詰みゲーみたいな島(四国)に人類を滅ぼす敵として転生した百合厨はどうすりゃいいんですか? 作:百男合
イグッドアヘタヌぅ~ン!
食〇ーストヴィイイイインチェ!
みんな大好きセキレイハメ。お久しぶりの挨拶だから最初から飛ばしすぎたパコ。
後で中折れしないか心配ハメねぇ。
本当は90話突破と共にお会いするはずだったはずだったけど例によってシリとアスから抜け出せなくてこういう登場となったパコ。
あんまりしゃべると「ハメドリくんっぽい奴ばかりしゃべってこれじゃぬきたし小説じゃん」「ハメドリくんはやめたほうが」「なにこの白ペンギン」「ちん〇んギンギン」とか読者の皆に思われるのがボクはわかってる賢いタイプの精霊だからこの辺にしておくハメ。
それでは今回紹介するのはハメら! スコココココ! どぴゅぅうううん!
みんな大好き友奈ちゃんルート! イェエエエイ!
映像が終わり部屋が明るくなると、室内に拍手が起こった。
「いやー、いい話だったわー。さすがアタシ。できた姉ね!」
「ちゃんとそのっちの告白も断って。それでこそ丹羽君ね。ちょっとかわいそうだったけど」
風と東郷の言葉に友奈と夏凜もうなずく。風の言葉は自画自賛だったが。
「東郷の後に見たから、すっごいマトモな恋愛模様だったわ。青春って感じよね」
「そうだねー。お幸せに、樹ちゃん」
パチパチと拍手が送られる中、当の樹の顔は真っ赤だ。今更ながら恥ずかしくなってきたらしい。
「えっと、わたしの世界のお姉ちゃんが明吾くんのこと好きだったって今知ったんですけど…大丈夫ですかね?」
「大丈夫よ樹! アンタの世界の自慢の姉を信じなさい!」
「でも女子力(獣欲)」
「友奈、今いい話だからそういうのはやめなさい」
自分の知らなかった情報に不安がる樹に親指を立てて風が言う。それにまたも会話の爆弾を放り込もうとする友奈を夏凜が制止した。
「さて、樹ちゃんの恋模様もわかったところで夏凜ちゃん。さっきの話の続きいいかしら? みんなも明吾君の性癖に関することは知りたいだろうし」
東郷の言葉にそうだった! と他の4人も食いついた。
「えっとそうね。色々セッカに作ってもらったんだけどチャイナ服とか結構興奮してくれたわ。シニョンに入れたツインテールの髪型があたしに似合ってるって。あと足がきれいに見えて素敵だって言ってくれて」
「あ、わかります。明吾くんって足が好きですよね。わたしにもよく制服に白タイツ履いてくれってお願いしてくるんですよ」
夏凜の情報にそうそうと樹も自分が持っている情報を出す。
いつの間にか話はどんな衣装で恋人が1番反応したかという暴露大会へと変わっていた。
「そう? アタシは制服にエプロン着た時が1番…というか、樹が起きるまで毎朝やってるからもう習慣化しちゃって」
風のノロケに東郷、夏凜、樹はこいつ毎日やってんのかよ、獣か! と心の中でツッコむ。
「私は色々試したけどやっぱり私服かしら。彼、肌の露出が少ない方が興奮する傾向がない?」
東郷の言葉に「確かに」と3人の声が重なる。ただ1人、友奈だけが会話に入らなかった。
「友奈はどう? 明吾が興奮した服って」
「友奈さん、空手やってたから…ひょっとして道着とか?」
「あー。好きそうよねアイツ。袴とか」
「袴…そういえば弓道着がまだあったはず。明吾君も興奮してくれるかしら」
4人の質問に友奈は困った顔をする。東郷だけは自分の世界に入っていたが。
「えっと、ごめんなさい。私そういうのは」
「そういうのって…え?」
「明吾君とはキスまでというか、その…風先輩みたいなエッチなことしたことないんです」
言っていて恥ずかしくなったのか、友奈の顔が真っ赤になる。
なるほど、だから風の映像を見た時誰よりもダメージを受けてネガティブ友奈になっていたのかと得心すると共に「ん?」と4人は首をひねった。
4人は「タイム」と告げ部屋の隅に集合する。
「ど、どうするのよ! アタシたち結構いろんなこと話しちゃったわよ⁉」
「まさか友奈がマジモンの生娘だったとか」
「どうするんですか! わたしたち明吾くんが喜ぶエッチな内容色々話しちゃいましたよ!」
「それに関しては本当に感謝してるわ。帰ったらさっそく試してみるから」
1人ブレない東郷は置いておいて、風、夏凜、樹はどう友奈に弁解すべきか考えた。
「このままじゃアタシの勇者部一頼れる先輩であり部長と言う名誉が地に堕ちそうなんだけど」
「もうとっくに堕ちてるわよ。あんな映像見せられたら」
「ですね」
風の言葉に夏凜、樹がツッコむ。
「仕方ないじゃない! あそこまで見せるなんて知らなかったんだから!」
「まあ、それは置いておいて…気まずくさせちゃったわよね」
「ですね。立場が逆ならいたたまれないと思います。自分だけ明吾くんとその…エッチなことができてないのは」
「でも、付き合った時期も関係するんじゃないかしら? 風先輩は8月にはもう丹羽君と付き合っていたんでしょう? この中の誰よりも長く付き合ってるじゃないですか」
東郷の冷静な指摘に、「それだ!」と3人は声を上げ友奈の元へ戻る。
「大丈夫よ友奈。まだ付き合いたてなんでしょ。焦ることないって」
「そうよ友奈。風が特殊なだけで、普通エッチなことにまで行くには段階ってものがあるんだから」
「そうですよ友奈さん。ちなみにどのくらいから付き合い始めたんですか?」
風、夏凜、樹の怒涛の言葉に友奈は目を白黒させていたが、やがて目を逸らし呟く。
「その、8月の終わりに付き合って…今は付き合って半年と2日になります」
ん? 半年?
またしても「タイム」と風が告げ、部屋の隅に再集合する。
「夏凜、あんた明…丹羽と付き合ってどれくらい?」
「ちょ、何よいきなり⁉」
「いいから! ちなみにアタシは3か月」
「3か月でアレなの⁉ あんたいろいろやばいわよ。あたしは5か月」
「わたしは4か月です」
東郷に視線をやると彼女は深刻そうな顔で告げた。
「私は夏凛ちゃんと同じ5か月よ。つまり…」
この中で1番付き合いが長いはずの友奈が、1番進んでいない。
まさかの事態に4人は困惑する。
「ちょ、嘘でしょ⁉ 明吾が2か月我慢出来たらすごい方よ! 風の世界は別として」
「確かにその通りです。お姉ちゃんの世界は別として」
「まったく、その世界の丹羽君は何をしているのかしら。風先輩の世界は別として」
「アンタらねぇ」
散々な言いように風も事実が事実なだけに何も言い返せない。
ちなみに東郷は自分の世界の丹羽のことを「明吾君」それ以外の世界の丹羽を「丹羽君」と呼んでいるようだ。
「でも、それだけ大切にされてるってことじゃないの?」
風の言葉に3人はジトっとした視線を向ける。
「これだからお姉ちゃんは」
「ちょっと東郷! なんか妹にいきなり罵倒されたんだけど⁉」
「いえ、風先輩。これはそう言われても仕方ないです」
「仮によ。友奈と立場が逆だったらあんたどう思うの?」
その言葉に風は想像してみた。みんなだけ自分の恋人とエッチなことをして、自分には何もしてくれないと発覚した時。
「……うわぁ、すっごい落ち込む」
「でしょう? 最悪自分に問題があるのかなって思うわよ。特に相手は友奈よ」
「丹羽くんに1人で抱え込みすぎだって言われてましたもんね」
「そうね。ひょっとしたら互いに気を使いすぎて、とか? ……うん、明吾君に限ってそれはないわ」
自分で言っていてあり得ないと思ったのか、東郷がすぐ否定する。
丹羽明吾というのは気遣いはできるが相手の気持ちが推し量れないわけではない。
つまり、友奈がそういうことをしたくないと思っているから手を出していないのだ。
「どうしたもんかしらこれ。元の世界に戻ったら、逆に丹羽のことを襲ったりしない?」
「というか、最悪あたしたちのせいで破局とか」
「やめてください縁起でもない!」
「これ、まさか友奈ちゃんの世界の私が妨害してできないってことはないわよね?」
「「「あり得る!」」」
東郷が提示した可能性に、それだ! と3人が納得する。
再び席に帰り、友奈を囲むと慰めの言葉をかける。
「大丈夫よ友奈。東郷は強敵だけど、倒せないわけじゃないから」
「そうよ友奈。そっちの世界のあたしによく効く睡眠薬を分けてもらいなさい。東郷が寝てる間に事に及べばいいのよ」
「友奈さんファイト! わたしは何もできませんけど」
「友奈ちゃん。そっちの世界の私がごめんなさい。でもそっちの世界の私は多分あなたのことで頭がいっぱいなの。だから…最悪の場合は泣いて馬謖を斬って頂戴」
「え? え? え? どうしたのみんな? 何か変だよ?」
突然自分を優しい目で見ながら怒涛の励ましをしてくれる仲間たちに、友奈は目を回す。
「だって友奈、アンタ1人だけ丹羽とそういうことしてないの気にしてるんでしょ? だから」
「おいこら犬吠埼姉ぇ!」
うっかり口を滑らせた風に夏凛が思わず名前ではなく苗字でツッコむ。それに「あ」と風は気付いたようだがもう遅い。
「そっか。みんな心配してくれたんだね。ありがとう」
友奈らしからぬどこかはかなげな笑顔を見て、東郷、夏凜、樹の厳しい視線が風に突き刺さる。
お前、この空気どうしてくれんの? と。
「あ、えーっと…そう! 次は友奈がどんな風に丹羽とくっついて今までそういうことが起きなかったのか原因をあたしたちが探りましょう! そうしましょう!」
苦し紛れの風の提案だったが、それに東郷がうなずく。
「悪くない考えですね。丹羽君にも原因があるかもしれませんし」
「そうね。あたしは東郷が原因の方ににぼし1年分を賭けるわ」
「そうだね。じゃあ、鳥さん、やってもらえる?」
樹の言葉に完全に蚊帳の外になっていた精霊のセキレイは、ポチポチとコントローラーをゲーム機につないで遊んでいた。
「あんた、何してんのよ?」
『ハメ? ようやくお話終わったパコ? あんまりにもみんながボクのことないがしろにするから【性乱闘スマッタッシュブラザー〇ンズスペルマ射ル!!】通称マタブラプレイしてたハメ』
見ると画面の中ではセキレイそっくりな青い鳥が3Dで再現されていて同じく3Dの女の子に卑猥な攻撃をしている。それを見て東郷と風の保護者コンビは急いで友奈と樹の目を手で目隠しした。
『女子のトークは素人物のインタビュー並みに長いパコねぇ。ボク、することがないからこうやって暇をつぶしてたハメ』
「いいからさっさと友奈と丹羽が結ばれた世界線を見せなさいよ。それと今回は付き合ってからしばらくの間見せて頂戴」
風の言葉にセキレイはあからさまに嫌そうな雰囲気を出す。
『え~? それが人にものを頼む態度パコぉ? これは全裸土下座くらいしてくれないとボクのいきり立った暴れん棒もおさまらないハメよ』
「いいから、やれ。早急に」
「友奈ちゃんの将来がかかっているのよ。ふざけないで」
うっすらと青筋を浮かべている夏凜と東郷に、あ、これふざけられる雰囲気じゃないなとすぐさまセキレイは悟る。
セキレイは防衛本能が高い賢い精霊であった。
『オッケー! ゆゆゆいガチャで期待値の目安になる友奈ちゃんパコねー。すぐ準備するハメ!』
言葉と共に室内が暗くなり、5人が見守る中目の前の画面に映像が流れだす。
『それではよいドスケベライフを~!』
神樹と人型のバーテックスが話し合いの末勇者の皆の安全が保障され、丹羽自身も四国に住むことを許され以前のように讃州中学勇者部に通うようになって数週間が過ぎた。
神樹が丹羽の記憶を消したために起こった誤解からの戦闘や信念をかけた戦い。
それは勇者部の面々の心に暗い影を落とした。
丹羽本人は気にしていないといったが風、樹、友奈は何度も丹羽に謝り、償いをさせてくれと頼み込んだ。
特に友奈は皆が止めるのも聞かず勇者としての使命感から丹羽を本気で殺そうとまで思っていたのだから、なおさらである。
ただでさえ思いつめる性分である彼女にとって仲間であるはずの丹羽を殺さなければならないという苦悩は耐えがたいほどであり、ノーマルルート以上に病んだ。
結果その反動から現在結城友奈は丹羽明吾に対して……
「はい、明吾君。今日のお昼ご飯だよ」
過剰に世話を焼いていた。
朝早く丹羽の部屋へ行き弁当箱に入った朝食を一緒に食べた後ともに登校。
昼休みは自分の作った弁当を一緒に食べる。それも東郷が見ている前で「あーん」して食べさせるという丹羽にとって胃の痛い状態で。
放課後の勇者部の活動では積極的に丹羽と一緒に組んで活動しているのだ。
この状況に関して丹羽は異議を申し立てたが、他ならぬ部長の風と東郷に却下されたのだ。
いわく、友奈が落ち着くまでされるがままにしろと。
その時初めて知ったのだが、丹羽が園子や夏凜、防人隊たちと新天地で調査をしている間友奈が大変だったらしい。
理由は不明だが情緒不安定となり、塞ぎこんで家に引きこもっていたとか。何度東郷や風、樹が説得しても聞き入れず、お手上げ状態になったところに丹羽が帰って来たと聞いて家から飛び出したそうだ。
確かに調査から帰って来た時壁の外付近で自分を出迎えてくれた上に抱き着いてきた彼女に困惑したが、まさかそんなことがあったとは。
それから今日に至るまで友奈の精神安定のために丹羽の日常は犠牲になった。
朝から放課後まで授業中以外は常に友奈と一緒。
その間数々の難攻不落の女性たちを落としてきたコミュ力おばけがグイグイと距離を詰めてくるのである。
呼び名もいつの間にか丹羽君から明吾君へと代わり、気が付けば友奈に世話を焼かれるのも心地いいと感じ始めていた。
このままではだめだ。
百合男子としてヘテロ堕ちするわけには…。
しかし友奈の攻略王っぷりはすさまじく、いつの間にか彼女のいない生活が考えられないほど丹羽の心の中を友奈がいる生活が満たしていた。
これは、そんな2人が一緒にいるのが当たり前になってから2か月ほど経った後の物語。
三ノ輪銀が退院し、乃木園子と共に本格的に勇者部に所属するようになってから2か月。
勇者部ではいつもの光景が繰り広げられていた。
「明吾君、あーん」
「いやいや、結城先輩。1人で食べられますって」
肉団子をつまんだ箸を口元に持ってくる友奈に、丹羽は無駄だと知りつつ抵抗する。
「もう、友奈さんって呼んでって言ってるのに。今日のは自信作なんだよー。そのちゃん家の料理人の人に作り方教えてもらったんだ」
相変わらずグイグイくる攻略王に、しかし丹羽はそれほど嫌な気分ではない。こうするのもあくまでポーズだ。
斜め右にいるこちらを般若のような顔でにらんでくる東郷に「俺、抵抗してるんですよー」と意思表示するための。
「ぐぬぬぬ」
「わっしーさぁ…もう慣れたら? わたしやミノさんがいない間もこういうの、ずっとやってたんでしょ?」
「あっついねー2人とも! もう12月だってのにそこだけ常夏かよ」
悔しがる東郷に呆れたように言う園子。はやし立てる銀とわすゆ組3人は今日も元気だ。
「隙あり!」
「むぐっ⁉」
さらに東郷に言い訳を言おうとした丹羽の口に肉団子が放り込まれる。
固いのは周りだけで中は柔らかくジューシー。コリコリとした軟骨の触感と玉ねぎの甘みがとてもおいしい。
「どう、かな?」
「おいしいです。でもこれ、作るのに相当な手間がかかったんじゃ」
自分のためにそこまでしてくれなくても…という言外の言葉に対し、友奈は笑顔で言う。
「だって明吾君がおいしいって言ってくれるのが私の幸せだもん! 風先輩と東郷さんにはまだかなわないけど、もっともっとがんばるからね!」
「うう、健気だわ友奈ちゃん。あなたこそ大和なでしこよ」
「東郷、泣くのか食べるのかどっちかにしなさいよ」
友奈ちゃんスマイルが自分に向けられていないことに涙を流す東郷。それに冷静に夏凜がツッコむ。
「はいはい、食べながらでいいから聞いて頂戴みんな。今回の依頼は保育園や幼稚園にサンタ役で来てほしいんだって。一応去年のサンタ服が3つあるけど今年は8人部員がいるから割り振りをどうしようかと思ってるんだけど、意見がある人」
風の言葉にはいはい! と友奈が勢いよく手を上げる。
「私、明吾君と一緒にサンタやりたいです!」
「友奈、それは後で決めるから。今のところクリスマスの飾りつけ作りとか去年と同じことは決まってるんだけど、他にやりたいことある人」
風の言葉に昼食中の勇者部は一気に騒がしくなる。
「サンタ役の衣装はセッカに頼んでもっと増やしてもらえるんじゃない? どう、セッカ?」
『オッケー夏凜。ミニスカサンタでもトナカイの仮装でもどーんとこい!』
仲良しコンビの夏凜とセッカからサンタ役の増加が提案された。
『飾りつけ作りは任せろ』
『お手伝いしますお姉さま!』
『フッ、このミロクにかかれば幼児たちの心に残る聖夜にするのは造作もないわ』
『おっ、ロック頼もしいなぁ。ほなウチの分までがんばってなー』
「シズカ、人任せじゃなくて貴女もちゃんと手伝ってね?」
和気あいあいと飾りつけの話をするナツメと鏑矢組の精霊に東郷が言う。シーサーなど沖縄色の強いクリスマス飾りが混ざらないか今から心配だ。
『はいはーい。私の作った野菜を子供たちにプレゼントするのはどうかしら?』
『うたのん、素敵だよそれ』
『プレゼントするのはみーちゃんね。ミータクロース誕生よ!』
『ええー!?』
「でも子供たちの中には野菜嫌いの子も多いし、そこは事前に保育士の先生と相談ですね」
「さすが樹! できた妹だわー!」
「たしかに、プレゼントって渡されたのがピーマンとか玉ねぎだったら子供たちがっかりするだろうな」
樹の言葉にその光景を想像した銀が率直な感想を漏らす。
「はいはーい。わたし、勇者部の皆と一緒に部室でパーティーやりたーい!」
園子の提案に友奈を始めとした声が「賛成!」と続く。
こうして2組のサンタクロースが保育施設を手分けして訪れることとなり、終わった後は部室でお疲れ様会を兼ねたクリスマス会が開かれることが決定した。
結城友奈は暗闇の中にいる。
服は制服ではなく桃色の勇者服だ。ぬらり、とした嫌な感触に拳を見ると、紫色の血に染まっていた。
『どうして…どうしてあいつを殺したの友奈!』
声にハッとして振り向くと呆然とした顔の夏凜と目が合った。
その瞳にあるのは絶望。そして自分に対する隠しようのない敵意。
『丹羽君はいい人だったのよ。なのに、友奈ちゃん…どうして』
声のする方を見ると東郷が涙を流しやりきれないといった様子でいた。
『わたしたちは、みんな丹羽くんのことを思い出していました。友奈さんだけが、戦おうとしてた。友奈さんが丹羽くんを殺したんだ!』
声は敵意に満ちていた。
樹が自分を責めている。本来ならあり得ない光景に、友奈は息苦しくなる。
『友奈、なんで……。アタシが、ちゃんと止めなかったから? アタシが部長としてもっとしっかりしていれば』
一方で自分を責めているのは風だ。これが友奈には1番堪える。これならばお前のせいだと責めてくれる方がいい。
『ゆーゆ、どうして…どうしてにわみんを殺しちゃったの?』
問いかける園子は目の光を失っている。その足元には胸元を友奈の拳で貫かれた丹羽の姿があった。
『違うんだよ! みんな騙されてる!』
自分の口から出た声に、しかし友奈は首を振る。違う、私はそんなこと言わない!
『丹羽君はバーテックスだったんだよ! 神樹様の敵なんだ! だったら倒さないと!』
違う違う! 明吾君は私の、私たちの大切な仲間だ!
『悪い奴なんだ、丹羽君は! みんなを騙してたんだ! だから』
そんなことない。たとえ騙していたとしても、彼の親切やこの胸の想いは偽りじゃない!
そう必死に否定するが、自分の口から出るのは想いとは正反対の意図しないものばかりだ。
『神樹様が嘘をつくはずがない! 神樹様の神託は絶対なんだ! だから』
『もういいよ、ゆーゆ』
心底呆れたように言う園子の瞳は、何の感情も映していなかった。
『ゆーゆ。いや、結城さん。結局あなたは神樹様や大赦の奴隷だったんだね。にわみんの仲間じゃなくて、勇者ですらない』
違う! 自分は勇者だ! だからつらかったけど丹羽君と戦って……あれ? 違う、そうじゃなくて。
『ごめんなさい、友奈。アンタを止められなくて。この責任はアタシ1人で取るわ』
そう言って風の姿が暗闇に消えていく。気が付けば園子の姿もなかった。
『許さない! 絶対にわたし、あなたのこと許さないから!』
怨嗟に満ちた声を残し、樹の姿が暗闇に消える。
『友奈ちゃん、どうして私の言葉を聞いてくれなかったの? どうして』
恨み言のような言葉をつぶやきながら、暗闇に東郷が消えていった。
『友奈、あんたは勇者よ。あたし以上に……でも、人間としては最低だわ』
待って! と声をかけ追いすがろうとした友奈を残し、夏凜も暗闇に消える。
いつの間にか暗闇の中に残ったのは友奈と丹羽の死体だけになっていた。
友奈はひざまずき、白い勇者服の丹羽の死体を抱きしめようとする。
だが友奈が触れた先から丹羽の死体は灰となり、風にさらわれてどこかへ行ってしまう。
残ったのは、拳に握られた石灰のような塊だけ。
『あああああ』
口元から知らず声が漏れる。
『あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!』
それは後悔。
それは懺悔。
それは慟哭。
胸の中に詰まったすべての想いを口から吐き出すように、真っ暗な世界で友奈は叫んだ。
喉が裂けて血が出ても叫び続け、絶命するまでその声は暗闇の中で続いていた。
「起きましたか、結城先輩?」
目を覚ました友奈はそこが自分の部屋で、ベッドに寝かされた自分の手を丹羽が握っていることに驚いた。
「大丈夫ですか? うなされていたみたいですけど」
「丹羽…君?」
訳が分からない。今までの光景は? 丹羽は死んだはずでは?
とそこまで考えて気が付いた。
先ほどのは夢だ。自分が丹羽を殺してしまう夢。
最近は見ることが少なくなっていたのに、どうしてまた見たんだろう?
「勇者部のクリスマスパーティーが終わって疲れたのか寝ちゃったのを俺が運んできたんですよ。あ、もちろんその時は東郷先輩も一緒にいましたからね? ただ、結城先輩が俺の服を離さなかったのでこんな時間までお邪魔してます」
見ると確かに丹羽が握っているのとは反対側の手が丹羽の服の袖をしっかりつかんでいた。
どうやら無意識に離れたくないと思い強く握ってしまったらしい。
「そのあと見守ってたんですけど、なんだか急にうなされだして…。ミトさんとシズカさんの力を借りて癒そうとしたけどあまり効果はないみたいで…すみません」
頭を下げる丹羽に、友奈は笑みを作る。心配させないように。
「大丈夫だよ、丹羽君。ちょっと嫌な夢を見ただけだから」
そう言って何でもないようにふるまおうとしたが、丹羽はお見通しだったらしい。
「俺を殺す夢でも見てたんですか?」
「っ⁉ なんで、そのこと」
「東郷先輩に聞きました。俺がいない間、そういう夢を見て苦しんで憔悴してたって」
その言葉にそう言えばと友奈は思い出す。
眠るたびにさっきのような夢を見て、眠るのが怖くなった友奈は親友である東郷にだけ夢の内容を打ち明けた。
夏凜によく効く睡眠薬をもらったが一向に夢見が悪い状態は直らず、ついには眠るのが怖くなり一睡もできなくなってしまう。
その状態で授業を受け体調を崩して早退。以来悪夢に悩まされるのは壁の外で園子と防人たちと一緒に調査をしていた丹羽が四国に帰ってくるまで続いた。
丹羽が近くにいて、優しくしてくれるのが心地よくて忘れてしまっていたのだ。自分にはそんな資格がないんだと。
「ごめんね、ごめんね丹羽君」
突如涙を流し始めた友奈にぎょっとして、丹羽はあたふたとしだす。
「え、ど、どうしたんですか結城先輩!? 俺何か悪い事しちゃいましたか?」
「そうじゃない! 悪い事をしたのは私。全部私が悪いんだ! 君に恨まれても仕方ないのに、こんなに幸せで…そんなこと許されないのに」
友奈の言葉にどういうことだ? と詳しい夢の内容を聞き、それを何度も見ていたということを聞いた丹羽の反応は、淡白なものだった。
「いつまでそんなこと気にしてるんですか結城先輩」
あんまりにもあんまりな反応に、思わず言葉を失う。
「俺がもういいって言ってるのに気にして。犬吠埼先輩たちはとっくに立ち直ってますよ。なのにまだ気にしてたなんて」
「それは、そうだけど…でも」
瞳を逸らし泣きそうになる友奈を丹羽の手が挟んでむりやり自分の方を向かせる。
「俺は今、充分幸せですよ。勇者部の皆が笑顔でクリスマスパーティーをしてたこと。犬吠埼先輩が入院してないこと。三ノ輪先輩が生きてくれてることを目に焼き付けられることが幸せすぎて夢みたいで」
「風先輩と銀ちゃん? どうして?」
思わず漏らした勇者の章のトラウマになんでもないと丹羽はごまかし言葉を続けた。
「こんな幸せな世界に、不幸な思いをしている人がいるなら見逃せません。それが結城先輩なら特に」
「それは、私じゃなくて東郷さんや樹ちゃん、夏凜ちゃんとでもそう思うんじゃない?」
めずらしくネガティブな友奈に首をかしげながらも、丹羽は首を振る。
「あなただからです、結城先輩。結城友奈が幸せじゃない世界なんて、俺は認めない。勇者じゃなくて普通の女の子になっても、あなたが幸せじゃないと意味がない。あなたが幸せになるためになら、俺は持てる力をすべて尽くしますよ」
笑顔で言う丹羽がまぶしくて、友奈は目を細める。と同時に先ほどの夢を思い出し、目線を外しうつむこうとした。
「ごめん。ごめんね丹羽君。私、あなたにそんなことを言ってもらえる資格なんてない。最後の最後まで勇者部の仲間を信じずに神樹様を信じて君を倒そうとした私にはそんな」
それは友奈の性質を考えれば当然のことなので丹羽は気にしていないのだが、そう言っても納得しないだろう。
だから、からめ手で納得させる。
「結城先輩…いや、友奈さん。俺、実はもう友奈さんがいないとダメな身体にされちゃってるんですよ。朝ごはんも中学生男子には多すぎる量のお弁当のサイズになれちゃってるし、あーんして食べさせてもらうおいしさは1度味わったらもう忘れられません。東郷先輩の視線が怖いですけど、お昼休みに部室のひだまりで膝枕されるのなんて最高です! もうあれがない生活なんて考えられません」
「そんなの、私じゃなくても…。もともとご飯は風先輩が作ってたし、お料理だったら東郷さんの方が。私はまだまだ東郷さんとそのちゃんみたいに丹羽君と共通の話題で楽しく盛り上がれないし、樹ちゃんと違ってかわいくないしクラスも違うし、銀ちゃんみたいに丹羽君の特別じゃないし」
なんだこのネガティブ友奈は?
予想以上に手ごわい友奈に困惑しつつも、丹羽はさらに言葉を告げる。
「あなたじゃないとダメなんです。他の誰かじゃなくて、結城友奈先輩が俺はいいんです。そばにいて、幸せを感じるのは。バーテックスの俺にないはずの心を優しさで満たしてくれたあなたが、とても大切な人なんです」
告白ともとれる言葉に、友奈の胸の奥がきゅうんと苦しくなった。
痛い、苦しい痛みではない。甘い、何かを期待するような、何か楽しいことが始まりそうで焦るようなドキドキが胸を打つ。
「いいの、本当に? 私、君を殺そうとしたよ? なのに、君と一緒に幸せになろうだなんて虫が良すぎるよ」
「俺がいいって言ってるんですからいいんですよ。それより友奈さん、俺の呼び方、丹羽君に戻ってますけど」
散々東郷が怖いからやめてくれと言った名前呼びも、されなくなったら寂しいものだと今気づいた。
「うん、うん。そうだね明吾君。私、君と一緒がいい。ずっと、いつまでも」
「俺もです。ちゃんとあなたが幸せになるのを見届けたいです。誰よりも近くで」
その日、1組のカップルが誕生し、クリスマスプレゼントを交換する。
プレゼントは互いの口づけ。冬の月だけがそれを知っていた。
さて、ここで友奈ルートを終わりにしてもいいが読者諸兄は気になっているのではないだろうか。
友奈が言っていた8月の終わりに付き合って…付き合って半年といった発言。それではこのエピソードとかみ合わない。
それもそのはず。これは丹羽視点での物語。友奈視点では内容がかなり異なる。
イイハナシダナーで終わりたい人はここで読むのをやめることを推奨したい。友奈ちゃんカワイイヤッターという友奈ちゃんファンもだ。
警告はした。この後の友奈視点の物語を読むかどうかは、あなた次第だ。
結城友奈ルート確定条件
〇9月までに好感度Max。
〇東郷と友奈ちゃんファンクラブを作り会員となる。
〇夏合宿で友奈の水着をほめる。
〇夏祭りで友奈の浴衣をほめる。
結城友奈は攻略王の2つ名の通り一方的に信頼度、親愛度が上がる傾向があります。
それにあぐらをかいて彼女を放置すると本当の信頼を得ることができずどのルートでも後半で詰みます。友奈ルート狙いではなくてもきちんと平等に他の勇者たちと一緒に優しくしましょう。
友奈ちゃんファンクラブ結成イベントを発生させるためには東郷さんへの信頼度も上げなければならないので注意。
プレゼントには押し花図鑑、きれいな花などが効果的。話題はどれを選んでも均等に上がります。