【完結】【自己ベスト記録】過ぎ去りし時を求めてSS~聖竜の勇者ルートRTA:24時間31分44秒22 作:ryure
ロトゼタシアの全ての命は「大樹」を中心に循環している。
人間が人生の中で紡いだ聖なる献身も、憎らしい悪逆も、行き着く先は大樹なのだ。
しかし魔物はどうだろう。
空の星より復活した邪神はどうだろう。
世界の
我ら光の子らには制御できぬ暗黒の魔手。
囁く誘惑、堕落の許容、混沌への回帰。
それらは光の子らにとっては忌み嫌う
とはいえ、呪いも祝福も本質は同じものである。
もたらされた結果が良いか悪いかはすべて受けた者の主観によるもの。
光も闇も、善と悪も、すべて主観によるもの。
後世の者が決めつけたもの。
世界にはかつて闇だけが存在し、生きとし生けるものは存在しなかったという。
そこに聖竜が光と大地を、そして命をもたらした。
今現在、尊ばれるべき道徳も、守るべき掟も、現在の主観によるもの。
そもそもは静かで冷たい、
そも、大樹がただ尊ばれる世界ではない。
光の権化たる聖竜こそ、邪神よりよほど身近な畏れるべきもの。
聖竜こそが闇に染まっている世界であれば。
光と闇の境界は曖昧になる。
善と悪を隔てるものなど、本当は何もないのだろう。
今、ロトゼタシアに古き神が君臨する。
古き聖竜に遣わされし防衛機構たる
聖竜の勇者は立ち上がり、運命的な仲間たちを集めて闇と戦うだろう。
そして激戦の末、闇を退けた勇者は世界の安寧を取り戻すだろう。
しかし、いつの日かまた闇は生まれ、あるいは闇は復活し、闇は世界を我がものとするため目論み、再び勇者は平定する。
かつて勇者ローシュが邪神と戦ったように。
再び闇の時代が訪れたのだ。
輪廻する筋書きはできていた。
そうだろう?
聖竜よ。
生憎人間は強欲だ。
例え、聖竜の抱く闇がなくともきっと本質は変わりやしなかっただろう。
簡単に闇に堕ち、甘言に惑わされ、相手を疑い、思い違いをし、憎み、悲しみ、醜く足掻く。
強欲だ。
強欲だから、認めたくない未来を否定するために足掻く。
手を伸ばす。
それこそが我ら、人間なのだから。
私が何もしなければそのうち訪れるのは安穏とした平和だろう。
あぁ、それは良いものだろう。
邪悪なる意志は倒れ、民が平穏に暮らし、為政者は何も
私はそんな未来を歓迎すべきなのだろうな。
しかし、そこにはいないのだ。
もたらした者はきっと彼方へと去った後。
あるいは闇に焼かれて苦しむだろう。
私は、私は、後悔するだろうから。
ならば、世界を混沌に叩き込んでも、平和が二度と訪れなくとも。
輪廻する世界を滅ぼしてやる。
行き止まりのある世界へ。
彼方の存在が管理する世界ではなく、我らが足掻く、混沌とした世界へ。
勇者たらしめる、その光の粋を集めた象徴を何としてでも害さねばならない。
デルカダール王国、王城、玉座の間。
最早訪れた数など覚えていないほど見慣れた場所だったが、久しぶりに緊張していた。
御前にあること、玉座の間であること。
それに緊張していたのは一体いつぶりだろうか。
人は慣れる生き物だ。
ゆえにこそ、兵士として、将軍として長く務めてきた私にとってここは職場であり、長らく詰めてきた。
馴染みのある場所だった。
しかし、今はデルカダールの将としてここにいるわけではなかったし、その上私はただの旅人のような、御前に相応しくない格好をしてそこにいた。
「我が王よ、どうかお許しください」
「
ホメロスよ、お前は幼い時より賢い子だった。ならばお前がそうまでして懇願するに納得できる理由があったはずだ。儂に理解出来ぬほど難解な理論なのかもしれん。それでも……一人の息子として、父に言うことくらいは出来るのではないか。一人で抱え込む必要はない。儂は理解に努めよう」
「はい……父上。どうか懺悔と、私の意志を聞いて下さい」
「もちろんだとも。十四年間、この国を守り続けていたホメロスの言葉だ。儂はむしろ、胸の内を語るよう請わねばならなかったのだよ」
我が父の言葉を受けて私はゆっくりと立ち上がった。
体が軽い。
あの双頭の鷲の意匠が彫られた白銀の甲冑は自室にあるのだから。
だから、今の私を鼓舞するのは首元で揺れる誓いのペンダント。
勇気を借りる。
この場にいる私は知将ホメロスではなく、ただ一人の男として、御前にいるのだ。
いや、我が王は我が父として……息子の言葉を聞こうとしていらっしゃる。
私もただの息子としてあらねばならないだろう。
「私はお暇を少し、頂きたいのです。えぇ、この国難の時、デルカダールの英雄にして将軍グレイグが不在の今……もう一人の将軍が国を開けるなどありえない事であると理解しております。しかし、それでも。私には成すべきことができました」
「続けよ。誰も遮りはしない。理由を詳細に語るがいい。すべてさらけ出すがいい。儂は父らしく、聡明な息子の考えを全て聞きたいのだ」
御前の近衛兵は私の部下だ。
奴らの動揺は見て取れたが彼らは黙したまま、直立不動を崩さない。
あぁ、良い部下だな。
「語るに長い理由があります。
父上、私はこの十四年間。ことあるごとに闇から誘惑を受けてきました。父上、今思えばあれらはあなたに取り憑いていたウルノーガによるものだったのでしょう」
「ウルノーガは手駒が欲しかったのだろうな。そなたは優秀であり、表向きは国王として君臨していたのならば自由に動かせる手駒は必要だろう」
「手駒が欲しかったのは事実でしょうが、能力に関しては……さてどうでしょうか。それならば、グレイグでも良かったのではないでしょうか。だがグレイグにはそのような囁きはなかったようです。奴には闇がつけ込む余地がなく、私にはあった。そう考えております。闇の呼び声、私を誘う声は何時だって心が弱くある時でした。それはそれは魅力的で、何度楽になりたいと考えたか……私にはもう分かりません。
私の黒い心が表に出た時、闇の声は聞こえてきました。グレイグの功績が認められた時、嫉妬に駆られる私の耳にはチカラをくれてやるという声が聞こえていました。
「……しかしお前はしなかっただろう。胸の内はいつも自由だ。ウルノーガ扮する儂は庇いだてることもなく、むしろそのような風潮を増長させたのだろうよ。そなたを闇に堕とそうとする拙い策略だ。そして、結果的にそなたは耐えた。考えただけのことを誰に咎められることがある?」
「えぇ、えぇ。私は耐えました。グレイグと私の才能は違っていましたから、私は私のチカラで認められた時こんなどす黒い感情は消えてくれるのだろうと信じて精進しました。私たちは違っていましたから、共にあるべきなのだと信じて耳をふさぎました。闇の呼び声は私をいつも甘言で誘いましたが、私は払い除けました。私は闇の手を取りませんでした。
結果としては。結果にすぎません。私は闇の声に打ち勝ち、惑わされることなく自分の才を磨き、親友と同じ立場に登り詰めた男。そう見えたでしょう。実態をお聞きください。父上、失望しても構いません。私は全て語り、そして納得して頂かなくとも本日からしばしの間、お暇をいただくのです。なんとしてでも」
口八丁で説得する気はなかった。
とはいえ理由を嘘偽りなく語るくらいの時間はあるだろう。
だが、将軍の職務のかたわらできることではないと理解していた。
「私はグレイグが英雄と呼ばれた日から闇の呼び声を聞きました。十二年前まで毎日、私は闇の呼び声に囚われていました。私は何度も身を任せてしまいたくなりましたとも。踏みとどまっていたのは父上の様子が以前と違っていたことを言い訳にした、ただの意地でありました。グレイグは
私は親友が受けていた賛辞を誰よりも理解し、グレイグの強さを誰よりも肯定し、誰よりも憎らしく思い、誰よりも奴の強さを知っていたからこそ、焦燥感に駆られていました。新兵がグレイグを称賛し、我が王が……ウルノーガがグレイグを称賛し、我が隊の兵士がグレイグを称賛し、民衆がグレイグを称賛しました。私も、心の中ではグレイグを称賛していました。賞賛しながら、憎んでいました。どうか笑ってください。そんな賞賛の中にある親友を私は心底疎んでいました! 成人をとうに終えた、誉れあるデルカダール兵たるホメロスは! ずっと親友に嫉妬し、妬ましく思っていたのです! 闇に魅入られ、闇のチカラを受け入れても良いと夢に思うほど! 我が王を裏切り、グレイグを裏切り、部下を裏切り、夢を裏切り、幼き日の約束を踏みにじっても良いと! それほどまでに、私は羨ましかった。僅かな矜持だけで耐える日々でした!
数年遅ければ私は本当に闇に堕ちていたことでしょう。そして二年前、私の元に現れた光が私を救いました。それがアイでした。アイは……きっと闇に囚われようとする私を理解していたのでしょう。私が欲していたものを、くれたのです。私には小さな称賛だけが、私にだけに向く、ひたむきな小さな愛だけあれば良かったのです。父上、私は恩を返したい。私はどうしてもアイを失いたくない。私は自分を慕ってくれた幼い命を……えぇ、たとえあの日々が、闇に堕ちてしまえば対処しなければならないことを疎んだだけの打算によるものだったとしても……ひたむきに慕ってくれた存在を、救わねばならないのです。
父上、私は小さな男です。国を任された将軍の立場でありながら、一人の少年を救うためにお暇を頂きたいと申し出るような浅はかな人間なのです。私は一人の少年が慕ってくれただけで闇からの呼び声が聞こえなくなるような、本当に小さな人間です。己が勇者であると知られてはならなかったアイがデルカダールで勇者としてのチカラを振るったとは考えにくい。だから、アイは二年間毎日私の元を訪れ……ただ語り合い……私は、何時しか悪心から解き放たれていました。
笑ってください。それだけだったのです。私の隣には常に親友がありながら。私の部下は私を真に信頼し、私は私として認められていて、私を慕ってくれる者は他にもいたのに! 私はああも直接に言葉をかけられなければそれに気づくことすらできなかったのです!」
「ホメロスよ」
「……はい、父上」
「そなたの決意はよくわかった。誰も、ウルノーガの闇に打ち勝った男を小さな男などとは言うまいよ。そしてそなたが救われたことは至極真っ当なこと。アイはそなたを救いたかったのだろう。小さな事とはだれも思いはしない。他の兵からもそなたを慕っていた兵士としてのアイについては聞き及んでいるのだから。
しかしだ、納得がいかないこともある。ホメロスよ、どうして聖竜の加護を受けた勇者を救う必要があると考える? 世界の
ホメロスよ、その考えに至った理由も述べるがいい」
父上こそ聡明である。
だから私はこうも言葉を尽くす必要などなく、物証を見せる必要もなかったのだろう。
しかし、私は礼を尽くさねばならないと思った。
「では物証を。ご覧下さい。私の手を」
私は手袋を外し、両手を見せた。
その下に隠してあったのは火傷のような傷だった。
傷はもちろん手当してあったが、皮膚はどす黒く変色し、回復魔法を掛け続けてもなお未だ疼く傷だった。
暗黒火傷とでも呼称すべき、闇魔法による後遺症だ。
「これは治療したあとの傷です、父上。闇魔法の傷跡は癒えにくいのです。治癒の魔法をもってしても、ここまでしか癒せなかった。父上、お気づきかと思いますがこれは御前でアイに触れた時にできた傷です。アイに敵意はなく、……触れた時に痛みもなく、ただ触れた相手を闇の魔力で侵蝕した。私の肉体は無意識の侵蝕に耐えられず、傷を残した。触れただけでここまで相手に傷を残せるアイは人にとって致死量の闇を抱えているということです。闇の大樹に選ばれし勇者である以上、今現在、本人には何らダメージは無いのでしょうが……少なくとも、触れた相手をここまで傷つけてしまうような闇を持った人間が、元の生活に戻れるかははなはだ疑問です。そしてアイに私は直接触れた訳ではなく、手甲越しに服に触れただけだったのはご覧になられたでしょう。アイに闇を振りまいていた自覚があったとは思えませんし、また、周囲もそのようなことになっているとはなんら気づいてはいないようでした。
父上、これは傲慢な、ただの憐れみでもあります。自分より遥かに幼い命がなぜこのような重荷を背負って生きねばならないのかという憤りなのです。救わねばなりません」
「……」
「勇者として、大いなる大樹の闇を受けいれ、闇の力を持って世界を平定する。そんな勇者を支援こそすれ邪魔することなどありえないことです。何よりアイ自身もそのようなことは望んでいないはず。しかし、このままでは間に合わないかもしれない。私はそう考えていました。使命を果たしたあとの勇者はどうなるのか? 大樹の加護を受けた人間の末路は? 闇のチカラをあれほどまでに行使した代償は一体何なのでしょう? 人間は光の子です。美しき月の下ではなく、眩き太陽の下に生きる存在です。
聖竜の勇者を崇める聖地ラムダの書物によると、『勇者』という存在は勇者のつるぎあれば、その身に大樹のチカラを宿すことができるとか。さらに勇者は大樹の光と闇を選択することができ……先代勇者ローシュは光のチカラを選択した結果、おそらくは生きて帰ることも邪神を滅ぼすこともできなかった。勇者伝説は数多くあるというのに勇者ローシュのその後についてはどこにも記載がないのです。アイがあのように闇のチカラを選択したのは先代勇者の失敗を知っていたからかもしれません。そして実際、アイは世界中の危機にうまく対処し、人々を救っていると言えるでしょう。ですが、あまりにも。アイは自己犠牲が過ぎる。あの子は完璧に微笑んで、すべてを救おうとしている。勇者にはきっと可能でしょう。自分を勘定に入れなければ出来てしまうでしょう。
父上。私は聖竜の勇者アイではなく、ユグノア王子アイではなく、己の部下にして、ただの少年を救いたいと申し上げます。その身に課されている責務を放棄してまで、私は」
「ホメロスよ」
「どうか。どうか、お聞き入れください。私は必ずや戻りますが、このような不忠を咎められるのであれば、」
「ホメロスよ!」
幼い日に、グレイグと一緒になって厨房につまみ食いをしたあの日のようだ。
厳しくたしなめる声に私はつい、新兵のような直立不動になった。
「はっ!」
隣で同じようにカチコチになって怯えているグレイグはいなかったが、アイツも私と同じ目的で戦っているはずだ。
勇者の盾として……アイの盾として。情に厚い男だ。
二年間、同じ隊ではなくとも同じ屋根の下で過ごしてきた幼い存在が身を削って戦っているのを歯痒く思っているだろう。
「デルカダールには優秀な将が二人もいるが、それはつい最近のことだ。かつてはこうも優秀な将はいなかった。二人もいる方が稀なのだ。ホメロスよ、儂を侮るでない。かつて五大国と謳われたデルカダールは今も健在である! 良いか、モーゼフ王は健在だ。十四年間、魔の手にあったとしても優秀なる臣下と勇者によって見事救われたのだから。だから、我が息子よ。今やるべきことがあるというなら戸惑うな。国を建て直すのは国王の務め。勇者によって救われた国が、勇者を支援すると言った儂が優秀な臣下がやるべきことを見つけたくらいで成し遂げられなくて何が大国の王だ!
世界は邪神復活により、危機に瀕しておる。聖竜の勇者は立ち上がり、今も戦っているだろう。しかし、我らは当事者なのだ。勇者の影に隠れ、脅威に怯えるだけで良いものか。我ら人間も戦う時なのだ。その手段の一つに勇者その人を救わんとするものがあっても良い。良いか、ホメロス。そなたは間違ってなどいない。十四年前のユグノアの悲劇ではかの者はまだ生まれたばかりの赤ん坊だった。あれから十四年が経ち、かの者は立派に成長したかもしれないが! 聖竜が何と定めようと、あのような子どもにまかせっきりで怯え暮らすなど言語道断、我ら
さあ迷うことなく行くがいい。一人で成せないならば惜しみなく支援しよう。そしてホメロス、その聡明な頭脳で導き出した方法について語るがいい。勇者をいかにして救うのかを」
胸元で揺れる誓いのペンダントのなんと頼もしいことか。
父の隣に力強く頷くグレイグを幻視する。
お前は今いい。
うるさい。
真面目に戦ってこい。
なんて……そんなことを考えるような余裕もある。
「はい。ありがたきお言葉です。
私は……勇者が邪神を倒すのを見計らい、勇者のつるぎを封印、もしくは破壊しようと考えています。大樹に収められていた方のつるぎです。アイは二本の勇者のつるぎを帯刀しておりましたので必要とあれば二本とも対処しなくてはならないでしょう。邪神を倒すまでは勇者の存在は大樹にとっても必要でしょうが。ですから、」
憎らしいほどの晴天だというのに落雷か。
妙なことにかなり落下地点は近いな。
タイミングもいやにいい。
成程。
「邪神を滅ぼすまではアイ自体に闇のチカラが悪影響を及ぼすことはない、と楽観視します。もちろん、それ以前に手を打てるものならそうすべきでしょうが……そうであればそもそも世界が存続しない。邪神を滅ぼせなければ本末転倒ですから」
「ふむ。勇者のつるぎがなければ闇のチカラを留めておくことはできない、つまり大樹のチカラの媒体たる勇者のつるぎさえどうにかすればアイを救うことができると考えているのだな?」
「はい。アイは大樹に向かいました。大樹と勇者に切れぬ関係があるのは自明ですが、世界中を巡り、数々の事件を解決しながらも、それでも大樹に向かいました。勇者のつるぎを得る必要があったのでしょう。私はダーハルーネでもアイと
「筋は通っておる。その確実性を問うことは現段階では無駄なことであるな。実証することは不可能であるのだから。
して、どのように勇者のつるぎを封印、あるいは破壊する気なのか? あれは少なくとも勇者ローシュの時代からある伝説の武具。簡単に失えるものではあるまい」
雷がどんどん近づいてくるのを分かっている父上は口角が上がるのを隠そうともしなかった。
理解しておられるのだ。
「調べによると勇者のつるぎは伝説の金属たるオリハルコンで出来ているとか。製法や由来までは不明でしたが、つまり、金属であるということには違いありますまい。私から言えるのはそれまでです。どうやら、この会話、
「ふむ。であろうな。どうにも一筋縄にはいかぬな」
「えぇ、父上」
雷が止んだ。
ふん。
「我らは光の子。聖竜の大樹によって循環する、ちっぽけな命です。小さく、脆弱で、愚か者なのです。ですから足掻く。ですから、戦えるのでしょう。私は以前より随分弱くなってしまいましたが」
「ほう?」
「知ってしまいましたので。友情も、赦しも。人は……悲しいことに失った方が強くなれますし、無知なほど、愚かに無謀で強いものです。闇に堕ちたほうが私はよっぽど強かったでしょうとも」
「随分悲しいことを言う。しかしこの心は?」
「誰を信じることもできず、誰を護ろうとも思えない哀れ極まりないホメロスという男は
確信していた。
私は闇を受け入れたほうがずっとずっと強く、偽りの快楽の中で過ごし、しかしずっと虚しく、ずっと悲しい末路を迎えただろうと。
それは大樹からすれば大きな出来事にはなるまい。
ちっぽけな男が一人、光の下よりいなくなった。
そして無惨な末路を迎えた。
それだけのこと。
私は多く間違え、多くを苦しめ、そして闇の堕ちたものとして勇者によって倒される。
それも、
巨悪を倒す道中で倒されただろう。
グレイグは多少嘆くかもしれないが、私を慕ってくれた者たちが多少悲しんでくれるかもしれないが、それすらほとんど気づかずに私は死んだだろう。
アイが、相棒が来るまでの間
だが、私の
他ならぬアイがそう言ったのだ。
所詮、私はその程度の存在だった。
大樹はわざわざ有象無象のために奇跡なんぞ起こしやしない。
だから闇に堕ちる未来もあったし、堕ちない今もあった。
故に、決定的なその瞬間まで私は奇跡的に命を落とすこともないだろう。
大樹に多少目をつけられたかもしれないが、わざわざ私を殺しになど来ないだろう。
「ホメロスよ。暇を許そう。さあ行くがいい。そして必ず戻ってこい」
「はい。父上、行って参ります」
私は
さて、まずは至極原始的な手法から確保しておくか。
やすりと塩。
それから用意しよう。
荒れ果てたデルカダールの城下町でも容易に入手できるだろう。
なにせ
悲劇の再現その1 勇者のつるぎを奪う
どこ好き?
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RTA部分:数値付き解説
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RTA部分:ストーリー解説
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RTA部分:走者の他作語り
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小説部分:アイ視点
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小説部分:カミュ視点
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小説部分:セーニャ視点
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小説部分:マルティナ視点
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小説部分:ロウ視点
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小説部分:シルビア視点
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小説部分:ホメロス視点
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小説部分:その他視点
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全般:再構成ストーリー
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全般:原作死亡キャラ生存
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