詰みゲーみたいな島(四国)に人類を滅ぼす敵として転生した百合厨はどうすりゃいいんですか? 作:百男合
(+皿+)つまり蠍座を倒したのに蟹座と射手座と獅子座が出てきたのは、物語の修正力のせいだったんだよ!
ΩΩΩ「な、なんだってー⁉」
わすゆルート星屑「じゃあ銀ちゃんが傷を治したのに眠ったままだったのも?」(以下わすゆ)
ゆゆゆルート星屑「修正力です」(以下ゆゆゆ)
わすゆ「最終決戦前にレオ倒したのに本来出てこない星座級含めて4体出てきたのも?」
ゆゆゆ「修正力です」
わすゆ「星座級全部倒したのに天の神の端末が新たに星座級100体連れてきたのも?」
ゆゆゆ「修正力…え、何その無理ゲー」
わすゆ「最終的に勝ったからよかったものの。おのれ修正力」
ゆゆゆ「勝ったのかよ!?」
■■のバーテックスが■■さんを連れ去ったって言っても誰も信じてくれなかった。
■■の大人も、■■先生も、わっしーも。
だから、わたしがどうにかするしかないんだ。
わたしだけが、■■さんを助けられるんだ。
~大赦検閲済み~
神歴298年。7月12日。
今までの続いていた快晴が嘘のような曇天で、ぽつぽつと雨が降り始めている。
その日、三ノ輪銀の国葬が行われた。
葬儀には親戚や家族のほかにも、彼女のクラスメイトや親友である須美や園子も出席している。
葬儀は大赦の人間が取り仕切り、銀が四国へ帰ってこなくなってたった2日で用意してしまった。
「ミノさんは生きてる! あの人型のバーテックスが見たことのないバーテックスに乗せてさらっていったの!! わたし、見たんだから」
須美は病室で必死に園子が叫んでいた姿を思い出す。銀が死亡したと告げる大赦の仮面をかぶった大人につかみかかり、叫ぶように言っていた。
気絶から目が覚め、耳と視界から飛び込んできた情報に驚く。銀が死亡したということよりもそれを認めず普段のほんわかした雰囲気が嘘のように鬼気迫る彼女の姿が、痛々しかった。
「そのっち」
「わっしー! わっしーも言ってよ、ミノさんは生きてるって! わたしが四国の外へ行って、必ず連れ戻してくるから」
この時、嘘でもうんと言うべきだったと須美は後に思う。
「そのっち、私はそのっちが言うならそれを信じるわ」
「わっしー!」
「でも、もし銀がそのバーテックスに連れられて四国の外へ行ったとしたら…残念だけど、もう」
顔を伏せた須美を見る瞳孔が、一瞬信じられないものを見たというように小さくなった。
「え…っ」
「四国の外は、人間が住めないウイルスが
「わっしー? なに言って」
そうすれば、あの絶望に染まった顔を見ることはなかったのに。
「そのっち。認めたくないのはわかるけど……銀は、その人の言う通りもうこの世にはいないんだと思う」
からん、と仮面が落ちる音がした。
園子は脱力し、その場に尻もちをつく。須美は痛む身体を動かし、園子の元へ向かい抱きしめた。
「お役目をしていれば、こういう時がいつか来ると思ってた。でも、私たちはうまく行き過ぎてたの」
集中すれば、蚊の鳴くような声で「ちがう、ちがうよわっしー」と喉を振り絞って叫んでいた彼女の言葉を聞き逃さなかったはずだ。
「あなたが信じられない気持ちもわかる。でも今回何もできなくて、すぐ気絶しちゃった私が…悔しくないわけないでしょう」
あの時は自分のふがいなさでいっぱいで、本当に親友を思いやることができなかった。
「でも、
(わっしー)
須美を呼ぶ声は、ついに言葉にならないほど小さくなっていた。
「三ノ輪銀は、神樹様の元へ行ってしまったの」
2年後、この記憶を1度失い、その後取り戻した須美は後悔する。
私が彼女を狂わせてしまったのだと。
葬儀はつつがなく行われた。
参加したクラスメイトや同じ学園の子の中には涙を流すものが多数いて、彼女の優しい人柄がうかがえる。
本当に、いい子だった。だがいい子だからこそ、神樹様の元へ送られてしまったのか。
大赦の職員でもある安芸は、須美と園子を車に乗せて式場から家へ送ることになった。
こういう時こそ大人である自分が彼女たちを支えるべきだとわかっている。
だが、なんと声をかけたものか。
「ねぇ、安芸先生」
迷っていると、後ろの席に乗っていた乃木園子が自分に声をかけてきた。
何ですか? とつい大赦職員のように返事しそうになって思い直す。
「なに、乃木さん」
今彼女たちが求めているのは、大赦職員の安芸ではなく
だったら自分はそれを演じよう。彼女たちがそれで少しでも楽になるのなら。
「先生も、わたしがミノさんが連れ去られたって言ったの嘘だと思ってる?」
だが、そうはできない質問が飛んできた。
先生なら「そんなことはない」と答えただろう。だが、自分は大赦の職員だった。
大赦の決定を覆すような答えを出すわけにはいかない。
悩んだ末、結局一番卑怯な答え、沈黙を選ぶ。
情けない。私は何て情けない大人なんだ。
子供がこんなになっているのに、慰めの言葉すらかけられないなんて。
「そっか。ごめんね、変なことを聞いて」
いつまでも返事がないことに事情を察したのか、園子が謝罪の言葉を告げる。
聡い子だ。乃木という家に名家に生まれ、子供よりも大人に囲まれて過ごしてきた時間のほうが多い。色々と相手を
違う、謝るのは自分のほうだ。
本当の教育者なら立場など捨てて彼女のためになることをすべきなのだ。
そんなことすらできない自分は、きっと大人失格なのだろう。
自己嫌悪に陥り、それでもなにか彼女にかけられる言葉はないのか。
そう思った安芸が口を開こうとした瞬間、2人のスマホのアラームが鳴った。
「樹海化警報、だね」
なにもこんな時に来なくても。
最悪のタイミングで襲来したバーテックスに、思わずそう叫びたい衝動が胸を突いた。
彼女たちは弱っている。身体も、心も。
まだ戦うには時間が必要なのだ。傷が癒える時間が。
だが、バーテックスは待ってくれない。彼女たちが立ち直る時間さえ与えてくれないのだ。
「わっしーは休んでて。傷、まだ治ってないんでしょ?」
「大丈夫。やれるわそのっち」
しかし、彼女たちは強かった。親友を失った痛みを抱えたまま、戦いに向かおうとしている。
こんな子供たちを利用している大赦は、そんな組織にいる自分は何て汚らわしい存在なのだろう。
安芸は今すぐ2人を抱きしめ、逃げようと本気で思った。そんな役目など捨て去り、生きてくれと言うべきだと心の中ではわかっている。
だが、それをすれば四国にいる人間はみんな死んでしまう。
結局、自分は彼女たちの担任ではなく、どこまでいっても大赦の人間なのだ。
「神樹様の勇者に、ご武運を」
神樹様の結界に向かう2人に、結局それだけしか言えなかった。
神樹の結界に
巨大フェルマータをフェルマータ・アルタにランクアップし、6体のアタッカもバッソからアルタへと上位体に変化させた。
前回の失敗を生かし、カデンツァやタチェットなどの移動速度の遅いバーテックスをけん引するためのフェルマータを複数用意し、40体以上に増えた精霊も事前に融合しておく。
今回は結界から出てきたヴァルゴを倒して食べるだけだが、前回のように不測の事態が起こらないとも限らない。用意は万全にしたほうがいいだろう。
そしてその心配はすぐに的中することになる。
結界から出てきたヴァルゴには、あまり目立った傷はなかった。
当然か。銀ちゃんがいなくなったうえに須美ちゃんの負傷は治せなかったんだ。そのっちだけでは荷が重かっただろう。
俺はリブラとアクエリアスの能力を使ってヴァルゴの周囲に真空の空間と水の防御壁を作り出す。
もしヴァルゴが抵抗して爆弾をばらまいても爆発させず、爆発したとしても被害がこちらに向かわないように水の防壁を作り出したのだ。
それからサジタリウスの能力を使ってヴァルゴが知覚できない距離から強力な一撃を放つ。光の矢は確実にヴァルゴの脳天を打ち抜き、赤い空間をどこまでも飛んでいく。
仕留めたか。俺はヴァルゴに近づくと顔を巨大化させひとのみにする。
味は、桜餅、いやストロベリーアイス? 道明寺にサクランボの駄菓子とピンク色した食べ物の味がした。
これで残るバーテックスはレオ、ピスケス、アリエスにジェミニとタウラスの5匹か。
ヴァルゴを食べたことで爆弾を作る能力を手に入れた。スコーピオンとカプリコンの能力を組み合わせて毒ガス爆弾とかも作れそうだな。
ピスケス、ジェミニ、タウラスに関しては攻略法を考えている。心配なのはレオとアリエスだけか。
そう思っていた時だった。
乃木園子が神樹の結界を飛び越えて、壁の外にいる俺に襲い掛かってきたのは。
あまりに突然であり得ない出来事に、反応が遅れる。
壁の外は未知のウイルスが蔓延しているとこの時はまだ思っているはずだ。
だから最終決戦で偶然にも壁の外に出るまで、乃木園子が結界から出てくることは、本来ならあり得ない。
だが、そんなありえない存在が自分に向かって武器である槍を突き刺していた。
「返せ」
動揺している俺のことなどお構いなしに、乃木園子の持つ槍が深々と俺の腹に突き刺さる。
「わたしの友達を、ミノさんを! 返せバーテックス!!」
自分に向けられるあまりに強い殺意と敵意に、俺は困惑する。
これは、本当に乃木園子なのか?
ほわほわでお昼寝大好きで、イベント大好きなムードメーカーで。文才があって天才肌で。でも人とはちょっと違うことを気にしていたりする。
そして誰よりも友達を大切にしている少女。
そんな少女が、鬼神のような恐ろしい顔で俺を見ている。
っく⁉
鋭い痛みが走った。どうやら突き刺した槍をひねり抜いたらしい。
彼女が槍を振るったと思ったら、今度は足に激痛が走った。
どれも致命傷ではない。が、勇者の武器のせいか神樹の体液を取り込んだようにピリピリする。
「お前があの乙女座を食べるために結界に近づくのはわかってた」
こちらが困惑していると、そのっちがそんなことを言っていた。
「お前は多分、最初から、それが狙いだったんでしょう? わたしたちとバーテックスを戦わせて、弱った巨大バーテックスを自分が食べる」
ちょっと待って。彼女は何を言っているんだ?
「そうやって、どんどん強くなっていった。蟹座や射手座のバーテックスを丸呑みできるくらい」
理解が追い付かない。いや、本当は理解している。
「あの時射手座や蟹座から出た何かを縛ってた水の紐みたいなもの。あれは水瓶座の能力だよね。多分他の巨大バーテックスの能力も使えるんでしょう?」
彼女は、彼女はひょっとして。
「わたしの傷を癒したのは、まだ利用価値があったから。他の巨大バーテックスを倒してもらうために、必要な手駒だったから」
ちがう。それはちがうよそのっち。俺はただ純粋に君たちを助けようと。
「だったら、なんでミノさんをさらったのか」
武器を構え直したと思ったら、今度は逆側の足を切られていた。
「もう逃がさない。お前を大赦に連れて行って、尋問する。ミノさんの居場所。何を企んでいるのか。他の巨大バーテックスの情報も、全部!」
ああ、足を両方切ったのは逃がさないためか。
ようやく認め、思い知った。彼女は完全に俺を敵として見てる。
それも、謀略をめぐらし自分たちを陥れた最悪の敵と。
どうしてこうなったのか。俺はただ、銀ちゃんを救って彼女たちが待ち受ける最悪の結末を回避するために動いていたのに。
いったいどこで間違ったのか。レオが樹海を焼き払う前にたどり着けていれば、話を聞いてくれるだろうか。
それとも、まだ三ノ輪銀が無事だった時点までさかのぼらないと許されないだろうか。
いずれにしても今の彼女は頭に血が上っている。俺の言うことなど聞いてくれないだろう。
だが、だがそれでも。
俺はコシンプを呼び出し、わずかな可能性に賭ける。
『聞いてくれ、そのっち…いや、乃木園子。俺に敵意はない』
「喋った!? それにわたしの名前」
動揺はしているが一応聞いてくれているみたいだな。問答無用で来られたら、こちらも実力行使しなければいけなかったが。
『銀ちゃんは無事だ。あのままだと死んでいたが、俺がヒーリングウォーターで治療している』
「ヒーリングウォーターって、水? わたしを治したあの?」
よし、食いついた。
『そうだ。人間では治せない傷も、俺なら治せる。時間をもらえればあの酷いやけども治してみせる。絶対だ』
「…信じられると思う? バーテックスの言うことを」
その質問が出たということは、信じたいという気持ちが少しはあるということだ。ここはそこに漬け込む。
『信じてくれ、俺は銀ちゃんを治したい。この残酷な物語の結末を変えたいだけなんだ』
「残酷な物語の結末? あなたがなにを言っているのかわからないよ」
『これからいう話は、信じてもらえないかもしれないが…』
俺は話した。本来の歴史なら銀ちゃんは3体のバーテックスにやられていたこと。そして俺がそれを防ぐためスコーピオンを倒したこと。
しかしそれによって本来出てこないはずのレオが登場し、結果的に最悪の事態に陥ったことも。
そして、須美ちゃんやそのっちが最終決戦で満開し、須美ちゃんは足の機能と記憶を失いそのっちは20回以上満開して全身不随になることも全部。
「へぇ、そうなんだ。すごいね」
言葉は、どこまでも乾いていた。こちらの言うことなどまるで信じていないのは明白だ。
だが、それでもいい。このことを聞いて満開することをためらってくれれば俺としては御の字だ。
「で、それであなたに何の得があるの? 話を聞いてると、全部わたしたちのためで、あなたには何の得もないと思うんだけど」
? この子は何を言ってるんだ。
子供がひどい目に合うとわかっているのに、放っておく奴がどこの世界にいるというんだ。
俺はそれを言おうとして口を開こうとした瞬間、そのっちの槍が眉間を貫いた。
「仮面をかぶったままの相手のことも、信用しない」
仮面が割れ、星屑丸出しの顔があらわになる。その顔を見てそのっちは息をのみ、
「あなた、ひょっとしてわっしーの前に現れた
顔を攻撃されたことで相手を敵だと認識したのか、複数の精霊が俺の周りに現れる。
まずい、お前ら戻れ!
しかし遅かった。突如現れた精霊にそのっちは槍を振るい、数匹の精霊が消滅する。
その中にはテレパシー能力を持ったコシンプもいた。
「びっくりした。さあ、答えてよ、さっきの質問。貴方は何のために自分の得にもならないことをしてきたの?」
俺は答えられない。なぜなら彼女と会話する手段を失ったから。
コシンプ。そして他の精霊型星屑たち。ごめんよ。
彼女と和解する手段がなくなってしまった。
「答えないってことは、そういうことでいいよね」
そのっちが槍を振るう。俺はあえてよけなかった。
胸を貫かれ、しびれるような痛みが身体全体を覆う。だが、親友を失っていると思う彼女のほうが痛いんだ。
「な、何を⁉」
俺は彼女を抱きしめ、神樹の結界の中へ向かう。中へ入ると須美ちゃんが急に入ってきた俺に向かって矢を向けようとして、腕の中にいるそのっちに気づいた。
「そのっち⁉」
俺は須美ちゃんに向けてそのっちを放り投げる。多少強引だが、戦いを回避するためにはこうするしかない。
それから槍を抜き、樹海の地面に突き立てた。これで敵意がないことをわかってもらえればいいが。
「待て、待ってよ! ミノさんは、ミノさんはどこにいるの⁉」
俺は答えない。答えることができない。
ただ右手を上げ、背中越しに手を振った。
そろそろ限界だ。結界の外に出た瞬間、言いようのない気持ち悪さが身体中に広がる。
これが勇者の武器の効果か。バーテックスには猛毒だな。
フェルマータを呼び出し、アジトであるデブリに運ぶように指示する。
最終決戦までに治るといいな。じゃないと、俺が今までやってきたことが…無駄に……。
そこで俺の意識は途切れた。
園子はわからなかった。
なぜあのバーテックスが急に自分を抱きしめたのか。
なぜ自分の得にもならないことを誰に頼まれたわけでもないのにあの人型バーテックスがやっていたのか。
考え、自嘲する。どうしてあいつが言ったことが真実だと思うのか。
きっと全部嘘に決まっている。ミノさんを治しているといったのもこちらの油断を誘うため。もしくは三ノ輪銀にまだ利用価値があるからだ。
そう考えると、相手の底知れなさが恐ろしくもある。全部計算ずくだとしたら、今度は逆に人型バーテックスを信頼しようとする勇者を演じたほうがいいだろうか。
思考を巡らす園子を現実に引き戻したのは、須美の平手だった。
「っ!?」
「馬鹿、そのっちの馬鹿!」
返す手でもう一度頬を叩かれる。
「結界の外に出るなんて、何考えてるの!? もしウイルスにかかってそのっちまで死んじゃったら、私、私…」
「わっしー」
園子はようやく気付いた。自分の独断専行がもう一人の
置いていかれる方の気持ちは、自分が一番知っているはずなのに。
「ごめん。ごめんねわっしー」
「馬鹿! そのっちの馬鹿ぁ」
わんわん子供のように泣く須美を抱きしめ、園子は思う。
大丈夫だよ、わっしー。わたしはウイルスになんかかからないから。
だって、
あの赤一色の、バーテックスしかいなかった世界を思い出す。
やはり大赦は嘘を教えていた。
四国以外の世界が滅んだのは、ウイルスによるせいではない。おそらくバーテックスが原因だ。
ということは大赦が教えている歴史も全部嘘ということになる。
やっぱり、誰も信じちゃいけないんだ。
目の前にいる、親友以外は。
その親友も3か月後には…うぅ(涙)
主人公(星屑)
1アウト 対話用のコシンプを失った。
2アウト 園子に信頼してもらえなかった。
3アウト 人型の身体が勇者の武器を受けて瀕死
これは…ダメみたいですね