青春ガールズロックと黄昏ティーチャー。   作:黒マメファナ

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第二章は間違えまくるティーチャー。クソザコメンタルなクズなので、はい。


第二章:失敗の連続
①屋上トゥルース


 新章突入、というところで悪いが、バカじゃねぇのと言わせてくれ。

 ──バカじゃねぇのあのヒトの皮を被ったケダモノ。一丁前に氷川日菜だとか人間らしい名前を自称してるソイツは弦巻の別荘に泊まった翌朝、何故かオレのベッドで寝ていた。きちんと黒服の人が一切起きない二人を部屋に連れていったから一緒に寝てないことは明白、つまり潜り込んできやがった。思わず夢の中だと思って寝惚けていたオレは言いたい放題言ってやった。流石のヒナもこれなら堪えるだろうとそれはもう散々に。

 結果は、言わずもがなだ。コイツに言葉が通じると思ったオレが間違いだった。

 

「んー……そっかぁ、じゃあえっちしよー」

 

 抱き着いてきて甘い声でのその一言にぞっとした。そもそも日本語が通じてるんだかないんだかわかんねぇんだよなコイツ。寝惚けてるにしても思考回路が理解出来ん。後でケダモノ曰く、夜シてなかったから、とのこと。もっと意味不明だった。下半身に脳ついてんのかテメーは。そんなある意味刺激的な日曜の朝を経て、週明け月曜、幸い長い連休で授業がなかったからいいものの、死ぬほど腰が痛かった。アイツにはもうちょい淑女の恥じらいを持って欲しい。

 

「いてぇ……」

「そりゃぁ災難ですな〜、日菜さんとは昨日も激しいやつを……と」

「なにメモってんだおい。なにに使うつもりだ」

「ナニとかやめてくださ〜い、つーほーしますよ〜?」

「……はぁ」

 

 そんで月曜の昼には屋上で別の悪魔に遭遇する始末だ。もう一回くらい言っとくか、バカじゃねぇの。

 ──コイツは、青葉は、きっと羽沢か美竹あたりから会ったっつう話を聞いてまた釘でも刺してきたんだろうな。釘を刺す、つってもコイツの場合は全力で穴だらけになるまで刺しにくるから困るんだが。そんな力いっぱいやったら折れちまうからな釘。

 

「なにしに来やがった」

「いえ別に〜。蘭がみょ〜につぐとコソコソしてるから遂に蘭を押し倒したのかと思って〜」

「あっそ、つかオレカンケーねぇじゃん」

「知ってる〜」

 

 むちゃくちゃイラッとした。じゃあ何しに来たんだよ。お前はホントいちいち遠回りだな。人間年食うと気が短くなるんだからな。のんびり眠そうなのはいいが、オレはお前から解放されてぇよ。ついでにヒナからも解放されてぇ。

 

「そんな〜会話するのも苦痛、みたいな顔は傷つくな〜、あ〜モカちゃん悲しーな〜よよよ〜」

「……うぜぇ」

「ノリ悪いな〜」

「お前のこと嫌いだからな」

「うわ〜あたしもせーとなのに〜」

 

 生徒? てめぇが? 冗談も大概にしろよ、自分が何したか覚えてねぇのかこのクソガキ。羽沢なんか朝会った時に、先生のこと誤解してましたなんて言って頭下げてくれたのに。いや実際、誤解はしてねぇけどな。ヒナとはそういうことする関係だけど。まぁとにかく羽沢はそれを蘭やモカなんかにも同じことをするんじゃねぇのかっつう疑惑の目、みたいなのをやめてくれた。けどコイツはまだ目の奥にまるで浮気でもされたかのような敵意を込めてやがる。目下の爆弾は青葉だけだ。

 

「モカちゃんだけに目下〜、なんちって〜」

「うぜぇ上にさみぃんだよクソガキ」

「冷た〜」

 

 人の心を読むんじゃねぇよ。ちょっと思っちまったことなんだから余計に腹立つし、それをわかって言ってくるから今すぐこの頭にアイアンクローかまして投げ捨ててやりたいくれぇだ。

 

「本題を言えクソガキ。オレだって今日はタバコ吸ってるだけじゃねぇんだよ。タバコ吸っててもイライラするイベントがあるのオッケー?」

「せっかちさんだな〜、もしかして早漏?」

「は?」

「……んもう、ホントにノリ悪いな〜」

 

 早くねぇよ。じゃなくて、マジで今日はやっつけなきゃならん仕事あんだから手短に済ませてくれ。なのになんで吸ってるかってこの後はヒナがお昼食べに行きたいとか言い出したから。どっちにも遅れるとロクな目にあわねぇんだよ。

 

「蘭たちとなんの話、したの?」

「フツーのことしか話してねぇよ」

「……つぐが突然、先生は悪いヒトじゃないとか言い出して」

「知るかよ」

 

 やっぱりその話か。知らない美竹ならまだしも、オレがヒナとヤってることを知ってる羽沢がオレを擁護し始めたのが、こいつはよっぽど気に入らないらしい。しかもその日はヒナとオレは同じところに泊まりで、どうなるかなんて羽沢も思い至るハズなのに、ってとこか? 

 

「つぐをどうやって騙したの」

「オレが知りてぇくれだけど、聞き方が既に喧嘩腰のお前には何言っても通じねぇだろうな」

「教師の皮を被ったケダモノみたいなクセして」

 

 それはなんというかオレがヒナに抱く感想と同じ、なんて皮肉だな。まぁどうだっていいな。こいつにとってオレは生徒を己の性欲のまま犯す危険なケダモノ。羽沢にとっては、不信はあれど先生として(ツラ)を保ってる。その溝はどう説明したって埋まるわけねぇんだよ。

 

「質問は終わりか? 帰れ、お前と話すことはねぇよ」

「あたしにはあるんだけど?」

「もうすぐヒナが来るからな、それでもいいならどうぞご自由に」

「……っ」

 

 ありゃ本物のケダモノだからな。食い散らされたくなかったらとっとと逃げることをおすすめするよ。大人を言い負かすには大人ぶった背伸びが必要だとか思ってる限り、お前はオレを黙らせることはできねぇよ。大人びてるは子どもに使う言葉だしな。

 二本目に火を点けるのと、青葉が足音荒く思いっきり扉を閉めるのは、ほぼ、同じタイミングだった。そんなチャチな言葉じゃ大人には笑われるだけだよ、青葉。そうだな……どんな言葉が大人を黙らせるかといえば。

 

「カズくんっ! おまたせ!」

 

 この悪魔の言葉がわかりやすいな。青葉がいなくなって少ししてから、にこにこ顔でやってきてオレの腕に纒わり付くコイツは、オレの天敵だ。自然な動作で未成年喫煙をして嬉しそうに笑う、無邪気な……いや無ではねぇな。邪気に溢れたヒナは、まるで紫煙を吐く行為が別になんともないかのように、会話を成立させる。

 

「来なくてもよかったんだがな。つか聞きそびれてたけど、外で食うのか?」

「うん、そうだよ? 弁当持ってないし、学食はヤバいでしょ?」

「オレスーツ、お前制服、イコール案件。お分かり?」

「いいじゃん、制服デートしよ」

「はぁ? アホかお前、良くて援交、最悪の場合逮捕されるだろ」

「ねぇいいじゃん! 奢ってあげるからさ〜」

「そういう問題じゃねぇよ逮捕はよくねぇだろ」

「ジョーダンだよ〜♪ ね、何食べる?」

「ああもうわかった……ファミレスとかでいいだろ」

 

 大人を黙らせるのに飾り気のある言葉なんていらねぇんだよ。こうやってな、子どもの言葉で理不尽なくらい邪気を込めた無邪気な仕草で大人を振り回せば、自然となにも言えなくなる。それは大人の方に責任が重く重くのしかかってるから。特にオレはガキを無碍にしねぇっていうポリシーがある。プライドとポリシーは大人になれば何よりも重くて、時々何よりも軽くなる都合のいい生き方だ。オレの、ヒナに対する対応がいい例だよな。

 

「あ、カズくん……腰、大丈夫?」

「大丈夫じゃねぇよ。湿布貼ってるくれぇ大丈夫じゃねぇ」

「……ごめんね」

「謝るくらいなら、もうちょいなんとかならねぇの?」

「むり、だってベッドの上とかハジメテでさ、気持ち良すぎてトんじゃってるもん」

「……ったく。今日はナシだからな」

「はぁい。って言ってもそもそもできないけどね〜」

「ああ月ものか。今週は安泰なようで助かる」

 

 なんかどうせならと振り切ってからというもの、ヒナの狂気みたいな感覚は減っていた。相変わらずめちゃくちゃだが、前みたいに会話が成立しないことは減った。あと日曜にまた少し、自分の話をしてくれた。今、コイツが何をしているのか知ることが出来た。

 

「……あ、ねぇねぇ行く前にさ、ぎゅーってして」

「なんで」

「いいから……キスとかえっちはあるけど、ぎゅーってしてもらったこと、ないなぁって」

「オレはカレシじゃねぇんだけど」

「そうだけど、先生にぎゅってされたい」

 

 あと、甘えてくるようになった。この変化も間違えてるけど、最初が間違えてるからな。まぁ、変わってるだけいいってことか。いやしねぇけどな。だからオレはカレシじゃねぇから。お前に愛は分けてやらん。

 

「ほら、バカなこと言ってねぇで、行くなら行く」

「……むぅ」

「んな顔してもしねぇよ」

「じゃあえっち」

「アホか。初めての時の再来はもっと勘弁してくれ」

「どっちか」

 

 だが駄々をこねたヒナに思わずため息が出る。今日はいつもより頑固だな。もしかして青葉とのやり取りでも見てたのか。空気は読めねぇヤツじゃねぇし屋上に来るタイミング的にもそう考えるのが妥当だな。大丈夫だよ、お前みたいな失敗はしねぇから安心してほしいところだ。

 

「んじゃあ……後でな」

「えー! 今、今がいい! ごまかしてるでしょ!」

「違ぇよ。どうせ、抱き着いてきてそれだけで満足しねぇだろ、お前は……」

「あそっか! じゃあ駐車場、先に行ってるね!」

 

 泥沼に足を突っ込んだみてぇに沈んでる。ヒナとキスしたり、ヤったりすることに、少しずつ、少しずつ抵抗が無くなっていく。ほとんどの場合は無理やりだった。舌を口ん中に捩じ込まれて、押し倒されて。教師になって最大の失敗とも言うべきこの間違いは、こうやって長い間、オレをクズにしていってる。昨日はついにいつの間にか、オレがヒナをベッドに押し倒してたし。

 

「マジで欲情しちまってたんだな……アイツに」

 

 ガキと大人は違うからなんてポリシーはオレの中で最も重くて、同時に最も軽いもんだ。抜け出せない沼の前にそのポリシーは、いつ間にかポケットから零れていた。

 結局、メシを食いに行く前に車の中でヒナのわがままを叶えて、その代わりにメシの間はまたヒナの話を聞いた。そして、車から降りるアイツは嬉しそうに去っていく。

 

「……日菜さんと、どこか行ってたの?」

 

 見送って車から降りてカギを閉めたその瞬間、そんな声が飛んできて思わず肩が跳ねた。聞いた声で安心しながらも、オレはそれでもゆっくりと振り返った。なんか妙に不機嫌そうなその顔も、なんつうかほっとするよ。

 

「びっくりさせんなよ、美竹」

「声掛けただけなんだけどやましい事あるんだ……通報していい?」

「やましいに決まってんだろ。ヒナとメシ食いに行ったんだよ」

「外に? それってヤバいんじゃないの?」

「……言うな」

 

 客観的な観測はより事態を重く認識させられる。なんて、思わず頭が良くなっちまうだろ。ただメシ食いに行っただけ、まぁ、車の中で一切接触しなかったのかと問われれば今すぐ警察に自首しに行って罪を償う覚悟ができているが。やっぱ人間たるもの、溜め込むより吐き出した方が何百倍も楽、つまりは抑えるより抱きしめて舌を突っ込むほうが何倍も楽なもんでな。

 

「にしても駐車場で会うなんて珍しいな」

「話題すり替えて、恥ずかしくない?」

「全然、それで逸らせるなら自分を褒めてやりたいくれぇだ」

「クズ教師」

「大人イコール、クズだからな」

 

 そんな軽蔑の表情をすんなよ。先週の車ん中で言っただろうけど、ヒナの機嫌を損ねると後でやべぇんだよ。がっついてこられるとホントに腰が痛くてしんどいから。美竹にはそこまで言えはしねぇんだけどさ。

 

「……まったく、屋上にいないと思ったら」

「悪いな」

 

 そういや、コイツとも約束って感じじゃねぇけど、屋上にいることを伝えたら、妙に嬉しそうな表情をしてたっけか。頑張ってそんな感じの気持ちを堪えようとして、でも全然堪えきれてない、年相応の嬉しそうな表情。ツンケンしてるより素直な方が印象もいいんだけどな、少なくとも、赤メッシュなんて気にならねぇくらい。というか、コイツまさかオレの車が停まるのを見てわざわざ来たとか? いや、いくらなんでも美竹にそこまでオレ個人を拘る理由なんてないか。ヒナじゃあるまいし。

 

「今からは?」

「仕事だな」

「……そう」

 

 そしてなんか、全体的に表情が分かりやすくなったな。少しだけ目を伏せてしゅんとして、期待が外れた、ってそんな感じが伝わってくる。同時に意地の悪いことを言っちまったことに罪悪感を覚えるからついつい甘くなっちまう。

 

「専門じゃねぇけど、屋上で生徒の話を聞くんだよ。忙しい仕事だろ?」

「それって……あ、アンタわざと……!」

「さぁな。けど、やめるならそれでいいんだけどな?」

「うるさい、バカ、最低、クズ」

 

 美竹の恨み言を背中で聞きながら屋上へと階段を上っていく。わかりやすいお前が悪いんだ、なんて大人として最低の言い訳を心でしながら、息が上がりそうになるのをなんとか堪えながら。上る度に自分が喫煙者で、その枷を負ってる感覚がする。けど、ここで後悔してもオレはやめられねぇんだよな、後悔も喉元を過ぎれば忘れて、また火を点ける。

 ──まぁ、今のところは、美竹がいる間は点けずに済みそうだけどな。

 

「……アンタ、ホントにやめたら?」

「なんの、ことだ?」

「タバコ。毎日階段で息上がってたらしんどくない?」

「そういうお前は元気そうで……血の気の多いやつはいいねぇ」

「ケンカ売ってんの?」

 

 そういうところが血の気の多いって言ってんだよ。ちったぁ献血でもして世の中に貢献した方がいい。つか良く見てんのな、あんまり見られても困るんだがな。後、やめたら? でやめられたら苦労してない。なにせ尽きる前にストック買うくらいヘビーになってきてるからな。

 刺すような不機嫌そうな視線を流し、屋上のドアを開けた。夕方には早い、青色の空。風は雑多な街のぬるさを運んでくるその中で、オレは美竹に振り返った。

 

「なんで、そんなにタバコを嫌うんだ?」

「……別に、わざわざ毒になるもの、吸ってる意味がわかんないだけ」

 

 嘘が下手なヤツだ。意味がわからんだけなら、別にオレに向かって二度も言う必要はないしな。嫌な思いでもしたかそれとも……いや、ヒナを基準に考えるのはよくねぇな。アレは特殊だってことを偶に忘れるのは、オレの悪いクセみてぇなもんだな。

 

「毒、か……けど、毒だからやめられねぇんだよな」

「どうして?」

「毒の味って知ってるか?」

「さぁ……って毒だから食べたら死んじゃうじゃん」

「甘いんだよ。毒は胸が詰まるくらいに甘い、誘惑の味だ」

「……だから、やめられない?」

「ま、タバコは甘くはねぇけどな」

 

 けど、毒は人体にとって害である以上にヒトを惹きつけるなにかがあるってことだ。フグの毒を食って死ぬ人間がいなくならんように、タバコを吸う人間がいなくならんように。毒素を取り込むという行為は、一種の自傷行為なのかもな。オレも大学時代はストレス発散に吸ってたし、高校の時から……おっとこれはナイショな。

 

「……わかんない。でも、アンタが吸ってる姿は見たくない」

「それは個人的な好みで? それとも身体に悪いからか?」

「……アタシの、個人的な好み」

「美竹の前じゃ吸ってねぇんだけどな……」

「ニオイ、するじゃん」

 

 やっぱり、タバコに関連してなんかあったのか。親が体罰に使った……はねぇな。そういや蘭といえば華道関連ばっかりでタバコのイメージなかったが、コイツはバンドもやってんだったな。そりゃバンドはタバコとか、そういうイメージで溢れてる。だからオレも初めて会った時に、吸うかどうか訊いたんだったな。

 

「それじゃあ、ライブハウスとか大変だろ」

「……そうだね、殆どのところはいっつもタバコのにおいするし、出演者の人とか結構吸ってる」

「悪い、嫌なこと訊いたな」

「いい……平気」

 

 スカートの裾を握りしめながら言われてもな、平気って顔してねぇよ。よく、コイツはオレに近づいてきたな。そういや、あの時もまじまじとヒトの顔見てたな。最初は吸いてぇのかとでも思ってたが、アレが違う意味だとしたらなんだろうか。考えていたら、美竹が口を開いた。

 

「……カレシ、いたんだ」

「カレシ、お前が?」

「そこに反応しないで……話が進まない」

「……ああ、悪い」

 

 こう言っちゃ悪いが心底意外だった。顔は悪くねぇしスタイルいいしで引く手は数多だろうけど、コイツ自身が相当な人見知りだろ。そんな人見知り子ちゃんとまともにコミュニケーションとって付き合えるようなヤツがいたなんて知らなかったよ。ぜひともその手腕を大学ん時に知りたかった。

 

「ほんの二週間くらいだけど……中三の時に、ライブハウスで知り合って、付き合ってたヒトがいた。あ、もちろんアタシ一人だけじゃダメで、つぐみとか巴とかひまりが背中を押してくれた。相手のヤツも、結構押してくるタイプだったし」

 

 バンドマン、さぞチャラい男なんだろうな……って待て待て、口振りだとソイツ、年上だよな。それは口挟んでいいのか? つっこんでいいのか?

 その疑問は、美竹自身が勝手に解消してくれた。

 

「えっと、確か大学生だった。成人式がどうのって言ってたからハタチ、まぁ、その前からタバコは吸ってたみたいだけど」

「……五つなら、セーフか?」

「いや、今考えると中学生にかわいい、付き合おうなんて言ってくるヤツ、ロリコンでしょ」

「そうか。でも、お前は付き合ったんだな」

「うん。でも──」

 

 けど、長続きはしなかった。その後の美竹が明かしてくれた言葉に、オレはしばらく何も言えなかった。コイツがタバコを嫌いな理由、オレに向けてた視線、青葉の言葉の半分、コイツの仲間たちがあれほどオレを警戒していた理由、全部の意味が繋がった気がした。

 ──その日、オレは、美竹を抱き寄せた。顔をぐしゃぐしゃにして泣きじゃくるコイツを、それでもオレを先生と呼んでくれる美竹を、抱き寄せていた。

 

「オレは、また間違えてんだよな」

「……うん。でも、今は……間違ったままでいて、ほしい」

 

 教師なんて仕事は本当にロクでもない。美竹の体温を感じながら、オレは漸く、その本当の意味に気付いてしまった。ああ、悪い。アンタの言う通りだったよ。アンタはロクでもない教師(おとな)だった。なにせアンタはオレに教師ってもんを、タバコの味を、なにより青春を教えてくれた……初恋の女だからな、クソ教師。

 

 

 




あーあ、抱きしめちゃった。カレシじゃねぇからとか言ったくせに~
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