詰みゲーみたいな島(四国)に人類を滅ぼす敵として転生した百合厨はどうすりゃいいんですか?   作:百男合

44 / 105
 あらすじ
東郷「あの丹羽君が百合イチャに無反応なんて」
夏凛「あいつらしくないわね」
樹「今朝から様子が変でした。なにかあります」
丹羽「何をする気だ?」
(+皿+)「四国の外に百合少女たちの楽園を作る」
丹羽「やることが派手だねぇ」
友奈「(私と夏凛ちゃんのデュエットを見て)目だけが光っていた」
風「へいへい、抜き取った感動シーン(勇者部みんなの寄せ書き)を見せなさいよ」
 プレデター語録はコマンドー語録と混ざってもはや見分けがつかない件。



あの時、言えなかったこと

 7月3日。ようやく大赦から許可が下り大赦の所有する病院からゴールドタワーを経由し四国を守る壁付近にたどり着いた乃木園子は、自分を迎える32人の防人たちに驚いた。

「乃木園子様ですね。防人隊隊長の楠芽吹です。我々が人型バーテックスと遭遇した座標まで護衛させていただきます」

 伝説の勇者を前にカチコチに固まっている防人隊の面々を見つめ、安芸に車椅子を押されていた園子は思わず吹き出す。

「な、何か失礼が⁉」

「ごめんごめん。そういうわけじゃないんよー。ただ、いかにもこれから死にに行くような人を見るみんなの顔がちょっとおかしくって」

 当然だ。防人隊はあの人型バーテックスと7体の星座級バーテックスの戦い…いや、圧倒的戦力差を見せつけられたのである。

 いくら人類最強の勇者とはいえアレに勝てるとは思えない。もし返り討ちにされたら、人類側の希望が潰えるのだ。

 その心配を目の前の少女はおかしいと言う。

「わたしにとっては、ただ親友をさらった憎い敵をぶっ殺して居場所を吐き出させるまで拷問しに行くだけだから。そんな大したことないのに」

 いや、大したことだよ。

 そのかわいらしい顔には似つかわしくないワード満載の言葉に、加賀城雀は思わずツッコみそうになり口をつぐむ。

 もしもそれで園子の逆鱗に触れたら自分はもちろん仲間の防人もどうなるかわからないからだ。

「それに護衛って言ってたけど、別にいらないよ。座標ポイントは安芸先生から聞いてるし、そこまでは変身したらすぐだから」

「それは、我々が足手まといとなる。ということでしょうか?」

 芽吹の言葉に園子は首を振る。

「誰もそんなこと思ってないよ。というか、もしそんなこと言うやつがいたらわたしが許さない。防人のみんなの活躍は誰よりも知ってるし、その頑張りもね」

 その言葉に防人たちは感動していた。

 勇者を育てるための捨て石呼ばわりされていた自分たちをすくい上げ、ここまで重用してくれた園子本人の言葉だ。

 ほぼ同年代とはいえ相手は瀬戸大橋でバーテックスの侵攻を止めた伝説の勇者。

 そんな人物が自分たちを認めてくれている。その事実だけで防人隊にとって今までの苦労が報われるようだった。

「みんながあいつのいる場所を教えてくれたから、わたしはここに来られた。そう、ようやく追い詰めたんだ。手掛かりをつかんだんだ。絶対に逃がさない」

 だが、同時にその伝説の勇者にここまでの殺意というか憎しみを向けられるあの人型バーテックスとはどんな因縁があるのか。

 口にすることははばかられたが、全員が気になっていた。

「その、なぜあの人型をそこまで気になさるのかお聞きしても?」

「ん~?」

 芽吹の言葉に園子が首をひねる。その時雀の危険センサーがビンビンに反応した。

(ちょ、メブ! それダメな話題!)

「あのバーテックスは人語をしゃべり、結果的にですが我々全員を助けました。メッセンジャーだけなら1人や2人残して虐殺すればいいのに」

「ああ、なるほど。楠さんだっけ? つまりあなたはあれが人類の敵じゃなくて味方になるかもしれないと?」

「いえ、逆です。あれは我々に力の差を見せつけるための行為だと。それにバーテックスは人類の敵という事実はどんなことがあっても決して覆りません」

 その言葉に危険センサーが安全領域まで戻る。よかった、逆鱗には触れなかったようだと雀は胸を撫で下ろす。

「ただ、あいつは敵意はないと言った後、私が信じられないという言葉にそれで構わない。行動で示すと。そして1度手ひどい目にあったと言っていました。それは園子様のことではありませんか?」

『信じてくれ、俺は銀ちゃんを治したい。この残酷な物語の結末を変えたいだけなんだ』

 芽吹の言葉に、園子の脳裏にかつてあの人型が言った言葉がよみがえる。

 それから全部あいつの言う通りになった。わっしーは足の機能と記憶を失い、今は東郷美森として生活している。

 全身不随になると言われていた園子だったが、半身不随で済んでいる。それはあの人型のバーテックスが壁の外に現れた12体の巨大バーテックスを倒してくれたおかげだというのも理解している。

 だからなんだ。

 だったらどうして自分に何の得もないことを、敵である勇者の自分たちを救いたいという真意を問い正したとき答えなかったのか。

 後ろ暗いところがなければ即答できたはずだ。自分をだまし、利用しようとしていることを見抜かれたからあんな出まかせを言ったのだろう。

「楠さんは、あいつがいい奴だと思う?」

 質問を質問で返され、芽吹は一瞬戸惑う。だがすぐ答えた。

「いいえ、危険な存在だと思います。人間のように考え、言葉を話すならば我々をだまし、陥れようとするはずですから」

「うん。わたしもそう考えたんだー。だから槍で滅多刺しにしてやったの。次会った時は何事もなかったように普通に現れたけど」

 実際はその時死にかけたのだが、それは園子の知らないことだ。

「そんな奴が行方不明になった自分の友達を預かって治療しているって言ったら、楠さんはどう思う?」

 芽吹は園子の言葉に、例えば亜弥が突然行方不明になり、あの人型のバーテックスが自分の元で治療中だと言ったと仮定して考える。

 とても信じられるものではなかった。むしろ人質として人類側の情報を流せと脅されるのではないかと勘繰るだろう。

「信じられません。なんとしても友達の居場所を吐かせ、保護しようと行動します」

「うんうん。そうだよね。わたしもそうだったの」

 なるほど、それが園子とあの人型のバーテックスとの因縁なのか。

「すみません。出過ぎたことを訊いてしまって」

「ううん。わたしも話したかったっていうのもあったから。同じ考えを持った人に」

 芽吹の受け答えはどうやら園子にとって満点だったらしい。わずかな会話だったが気に入られたようだ。

「じゃあ、行ってくるね!」

 その言葉とともに園子はスマホの画面をタップする。水連の花が咲き誇り光に包まれ、白をベースにした勇者服に変身していた。

 車椅子だったときには考えられないほど軽やかな動きで跳び回って壁を上ると、四国の外へあっという間に行ってしまう。

「ご武運を」

 その姿に防人隊と安芸は無事帰ってこれるように祈りを捧げる。

「ちょ、メブ! 何考えてんのさ!」

 だというのに雀が芽吹の頬をひっぱりぷんぷんと怒っていた。

「ひょ、ひょっと! 何するの!?」

「園子様になんて質問してんの! 下手すりゃあんた死んでたよ」

 雀の言葉に芽吹は首をかしげる。その様子に雀は深いため息をついた。

「あー、もういいよ。結果オーライだったから。でもさメブ」

 もしあのバーテックスが本当にただの善意から私たちを助けてくれたのだとしたらどうするのさ、と雀は尋ねる。

 それに対し、馬鹿なことをと芽吹は即座に否定した。

 人類の敵がわざわざ人類を助けるなんて、何か企み利用しようとしている以外の考えがあるのかと。

 その答えはこの世界では勇者も、防人も、大赦の人間も。

 誰もが人類の敵であるバーテックスが無償の善意から人類のために行動することはあり得ないと考えていることを示していた。

 

 

『やあそのっち。久しぶり2年…いや、1年と9か月ぶりぐらいかな?』

 目的の座標にたどり着くと、そこでは人型のバーテックスが待ち構えていた。

 自分の周囲に水球を作り、その中にいる。特徴的な仮面をしているからあいつに間違いないだろう。

 その傍らには犬なのかウサギなのか判断に迷うゆるキャラがいる。おそらくあれが遠くにいる自分まで声を届けているのだと予想する。

『防人の子にも言ったんだけど、俺に敵意はない。まあ信じてもらえないと思うけど一応言っておくよ』

「ミノさんはどこ?」

 2年前、目の前にいるバーテックスにさらわれた親友のことを尋ねる。

『銀ちゃんは1年がかりでようやく傷が完治した。だけど意識が戻らない昏睡状態だ。壁の外という場所が原因だと思っていたから、君が四国へ運んでくれるのならこちらにとって渡りに船だ』

「ミノさんはどこにいるのかって、こっちは訊いてるんだよ!」

 槍を構え戦闘態勢に入った園子に、聞く耳持たないかと人型バーテックスは内心でため息をつく。

 話し合いで解決できればと思ったが、やはりそうはいかないらしい。

 仕方ない、プランCだ。

 近くにいたカノン・アルタなどのゆゆゆいバーテックスを呼び出し、水のワイヤーを伸ばす。

 ワイヤーを使い繊維のように、それから筋組織のようにゆゆゆいバーテックスを骨組みに水のワイヤーを張り巡らす。触手状のそれが水球を中心に別の生命の形を作り上げていく。

 モデルは日本神話に登場するヤマタノオロチ。あるいはド〇クエ2のメデューサボール。

 水球を中心に蛇のようにうごめく水の触手に、園子は警戒を強める。

 これはちょっとやそっとじゃ斬れないぞと水球の中にいる人型のバーテックスは余裕でいるように見えた。

 ちなみにプランAは平和におしゃべりをして銀を園子に渡しておしまい。

 プランBは伝えることだけ伝えて逃げる。

 プランCは時間稼ぎをしながら園子に伝えることだけ伝えて銀のいるデブリまで導くという方法だった。

 ここに来るまでの間に星屑を倒して満開ゲージをためられないように、共食いする星屑とそれを管理するサーバー星屑はとっくの昔に別の場所に移動させてある。

 デブリの強化版人間型星屑製造所や精霊型星屑製作所も、自爆が存在意義ともいえるゆゆゆいバーテックス、ポルタメント・アルタを使い徹底的に破壊した。これによりここで何が行われていたか彼女たちが知ることはないだろう。

『じゃあ、そのっち。少し俺とお話ししようか』

「バーテックスと話すことなんて、ない!」

 言葉とともに園子が踏み込み、水球を覆う水の蛇を槍で薙ぐ。

 本編より少ないとはいえ9回も満開した園子だ。わすゆ最終決戦で戦った時よりも格段に強くなっている。

 ただのアクエリアスの水では即切断され、返す刃で水球も破壊されていただろう。

 だが何回も水のワイヤーで織り込まれた水の繊維は固く、さらに骨組みにはゆゆゆいバーテックスがいる。そう簡単には断ち切れはしない。

『あれから…君たち3人を助けるのに間に合わなかった俺は何とか最悪の結末を回避しようとした。君と接触して満開を思いとどまらせるためにこれから起こる真実を話した』

 園子は薙ぎ切るのをあきらめ、突きに移行する。だが中心の人型バーテックスの水球を触手たちが守り、決して矛先を届かせはしなかった。

「くっ、厄介なものを」

『だけど、須美ちゃんは2回満開した。君が思いとどまらせてくれると思ったのに見込みが甘かった。いや、ひょっとしたら結界内で君たちにしかわからない事態が起こり満開せざるを得ない状況に陥ったのかもしれない』

 その言葉に、園子の胸には苦いものがにじむ。

 確かに人型バーテックスから足の機能と記憶を失うと聞いた。だが園子はあえて須美を2回満開させたのだ。

 満開して全身不随になった自分のことなど忘れて幸せに暮らせるように。もし記憶が残ったままだと須美は自分を責め、今のように讃州中学勇者部の中で笑顔を見せることはなかっただろう。

 だが、須美のためにやったと言うのはしょせん言い訳。結局は自分のためだ。

 園子としては大赦で発言力を持つために満開して全身不随になる気満々だったし、その権力を使って防人たちを指揮して人型バーテックスを捜索する気だった。

 結局最後の戦いに人型バーテックスがやってきて、満開の数は予言されていた20回以上どころか9回と大幅に減り、全身不随から半身不随となったが。

『だけど、俺は君の満開を止められなかった。ごめん』

 その言葉に、園子の槍が一瞬止まる。だがすぐに気を取り直し袈裟懸けに振り下ろす。

 ガキン! と音が鳴り水の繊維を切り裂く。だが固いゆゆゆいバーテックスの骨組みに当たってはじかれ、また水の筋組織がバーテックスの骨組みを覆い元の状態となる。

『本来なら君たち3人が讃州中学に通い、勇者部に入って騒がしいながらも充実した学校生活を送る。それが俺の夢見た理想の未来だった』

 ふざけるな! と園子は内心で叫ぶ。

 だったら早くミノさんを返せと攻撃のスピードを上げていく。

 お前が奪ったんだ! 全部、全部、全部!

 わっしーとミノさん。そしてわたしがいっしょにいられたはずの未来を!

『だけど、君は9回の満開で日常生活も困難になり大赦の病院暮らし。須美ちゃん…いや、今は東郷さんか。彼女は君たちとの思い出を無くし、銀ちゃんは意識不明の昏睡状態。はは、俺が思い描いていた理想の未来とは全然違った形になっちゃったよ』

 なぜ須美が東郷という名になったのを知っているのか。

 なぜ自分の現在の詳細な状況を知っているのか。

 一瞬頭をよぎったが、そんなことはどうでもいいと園子は攻撃をより苛烈にしていく。

『だから、これは俺の罪滅ぼし。君たちに今はまだ信用されなくていい。だから今度は信用されるようにちゃんと形にして君たちに見せることにするよ』

 そんなことはどうでもいい。返せ、返せ、返せ!

「ミノさんを! 返せ! このバーテックス!!」

 叫び、槍を振るう。ゆゆゆいバーテックスの骨組みすら切り裂き、蛇のような触手が数本ぼろぼろと落ちた。

『心配しなくても銀ちゃんは無事だ。そしてちゃんと返す』

 その言葉に園子は顔を上げる。

 人型のバーテックスは仮面をつけて、相変わらず表情は読めない。だが、その右腕がある方向を指し示していた。

『この方角をずっと行った向こうに西暦時代の建物や自然物が集まってできたデブリがある。そこでは壁の外でも普通に人間が暮らせる場所…つまり君たちが探していた人類の生存可能な場所だ』

 その言葉に目を見開く。

 なぜそのことを知っているのかという疑問。

 そして同時に納得する。そのデブリという場所こそ三ノ輪銀が壁の外で1年以上いても無事でいるという園子も「あり得るはずがない」と諦めていた夢のような条件を満たしていた場所であった。

「じゃあ、本当にミノさんは」

『ああ、いるよ。意識はなくて眠っている状態だが、四国の病院へ連れていくことで事態が好転するかもしれない。人手が足りないなら防人の子たちを呼んだ方がいいんじゃないかな』

 その言葉に、園子の手から槍が落ちる。

 よかった。本当にミノさんは生きていたんだ。

 心の中ではもう死んでいるのではないかという恐怖に常に怯えていた。

 何しろ壁の外は人類が生存できない灼熱の世界だ。

 そんな場所で勇者であるとはいえ三ノ輪銀という少女が本当に1年以上生存できるのかと常に自分に問い続けていた。

 だが、そんな自分が出した答えから目を背けて三ノ輪銀とそれをさらった人型バーテックスを探し続けてきたのだ。

 だから、本当に生きていると知り、園子は胸の中で何重にもかけられた重い枷が外れていくのを感じた。

『それとそのっち。今日はお別れを言いに来たんだ』

 その言葉に思わず「え?」という言葉が口から出る。

『俺が信用されていないのはわかっている。だから信用してもらえるように、俺は壁の外に人間が生存できる場所を作る!』

「…えぇ?」

 あまりにも荒唐無稽な話に、園子は完全に毒気を抜かれてしまった。

 え、なんで人類を滅ぼすことが目的のバーテックスが人類が生存できる場所を作るの?

 それって絶対不可能じゃない? なに言ってるのこの人型のバーテックスは?

 疑問が次々と浮かんではどれも「絶対に不可能」という結論に至る。

 ひょっとしてこのバーテックス、馬鹿なのか?

 いままで人間のように考え自分たち勇者を利用する策士として油断ならない相手と思っていただけに、この落差にはついていけなかった。

『それに、あんまり俺が近くにいるとそのっちも安心できないみたいだしね。俺にとって君たちが笑顔で暮らすことが幸せなんだから、それじゃ本末転倒だろ?』

 こいつは何を言っているんだ。2年間の間に頭でも打ったのか?

 そう思っている園子に、人型のバーテックスは告げた。

『じゃあ、さよならだ。そのっち、銀ちゃんをよろしく』

「ま、待って!」

 水球に包まれたまま去ろうとする人型のバーテックスに、園子は声をかける。

「ミノさんが無事だと確認できるまで、逃がさないよ! それにあなたの言うことが本当かどうか確かめないと」

『だったら防人隊の子たち呼べばいいよ。俺は君が気の済むまで待ってるからさ』

 園子は少し考え、スマホを操作し防人隊の子たちを呼ぶことにした。

 それから落とした槍を拾い、防人隊が到着する2時間後まで水球にいる人型バーテックスをにらみつける。

「園子様、防人隊到着しました」

「ご苦労様。ついて早々悪いんだけど、あの方向にある…デブリだっけ? そこを調査してきてほしいの」

『なんならうちの子に乗っていく? 早いよ』

 人型のバーテックスが見たこともない星屑とは違うバーテックス、フェルマータ・アルタを園子と芽吹の前に出すが、2人は拒否する。

「バーテックスなんかに乗れるか!」

「罠かもしれないし、いらないかなー」

『そうか…ショック』

 人型のバーテックスが仮面をかぶっているのに落ち込んでいるとわかるくらい水球の中で沈んでいた。

 防人隊が出発してから30分後。園子のスマホに画像が送られてくる。

 そこには水球の中で胎児のように丸まっている勇者服の三ノ輪銀の姿があった。

「ミノさん!」

『あ、確認できた? じゃあ俺はそろそろ行くから』

 そそくさとその場を去ろうとする人型のバーテックス。

 下手にこの場にとどまっていたらまた滅多刺しの槍衾にされかねない。そういう未来予知ができてしまった。

「待って!」

 園子の声に、立ち止まる。水球で身を守っているとはいえ満開されては結構厳しい。

 だから本体はここから少し離れた別の場所にいて、意識だけこの強化版人間型バーテックスに移し仮面をかぶっていたのだが。

 見破られたか? とドギマギしながら園子の方を向く。

「どうして、あの時急に黙ったの? それになんで自分には何の得にもならないのにわたしたちを助けてくれようとしたの?」

 ああ、なんだそんなことか。

『あの時そのっちの斬った精霊の中に通信用の精霊がいたんだ。だから話そうにも話せなかった』

「ええ!? そうだったのー」

 その答えに園子は戦闘の時の鬼気迫るものが消え、人型のバーテックスがよく知るぽわぽわモードの園子になる。

 よかった。やっぱりこの娘はこっちの方がかわいい。

『それと自分には何の得にもならないって言ったけど、それは違うよそのっち』

 人型バーテックスの言葉に、園子は?マークを浮かべる。

『俺にとって、君たち女の子…もとい子供たちが笑顔でいられる世界はそれだけで尊いんだ。君たちが笑顔でいてくれることが、俺にとっての得なんだ』

 まあ、信じてもらえないだろうな。こんな星屑と同じ顔をしたバーテックスの言うことなんて。

 だから、彼女たちに信じてもらえるように頑張らなくちゃ。

『じゃあ、俺は今度こそ行くよ。もし人間が住めるような見通しが付いたら四国まで迎えに行くから、その時は攻撃しないでくれよ』

 そう言うと人型のバーテックスは去っていった。

「なんなの一体…」

 園子としては呆然とするしかない。

 いままで仇敵だと追いかけていた相手が実は親友の怪我を治し、保護していた。

 しかも本当に敵意はなく、自分たちを守ろうとしていて。あまつさえ今度は人類が外の世界で生存できる場所を作るという。その理由は自分たちに信用してもらうため。

「あは、あははは」

 もう笑うしかない。こんなこと、まともに報告をしても誰も信じないだろう。

 だから、この話は自分の胸の中だけにしまい今は2年ぶりに出会う親友に会いに行く。

 その日、乃木園子は行方不明だった勇者、三ノ輪銀を四国に連れ帰り大赦が所有する最高の治療が受けられる自身も入院している病院へと連れ帰った。

 意識不明の昏睡状態だったが、いたって健康体であの時園子が見た火傷やバーテックスの攻撃による傷跡もない。

 これならば意識を取り戻す日も近いだろうという医師の話に胸をなでおろす。

 その後死んだと思われていた勇者の帰還ということで三ノ輪家を含め大赦は説明のために大忙しとなるのだが知ったことではない。

 今はようやく帰って来たズッ友の隣にいられる。その幸せをかみしめながら乃木園子は眠りについた。

 

 

 

 それ(・・)はずっと見ていた。

 炎が吹き出し、灼熱のマグマが流れる大地に潜り誰にも気づかれることなく。

 乃木園子と人型バーテックスの戦いを。

 といっても人型バーテックスの一方的な防戦だったが、それ(・・)は注意深く人型バーテックスの能力を観察していた。

 水のワイヤー。編み込まれた繊維のようなもので作られた蛇のような触手。骨組みにした見たこともないバーテックス。

 それ(・・)はその姿を観察し、まねる。

 学ぶという言葉がまねるから変化したように、見様見真似から徐々に自分の物にしていき、やがて完璧にコピーする。

 そしてそれ(・・)は行動を開始した。自分たちの仇敵である人類を守る神樹を目指し、ジェミニを取り込んで得たスピードでまっすぐに四国へと向かう。

 その名はアクエリアス・スタークラスター。

 7体の星座級の肉体と御霊を吸収し最強の存在となった水瓶座の名を冠する巨大バーテックス。アニメ本編では登場しないはずの怪物だった。

 

 




 ちなみに大赦のバーテックス人間化は予定されていた通りそのっち不在の間に丹羽君が完了させました。
 これで風先輩暴走の危険がなくなったよ。やったね!
 それまで生き残れれば、だけど。

 アクエリアス・スタークラスター

 アニメ本編では最終話レオスタークラスターが登場したが、それのアクエリアス版。
 樹海や地面に潜れて風を起こし、ジェミニ並みのスピードで移動出来てレオの火球やビームも使えるヒーラー。あとアリエスの自己再生と自己増殖能力もあるから自動HP回復機能もついてるぞ!
 本来の技も強化され、レオすら閉じ込めることができる巨大水球を4つ装備。水球から放つ水鉄砲とウォーターカッターはリブラの能力で殺傷能力アップ!
 もろい本体もタウラスのおかげで防御力アップ! まさに死角はありません、無敵です! 状態。
 さらに人型バーテックスの攻撃手段を模倣してさらにパワーアップ。いったいどうなってしまうんだー(棒読み)
 …勝てるんすかねえ、これ?
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。