詰みゲーみたいな島(四国)に人類を滅ぼす敵として転生した百合厨はどうすりゃいいんですか?   作:百男合

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さくせん:いろいろやろうぜ

 ダイナマイトを発明したノーベルは土木工事の安全性向上のために作られたそれが戦争の道具として多くの人の命を奪うことになるとは夢にも思わなかっただろう。

 同じように本来意図しなかった用途で戦争の道具や兵器となってしまったものは数多くある。

 これもその1つなのか…と俺は目の前で回るそれを見る。

 アクエリアスの水から作られた殺意マシマシのハンドスピナー。ポケモンのみずしゅりけんを参考にウルトラマンの八つ裂き光輪とベイブレードの回転をイメージした結果生まれたものだ。

 いや、違うんですよ。

 最初はちょっとした息抜きのつもりでハンドスピナーやコマとか作ってたらもっと回転数を上げよう、こういう形にしてみようとアレンジ魂に火が付きあれよあれよという間にこんな凶悪な姿に。

 試しにそこらへんを漂っていたデブリに突っ込ませてみると奇麗に真っ二つにし、その奥で漂っていた星屑2体も切断してしまった。切断面を見ると鏡みたいに奇麗だ。

 うん。今まで水で作った武器の中で、多分これが一番凶悪だと思います。

 そんな俺が今いる場所は、壁の外にしては珍しい西暦時代の建築物や自然が燃え尽きずに残っていたものが寄り集まってできたスペース(?)デブリの塊で、身を隠すにはもってこいの場所だった。

 心配しすぎかもしれないがアクエリアス・バーテックスを最弱の星屑が食べたことで天の神がなにか気づくかもしれない。

 天の神といえば2期で結城友奈に呪いを与えたラスボスだが、その能力はチートと言っても過言ではない。

 四国以外の世界を消滅させた元凶でもあり、バーテックスの親玉。しかも複数の勇者が満開してようやく倒せる星座級の巨大バーテックスをいくら倒しても本体は痛くもかゆくもない。

 最終回で神樹の力+歴代勇者の力全部乗せ勇者パンチで倒せたのが不思議なくらいの滅茶苦茶な存在なのだ。

 それをただの星屑が相手にしたらどうなるか。にらまれただけで消滅してしまう。これは比喩ではなく事実として消滅する。

 本来星屑は天の神による土地取りと人類滅亡プログラムの末端の末端だ。

 変な動きをしたら真っ先に消されるだろう。それこそプログラムのバグを修正するように。

 だから俺の意識を宿した星屑が最低1体は生き残る必要があるので物理的に隠れている。銀ちゃんを救出する前に消滅させられては元も子もないからだ。

 触らぬ神にたたりなし。天の神とはある程度距離を置いて生きていくのが一番だ。

 そんなことを考えていると、2体の星屑がこちらに向かってくるのが見えた。

 御霊付近にいて群がってくる星屑を食べ続けていた個体たちだ。あれから相当な数を食ったのか遠目で見てもでかい。

 片方の星屑とサイズが違うのは御霊付近に代わりの星屑を配置するため分裂したからだ。それでもかなり大きい。

 俺はデブリから出ると巨大なほうの星屑に意識を移し、今まで自分が操っていた星屑の体躯を食べる。グレープフルーツジュースとサイダーみたいな炭酸のシュワシュワ。わずか2口で完食してしまった。

 さて、では試してみたかったことをいろいろやってみるか。

 

 

 

 圧縮圧縮! 質量を圧縮!! 圧縮圧縮ゥ! 体積を圧縮ゥッ!!

 今俺がやっているのは小林さんちのメイドラゴンに出てきたドラゴンが人間に擬態するための方法だ。

 この作品ではドラゴンが人間の形に身体をぎゅーっと押し込むことで見た目は人間、力はドラゴンというトンデモ理論で変身している。

 フィクションならではの方法だが、この世界もフィクション。そして俺は人間ではなくバーテックスという人知を超えた存在。

 できる道理はないができない道理もない。

 だったら試してみる価値はありますぜ!

 世界一カッコイイモブの台詞が後押ししてくれた。だめでもともと、やってみるさ。

 体躯を圧縮することで、密度が上がっていくのを感じる。目線が徐々に低くなり、星屑の時にはなかった腕や足が作り上げられていくのがわかった。

 やがてこれ以上無理、と体躯が限界を知らせるのを感じて圧縮を止める。

 視線はかなり低くなっていた。自分より小さいくらいの大きさだった星屑が、かなり巨大に感じる。

 両手の指を握ったり開いたりしながら感触を確かめる。軽めの運動のため両足でジャンプしたり、ラジオ体操のまねごとをしてみたりした。

 うん、問題ない。身体はきちんと人間みたいになってるな。

 と、そこで見た目はどんな風になっているだろうと気になりもう一体の星屑と視界を共有して人型になった自分の姿を見てみる。

 ……うわぁ。

 思わずそんな声が出そうになった。

 白い全身タイツを着たような身体。胸部には膨らみはなく、下半身にも突起はない。

 ここまでは普通の人間だ。性別はないようだが。

 ただ頭だけが星屑のままで目や鼻はなく、本来耳がある位置まで口が裂けて唇がないので歯がむき出しになっていた。

 うん、これ子供見たら泣くわ。

 10人に聞いたら10人がキモいと答えるようなデザインの姿に、ちょっぴり落ち込む。この姿で人間と出会ったらどうなるだろうと想像してみる。

 

「転校生の 場亜手九州男(ばあてくすお)です。よろしくおねがいします」

 黒板に名前を書き、気さくに挨拶をした俺を待っていたのはパニックになったクラスメイトたちだった。

「きゃー! 人類の敵!!」

「お願い、食べないでくださーい!」

「田植え、食べないよ!」

「髪が1本もないツルツル頭よ、キモーイ」

「やめたげてよぉ! 先生が流れ弾受けて泣いてるじゃん」

「そこまでよ、バーテックス! 勇者部参上!」

 そこへ登場する讃州中学勇者部。

「アイェエエエエエ!? ユウシャ? ユウシャナンデ!?」

「人類の敵め、覚悟しなさい」

「みんないくわよ、変身!」

 スマホのアプリが起動し花が舞い、光が6人の身体を包み、勇者の姿に変身する。

「いくわよ、犬吠埼ソードで真っ二つ!」

「アバーッ!」

「死神ワイヤーで身動き取れなくしちゃうゾ☆」

「コマギレ!?」

「完成型勇者のにぼしブレードの妙技をくらいなさい!」

「カルシウムと水銀による暴力!」

(しろがね)、私に力を貸して……眉間を撃ち抜け。神罰招来」

「ビューティフォー」

「そして最後に、みんなを守る勇者パーンチ!!」

「グワーッ!!」

 決着!! こうして四国の平和は守られた。

 ありがとう神樹に選ばれた勇者たち。ありがとう、讃州中学勇者部。

 完。

 

 うん、シャレにならんな。まぁバーテックスは四国に入れないからこの心配は杞憂なんだが。

 しかしこのままだと小学生組に会ったとき不安だな。ただの星屑の時より警戒されるかもしれん。

 なんらかの対策を練らないとなと考えながら、もう1体の巨大星屑に横になるように念じる。

 さあ、巨大星屑解体ショーの始まりだ。

 水のワイヤーで体躯を賽の目切りにすると四角い肉塊を手に取る。ちょうど両手で持てるくらいの大きさだ。

 これを10本の指で粘土を作るようにこねこねこねこね。

 できました! アタッカくんです。

 アタッカとはアプリゲーム結城友奈は勇者である花結のきらめき(以下ゆゆゆい)に出てくるオリジナルバーテックスだ。

 形状は拳を握った手甲のような姿をしており、造反神側の勇者である赤嶺友奈の操るバーテックスもどきとして登場した。

 その実力は歴代最強とされる諏訪の勇者、白鳥歌野に苦手な相手と称されるほどで通常の星屑とは攻撃力も硬さも段違いなのだ。

 そう、星屑とは違うのだよ星屑とは!

 とおヒゲが似合う青い近接用MSを駆るゲリラ屋おじさんの言葉がカットインつきで脳内に入ってくる。

 うーん、結城友奈は勇者であるの世界にこだわらなければ他作品から有用な兵器を作ってみるのもありかもしれない。

 1/1デンドロビウムとか男の子の夢だもんな。

 基地としてデス〇ターとか作ってみてもいいかも。星屑だけに。

 できたばかりのアタッカくんに目の前にある星屑の肉塊を食べるよう念じてみる。アタッカには星屑のように口はなかったが肉塊は消え問題なく吸収されたようだった。

 小さかったアタッカが成長し、ミニチュアサイズだったのが一般的な星屑サイズになる。これからメインで体を張ってくれる頼もしい味方の誕生だ。

 とりあえず近くの敵に突進して殴る簡単な指示のbotを入れてあと5体は作っておこう。それとも人形のように水のワイヤーで操るのもいいか。

 残りは遠距離攻撃用にカデンツァと例の実験のために残しておいて……と考えていると神樹の結界付近にいた星屑が異常事態を知らせてきた。

 視界を共有すると、天秤座と山羊座の巨大バーテックスが四国へ向け進行していく最中だった。

 

 

 

 よし、みんなは位置についたな。

 ものどもかかれー!!

 神樹の結界からボロボロになって戻ってきた天秤座のリブラ・バーテックス、山羊座のカプリコン・バーテックスに、5体の巨大星屑と人型のバーテックスが襲い掛かる。

 2回目ともなると慣れたもので、完全に虚を突き2体の巨大バーテックスに近づくことができた。

 まぁ向こうは同じバーテックスである星屑が襲い掛かってくるなんて夢にも思ってなかっただろうが。

 かじりつかれるとさすがにただ事ではないと気づいたのか、リブラが振り払おうと風を起こそうとしてくる。

 巨大星屑に乗った俺は水のワイヤーを他の2体にも出すように指示をし、蜘蛛の巣のように張り巡らして動きを封じた。これはさっきガンダム関連の知識がカットインしたときに、ハンブラビの海ヘビを思い出してやってみた戦法だ。

 ちなみにカプリコンのほうはろくに反撃できずに巨大星屑にかじりつかれていた。

 やはり完成型勇者とはいえ1人にやられて封印されるような奴はダメだな。

 今の俺はアクエリアス御霊付近にいた巨大星屑に乗っていた。身体の体積が小さくなったこともあるが足が生えたことで星屑の時より移動速度が遅くなったせいだ。

 メイドラゴン理論なら星屑の時と同じ速度で移動できるはずなんだが、やはり体躯全体を使って泳ぐのと両足で走るのとでは勝手が違うのかうまくいかない。

 この体に慣れてくれば以前と同じような速度で移動できるんだろうが、慣れるまで移動用に速度に能力を全振りした巨大フェルマータを作る必要があるかもしれない。

 動きを封じられぐへへ…な状態のリブラに近づくと、俺はその黄色い体躯にかじりついた。

 甘いっ、これは…チョコか? 十字架にナナフシみたいな腕が付いた外見からは想像がつかない意外な味に、俺は驚きながらも食べ進める。

 アクエリアスの時と同じように、一噛みごとに味が変わる。ミルクチョコかと思いきやアーモンドの香り、次にかむとビターな苦みも感じる。

 ん? この絶妙に塩味とマッチした甘さと微かな魚類特有の臭み…これは弥勒夕海子がバレンタインデーイベントで作ったカツオチョコか? 

 今度はつぶつぶとした食感と柑橘類のさわやかな香り。加賀城雀のみかんチョコもあるのか、これは嬉しいな。

 味わいながら食べていると、3体の星屑にほとんど食べられてしまっていた。当たり前だが身体が小さくなったから食べる速度は巨大星屑のほうが上だな。

 御霊が見えだしたので今度はカプリコンのほうに移動し、体躯にかじりつく。

 う、これは……。

 吐き出さなかった自分の我慢強さをほめてやりたい。

 獣肉特有の生臭さ。歯に残るようなにちゃっとした強すぎる甘味。これは大阪のたこ焼き羊羹と並ぶ伝説の珍味、ジンギスカンキャラメルじゃないか!?

 牡羊座でもないのになぜこんな味が、と思い食べていた他の巨大星屑と情報を共有すると、どうやらカプリコンはチーズやヨーグルトなどの乳製品の味がするようだった。

 数ある乳製品の中でもなぜこんなハズレを…と愕然(がくぜん )としていると遠くから星屑の群れが御霊を目指しやってきていることを別の星屑が知らせてきた。

 アクエリアスの時と同じように御霊付近に2体ずつ残してこの場を任せ、巨大星屑に乗りアタッカを作っていた場所まで戻る。

 しかし、リブラとカプリコンが出てきたってことはもう2話まで進んだのか。

 アニメの内容を思い出して考える。

 鷲尾須美は勇者であるでは第1話でアクエリアス・バーテックス。2話でリブラ・バーテックスとカプリコン・バーテックスと戦闘していた。

 そして3話に日常回を挟み、4話で蟹座、蠍座、射手座のバーテックスに三ノ輪銀が命を賭して戦い須美と園子の2人と人類を守るのである。

 つまりXデーまであと2話。半分を切ったということだ。

 時系列で言うと4月後半にアクエリアス戦。リブラと戦って辛勝。連携がうまくいかないことを安芸先生に問題視されて連休を使って合宿だったか。その夜にカプリコン戦があったんだよな。

 6月には連休がないから合宿はゴールデンウィーク中だろう。その後の三ノ輪家に遊びに行くイベントも休日だったので今は5月始めといったところか。

 ん? そういえばさっきリブラとカプリコン、一緒に出てこなかったか?

 アニメでは1体ずつだったのにおかしいな…。なんか原作と展開が違う?

 原作との差異に違和感を感じつつも、俺はこれから起こるイベントを思い出していく。

 初等部向けのレクリエーションを安芸先生に任せられて国防体操をして叱られる。うどん屋で将来の夢を語って、プールへ行って。遠足へ行くのが7月の頭。

 その帰りに神樹の結界に巻き込まれ、銀ちゃんは…。

 そこまで考えて頭を振る。それを回避するために俺がここにいるんだろうが。

 とにかくあと2か月くらいしか猶予(ゆうよ )はないってことだ。それまでに3体と戦えるように対策は万全にしないと。

 そのために試してみたいことは山ほどある。

 時間が足りるかどうかわからないが、やれることはやっておこう。そう心に決めた。




 現在の星屑(転生)のつよさ

 なまえ:ほしくず(人型)
 せいべつ:不明
 タイプ:あく/みず/ひこう
 とくせい:ふみん/がんじょうあご/へんげんじざい/みずのベール/スカイスキン
 たいりょく:1日中眠らなくても働けるスタミナをもつ。
 こうげき:取り込んだ星座級のアクエリアスの水球から様々な武器を作ることができる。さらにリブラとカプリコンを取り込んだことで強風や地震も操ることができるようになった。また、アタッカやカデンツァなどのバーテックスも操ることができるぞ。
 ぼうぎょ:リブラの風とアクエリアスの水球の防御で遠距離攻撃をほぼ無効化できる。要するに須美とサジタウルスメタ。近距離攻撃に対する防御はキャンサーやスコーピオンバーテックスには及ばない。
 すばやさ:2本足になったことで星屑の時よりも遅くなった。
 わざ:かみくだく
    なかまづくり
    ふしぎなちから
    へんしん
    たくわえる
    バトンタッチ
    メガトンパンチ(アタッカ)
    はかいこうせん(カデンツァ)
    みずでっぽう(アクエリアス)
    みずしゅりけん(アクエリアス)
    ヒーリングウォーター(アクエリアス)
    かぜおこし(リブラ)
    とっぷう(リブラ)
    エアスラッシュ(リブラ)
    じしん(カプリコン)
    スモッグ(カプリコン)
 
 星座級の巨大バーテックス並みの質量を無理やり人の形に押し込めた姿。星座級の巨大バーテックスを食べたことにより、その能力を使うことができるようになった。
 2本の腕と10本の指で星屑の肉塊からゆゆゆいに登場したバーテックスを作ったりもできる。
 顔は相変わらず星屑のまま。子供が見たら10人中10人が泣く姿。実は手のひらにも口があり、いざという時は分離するぞ。
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