詰みゲーみたいな島(四国)に人類を滅ぼす敵として転生した百合厨はどうすりゃいいんですか? 作:百男合
神樹「来ないで!」
天の神「いっぱい遊べるようにおもちゃ(バーテックス)もいっぱい持ってきたゾ☆」
神樹「やめて! 持って帰って!!」
「どういうことだよ!」
俺は銀ちゃんに詰め寄られていた。
あまりの剣幕に、須美ちゃんとそのっちも何事かとこちらを見ている。
「御霊持ちの星座級を倒したら、現れるのは12体だけじゃなかったのか!?」
眼前の光景を指さす。
そこにいたのは結界の外、人が住むことのできぬ壁の外から現れたバーテックスの群れ。
いや、群れというのはちょっと違う。統率された大軍だ。
ヴァルゴ、リブラ、スコーピオン、サジタリウス、カプリコン、アクエリアス、ピスケス、アリエス、タウラス、ジェミニ、キャンサー、そしてレオ。
大きさもスピードも違うはずのそいつらは、歩調を整え整然とこちらに向かって進軍してきていた。
十二星座勢ぞろいだ。しかもよく見ればそいつらは体躯が太陽のように輝きながら燃えていて、天の神の影響を受けていることをうかがわせる。
まさかここまでやってくるとは。天の神の本気具合に、俺は震える思いだった。
アニメでは、たしか12体の星座級巨大バーテックスにそのっちが満開で突撃したシーンで終わっている。
レオとピスケス、アリエスを満開で倒していたから、あれは御霊なしの3体と星屑と融合して再生した他の12星座級だと思っていた。
だがよくよく思い出せば今のように遠目でわかるくらい体躯が炎で明るく照らされていたようにも思う。
まさか、アニメ本編でも天の神の意志が介入していた?
乃木園子が20回以上満開した原因は、天の神にあった?
失策だ。御霊をこちらで管理して再生させなければ本編より弱い御霊なしの巨大バーテックスを12体倒すだけだと思い込んでいた。
根本的な誤解だ。
まさか、鷲尾須美の章からもう天の神の意志が影響していたなんて。
『ごめん、俺の判断ミスだ』
隠そうとしても悔しさは言葉ににじみ出てしまう。
頭を下げる俺の頭の中を満たすのは、自分の馬鹿さ加減に対する怒りだけだった。
『まさか、天の神がもうこの物語に介入していただなんて。勇者の章…いや、あと2年は大丈夫だと思ってたんだ』
「天の神って何なの? バーテックスとは違うの?」
須美ちゃんが問いかけてくる。そうか、この頃はまだ知らないのか。
そのっちは何か知っているのだろうか? 進軍してくるバーテックスたちを、目に刻み付けるように見ている。
『天の神はバーテックスの親玉。君たちの信仰する神樹様の天敵だよ』
衝撃の事実だったんだろう、須美ちゃんと銀ちゃんが驚いている。
『ちなみにあそこにいるバーテックス全部倒しても本人は痛くもかゆくもない』
もう1つの事実を告げると、絶句していた。うん、そうなるよね。
天の神にとってバーテックスは端末のようなもので、いくら消費しようと新しいものを作ればいいだけの存在だ。
そのことを教えると、「私たちのしてきた戦いはなんだったの」と膝をついてしまう。
しまった! 落ち込ませるつもりはなかったんだけど結果的に心を砕いてしまった!
『だ、大丈夫!』
大きく胸を叩いて、3人を元気づけるために鼓舞する。
『専守防衛して追い返してればこっちにこないし、攻勢に出るとか下手に刺激しなければ何もしてこないものぐさな奴だから』
「でも今、ここに大群のバーテックスが来てるよ」
とそのっち。はい、その通りです。
そうだ! 全部俺の責任だ!
だから俺は謝る。自分の非は認める。どっかの所長みたいに最後まで謝らなかったりしないぞ。
『ほんっと、すみませんでした!!』
ああ、3人がすっごい目でこっちを見てる。
JSに2度も土下座するなんて、なんてプレイだ。何かに目覚めそう。
『あいつらは責任取って俺が何とかするから。君たちはもう戦わなくていいから!』
「っ、そういうわけにはいかないわ。私たちにはお役目が」
ああ、この娘はいい子だな。
自分をだましていた大人たちを、まだ守ろうとするなんて。俺だったらもう見捨ててる。
もちろん自分の大事な人たちを含む人類を守るという信念もあるんだろうけど、あいつらはそれすら利用しているからな。
本当に、胸糞悪い。
俺は須美ちゃんの頭に手をのせる。一瞬身体がこわばったので壊れ物を扱うように優しくなでるだけにとどめる。
『もういいんだ。頑張らなくて』
その言葉に、須美ちゃんだけじゃなくて銀ちゃんとそのっちもこっちを見る。
『君たちは、すっごいがんばった。その小さな体には不釣り合いなくらい。でも、本来子供を守るのは大人の仕事なんだ』
何を言っているのかわからない。そんな表情だ。
大赦の大人たちは、こんな子供に辛いことを全部押し付けて、自分は安全な場所でふんぞり返っている。
四国の中にいるから俺は手が出せない。だが違う未来でもし四国に入れるようになったら必ず報いは受けてもらう。
『だから、もう戦わなくていい。ここからは、俺にキミたちを守らせてくれ』
我ながら臭い台詞だと思う。でもしょうがないじゃないか。
子供がこんなに頑張っているのに、年上(多分)の俺が何もしないわけにはいかない。
『銀ちゃん、手を出して』
俺の言葉が相当意外だったのか、ポカンとしている3人のうちの1人に声をかける。
恐る恐るといったように出してきた手を握り、俺は先ほど取り込んだタウラスの防御力、アリエスの再生能力と振動攻撃を利用して銀ちゃんの斧を高周波ブレード化、ジェミニの素早さを与えてアップグレードさせる。
え、ピスケス? 樹海の中に潜れても仕方なくない?
あと用意した精霊も全部置いていこう。白静に手を振り、みんなを頼むとお願いする。
それとこれは念のために。身体の一部をちぎって丸め、手のひらに置く。
『これを飲み込めば、今のキミなら1回くらいアレに耐えられるから。危なくなったら使って』
「アレって、1回試してアンタが使うなって言ったアレか?」
『できれば使ってほしくないけどね。あくまでこれは念のため。キミを、君たちをもう戦わせないって決めたから。子供なのに本当によく戦ったよ』
「子供子供って! なんなんですか貴方は!」
うーん、今結構いいシーンだと思うんだけどなぁ。
顔を向けると、須美ちゃんがわかりやすく怒ってた。
「私たちは神樹様に選ばれた勇者です。みんなのため、人類のために戦うお役目があるんです!」
「わっしー」
そう言えばゆゆゆいのエピソードでも若葉ちゃんに「小学生を戦わせるのはどうか」という発言にかみついてたなぁ。
俺は懐かしく思いながら、須美ちゃんの頭に手を置く。
『ごめん、でも決して君たちを軽んじての発言じゃないことはわかってほしい』
あ、わかりやすく体が硬くなった。やっぱりこの身体は怖いのかな。ちょっとショック。
『でも、子供を守るのは大人の仕事なんだ。これだけは譲れない』
これ以上怖がらせるのも酷なので、俺は手を放し迫るバーテックスの大群に向き直る。
大分近づいてきたな。もうすぐ遠距離攻撃ができる奴らの射程距離内ってとこか。
『じゃあ、行ってくる』
俺は結界の外へ走り出し、壁の外へ出ると身体の質量を解放し、体を変化させる。
グラーヴェ・ティランノ。
花結の章27章で登場する、巨大なムカデのように長い体をしたバーテックス。
以前星屑から作ろうとして、失敗した厄介な能力を持つバーテックスだ。
体力が非常に高く、固くて毒持ち。俺が知りうる限りレオ・スタークラスターを除くと1番強いバーテックス。
12星座の巨大バーテックスを吸収することで、ようやくこの姿と能力を再現することができた。
本当は造反神みたいになりたかったけど、それこそ神を取り込まないと無理だろう。
さあ、推しのカップリングが生きる世界を守らないとな。
俺は敵の真っただ中に突っ込んだ。まずは厄介な遠距離攻撃型の星座級を潰さないと。
「なんなのあの人」
須美は大群のバーテックスにものおじもせずに突撃していった人型のバーテックスを見送り、つぶやいた。
頭には先ほどまで自分の頭の上に置かれた手の感触がまだ残っている。
まるで壊れ物を扱うように、優しい手だった。
人類を滅ぼす、自分たちの敵であるはずの相手なのに。
なぜ、安心して泣きそうになってしまったのだろう。
「わっしー?」
「な、なんでもないわ」
園子に声を掛けられ、慌てて膨らみかけていた涙を払う。
「なんか、すっごい優しい人(?)だったねー」
「あー、それな。アタシも最初すっげー疑ったんだけど、話してみると案外普通だった」
「うん、謝ってばっかりだったし」
園子は遠くでムカデのような形に姿を変え、レオやサジタリウスの大群と戦うバーテックスを見ながら言う。
「あんなこと言われたの、初めてだったねー」
「当然でしょう。私たちは勇者で、バーテックスと戦えるのは私たちだけなんだから」
「うん。でも、大赦の大人は一度もあの人の言う大人として当たり前のことは言ってくれなかったよ」
自分に任せろ。すっごい頑張った。戦わなくていい。子供を守るのは本来大人の仕事なんだ。
どれも勇者になってから親を含め大人からかけて貰えなくなった言葉で、たぶんそれは1番言ってほしい言葉だったかもしれない。
「あの人といたら、私は弱くなりそう」
「なーに言ってんだよ。未来のお前たち、滅茶苦茶強かったじゃん」
つぶやく須美に、銀は笑う。
「東郷さんに園子先輩。たった2年であそこまで強くなるんだ。しかも胸まで成長するし。K2からエベレスト。平原から富士山とかすげーぞ」
「? 東郷って、銀。その名前どうして」
「園子先輩って、ミノさん留年でもするの?」
とんちんかんな反応に、銀は首をひねる。
「え、お前らあの世界のこと、おぼえてるよな?」
「あの世界って何よ」
「えっと、よくわからないかなー」
「嘘だろ? 結婚式の衣装来たり、皆でドレス着てお祝いしたり、樹さんが友奈さんと高嶋さんとアイドルやったり、千景さんとゲームやったりとか勇者部のみんなといろいろやったじゃん」
「樹さんに友奈さんと高嶋さんと千景さん? それって銀の友達?」
「勇者部ってなにかな?」
「そんな…おぼえてるのがアタシだけなんて」
よくわからないがなぜかショックを受けているようだ。その理由を聞こうと須美と園子は口を開きかけ、
「ッ!? オイオイ、なんだよあの化け物…」
「えっ?」
突如現れたとてつもなく巨大な人型のバーテックスとその体躯に巻き付く蛇に、目を奪われた。
サーバー星屑から次々と出てくるゆゆゆいバーテックスの協力もあり、星座級バーテックスの掃討は順調に行くかと思われた。
何しろ1度は倒した相手だ。弱点も知っている。そして最初に対峙した時にはなかったメタ能力もある。
1体1なら勝てる戦いだっただろう。
だが、個体と統率された軍とは、そもそも戦い方が違った。
アタッカ・アルタで攻撃を仕掛けても高い防御力を持つキャンサー、タウラスが受け止めて他の星座級が攻撃する。
フェルマータ・アルタが素早さでかく乱しようとしても相手は誘いに乗ってこず無視を決め込んだ。
自爆するバーテックスには攻撃を仕掛けているようだが、それ以外には多対多で挑んでいて、互いの弱点を補いあっていた。
数はこちらのほうが圧倒的に有利だが、星座級と通常バーテックスとは地力が違う。
最初にレオとサジタリウスを2体ずつ仕留めたのだが、その後は群れの中に入って今はタウラスやキャンサー、スコーピオンの3体に守られている。
前面にはアクエリアスとリブラの群れがいて、巨大な水球の壁を作って攻撃を防いだり、暴風を起こして近接系のバーテックスを近づけまいとしている。
1度レオの熱光線を撃ちこんでみたが、この壁のせいで数体だけ破壊するにとどまった。
だったらこれはどうだキーンラステネール!
グラーヴェ・ティランノの固有スキルである1ラインの敵に大ダメージを与える攻撃を放つ。
隊列を組んでいただけあって効果は抜群で、かなりの星座級バーテックスを倒すことができた。
だがこの攻撃を受けたアリエスが増殖してる。しまった、切ったり噛んだりする攻撃はNGか。
それなら制空権だ。
俺はムカデのような体で上へ上へと、天に昇るように移動する。
その動きに気づいたレオやサジタリウスがビームを撃ちこんでくるが、当たるわけにはいかない。
隊列を乱さぬバーテックスの群れを見ながら、俺はヴァルゴの爆弾を落とす。
ただの爆弾ではない。カプリコンの毒ガスをスコーピオンの毒で強化した毒ガス爆弾だ。
これによりバーテックスの大群は、目に見えて動きが悪くなった。密集していたことが仇になり、ほぼ全員が毒ガスにやられていく。
リブラが風を起こし毒ガスを晴らすのがベストだが、そのリブラは中心から1番遠い前面にいる。
突風を起こしても毒ガスを晴らすには時間がかかるだろう。スコーピオンの毒ならその間に敵を全滅させることができるはずだ。
あとは指揮官を探すだけ、と思っていた俺の目にそれは飛び込んできた。
逆さにしたUFOみたいな姿に火山の河口のように
間違いない。あれは天の神だ。
ただ、俺が知っているものよりだいぶ小さい。
結城友奈は勇者である2期の勇者の章で出てきたやつはかなり巨大だったが、今目下にいるのはジェミニの分離した小さいほうくらいの大きさしかない。
もしかして、天の神でも位が低いものか、もしくは本体からの端末的な存在なのか?
だったらまだ俺に勝ち目がありそうだ。
そう考えて油断していた。
あちらがこちらを見つめたのに、気づいてしまうまでは。
見ツケタ
全身が総毛立つようだった。
この身体になって、久しく感じることのなかった感情を今思い出す。
それは純粋な恐怖。
人間が熊に会った時のように。あるいは海で遭難した時サメの群れに囲まれた時のように。
自分とは違う異質な、力が絶対上位のモノに会ったときに感じる恐れが、身体を震わせていた。
やばい。
こいつは、やばい。
知らず逃げ出しそうになる身体を、意地が止める。
お前、さっき3人になんて言った?
あの3人に会ったとき、最初になんて決めた?
守るんだろ? 救うんだろ?
それを嘘にして、彼女たちを見捨ててきた大人と同じになるのか?
心の中で問いかけてくるもう1人の自分に、ひっ叩かれたようだった。
俺は覚悟を決め、そいつに襲いかかる。
降下する勢いそのままに、リブラの風でさらに勢いを増し天の神に突っ込む。
表情がないはずなのに天の神が嘲笑ったように見えた。
体躯に牙が突き刺さり、スコーピオンの毒を流し込む。
獲った!
あとは身体に巻き付き、毒が全身に回るまでもちこたえれば。
そう思ったとき、巻き付こうとした体躯が消滅した。
一瞬何が起こったかわからず呆然とすると、次の瞬間身体を
まず見えたのは、緑色のフードをかぶった針金でできた人らしきものを
そしてそれに絡みつく、灼熱を形にしたような燃え盛る巨大な蛇の姿だった。
黄道13星座というものがある。
射手座や山羊座というお馴染みの12星座にへびつかい座を加えたものだ。
元々最初は13星座だったが昔の人が1年を12か月で区切ったため、へびつかい座は削除され徐々に忘れられたとかなんとか。
いろいろ説があるが、この存在をファイナル〇ァンタジーや聖〇士星矢、スタープリンセスプ〇キュアで知った人も多いのではないだろうか。
そんな黄道上にあるが12星座に入らなかったへびつかい座のバーテックスが、今誕生した。
オフィウクス。へびつかい座の名を冠した天の神が変化した姿だ。
目の前にいるそいつは、確かにそう名乗った。
声もなく、ただ頭に直接刻み付けるように。
へびつかい座の特徴としてまず挙げられるのは、その巨大さだ。
へびつかい座が持っているへびを一緒にすると、うみへび座を超えて全天1の大きさを誇る。
そしてその名を冠したそいつは、とてつもなくでかかった。
12星座を食べて何万という星屑を食った俺が質量を解放した姿と同等、いや、それ以上の大きさだ。
普通のバーテックスが、まるで子供のおもちゃのように見えてくる。
そいつが右手を伸ばし、ゆっくりとこちらに手を伸ばしてきた。
避けようとするが身体が動かない。まるで
これは、タタリか? 結城友奈は勇者である2期であった友奈を苦しめ、
気休めにしかならないがヒーリングウォーターで体を覆うとしてたところだったのもあって、反応できない。
やばい、やられる!?
だがオフィウクスの手は俺をすり抜け、その先に――毒ガス爆弾で壊滅したバーテックスの大群に向けられた。
何をする気だ?
疑問は、すぐに驚愕に変わった。
なんと倒れてグズグズに溶けていくばかりだったバーテックスの体躯が、崩壊を止めたのである。
時を巻き戻すように倒れていたバーテックスも起き上がり、進軍を開始する。
まさかこいつ、治したのか!?
アクエリアスのヒーリングウォーターを除けば、バーテックスの回復手段は周囲にいる星屑を消費しての傷の修復ぐらいしかない。
だがこいつはそれを使うことなく、右手をかざしただけで死にかけだったバーテックスを万全の状態に戻し、死亡していたものを復活させた。
死者蘇生能力。あるいは完全回復能力。
それがこいつの能力か。
これはかなりマズイ能力だ。
なにせこいつがいるだけで、バーテックスは無限に戦える。
俺たちがどんなにがんばってバーテックスの大群を倒しても、こいつが右手をかざすだけですぐ復活してしまうのだ。
これではいつか
まずはこいつを倒さなければ。
ヒーリングウォーターは解除した。身体が燃えるような痛みは一向に引かなかったからだ。
俺は何とか首をもたげ、そいつに向かって牙を立てようとする。
が、そいつが左手を目の前に掲げただけでその動きは止められた。
がっああああああああああああっ!!
身体をバラバラにねじ切られるような痛みに転がってのたうちそうになった。
これもこいつの能力か? バーテックスにないはずの痛覚を倍増させたりって、もともと痛覚のある人間相手だとすごい脅威じゃないか。
まるで絞られるぞうきんになったような気分だ。身体がバラバラになりそう。
動きを止めた俺の身体を掴もうと巨体から腕が伸びてきた。
ムカデのような身体を両手ががっちりと掴み、握りつぶさんと圧迫してくる。
くそ、ダメだ。あのバーテックスの大群をあの3人のところへ向かわせちゃ。
これ以上進ませるな!
俺はサーバー星屑と俺が支配していた7体の巨大星屑に強く願う。
頼む、誰でもいい。
今、動けない俺の代わりに、アイツらが進むのを、止めてくれ。
本体から命令を受けた、7体の星屑とサーバー星屑はそれぞれ行動を開始した。
『マスターの思考からこの3人を最優先保護対象と認定。あらゆる脅威から適切な手段を用いて保護します』
そう告げるとサーバー星屑の体躯が変化していく。
そそり立つ巨大な壁のような体躯。灰色と白の体躯は巨大な城門のようだ。星屑の名残がある頭には水色の宝珠らしきものもある。
グランディオーソ。花結のきらめきストーリー18章で登場するボスバーテックスだ。
バーテックスの大群からレオの熱光線が8つ放たれ、グランディオーソを貫こうとするがびくともしない。
グランディオーソは、遠距離攻撃をほぼ無力化するバーテックスだ。
勇者の必殺技でない限り、遠距離攻撃でダメージを与えるのは難しい。
その代わり移動ができず、近距離攻撃には弱いのだが。
御霊を守っていた7体の星屑もサーバー星屑の前に到着し、風車の羽根の代わりに足が生えたような奇妙な形のバーテックスに体躯を変化させる。
動く姿はクモのようで、ちょっと気持ち悪い。
アニマート。ゆゆゆいで登場する近距離勇者の攻撃を受けると回復するバーテックスだ。
範囲内の敵に毒を付与してダメージを与え、ノックバックさせるスキルを持っている。
アニマートが攻撃するたび、バーテックスの大群は後方へと押し出され下がっていく。
そこに巨大カデンツァ・アルタなどの遠距離攻撃系バーテックスが攻撃を放ち、けん制する。
だが最初は押されるばかりだったバーテックスたちも、アニマートに遠距離攻撃がきくことに気づくと行動を変化させる。
アニマートには遠距離攻撃。サーバー星屑には近距離攻撃が得意なバーテックスたちが迫る。
勇者を守ろうとする星屑たちの最後の防御線は、すでに瓦解するまでのカウントダウンが始まっていた。
年上って言ったけど星屑(主人公)は転生してからまだ1年もたってないんだよなぁ。
グラーヴェ・ティランノ
ゆゆゆいの花結の章27章で登場したムカデのような長い体をしたバーテックス。
エキスパートではHPが多く、体力が減少すると防御バフが乗ってクッソ固い。
攻撃スキルも即死級の大ダメージを与える範囲攻撃のほかに全体に毒付与、範囲内の敵に移動禁止、攻撃禁止デバフなどを付与してくるすっごい厄介な相手。
オフィウクス(へびつかい座)
へびつかい座の名を冠したバーテックス。
でかい。とにかくでかい。
緑のローブをかぶった針金で作ったような人間のような姿をしていて、腕だけが丁寧に肉付けされている。巨大な蛇型のバーテックスが巻き付いている。
右手は生を、左手は死を司り、機能停止したバーテックスを星屑の消耗なしで復活させたり新しい星座級を生み出したりできる。
元が天の神なので全バーテックスの能力を使用でき、左手をかざすだけでタタリの付与、効果の促進も行える。
モチーフは『絞首器』
※本小説オリジナルの創作バーテックスです。ゆゆゆいやアニメ本編では登場していません。
次回、バーテックス銀ちゃん無双