詰みゲーみたいな島(四国)に人類を滅ぼす敵として転生した百合厨はどうすりゃいいんですか?   作:百男合

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 安達としまむら念願のデート回じゃーい!
 しまむらのイケメンムーブと安達の不器用さがかわいくて仕方ない。
 あら^~ホワイトアルバムだけに頭が真っ白になるんじゃ~。
(+皿+)「安達としまむらはいいぞ」

 あらすじ
【悲報】樹ちゃんノンケだった
 美術室のふういつ、勇者部のゆうみも。
 園子さん、レイニー止めで大赦仮面の胃がピンチの3本でお送りしました。


【caution】ヘテロ注意報【caution】
 主人公(星屑)は無性でそれが操る丹羽も無性ですが、作中にヘテロ表現があります。
 勇者部の女の子同士の百合イチャを期待される読者の方、またはヘテロ表現に著しいアレルギー反応のある方は読み飛ばすことを推奨します。
 よろしいですか? よろしいですね?
 では、本編をどうぞ。


風先輩、デートしようぜ(準備編)

 それはゴールデンウィークの連休を数日後に控えたある日のこと。

 その日、4時限目の数学の授業を終えた風はお昼を部室で勇者部のみんなと食べようと弁当を持って席を立とうとしていた。

 風と樹の弁当は、いつも風が早起きして作っている。ちなみに最近隣に引っ越してきた丹羽の分も。

 丹羽を夕食に招いた日、よくよく考えてみたら丹羽が食べていた昼食は学校で販売しているパンだということを思い出し問い詰めた。

 話を訊くと食事は寮のものに頼り切りで、引っ越した日から朝食はパン、昼は総菜パン、夕食は風が見つけたカップ麺で済まそうとしていたらしい。

 それを聞いた風は当然激怒した。

「成長期なのにそんな食生活でどうすんの! 明日もうちにご飯食べに来なさい!」

 以来、朝、昼、晩と食事ができると隣の部屋の丹羽を招いて食事をするのが犬吠埼家の新しい生活スタイルになった。

 学校の日はお弁当を作って丹羽に渡している。さすがにそこまで甘えるわけにはと丹羽が固辞して軽く揉めたのだが、風が部長権限まで持ち出して意思を押し通すことで最後には折れたのだ。

 ただ、交換条件としてせめて食費は受け取ってほしいという丹羽のお願いはありがたく受け取ることにした。2人分も3人分も作る手間は変わらなかったが、食費はそういうわけにはいかないからだ。

 今日はうまいと褒めてくれるだろうか?

 風がこれからのメニューを考えるため丹羽に好物を訊いた時、特にないのだと答えられた。嫌いなものも特にないのだと。

 丹羽の精霊のナツメは風の料理をうまいと言ってくれるが、丹羽からは「よくできてる」「すごい」という言葉だけで、1度も「おいしい」や「うまい」という賞賛はついぞ聞いたことがない。

 いつか心からの「うーまーいーぞー!」を言わせてみせるのが風の密かな目標だ。

 そんなことを考えていると、クラスメイトの女子が1年生が呼んでいると風に告げてきた。

 1年というと妹の樹だろうか? しかしそれにしてはなにかニヤニヤしていたような…。

 とりあえず廊下へ行ってみると、その謎は解けた。

 そこにいたのは樹のクラスメイトで、勇者部唯一の男子部員。丹羽明吾。さっきまで自分があれこれと考えていた人物だった。

 どうやら1年生の男子がわざわざ3年生の教室まで女子を訪ねてきたことに、いろいろ邪推したのだろう。好奇の視線を背中に感じる。

「丹羽、何か用事? アタシ今から部室行こうと思ってたんだけどそこじゃダメ?」

 とりあえずこの場を離れよう。そう思いそう提案したのだが、丹羽は首を振る。

「いえ、他の皆さんの前ではちょっと…。犬吠埼先輩とちょっと2人で話したいと思いまして」

 その言葉に、後ろから黄色い悲鳴のような声が聞こえる。どうやら聞き耳を立てていたらしい。

「だったらせめて他の場所で。ここだとほら、周りがさ」

「大丈夫です。すぐ終わる話ですから」

 と丹羽。いや、アタシが大丈夫じゃないんだけど。なんか今日は押しが強いわね。

 でもいったい何の用事だろうと風は考える。勇者部の依頼のことだろうか? もしくはまた休日まで昼食を作ることに関しての話だろうか?

 後者だったら容赦なくつっぱねてやろう。年下が先輩に遠慮なんて百年早い。

「犬吠埼先輩。今度の連休、デートしましょう」

「ファッ⁉」

 後輩から告げられた予想外の話題に、風は驚き思わず変な声が出てしまった。後ろで聞き耳を立てていた連中がキャー! と大声を出すのが聞こえる。

 デート? 嘘っ、誰が? 誰と? アタシ? 樹じゃなくて?

 頭の中をグルグルといろんな事が回っていく。犬吠埼風14歳。こうして面と向かって異性に告白されたのは生まれて初めてだった。

「あ、うぅ…あうあうあ」

 返事をしようとして、声にならない声が漏れる。いや待て、今アタシなんて返事しようとした? うん? はい? いいえ?

「あ、すみません。デートとはちょっと違いました」

 そんな風を見て、丹羽が言ってくる。

 なんだ。ほらやっぱり、早とちりだった。かわいい樹ならともかく、アタシがそんな。

「休日に映画を見て、美味しい食事を食べながら映画の感想を言って。その後アウトレットとか行って買う気のない服とかオシャレな小物見ながら時間を潰したりする休日を過ごしませんか?」

「デートじゃんそれ!」

 風の言葉にまた後ろの方から盛り上がる声が聞こえる。アンタらうるさい!

「え、ちょっと、なんでアタシ? そういうのはもっと他の娘にしなさいよ」

「犬吠埼先輩がいいんです。先輩じゃなきゃダメなんです」

 嘘。これ完全に告白じゃない。

 自分を見つめるまっすぐな視線に顔が赤くなる。

 やばい、やばい、やばい。

 落ち着け、アタシ。ちゃんと年上としての威厳を見せるのよ。

「え、映画って言ってるけど、なんの映画?」

 ちーがーうーだーろー! なんで声がちょっと震えてるのよ! 乙女か!

 いや、乙女でしょアタシは。

「行った先で決めようと思いまして。実は映画のペア割引券をもらったんです」

 と丹羽。え? 割引券?

「最初は結城先輩と東郷先輩に渡そうと思ったんですけど、残念ながらその日は用事があったみたいで」

 なるほど、話が見えてきた。

 どうせ丹羽のことだから友奈と東郷がイチャイチャするのを見るためにペア割引券を手に入れたのだが、送ろうとした相手には予定があった。

 だからアタシを誘いに来た。うん、何もおかしなことはない。

 会ってまだ1週間かそこらの自分をデートに誘うなんて、ありえないわよねー! アハハハ!

 はぁ。なんか1人相撲してたみたいで変に焦った。丹羽のことは嫌いじゃないけど、付き合うとなると…ねぇ?

 そう思うとなんか腹が立ってきた。こうなったら断って恥をかかせてやろう。

「悪いけど、アタシそんな映画とか…」

 いや待て。ここでアタシが断ったらどうなる?

 丹羽の交友関係は知らないが、次の候補はおそらく樹だろう。優しいあの娘は多分断り切れない。

 樹がデートなんて、早い! 早すぎる!

 まだあの娘は12歳なのよ! 数日前までランドセルを背負ってたんだし、男の毒牙からはお姉ちゃんが守らないと!

 この、目の前の男の毒牙から!

「いや、いいわ。しましょうデート」

 風の言葉に「おお~」と後ろから声が聞こえる。まだいたのか外野。

「よかった。断られたらどうしようかと思ってました。じゃあ連休中の5月1日。詳しい時間と場所は後で連絡しますので」

「ええ、わかったわ」

 じゃあねと手を振って自分の教室に帰る丹羽を見送る。

 ふっ、年上の余裕を見せればこんなもんよ。

 そんな風に考えている風の足は結構がくがくと震えていたが、指摘する野暮な人間はいなかった。

 なぜなら一部始終を見守っていた女子たちに昼休みが終わるまで質問攻めされたからだ。

 結局風は次の休み時間になるまで自分の作ったお弁当を食べることができず、空きっ腹を抱えたまま授業を受けることになった。

 そして風はデートのことで頭がいっぱいですっかり忘れている。5月1日が自分の誕生日であることを。

 

 

 

 さて、なぜ根っからの百合男子である丹羽が彼らしからぬ百合の間に入る男ムーブをしているのか?

 話は昨日の放課後までさかのぼる。

「え゛、犬吠埼先輩をデートに誘ってほしい?」

「はい。こんなこと、丹羽くんにしか頼めないんです!」

 突然クラスメイトであり風の妹である樹から頼まれた丹羽は、思わず変な声を出してしまった。

 場所は勇者部部室。樹の他にも友奈や東郷の姿もある。

 ちなみに話の中心である風は委員会で席を外していた。そのタイミングを狙って樹は友奈と東郷、丹羽のいる勇者部で相談してきたのだ。

「実は、お姉ちゃん男の人と付き合ったことがなくて」

「へぇ、意外ですね。犬吠埼先輩ならモテまくりの引く手数多だと思うんですけど」

 主に女子に関して、と丹羽は心の中だけでつけ足しておくが。

「丹羽君、それ絶対風先輩の前で言わないでね。じゃないとチアリーディングでモテた話を延々とされるよ」

 と友奈。そういえばゆゆゆいでも若葉に話して会話が無限ループする話があったな。

「了解です。で、なんで俺が?」

「だから! こんなこと、丹羽くんにしか頼めないからだよ!」

 樹がいつにもまして真剣な顔で言う。そんなになのか。

「お役目のこともあるけど、わたしたちっていつどうなるかわからない戦いをしているわけでしょ。だから悔いは残してほしくないっていうか、人生に1回くらい男の子とそういうことした思い出があったほうがいいと思うの」

 と熱弁する樹。あれ? 樹ちゃん、君ってひょっとしてノンケなの?

 お兄さん、ちょっと…いやかなりショックなんだけど。

「というわけで、お姉ちゃんとデートしてきてください。前にお手伝いで貰った映画の割引券上げるから、これで」

「いやいやいや!」

 なにがというわけなのだろうか。全然理解が追い付かない。

「ごめんね、実は今度の連休中の5月1日って風先輩の誕生日なんだけど」

 混乱している丹羽に、東郷が説明してくれる。

 存じておりますとも。ゆゆゆいプレイヤーだった頃はガチャで大変お世話になりました。

「このデートを樹ちゃんなりの、風先輩への贈り物にしたいらしいの」

「いやいや、それなら犬吠埼さんが先輩とデートしたほうが喜ぶでしょ」

 風は自他共に認めるシスコンなのだし、その方が…と丹羽は思うのだが。

「丹羽くん、馬鹿なの? どこの世界に誕生日に妹と映画に行って喜ぶ姉がいるの?」

 あ、本編でも見たことのない(さげす)みを含んだ呆れた表情だ。

 でも君のお姉さんは間違いなく丹羽とのデートより妹の君とのデートのほうが喜ぶと思うよ。大赦仮面の魂をダースで賭けてもいい。

「それに2人が出かけている間に私たちで誕生日パーティーの準備をしようと思って。風先輩には用事で家を空けていてほしいのよ」

「去年は東郷さんの家でやったから今年は風先輩と樹ちゃんの家でしようと思うんだ」

 と東郷と友奈。なるほど。大体わかった。

 つまり自分にサプライズパーティーのための時間稼ぎになれということか。

 なんか別次元(わすゆルート)の自分が『やめとけやめとけ、女性相手のサプライズはやめとけ』と忠告してきたような気がするが、それは置いておいて。

 だったらなおさら樹と一緒のほうがいいのではないだろうか。本人も喜ぶし、丹羽もそのほうがはかどる…もとい嬉しい。

 部屋も犬吠埼家ではなく自分の部屋を使ったほうが片付けも任せられるし…と言いかけ、脳内シミュレートが待ったをかける。

 

『え、丹羽君。私と友奈ちゃんを自分の部屋に連れ込んでなにするつもり?」

『東郷さん、私丹羽君のお家行ってみたいよ』

『ダメよ友奈ちゃん。男は狼なのよ。一緒の部屋で3人切りなんてもってのほか!」

 東郷の信頼度、好感度大幅にダウン。

 

 ダメだ。これはダメだ。

 だったら去年と同じく東郷の家というのはどうだろう? シミュレートスタート。

 

『東郷先輩のお家じゃダメなんですか?』

『ダメよ絶対! 特に丹羽君はダメ!』

『東郷さん、どうして?』

『あ、別に人を上げるのが嫌なわけじゃないのよ。ただ、丹羽君が間違えて私の部屋に入ったら困ると思って』

『東郷先輩の部屋…もしかして壁一面に結城先輩の隠し撮り写真とかがあったりするんですか?』

『え!? なんでそのことを⁉』

『え?』

『え?』

 東郷の信頼度、好感度大幅ダウン。ゆうみも存続の危機。

 

 アカン、これはもっとアカン。

 だったら最後の希望として友奈の家で…と思ったが東郷がそれを許さないだろう。というか、丹羽が友奈の家を知ろうとした瞬間下心ありと判断されて銃で頭を撃たれかねない。

 うわっ、東郷さん強すぎ。

 どうあっても自分と風が外で時間を潰し、ゆうみもいつが誕生日パーティーの準備をするのが最適解らしい。

 だが百合男子としてそれはどうなんだと丹羽は苦悩する。そんな男が百合カップルの間に入る行為なんて許されない。だがそれ以外に方法が…。

 ひょっとしたらこれはわすゆ最終決戦の園子戦以来の詰みピンチじゃないだろうか。

 ん、待てよゆうみもいつ?

 これは夫婦であるゆうみもと娘役に樹。核家族ゆうみもいつという新カップリングでは?

 はかどる! これははかどるぞ!

 それに百合男子の本懐は推しの女の子の幸せを願い、無償の愛を注ぐことだ。そのためには自分の性癖や信念などいくらでも犠牲にしよう。

「丹羽くん、ダメかな?」

 考え事をしていた丹羽は、樹の声に意識を目の前の少女に向ける。

 ひどく不安そうな顔だ。彼女にこんな顔にさせるためにいろいろな工作をして壁の外から勇者部まで来たわけじゃないだろう!

「わかりました。この丹羽明吾、犬吠埼先輩を5月1日デートに誘います!」

 丹羽の宣言に、東郷と友奈も「おお~」と歓声を漏らし、拍手をしてくれた。

「よかったー。お姉ちゃん単純だから、きっと当日まで丹羽くんとのデートのことで頭いっぱいだよ。サプライズバースデーもきっとうまくいくね」

 と実の姉にさらりと毒を吐く樹。

 こうして風の知らぬところでサプライズパーティーをカモフラージュするためのデート大作戦は計画されたのだった。

 

 

 

 その後風の誕生日まで風を除いた勇者部4人での作戦会議は続いた。

 あーでもないこーでもないとデートプランを練りに練る。

 ちなみに「待ち合わせ場所と時間、決める必要あるんですか? 家隣なのに」という丹羽の発言には勇者部3人娘から大バッシングを受けた。

 特に樹からは「お姉ちゃんにとって一生に一度の初デートなんだから、楽しませないと承知しないから」と念押しされる。だったら君が行ったほうがお姉ちゃんは喜ぶよとはもう言えないのが丹羽のつらいところだ。

 そして誕生日当日。5月1日。

 午前9時30分。ショッピングモール前。

 待ち合わせ時間30分前、すでに風はいた。というか実は9時には到着していたりする。

 後輩とはいえデート…もとい遊びに行く相手を待たせるのに抵抗があった風は早めに家を出た。

 だからといって早く来すぎだろ! どれだけ楽しみにしてるんだ!

 内心で自分にツッコミをしていると、向こうから丹羽がこちらに向かって走ってくるのが見えた。

「犬吠埼先輩、お待たせしました!」

「い、いやアタシも今来たところ」

「嘘でしょ。さっき犬吠埼さんから連絡があって、お姉ちゃんは8時に家を出たけど丹羽くんはまだ出てないのって」

 樹ー!

 風はできた妹に心の中で涙する。なにもこんなところまでしっかりしなくてもいいのに。

「8時に出たってことはここについたのは8時50分くらいですね。ごめんなさい、30分近く待たせて」

「い、いいのよ。アタシが勝手に早く来ちゃっただけだし」

 頭を下げる丹羽に、風は慌てる。

「それでも30分も待たせた事実は変わりませんし。お詫びに何かおごらせてください。そこの喫茶店でいいですか?」

「い、いいわよ別に! 後輩におごらせるなんて。自分の分は払うから」

「俺におごらせてください。風先輩を待たせて疲れさせちゃった罰です。映画館もまだ始まる前ですし、そこで時間を潰しましょう」

「いや、だからそれはアタシがただ早く来ただけで」

 となおも固辞しようとする風の手を引き、丹羽は強引に喫茶店へ連れていく。

「それに、これは俺とのお出かけを楽しみにしてオシャレしてきてくれた風先輩へのお礼でもあるんですよ。今日の服、かわいいですね」

「ファッ⁉」

 急にキザなことをさらりと言われ、風は顔が真っ赤になる。

 なにこいつ、女の子同士がイチャイチャすることしか頭にない変人じゃなかったの?

 なんでこんな、少女漫画みたいなこと言えるのよ。

 それは丹羽がよく読む少女漫画や乙女ゲーが百合作品における守備範囲内なだけだからなのだが、彼女は知らない。

 急に抵抗する力が弱まり、引かれるままになっている風を不思議がりながら、2人は喫茶店へ入ることにした。

 

 

 

「え? 風先輩のために誕生日ケーキを作りたい?」

「はい、やっぱりプレゼントが丹羽くんとのデートセッティングだけだと弱い気がするので、何か形になるものを上げたいんです」

 それは風の誕生日前日。

 誕生日パーティーの準備に何をするかラインで話し合っていた時だった。

 樹のメッセージに友奈は「いいと思うな」と返信し、東郷も「立派な考えよ、樹ちゃん」と賛成している。

 そうか、この2人はまだ知らないのか。犬吠埼樹の料理の腕を。

 普通にうどんを作ったつもりが紫色の不思議な麺料理になったり、小学生組を恐怖させた紫色のパンプキンケーキ、あの歴代最強と言われた西暦勇者白鳥歌野を恐怖のどん底に落とした腕前を。

 アニメ視聴済みでアプリゲームのプレイヤーだった丹羽はもちろん知っている。

 風の身体を気遣うなら止めるべきだろう。だがどうやって?

 樹の腕前は今現在、姉である風しか知らないはずだ。それをつい最近まで面識のなかった自分が止めるとなるとかなりの難題だ。

 とりあえず話を逸らすため、丹羽は文章を打ち込む。

「そういえば料理ってどうするんですか? もし東郷先輩が作るなら使い慣れていない台所だと勝手が違うと思うのですが、お家で作って持ってくるんですか?」

 数秒後、東郷の返信が表示される。

「そうね。そのほうがいいかも。料理の仕込みは前日できるものはしておいて、私が作ってから友奈ちゃんと合流してそちらへ向かうことにするわ」

 よし、これで被害は最小限に収められた。

 ケーキと料理が紫色のスペシャル仕様だったら目も当てられない。ケーキだけなら東郷の指導があれば大丈夫だろう。

 …大丈夫だよな?

 一抹の不安を覚えたが、きっと大丈夫だと思う。うん、そう思う。

「もしもし、東郷先輩ですか?」

 一応ダメだった時のために、東郷さんと打ち合わせをしておこうと丹羽は手を打っておく。

 この誕生日パーティーが楽しいものであるために。

 姉を想う妹のお祝いが、素敵なものとして誰もが笑顔で迎えられるように。




わすゆルート天の神(百合好き)「」(血の涙を流しながら耐えている)
神樹「え、君なにしてるの」ドンビキ
天の神(百合好き)「推しの幸せを願うならここは耐えるのが真のファン。しかし、百合の間に男が入るのは、どうしても…どうしても…」
(+皿+)「許せぬか」
天の神(百合好き)「師匠!」
神樹「え、君ただの星屑を師匠とか呼んでるの?」
(+皿+)「貴方には、丹羽が心で流す血の涙が見えぬか」
天の神(百合好き)「心で流す、血の涙?」
(+皿+)「本来なら風先輩の初デートの相手は樹だった。しかし姉を思う樹の心を汲み取り。信念と性癖すら曲げてそれに応える丹羽の心の涙が!」
神樹「え、何言ってんのこの星屑」ドンビキ
(+皿+)「しかも丹羽の言動、あれに何か感じることはないか?」
天の神(百合好き)「いえ、人間の文化には疎いもので」
(+皿+)「あれは俗にいう『いい人ムーブ』。少女漫画の肉食系男子に負ける草食系幼馴染、乙女ゲームにおけるいろいろ主人公を助けてくれてくれるけど非攻略対象のみが許されるという女子に人畜無害であることを示す奥義よ」
天の神(百合好き)「いい人ムーブ⁉」
(+皿+)「そう、優しいだけの男に女はなびかぬ。それゆえ(どうでも)いい人、(都合の)いい人として物語の終わりまで主人公(女)を見守り、無償の愛を注ぐ存在」
天の神(百合好き)「同志、それはひょっとして…」
(+皿+)「ああ、全百合男子が見習うべき存在。カードキャプターさくらの知世ちゃんの精神を体現した存在だ」
天の神(百合好き)「なんてことだ。そんな崇高な精神を持つ者もろとも世界を滅ぼそうと一瞬でも考えた自分が恥ずかしい」
神樹「え、女の子ってオラオラ系の肉食系に弱いの? だったら我も5人の勇者全員と神婚してみちゃおっかなー」
(+皿+)「そうじゃないだろ。何聞いてたんだお前」ブチギレ
天の神(百合好き)「やっぱりお前とは千年単位かかっても和解できない気がする」ブチギレ
神樹「なんでさ⁉」
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