詰みゲーみたいな島(四国)に人類を滅ぼす敵として転生した百合厨はどうすりゃいいんですか?   作:百男合

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 あらすじ
バーテックス銀「切り札発動! オラァッ!!」(バーテックスの大群半壊)
オフィウクス「いい倒しっぷりだ。おかわりを上げよう」(新しい星座級大量召喚)
十二星座「わー、ここが四国かぁ。みんな乗り込めー^^」
バーテックス銀「満開! 行くぜ行くぜ行くぜ!!」
十二星座「アバーッ⁉」(光の速さで全滅)
オフィウクス「わ、私のそばに近づくなぁ!?」


【わすゆルート】百合は世界を救う

 無数の星座級バーテックスを圧倒的な力で蹴散らし、銀はへびが巻き付いた超巨大な人型バーテックスのオフィウクスを目指す。

 その両手には巨大なムカデのようなものに変化した人型バーテックスが握られ、いまにも引きちぎられそうになっている。

 待ってろよ、今助けてやるからな。

 そう、銀が決めて攻撃をしようとした瞬間だった。

 目の前でブチブチと音を立て、上半身と下半身が引きちぎられたのである。

 あまりのことに、一瞬銀の頭の中が真っ白になる。

 間に合わなかった? 嘘だろ? アンタ、アタシより強いって言ってたじゃないか。

 呆然として棒立ちになった銀を見逃すへびつかい座(オフィウクス)ではない。左手で千切れた下半身を放り投げると、前にかざす。

「がっ?!」

 銀の身体にタタリが付与された。突如身体を蝕み始めた猛烈な熱さと痛みに、呼吸を忘れそうになる。

 だがそれが逆に銀の闘争本能に火をつけた。

「この野郎っ!」

 許せない、許せない、許せない!

 突き動かすのは、純粋な怒り。

 短い付き合いだったが、良い奴だった。

 銀が眠れない身体になれず退屈していると、いろいろな話をして暇つぶしに付き合ってくれた。

 バーテックスでありながら、人類を守るために陰ながら暗躍していたらしいこと。

 星座級の御霊を管理し、御霊持ちの十二星座が復活しないよう見守ってくれていたことも聞いた。

 未来だけでなく過去のことも知っているようで、あの世界で一緒に戦った西暦勇者のことも訊けば教えてくれた。

 雪花さんや棗さんの事も訊いた。過去に戻ることができたらあの2人も助けに行きたいと言った人型バーテックスの横顔は、仮面をかぶっていたのに悲しげだった。

 なにより勇者という特別な立場にある自分や須美や園子を、普通の子供のように扱ってくれた。

 彼にとっては当たり前のことだったんだろう。

 だが、その当たり前がどれだけ嬉しかったか。

 銀は自分の武器である斧が密集して生えている獣の足を振るい、必殺技を放つ。

 

 天墜の斧鉞!

 

 攻撃を受けた左手は断ち切られ、大きな質量が落ちたことで衝撃波が生まれる。

 銀はそのまま右手も切り落とそうとしたが、へびつかい座に巻き付いている巨大な燃え盛る体躯を持つ蛇が放つ熱光線に邪魔された。

 どうやらどうあってもこちらは切らせてくれないらしい。

 再び切りかかろうとする銀だったが、身体がそれを止めた。

 満開の制限時間(タイムリミット)

 満開が解除され、巨大な4つ足の獣と台座が光となって霧散する。

(くそ、こんなところで)

 肝心なところで満開の効果が切れたことに歯噛みする。巨大なハリガネでできたような顔が、見下し嘲笑っているように見た。

 ここで倒れたら、全部が無駄だ。

 あの右手から新しい巨大バーテックスの群れが呼び出され、神樹様にたどり着いてしまう。

 そうしたら世界は終わりだ。

 人型のバーテックスは、今の銀なら1回くらい満開に耐えられると言った。

(さっき飲んだ薬で1回はチャラ。これが実質最後の1回か)

 覚悟を決め、もう1度満開する。

 爪に大量の斧をはやした4つ足の獣が再び顕現(けんげん)する。と同時に巨大な蛇が放った炎が身体を包む。

 危なかった。満開するタイミングが1秒でも遅れていたら今の攻撃で焼き尽くされていた。

 冷や汗を流しながら右腕を獲りに行く銀。そうはさせまいと巨大な蛇も周囲に火球を作り出し、次々と銀に向けて放っていく。

 だが、銀のほうが少し早かった。

「おりゃぁあああ!!」

 4つ足の獣の腕が振るわれ、へびつかい座の右腕が切り落とされる。

 それにより捕まっていた人型のバーテックスも解放され、銀は安堵した。

(アリガトウ)

 自分のうちにいる白静が、お礼を言ったような気がする。いいってことよ。

 そのまま超巨大なハリガネでできたような体躯に向かって両腕の斧を振るう。

 それは技とも呼べない、猫が驚いて相手を乱れひっかきするような無茶苦茶な乱撃。

 だが効果は抜群で、攻撃を受けるごとに巨体は崩れ、巨大な質量が地に落ちていく。

 巻き付く灼熱の蛇も焦ったのか、銀へ放つ火球の数を増やし、攻撃をより一層激しくする。

 だが銀は止まらない。止められない。

 絶対にここで、お前を倒す!!

 満開の制限時間いっぱいまで斧を振るう。ここからは我慢比べだ。

 降り注ぐ銀の斧、崩れる巨体、蛇が放つ巨大な火球、炎に耐える4つ足の獣の巨体。

 きっちり10分。その地獄のような耐久戦は続いた。

 防御を無視した捨て身の攻撃にさしもの超巨大人型バーテックスも耐えきれなかったらしい。

 銀の満開が強制解除されると同時に、へびつかい座の巨体も崩れ始めた。

 やった。人類の勝利だ。

 ざまあみろ。バーテックス野郎!

 銀は自分が落ちていくのか天に昇っていくのかわからない感覚に身を任せたまま、心の中で叫んでいた。

 これでいいんだ。このアタシはここで戦って、消えたって。

 須美と園子には、本物の人間のアタシがいれば。

 バーテックスの肉体になったと聞いたとき、考えていた。自分は四国に帰れるのだろうかと。

 答えは否だ。神樹様の元にバーテックスがたどり着けば世界が終わると言われている以上、自分はもう帰れない。

 3年間以上もあの世界で戦って、そんな気がしていた。2人の未来には自分がいないんだと。

 だけどあの世界で経験を積み、そんな世界にはさせないと思った。自分も生き残り、3人で讃州中学勇者部に入るんだと。

 それゆえ自分の身体がバーテックスの肉体だと告げられた時は、ひどく取り乱してしまったのだが。

 ひょっとしたら受け入れられず、自我が崩壊していた未来もあったかもしれない。

 だが、こう考えた。アタシはあたしが3人で生きていける未来を作るためこの身体になったのではないかと。

 そして、見事にその通りになった。

 宿主が壊され、怒りに満ちた巨大な蛇が自分に向けて巨大な火球を放つのが見える。

 もう、終わっていいか。

 一瞬頭をよぎった考え。

 それを否定するように巨大な水球が火球を打ち消し、大量の蒸気が目の前に広がる。

『まったく、無茶するよキミは』

 自分の内にいる精霊が、喜ぶ感覚がした。

 蒸気の霧の中から現れた人型のバーテックスが銀の腕をつかみ、そのまま巨大な蛇から離れるため抱えて移動する。

『でもありがとう。これで、今度こそ未来は救われた』

 いわゆるお姫様抱っこという体勢に銀は恥ずかしくなり、人型のバーテックスの胸をパンチした。

 

 

 

 オフィウクスの両手に捕まっていた俺は何とか脱出しようともがいていた。

 だけどびくともしない。何なんだこいつの握力⁉

 身体もタタリで弱体化してるし、こうなったら無事なところだけでも分離して、1度他の7体のアニマートと合流して仕切り直すしか。

 そう考えていると、眼下の巨大星屑が次々とやられていた。あれは銀ちゃんが切り札を使ったな。

 戦わせないって決めてたのになんてことだ。自分が情けなくなる。

 だが同時にその強さが頼もしくもあった。あれならサーバー星屑やゆゆゆいバーテックス軍団と協力して俺が動けるようになるまでもってくれそうだ。

 俺は一刻も早くグラーヴェ・ティランノから身体を分離させた個体を作り、そこに意識を移そうとする。

 グラーヴェ・ティランノは体力が減ると防御バフが発動しクッソ固くなる。それこそ勇者の高レベル必殺技じゃないとトドメがさせないくらい。

 しかもこの身体にはさっきとりこんだアリエスの超再生能力もある。そう簡単には俺を倒せないはずだ。

 時間を稼ぐという点では、これほど適した肉体はないだろう。

 そう思っていると、オフィウクスが右手を半壊したバーテックスの群れにかざした。

 しかし再生するかと思われていた十二星座の巨大バーテックスは倒れ伏したままだ。

 なぜ? と考え銀ちゃんの武器である斧に神樹の体液をコーティングしていたことを思い出す。

 そうか、バーテックスにとって神樹の体液は猛毒。あれで倒した敵は復活できないのか!

 幸いにも俺の肉体にはまだ神樹の体液が残っている。なんとか左手から逃れて牙を突き立てればこの巨体相手でも勝機があるかも。

 降って湧いてきた希望に、俺は分離作業を続けながら腕の中でもがく。

 とその時、目の前の空間にひびが入り、割れた場所から新しい星座級の軍団が現れた。

 再生だけじゃなくて召喚までできるなんて、どういうチートだお前⁉

 あっ、銀ちゃんが満開してる。やばい、早くしないと。

 パワーアップして崩壊防止用の肉塊を与えたとはいえ、あの身体で満開は危険だ。

 俺が何とかしようとしている間にも銀ちゃんは次々と十二星座のバーテックスの大群を倒し、こちらに向かってくる。

 もしかして、オフィウクスを倒すつもりか?

 いくらなんでもそれは無謀だ。俺は止めようとコシンプを呼び出そうとして、気づいた。

 しまったー! 精霊全部向こうに置いてきちゃった!?

 同じ失敗をまたするとか、ウッソだろお前。

 やばい、やばい、やばい。

 もし銀ちゃんが2回目の満開をして、それでも倒せず3回目の満開をしたら確実に身体が耐えきれなくて崩壊する。

 そうなったら、意味がない。銀ちゃんも生きて帰らないと、意味がないんだ。

 俺は何とか止めようと分離作業を急ぐ。

 その時だった。銀ちゃんがオフィウクスの目の前に来たのと、俺の身体に限界が来たのは。

 千切れ…ちゃったぁ…。

 オフィウクスの握力に耐えきれず、上半身と下半身がバイバイする。

 だがむしろ好都合だ。俺は千切れたほうの半身に意識を移し、アリエスの超再生能力で急ごしらえの頭部を作る。

 そしてオフィウクスの下半身に巻き付くと、牙を突き立て身体のうちにある神樹の体液を流し込んだ。

 これやると、身体がしびれるんだよなぁ。下手すると身体がグズグズに溶けちゃうし。

 すると案の定体液を注ぐごとにムカデのような身体に力が入らなくなる。これは神樹の力に耐えられず溶けてしまう前兆だ。

 もともと弱っていたのもあって、身体が神樹の力に耐えきれなくなったらしい。俺はそのまま体液を流し込み続けるように念じると、右手に捕まっている身体に意識を戻し分離作業を続ける。

 ようやくタタリで弱体化していない部分を集め、グラーヴェ・ティランノの牙を媒体に分離することができた。

 あとは銀ちゃんを止めて…ってもうほとんど倒してるー⁉

 すごいな銀ちゃんは、さすがプロトタイプの勇者システムでも星座級3体を追い返しただけのことはあるわ。

 あ、オフィウクスの体躯が崩れていく。俺何もしてないのに終わっちゃったよ。

 同時に銀ちゃんの満開も解け、そのまま落下していく。その先には燃えるでかい蛇が放ったでかい火球が⁉

 危ねえ! 俺は急いで水球を出しそれを防ぐと銀ちゃんを抱きかかえる。

 まったく、無茶する子だよ。

 でも、これで未来は救われたも同然だ。あとはあの蛇を倒せばすべてが終わる。

 倒すヒントも銀ちゃんに教えてもらったしな。あとは7体のアニマートと合流してぐはぁ?!

 なぜか銀ちゃんに胸を殴られたんだけど? 俺が大口叩いたくせに役立たずだから怒ってる?

 うう、それに関しては返す言葉もありません。

 しょんぼりしていると「馬鹿…」って言われてそっぽを向かれました。

 目を合わせてくれないくらい呆れられてる?!

 うう、俺の評価ダダ下がりだよ。いいけどね。俺はキミたちがキャッキャッウフフできる平和な世界を守れればそれでいいんだし。

 さて、残る脅威を倒そうと燃え盛る体躯の巨大蛇を捜す。煙のはれた戦場を見ると…あれ? いない?

 周囲を見渡すとなんと神樹の結界のほうへものすごい速さで体躯をくねらせながら進軍している。

 あいつ、銀ちゃんと戦うのをやめて須美ちゃんとそのっちのほうへ向かいやがった!

 くそ、予想外だ。俺はオフィウクスを倒す銀ちゃんを支援していたゆゆゆいバーテックスの群れから門松…もといフェルマータプリモに頼んで先回りしてもらおうとするが、ダメだ。あいつのほうが早い。

 間に合わない。そうだ、銀ちゃん! 俺を投げて!

 俺は星屑の体躯を腕から出し、銀ちゃんに渡す。突然のことに驚き困惑する銀ちゃんだが、今はほかに手段はない。

 あ、ちゃんと切り札状態でね。そうじゃないと届かないから。

 間違っても満開はしないでね、絶対だよ!

 俺は銀ちゃんの持つ星屑に意識を移し、全力投球で燃え盛る巨大な蛇に突っ込んでいく。

 ゆっ、おそらとんでるみたい。

 そんなアンコがつまったまんじゅう生物みたいなことを言いながら、星屑の体躯は蛇の頭上付近に着地した。

 ナイスコントロール。 

 これから俺がしようとしているのは、アニメ、デジモンの劇場版「ぼくらのウォーゲーム」でディアボロモンに使った戦法だ。

 世界中の少年少女たちが電脳世界で戦うオメガモンに応援メッセージを送る。しかしそれが原因でデータの多さに処理落ちし、逆にオメガモンの動きが遅くなって窮地(きゅうち)(おちい)ってしまう。

 だがこれを仲間の1人である光士郎が利用し、敵のディアボロモンに送信先を変更することで敵の動きを封じ倒したというものだ。

 サーバー星屑に意識を移したとき、膨大な情報量に酔いかけたことを思い出してひらめいた。

 俺は巨大な蛇の頭に自身をピンのような形状に変え、深々と刺さる。

 喰らえ、膨大な情報の本流を!

 俺が知っているサブカルの! 百合の尊さを教えてくれた作品を! 

 ゆるゆり、マリア様がみてる、ご注文はうさぎですか? きんいろモザイク、まちカドまぞく、ゆゆ式、私に天使が舞い降りた、うちのメイドがウザすぎる!、ガールズアンドパンツァー、神無月の巫女、やがて君になる、三ツ星カラーズ、シトラス、悪魔のリドル、のんのんびより、ガヴリールドロップアウト、えんどろ~!、ひとりぼっちの〇〇生活、普通の女子高生が【ろこどる】やってみた。、ゆるキャン△、ひなこのーと、放課後ていぼう日誌、スロウスタート、NEWGAME!、恋する小惑星アステロイド、三者三葉、ひだまりスケッチ、キルミーベイベー、うらら迷路帖、となりの吸血鬼さん、Aチャンネル、ハナヤマタ、わかばガール、ステラまほう、ささめきこと、幸腹グラフィティ、アニマエール!、こみっくがーるず、あんハピ♪、GA芸術科アートデザインクラス、はるかなレシーブ、桜Trick、けいおん!、ライフル・イズ・ビューティフル、ミルキーホームズ、ウマ娘、魔法少女まどかマギカ、ストライクウィッチーズ、紅殻のパンドラ、ユリ熊嵐、犬神さんと猫山さん、リリカルなのは、ガルパ、カードキャプターさくら、青い花、さばげぶっ、あずまんが大王、プリティーシリーズ、プリキュアシリーズ。

 俺の知識の中から選りすぐりの百合作品から百合エピソードを圧縮して天の神に送り込む。

 くっくっく、俺の厳選百合エピソードはアニメだけで108式以上あるぞ。

 もちろん18禁な屋上の百合霊さんとその花びらに口づけをシリーズという神作も外せないな!

 あとは漫画や書籍などからも珠玉の百合エピソードをありったけ送り込む。

 さあ、受け取れ! 尊さの暴流を。 

 百合嗜好爆弾(強引な性癖の押し付け)を受けた巨大な蛇は、膨大な情報を受けて目に見えて動きが遅くなり、ついには完全に停止した。

 よし、効いてる効いてる。

 俺は銀ちゃんと一緒にいる人型に意識を移し、アニマートがいる神樹の結界付近に急ぐ。

 蛇に刺さったピンにはそのまま情報を送り続けるよう指示する。ついでに上半身が残ったグラーヴェ・ティランノに体躯に巻き付いて物理的にも動きを封じてもらう。

「銀!」

「ミノさん!」

 神樹の結界にたどり着くと、須美ちゃんとそのっちが銀ちゃんを抱き着くように迎えた。

 思わず「あら^~」と打ち込みたい光景だが、今はそれどころではない。

 俺はすでに集まっていた7体のアニマートと急いで融合し、姿を変えていく。 

 蠍座のバーテックスを見たとき、なんか違うと思ってたんだよなぁ。

 モチーフが注射器ってことだからそっちに寄せたんだろうけど、やっぱり、サソリといえばこっちだろ。

 金属質で機械的な青いフォルムにハサミムシのような長い牙。どんな巨大な敵でも力任せにつぶせる両手のハサミと関節に収納されたブレード。4対8本の脚。後部にも1対の小さなハサミ。

 そしてしっぽに当たる部分には本来荷電粒子砲を放つための大型口径の衝撃砲が装備されている。

 デススティンガー。

 アニメ、ゾイドに出てきたデスザウラーに続く荷電粒子砲を使えるウミサソリ型ゾイドだ。

 固い装甲に強力なバリア。マグマの中を潜行しても平気な耐熱性と頑丈さ。荷電粒子砲で山や都市を一瞬で消滅させて地形を変えてしまうという公式チートラスボスだ。

 まぁ、荷電粒子砲自体がチートなんだけど、そこにこの防御力が加わると、ねぇ。

 ちなみに本物と違って荷電粒子砲は使えない。この世界がいくらフィクションとはいえ、惑星Ziと違いここは地球の四国。そこら中に荷電粒子の元になるエネルギーが満ちているわけじゃない。

 だから、俺は代わりの物でそれを再現した。

 アクエリアスの水から大量の水素と酸素を抽出しリブラの風で真空状態を作る。アリエスの分裂と再生能力、振動攻撃で物質の大量分裂と超振動を起こす。さらにレオの熱エネルギーを加え、ヴァルゴの爆弾を作る能力で圧縮し、閉じ込める。

 プラズマ砲。空想科学でおなじみの超兵器にさらにひと工夫。

 俺は8本の脚を樹海に突き刺す。踏ん張るためもあるが、そこから神樹の体液を吸い取るためだ。

 銀ちゃんの攻撃でわかったが、あのバーテックスは神樹の力で傷つけられると再生できないらしい。

 少し、いやかなり(しゃく)だがお前の力を借りるぞクソウッド。

 お前が今まで飲み込んだ少女たちの命、キャッキャウフフできたはずの未来を。

 今こそ人類に還元しやがれ!

 神樹の体液を足から吸い上げるたび体躯がピリピリする。どんどん感覚がなくなっていく。

 焦るな、まだだ。あいつを一撃で葬るためにはまだ足りない。

 ついにしっぽ以外の感覚がなくなってきた。俺はしっぽにある砲台を囲むように生えている4つのブレードを開き、プラズマを展開してそこに神樹の力を注入する。

 プラズマ+神樹エネルギー砲、発射!!

 砲台から放たれた、神樹の力をふんだんに含んだプラズマ砲が巨大な蛇を焼き尽くす。

 ()しくもそれはへびつかい座のモデルとなった死者をもよみがえらせることができた医術の神、アスクレピオスが命を落とす原因となった神の雷そのものだった。

 

 

 

 天の神は困惑していた。

 自分に反抗する神である神樹。その力を借り戦う勇者。

 そこに差し向けた御霊持ちの十二星座級バーテックスがことごとく倒され、ついに自分が動くことになった。

 とはいえたかだか人間相手に本体が動くまでもない。端末を使い、倍の兵力を送れば事足りると思っていたのである。

 だが実際端末から入ってきた情報は、御霊持ちの十二星座を倒したのはシステムの末端中の末端である星屑だという事実だった。

 ありえない。何かの間違いではないのか?

 そう思い何度も確認したが、そいつは端末が連れてきた星座級の大群をいとも簡単に倒し、見たことのない形に変化して端末にまで牙を立てた。

 バグか。

 長い間星屑やバーテックスの管理をしてきた天の神である。

 自らの意図した方法とは違う行動をとるいわゆるバグと呼ばれる存在は何度か目にしてきた。

 だが、そいつは異常中の異常だった。

 なんと敵である勇者と協力し、自分たちに弓を引いたのだ。

 これは本来ありえないことだった。

 バーテックスとは神樹やそれが守護する四国の地に生きる人間を滅ぼすためのシステムである。

 そのシステムが反旗を翻すなど、あってはならないことだ。

 なので、天の神は修正することにした。

 本来ならあと100年は後に配備する予定だったへびつかい座のバーテックスを端末を変化させることで前倒しで配備し、バグを消去しようと。

 だがそいつはしつこかった。バーテックスなら本来消滅するようなタタリや物理的ダメージを与えてもしぶとく生き続け、肉体を2つに割いてもまだ生きていた。

 さらに2つに分かれた体躯を操りどうやってかはわからないがへびつかい座に神樹の体液(猛毒)を送り動きを封じ、勇者にとどめを刺させたのだ。

 そしてあろうことか端末を通し、こちらにウイルスを送り込んできた。

 それは女性たちが手をつないだり、食事をしたり、国や人種、種族を超えて友情をはぐくんだりといった価値のない映像ファイルだった。

 だがその容量が半端ではなく、端末の動きは鈍くなる。

 その隙を突かれ、四国に贈った端末は消滅してしまった。

 なんなのだあれは?

 それは自分に弓を引いたシステムの末端に対する疑問…ではなかった。

 そのシステムから送られた大量の映像ファイルについてだ。

 少女たちが日々を平和に暮らし、時に笑い時に泣く、ごくごく普通の映像のはずだ。

 中には女同士での求愛行為や繁殖のまねごとをしているものもあった。同性同士での生殖行為は無意味であり、何の価値もない映像のはずだ。

 だが、なんだ。

 この映像を見ていて、胸の奥から湧き出してくるこの衝動は?

 彼女たちを見守っていたいと思う、保護したいという欲求は?

 生まれて初めて生じた自分の感情に、天の神は懊悩(おうのう)する。

 それは、百合への愛の芽生え。

 世間一般的に【萌え】と呼ばれる感情。

 だが人の感情を知らない天の神にはわからない。指摘してくれる存在もいない。

 結局この悩みが原因で天の神による直接の四国侵略は2000年ほど遅れることになる。

 たどり着いた先で百合神と呼ばれる存在と出会い、2つの神が四国の百合を見守る会を作り恒久的な平和が訪れることになるのだが。

 それはまた別のお話。




Q カードキャプターさくらはヘテロ作品では?
A さくらちゃんに対する知世ちゃんの無償の愛は全百合男子が見習うべき尊いもの。よって百合。

(+皿+)「百合、いいよね」
天の神(本体)「いい…トウトイ」
神樹「かわいい女の子、いいよね!」
(+皿+)「帰れよロリコンクソウッド。お前女の子を食うだけじゃ飽き足らず友奈ちゃんと神婚しようとしたガチ犯罪者じゃねーか」
天の神(本体)「保護対象に手を出すとか…滅ぼすか」
神樹「ち、違う! あれは大赦が勝手に⁉」
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