくなるってわけだ。それはオレの魔法じゃねぇ、音楽の魔法だ。

 パスパレだってそうだ。オレとは関係ナシに、いつの間にかヒナはアイドルになってやがった。例えオレが、無能のままヒナとも会話せず天文部を放置してても、アイツは勝手に仲間と一緒に何かを見つけて笑顔になってた、そういうヤツだ。

 

「けれど、もし先生がいなくなったら、ヒナは悲しむわ。それは、先生のチカラよね?」

「ふっ、マジかよお前、それはフツー、オレのせいっつうんだよ」

「フツーってなにかしら? あたしにはそう見えただけよ?」

「いや、悪い。弦巻に曖昧な言葉は通用しねぇな」

 

 空気を読む、なんてコイツには通用しねぇ。空気に文字はないって大真面目に返されるだけだ。自分がしたいことを、他者を笑顔にすることを、他者の内側にまでズケズケと踏み込んででも実行しようとする。こんなにキレイな魂をしてるのに、こんなにキラキラと眩しくて惹きこまれる人間性があるのに、コイツがどこか孤独な理由がよくわかった。

 太陽に近づきすぎた星は、呑み込まれる。カンタンなハナシだ。惑星は恒星と常に一定の距離にいる。太陽は恵みでもあると同時に発する紫外線でヒトをカンタンに殺せる。コイツのことは、遠巻きに見てんのが、人間には一番害もなく、恩恵を得られるってことだな。

 

「なぁ、弦巻。独りは寂しいか?」

「そうね、独りよりもみんなといた方が、楽しいわね!」

「そっか」

 

 サラ、と金色の髪が窓からの風に靡いた。光を反射してるんじゃねぇかと思うほどの長くキレイな髪は千聖に近いけど、アイツよりもより光に当てると眩しい光を放っていた。

 コイツは独りに慣れてるって顔だな。こんな特殊なヤツだから、友達とか自分と何かを共有してくれるようなヤツなんて、いなかったんだろうな。だから、ヒナといるときのコイツはキラキラしてる。

 視線が重なり、思わず見とれちまったことに気づき、バツが悪くなって視線を逸らす。興味ってのはこういう感覚なのを思い出したよ、と言い訳を頭ん中で並べていると、いつもの無邪気な雰囲気に戻った弦巻が声を上げた。

 

「あ、そうだわ、先生」

「ん?」

「ヒナとえっちなことしてるのよね?」

「──それ……ヒナから聞いたのか?」

「ええ」

 

 なんてことしゃべってんだあのお気楽問題児。弦巻なんて下手すると子どもはコウノトリが運んでくることを疑わなさそうなヤツなのに、つか信用できたとしても明け透けにベラベラと惚気るヤツがいるかあのバカ。オレが教師だってこと忘れんじゃねぇよ。

 

「ダメよ? 子作りは結婚してからってお父様とお母様が言っていたもの」

「あ、ああ……気をつけてはいるけどな」

 

 ソッチはしてねぇよ。けど、子どもを作るためにシてんじゃねぇって言っても通じるだろうか、この雰囲気じゃ無理だな、どうあったってどういう状況か、どんな気分なのか、一から十まで、根掘り葉掘り、事細かに説明しねぇと納得はしてくれねぇだろうな。モカにヒナとヤってんのを見られてた時よりも正直焦ってる。純粋無垢を望んでたが、いざ本物と対面すると恐ろしい。

 冷や汗を流して沈黙していると、弦巻は更に爆弾を放り投げてくる。

 

「そうね、ひにんぐ、というのがあれば妊娠はしないのよね? お父様が言ってたわ」

 

 性教育は正しく、包み隠さずな教育方針なんだな、弦巻家は。良いことだと思うよ、性的なことに関心を持つ時期はどうしたって来るんだから、隠すと余計に非行に走りやすいしな。

 その点、このご家庭の令嬢はとても良い情操教育をなされているんだが、ならなんでこんなに純真なんだよ。性的本能を胎盤にでも置いてきたのか弦巻。

 

「けれど100%ではないのだから、ヒナを泣かせることはしちゃダメよ?」

「き、肝に銘じます……」

 

 コイツに説教をされちまうと、自分がいかに汚い人間なのか思い知らされるな。ヒナは既に何度か泣かせてるし、きっとこれからも泣かせることになるからホントに、救いようがねぇなって。こんなオレをお前はそれでも魔法使いだって言うんだから、一生勝てそうにはねぇよ。敵に回したくねぇ。

 

「ねぇねぇこころちゃんちって、電気じゃないギターある?」

「クラシックギターか」

「クラシック、ギター?」

「真ん中に穴が開いてて、電気使わずに音鳴らすギターだろ?」

「うんそれ~」

「それならウチにあるはずよ! 見たことある気がするもの!」

 

 不確かだな、えらく。まぁなかったらあの方々が準備するんだろ。つか唐突に言い出したけど、クラシックギターなんて何に使うんだよ。そんな視線に気づいたヒナが瞳を輝かせながら、エアギターをしてみせた。

 

「あたしが弾くの!」

「ああ、文化祭でってことか?」

「うん!」

 

 また予算オーバーなものを。まぁもう手遅れだからいいけど。どうやら音楽バカ四人が揃って相談した結果、いつも持ってるような電気ギターじゃねぇギターを使って、ロックじゃなくてしっとりとBGMを奏でる星空のリサイタル、を思いついたらしい。音楽室の黒板に生真面目で丁寧な字でそう書かれていた。まとめたのは今井か。

 

「でも、ヒナだけだと大変だろ」

「アタシも練習したら弾けるし」

「蘭ちゃんと交代で」

「本物のプラネタリウムとかも始まる時間決まってるじゃないですか。そんなイメージにすれば、負担も減るじゃんって感じで~」

「そしたら~、せんせーもひまができるしさ~?」

 

 興味(ヒナ)思惑(モカ)善意(いまい)好意(らん)、奇跡の一致だった。

 ヒナは新しいことをしてみたい。モカはオレと一緒に文化祭を回りたい、今井はそんなバカどもの意図を汲んで、蘭はヒナには負けたくないしオレと関わってる時間を長くしたいってとこだな。後ろで弦巻が、当日も手伝いに行くわ、と楽しそうに笑って、その日はそれまで決まらなかった何もかもが決まって解散になった。

 ちなみにそのまま申請を出すわけにもいかねぇから、書類には手作りの本格プラネタリウムを背景に部員による演奏会、としておいた。蘭とモカは部活にも入っていないため、この文化祭の間の仮入部員の登録、弦巻も外部生として活動登録をしておいた。こうすればそこまでとやかく言われることはねぇしな。

 ──んでもって、一仕事のあとのタバコはうめぇもんだ。とある感慨に耽りながら、オレは夕焼けに白い煙を吐き出した。

 

「……また吸ってる」

「蘭、帰ったんじゃねぇのか」

「アンタいるし……じゃなくて、すぐ目を離すとコレなんだから」

「仕事終わりは癒しタイムが必要なんだよ……まったく」

「そういう言い方する。正当化しないで」

「正当化はオレの得意分野だな、つかお前らとの関係も正当化の末なんだが」

「……はぁ」

 

 いつもの、殴り合いの言葉の応酬。けど、蘭にはちょっとトゲがあって。まぁ、それで幻滅したっていいさ。これが大人だ。悪いことを自分で悪いと思ったら、オレはやってけねぇよ。

 それに、オレは独りじゃタバコ無しで生きていけねぇくれぇのどうしようもねぇクズなんだよ。

 

「せっかく……はぐ、しようと思ったのに」

「独りだと思ってたからな」

「バカ、独りが寂しいクセに、独りになろうとすんなっての」

「……ごめんな、蘭」

「イヤ」

「今日はえらくケチだな、いつもだったら、許してキスくれぇはしてくれるのに」

「カレシ面すんな」

「してねぇよ」

 

 そんなもん、一度だってしたことねぇっつうの。むしろお前がカノジョ面してる時あんだろ。トゲのある蘭は、やっぱり拗ねてんだろうな。ずっとヒナにかかりっきりだったうえに、最近は千聖がやたら誘ってくる。それがオレだからとは言ったものの、やっぱり不安なところもあるのか。お前だけは本当にいつもマトモな恋をしてるよな。

 

「蘭」

「なに?」

「今日、泊まってけよ」

「……っ! いいの?」

「もう教師は終わりだからな」

「……ずるい」

「クズだからな、尽くしてやる」

「ウソ、尽くさせるタイプでしょ」

「それはそれ以外のハナシだろ?」

「変態」

 

 変態ってな、すぐ罵倒しやがる。けどいいんだよ、お前は奥手で遠慮がちなんだからこうやってオレから誘ってやらねぇとすぐあの悪魔どもに予定を埋められちまうからな。そんな蘭だけにはオレが尽くしてやるってんだよ。

 

「……ウソだ」

「なにが?」

「気づいてないかもしれないけど、アンタが尽くしてるの、アタシだけじゃないし」

「そうか?」

「ほら……やっぱりクズ」

 

 それは、今のオレですら気づいてない、気づくはずねぇもんだ。

 ──オレは理想に尽くしてる。同時に、過去という名の思い出にも、同じくらい尽くしてるんだ。ただのクズですらなかった頃に言葉を尽くして縛り付けようとしたアイツと同じ匂いがする、アイツに。

 

 

 

 

 




直しながら前半削れば千聖ヒロインにしなくてよかったような気がしたけど、そうなると本格的に話が明るくなりにくいからやっぱりちーちゃんはヒロインで。あの三人だけだとどうしてもね。
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