青春ガールズロックと黄昏ティーチャー。   作:黒マメファナ

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④青春トワイライト

 あのクズ教師に出逢ってから、オレはなんとなく暇な放課後は屋上へと足を進める日々が続いた。今思えば、オレは既にアイツの虜になっちまってたんだと思う。笑ってる顔、怒ってる顔、時折、達観したような顔も、全てが黄昏に混ざって、絵画でも見てる気分になった。

 そんな日常に新しいものが入りこんだのは、それから少し、二月になってのことだった。

 

「そういえばさ、最初に相談した子とはどうなったの?」

「あ、あーっとな……自然消滅、した」

「えー? あそこまで頑張って自然消滅?」

「うるせぇ、大体アンタの皆無な恋愛経験で相談なんて無理あんだろ」

「ひどーい。一成ひどいよー」

 

 いつの間にか、オレは川澄先生、って呼んでたハズが由美子に、由美子もいつの間にか清瀬くんから一成へと……まぁそれだけ仲良くなっちまったってことだ。そりゃ距離が近づいた分、気持ちも近くなっちまうわけで。

 

「……今は、別に好きなヤツいるからな」

「え、ウソ、だれだれ? クラスの子?」

「はぁ? 教えるワケねぇだろ、ナメてんのか」

「気になるでしょ、フツー、ってかもしかして一成って惚れっぽい?」

「んなことねぇよ……そんなに恋とかしたことねぇからわかんねぇけど」

 

 アンタだよ、なんて言えるはずもなく、恋愛下手なオレはこの時間を、大事にしていた。この一日が永遠になればいい、そう思ってた。

 んで、それは由美子も同じ気持ちだったらしく、紫煙を吐きながらポツリと呟いた。

 

「……私も、好きなヒトができたんだ」

「……は? 趣味と仕事で手一杯とか言ってたアンタが? なんの冗談だよ」

「ホント」

「そうかよ。どんなヤツ?」

「気になる?」

「いや……別に」

「えー、もっとこう、根掘り葉掘り訊いてくれていいんだよ?」

「あーもう、うぜぇ。顔近い。なんでそんな前のめりなんだよ」

「だって、私の好きなヒトがキミだから」

 

 けど、けどな。あのクズは平然とオレが言えなかった言葉を口にしやがった。んで、気分が盛り上がったバカに押し倒され、オレは高校一年生の冬に、ファーストキスをした。

 悪魔みてぇな女で、そのまま、むせ返るくれぇの誘惑の表情で、由美子は告白……にしてはオレが思ってのとは違う言葉が飛び出た。

 

「好きな子が誰でもいいけど……私を好きになってよ。一成」

「……ガキかよ」

「大人だよ? だからこうして、直接誘ってる」

「淫行教師」

「大丈夫、まだ処女だし」

「っ、んなこと言ってんじゃねぇよ」

「あはは、赤くなってる、かわいいなぁ」

 

 今年で26になるクズ教師は、16歳の男子高校生を、こうして見事に堕としてみせやがった。

 それからは、ホントに一応は恋人同士だけど、生徒と教師、っつうこともあって、コソコソと会ってた。そのスリルのせいか、お互いバカみてぇに求めあって、そういうコトをすんのがある種当たり前になったまま、一年半が過ぎた頃。

 

「東京の大学に行く?」

「おう。親が一人暮らししてみろってさ」

「……恋人を置いて?」

「そんなに離れちゃいねぇだろ。それに、いつか、オレは由美子と……一緒になりてぇしな」

「一成……」

「だから、オレはそこでアンタとは違う教師になってみせるさ。証明してみせる」

「それで?」

「証明したら、そん時は……一緒に暮らして、結婚しよう」

「……一成はやっぱり素敵だね」

 

 この約束は果たされることはねぇ。いつか、明日、未来、そんな曖昧で、不確かな言葉を信じたオレは、由美子の異変には、気づけなかった。そもそも、アイツが、そう遠くない未来に、いなくなっちまうってことさえ。

 

「……それがオレの、青春だ」

 

 ──モカは、オレの長ったらしい自分語りにゆっくりと瞬きをした。時計の秒針と、沈み始めた黄昏に照らされて、頭の中を整理してるだろうモカが言葉を発するのを待った。

 ホントは大学のこともあるけど、まだその辺はどれがいつのか、時系列が狂っちまうからな。そこはアイツが入院してる病室にやってきては、話をして、そのうちに逝っちまうってだけ、知っといてくれれば充分だ。

 

「……やっぱり、せんせーは、その時にあったことを、ずっと引きずってるんだね」

「そうだな」

「だから、日菜さんと蘭が、せんせーの特別の中の特別なんだ」

 

 蘭がそうなのは理解できる。アイツはなんつうかオレにとって教師としての理想を取り戻すきっかけになったヤツだから。けど、ヒナは、なんでだ?

 その答えは、モカが言葉にしてくれた。

 

「せんせーは、由美子さんと日菜さんを重ねてるんだよ。どこか似てたんじゃない? 雰囲気とか、そういう感じのが」

「……あー、なるほどね。んで、シチュエーションもばっちりで、オレは拒否しきれずに、ずるずると今まで来たってワケか」

 

 認めちまえばなんで今まで気づかなかったんだってくれぇだな。ヒナは何処か由美子に似通ったものを感じる。笑った顔が、まるでひまわりが咲いたような、けど悪魔的な何かを感じるところ。アイツも強引で性欲に忠実だったしな、んで若干メンヘラっぽかった。そういうところもなんとなく、ヒナにそっくりだ。

 オレは、ヒナに由美子の影を見てたのか。

 

「すっきりした、サンキュ、モカ」

「……でも、なんにも解決してないよ?」

「解決なんてしないさ。オレはこれ以上、アイツらに干渉はしねぇ」

「え?」

 

 オレは結局、教師として以上に、過去の亡霊をヒナに押し付けてた。だからその責任も、取る。ヒナがそんなオレに赦しでも、裁きでも、なんでもいいから下してくれるってんなら、オレは今更教師に拘る気はねぇ。

 逆に、蘭がこんなクズのハナシを知った上で、それでもオレに青春ロックを聴かせてくれるってんなら今度こそ、アイツの前で堂々と教師として立てる。

 今、オレはどっちの覚悟もできてんだよ。モカに聞いてもらって、話ながら自分の気持ちを整理した結果だ。ヒナの前に教師でいられなくなるオレも、蘭の前に教師でいられるオレも、どっちでもいいんだ。

 

「……クズ」

「知ってる。なにせオレの教師としての師匠は、とんでもねぇクズ教師だったからな」

 

 高校生のオレにタバコの味を教えて、セックスを教えて、オレがクズになった直接の原因は由美子にあると言っても過言じゃねぇからな。おかげで、今も大変な目に遭ってるわけだが、教師としては、アイツのやってきた通りにすると、驚く程上手くいっちまうんだから、すげぇヤツだと思う。

 

「オレはもう、アイツらのフォローはしねぇ。アイツらがオレの隣にいてぇっていうなら、勝手にすりゃいい」

「……そっか」

 

 オレの覚悟の言葉に、モカは諦めたようなそんな悲しい表情をする。蘭とヒナが特別の中の特別なら、自分は選ばれることはねぇって顔だ。そうだな、お前は特別ではあるけどそこから先、オレの過去には踏み込めねぇし、踏み込ませるつもりもねぇからな。

 

「ひどいなぁ。あたしは、こんなに……こんなに、せんせーが好きなのに」

「悪い、モカ。流されて、お前の気持ちを宙ぶらりんにしちまってるな」

 

 そもそも、それこそがオレの一番の悪癖でありオレ自身が一番、嫌うところだ。

 結局大学でオレは、他の女に目が眩んだ。ゼミが一緒になった同期と未成年の分際で宅飲みして、酔ってキスをされて。いつの間にか、周囲の公認のカップルになった。

 ──ああ、一番のトラウマはコレだな。思い出しただけで頭がまた痛んできた。結局それからオレは、全くといいほど成長してねぇ。担任の時だって、いがみ合う二人に中途半端な関わりをして、結局、その女には最低なヒトだと泣き喚かれ、片方には言葉もなく学校そのものを辞められた。だからこそ、もうそれはおしまいにしねぇと。

 鼻を鳴らすモカを抱きしめて、せめて今日だけは、と思ったところで、突然ドアが開いた。無粋な闖入者、それはすっかり沈んだ太陽が、また昇ってきたような錯覚があった。

 

「ダメよ、先生。貴方は間違っているわ」

「……あれ~、こころん……」

「こころ……なんで」

「先生が間違ってしまいそうだから、お見舞いついでに、笑顔にしに来てあげたわ!」

 

 堂々の仁王立ちをする太陽サマは、オレやモカの中で、それしかねぇと思ってた考えをたった一言で吹き飛ばした。

 もう賽は投げられてんだ、今更どうしろってんだよ、こころ。世界を笑顔にするお前は、どんな魔法を使えるってんだよ。

 差し入れらしいメロンを持ってきたこころは、オレの顔をじっと見て、それから頬をそっと撫でた。

 

「どんなにわがままでもいいのよ。笑顔になりましょう? 今のままじゃ、先生は笑顔でなくなってしまうもの!」

「オレはそんな単純なガキじゃねぇよ」

「ガキとか、大人とか、そんなの……そんなことで先生が笑顔でなくなるなら、大人になる意味なんてないわ」

「それで他のヤツから笑顔を奪ってでも、か?」

「そんなことないわ、先生は──」

「──あるんだよ。オレがオレのままでいる限り悲しませる。モカや千聖、紗夜、たくさんのヤツを、泣かせちまう」

 

 正直、全部思い出しちまってもうどうでもよくなってきちまった部分もあるんだ。オレがどんだけ頑張って、生徒のための教師であろうとしても結局はあのクズ教師と同じことになる。ガキに惚れちまって、ソイツのために、教師としての人生を使い切っちまった。使い切らせちまった。

 由美子は、もっと多くの生徒を笑顔にできたハズなのに、一成が隣にいてくれるから、と笑って、ガタの来てるカラダでオレを送り出した。それ自体が大きな後悔だ。もう手遅れになっちまったオレの痛みだ。

 だからもう、いいんだ。オレのために誰かの人生を使い切ってもらいたくなんてねぇんだよ。それが教師ってことならオレはそれを捨ててでも──そう思った時、乾いた音がした。ジンジンと頬が痛む。痛ぇ、そんな熱に戸惑っていると、涙で目を腫らしたモカが、肩で息をしながら、腕を振りぬいていた。

 

「バカ、せんせーは、一成はサイテーだよ! カッコつけて、大人だからってなんでもわかって諦めたフリして、閉じこもってるだけのガキじゃん……っ!」

「……モカ」

「あたしは、あたしはっ、蘭のロックが好き。エモくて、弱いのに強くて、泣き虫で怖がりなクセにあたしが気付かない間に前に行っちゃう蘭のロックが大好き。だから、そんなロックを取り戻してくれた一成のロックも、エモくて、まっすぐで、大好きで」

「……けどそれは」

「それがどんなスタートでも、カッコいいって思えるのは、一成だから。一成だからロックで眩しいって思えちゃうんだから。だから、こんなトコでうずくまるのはやめよう? あたしが蘭たちに依存してたのを救ってくれたみたいに、蘭が羽搏くきっかけをくれたみたいに、せんせーも悩んだりヤになった時は、独りじゃないんだってことを……あたしたちがいることを信じてよ。明日が信じられないなら、あたしたちを信じて」

 

 頭を殴られたような衝撃だった。モカの言葉、魂の叫び、それは間違いなく、オレの魂にも響く、青春を彩るようなロックな言葉たちだった。夕陽の名前を持つバンドのギタリスト。なに考えてんだかわかんねぇ表情で、青春を奏でる灰の花は、その灰の中から真っ白な花を咲かせていた。

 

「……モカの言う通りだわ。誰かが笑顔になれないのなら、誰かが笑顔にしてあげる。貴方が誰かを笑顔にすることで失われる笑顔は、また別の誰かが届けてくれるわ」

「こころ……」

「どうせなら、とびきり贅沢になりましょう? 蘭や、日菜が特別で、モカや千聖、紗夜のことも大切、それでいいじゃない! だって、ヒトの幸せはみんなそれぞれなのでしょう?」

 

 みんなそれぞれ、か。どんなに最低な今の状態も、オレにとっては理想を現実にするためのプロセス。

 ──それだけじゃねぇ、最初から、オレが生まれてから今までしてきた選択全てが、いずれ抱く理想を叶えるための鍵なのかもしれねぇな。

 

「……ありがとな、こころ、モカ。目が覚めたみてぇだ」

「先生を笑顔にするためだもの」

「おねぼうさんですな~、まったく」

 

 ならオレは明日から逃げるのはもうやめよう。オレはもうヒナに過去を押し付けたりしねぇ。蘭に明日を強要したりもしねぇ。

 オレを大切だと言ってくれる生徒たちが、オレにとっても大切で、オレが輝けるのは、そうやってクズでもなんでも、アイツらの教師でいる今の時間なんだからな。精一杯、最後まで足掻いて、教師を全うしてみせて、その後のことはその後で決めりゃいいんだ。

 

「ますますクズになったね、せんせーは」

「そうか? 開き直っただけだけどな」

「それがモカの言うクズ、じゃないかしら?」

「そうだけどな。最近オレを慕ってくれんの、美人揃いなんだから、クズにもなるっつうの」

 

 認めちまえば楽なもんだ。蘭も、ヒナも、紗夜も、千聖も、モカも、美人ばっかり。ヤってる時は蕩けちまうんじゃねぇかってくれぇだし、手放したいなんて不能じゃねぇんでな。来るものは拒まねぇよ。ただし去る者も追わねぇけど。

 卒業までこうやって爛れた教師と生徒の関係を続けて、まぁ、卒業後も偶には遊びに来てくれよ。美人の相手なら、喜んでしてやるからな。

 

「あ、こころだけは拒否するからな」

「仲間外れというわけね?」

「お前を相手にすると社会的にピンチだからだよ」

「とか、言いながら、美人じゃないあたしのことは放っておくのね?」

「はぁ? お前もバカみてぇに美人だろうが、鏡見たことねぇの?」

「……モカ、あたし、もしかして口説かれてるのかしら?」

「ううん、せんせーはこうやって勘違いさせて毒牙にかけてるだけだよ~」

 

 そんなさっきまで涙を流していたとは思えねぇほど和やかな空気になり、見舞いのメロンを切り分けて、奥沢を含めた四人で頬張って、駄弁って、んで黒服に連れられて帰っていくのを、モカと見送った。

 あ、泊まってくんだな。予想はしてたけど、つか最初からその気だったもんな。

 そして再誕したクズの第一犠牲者として、性欲のままに交わり、カラダをくっつけ合って、眠りに堕ちていった。

 ──だから、こっから先の記憶は、夢だ。弱ったオレが見た、幻想の世界。

 

「……あれ、まだ立てないの?」

「まさか、休憩中だよ。見ろ、一服吸ってんだろ。すぐにまた、オレは教師として頑張るさ」

 

 羽丘の屋上で落ちない夕陽を見ながら、その黄昏を浴びて、紫煙を吐くオレに、人影が近づいてきた。

 オレと同じタバコを吸って、独特……なんつうかヒナに似た雰囲気を纏ったオレと同年代の女。って、こんな周りくどい説明はいらねぇな。オレの幻想が作り出した、由美子の姿だ。

 

「頑張りすぎはカラダに毒だよ。大丈夫?」

「心配すんなって。オレも、今じゃ立派なクズ教師だからな。心配すんなら腰にしてくれ」

「ふふ、あはは、言うようになったじゃん、顔を真っ赤にしてた一成が、こーんなに変態のクズになっちゃうなんて、悲しいなぁ」

「てめぇがそうなるように教え込んだんだろ、センセ?」

 

 もう十年近くしてこなかった会話なんだけどな。思った以上にするっと出てくる。オレの中での由美子のイメージだろう元気な教師やってた姿で、その幻影はひとしきり笑った後、背伸びをしてオレの頭を撫でた。

 

「……もうそんなに年齢が変わらなくなったね」

「それでも、アンタはオレにとっては永遠にクズ教師だし……愛したヒトだよ」

「キザなのも、相変わらず……っと。なるほどね、このトークテクニックで生徒を堕としてきたんだもんねー」

「ケンカ売ってんなら今すぐ突き落としてやるよ、由美子」

 

 ああ、幻影だろうと、夢だろうと、オレはアンタに会えてよかったよ。オレはあの頃よりも随分クズになっちまって、アンタの前で啖呵を切ったような教師にはなれなかったけど、それでももう一つの方はちゃんとなんとかなりそうだよ。

 

「生徒に寄り添える教師ってヤツ?」

「おう。ちと、寄り添いすぎな部分もあるけどな」

「えー、ちと、かなぁ?」

「ちょっと、だろ。少なくともアンタよりはな」

「確かに」

 

 にしても、こうやって夢で見ると思うな。由美子はヒナを常識人っぽくして大人にしたらこんな感じになりそうだ。まぁ、性格は壊滅してるし、多分似てんのはエロメンヘラ悪魔ってトコくれぇだけど。

 

「あー、ヒナちゃんね。カズくん、なんて呼ばれていっつも鼻の下延ばしてるよね、まぁ、私なんかより、ピッチピチでかわいいけど」

「拗ねんなよ」

「それより、私としては蘭って子の方が、気になるかな。なんだか、一成を見てるみたいでさ」

「……オレ、あんなか?」

「昔はね」

 

 アクティブにオレの今に口出ししやがって、死人に口なしって言葉をちゃんと守れっつうの。

 んで、夢枕に立つんだったら、ちゃんと事前に申告しろ。オレは由美子に言いたかったこと、たくさんありすぎて、整理できねぇんだからさ。

 ──まぁ、まとまんねぇまま、全部言葉にさせてもらうさ。ったく、なんか、自然と泣けてきちまうな、クソったれ。まだまだ、オレはアンタの前じゃガキ同然だな。

 

「……墓参りとか、いけなくて、悪かった」

「気にしてない。一成は()()()()()忘れたワケじゃないからね」

「浮気して、悪かった」

「それはちょっと不満かな? でも、お詫びはキスで許してあげよう。私は一成に激甘だからね」

「んなの、お安い御用だ」

 

 唇を触れ合わせて、段々、黄昏が紺碧へと色を変えていく空を二人で眺めていく。こっからまた夜が明けて、オレは現実に教師として生徒たちとココで沢山の時間を過ごしていくよ。アンタの分まで生きて笑って、ヒトを笑顔にしてみせるよ。

 

「ん、その意気だ! それでこそ、私の大好きな一成だよ」

「……年始には、会いに行くことにするよ。由美子のために買った指輪を、置いていかなきゃいけねぇからな」

「そんなもの、用意してくれてたんだ……ふふっ、つくづく、キミは素敵なヒトだね」

「当たり前だろ。オレはアンタと同じ、クズ教師だからな」

「それじゃあ、そんな一成がすべきことは一つだよ。剥き出しの青春ガールズロックを奏でるあの子たちを、その両手で包んであげて」

「ああ、約束する……じゃあまたな、由美子」

「うん、またね、一成」

 

 ──サンキュ。ずっと、見ていてくれて。これからも、オレはアンタを愛してたことを、アンタがいなくなってからずっと泣いてたこともぜってぇ忘れねぇからな。だけどもう、泣いたり、ぶっ倒れたりなんかしねぇ。オレは、アイツらにとってのクズ教師だからさ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




由美子の死という事実を乗り越え、再臨のクズ。
ここから始まるのは単なるクズによる囲い込みだよ
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