アンドリューフォーク転生   作:大同亭鎮北斎

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英雄

アンドリュー・フォーク

 アンドリュー・フォーク(宇宙歴770年1月8日-860年10月15日)は自由惑星同盟軍人、自由惑星同盟宇宙軍大将、銀河連邦軍大将。銀河連邦軍総参謀長をつとめた。

 

生涯

 自由惑星同盟領域にて生まれ、惑星ハイネセン・テルヌーゼン市の士官学校を首席で卒業。卒後は作戦参謀として宇宙艦隊総司令部へ配属される。第六次イゼルローン攻防戦で、ウィレム・ホーランド少将によるミサイル攻撃案を提出するなど当初は戦術的才能に恵まれた実戦タイプの参謀と目されていた。しかし、ヤン・ウェンリー少将によるイゼルローン解放後に戦略家としての才を顕わにした。

 同盟最高評議会サンフォード議長に、エレメンタリースクール時代の友人であり議長秘書であったラーム・浅井氏を通じ、支持率向上案として銀河帝国領侵攻作戦を提示。承認を受ける。のちにこの一件は「民主的手続きを経なかった」として進歩党の追及するところとなるが、マスコミへ対するラーム氏の「あれは支持率向上案として提示したもので、最高評議会で民主的に可決され、詳細は軍部が計画したものでありましたから、私とフォーク大将は議長秘書とその軍事ブレーンとして恥じるところは一切ありません」との説明と、作戦のあげた大戦果により顧みられることはなかった。

 帝国領侵攻作戦では人類に外交が存在した時代の故事を参考に「緩衝地帯の設置」を目標として行動計画を立案。歴史家元帥として知られるヤンウェンリー中将(当時)の理解を得て、クラインゲルト解放の現地司令官を任せる。イゼルローン解放により後方となった辺境宙域の対宙兵器や、当時惑星ハイネセンに置かれていた攻撃衛星アルテミスの首飾りを政府へ働きかけ前線へ移送するなど、浅井氏を経由してサンフォード議長から告げられる政治的要請と、ヤン中将や実戦部隊指揮官の求める戦術的必要を両立させた。

 クラインゲルト会戦においては、各指揮官との有機的連携を重視し、通信機能を拡充した帝国領侵攻作戦旗艦・揚陸艦イオウジマをクラインゲルト領に降下させたうえで通信設備をクラインゲルト地下に用意した司令部へ移動、現地で合流する各艦隊の通信の確保に尽力した。結果として同盟軍・クラインゲルト自衛隊はダゴン星域会戦に匹敵する損害を帝国に与え、ローエングラム元帥府のみならず、帝国宇宙艦隊そのものの屋台骨を傾かせるに至る。

 クラインゲルト会戦直後帝国で始まった内乱では、かねてよりブラウンシュバイク閥と対立し、政府系とも亀裂ができたローエングラム伯に娘を送り込み元帥府を味方につけたリッテンハイム閥(ローエングラム朝銀河帝国)と、フェザーンと結び付き資本力で正規軍を保持したリヒテンラーデ閥に対し劣勢となったブラウンシュバイク閥に対し、元寄り子であったダンク男爵経由で接触、ブラウンシュバイク朝立憲銀河帝国の建国を支援する戦略をヤン中将と連名で提出している。

 帝国に対し圧倒的優位を確立後の軍縮では、軍内サイオキシン麻薬捜査を行い犯罪組織を摘発、ブラウンシュバイク帝国シュトライト中将、ローエングラム帝国ケスラー中将(クラインゲルト出身であり、クラインゲルトとの窓口となった)と合同捜査を実施し、地球教などサイオキシンマフィア関連組織の大摘発を指揮した。

 これら一連の事件終了後、ソル・シリウス・アルデバラン系やクラインゲルト子爵国が同盟加入を申請した際に、サンフォード議長の地盤を引き継いだ浅井議員(当時財務委員)に「銀河連邦」への国号変更を私的に提案したともされる。銀河連邦への国号変更後はクラインゲルト駐留艦隊(ヤン艦隊)参謀長を勤めるうちに現地女性と結婚。その後国防委員・宇宙艦隊総司令部作戦主任参謀・銀河連邦総参謀長などを歴任し、大将で退役。余生はハイネセンとクラインゲルトを往復して暮らしたとされる。

 

評価

 政府と軍の要望を擦り合わせ選択肢を提示、実戦担当者に選ばせるという手法を得意とする調整型の参謀である。イゼルローン攻略以前は出たがりであり、自ら作戦を立案することが多かったとされるが、以降は概略までしか立ち入ることがなかったとされ、これはヤン中将の知謀を見た結果自分が敵わないと確信したことで自分を見つめ直すことができたからである、と自ら語っている。同時期から諸国乱立時代の到来を予期したか、西暦時代の故事を漁り「西暦期の地球生まれの記憶がある」などと嘯き始め、冗談も言うようになったと周囲は驚いたともいわれている。(この冗談は好評ではなかったようであり、ヤン中将との知己を得て以降は口にするのをやめた)

 自ら作戦を立案せず、すりあわせを主軸に置くようになってからはラーム・浅井議長秘書との連携を強化。ヤン中将やウランフ中将ら実戦派の提督らと知己を得て、政府と現場の調整を行う参謀チームに自らのチームを改造した。しかしこれは「現場に丸投げである」などと不評な向きもあった。実際直属の上司たるコーネフ中将はイゼルローン後のフォーク准将に関して「主体性が低い」と評価を下げている。それでも、クラインゲルト会戦ではそのコーネフ中将の反対を押しきり、総司令部を裏方として運用。ヤン中将の指揮を支え、大金星をあげたことで評価は再度一変した。

 以降は度々転属しつつも、ヤン元帥を支える幕僚「ヤン・ファミリー」の参謀として名を為すこととなる。のち連邦の一員となったブラウンシュバイク帝国(民主化ロードマップがやや停滞ぎみであるが、現在はブラウンシュバイク終身大統領の自治共和国である)の謀将アンスバッハ大将や、現在に至るも同盟との対立と和解を繰り返すローエングラム帝国の懐刀オーベルシュタイン大将などと並び策士として名を馳せるようになった。が、本人は策士「として知られる」のは三流であると生涯卑下していた。それでも、宇宙的に……特にクラインゲルトにて元勲視され、政庁前には当時の元首オイゲン・フォン・クラインゲルト、ヤン・ウェンリー、アンドリュー・フォークが三者で手を取り合う像が飾られている。彼もまた、伝説の時代を彩る英雄の一人であったといえよう。

 


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