【完結】【自己ベスト記録】過ぎ去りし時を求めてSS~聖竜の勇者ルートRTA:24時間31分44秒22 作:ryure
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一番の敵は勇者
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ドラクエ11SS/聖竜の勇者ルート/縛りなしRTA
同士討ちで危機一髪なRTA、続きをやっていきます。
今回は少しでも速攻で倒したいので後半ボスラッシュでも後回しにしていた騎兵誘妖(妖魔軍王)ブギーに挑んでいきます。
「大樹の勇者ルート」での六軍王にして緑担当、騎兵誘妖ブギーはグロッタカジノの生みの親、ということで「大樹の勇者ルート」でカジノを存分に楽しんでいた方にとっては邪神復活後真っ先に倒しに行ったボスかもしれませんね。
「聖竜の勇者ルート」後半グロッタには前半戦で念入りに倒したのでアラクラトロはいませんが、代わりにブギーは邪神の手先としてグロッタの町を支配し、モンスターカジノを作り、捕まえた人間を魔物に変えて好き勝手しています。
なぜ、そこまで強くもないはずの「過ぎ去りし時を求める前」のボスであるブギーを速攻で倒したいのかと言いますと、「聖竜の勇者ルート」においてかなり厄介な特殊魅了持ちだからです。
もちろん各種耐性アクセサリーで固めればそのあたりの問題はなくなるのですが、パーティメンバーに用意する時間とブギーを後回しにしてなるべく速攻で倒すのを比較した結果、後回しにして火力でゴリ押した方が少しだけタイムが良かったのでこの有様です。
運要素を後回しにすると痛い目を見ますよね。
痛い目をみますね。
本走は比較的見なかった回でお送りしますが、これで数多のアイくんが散っていきました。
すべてはタイムのために
準備をしながら解説していきます。
騎兵誘妖ブギーは全体にやすみ状態を付与する「超さそうおどり」、単体に特殊魅了状態を付与する「第三の目」といった妨害行動、「ギガマホトラ」で特別魔法使いステータスではないのに無理に魔法アタッカーにさせられているアイくんのMPを大量に吸引してくる迷惑行動、もともとのHPの高さからステータス調整されて跳ね上がった驚異のHP約9600の耐久力。面倒なボスです。
攻撃面に関しては全体攻撃では「たつまき」という「スクルト」で防げないものや単体高ダメージの「メラガイアー」がありますが、まだこの辺りはマシな部類でしょう。
本体の攻撃自体は大したことはありません。
痛恨の一撃もありませんしね。
問題は、特殊魅了の方です。
「ギガマホトラ」も相当うっとうしいのですが、「グリーンオーブ」のチカラによるものだったので「聖竜の勇者ルート」では目に見えて頻度が低く、代わりに「第三の目」の頻度が激増しています。
最低2ターンに一度は打ってくるのです。
ブギーは完全二回行動で、1ターンに二回の「第三の目」はしてこないことだけは救いですが。
とはいえ毎ターン打ってくることは屑運ではよくあることですね。(特殊魅了状態の同士討ちによる敗北は二回)
特殊魅了状態の時の仕様は通常の魅了状態とは異なっており、特殊魅了状態の味方は「ガンガンいこうぜ」のような状態で味方を呪文や特技を使ってダメージ最高効率で滅多打ちにしてきます。
混乱攻撃より合理的で理性がある行動と表現すべきでしょうか。
特殊魅了による同士討ちは単なる通常攻撃で済めばよかったのですが、グレイグが「鉄甲斬」で守備力を二段階下げてぶち殺しにきたり、セーニャが「ザラキ」で味方を1ターン3キルしたり、防御をしっかり固めてもカミュが「会心必中」で味方を確殺してきたり「デュアルブレイカー」で耐性ごとボロボロにしてきたり、勇者くん特有の大樹の闇吸引バフの乗りまくった「ドルモーア」「闇属性化つるぎのまい」が容赦なく一番HPの低い味方に飛んできたりします。
いわゆる無駄行動をしないのが特徴です。
よって、ブギーの攻撃よりも警戒すべきは味方の攻撃なのです。
この戦い、特に重要なのはセーニャの「キラキラポーン」、シルビアの「ツッコミ」となります。
グレイグも「まもりのたて」でキラポン状態になれるので積極的に使っていきます。
ということでメンバーはいつも通りグレイグ、シルビア、アイくん、セーニャとなります。
ブギーには「ルカニ」が良く効くので本当はカミュやマルティナの物理攻撃も使いたいんですけどね!
ちなみにアイくんの火力だけを突出して鍛えている本走では「ツッコミ」持ちシルビアが死んでいる時にアイくんが特殊魅了されてしまったとき、いっそ倒してしまった方が被害者が出ないので積極的に同士討ちさせます。
特殊魅了、通常魅了状態の味方は攻撃対象に選ぶことができ、全体攻撃では巻き込んで攻撃してしまいます。
仮に殴って倒せなくても正気に戻るかもしれませんし。
ただ、特殊魅了の仕様の違いによってダメージを通しやすいように防具を引っぺがしておく、武器を外して攻撃力を下げるといったことはできません。
誰が特殊魅了されても作戦を「命令させろ」に変更することはできますが、前回のデルカダール防衛戦での特殊バフ「昏き狂乱(氾濫)」状態のアイくん同様、勝手にカーソルが動きます。
さて、背景での回復・並び替え・装備変更もちょうど完了しました。
それでは魔物が闊歩する町、グロッタへ。到着するとイベント発生。
「魔物が……我が物顔で町を……」
仲間たちがショックを受けていますがアイくんは二周目なので落ち着いたもの。
チラッとマルティナを見ましたが、もちろん彼女は普通にアイくんの脇を固めています。
神の民の里の長老イゴルタプのスキル解放によってすでに「デビルモード」は習得しておりますが、このイベントに彼女は今のところ無関係です。
そのあたりをうようよしている魔物は姿を変えられてしまったグロッタの人間なので、知っているアイくんは話しかけることも攻撃することも無く完全スルーしてカジノの方へ向かっていきました。
仲間たちは慌てて追い掛けながら、会話しています。
アイくんは振り返りもせずに進んでいますが、ちょっと歩く速度を落としました。
「人間がいねぇな……一体どうなっているんだ」
「ふむ……妙じゃ。争った形跡がないのう」
「ロウさま、町を占拠している魔物たちは襲いかかってくる様子はありませんね。何か……思惑があるのかもしれません」
「そうじゃの、姫。この街に何が起きているのか……分かればいいのじゃが」
「ねぇアイ、そっちに魔物の親玉がいるの?」
「知っている」ムーブを散々繰り返してきたので今更アイくんがボスの居場所を知っていてももはや驚かない仲間たちは直球ですね。
アイくんは直接聞かれたときに誤魔化すタイプではないようで、ベロニカに向かって頷きました。
「そうなの。じゃあ、気を引き締めなきゃね!」
それでいいんですかね。
今作において勇者だから、というのはまさしく魔法の言葉のようです。
だいたい勇者の奇跡でなんとかなります。
あとは仲間との絆と信じる心、それからフレーバーに正義感とか使命感とか運命とかです。
古式ゆかしい魔王と勇者の物語での不文律ですね。
グロッタカジノに到着すると操作可能になります。
異常に大当たりするようになっているスロットマシンを適当に操作し、当たりを一回でも引いたらコインが足りるので交換所で「ラブリーエキス」と引き換え。
これで魔物を買収して上層階へ行けるようになります。
「そこらじゅう魔物がいっぱいですわね。グロッタの町の人たちは今どこにいるのでしょう……」
「捕らえられているのならば解放出来ようが、こうも手掛かりがなくては」
二階に入り、親玉であるブギーを発見したアイくんたちは町の人たちを返せという流れになります。
そのムービーではブギーが「邪神から仰せつかったように人間の支配をする」だの、「町の人間は魔物に変えてしまった」だのと言っていますが、「知っている」アイくんは既に「勇者のつるぎ・真」を抜いていて殺意に溢れています。
ブギーを倒せば解決すると分かっているので。
が、ブギーは殺意全開のアイくんをスルーして同じく臨戦態勢のマルティナに一目惚れしてしまいました。
そしてマルティナの美しさや筋肉を大変素晴らしいボキャブラリーかつ特徴的な語尾で褒めたたえたあと「お近づきのプレゼント」と称して何やら魔法をかけようとしてきましたが(プレゼントってあのバニースーツですかね?)マルティナには「既視感」があるので華麗にかわしました。
むしろ反撃に蹴りまで叩き込む始末。
過ぎ去りし時を求めようがかつて染み付いた嫌悪感までは抜けきらなかったように見えます。
もっとも、ブギーにはそれすらご褒美だったようですが、よろめいた彼を守るべく現れた巨体がアイくんたちを攻撃してきました。
マルティナ追加ストーリー「気高き戦姫マルティナ」でのボス、メガモリーヌです。
そのまま呪われしマルティナの代わりに前座メガモリーヌ戦になると思いきや、アイくんは初見ですが、マルティナには初見ではありませんので。
まるで「見てきた」ようにムービー中に倒してしまいます。
ボス戦が増えなくてありがたい限りです。
ですがこれで部下(?)を倒され、袖にされ続けたブギーが激高して戦闘になります。
「ぬううう名前も知らないカワイコちゃん! ちょっと大人しくするんだじょー!」
ドラクエってたまに特徴的な言葉遣いのキャラクターいますよね。
敵味方問わず。
ちなみにブギー、「大樹の勇者ルート」での発言曰く「泣かせた女は数知れず」らしいですが、それくらいの表現はレーディングAの範疇なようです。
11って妙齢の女性に三十代男性が世界でいちばん幸せなペットにされそうになったり、実兄をペットにして死にたくなるほど可愛がろうする幼い女の子がいたりとなかなか、その、すごいですよね。
どっちも闇堕ちしている時のセリフなので、ほぼ闇堕ち勇者なアイくんも何かすごいことを言ってくれるかと期待しましたが、ドラクエ主人公はやっぱり喋れません。残念です。
さて騎兵誘妖ブギーの攻略ですが、セーニャが「キラキラポーン」をセーニャ→シルビア→アイくんと掛けていき、常に絶やさないようにし、シルビアはその間回復役を務め、グレイグは「まもりのたて」を絶やさないようにしながら「スクルト」を重ねていき、アイくんは何がなんでも「ドルモーア」します。
なんだか戦法、代わり映えしませんね。
動画映えしませんが映えよりタイムが大事なので仕方ありません。
1ターン目、早速アイくんが特殊魅了されてしまいリセットを覚悟しましたが、シルビアの「ツッコミ」が即座に入って事なきを得ました。
本当に怖いですね。
流石に蘇生>回復>キラポンなのでこれで死人が出ると連鎖的に魅了者が増えます。
そんなことを言っていたら2ターン目、再びアイくんが特殊魅了に。
多分、こういうぐだぐだした戦闘になった方が動画映えになるというやつなのだと思います。
RTA的にはどう見てもロスタイムなので編集していてつらいのですが、仮にも自己ベスト記録の動画ですから後から更なる記録更新のために見返す記録でもあります。
包み隠さず起きてしまった惨劇についても説明させていただきます。
まず、再び特殊魅了されたアイくんは迷うことなくセーニャに「ドルモーア」を打ちました。
セーニャが素で一番HPが低いので当然ですね。
これが暴走しました。
運が悪いです。
そしてドルマ系呪文というのは呪文暴走時の強化倍率が高い呪文で、なおかつアイくんは素で耐性無視の高火力を持っています。
最悪です。
HP満タンからの一撃でした。
リカバリーとして次に行動したグレイグが「ザオリク」でセーニャを蘇生。
グレイグの火力ではアイくんを殺せない上、セーニャはこの戦闘の要なのでこの行動は当時組んでいたチャート的には正しかったのですが、後から考えてみればそれでも正気に戻るのに賭けるか、ブギーの追撃でアイくんが倒れることを期待して殴るべきでした。
反省しています。
ここで不運が重なり、ブギーの「超さそうおどり」でシルビアがやすみ状態に。
シルビアは特別、踊り系のやすみに弱いという隠れ耐性があります。
有名どころだと女性陣の「ぱふぱふ」無効やシルビアの「ぱふぱふ」強耐性などもその隠れ耐性ですね。
よってシルビアは次ターン「ツッコミ」を打つことが出来ず、アイくんの大暴れは止まりません。
もちろんブギーの攻撃も普通にありますからこのパーティ、次にHPが低いのはシルビアですね。
シルビアも「ドルモーア」の餌食になり、大ダメージを受ける羽目に。
この時点でようやくアイくんを倒した方が傷がまだ浅いと気づいてシルビアとマルティナを交換しました。
マルティナの「氷結らんげき」を打てばガードされなければ確殺ですから。
グレイグはセーニャを「ベホイム」で回復、セーニャはこれ以上殺されないように「ぼうぎょ」しました。
アイくんのことはこのままマルティナに処理させる気です。
が、動転していたのでアイくんが特殊魅了のままもう一度攻撃してくることを甘く見ていました。
特殊魅了状態の味方のAIはとても賢いです。
普通に最大打点で攻撃してきます。
今の状態だと半分ほどHPの減ったグレイグ、HP満タンのマルティナ、HP満タンで「ぼうぎょ」しているセーニャが相手です。
私はグレイグが「ドルモーア」で殺され、その後マルティナがアイくんを処理する、と考えていたのですが、グレイグのHP、「ジゴデイン」の確殺ラインに入っていたようです。
容赦ない「ジゴデイン」でグレイグが倒れ、耐性装備をまともに積んでいないマルティナは瀕死状態、控えのシルビアも前述の通り瀕死状態。
そんな壊滅状態に追い込んでくれた大魔王も真っ青な暗黒魔法使いアイくんはマルティナの手によって無事に倒れたのでした。
そのあとの「たつまき」などで見事主要メンバーが全滅していたのが今までの敗因ですが、今回はシルビアとマルティナが攻撃を受けてくれて運良くセーニャが行動できました。
「メガザル」で一気にパーティを立て直し、セーニャも即座に起こして「エルフののみぐすり」でMPを回復させ、事なきを得たのでした。
以降は事故もなく。
〜というわけで二倍速〜
なんとか倒せました。
ブギー単体のボス戦としては長引きましたが、これまでの積み重ねからまだ自己ベスト記録を狙えるタイムだったので続行しました。
結果が全てです、多分。
次からは運ゲーより安定を取りたいですね(トラウマ)。
ブギーが倒れたことにより魔物に変えられてしまっていた町の人間たちは次々に姿を取り戻していき、グロッタの町の騒動もこれで一件落着となりました。
めでたしめでたしです。
お礼に一晩泊まって行ってくれと言われるのでロード後、宿屋からスタートします。
ボス後に全回復するのは手間が省けて良いですね。
それでは今回はここまで。ご視聴ありがとうございました。
魔物の魅了。
それは一時的に認識を書き換えられ、本来の敵を味方に、本来の味方を敵だと誤認してしまうのだといいます。
グロッタの人間を魔物に変えたという魔物が放った魅了の魔力にアイさまが囚われてしまった、と認識した時にはもう遅かったのです。
「邪魔だよ」
勢い良く振り返ったアイさまが、冷たくおっしゃいました。
声は冷たかったですが、見たこともないような笑顔でした。
口元だけ笑顔の形をした歪な笑い……それを認識した次の瞬間、視界が黒く塗りつぶされて……私は全く何が起きたのか理解出来ずにいて、気づいた時にはグレイグさまに助け起こされていました。
起こされた時には事態を理解していました。
私が受けたのは、アイさまの魔法だったのだと。
「セーニャ、大丈夫だろうか? すまない、あの時俺がアイを止めていれば……」
「はやく、アイさまを止めないと! これ以上、つらい思いをして欲しくないのです!」
「だが止めると言っても……」
激しく揺れる地面、地面を突き破る黒い雷。
周囲を破壊する闇のチカラ。
そんな破壊的な魔力を自在に扱いながらぼんやりとした目が再び私に向けられて、ふいと興味なさげにそらされて。
そのまま隣にいるシルビアさまに固定されました。
シルビアさまは、あの魔物によって傷を負っていました。
「あはは、僕の前に立たないでよ!」
声も枯れよとばかりの、叫び声。
理解のできない笑顔を浮かべて。
手負いのシルビアさまを薙ぎ払った闇の魔法は今まで数多の魔物を葬ってきたもの。
勇者のつるぎを握った手からは鮮血が滴り落ち……理性の宿らないぼんやりとした眼差しのままアイさまはそのまま、忌々しそうに勇者のつるぎを投げ捨てると頭を掻きむしり、地面を揺るがす黒い雷はますます激しくなっていきます。
「うるさい! うるさい! 邪魔だ!」
悲痛な叫び声にもしかして理性と戦っていらっしゃるのか、理性を取り戻し味方に攻撃したことで罪悪感を覚えられたのではないかと勘違いした私は、ついアイさまに駆け寄ろうとして……冷静なマルティナさまに止めていただいたのでした。
「ダメ! アイは正気じゃないわ!」
「……ありがとうございます、マルティナさま。それでも……」
「私が止めてみせるから。任せなさい」
僅かに言葉を交わした間にも私たちを襲う地獄の雷は、私は何とか耐えましたがそれまでにも魔物の攻撃を受けていたグレイグさまは倒れてしまいました。
それを見てマルティナさまは腹を括り、実の弟のように大切に思っているアイさまを、武器で斬りつけたのでした。
アイさまもまた、攻撃をあの魔物から受けていた身。
連撃にひとたまりもなく倒れ伏した姿に胸が痛みました。
「……あぁ……アイさま……」
込み上げてくるのは涙でしょうか。
それとも別のなにかでしょうか。
次々と倒れていくみなさま。
私はとても悲しくて、悲しくて、そして、冷酷なまでに理性的でした。
この場においてどうすべきなのかが分かっていました。
お姉さまが同じ立場なら間違いなく同じことをしたでしょう。
私たちラムダの民は、勇者を何よりも尊重するように教育されてきたのですから。
それがなくとも私たちは……身を削っても手を伸ばし、人々を救うアイさまのことを守りたいのですから。
我らの大樹よ。
我らの親愛なる……偉大なる、信仰の矛先よ。
あぁ非情なる常闇の意思よ。
私たちの根源にして、命の集う先。
「聖竜の大樹よ、どうか皆様をお救いください!」
なんて。
口に出した言葉が思ってもいないことでも、回復魔法としては完璧でした。
私は合理的でした。
だから私の命という最低限の犠牲を差し出して、皆さまを生き返らせた選択肢は正しかったのだと思います。
皆さまは優しいから、きっと私の行動に胸を痛めるかとは思いますが……私が正しかったという点に置いては否定なさらないでしょう。
どこか遠いところに吸い寄せられていく感覚。
全ての魔力が捧げられ、すっかり空っぽになってしまった肉体。
それを遠くから見下ろしていて……気づけばまた、肉体に戻っていました。
誰かが呼び戻してくださったのでしょう。
目が覚めた頃には、アイさまは私の前にかばうように立っていました。
うつむき気味の顔を伺い見ることはできませんでしたが、かすかに震える体を見れば正気であることはわかりました。
「……アイさま、ご無事ですか?」
「闇よ、敵を薙ぎ払え!」
「アイさま、お怪我はありませんか?」
「闇よ、アイツを倒せ!」
「……アイさま、」
「闇に還ってよ!」
自分がどれだけ攻撃を受けても、一歩も退かずに。
何かに憑りつかれたかのようにアイさまは呪文を唱え続けました。
そして、激しい呪文の応酬に耐えきれずに魔物の肉体が空気へ溶けていったのを見送ってから、ようやく私たちに振り返りました。
「みんな、僕を、止めてくれて、ありがとう」
アイさまは、思い詰めたような冷たい無表情でした。
無理もありません。
魅了されている時の記憶があるならば、優しいアイさまがそうなってしまうのは。
しかし、魅了の魔法というのはそういうものなのです。
アイさまが悪いわけではないのに、思い詰めないでくださいと言うべきでしょう。
しかし、口を挟めるような様子ではありませんでした。
アイさまはゆっくりと歩き、遠くに飛ばされてしまっていた勇者のつるぎを拾い上げ、元の姿に戻った町の人たちの方に歩き出そうとして、そして。
ふらりと、その体が傾くのを目にしたのです。
「あぶねぇ!」
咄嗟にカミュさまが支えたので倒れずに済みましたがアイさまは既に意識を失っていたのです。
途方に暮れた私たちに、グロッタの人々は街を救ったお礼にと宿を貸してくださりました。
心遣いに感謝し、私たちは意識の戻らないアイさまをベッドに運びました。
しかしその後、先程の戦いで傷があったのか、呪いなのか、はたまた魅了の魔法の名残なのかと調べましたがただの過労か心労であるとしか分からず。
幸いうなされることなく、まるで死んだように眠り続ける姿に胸を痛めたロウさまが、せめてゆっくり体を休められるようにと深い眠りの魔法を掛けたのを私はぼんやりと眺めていました。
邪神の復活。
行く先々で起こる事件。
私たちの歩んできた道のりはまるで物語のようでした。
「聖竜の勇者」はかくして、世界を救ったのでした……と締めくくられる物語を彩る「勇者の軌跡」として相応しいなにかのように見えました。
仕組まれたように。
そう感じて、おぞましい、と私の心は冷え切るようでした。
私もきっと、少々疲れていたと思います。
度重なる戦いに傷を負うことも多々ありましたし、旅をするまでこうも激しい戦いに身を投じたことは無かったものですから。
だからでしょうか、眠るアイさまの指先に残る細かい傷と暴走呪文を唱えたことによる裂傷をゆっくりと癒しながら、ふと、夢のかけらを口に出していました。
「どこか遠い場所で、みなさまで、穏やかに暮らせたら、幸せでしょうね」
咄嗟にお姉さまに叱られる、と思いました。
私はラムダの遣い。
双賢の双子として教育されてきたのです。
勇者を護り、従い、導き。
その行く末を見届けなければならないのに。
そんな弱音のようなことを言うのは身を粉にして戦うアイさまに失礼ではありませんか。
でも、お姉さまは少し眠たげに私の顔を見上げただけでした。
「そうねぇ、ここのところ戦ってばっかりだもの。アイも過労で倒れちゃうくらいなのよ」
「イシの村いい所だったよな。オレあんなところでのんびり暮らすのも悪くないと思うぜ」
「あら意外ねカミュちゃん。世界中のお宝を見つける旅に出る! とか言うと思っていたわ。アイちゃんとマヤちゃんを連れてね」
「あのなぁおっさん。そういうのは危険なんだ。そりゃお宝にはロマンがあるぜ。だけどよ、過労の相棒と栄養失調気味の妹抱えて言えることかよ……」
「カミュよ、おぬし面倒見が良いのう」
「そうか? 普通だろ」
「ふむ、兵として勤めていない自分というものは最早想像もできないことだが、不思議と良い暮らしだろうと思えるな」
お姉さまだけではなく、みなさまも穏やかに賛同してくださりました。
きっと、みなさまも疲れきっておいでだったのでしょう。
倒しても、倒しても立ちふさがる強敵というものに。
「きっと誰も彼も後悔していたと思うわ。そしてね、きっと、……誰も望んでいなかったのよ。でも、アイは望んでくれたから、私はさいごまで」
謎めいた言葉だけ残してお姉さまはすっかり傷の癒えたアイさまの手を握って、目をつぶってなにかお祈りをしているようでした。
そんな姿になぜか「懐かしさ」を覚えた私の思わず伸ばした手は、お姉さまにもアイさまにも届きました。
どんなむごい死に方をしても蘇生できる 「勇者」なので
どんなにメンタル粉砕しても加護で強制復活 「勇者」なので
そういう話が好きです あと呪文の反動でダメージ受ける表現も大好きです
どこ好き?
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RTA部分:数値付き解説
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RTA部分:ストーリー解説
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RTA部分:走者の他作語り
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小説部分:アイ視点
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小説部分:カミュ視点
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小説部分:セーニャ視点
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小説部分:マルティナ視点
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小説部分:ロウ視点
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小説部分:シルビア視点
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小説部分:グレイグ視点
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小説部分:ホメロス視点
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小説部分:その他視点
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全般:再構成ストーリー
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全般:原作死亡キャラ生存
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