【完結】【自己ベスト記録】過ぎ去りし時を求めてSS~聖竜の勇者ルートRTA:24時間31分44秒22   作:四ヶ谷波浪

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Part17 白の入り江~北海

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詳細不明ですが初投稿です。

この動画の生放送アーカイブは こちら

 

ドラクエ11SS/聖竜の勇者ルート/縛りなしRTA


 楽なものからやっていくと楽なものが無くなったRTA、続きをやっていきます。

 前回はシルビアの「レディファースト」、グレイグの「におうだち」など有用なスキルを習得し、いよいよ過ぎ去りし時を求めてSS聖竜の勇者ルートRTA名物、終盤戦に立ちはだかるボスラッシュに挑むことになります。おおよそ「大樹の勇者ルート」での一戦目相当の人喰い火竜より強いボスたちです。ステータスはほとんど「大樹の勇者ルート」と変わらず、しかし、検証班によると、屍騎軍王ゾルデのような仲間が四人揃っていなかった時のボスはステータスが強化されているとか。反面、救済措置の特殊バフはかなりの頻度でPTを助けてくれます。

 

 どこから挑むのか? と言いますと、勝てそうなところからということになります。ボスから経験値も当然入りますので後半に回すほどステータスが上がって楽になりますから……それで冒頭で述べたとおり、既に楽に勝てるところはクリアしてしまいました。なので背景のアイくんは「ルーラ」で飛んできたキャンプ地で一生懸命お祈りして泊まって装備を変えて並び替えて……とRTAらしからぬ入念な準備をしているわけです。

 並び順はグレイグ、シルビア、ベロニカ、アイくんです。やることは前三人に守られたアイくんが魔法を連射して戦ういつもの戦法ですね。二ターン目以降はベロニカをセーニャに速やかに交代し、いつも通りの並びとなります。

 グレイグ、シルビア、セーニャ、アイくんの並びは基本の並びとなっており、終盤に差し掛かって敵の火力が上がっているのにも関わらず盾装備できない仲間たちを前に出すと死あるのみです。面白みはありません。

 火力としてもやや物足りなくはあるものの、ベロニカは物理耐久に不安があり、ロウは全体的に脆いのでアイくんに頼るしかありません。スリップダメージに頼る場合は事前にゾーンに入れたカミュが陣を敷いてそのまま退散(もしくは一発攻撃を受けて退場)という流れです。ただし、多くの場合においてはカミュのゾーン待ちの方が時間がかかります。

 

 さて、栄えあるボスラッシュ一戦目に選んだのはキングマーマンです。

 「大樹の勇者ルート」では、白の入り江にいる漂流したキナイが襲われているので助けに行くという流れで戦闘になるはずなのですが、本RTAではロミアにすっかり恋をしてしまったキナイは村での仕事もそこそこにロミアのもとに危険な航海をものともせずに通っており、そんな日々の中ひたむきにキナイ・ユキを待ち続けている姿に罪悪感にかられてしまい、ロミアにキナイ・ユキの死など真実を話しています。

 なのでロミアはすでに泡となって消えてしまっていて、嘘をついた自分を恨むわけでもなく、愛する人のもとに行くために消えて行った片想いの相手を弔うために通い続けています。が、邪神復活で海の魔物も凶暴化、キングマーマンの群れに襲われているという流れです。

 ここを選んだ理由は白の入り江が外海の玄関口の役割を果たしているからですね。キナイを救出しなければここに「ルーラ」するだけで強制的にイベントが発生してしまいます。(これは「聖竜の勇者ルート」がすべてのサブイベントをクリアしなければ邪神に挑めないという仕様によるものです)他にも海のボスはいますから、早く片付けておきたいというわけです。

 

「あれは……!」

 

 ロードが終わった瞬間にイベント発生。いち早く異変に気づいたマルティナが指さした先には、前回ロミアが座っていた岩の周辺に魔物が何匹もおり、膠着状態のキナイが背後に何かを庇っています。アイくん以外は初対面ですが、もちろん善性のかたまりみたいな勇者一行が助けないはずもなく。

 ベロニカが火の魔法でこちらに注意を引き付け、

 

「あの人を助けなきゃ!」

 

 というわけでボス戦開始。ボス、キングマーマン・邪の注意点として本RTAの最大の警戒点である「マホトーン」を使ってくる上に、完全二回行動であること、取り巻きのマーマンダイン・邪を一度でも全滅させると三回行動までしてくることなどが挙げられます。HPは約3000、「マヒャド」など全体攻撃も多く、だからといって物理攻撃が弱い訳でもない難敵です。

 取り巻きの攻撃もかなり鬱陶しいので本音では取り巻きから処分したい気持ちは山々ですが、キングマーマンはさらに「ザオリク」まで使ってくるのでここは苦渋の決断ですが、ボスから叩いていきます。

 

 一ターン目にベロニカがグレイグに「マホカンタ」をかけ、唱えてすぐの仲間のターンにセーニャと交代。グレイグは「におうだち」、シルビアはキングマーマンに「ヴァイパーファング」、アイくんはキングマーマンに「ドルモーア」。以降、グレイグに「スカラ」など補助呪文をかけたり回復したりしながらグレイグの影に隠れて攻撃していきます。回復はいつも通りシルビアとセーニャの二人がかりで行いますが、それでも結構グレイグは落ちます。その都度起こして再び肉壁になってもらいます。

 こうでもしないとこのあたりの推奨レベル60前後のボス相手ではアイくんが死にまくったりセーニャが死にまくったりするのですが、頑強とはいえグレイグもわりと落ちるので後衛に紙装甲高火力組を入れにくいのが難点です。一撃は自分で耐えてもらわないと話にならないのです。

 〜背景二倍速、グレイグが生と死の反復横跳びしているのをご覧ください〜

 

 アイくんの「ドルモーア」はいつも通り確実に刺さりますが、「破封のネックレス+3」を二つ付けてもマホトーン耐性は50%しかありません。実のところ、結構な運ゲーとなっております。もしマホトン状態になってしまったらアイくんを下げてカミュを出してもうどく→「タナトスハント」+「ジバリーナ」で削るか、マルティナを出して「氷結らんげき」で削るかはお好みです。もう一つの選択肢として、下げずにアイくんに通常攻撃などで殴らせてターン経過で「マホトーン」が解けるのを待つというものもあります。本RTAでは解けるのを待ちます。戦闘に出す気がないのでカミュもマルティナも現在まともな装備をさせていないので代替火力と見るのも辛いです……。

 とはいえ、何度も再走し、リセットを重ねたこのn代目アイくんは見事完走し、自己ベスト記録を出してくれたのです。このボス戦でも運良く「マホトーン」に屈することなく、グレイグが生と死の反復横跳びをしていても、シルビア・セーニャが何度か散ってもひとり立ち続け、好タイムで退けてくれました。ありがとうアイくん。

 

 さてストーリーの方ですが、無事救出したキナイが背後に庇っていたのは小さな、一抱えほどの墓標でした。キナイ・ユキを待っているはずのロミアの姿が見えないことでなんとなく察する一行ですが、悲しそうに墓標を撫でてから一行にお礼を言うキナイを見て確信したようです。

 

「本当に助かった。ありがとう。あのまま魔物に殺されてしまう覚悟をしていたよ……」

「そりゃあお前、タイミングが良かったな。それで……」

「あぁ、見ての通りだ。ここにはもう、ロミアはいない。あんたたちがロミアの言っていた『真実を話してくれたのに突っぱねてしまった旅人さんたち』だろう? オレは……キナイ。キナイ・ユキのいた村の出身の、たまたま名前が同じだけの、しがない漁師だ。

 ……オレは、もちろん、人魚と恋をしたキナイ・ユキの末路を知っていたんだ、あんたたちと同じように。愛する人と同じ名前だからってたまたま漂着しただけのオレに親切にしてくれたロミアに、優しい嘘を吐き通せなかった。一途な彼女を見ていると騙すのに耐えられなくなったんだ。あんたたちは、ちゃんと話したのにな。

 彼女は、真実を信じて、泡になって消えていった。話しにくいことを言ってくれてありがとうと言ってな。真実を受け入れて、今頃愛するひとと一緒になったはずだ。だから、悲しんでいるのはオレの勝手だろうが、……」

「悼むのは、どんな相手にするんだとしても悪いことじゃない。なぁアイもそう思うだろ? ……アイ?」

 

 アイくんはカミュに振り向かれて、泣きそうな顔で頷きました。このことからアイくんは前回「ロミアに嘘をついた」=泡となって消えるロミアを目撃したのではないかと考察されています。が、結局本当のことを言おうとも、この段階でロミアは泡になってしまうのです。

 やるせないですが、異種族間の寿命と文化の違いはどうしようもないですよね……。とっとと水底に連れ帰るべきだったと悟ってもあとの祭りです。後でならなんとでも神の視点で言えますが、意味はありません。この世界の人間は闇側面がかなり強いですから、平和な終焉を迎える方が珍しいのです。キナイ・ユキが同族に殺された、とまでキナイが話したかどうかは分かりませんが……単純に人魚と人間の寿命の違いについて話し、もう生きていないと言ったのかもしれませんから……真実は闇の中です。

 

「すまない。いや、ありがとう。しばらくオレはここにいるよ。キナイ・ユキにした仕打ちを思えば、同じ村出身の人間がこんなことをしているのはむしろ罰当たりかもしれないが、それでも、オレだけでも、彼女たちの冥福を祈りたい。彼女たち……大樹で、会えているといいな」

 

 とりあえず一件落着ということで。

 

 それでは続いて「ルーラ」で海底王国ムウレアへ。女王セレンと話し、海を荒らしているジャコラとデスエーギルの話を聞き、退治を要請されます。これでこの二体のボスと戦うフラグが立ちました。こちらも順不同ですが、ジャコラの方が魔王ウルノーガより前のボスだった関係上ステータスが低いのでジャコラから倒していきます。特にデスエーギルは「大樹の勇者のルート」でいう過ぎ去りし時を求めたあとの世界でのボスなので、普通に推奨レベル60↑の強ボスです。通常攻略でも、「聖竜の勇者ルート」後半ボスラッシュでは原型が「過ぎ去りし時を求める前」のボスから挑んだほうが敵ステータスが低く、レベリングにもなり、スムーズに進行できます。

 画面では再び白の入り江に「ルーラ」した一行が船に乗り込み、クレイモランの方向に北上しています。〜移動は八倍速〜

 

 別に黄金の呪いでクレイモランの海峡が封鎖されているわけではないですが、クレイモラン地方の湾内へ移動できる「マーメイドハープ」のポイントへ近づくとムービーが挿入され、ジャコラとの戦闘になります。

 ウルノーガ亡き今、奴は○○軍王ではないですが、……なんならホメロスやマヤなどメンバーに欠けすらあります……海のならず者として迷惑千万でセレン女王が討伐を懇願するジャコラは、海底王国ムウレアの結界に何度も攻撃してくるなど真性の迷惑生物です。他のボス……人喰い火竜などのように何か背景に思うところすらありません。世界崩壊→六軍王として覚醒することもなかったので特殊バフすら入らないただの踏み台です。

 

 が、ジャコラの代名詞たる、六色のオーブの力の解放技……「クリムゾンミスト」は普通に使ってきます。もちろん世界崩壊したわけでもオーブを奪われた訳ではないですし、ウルノーガもすでに消滅し。オーブの力がないからか、本来の効果である、「発動中被ダメージ2倍」ではなく、「効果中被ダメージ1.5倍」程度に抑えられています。その点だけは明確に弱体化していますね。他の六軍王も「青の衝撃」以外は軒並み弱体化しています。「青の衝撃」ってつまりはただの「いてつくはどう」ですから。

 

 攻撃はそこそこ激しいですが、三回行動してくるとか、常時「におうだち」させたグレイグを生け贄に捧げなくては勝てないとか、1ターンに死人が確実に出るというわけではないので、いつも通りグレイグ、シルビア、セーニャ、アイくんの隊列で挑みます。

 グレイグは「スクルト」を重ねがけし、シルビアはもうどくを入れたら回復係、セーニャは基本「ぼうぎょ」で回復の機会に備え、アイくんは「ドルモーア」を脳死で打ち続けます。いつも通りです。〜2倍速〜

 クリムゾンミスト中に何度かアイくんが息絶えましたがセーニャが即起こしてくれますし、グレイグの「スクルト」のお陰で安定的に戦えましたね。

 

 倒すと「レッドオーブ」の代わりに「ちからのたね」がドロップします。今後の荷物整頓、装備変更の際にシルビアに使用します。そろそろレベルが低すぎてボスに放つ「ヴァイパーファング」のダメージが1か0になってくる頃ですね……。

 

 それでは今回はここまで。ご視聴ありがとうございました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おばさま、デルカダールから手紙が届きましたよ」

「おや、ありがとうエマちゃん。さて……あの子は元気にやっているのかねぇ」

「元気ですよ、ちっとも帰ってこないくらいなんですから」

 

 さっき兵士さんが持ってきてくれた手紙。封にキラキラと光る国章はデルカダール王国のもの。白くて綺麗な紙の封筒。中の便箋も……上等。私たちは落胆した。失礼なことだけど、この時点で誰が書いた手紙なのか分かってしまったから。アイからの手紙が来たことがないから、本当のところは勝手に落胆しているだけなのかもしれないけど。

 でもイシの村育ちのアイがわざわざこんなにいい紙を使うかな? と考えるとやっぱり似合わないから間違っていないと思う。

 

「デルカダール将軍、ホメロスさまの手紙だね。いつもまぁご丁寧にしてくれるおひとだ。お忙しいだろうにねぇ」

「えぇ、国賊に攫われたという名目もあるとはいえ部下をずっと探してくださるいい人ですよね」

「まったくだよ。イシの村では村人一人行方不明になれば探し回るのが当たり前のことだけど、外の国ではそこまでしない、あんまり人情がないほうが普通だって言われていたけどそんなことないじゃないか。本当にいい上司だね。どれ……」

 

 上質の紙に踊る綺麗な文字は私たちには馴染みがない。こんなに真っ黒のインクはこの村にない。ペルラおばさまは必ず手紙を読ませてくれたから、どこか遠い国のものを見るように私は文字列をぼんやりと眺めていた。

 半年前、アイは地下牢での勤務中、国宝を盗んだ罪で投獄されていた盗賊カミュという男に攫われて行方不明になった。それからというもの、どこでアイの目撃があったとか、必ず助けるとか、この期間中の給料はいったん村に送るだとか、そういう内容の手紙が度々来ていた。目撃情報に関しては万が一手紙が届かなかった時のことを考えて時系列に保証はない、と書いてあったけれど。

 

 わりと早い段階でアイは見つかっていたから、ホメロス将軍ほど私たちは焦ってないというか……アイならきっと大丈夫、という思いがあった。でも責任感の強いホメロス将軍は噂に聞くだけでも胃に穴を開けていそうな人なので早く盗賊を捕まえてアイが帰ってきたらいいのにとは思っていたけどね。

 でも。私たちはそうそう不安じゃなかった。そりゃあ、誘拐の知らせを聞いて最初はびっくりしたけど。なんとなく、理屈じゃないけど、アイが元気にやっていることは確信できたんだ。

 

「……あらあら、エマちゃん。今度はアイがクレイモランで見つかったんですってね」

「クレイモラン……?」

「あぁ、私が知っているのはお父さんが地理に詳しかったから。知らなくても無理はないよ。すっごく遠いの、ずっとずっと北西の方の、雪の国」

「そうなんだ……どうやって行ったんでしょう?」

「船かもしれないね。アイは大人しい子だけどお父さんに似て冒険好きだったのかも……それで、クレイモランではグレイグ将軍が別件で訪れていたらしくて、アイとちょっと話が出来たらしいよ。

 詳しくは万が一を考慮して伝えることは出来ないが、必ず悪いようにはならない、って……」

「そうですよね。嫌な予感もないですし、……あれ?」

 

 その時ドンドン、と扉が叩かれる。ペルラおばさまが出ると、さっき手紙を届けてくれたばかりのデルカダール兵の人が息を切らしてそこにいた。……いや、服装は同じ制服だけど別の人だ。この前手紙を届けに来てくれた人。アイと同じ隊に入っている兵士さんがかわるがわる手紙を届けてくれているから毎回同じ人じゃない。

 

「すみません、たびたび……はぁ、はぁ……」

「おやおや、水を飲んで落ち着かれてくださいな。どうなさったんです?」

「はい、ありがとうございます……」

 

 息を切らしながらも、その人は手紙を差し出した。

 

「今、確実に、届けるようにとご用命した手紙です。先程の手紙の内容は、二週間前のことですので……」

「それは、進展があったということなのですか?」

「えぇ。ペルラさん。エマさん。今アイはデルカダール城に戻ろうとしていることでしょう。もうすぐだ、とホメロスさまは私に手紙を託してお出かけになりました。アイが城に戻らなかった理由。アイの旅の理由をうすうす、察知していらっしゃったのです。成就する、と仰っていました」

 

 おばさまが開いた手紙には、見たこともない走り書きの字でただ一文、「勇者に助太刀に参ります」とだけ。

 おばさまは目をつぶって、何を祈るようなしぐさをした。

 

「……あの子は知っていたんだね……」

「おばさま?」

「私は、あの子を拾ったとき……あの子が勇者だと知りました。あの子の実の母親の手紙を読んでいたんです。内容は成人の折にでも伝えようと思っていましたが……少し行き違いがあって伝えられず、そのままあの子は兵士になりました。

 あの子が奉公に行ったから、私たちイシの村の人間はデルカダールについて調べ、あなたがたデルカダールのひとが『勇者』を『悪魔の子』として警戒していたことを知っていたんです。衣食を共にしていれば隠しきれないかもしれない。だからあの子自身がせめて無知であれば、と思って……あの子には自分の運命を話してきませんでした。でもあの子は知っていたんですね。勇者、が何か私には理解できませんけれど。きっと悪いことではないと……」

「えぇ、ペルラさん。あなたは正しかった。私たちは長いこと、騙されていたのです。いいえ、それは言い訳でしかないのですが。しかしアイは隠し通しました。私たちは大切な仲間を傷つけることなく、アイは務めを果たすべく動きました。ホメロスさまはグレイグさまと共にアイを連れて帰ってきますから。だから、あと少しだけお待ちくださいとお伝えに来たのです」

「あの子は今戦っているんだ。兵士さん、ゆっくり休んでいってくださいな。私は教会でお祈りしてこようと思います」

「あ! おばさま、私も行きます!」

 

 私の知らない、成長したアイを知っている兵士さんは、私たちを見て微笑んだ。

 

 そして彼がデルカダールに馬で駆けていったのを見送った直後、天に戴く赤い星が、爆発した。

 

 爆風は遠く離れたここだと何の被害ももたらさなかったけれど、ただただ私たちは不安だった。自然と、唯一村にいないアイのことをみんな心配した。今、どこにいるんだろう? って。まさかあの星が爆発した近くにいなければいいけど、って。

 「トレジャーハンター」の父親を持ち、地理に明るいペルラおばさまいわく、「サマディー」という砂漠の国の方向で爆発があったらしい。デルカダールにいたなら巻き込まれなかったはずだとみんなで教会でお祈りした。

 

 アイがいなくても、村の暮らしは変わらない。幼馴染がいないことは二年経っても不意の瞬間寂しくなるけど、それだけだ。アイがいないことに慣れてしまって、成長した姿の想像もだんだんおぼろげになっていく。

 

 毎日が夢の世界のよう。こうじゃなかったような……とっくに、なにか、取り返しのつかない冷たい世界になっていたような。言葉に言い表せない不穏さを、みんなも感じていたのかもしれない。だけど、現実にあるのはその「予感」とは正反対の穏やかな変わらない暮らし。

 ここにアイもいればいいのに。アイがいなくちゃ私は成人の儀できっと死んでいた。怪我したってほら、すっかり治ったのに。どうして当時の大人たちはアイを兵士にしたんだろう?

 

 勇者って何だろう。おばさまは詳しくは語らない。

 

 空は青くて、暮らしは穏やか。前よりも村への訪問者は多くなったけど、それだけ。

 

 遠い遠い空に生まれた、「ゆがみ」をみんな見ないふりして、今日も教会で祈る。アイが無事でありますようにって。




まさかアイくんが一度も故郷に手紙を書いていないとは思っていなかった連絡がマメなホメロスと自分がいなければ村人たちは「異変」のあの日までは穏やかに暮らすことができたはずだったと信じ込んだあまり故郷に一度も手紙を書かなかったアイくん。

どこ好き?

  • RTA部分:数値付き解説
  • RTA部分:ストーリー解説
  • RTA部分:走者の他作語り
  • 小説部分:アイ視点
  • 小説部分:カミュ視点
  • 小説部分:セーニャ視点
  • 小説部分:マルティナ視点
  • 小説部分:ロウ視点
  • 小説部分:シルビア視点
  • 小説部分:グレイグ視点
  • 小説部分:ホメロス視点
  • 小説部分:その他視点
  • 全般:再構成ストーリー
  • 全般:原作死亡キャラ生存
  • その他(感想・コメントへ)

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