青春ガールズロックと黄昏ティーチャー。   作:黒マメファナ

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④青春フェスティバル

 羽丘の文化祭は、校舎を全部使った小さな、いや小さくもねぇな。結構な規模の大きさのまさにお祭りだ。特にウチはダンス、演劇など割と文化部が全国有数の知名度を誇っているため、それらの活躍の場でもある文化祭には他校や、他の中学校から多数の客が押し寄せる。それがなぁ、今年は特に去年全国大会で好成績を残したダンス部、そしてなによりも羽丘の誇るエース瀬田薫の相方を務める白鷺千聖の存在は、それだけで人入りを増やしていた。なにがってめちゃくちゃヒト混みひどい。

 

「最後尾はぁ~! こ、コチラで~す!」

「お疲れさん、羽沢」

「あ、せんせぇ〜、蘭ちゃ〜ん」

「……頑張って、つぐみ」

 

 これには列の整理をしてる生徒会メンバーもてんやわんやの状態。普段は生徒にまかせっきりのはずの教師もほとんどが出張ってのも一大イベントとなっていた……つーわけで、オレはその中で悠々と、のんびり廊下を歩いてた。羽沢が目を回してたんだが、ドンマイ庶務、せめて生きて帰ってこいよ。オレはその中で教師は教師の特別席があるってんで余裕の表情だ。

 

「そういうトコがクズなんだけど?」

「褒めんなよ」

「フツーに貶してる」

「あ? 演奏会の練習するって言ってクラスの出し物手伝うの回避したヤツ、どこの誰だっけか?」

「くっ……」

「そして更に言うと、仮入部ってカタチでソイツを無理やり天文部ねじ込んだの、誰だっけ?」

「アンタ……さいってー!」

 

 なんとでもどうぞ。オレは今お前に対して有利なカードを持ってんだよ。最低でもクズでもなんとでも言えよ。別にオレはクラスが気まずいとか言うお前のポツリと漏らした弱音を無視したってよかったんだけどな。

 

「……通報する」

「してみろ」

「ふーん?」

「あ、待って本気かお前」

「だってこの間のはアウトでしょ」

「まて、ここでそのハナシはマズいからな、オレが悪かったから」

 

 ただし、蘭もオレに対しては有利なカードを持ってる。しかもオレの手札が紙切れになるレベルの、文字通り手に人権を握られてるため、蘭には万が一にも勝つ見込みなんてなかった。

 それでも挑むさ、勝てるかどうかじゃねぇ、大人のプライド的にそれを考えてる時点でもう負けてんのさ。

 

「一成はなにと戦ってんの……?」

「プライド?」

「ないじゃん」

「……おい」

「は? 生徒に流されてほいほい……ヤっちゃうくせに」

 

 いや、最後の最後で照れるなよ。蘭はいつまで経ってもそれには慣れなさそうだな。まぁヒナや千聖みてぇに遠慮もなく下ネタが飛び出すのよりもかわいげがあっていいけどな。つかアイツらは時々刺激的すぎて困るくれぇだし、極端なヤツしかいねぇよな。

 

「初めて会ったとき、土下座しようとしてたしさ」

「そんなこともあったな」

「まだ三ヶ月前のハナシだよ?」

 

 蘭に笑われてそういやそうか、と釣られて笑っちまった。いや、正確に言うと四月末だったから、まだ三ヶ月も経ってねぇな。コイツ、前は家のことで揉めて、Afterglowでも揉めて、何もかもが嫌んなってサボってたんだっけか。そん時に比べて蘭はずっといい女になってやがるんだから、すげぇよな。

 

「そうだ、お前んとこのメイド喫茶、割と人気っぽいな」

「なんか衣装キワドイし、オッサンばっかで最悪だよ」

「あ、やっぱりか」

 

 一年の学年主任がテンション上がって同僚と視察に行ったっつうハナシを耳にしたから予想は出来てた。お前らホント通報されたら? つかA組の担任……は、あの新婚ゴミクズだったな。

 

「担任はウワサだと予備の一着持って帰ったらしいし……」

「あー、ヨメさんに着せるのかな」

「……ホントここの先生、マトモなのいないの?」

 

 男に関しては悪いがいないとしか言い様がねぇ。あ、まともと言えば、まともな部類に入るのは大和んとこの担任は仏のようなオヤジだな。職員室でもまるで置きもんみてぇだからな。別に以前はスパルタ教師でデビルと呼ばれていた、みてぇな感じでもなく、穏やかなヒトだったはずだ。

 

「まぁ、一成が就職してるくらいだし」

「待て」

「うっさい」

 

 なんか八つ当たりされた。くっそ理不尽だなオイ。こちとらヒナの演奏会目当てで来た行列さんの相手してたってのに。オレだって多少はマジメにやってんだけどな。今は休憩時間で、ヒナは弦巻と二年生のエリアで遊んでるだろうけど。

 

「そこのお二人さん、フェイスペイントやってるからさ! よかったらどーぞ!」

 

 そしてオレと蘭は一年のエリアにいて、やたらとイケメンなJKに声をかけられたところだ。ニカっと笑う姿がまた画になってることで、集客効果はバツグンってところだな。賑わいがすげぇよ。

 

「すごい人気だね、巴」

「ああ! お陰様で大盛況だ!」

「すげぇな、つか素人でこんなことできんのか」

「ええ、よかったらお揃いにしときますよ?」

「お揃いは遠慮しとく。つかオレはいいよ」

「え〜、せんせー、行っちゃうの〜?」

 

 呼び込みを受けたところに、ネコのお髭が素敵なモカが出てきた。つかお前が描いたのか、今の客。

 そういや、モカは母親がデザイナーなんだったな。ポスター、衣装、そういった見た目の映えってのも、コイツは幼い頃から見てきたってことか。それを自分にも適用しろっての、ものぐさめ。

 

「にゃーにゃー。せんせーがネコずきーってヒナさんに聞いたからおヒゲ描いたのに〜」

「そうか……」

 

 ヒナのやつ、信用に値すると思ったヤツには口が軽いのがホントに難だな。コイツはコイツで、動物としてのネコが好きなワケじゃなくて、オレの性癖ってのを知ってて、往来だからそう言ってんのか、それとも、ヒナがオレに口を滑らせるために張った罠か……どっちだ? 

 

「せんせー? あたしの特技忘れたの〜?」

「……おっとやらかした」

「せーかいはぁ〜……ヒミツー♪」

「おい、そりゃねぇだろ、気になるじゃねぇか」

 

 うっかりしてた。心を読まれて、どの道モカにも知られちまった。

 ついでに言うと隣で冷てぇ目をしてる蘭は知ってるっつうか、ベッドの下を漁られたせいでバレてる。当然蔑まれたさ。しかもヒナが持ち込んだカチューシャと尻尾の付いた下着もついでに見つかってしばらく口を利いてくれなかったくれぇだからな。

 

「変態」

「……んなこと言われてもな」

 

 言い訳しようもしてみるけど、実際なにも違わねぇと思う。でもこればっかりは愚息が反応しやがるんだからどうしようもねぇんだよ。だからその目はやめろ。クズの上にケモ耳性癖の変態は確かにアブネーヤツだけどさ。

 そんな雑談を廊下でしているうちに、時計を見ると演劇部の発表の時間になっていた。そろそろ行かねぇとな。

 

「モカたちは見ねぇの?」

「きょーみなし~」

「誰かは、残らないといけませんから」

 

 モカはまだしも、宇田川はホントに言動全てがイケメンだな。瀬田がいなかったら瀬田の枠は確実にお前だよ。もう一人の姿がなく、聞くと上原は一人で観に行ったらしい。つまりはあの人混みの中にいたのか、大変だろうな。

 教師枠、ってのがあるが、ほとんどは生徒と一緒にもしくは教師同士でそれぞれのブースをエンジョイしている。だから蘭を隣に座らせてもなんの問題もねぇってわけだ。ついでにハナシをつけてあるから、ヒナと弦巻の席も確保してある。

 

「ずるいことばっかりして……ホントクズ」

「うっせぇ。その分テキトーに出し物見れたんだからいいだろ」

「まぁね」

 

 ヒトが近くにいると蘭はツンと素っ気ない態度ばかりとりやがる。モカ曰く照れてるだけだよとは言われてるし、まぁ人前でもヒナみたいにくっついて来られたら困ると言えば困るけどな。

 なんて考えてると宇田川にはなんか今日はいつもより口数が多いですねと言われちまった。いかんいかん。生徒がいる手前オレは教師だ。ついついこの雰囲気にアテられてデート気分になっちまうな。切り替えねぇと。

 

「ホントに座っていいの?」

「いねぇんだから、いいだろ」

 

 講堂の教師席はガラガラもいいとこだった。プログラムには演劇部の次が教師たちによる寸劇となっていたのでそのせいだな。運が良いな、これなら他にヒナが連れてきたとしても空いてるな、と思ったところで早速、ヒナから、リサちーとひまりちゃんも一緒に連れてくねー、とあった。アイツはまったくしょうがねぇヤツ。

 

「ひまり、やっぱり入れなかったんだ」

「みてぇだな。けど、ヒナに見つけてもらえたのはラッキーだったな」

 

 しゃべりながら、周囲に誰もいないことをいいことに蘭はオレの手を握ってきた。こっちもこっちでしょうがねぇヤツ。言葉だけはいつものツンとした態度なのに、繋いでやった手だけがやたらと甘えてきて、んでもって嬉しそうだ。ヒナが着くまでは、このままでいてやるか。

 

「一成は、クズだけど、あったかいから……すき」

「演劇はロミジュリなのに、ここでラブロマンスは砂糖が多すぎるだろ」

「イヤだった?」

「コーヒーはブラックが好きだけどな」

「偶にはミルクと砂糖も、おいしいよ」

 

 それはいつも、お前らから貰ってるからこそオレはブラックコーヒーでいいんだよ。特に蘭の青春は、甘くて、そのくせどこか酸味があるから、余計にそう思える。賑わう前列の中、求められるままに隠れるようにキスをした。暗がりのせいか、それとも雰囲気のせいか、思わず舌を入れそうになったのを我慢できたのは我ながらよくやったと褒めたいところだ。けど、蘭はこんなところでキスをしたことがよっぽど恥ずかしかったらしく、照れるように目をそらして、それから笑ってくるから思わずオレも笑っちまう。

 

「むぅ」

「ひ、日菜さん……! みんなも……」

「あら、ここは確かに、特等席ね!」

「お邪魔しちゃってゴメンね~蘭」

「あ、あはは……ごめんなさい」

 

 そこで漸く、ヒナたちが到着した。確保してあったオレと蘭の前列に上原、リサ、こころが、そしてオレの隣には蘭と更にヒナにサンドイッチされた。しかもヒナ、不満げにオレの右腕を抱き寄せて半袖で露わになっている二の腕に唇をつけてくる。

 

「蘭ちゃん、カズく……カズ先生といちゃいちゃしてたんだ」

「ヤキモチはわかったから、くすぐったいしやめろっての」

「じゃああたしともいちゃいちゃしよ~」

「……蘭、ヘルプ」

「知らない、一成が不用心にキスとかするからでしょ」

「キスしたの? じゃああたしにもー!」

 

 突き放すようなツンとした言い方だが、実のところ、左手は蘭がガッチリ握られていて、ヒナは右腕を抱き込んでわざわざ胸を押し付けてくる。両手に花、まさしく両手に麗しき花といった状況なんだが、今は教師で、周囲の目があるのに、これは嬉しくともなんともねぇよ。つか蘭、今わざとヒナに、さっきキスしたこと教えただろ。

 ──結局、そのまま大輪の花に圧し潰されかけながら、瀬田と千聖の百合花咲き乱れる演劇を見ていた。ロマンスシーンのたびに迫ってくるのホントやめろっての。展開知ってるから、余計にハラハラしてみてられねぇんだよ。

 座ってるのに気の休まらない演劇を見た後は、蘭の演奏会の支度だ。手伝ってくれるらしい千聖と準備室に行った。

 

「ち、千聖……?」

 

 それが間違いだった。演技力高く素の表情をその鉄壁の笑顔の中に閉じこめることができるこの女がにこやかに、手伝いをしてくれることで油断していた。身長差がそれなりにあるのに、身動きの取れないほど威圧感のある壁ドンをされた。そしてその表情はわかりやすいほどに怒ってやがる。

 

「なんでまた急に」

「舞台から見えたのよ」

「なにが?」

「私を虜にしたヒトが、私を置いて人目を憚らず、教え子に鼻の下を延ばしていたところよ」

「……残念ながら、ジュリエットをロミオから奪うのは無理だったもんでな」

「なら終わった後、迎えに来てくれてもよかったのではないかしら?」

「死んだジュリエットをか? 死神になんのはごめんだね」

 

 真面目に答えるつもりのないオレに千聖の表情は険しい。ったく、普段の余裕はどこ行った、お前。

 ロミオの熱にでもアテられたのか? あんな言葉を囁かれて……思うところでもあったか。

 

「それは」

「つか観客の目を裏切ってんだろそれ。ジュリエットがロミオ以外を想ってどうすんだよ」

「私は私よ! 私は、白鷺千聖よ。ロミオではなくあなたに心を奪われた、憐れな女よ」

「そうだな。お前は白鷺千聖だ。観客を魅了してみせた、名前を捨てられねぇ憐れな花だ」

 

 ──名前など無意味なもの、僕は僕、君は君だ。

 ロミオが……いや、あれは瀬田の言葉だな。アドリブを挟んだんだろう。千聖の反応と瀬田の声がそれを物語っていた。ロマンチックだが、それ故に恐ろしいまでに、十代の若い言葉だ。

 まぁ、幸い、と言っていいかわかんねぇけど、ロミオもジュリエットも実際に相当若かったハズ。違和感はなかったが、オレには響かなかったよ。

 名前には意味がある。名があるから薔薇はその意味を持つ。ロミオとジュリエットのロマンスも、言ってしまえば二人がモンタギューとキャピレットだから成り立つんだって思っちまうからな。

 

「なぁ千聖、なんでオレに拘る? ヒナと違ってお前は興味だけでそこまで必死になれるようなヤツじゃねぇだろ」

「……あなたが、()を見てくれたから……ただそれだけだと笑われても、私にはそれ以上に魅力的なことなんてないわ」

 

 ここは文化祭の喧騒がウソのように、静かだった。だから、千聖の小さな嘆きは、全て耳に届いた。

 たったそんだけの理由でか。オレはそう思って、()()()()()()()が青春に生きるガキにとってどれ程重要なことかを思い出した。たったそんだけで、コイツらの世界は劇的に変わる。モノクロが彩り溢れるように、日が登って、空が濃紺から澄んだオレンジに変わる様子を、早送りして見るように、劇的に、ドラマチックに。

 

「結局、お前も青春の真っ只中、ってワケか」

「無粋な言葉ね、そうやって、自分だけ外に出ようとするなんて」

 

 迫られ、唇を奪われた。小柄な千聖の身体は、腰に手を添えただけで持ち上げれそうなほど、軽い。けど、壁際に追い込まれ逃げられねぇほど、コイツは怖え顔をしてた。

 いつもどこかで軽さを見せてきた千聖。キスをしても、舌を絡めあっても、なんなら枕を並べていても、魔王らしい余裕の表情をしていた。だからオレは気に入られてはいるが、それはヒナや蘭、モカとは違う感情だと、信じてた。だからコイツのことを文化祭中は生徒とは言うが正直後回しにしてた。構ってくれる男なんていくらでもいんだろって、蘭を優先したこともあった。ヒナが甘えてくるから、と電話を切ったこともあった。モカが拗ねるから、メッセージの返事をしなかったことがあった。

 ──違ぇんだ。余裕の表情をしていたのは、そうじゃねぇと不安だったからだ。オレもどっかで忘れてた。白鷺千聖は、オレとは一周離れた十代の、ガキなんだ。

 

「どうして?」

「なにが」

「どうして拒絶しないの? 振りほどくことなんて、簡単でしょう?」

「まぁな」

「……なら」

「オレがミスをしたからだ。間違いを認めねぇまま振りほどいて逃げるなんて、大人としちゃ落第もいいとこだ」

 

 ここで、やめろ、と言えないところは教師としてクズもいいとこなんだが、それは置いておこう。そんなことは百も承知で、オレは千聖に向き合うことにしたんだからな。

 クズ教師として、生徒とカラダを重ねてでも、前に進む。黄昏ティーチャーであり続けること。どれだけミスをしても、そこだけはぜってぇ、間違えたりしねぇよ。

 

「なぁ、千聖。お前、最近男遊びしてねぇだろ」

「……ええ、お誘いも、全て断っているわ」

「つまりは本気なんだな」

「もちろんよ。あなたのせいで、他の男全てが色褪せてしまったわ」

「ヤりまくってんだから、多少は軽い女だと思ってたんだけどな」

「そうね、こんなこと初めてで、私も驚いているの。燃えるような恋、全てを捨てでも手に入れたいヒト……もう、あなたでなければ濡れないほどに」

「そりゃ光栄だ」

 

 舞台で感じたロマンスシーンとは比べものにならない程の迫力に満ちたセリフだな、千聖。それがお前らしい告白ってヤツか? オレは応えることはできねぇけど、どうせそれでも、お前は責任を取れっつうんだろ。こちとらそれは三回目だから覚悟はしてやる。ただし、お前だけには整体の代金請求してやるからな。

 

「けれど、言葉ではまだ軽いままよね。私だって覚悟を見せるのが、礼儀よね」

「覚悟って、なんだよ」

「本気の証明、よ」

 

 そう言って、千聖はかわいらしい装飾のついたスマホを取り出した。そこにはコイツの気に入った男たちの名前が登録されているだろう、お得意様の連絡用の、スマートフォン。

 それを千聖は床に──力いっぱいたたきつけた。防護フィルムのおかげで液晶のカケラが跳ねることはなかったが、たったそれだけの簡単な動作で、ソイツはただの物言わぬスクラップと名前を変えた。

 本気すぎだろ、千聖。本気で、オレ以外の男はいらねぇってか。恐ろしいヤツだな。恋する魔王(おとめ)の本気、ずいぶんパワフルで、そういうのは嫌いじゃねぇな。

 

「いいのか?」

「マネージャーのスマホにも連絡先は入っているし、それにあのスマホに登録してあったお得意様がお得意様なワケはここにあるのよ」

「は?」

「──私がもし、本気で恋をした時は、応援してくれるって」

「つまり、お得意様は全員、お前のウソを知ってたってことか」

「あなたも含めて、ね♪」

「はぁ、お前……すげぇよ」

「お褒めに預かり光栄ね……それで、アレは新しく、貴方専用のスマホにでもしましょうか」

「フツーにそっちのでいい」

「それじゃあつまらないけれど……修理が終わるまではコッチで連絡するわね」

「おう」

「それで、次はいつかしら?」

「テメーは仕事あんだろうが。またそれも連絡する」

「ええ、待ってるわ♪」

 

 はぁ、しまったな思ったより時間を取られた。準備しねぇと、そうやって千聖に文句を言いながら先に準備室を後にすると、そこにはヤケに憮然とした表情のヤツがいた。

 オレは、ソイツを抱き寄せて、唇を奪ってみせる。こんなことして、千聖にアテられたな。本気の証明、正直、しびれた。だからオレも、証明してみせた。

 

「な、なにして……!」

「今日、ウチ来るだろ?」

「……うん。けど、次の日も早いんだから、控えめだからね」

「んじゃあ出前取るか、時間もったいねぇし」

「ホント……クズなんだから」

 

 そうして、文化祭一日目は幕を下ろした。二日目はあんまり人入りは少ねぇだろ、と思ったら、千聖曰く、二日目も演るんだと。は? じゃあ混むに決まってんだろ何考えてんだこの学校。

 

 

 

 

 

 

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