詰みゲーみたいな島(四国)に人類を滅ぼす敵として転生した百合厨はどうすりゃいいんですか? 作:百男合
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egao no kimi he
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gin he ai o kome
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ギンヘアイヲコメ
すき(直球)
前回の見どころさん。
【悲報】主人公(星屑)イキる。
やはり大赦はクソ。
ダブル銀ちゃんのキャットファイト。
以上。
神世紀299年4月26日午後5時。讃州中学部室棟の一室。
そこに、13人の少女が集まっていた。
部長の犬吠埼風、その妹樹、結城友奈、東郷美森、三好夏凛、楠芽吹、加賀城雀、弥勒夕海子、山伏しずく、国土亜耶、乃木園子、三ノ輪銀、そしてもう1人。
大半は1年生で、2年生は部長の風だけだ。妹の樹はまだ小学6年生で、同じ歳の国土亜耶にいたっては学校にすら行っていない。
だが、国土亜耶がここにいるのは風の両親も働いているこの世界で最大権力を持つ大赦からの命令なのできかないわけにはいかなかった。
話を聞くと亜耶はずっと大赦で巫女として生活してきたらしい。そこで社会性を身に着けさせるため、風がやっている部活のボランティア活動に参加させたいのだという。
というのは建前で、実際は勇者として才能のある人間を集めたこの【勇者部】に巫女の資質を持つ彼女を預けて連携を高めるというのが大赦の狙いなのだとか。
事情を知っている風としては断るわけにもいかず、同じ歳の妹の樹を学校の部活に参加させることによって他の部員の不信感を緩和させていた。
「はい、じゃあ今日の活動を発表するわよ」
13人ともなるとさすがに大所帯だ。手を叩き雑談していた部員たちの注目を集めると、風は今日の活動内容を発表していく。
「東郷は部のホームページの更新」
「了解であります」
指示を受け、東郷美森は部室内にあるノートパソコンへ向かう。
半年前の大橋の戦いの後、須美は鷲尾家を出て生家である東郷家へと戻り、名前も東郷美森と改めていた。
といっても鷲尾家の両親とは不仲というわけではなくちょくちょく会っているし、小学校時代からの友人である園子と銀からは「わっしー」「須美」と当時の名前で呼ばれている。
今は勇者部でとある理由から上達したサイバー能力を生かして勇者部のサイトを作って依頼を募集したり受理したりなどの管理をしていた。
「芽吹と夏凛は剣道部の助っ人」
「よっしゃ、行くわよ芽吹」
「命令しないで。今日こそあなたに勝つわ、夏凛」
「2人とも、くーれぐーれも、手加減するのよ。この前みたいに張り切りすぎて剣道部員が練習試合前に全員筋肉痛でダウンみたいなことにならないように!」
つい先日どちらの方が多く剣道部員と稽古ができるかと勝手に勝負を始めた結果、休みなしで連戦し逆に剣道部員のほうがつぶれた事件を持ち出し2人に注意する。
三好夏凛と楠芽吹は大赦から命じられて讃州中学に入学し、この勇者部に入部した。
当初は勇者として集められた人間たちの巣窟である勇者部に籍だけおいて放課後は大赦の訓練施設に通う幽霊部員になるつもりだったが風の押しの強さに折れ、今では普通に部員として助っ人活動している。
最近ではいままでの勇者としての使命にがんじがらめだった頃の窮屈な生活よりものびのびやれている毎日に、こういうのも悪くないなと2人は思い始めていた。
「友奈とアタシ、雀は迷子の猫探し」
「わかりました、風先輩!」
「うぇー、猫ってひっかいてくるじゃん! 結城さん、守って~」
「こらこら。友奈にあんまり近づくと東郷が嫉妬しちゃうからくっつくのはほどほどにしなさいよ」
「はは、風さん脅かしすぎですって。そんなわけ…ヒィッ⁉」
雀は見てしまった。パソコンに向かっていたはずの東郷が般若のような顔をしてこちらを見ているのを。
「ん? どうしたの雀ちゃん」
手元にはなぜかデジタルカメラを持っていたが、友奈が雀の視線を追い東郷を見ると光の速さでどこかにしまっていた。
あれで普段盗撮とかしてるんだ。怖い!
東郷がたまたま休みの日、雀が部室のパソコンをいじっていたら『今日の友奈ちゃん』というフォルダを発見した。何の気なしに開いてみるとそこにはまた日付ごとのフォルダがあり、その中身は1枚も目線があってない友奈の大量の隠し撮り写真だったのだ。
この事実を知っているのは、勇者部の中でまだ彼女1人だけだった。(後に部員全員が知る公然の秘密となるのだが、それはまた別の話)
「東郷さんがどうかした?」
「なんでもない! なんでもないから!」
雀の危機管理能力が、これについて触れるべきではないと告げていた。
「ふ、風部長。いざという時は私の盾になってくださいね」
「え、普通に嫌だけど」
「なんでー⁉」
結城友奈はこの部の中で唯一大赦と何の関わりもない一般人である。
だが大赦からはなんとしてでも口説き落とし、勇者部に迎えよと指令を受けていた。
難航するかと思われたが同じクラスの東郷、夏凛、芽吹と一緒に勇者部に誘うとあっさり入部してくれて拍子抜けしてしまう。
なんでも風がつけた勇者部という名前と活動理念にすごく共感してくれたらしい。
『みんなのためになることを勇んでやる部だから勇者部。素敵ですね』
それはもう聞いてるこっちのほうが恥ずかしくなるくらいのべた褒めだった。風は当時のことを思い出し顔が熱くなる。
ちなみに加賀城雀は楠芽吹が入部するともれなくついてきた。
「メブが近くにいなかったら、だれが私を守ってくれるの⁉」とかわけのわからないことを言っていたが、入部してからは守ってくれる対象を他の部員たちへと移し何かあるごとに「〇〇さん、守って!」というのが口癖になっている
人に依存する厄介な子と思っていたら別にそんなことはなく、むしろ誰よりも危機管理意識が高くて部活動では率先して他の部員に降りかかる危険から守ってくれている。
本人曰く、「だって私を守ってくれる人がいなくなったら誰が私を守ってくれるんですか!」らしい。
うん。よくわからん。だけど頼りになる存在だ。
「乃木と弥勒は美術部のモデル」
「あー、モデルってお昼寝してるだけでいいから楽~」
「ちょっと乃木さん。あなたも名家の出なのですからもう少し品格というものを」
すでにお昼寝モードの園子を、小言を言いながら夕海子が連れていく。名家アピールをする以外は普通に面倒見もいいし、案外いいコンビかもしれない。
乃木園子は半年前の大橋の戦いを本編での20回以上の満開をすることなく生き残り、五体満足で讃州中学に入学していた。
その後人型のバーテックスの監視として度々樹海や壁の外へ出向いているが、命をかけるような戦闘になったことは1度もない。
それどころかお弁当を持って行って樹海でピクニックをしたり、人型バーテックスの元にいる精霊たちと遊んでいたのだが、さすがに同行していた東郷に怒られてしまった。
今では勇者になった当初の夢であるお昼寝と小説を書くだけの生活を満喫している。
勇者部といういろんなタイプの少女たちがいる環境も彼女の創作意欲を刺激するらしく、他のメンバーを観察するため自分が任された活動を抜け出すのが部長の風にとって頭が痛い案件ではあるのだが。
弥勒夕海子は夏凛や芽吹と同じく大赦から派遣された勇者候補の1人だ。
没落した弥勒家再興を目指しており、そのために勇者として鍛錬していたのだという。
だが讃州中学勇者部に入部してからはそのお嬢様っぽい言動の化けの皮がすぐ剥がされ、庶民的な感覚とユニークな言動から夏凛に続く園子の
もっともクセの強い人間の集まりである勇者部の中では常識人寄りの感覚を持っている貴重な存在なので、暴走する他の部員のブレーキ役となったりぐいぐい引っ張ていくタイプの面倒見の良さから園子や人との会話が苦手なしずくや樹と一緒に活動することが多い。
「で、ダブル銀としずくは神社のゴミ拾いね」
「ちょっと、そのダブル銀っていうのはやめてくださいよ」
「そうですよ風さん。あっちは三ノ輪でこっちは乃木なんですから」
一緒くたにされたことを三ノ輪銀と
顔は2人とも一緒で、一見見分けがつかないほどそっくりだ。三ノ輪の方が黒い髪に左側に桜の花のヘアピン。乃木の方が黒い髪に白いメッシュが入っていて右側に牡丹の髪飾りをしているのが見分けるポイントである。
2人は実は双子で、乃木のほうが小さいころ乃木の家に養子に出されたらしいと風は大赦から説明を受けていた。
血を分けた双子の姉妹なのだから鏡写しのように顔も性格も似ているのは当然だろう。
ただ乃木のほうが髪をいじったりと
「銀たちとお掃除。頑張る」
山伏しずくは銀たちと同じ神樹館小学校からの付き合いだ。
両親を亡くしクラスで孤立していたころ乃木のほうの銀と友達になって、以来園子や東郷、三ノ輪銀とも友達になり、今では部員全員とも親しくなっている。
口下手で、ともすればイジメの対象になりやすそうな雰囲気をまとっているが銀と一緒にいることで大分改善された。
今ではそのはかなげな印象と座敷童的なかわいらしさから隠れファンも多い。
意外にも力持ちで銀たちと一緒によく力仕事を任されている。
「樹と亜耶ちゃんはどうする?」
小学6年生の樹がここにいるのは、風の両親が大赦で遅くまで働いているからだ。
正史では大橋の戦いで死亡するはずの両親も、この世界では生きている。
よかった。姉が帰ってくるまで家族のいない家で1人過ごす樹ちゃんはいなかったんだね。
「わたしは今日もお姉ちゃんたちと一緒で」
「わたしは今日は銀さんたちとしずくさんと一緒にお掃除に行きたいです!」
亜耶の言葉に風は若干困った表情を浮かべる。
「あー、神社のゴミ拾いは結構力仕事だから亜耶ちゃんにはちょっと厳しいかも」
「大丈夫です。わたし、お掃除好きですから!」
「でもね」
「お掃除、大好きですから!」
いつにも増して押しが強い。よく見れば目がキラキラしている。
「そ、そう。じゃあ…任せたわよ3人とも」
「はい、任されました。風さん」
「亜耶ちゃんと一緒に活動するのは初めてだな」
「よろしく、国土」
「はい、よろしくお願いしますみなさん」
「くれぐれも、くれぐれも亜耶ちゃんに怪我はさせないでね!」
大赦から預かった子に怪我なんてもってのほかだ。
風はハラハラしながら4人を見送り、自分も迷子の猫探しに向かった。
短い付き合いだが3人を頼るくらいには信頼していたので心配はしていない。
心配があるとすれば…。
(大赦には、乃木銀には注意しろって言われているのよね)
黒髪メッシュのほうの後輩のことを考える。
初めて会った時も昔から知っているような感じで話しかけてきて、逆に勧誘しようとしていた風が面喰った。
勇者部入部もすんなり決まったし、風がしようとしているボランティア活動にも積極的に手伝ってくれている。
まるで以前から似たような活動を長い間してきたように手際もよく、部長である風も助かっていた。
とても大赦が気にするような危険人物とは思えない。
むしろ気心が知れているかわいい後輩の1人として他の部員と一緒に放課後うどん屋のかめ屋に連れて行ったりとかわいがっている。
自分より年下のはずなのに時折年上のように感じる言動や懐の深さを見せる時があるが気になる点と言えばそのぐらいだろう。
もしも彼女が自分たちに害をなす存在だとしたら…。
考え、すぐに否定する。そんなことは天地がひっくり返るぐらいあり得ない。
あんなかわいい後輩に気をつけろなんて、大赦も変な指令を出すわよねぇ。
「風せんぱーい、こっちです」
「樹ちゃん、樹ちゃんは私の盾になってくれるよね?」
「えっと、あの…。おねえちゃーん」
そんなことを考えていると、昇降口で樹にすがりつき懇願している雀の姿が目に入った。
これさえなければ、いい子なんだけどねぇ。
「こらー! うちのかわいい妹になにしとるんじゃー!」
「だって怖いものは怖いんですようわーん!」
風の怒声と雀の泣き声がこだまする。
今日も讃州中学勇者部は、いつも通りだった。
三ノ輪銀と乃木銀は双子の姉妹である。
三ノ輪家に双子として生まれたが幼いころに乃木家に片方引き取られた。
というのが表向きの銀たちの生い立ちだ。
実際はもちろん違う。髪がメッシュなのも白い髪を黒く染めているからだし、牡丹の髪飾りも大赦に銀がどこにいるのか常にわかるための探知機だ。
あの戦いの後、いろいろあった。
園子が持ってきてくれた初代勇者の遺物により、人型のバーテックスが試行錯誤してくれたおかげでバーテックスの銀は四国に入り、家族に会うことができたのだ。
その時は大変喜んだのだが、2人いる銀と自分が人間ではないという事実に段々両親との間に溝ができてしまった。
だったらいっそのことうちの子になりなよという園子のすすめもあって乃木の養子となり、現在は乃木銀として人間の世界で生活している。
1度は壁の外へ帰ろうと思っていた銀にとって、園子の提案はとてもありがたかった。
銀の今の身分は、あの人型バーテックスに仕える巫女だ、
人間側――大赦に人型バーテックスの言葉を伝えたり逆に人型バーテックスに大赦側の意見を伝えるという仕事をしている。
実際は銀の持っているスマホを通して直接会話でやり取りしているので、銀はやることがないのだが。
なので大赦は丁重に扱ってくれている。戸籍も用意してくれたし、希望すれば住むところも用意してくれるという。
その話は乃木家に養子に入った時断ったが。
ただ、重要な人物だからと大赦から監視がつくことになった。それに園子や須美(今は鷲尾家の養子をやめて東郷美森になった)の2人が反発したが、銀がそれを止めた。
自分がバーテックスであるのは承知している。周囲がそれを怖がるのは当然だと。
なので探知機をつけられるくらいは我慢することにした。それを不便と感じたことはない。
大好きな弟たちにもたまに会えるし、距離が開いた分両親も今では普通に接してくれている。
銀としては万々歳なのだがもう1人の銀は納得いかないようで未だに両親に一緒に生活できるよう説得しているようだと弟の鉄男に聞いた。
馬鹿だなぁほんと。いくら娘と似ているとはいえ、勇者でもないただの人間がバーテックスなんかと一緒に住むのに不安がらないわけないだろ。
そしてどうしようもなくおせっかいだ。まぁ、それがアタシらしいんだけど。
「ん? どうした」
自分を見つめてくるバーテックスの銀の視線に気づいたのか、三ノ輪銀が竹ぼうきで地面を掃く手を止め訊いてくる。
「いや、おせっかいなのはあの時と変わらないなと思っただけだ」
あの日、四国へ帰ることをあきらめていた自分に立ち向かってきたのを思い出す。
あとで人型のバーテックスが帰るための方法を隠していたと知り怒りの鉄拳をぶつけたが、銀とのキャットファイトで本音をぶちまけていなかったらそれを聞いても帰っていたかどうか今となっては怪しい。
こいつのおせっかいがあったおかげで銀は今、人間として讃州中学で勇者部としてみんなと活動できているのだ。
そう考えると、感謝してもしきれない。
「なんだそりゃ。それよりこっちはあらかた終わったから亜耶ちゃんとしずくのほう見に行こうぜ」
「ああ、そうだな」
悔しいから、言ってやらないけど。
銀たち2人が行くと、神社の境内周りはすごくきれいになっていた。
銀たちは面積は広いけどゴミの量が少ない外周を担当していたので早く終わらせて手伝いに来ようと思っていたのだが、その必要はないようだ。
「すっごいなこれ。全部しずくがやったのか?」
「いや、これは」
あの世界でもそうであったように、彼女がやったのだろう。事実、しずくと一緒に奥からすっごいキラキラした顔で亜耶が出てくる。
「あ、銀さんたち。もうお外のお掃除は終わったんですか?」
「銀、国土はすごいぞ。私がゴミを片付けている間に、箒でごみを集めて掃除してしまったんだ。すごく丁寧なのに早いんだ」
普段は顔に表情を表さないしずくが、腕をパタパタさせながら身体全体を使って表現している。どうやらすごくびっくりしたらしい。
「わたし、お掃除が趣味で。大赦の皆さんもお掃除すると喜んでくれますし」
褒められて嬉しいのか、顔を赤くしてはにかんだ亜耶が言う。
「かわいい」
「かわいい」
「国土、かわいくていい子」
「ひゃ、囲んで頭なでないでくださいー」
気が付けば3人、吸い寄せられるように亜耶の頭をなでていた。
たまに芽吹が彼女の頭をなでているのを見たことがあるが、こういう気持ちなのだろうか。
3人は存分に1つ年下の少女をかわいがる。
こうして平和に暮らせてるのも、アイツのおかげなんだよな。
バーテックスの銀は神社から遠く、壁の外へと視線を向ける。
「今度、会いに行く時何か持って行ってやるか」
知らずつぶやいていた言葉に、3人が不思議そうな顔をする。
何でもないと銀は言い、遠くにいる変な仮面をかぶった恩人を想っていた。
はぁー尊いわぁ。亜耶ちゃんハーレム尊い。
俺はバーテックス銀ちゃん付近にいる人間には不可視の精霊の視界から送られてくる映像を見ながら、ため息をついた。
大赦の連中に「お前らが集めてる勇者と防人が束になっても俺には勝てないけどね。バーカバーカ」と煽った甲斐があったというものだ。
本編ではゴールドタワーに配備されるはずだった防人組も讃州中学勇者部に誘致することができた。
おかげでゆゆゆいでしか見られなかったゆうめぶ、めぶにぼ、そのゆみ、銀しずくとかが見放題だ。
俺は100体を超える数になった精霊の目を通し、その光景を見守っていた。
オフィウクスとの戦いの後、俺はその肉体を食らった。
端末とはいえ天の神を取り込んだことで、いままでと比較にならないほどパワーアップしたのだ。
しかもプラズマ砲を放つため神樹の体液をかなり取り込んだことで本来バーテックスには猛毒である神樹に対する免疫力まで獲得してしまった。
これ、バーテックスとしても無敵なのでは?
その力を使って俺が最初にやったことは、四国内に入れるよう精霊型星屑をアップグレードすることだった。
そしてサーバー星屑を経由して讃州中学と大赦方面に100体以上放ち、彼女たちがイチャイチャしている姿を眺めているのである。
人間だったころ、来世はリリアン女学園のマリア様の像か聖ミカエル学園の校舎になって女の子のイチャラブを見守りたいと思っていた俺には天国のような環境だ。
もちろん大赦への監視も忘れない。推しカプに酷いことしようとする奴らは許せないからな。
ついこの間も国土亜耶に酷いことをしようとした大赦仮面がいたから密告してやったら蒼い顔をしていた。
あとついでにバーテックスのほうの銀ちゃんに対してよくない感情を抱いている連中が立てていた計画を事細かに説明してやったら大赦のお偉いさんたちが平謝りして来るので、謝るなら銀ちゃんにだろと言ったら銀ちゃんの履いている靴までなめようとしたのは驚いたよ。
もちろん、精霊を突っ込ませて阻止したが。
そしたら吹っ飛ばされた大赦仮面に、今度は天の神の御怒りだと大騒ぎになり、最終的には巫女をいけにえにしようとしたりして収拾がつかなくなりそうなので一旦許すことにした。
あいつら、本当に自分が助かるためなら手段を選ばないな。
ほんと、そういうとこだぞ! と叱るとなぜか平伏され拝まれた。
なぜだか。そう、なぜだか知らないが最近大赦で俺を信奉する一派ができているようだ。
俺としては迷惑な話なのだが、過去と未来を見通し、自分たちの脅威であるバーテックスを勇者の代わりに倒してくれている存在は大変に魅力的に見えるらしい。
なにより天の神を打倒した実績もある。実際倒したのは銀ちゃんなんだからそっちを敬えと思うのだが。
そうそう、その銀ちゃんなんだが、定期的にこっちに来てもらっている。
理由は俺の巫女として大赦側の意見を伝える、ということもあるんだけどバーテックスの肉体特有の悩みというか、身体のアップデートをするためだ。
バーテックスの肉体は、基本摩耗しない。俺のように共食いしてでかくなるというのは特異中の特異で、普通はずっと死ぬまで見た目が変わらない。
銀ちゃんは11歳。つまり成長期だ。周囲が身長が伸びたり胸が大きくなったりする中1人だけいつまでも変わらない容姿というのは怪しまれるだろう。
なので周囲に気づかれないようにちょっとずつ身体を成長させている。そのために東郷さんやそのっちのデータも参考にさせてもらっている。
しかし参考にしすぎたのか、ついこの間「アタシに胸の大きさで勝った」と胸を張ってきたときは驚いた。
どうやら人間のほうの銀ちゃんと比べて若干大きくしすぎてしまったらしい。『大変だ。じゃあ削らないと』と言ったらグーで殴られた。なぜ?
人間の世界でちゃんと暮らしていけるのかと心配してずっと見守っていた。家族との間に亀裂が入ってしまったときは、思わず自分をアップデートして四国に入ろうと思ったほどだ。
だが乃木家に養子に入り、家族とも結果的にうまくいったのを見届けて胸をなでおろした。
なんだか棚ぼた的にぎんその同居が始まって見守っているこちらとしてもテンション上がりまくりだ。すごくはかどる。
一時はどうなるかと思っていたが心配していた迫害もなく毎日を楽しく過ごしているようでこっちとしても嬉しい限りだ。
彼女が幸せに暮らしていくことが、俺にできる唯一の罪滅ぼしなのだから。
そんなことを考えているとイネスのしょうゆ豆ジェラートを持ってきた銀ちゃん(俺は味覚がないので白静にあげたらすっごい不満そうな顔をしてた。けど白静が喜ぶ姿にすぐ機嫌を直した)によると大赦が今度神樹様とは別にあなたを信奉する教団を作るのでお言葉が欲しいと言ってきた。
あいつら、懲りないなぁ。そんなことでご機嫌取りできると思っているなんて。
そんなことするくらいなら百合小説の1冊でも寄贈しなさいよ。そっちのほうが効果あるぞ。
しかし大赦との関係を円満にするため、無視するわけにもいかない。
俺は悩んだ末5つの言葉を書き記し、それを守り乃木銀を巫女として奉るなら教団でもなんでも作ってくれと告げた。
1、大人として子供を守ること。子供にすべて押し付け守られるのは恥と知れ。
2、虐げられている子供は保護し、敵意を向けてくる存在から守ること。
3、自分の立身出世や保護のため子供を差し出す、あるいは見捨てる大人は厳しく罰すること。
4、子供をだまし、利用する大人は厳しく罰すること。
5、大人とは強く優しく子供を導く存在である。大人たちの背中を見て子供たちは大人に憧れ、自らも大人になるのだ。
うん、どれも大赦に喧嘩売ってる内容だね。
1、3、4は隠しようもなく大赦が勇者に対して行っていることだし、2は郡千景のことを知っている人間からすればヒヤリとするだろう。
5は俺の個人的な持論だ。大人とはこういう生き物だとアニメのシンフォギアで学んだことをそのまま書いただけだ。
これなら誰も入信しないだろう。教団の神様なんて面倒なものなるつもりはない。
だいたい神さまや教義なんて馬鹿らしい。
俺にとって1番大事なのは、バーテックス銀ちゃんや勇者部のみんなが幸せに暮らせる世界であること。そのための世界づくりなら全力で頑張るんだけどね。
結局のところ俺はただ女の子が幸せそうにイチャイチャきゃっきゃうふふしているのを見守りたいだけなんだ。
さーて、四国付近に発生する星屑の掃討はサーバー星屑に任せて、俺はいつも通り勇者部の女の子を観察するかなー。
わけのわからない神を信奉する教団に入信する者などいない。
そう高を括っていた人型バーテックスだったが、意外にも多くの者がこの教義に感銘を受け入信することになる。
それは大赦のやり方に不満を持っていた者。勇者とはいえ子供を戦わせることに引け目を感じていた大赦でもまだマシな大人たちや勇者の両親たちだった。
その中には須美や園子、銀の担任だった安芸先生の姿もあり、驚くことになる。
後に大赦をも脅かす四国の一大勢力となるその教徒は、教団のモチーフである百合の花の名をとって【百合教】と呼ばれた。
そして崇められる神は勇者をいつくしみ、子供を守護する存在として信仰され、後に百合神様と呼ばれることになる。
トロフィー【百合神様】を獲得しました。
トロフィー
トロフィー【天の神と
トロフィー【最後まで百合厨を貫いたもの】を獲得しました。
実績:<バーテックス銀ちゃん誕生>を獲得しました。
実績:<わすゆ組全員生還>を獲得しました。
実績:<12星座級全員完食>を獲得しました。
実績:<13番目の星座級>を獲得しました。
以上でわすゆルートは終了となります。
最後まで読んでいただきありがとうございました。